説明

植物生育装置

トラックアセンブリ(7,8,9,10)と、トラックアセンブリ(7,8,9,10)に沿って移動可能なようにトラックアセンブリに設置される複数の支持アセンブリ(5,6)とを備え、各支持アセンブリは、1つ以上の植物(10)用の容器を備え、容器は装置から取外し可能である、植物(10)の栽培のための装置(6)が提供される。このような装置(6)を備える、ガラスハウスなどの生育ルーム(2)も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスハウスなどの制御された環境内で植物を耕作することを含む、植物を生育させるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスハウスなどの中で多種多様な植物を栽培および生育させることが周知である。ガラスハウス内の環境、特に温度および湿度は、植物の健やかな生育に最も好ましいように制御され得る。このような配列は、食用作物、花などを含む植物を商業的に生産するために用いられる。さらに、このようなガラスハウスは、多様な植物の発芽および強化のために、植物が、典型的には屋外である別のところに移植される前に用いられる。
【0003】
特にガラスハウスで問題なのは、生育されている植物により占められるガラスハウス内の空間の部分が、非常に低い部分のみであるため、ガラスハウス内の空間が非効率的にしか用いられないことである。さらに、養分および水を植物に与えるための高度なシステムがしばしば使用されるが、それらは一般的に非効率的であり、結果的にかなりの量の養分および水が無駄になってしまう。
【0004】
上述の問題を解決するための1つの手法が、US6,173,529に開示されている。この特許には、植物生育ルームが記載されており、閉じたループ状トラックが床の上方に吊り下げられて、ルーム全体にわたって延びる。複数のラックがトラックに沿って移動可能であり、各ラックは、植物を支持および生育するための複数の生育シートを支持するためのフレームを有する。生育シートは透光性材料からなり、生育シートに固着された長尺の膜により形成される複数の生育セルが設けられる。生育セルは、気体透過性、液体不透過性、かつ透光性である。
【0005】
使用の際、植物は生育セルと共に配置される。ラックは、トラックに沿って生育ルームを通って動かされる。トラックは、生育ルームを通って延びる蛇行配列である。US6,173,529に記載される生育ルームには、生育する植物材料が生育ルームを通って動かされる際に、植物材料に噴霧するためにトラックに沿って一定の間隔で設けられる噴霧器が設けられている。噴霧器には、肥料、殺菌剤、殺虫剤などのような成分を含有し得る溶液が設けられる。トラックおよびラックは、利用可能な空間が最大限に活用されるように生育ルーム中に配列され、好ましい配列においては、トラックの隣接する部分上のラックは、数インチの距離だけ互いから離されている。作業者が個々の生育セルにアクセスできるように、トラックにはねじ留めセクションを有する部分が設けられている。ねじ留めセクションは、ラックがトラックに沿って近づくと、ラックにより係合される。ねじ留めセクションは、隣接するラックがねじ山に沿って通るにつれて、それらの間の空間を広げるように配列され、作業者が生育セルにアクセスできるようにする。
【0006】
特に、ガラスハウスまたは他の生育ルーム内の、植物の耕作および生育のための改良されたシステムが必要とされる。システムは、作業者が植物の世話をする能力を高めつつ、ガラスハウスまたは生育ルーム内の空間を最大限に活用することができれば有利であろう。さらに、システムは、植物に与える必要がある水および養分を効率的に使用し、特に両方の無駄を最小限にできれば、有利であろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の局面において、本発明は、
トラックアセンブリと、
トラックアセンブリに沿って移動可能なようにトラックアセンブリに設置される複数の支持アセンブリとを備え、
各支持アセンブリは、1つ以上の植物用の容器を備え、容器は装置から取外し可能である、植物の栽培のための装置を提供する。
【0008】
本発明の装置は、容器中に保持された植物を任意の好適なところで栽培するために使用されてもよい。装置は、ガラスハウス、温室など、その中で植物が栽培され、繁殖され、生育される任意のルームまたは施設である、生育ルーム内での使用に特に好適である。
【0009】
