説明

植物栽培装置

【課題】簡単な構造により栽培容器を水平方向に移動させるようにした安価な植物栽培装置を提供する。
【解決手段】相互に平行な二本の水平軸7を回転自在かつ進退不能に配設すると共に各水平軸を駆動手段9により同一方向に回転させるようにしてなる支持体1を少なくとも二つ配設し、各支持体には複数の栽培容器3を載置し、各栽培容器は各水平軸に対応する車輪対21を下端に備え、該車輪対は回転する水平軸に接して該水平軸と共に回転する二つの車輪を備え、該車輪対における当該二つの車輪は、各水平軸の回転方向に応じて該水平軸の長さ方向に該栽培容器を進退させるように、該車輪の回転軸線が該水平軸の長さ方向に対して相互に異なる方向に傾斜し、更に、一つの支持体1a上に載置された栽培容器を別の支持体1bに移すための移送手段41を備えていることを特徴とする植物栽培装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培装置に関するものであり、特に、栽培容器を水平方向に移動させることができるようにした植物栽培装置に係るものである。
【0002】
本発明による植物栽培装置においては、野菜、果物、花、米その他の穀物等の植物(以下単に「植物」という。)が栽培される。本発明による植物栽培装置は、好ましくは温室内に設置される。
【背景技術】
【0003】
植物栽培装置としては、特開平8−23805号公報に示すものが既に知られている。この植物栽培装置(以下「従来の植物栽培装置」という。)は、上下にスプロケットを備えたフレームを所定の間隔を置いて温室の内部に立設し、該スプロケット間に設けられた上下方向のチェーンに栽培容器を支持させて間欠的に昇降させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−23805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の植物栽培装置は、床面積の割に多くの植物を栽培することができるという利点があるものの、次のような問題がある。
【0006】
(イ)栽培容器が上下方向のチェーンに支持されるため、下方に位置する栽培容器は上方に位置する栽培容器の日陰になって日光を十分に受けることができない。
【0007】
(ロ)したがって、十分な日射量を要する植物を栽培する場合には、発光ダイオード等の人工的な照射手段を用いる必要があり、費用が嵩むという問題が生ずる。
【0008】
(ハ)栽培容器が上下方向のチェーンに支持されるため、栽培容器の高さが相互に異なる。すなわち、栽培容器の高さにより温度が異なるという問題が生ずる。
【0009】
本発明は、上記従来の植物栽培装置における上述の如き問題を解決し、簡単な構造により栽培容器を水平方向に移動させるようにした安価な植物栽培装置を提供しようとしてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、下記の植物栽培装置を提供する。
【0011】
(1)相互に平行な二本の水平軸を回転自在かつ進退不能に配設すると共に各水平軸を駆動手段により同一方向に回転させるようにしてなる支持体を少なくとも二つ配設し、
各支持体には複数の栽培容器を載置し、各栽培容器は各水平軸に対応する車輪対を下端に備え、該車輪対は回転する水平軸に接して該水平軸と共に回転する二つの車輪を備え、
該車輪対における当該二つの車輪は、各水平軸の回転方向に応じて該水平軸の長さ方向に該栽培容器を進退させるように、該車輪の回転軸線が該水平軸の長さ方向に対して相互に異なる方向に傾斜し、
更に、一つの支持体上に載置された栽培容器を別の支持体に移すための移送手段を備えていることを特徴とする植物栽培装置(請求項1)。
【0012】
(2)前記移送手段は、フレームに一対のベルト車を取り付け、該ベルト車間に環状ベルトを巻きかけ、一方のベルト車を駆動手段に関連させ、該フレームを昇降させる昇降手段を備えさせてなるものである(請求項2)。
【0013】
