説明

植物生育・育成データ集積法とその処理装置

【課題】従来の植物名特定目的や植物同定を目的とする植物データの提供方法では、庭園やコンテナ植栽のデザイン分野に於いての利用、用途への適応が不可能である。
【解決手段】植物によるデザイン構成の実施実証確認を初期設定デザイン時に時系列的にシミュレーション可能として、初期設定デザイン構成に選定される植物の構成確認や適正度、更にデザイン構成実現のための必須要素や欠損要素の選出を実現する植物データ集積法とその処理装置の提供を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガーデンデザインや庭園、ハンギングバスケット・コンテナ植栽、ショウガーデン等の初期設定デザイン構成に選定された植物による実施実証確認と、設定構成を完成するための適性植物の選出から維持・管理に関する分野に於いて、其々の設定デザインに選定された植物の実施生育形態や育成状況を時系列的にシミュレーション可能として、実施施工対象地での初期設定デザイン構成確認や完成度の確認と設定構成実現のための要素や手段を選出して初期設定デザイン設計と維持・管理を実現することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物の図鑑や写真など、植物に関するデータベースが様々に提供されているが、これらは植物名や植物同定目的の提供に留まっている。
【0003】
植物名の特定或いは植物同定のためのデータベースは、その植物を特定するための特徴的な部分の限定された時期のみのデータ集積に留まるために、植物の開花期の花の写真や樹木や植物の種や品種によってはその植物の特徴的な一部分のデータであるために、庭園やコンテナ植栽のデザインの実現を目的とした用途には適応不可能であるのが現状である。
【特許文献1】特開2004−29941
【特許文献2】特開2007−133816
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在提供されている植物データは、個々が公園や風景の中で見た花や樹木などの植物名特定や植物同定を目的とする提供がほとんどであり、その提供データは、植物の生育過程の中の限られた特徴的な一部分や特定時期の画像に留まっているために、植物の生育や育成過程に於ける形態変化や状態変化の確認が不可能である。
【0005】
植物の生育過程に於ける特徴的な一部分は、植物名特定や植物同定目的を達成するには十分な要素である。しかし、庭園やガーデニング、ハンギングバスケットやコンテナ植栽、ショウガーデンのデザインの分野に於いては、その植物の生育、育成過程に於ける時系列的な形状・形態変化の把握と、実施施工対象地での植物育成の適性化等の把握が重要である。実施デザイン構成完成のための条件や維持・管理条件によっては、適性植物の選定と配置、植栽時株間からデザイン維持のための植物の入れ替え時期とその代替植物の把握と手配や準備等、初期設定時に於ける設計と維持・管理計画が必須となる。これらを実現するために、初期設定デザインの選定植物による時系列的な形状・形態変化と実施施工地での生育条件等を複合的に評価して、適応可能な要素や手段の選出と提供を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題解決のための手段として、デザイン構成の実施実証確認を初期設定デザイン時に時系列的にシミュレーション可能とする植物データ集積法とその処理装置の提供を実現する。
これにより、初期設定デザイン構成に選定される植物の構成確認や適性度、更にデザイン構成実現のための必須要素や欠損要素の選出を実現する。本発明の植物データ集積法は、植物生育・育成データ集積法であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
現状の植物データは、植物を特定するための特徴的な時期や特定部位のみの切り取りの情報提供に留まる。また特徴的な画像が何時、何処でどのように撮られたかの情報が少ないために、植物を用いた従来のバーチャルガーデニングでは、限定された時期や季節や特徴的な部位のみを集めた構成に留まり、実施施工対象地での自然環境や育成条件、施工実施の季節、時期では実現し得ない植物選定やデザイン構成となるケースが多いのが現状である。庭園やコンテナ植栽、ガーデニングは、四季を通して継続されて維持・管理していくものであり、如何なる季節や期間、場所でも適応可能な提供であることが望まれる。本発明によれば、設定条件は季節や期間、時間、地域、場所に制約されることなくあらゆる条件にも適応可能である。