トラックは、支持アセンブリがトラックの周りを動いて循環し得るように、閉じたトラックであることが最も好ましい。このように、植物は、トラックに沿って動かされ、光強度、温度、湿度などの異なる範囲の条件に晒されてもよい。ルーム内の条件は位置により異なるため、このことは、生育ルーム内で装置が使用される際に特に重要である。このような場合、生育ルーム内の固定された位置での植物の生育は、ルーム内の植物の特定のところで支配的な条件によって異なる。このことは、ガラスハウスなどの生育ルーム内でかなり異なり得る光強度について特に当てはまる。植物をトラックに沿って生育ルームを通って動かすことにより、すべての植物が同じ範囲の条件に晒され、支配的な条件下で同等によく育つ。
【0010】
トラックは、任意の好適なパターンに延びればよい。一実施形態においては、トラックは、単純な円形または楕円形のループの形態である。しかし、トラックは、空間を最大限に活用するために、装置が使用される空間を通って延びることが好ましい。したがって、トラックは、利用可能な空間内での植物の最大数を可能にする任意の好適なパターンを有してもよい。トラックの1つの好ましいパターンは、複数の実質的に直線のトラック部を備え、それらが各端で曲線部により隣接するトラック部に連結されるパターンである。トラックの特に好ましいパターンは、蛇行パターンである。他の好適なトラックパターンが当業者には明らかであろう。
【0011】
本発明の装置は、トラックに沿って移動可能なようにトラックに連結される複数の支持アセンブリをさらに備える。支持アセンブリとトラックとの間の連結は、任意の好適な連結の形態であればよい。たとえば、支持アセンブリを支持し、トラックに沿って走行するために可動台が設けられてもよく、1つの可動台は、1つ以上の支持アセンブリを載せてもよい。好ましい実施形態においては、トラックは、複数のリンクを有する鎖と、鎖を収納し支持するためのガイドとを備える。支持アセンブリは鎖中のリンクに連結され、鎖は、好適な駆動システムによりトラックに沿って動かされる。各支持アセンブリは、鎖中の単一のリンクに連結され、かつそれにより支持されてもよい。より好ましくは、各支持アセンブリは、鎖中の複数のリンクに連結され、かつそれらから支持される。1つの好ましい実施形態においては、トラックは、複数のリンクを有する鎖を備え、各リンクには、トラックガイドで支えられるための1つ以上のホイールが設けられる。好ましくは、鎖には、異なる角度の軸を中心に回転可能なホイールが設けられ、これにより、ホイールは、複数の異なる方向から鎖に加わる力に対抗することができる。好ましい配列においては、鎖は、第1の方向に延びる軸を中心に回転可能なホイールを有するリンクと、第1の方向に垂直な第2の方向に延びる軸を中心に回転可能なホイールを有するリンクとを備える。
【0012】
このような鎖アセンブリに好適な駆動システムは、当該技術分野では公知であり、市販されている。
【0013】
支持アセンブリは、以下に、より詳細に説明するように、1つ以上の植物用の容器を支持し載せるために設けられる。支持アセンブリは、載せられる容器の形状、構成および数により決まる任意の好適な形態を有すればよい。1つの好ましい配列においては、支持アセンブリは、各々1つ以上の剛性の、実質的に鉛直に延びるフレーム部材を備え、容器は、好適なブラケットなどによりフレーム部材に取付けられる。支持アセンブリは、トラックから鉛直にぶら下がり、使用される容器の配列および生育される植物の性質に依存して、トラックの縦軸に垂直に、またはトラックの縦軸に平行に、横方向に延びてもよい。
【0014】
植物には、それらが巻きついて上り、支持を与えるための構造を必要とするものもある。支持アセンブリには、好適な支持部材が設けられてもよく、および/または、つる性植物のための支持を与えるための好適な構成であってもよい。
【0015】
既に記載したように、本発明の装置は、植物用の容器をさらに備える。容器は、装置から取外せるように、支持アセンブリに取外し可能に設置されることが好ましい。各支持アセンブリの上には単一の容器または、より典型的には複数の容器が設置されてもよい。単一の容器は、初回の発芽および強化後にかなりの時間装置中に保持される、大きな植物の栽培の場合に使用されてもよい。より大きな植物が生育および成熟できるように必要な高さを設けるためには、容器は、トラックからいくらか距離がある支持アセンブリの下端に設置されて、容器とトラックとの間の隙間に成植物を収容できるようにする。このように、装置は、より永続的な生育所に移植される前に、幼植物を発芽および強化させるために用いられるのみならず、たとえば、野菜、花または果実などの作物を生産するために生育される成熟植物を栽培できるようにも用いられ得る。
【0016】