(3)前記昇降手段は、前記フレームの各側傍には駆動手段により回転する環状チェーンを該フレームと平行に配設し、該フレームの外面には一対のアームの一端をそれぞれ軸着し、一方のアームの他端を該環状チェーンにおける上側走行部に軸着し、他方のアームの他端を該環状チェーンにおける下側走行部に軸着し、該環状チェーンの回転方向に応じて該フレームが昇降するようにしてなるものである(請求項3)。
【発明の効果】
【0014】
[請求項1の発明]
栽培容器の下端に備えさせた車輪対は、水平軸と共に回転する二つの車輪を備え、該車輪対における当該二つの車輪は、各水平軸の回転方向に応じて該水平軸の長さ方向に該栽培容器を進退させるように、該車輪の回転軸線が該水平軸の長さ方向に対して相互に異なる方向に傾斜しているため、栽培容器は各水平軸の回転方向に応じて進退する。すなわち、各水平軸を一方の方向に回転させたときには、該栽培容器は水平軸上を一方の方向に動き、各水平軸を他方の方向に回転させたときには、該栽培容器は水平軸上を他方の方向に動く。換言すれば、水平軸を単に所定の方向に回転させることにより、栽培容器を所定の水平方向に動かすことができる。
【0015】
このように、栽培容器を水平方向に動かすための機構は、構成が極めて簡単であり、製造コストが低く、メンテナンスも容易である。更に、水平軸を回転させる力は小さくてよい。
【0016】
以上の如く、栽培容器を水平方向に動かすことができるため、該栽培容器により植物を栽培する場合には、次のような利点がある。
【0017】
(a)作業者は、自ら移動することなく、定植準備、収穫、片付け等の作業を行うことができる。
【0018】
(b)支持体の近傍に灌水手段ないし消毒手段を配設することにより、灌水作業ないし消毒作業を自動化することができる。
【0019】
(c)条件の悪い場所にあって生育が遅れている植物の栽培容器を、必要に応じて、条件の良い場所に容易に移動させることができる。
【0020】
(d)植物を高温多湿の栽培場で栽培する場合には、作業場所と該栽培場との間に間仕切りを設けることにより、作業者は快適な作業場所で作業を行うことができる。
【0021】
(e)栽培容器の位置が低いため、植物の生育状態を観察するカメラ等の観察手段を容易に配設することができる。したがって、植物の生育状態を離れた場所から容易に観察することができる。
【0022】
(f)栽培容器は水平方向に配設されるため、全植物について平均の温度が確保されると共に、トマト、メロン等の背の高い植物についても、支障なく栽培することができる。
【0023】
[請求項2の発明]
移送手段は環状ベルトとベルト車とを支持するフレームを昇降させる昇降手段を備えているため、一つの支持体上に載置された栽培容器を別の支持体に移す際に、該栽培容器は支持体の各水平軸上を支障なく通過する。
【0024】
[請求項3の発明]
移送手段のフレームは環状チェーンの回転方向に応じて昇降する。すなわち、環状チェーンにおける上側走行部と下側走行部とは相互に反対方向に動くため、環状チェーンを一つの方向に回転させたときには、環状チェーンにおける上側走行部に軸着された前記一方のアームの他端と、環状チェーンにおける下側走行部に軸着された前記他方のアームの他端との間隔が小さくなる結果、各アームは勾配が大きくなり、上方に迫り上がって移送手段のフレームを上昇させる(図8の鎖線参照)。また、該環状チェーンを反対の方向に回転させたときには、環状チェーンにおける上側走行部に軸着された前記一方のアームの他端と、環状チェーンにおける下側走行部に軸着された前記他方のアームの他端との間隔が大きくなる結果、各アームは勾配が小さくなり、移送手段のフレームを下降させる(図8の実線参照)。
【0025】
以上の如く、昇降手段は構成が簡単であり、製造コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、本発明による植物栽培装置の一例を示す平面図である。
【図2】図2は、水平軸の断面図である。
【図3】図3は、栽培容器と植物とを示す正面図である。
【図4】図4は、車輪対と水平軸とを示す正面図である。
