説明

植物栽培用容器

【課題】 培地の寿命を長くすることによって、植物を十分に栽培し観賞することのできる植物栽培用容器を提供すること。
【解決手段】 植物栽培用容器1は保護ケース2と器台6とを備えて構成され、保護ケース2は、透明な材料で形成される上ケース3と、上ケース3に連結されて容器1内を密閉状態にする下ケース4と、上ケース3と下ケース5との間に介在されるパッキン5とを備えて構成される。下ケース4には、収納部41とフランジ部42が形成され、収納部41には、植物Sが植えられている培地7を収納する培地収納部44と、培地収納部44の下方に配設される給水材収納部45が形成されている。そして、給水材収納部45に保水材10が収納されて、常に、培地7に給水することによって、培地の寿命を長くして植物を栽培、観賞する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、植物を栽培あるいは観賞するために設けられる植物栽培用容器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、植物を栽培あるいは観賞する植物栽培用容器71は、図8に示されるように、植物を保護するための保護ケース72が上ケース73と下ケース74を備えて構成され、前記上ケース73は、保護ケース内72の植物が見えるように透明の材料で形成され、下ケース74は外周部が上ケースに連結されて内部を密閉するとともに、中央部に植物Sが植えられている培地7が収納されていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の植物栽培用容器71は、下ケース74上に直接培地が収納され植物Sが植えられている。培地は一般的に植物で使用される栄養分を、例えば寒天で固めたもので水分も含まれている。容器内は室温と同じに保たれていて、長期間使用していると水分が蒸発してくる。蒸発した水分は上昇して上ケース73の内周壁に溜り、結露となって、そのうち下ケース74に落下する。下ケース74にはフィルタを介して通気穴が形成されていて、結露はその通気穴より発散するか、再び蒸発して上ケース73の内周壁に溜るだけで、培地7には給水されない。この状態が続くと培地7が減り培地7の寿命が早くなる。また、そのため植物Sの寿命も早くなる。
【0004】この発明は、上述の課題を解決するものであり、植物及び培地の寿命を長くすることのできる植物栽培用容器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明にかかわる植物栽培用容器では、上記課題を解決するため、培地に水分を吸収する手段を設けるものであり、培地に植えつけられる植物を栽培あるいは観賞するために用意される植物栽培用容器であって、前記植物を囲うように配設される透明な保護ケースと、前記保護ケースを支持する器台と、を有し、前記保護ケースが透明材で形成される上ケースと、前記上ケースと連結され前記培地を収納する下ケースと、前記培地に給水する給水手段と、を備えて構成されることを特徴とするものである。
【0006】また、前記保護ケースと前記器台とが容器内を密封するように連結され、前記保護ケースと前記器台に、前記上ケースの下端を前記下ケースに圧接させるための連結手段が備えられていることを特徴とするものであれば好ましい。
【0007】さらに、前記給水手段が、前記培地の下方で前記下ケース内に配設される保水材を備えて構成されていればなお好ましい。
【0008】また、前記下ケースの下方に複数個の穴が形成され、前記保護ケース内において、前記下ケースの外から下ケース内に向かって、前記穴を貫通するように吸水材が配設されることを特徴とするものであってもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、この発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0010】植物栽培用容器1は、図1に示されるように、上ケース3、下ケース4と、上ケース3と下ケース4との間に介在されるパッキン5と、を備えて構成される保護ケース2と、保護ケース2を支持する器台6と、を備えて構成され、保護ケース2内に培地7に植えられる植物Sを密閉状態にして配置している。保護ケース2内は雑菌の侵入を防止して無菌状態を保つとともに、適度な温度と湿度を保つようにしている。
【0011】上ケース3は、透視できるように例えばポリカーボネート等の合成樹脂やガラス等の透明な材料で形成され、上部外周が半球状で下部が上部に連接する円筒状に形成され、下面が解放された状態で内部が中空状に形成されている。また、上ケース3の下端部には、図2R>2で示されるように、保護ケース2内を密封強固にするために、全周にわたってパッキン5を押圧する突起部31が形成されている。さらに、上ケース3の下端部の近傍上方に、器台6と連結する連結片32が下部の外周に4か所形成され、連結片32の上面は、図3乃至図4に示されるように、平面視において、上ケース3の回転する方向に対して後部側が高くなるように傾斜面33を有している。なお、連結片32は4個に限るものではなく、複数個あれば効果的である。