【0008】
庭園やコンテナ植栽に要求される条件を満たし、選定された要素による時系列的なシミュレーションを実現するために、本発明の植物生育・育成データ集積法は、植物の生育環境、育成条件から独自に分類した地域毎に、庭園やコンテナ植栽に用いられる植物を科や属や種の中から同一品種を同一育成条件によって其々の生育パターンを育成管理しながら時系列に定点観測したデータ集積を、植物生育・育成データ集積法が定義する植物の生理生態と生育環境、育成条件、気候因子、気象要素によって分析して相対評価した集合である特徴により、実施施工対象地での植物生育形態や育成状況の実施実証からデザイン構成を実現するための必須要素及び欠損要素の選出を可能としてその代替要素や代替手段の選出を実現する。そして更に其々の要素を時系列的にシミュレーション可能とする効果を実現する。
【0009】
植物生育・育成データ集積法とその処理装置により、実施施工対象地に於ける庭園やコンテナ植栽の初期設定デザインに選定、配置される実施デザイン構成形態や完成度の確認から、適性植物の選出・選定や選出・選定植物の開花期、開花期間、色彩、ボリューム、形態変化、入れ替え時期の予測、置き換え植物の選出、植栽時適性株間や株張り状況の選出を実現する。更に初期設定デザイン構成を実現するための必須要素や欠損要素の選出とその代替要素や代替手段の選出を実現して、更に実証確認を時系列的にシミュレーション可能とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施例に基づき説明する。説明に当たって用いるデザインや選定植物は、本発明を説明するに当たって用いるものであり、デザイン、選定植物、形状・形態、必須要素等は庭園やコンテナ植栽、ショウガーデン等の目的に応じて適応可能であるものとする。また、地域差による生育形態図は、基準地とそれを比較するために暖かい地域と寒い地域として説明したものである。
【0011】
図1は、本発明の実施形態の説明に用いるガーデンデザインを図示したものである。
【0012】
1から6の植物の配置によりデザインが構成される。高さのある植物1を背面に配置し、中間の高さの植物2の配置により奥行きを確保。3の株張りの大きい植物の配置によって厚みを表現する。4から6は地被植物を根締めに用いて厚みの中に柔らかいラインと彩り、沿路とガーデンの境目を消し、一体感を得るデザイン表現の実施例である。
【0013】
図1は関東圏を基準としたデザイン構成と完成図であり、図2は図1の1から6の植物配置を実施形態の説明のために其々を一つのまとまりとして現した図である。
【0014】
図3は図2のデザインを同じ選定植物で配置した場合の基準地より暖かい地域での施工実施実証図(上の図)と寒い地域での施工実施実証図(下の図)を現す図で、其々の施工対象地に於いて完成される植物形状・形態を植物生育・育成データ集積法とその処理装置が時系列的にシミュレーションした図である。植物の生育条件と育成環境、気候因子、気象要素の違いによって図2のデザイン構成と配置が図3のデザイン構成に其々形態変化して現れることを実施実証した図である。施工実施実証は、実施施工対象地の設定により、対象地に適応する結果を得ることを特徴とする。
【0015】
図4は、植物生育・育成データ集積法とその処理装置によって施工対象地の初期設定デザインに既に設定された植物が、実施実証シミュレーションに於いて適性構成、適性生育・育成条件外と判定された場合である図3の選定植物構成を、図2のデザイン構成実現のために適性条件の欠損要素及び不適性要素を選出して更に代替要素、代替手段、置き換え要素、置き換え手段を選出する特徴によって、実施施工対象地での初期設定デザイン構成の実現を実現可能とした図である。
【0016】
図4の暖かい地域での施工実施実証図(上の図)の構成完成のために提供される植物は、1を7に、2を8に、3を9に、5を10に置き換えることで図2のデザイン構成を完成することを示し適性植物の選出・選定を実現する。寒い地域での施工実施実証図(下の図)の構成完成のために提供される植物は3を9の適性植物に置き換えることを示し、更に図2で既に選定されている植物が其々の条件に於いて適応可能であることを確認している図である。
【0017】
図5は図2の基準地での設定デザイン構成を実現するための植栽時株間と株張り予測から、植栽時の適性株間を選定して配置したことを現す図である。
【0018】
図6は図4のデザイン構成実現のための図5の基準地での植物配置を、暖かい地域(上の図)と寒い地域(下の図)に於いて其々適応するように施工実施実証図に配置したことを示す図である。