代替的には、支持アセンブリには複数の植物用の容器が設けられる。容器は、目的の植物の栽培および生育に適切な、任意の好適な形態および形状であればよい。好ましい実施形態においては、容器は、トレー、特に、支持アセンブリにわたって横方向、最も好ましくは、トラックの縦方向に垂直に延びる、細長いトレーの形態である。容器、特にトレーは、たとえば、支持アセンブリから延びる鉛直なブラケットのアレイ上に支持されることにより、支持アセンブリ上に積み重ねられてもよい。1つの配列においては、各支持アセンブリの片側に、容器、特にトレーの単一のスタックが設けられる。代替的な配列においては、各支持アセンブリには、容器の複数のスタックが設けられ、特に、支持アセンブリの2つの対向側の各々に、容器の1つのスタックが設けられる。
【0017】
所与の配列における植物の密集度および、所与の生育ルーム空間に収容され得る植物の数は、トラックに沿った隣接する支持アセンブリおよび容器の間隔により大部分が決まることが分かった。間隔が狭いと、所与の長さのトラック上の支持アセンブリの数が増大する一方で、支持アセンブリがトラック内の曲線の周りを通過する際に、支持アセンブリ、容器および植物の茎葉が互いと接触することを回避するために、トラックの曲線部の曲率半径をより大きくする必要があることが分かった。トラック湾曲部の曲率半径がより大きいと、使用される隣接する支持アセンブリ間の間隔をより小さくできる一方で、トラックの隣接部の間の間隔が広がり、そうすると、装置全体に収容され得る植物の密度が低下してしまう。反対に、トラック上の隣接する支持アセンブリの間の間隔を大きくすると、トラック内の湾曲部でより小さい曲率半径を用いることができ、そうすると、トラックの隣接部を互いに近づけることができる。さらに、容器の長さをトラックの横方向に延ばすと、トラックの湾曲部および曲線における隣接する支持アセンブリの容器の間の接触のおそれが高まる。一般的に、容器の所与の長さについて、支持アセンブリは、トラック内の湾曲部および曲線で支持アセンブリが接触することを回避しつつ、できるだけ互いに近くなるように配列されることが好ましい。支持アセンブリの対向側に、トラックの縦軸に垂直に延びる細長い容器の2つのスタックを有する支持アセンブリを使用すると、利用可能な空間が特に効率的に使用され、植物または装置自体への損傷なしに、高い植物密度を得ることができることが分かった。
【0018】
1つの好ましい配列においては、細長い容器を有する支持アセンブリには、細長い容器よりも小さい、トラックに対して横方向の寸法を有する容器がその上に設置される、支持アセンブリの間に配置される追加的な支持アセンブリが補足される。このように、トラック湾曲部および曲線で容器が互いに接触するおそれを高めることなしに、支持アセンブリの間のトラック上の空間が利用され得る。1つの好ましい実施形態においては、その上に細長い容器を有する支持アセンブリの間には、円形の容器を支持する追加的な支持アセンブリが配置される。
【0019】
容器は装置から取外し可能である。このことは、各支持アセンブリをトラックから取外し可能にすることにより達成され得る。より好ましくは、各容器は、そのそれぞれの支持アセンブリから取外し可能である。容器は、任意の好適な態様で取外し可能であるように設計されればよい。特に好ましい実施形態においては、容器は、トラックの縦軸および、装置の動作中には、支持アセンブリの移動方向に実質的に垂直な方向に、支持アセンブリから横方向に取外されるように配列される。このように、装置にはトラックに隣接する作業場所が設けられ、そこから作業者は、まず容器全体を装置から取外すことにより、必要に応じて植物を取外したり取替えたりして、植物の世話をし得る。このように、装置は、支持アセンブリが絶え間なくトラックに沿って動いている状態で、稼動状態に保たれてもよい。さらに、この配列は、生育セル中の植物の手入れをするために、US6,173,529に記載されるような、隣接する生育シートの間の距離を広げる手段の使用を可能にする。
【0020】
この点において、本発明は、さらなる局面において、
トラックアセンブリと、
各々が1つ以上の植物用の容器を備える、トラックアセンブリに沿って移動可能なようにトラックアセンブリに設置される複数の支持アセンブリと、
トラックに隣接する作業場所とを備え、そこから容器中の植物が手入れされ得、
装置の動作中、支持アセンブリは、トラックアセンブリに沿って継続的に動かされ、トラックアセンブリに沿って隣接する支持アセンブリの間の距離は、動作中一定に保たれる、植物の栽培のための装置を提供する。
【0021】
発明のこの局面の装置の詳細は、以上に説明したとおりである。