【0012】下ケース4は、中央部が上方に開口され円筒状の収納部41が形成され、下部にフランジ面42が形成されている。フランジ面42の外縁部は、パッキン5を介して上ケース3の突起部31によって押圧されてケース内を密封するために、図2に示されるように、外周にわたって凸部43が形成されている。
【0013】収納部41は培地収納部44と給水手段収納部45との2段に形成されていて、培地収納部44の内周が給水手段収納部45の内周より大きく形成されている。そして、培地収納部44には植物Sが植えられる培地7が収納支持され、給水収納部45には保水材10が収納されている。この培地7は、一般的に植物培養で使用されるものである。また、保水材10としては、工業用プラスチックで構成される保水材が使用されている。例えば、水分が含まれるアクリルアミドの共重合体で構成されるものが使用されると植物の維持に極めて効果的である。この保水材は農園芸専用として使用されているものである。
【0014】また、保水材としては、一般に使用されている水が含まれた農園芸用スポンジでもよい。また、単に水を入れるだけでもよい。
【0015】なお、下ケース4のフランジ面42には、上ケース3が曇らないように図示しない複数個の通気穴が形成されていて、図示しない前記通気穴をフィルタで塞いでいる。
【0016】上ケース3と下ケース4との間に介在されるパッキン5は、弾力のあるゴム製でリング状に形成されている。パッキン5の上面には、上ケース3の突起部31に係合される凹部51が形成され、パッキン5の下面には下ケース4の凸部43に係合される凹部52が形成されている。さらに外周部は下ケース4のフランジ面42の外周側面を囲うように全周にわたって下側に向かって突起される突起部53が形成されている。
【0017】器台6は、図5に示されるように、お盆型に形成され側面部61が中空状に形成され、底面部62は下方が解放されている。そして、側面部61の下端面が底面部62の下端面より下方に延設され、側面部61の内周壁に上ケース3の連結片32に係合される連結対片63が連結片32に対応して4か所形成される。連結対片63の下面には、連結片32の傾斜面33が係合できるように傾斜面64と、連結片32の端面が当接するストッパ片65が傾斜面64より低い位置に配設されるように形成されている。そして、底面部62の上面には下ケース4が載置される。
【0018】このように構成される植物栽培用容器1は、培地7に植えられた植物Sが下ケース4に納められ、保護ケース2が器台6に連結されることにより、保護ケース2内が密封される。保護ケース2が器台6に連結される際は、まず、器台6上に植物が培地に植えられた植物Sを下ケース4の培地収納部44に納める。培地7は微量栄養素等が寒天で固められた状態にされていて、培地の下方には、給水材収納部45に保水材10が収納されている。下ケース4を器台6に載置し下ケース4のフランジ面42の凸部43とパッキン5の凹部52を合わせてパッキン5を下ケース4に係合させる。その後、上ケース3を、上ケースの連結片32と器台の連結対片63とが干渉しない位置において、上ケース3下面の突起部31をパッキン5の突起部51に合わせながら、下ケース4のフランジ部42上に載置する。上ケース3を器台6に対して所定角度(連結片32が連結対片63のストッパ片65に当接するまで)回転すると、上ケース3の連結片32と器台6の連結対片63がその傾斜面33、64にガイドされながら連結される。上ケース3がパッキン5を介して下ケース4を押圧することによって保護ケース2内が強固に密封される。
【0019】培地7に植えられる植物Sは、昆虫や小動物を捕らえて食虫作用をする食虫植物で、例えば、ハエトリグサや、コモウセンゴケ、ミミカキグサ等が栽培される。植物栽培用容器1で栽培される食虫植物Sは、光の照射する家庭内窓際やあるいは庭先に置かれ、適度な温度が保たれる。この場合約20℃〜25℃が適温である。
【0020】この状態でしばらくすると培地に含まれる水分が蒸発し、上ケース3の上部の内周壁に結露となって溜ってくる。結露は、その後、重力により上部から下方に伝わり下ケース4のフランジ面42に落下する。しかし、培地7には保水材から常に水分が供給されているため、培地7は長い寿命を維持することができ、食虫直物Sも十分に栽培でき観賞することができる。
【0021】図6は、別の実施の形態を示すものである。この場合、植物栽培用容器11は下ケース12が変更され、他の部材は前述の形態による植物栽培用容器1と同じである。下ケース12以外の各部位に付けられる符号は、前述と異なるものだけ変更し、植物栽培用容器1と同じものは同符号とする。
【0022】下ケース12は、収納部13とフランジ面14とを備えて形成されている。収納部13は上方が解放されるカップ状に形成され、収納部13の下部に、フランジ面14と同じ高さか僅かに上部の位置で、小穴15が複数個形成されている。この複数個の小穴15にスポンジ状の細長い吸水材16がフランジ面14から培地7の下方まで延設されるように配設される。植物Sが植えられている培地7は吸水材16上に直接配置されている。複数個の吸水材16は収納部13内に延設されるそれぞれの単面部が中央で集結するようにしてもよいし、また、1本の吸水材16が一方のフランジ面14から収納部13を通過して反対側のフランジ面14まで延設するようにし、他の吸水材16がフランジ面より収納部13内の中央まで延設するように配設してもよい。