【0019】
図7は、植物の生育・育成実証の時系列的シミュレーションを可能とする処理装置の全体構成を示す。
【0020】
11は、シミュレーションを実施するための初期設定データを入力するための装置である。12は、入力装置11から入力された後、記憶装置に格納される時系列的シミュレーションを実施するための初期設定データである。13は、植物生育・育成データ集積法により配置されたデータである。14は、入力データ12と、植物生育・育成データ13を参照し、植物の生育・育成実証の時系列的変化を判定する装置である。15は、判定装置14で得られた結果を出力するための装置である。
【0021】
図8は、実施実証シミュレーションにおいて適性構成、適性生育・育成条件外と判定する場合の処理の流れを示す。
【0022】
11に16の実施実証シミュレーションを行うための各種条件に対する初期値を設定する。12は、16で入力された後、記憶装置に格納される時系列的シミュレーションを実施するための初期設定データである。13は、植物生育・育成データ集積法により配置されたデータである。17は、初期設定データ12、植物生育・育成データ13を参照し、時間の経過とともに変化する初期設定データ12の各値の変化量を判定する。18は、17で得られた値の変化を植物の生育形態の変化、育成状況の変化として15を使って表示する。18から17への遷移は、時間の経過とともに17の判定処理を繰り返し行うための遷移である。19は、17で得られた値の変化を基に初期設定データ12が適性構成、適性生育・育成条件であるか判定する。20は、19の判定処理において、初期設定データ12が適性構成、適性生育・育成条件外であると判定された要素を適性条件の欠損要素および不適性要素として提示する。21は、20で提示した要素に対する代替要素、代替手段、置き換え要素、置き換え手段を15によって提示する。22は、21の要素、手段を初期設定データ12に反映する。22から17への遷移は、生育形態・育成状況表示18を行うための遷移である。
【0023】
図9は、実施実証シミュレーションにおいて学習機能へ応用する場合の処理の流れを示す。
【0024】
11に23の実施実証シミュレーションを行うための各種条件に対する初期値を設定する。12は、23で入力された後、記憶装置に格納される時系列的シミュレーションを実施するための初期設定データである。13は、植物生育・育成データ集積法により配置されたデータである。24は、生育形態・育成状況の変化に影響を与える条件として、剪定法や栽培法、接木作業、施肥作業等を設定し、条件として設定された要素の値を初期設定データ12に反映する。25は、初期設定データ12、植物生育・育成データ13を参照し、時間の経過とともに変化する初期設定データ12の各値の変化量を判定する。26は、24で得られた値の変化を植物の生育形態の変化、育成状況の変化として表示する。26から24への遷移は、時間の経過とともに24の判定処理を繰り返し行うための遷移である。
【0025】
図9によれば、初期設定デザインの構成を維持・管理する過程に於いて必要となる剪定や施肥、灌水状況、球根の植え付け位置や深さ、追加植物、入れ替え植物やその時期等に関して、事前シミュレーションによって問題点や状況把握、作業計画設計のためのツールや学習機能として有用であり、また単独使用では、例えば剪定など事前に個々が必要とする様々な作業に関する学習用としての提供が可能である特徴をもつ。
【産業上の利用可能性】
【0026】
植物の実施生育形態や育成状況の実証確認を、時系列的にシミュレーション可能とした植物生育・育成データ集積法とその処理装置の提供により、今まで実現不可能であった植物の生育・育成実証の時系列的なシミュレーションを実現した。また植物を用いたデザイン分野に於いて、初期設定デザイン構成に選定、配置される実施デザイン構成形態や完成度確認の実現と、デザイン構成に於ける適性植物の選定、選定植物の開花期、開花期間、ボリューム、形態変化、入れ替え時期の予測、置き換え植物の選出、植栽時株間、株張りの選出を実現する特徴により、庭園やコンテナ植栽、ショウガーデンの現場でのデザインの設計から維持・管理のツール用として、また植栽時の株間と株張りの予測により、広域で長期にわたるデザイン構成と維持・管理の実現を可能とする。このように、植物の生育・育成データ集積法が定義する要素によって、更に幅広い用途と地域格差の対応を可能とする。また、設定条件を変えることによって、ガーデニングや庭作りから単一植物の育て方、剪定法、接木や挿し木等の作業、盆栽の仕立て方、肥料作業から栽培法に至る学習機能への応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】基準地に於ける基準デザイン構成図である。