【図5】図5は、車輪対の底面図である。
【図6】図6は、車輪の側面図である。
【図7】図7は、移送手段の正面図である。
【図8】図8は、昇降手段の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
符号1に示すものは、栽培容器3の支持体である。栽培容器3により植物5が栽培される。
【0028】
支持体1は、相互に平行な二本の水平軸7、7を回転自在かつ進退不能に配設すると共に各水平軸7を駆動手段9により同一方向に回転させるようにしてなるものである。支持体1は少なくとも二つ(1a、1b)配設する。
【0029】
水平軸7は、好ましくは金属製のパイプである。水平軸7を回転させる駆動手段9としては、例えば電気モータが使用される。図1に示す事例においては、駆動手段(電気モータ)9の回転は、歯車群11を介して一方の水平軸7に伝えられ、更に環状チェーン13を介して他方の水平軸7に伝えられる。符号15に示すものは水平軸7の軸受、符号17は水平軸7を支承する支承車輪、符号19は支承車輪17の基台である(図2参照)。
【0030】
各支持体1には複数の栽培容器3、3・・・を載置する。栽培容器3は、一例として、上端を開口した箱状体とする。
【0031】
各栽培容器3は各水平軸7に対応する車輪対21を下端に備え、該車輪対21は回転する水平軸7に接して該水平軸7と共に回転する二つの車輪23、25を備えている。栽培容器3は、好ましくは、各水平軸7ごとに少なくとも二つの車輪対21を備えている。
【0032】
車輪対21における二つの車輪23、25は、水平軸7の回転方向に応じて該水平軸7の長さ方向に栽培容器3を進退させるように、該車輪23、25の回転軸線23a、25aが該水平軸7の長さ方向に対して相互に異なる方向に傾斜している。すなわち、進退不能の水平軸7が回転することにより、車輪23、25が、該水平軸7の表面に接触した状態で回転しつつ、該水平軸7の表面に対し相対的に螺旋状に動ように、該車輪23、25の回転軸線23a、25aが該水平軸7の長さ方向に対して相互に異なる方向に傾斜しているのである。車輪23、25は、いわば、進退不能の雄ねじ棒たる水平軸7に螺合する雌ねじ(ナット)の如きものである。
【0033】
車輪対21における各車輪23、25は、平らな外周面を備えた金属製の車輪でもよいが、一例として、図6に示すように、外周面23b、25bを膨出させた合成樹脂又はゴム製の車輪でもよい。
【0034】
車輪対21は、車輪支持手段27に支持されている。車輪支持手段27は、中央部29aを栽培容器3の底面3aに固定し、両端部29b、29cを下方に折曲してなる車輪支持板29における該両端部29b、29cの下面にそれぞれ一対の車輪挟持板31a、31b(33a、33b)を立設し、該車輪挟持板31a、31b(33a、33b)間に車輪23(25)を回転自在に挟持させてなるものである。
【0035】
更に、一つの支持体(前記支持体の一つ)1a上に載置された栽培容器3を別の支持体1bに移すための移送手段41を備えさせる。
【0036】
移送手段41は、フレーム43に一対のベルト車45、45を取り付け、該ベルト車45、45間に環状ベルト47を巻きかけ、一方のベルト車45を駆動手段49に関連させ、環状ベルト47とベルト車45、45とを支持する該フレーム43を昇降させる昇降手段50を備えさせてなるものである。環状ベルト47は一本でもよいが、図示の如く複数本巻き掛けてもよい。
【0037】
図7に示す事例においては、フレーム43にはベルト車45、45間に多数の支承ローラー51、51・・・が取り付けられている。これらの支承ローラー51、51・・・は、環状ベルト47における上側走行部47aを支承するものである。
【0038】
図7に示す事例においては、駆動手段49として電気モータ53が使用され、該電気モータ53の回転はチェーン等の伝動手段55を介して一方のベルト車45に伝えられる。
【0039】