【0023】そして、培地7から水分が蒸発されて上ケース3の上部に溜った結露は落下して吸水材16に吸水され培地7に回収される。そのため、培地7は常に水分が給水されることになり、寿命を延ばすことができる。
【0024】なお、収納部13は前述の形態のように培地収納部と給水材収納部との2段に形成するようにしてもよい。
【0025】図7は、さらに、別の形態を示すものであり、植物栽培用容器21は、図1における植物栽培用容器1における下ケース4を変更し、下ケース22としているものである。前述と同様、下ケース22以外の部品は前述と同符号とする。
【0026】下ケース22は、収納部23とフランジ面24とを備えて形成されている。収納部23は上方が解放されるカップ状に形成され、上方に培地収納部25と、培地収納部25より内周が小径で培地収納部25の下方に配設される給水材収納部26とが形成されている。フランジ面24は外縁部がパッキン5を介して上ケース3に押圧される係合部27を有し、係合部27の内側から収納部23の外周部に掛けて全周にわたって、収納部23側に向かって低くなるように傾斜部28が形成され、傾斜部28の外周縁は係合部25より高く形成されている。給水材収納部26の傾斜部28と連接する位置あたりに、外周方向に横長のスリット状の穴29が複数個形成されている。培地収納部25には植物Sが植えられている培地7が収納され、給水材収納部26には保水材10が収納されている。
【0027】そして、培地7に含まれる水分が蒸発して、上ケース3の上部内周壁に溜った結露が下ケース22のフランジ面24に落下すると、その水はフランジ面24の傾斜部28を伝わって、スリット状の穴29を通り、保水材10に吸水される。そのため、培地7には常に水分が給水され寿命がさらに長くなる。
【0028】なお、本形態においては、給水材収納部26に保水材10が収納されているが、吸水材収納部26をなくして培地収納部25だけにし、フランジ面24の傾斜部28に落下した水がスリット状の穴29を通り直接培地7に給水するようにしてもよい。
【0029】本発明による上述の各形態において、保護ケース2と器台6との間に連結手段を設けているが、下ケースに配設される培地7に給水手段が配設できるものであれば、前記連結手段がないものでも、本発明は適応できる。
【0030】
【発明の効果】本発明の植物栽培用容器によれば、植物栽培用容器には前記植物を囲うように配設される透明な保護ケースと、前記保護ケースを支持する器台とを有し、前記保護ケースが透明材で形成される上ケースと、前記上ケースと連結され前記培地を収納する下ケースと、前記培地に給水する給水手段と、を備えて構成されている。そして、前記培地には常に水分が供給されるので、培地の寿命が長く植物を十分に栽培維持でき観賞することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による植物栽培用容器を示す断面図
【図2】図1における上ケースと器台の連結部を示す一部断面図
【図3】図1における上ケースの平面図
【図4】図1における連結片を示す図
【図5】図1における器台を示す斜視図
【図6】本発明の別の形態の植物栽培用容器を示す図
【図7】本発明のさらに別の形態の植物栽培用容器を示す図
【図8】従来の植物栽培用容器を示す図
【符号の説明】
S…植物
1、11、21…植物栽培用容器
2…保護ケース
3…上ケース
4、12、22…下ケース
6…器台
7…培地
10…保水材(給水手段)
16…吸水材(給水手段)
13、23、41…収納部
25、44…培地収納部
26、45…給水材収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 培地に植えつけられる植物を栽培あるいは観賞するために用意される植物栽培用容器であって、前記植物を囲うように配設される透明な保護ケースと、前記保護ケースを支持する器台と、を有し、前記保護ケースが透明材で形成される上ケースと、前記上ケースと連結され前記培地を収納する下ケースと、前記培地に給水する給水手段と、を備えて構成されることを特徴とする植物栽培用容器。
【請求項2】 前記保護ケースと前記器台とが容器内を密封するように連結され、前記保護ケースと前記器台に、前記上ケースの下端を前記下ケースに圧接させるための連結手段が備えられていることを特徴とする請求項1記載の植物栽培用容器。
【請求項3】 前記給水手段が、前記培地の下方で前記下ケース内に配設される保水材を備えて構成されることを特徴とする請求項1もしくは請求項2記載の植物栽培用容器。
【請求項4】 前記下ケースの下方に複数個の穴が形成され、前記保護ケース内において、前記下ケースの外から下ケース内に向かって、前記穴を貫通するように吸水材が配設されることを特徴とする請求項1もしくは請求項2記載の植物栽培用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平9−248066
【公開日】平成9年(1997)9月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−57885
【出願日】平成8年(1996)3月14日
【出願人】(000176958)三明電機株式会社 (37)