【図2】図1を構成ごとの集まりとして現した図である。
【図3】図2を暖地と寒冷地で実証した図である。
【図4】図2の構成を実現するための置き換え図である。
【図5】図2の株間による配置図である。
【図6】図4を完成する配置図である。
【図7】植物の生育・育成実証の時系列的シミュレーションを可能とする処理装置の全体構成図である。
【図8】実施実証シミュレーションにおいて適性構成、適性生育・育成条件外と判定する場合の処理の流れを示す図である。
【図9】実施実証シミュレーションにおいて学習機能へ応用する場合の処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1〜 6、 デザイン構成の植物
7〜10、 デザイン構成の置き換え植物
11〜15、 植物の生育・育成実証の時系列的シミュレーションを可能とする処
理装置の全体構成
16〜21、 適性構成、適性生育・育成条件外と判定された場合の処理の流れ
22〜24、 学習機能へ応用する場合の処理の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の実施生育形態や育成状況の実証確認を時系列的にシミュレーション可能とする植物生育・育成データ集積法とその処理装置の提供により、実施施工対象地に於ける庭園やコンテナ植栽の初期設定デザインに選定、配置される実施デザイン構成形態や完成度確認と適性植物の選出、選出・選定植物の開花期、開花期間、色彩、ボリューム、形態変化、入れ替え時期の予測、置き換え植物選出、植栽時株間、株張り及び初期設定デザイン構成を実現するための必須要素及び欠損要素の選出を可能として、更に代替要素や代替手段の選出を可能とし前記要素の実証確認を時系列的にシミュレーション可能とする植物生育・育成データ集積法とその処理装置。
【請求項2】
前記記載の植物生育・育成データ集積法とその装置は、植物の生育環境・育成条件から分類した地域毎に、庭園やコンテナ植栽のデザインに用いられる植物の科や属や種の中から同一品種を同一育成条件下で其々の生育パターンを育成管理・時系列に定点観測した集積データをデータ集積法が定義する生理生態と生育環境、育成条件、気候因子、気象要素によって分析し相対評価した集合であることを特徴とする。
【請求項3】
植物生育・育成データ集積法とその処理装置によれば、施工対象地の初期設定デザインに既に選定された植物が、実施実証シミュレーションに於いて適性構成、適性生育・育成条件外と判定された場合、実現しようとするデザイン構成に適応する適性条件の欠損要素及び不適性要素を選出し、更にその代替要素、代替手段、置き換え要素、置き換え手段を選出して施工対象地の初期設定デザイン構成を実現可能とする特徴をもつ。
【請求項4】
庭園やコンテナ植栽の実施施工対象地に於ける初期設定デザイン構成を完成する適性植物の選出・選定は、植物生育・育成データ集積法とその処理装置に施工対象地、設定デザイン構成要素を与えることで、実施施工対象地に於ける初期設定デザイン構成に適応する植物の選出・選定を実現し、更にその選出・選定植物による時系列的シミュレーションによって実施実証確認を実現する特徴をもつ。
【請求項5】
植物生育・育成データ集積法とその処理装置によれば、設定された庭園やコンテナ植栽のデザインに於いて、その生育形態、育成状況、デザイン構成の形態変化の確認は季節、時期、地域、場所に制約される事無くシミュレーションを可能とし、庭園やコンテナ植栽に於ける時系列的なデザイン構成・形態変化の確認、維持・管理のツールとしての機能を提供する特徴をもつ。
【請求項6】
請求項2の植物生育・育成データ集積法とその処理装置によれば、様々な設定条件に対応する時系列的なシミュレーションを実現する特徴をもち、例えば設定条件を剪定法や栽培法、接木作業、施肥作業として、その実施実証確認と其々の学習機能への応用が可能となる特徴をもつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−22283(P2010−22283A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187937(P2008−187937)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(592200903)株式会社アイ・アンド・プラス (17)