図1に示す事例においては、移送手段41は、一方の支持体1aの各端における水平軸7と水平軸7との間に1個ずつ、他方の支持体1bの各端における水平軸7と水平軸7との間に1個ずつ、更に、支持体1a、1bの各端において一方の支持体1aと他方の支持体1bとの間に1個ずつ、それぞれ配設されている。
【0040】
フレーム43を昇降させる昇降手段50は、該フレーム43の各側傍には駆動手段57により回転する環状チェーン59を該フレーム43と平行に配設し、該フレーム43の外面には一対のアーム61、63の一端61a、63aをそれぞれ軸着し、一方のアーム61の他端61bを該環状チェーン59における上側走行部59aに軸着し、他方のアーム63の他端63bを該環状チェーン59における下側走行部59bに軸着し、該環状チェーン59の回転方向に応じて該フレーム43が昇降するようにしてなるものである。図1、図8参照。
【0041】
図1、図8に示す事例においては、環状チェーン59は3個の移送手段41に共用されている。環状チェーン59は、両端のスプロケット65、67間に巻き掛けられ、駆動手段57としての電気モータの回転はチェーン等の伝動手段を介して一方のスプロケット65に伝えられる。スプロケット65、67は、それぞれ水平の回転軸69、71に取り付けられている。なお、図8における符号73に示すものは、フレーム43が載置されている基台である。
【符号の説明】
【0042】
1 支持体
1a 支持体
1b 支持体
3 栽培容器
5 植物
7 水平軸
9 駆動手段
11 歯車群
13 環状チェーン
15 軸受
17 支承車輪
19 基台
21 車輪対
23 車輪
23a 回転軸線
23b 外周面
25 車輪
25a 回転軸線
25b 外周面
27 車輪支持手段
29 車輪支持板
29a 中央部
29b 端部
29c 端部
31a 車輪挟持板
31b 車輪挟持板
33a 車輪挟持板
33b 車輪挟持板
41 移送手段
43 フレーム
45 ベルト車
47 環状ベルト
47a 上側走行部
49 駆動手段
50 昇降手段
51 支承ローラー
53 電気モータ
55 伝動手段
57 駆動手段
59 環状チェーン
59a 上側走行部
59b 下側走行部
61 アーム
61a 一端
61b 他端
63 アーム
63a 一端
63b 他端
65 スプロケット
67 スプロケット
69 回転軸
71 回転軸
73 基台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に平行な二本の水平軸を回転自在かつ進退不能に配設すると共に各水平軸を駆動手段により同一方向に回転させるようにしてなる支持体を少なくとも二つ配設し、
各支持体には複数の栽培容器を載置し、各栽培容器は各水平軸に対応する車輪対を下端に備え、該車輪対は回転する水平軸に接して該水平軸と共に回転する二つの車輪を備え、
該車輪対における当該二つの車輪は、各水平軸の回転方向に応じて該水平軸の長さ方向に該栽培容器を進退させるように、該車輪の回転軸線が該水平軸の長さ方向に対して相互に異なる方向に傾斜し、
更に、一つの支持体上に載置された栽培容器を別の支持体に移すための移送手段を備えていることを特徴とする植物栽培装置。
【請求項2】
前記移送手段は、フレームに一対のベルト車を取り付け、該ベルト車間に環状ベルトを巻きかけ、一方のベルト車を駆動手段に関連させ、該フレームを昇降させる昇降手段を備えさせてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
前記昇降手段は、前記フレームの各側傍には駆動手段により回転する環状チェーンを該フレームと平行に配設し、該フレームの外面には一対のアームの一端をそれぞれ軸着し、一方のアームの他端を該環状チェーンにおける上側走行部に軸着し、他方のアームの他端を該環状チェーンにおける下側走行部に軸着し、該環状チェーンの回転方向に応じて該フレームが昇降するようにしてなるものであることを特徴とする請求項2に記載の植物栽培装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate