説明

植物灰化物抽出液からのヨウ素分離方法及びそれによって得られるヨウ素を低減させた植物灰化物抽出液の製造方法。

【課題】
海草を含む植物を灰化させた灰から抽出した水溶液には海草由来のヨウ素が多量に含まれる。海草を含む植物灰化物抽出液はミネラルが豊富なため体質改善などの目的で利用されることがあるが、毎日摂取するためには多量に含まれるヨウ素を低減しなくてはならないという課題があった。しかし、酸化還元電位をなるべく小さくしたい事から、添加物や化学物質の添加をせず簡単に短時間でヨウ素を分離する方法が求められていた。
【解決手段】
本発明は、植物灰化物抽出液中のミネラルの減少を防ぎながら酸化還元電位を上昇させずに数時間でヨウ素を分離する方法である。水溶液と樹脂を攪拌する方法と樹脂量を水溶液に対して多く添加する方法、及び、樹脂を2段階に分けて添加する方法の3つを併用することにより、植物灰化物抽出液溶液中のヨウ素105ppmを3時間から4時間で5.5ppmにする事が可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はすでに市販されている植物灰化物抽出液に含まれるヨウ素を低減し、毎日の摂取によるヨウ素の過剰摂取による障害を低減するために、ヨウ素を低減した植物灰化物抽出液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物灰化物抽出液は市場に出回っており体調の改善に効果があるが、ヨウ素を多く含むため毎日の摂取量を控えられてきた。また、灰化物からの抽出水であるため共存イオンが大量に存在することから短時間でのヨウ素分離は難しいとされてきた。
【0003】
従来において、植物を灰化した灰からの抽出水溶液中からヨウ素を分離する方法はないが、ヨウ素が存在する水溶液中から陰イオン交換樹脂によりヨウ素を分離する技術は以前から行われてきた。
【特許文献1】特開2008−272602 「ヨウ素イオンの分離方法」 イオン交換膜によるヨウ素分離。
【特許文献2】特開2005−314158 「無機ヨウ化物の回収方法」 溶媒抽出によるヨウ素分離。
【特許文献3】特開2002−201006 「ヨウ素の回収方法」 水溶液に塩素ガスを反応させ析出させる方法。
【特許文献4】特開平6−199501 「ヨウ素及び/又はヨウ化物を含有している組成物からのヨウ素回収方法」 ヨウ素を還元してヨウ化物に変換し、ヨウ化物を水溶液から、ヨウ化物を選択的に吸収するアニオン交換体で分離。
【特許文献5】国際出願番号 PCT/JP2001/010890 「水溶液中のヨウ素イオンの選択分離方法、およびヨウ素アルカリ塩の製造方法」 電気透析法によりヨウ素イオンを選択的に分離。
【0004】
上記特許文献1〜3及び5は、イオン交換体を用いる方法ではない。特許文献4の特開平6−199501では、アニオン交換体を利用をしているが、吸着するpHの領域が6〜8であり、水溶液中のヨウ素が高濃度である。また、その高濃度のヨウ素を分離して利用することを目的としている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
植物の灰化物からの抽出水には陸上植物に加え海中植物である海草を含んだものを灰化しているためヨウ素を多く含み、当該抽出水の原液を3%に薄めたものでも100ppm程度のヨウ素が含まれる。ヨウ素は、人間の体に必要なものであるが、過剰に摂取した場合甲状腺障害の一因となる事もあり、甲状腺障害患者は摂取を控えるよう医者から指導されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、植物灰化物抽出液中のミネラルの減少を防ぎながら酸化還元電位を上昇させずに短時間でヨウ素を分離する方法である。また、本発明によって得られた植物灰化物抽出液はヨウ素を低減しているため毎日摂取してもヨウ素の過剰摂取にはならないという効果がある。
【0007】
本発明で使用されるイオン交換樹脂は陰イオン交換樹脂とし、陰イオン交換樹脂はCl型にして添加する。
【0008】
また、添加する資材はイオン交換樹脂だけであり、その他の資材は一切添加しない。
【0009】
樹脂を添加後水溶液と同時に攪拌することで、水溶液中のヨウ素イオンと陰イオン交換樹脂の接触機会が多くなり吸着効率が上昇し短時間でヨウ素イオンの濃度が低下する。
【0010】
添加する陰イオン交換樹脂の量を多くする事でヨウ素の吸着効率が上昇し、樹脂を2段階に分けて添加することにより、ヨウ素が低濃度になった場合にヨウ素吸着時間を早める効果がある。
【発明の効果】
【0011】
水溶液と樹脂を攪拌する方法と樹脂量を5%から50%と多く添加する方法、及び、樹脂を2段階に分けて添加する方法の3つを併用することにより、植物灰化物抽出液溶液中のヨウ素105ppmを3時間から4時間で5.5ppmにする事が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
処理温度は常温とし、樹脂量は好ましくは10%から20%であり、樹脂は2段階に分けて投入攪拌するものとする。
【実施例】
【0013】
ヨウ素を105ppm含む植物灰化物抽出液10Lをステンレス容器に入れ、ピュロライトインターナショナル製強塩基性アニオン交換樹脂を抽出液に対して5%加え、攪拌機(東京理化機器 ハイスターラーHI−15)に撹拌翼を取り付けて水溶液と一緒に2時間攪拌した。
【0014】
その後、ろ布にて樹脂を全量分離した後、残りの樹脂を加え攪拌機によりさらに2時間攪拌した。その後、樹脂をろ布で全量分離し、フィルターで細かい粒子を分離した。
【0015】
樹脂を分離した水溶液の一部を取り出し公定法にて前処理した後、オプティマ製吸光光度計にてヨウ素を測定したところ、105ppmあったヨウ素が、3時間後で5.5ppmまで減少していた。その後4時間後まで攪拌したがヨウ素の量は変わらなかった。
【0016】
こうして得られた植物灰化物抽出液は、ヨウ素を分離する前と比較して、酸化還元電位、pH、濃度共に大きく変化しない。これは、短時間でヨウ素を吸着させることにより、反応時間が短くなり、各数値が変動しにくくなったと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を灰化した灰から水によって抽出したpH9〜12の水溶液に、陰イオン交換樹脂を容積比で5%〜50%添加後水溶液と一緒に樹脂を攪拌させヨウ素を低減させる方法、及び、ヨウ素を低減させた植物灰化物抽出液の製造方法。
【請求項2】
使用する陰イオン交換樹脂はCl型として使用する請求項1の方法。
【請求項3】
投入する樹脂を半分に分けて、一回目投入後2時間攪拌し一度樹脂を分離した後、残り半分を添加後1時間から2時間攪拌しヨウ素を10ppm以下にする請求項1の方法。

【公開番号】特開2013−32243(P2013−32243A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168907(P2011−168907)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(300065604)環境創研株式会社 (4)
【出願人】(399000568)ライフメイト株式会社 (1)