上述したように、US6,173,529は、水および/または栄養分を植物に分配するために、トラックに沿って複数の噴霧器が設けられるシステムを開示している。この配列は、その水および栄養分の使用において非効率的である可能性があり、結果的にかなりの無駄が生じ得ることが分かった。本発明の装置には、動作中に支持アセンブリを通過させるトラックに沿って、単一のところに単一の給水および施肥場所が設けられてもよいことがさらに分かった。
【0022】
したがって、さらなる局面においては、本発明は、
トラックアセンブリと、
各支持アセンブリが1つ以上の植物用の容器を備える、トラックアセンブリに沿って移動可能なようにトラックアセンブリに設置される複数の支持アセンブリと、
容器中に保持される植物に水および/または養分を与えるための単一の場所とを備え、
動作中、支持アセンブリは場所を通過させられる、植物の栽培のための装置を提供する。
【0023】
発明のこの局面の装置の詳細は、以上に説明したとおりである。
水および/または施肥場所は、支持アセンブリが場所を通過する際に、容器中の植物に水および/または栄養分を分配するための任意の好適な手段を備えてもよい。1つの配列においては、場所は、栽培されている植物用の1つ以上の栄養分を随意に含有する、水霧を分配するための1つ以上の噴霧器を備える。好適な噴霧器は当該技術分野において公知であり、市販されている。噴霧器は、栽培および生育されている植物の茎葉に直接、水および/または栄養分を分配するような配列のものである。噴霧器を単一の場所に限定することにより、植物に分配される水および栄養分を非常に正確に制御し、かつ、植物から流出する可能性のある過剰な水および栄養分をリサイクルおよび再使用のために容易に回収することが可能である。好ましい実施形態においては、水および/または施肥場所は、容器が場所を通過する際に、分配器から各容器中に直接水を送るためのシステムを備える。水および/または養分の無駄を最小限にするために、場所には、支持アセンブリが場所に入る際に起動される動きセンサが設けられ、動きセンサは、所定容量の水および/または養分を容器に与えるように分配器を作動させる。最も好ましくは、分配器は、各容器がその容器に直接水および/または養分を送る1つ以上の専用の分配放出口を有するように配列される。このように、場所は、水および/または養分が、各容器に、容器が分配器の下にあるときのみ与えられるように配列され得る。このシステムは、その水および養分の使用において特に効率的であり、無駄が最小限となることが分かった。
【0024】
給水および/または施肥場所で回収される水および/または他の液体は、場所での容器中の植物にリサイクルされて再適用されることが好ましい。このように回収されリサイクルされた液体は、たとえば、高濃度の汚染物質の除去、ろ過などのために、沈降タンクに流されることにより、固形物および他の汚染物質を除去するために処理されることが好ましい。さらに、回収された液体は、存在し得る微生物を死滅させるために処理されることが好ましい。このように液体流を処理するための好適な手段は、当該技術分野において公知であり、UVフィルタを含む。
【0025】
上述のように、装置の動作中、植物は、適宜かつ所望に応じて、好適な植物生育培地とともに、容器中に保持される。容器は支持アセンブリに積み込まれ、支持アセンブリはその後、好適な駆動手段によりトラックに沿って動かされる。好ましい実施形態においては、支持アセンブリは、閉じたトラックに沿って単一の方向に継続的に動かされる。支持アセンブリは、単一の給水および/または施肥場所を通過させられ、そこで、必要に応じて、水および/または栄養分が植物に与えられる。さらに、装置には、トラックに隣接する作業場所が設けられ、そこから、容器は、最も好ましくは、それぞれの支持アセンブリから横方向に取外されることにより装置から取外され得、トラックに沿った支持アセンブリの移動を中断することなしに、装置から離れて容器中の植物を手入れすることができる。
【0026】
動作中、支持アセンブリは、生育されている植物の性質および品種、ならびに装置が動作される環境によって部分的に決まる速度でトラックに沿って動かされる。トラックに沿った支持アセンブリの移動の典型的な速度は、0.1から5m/分、好ましくは0.2から2.5m/分、より好ましくは0.4から1.5m/分である。約1m/分の速度は、多くの植物および環境に好適であることが分かった。
【0027】
さらなる局面においては、本発明は、以上に説明したような装置を備える生育ルームを提供する。
【0028】
この点において、「生育ルーム」という用語は、装置が導入され、植物を栽培するように動作され得る、部分的にまたは全体的に囲われた任意の空間を指す。記載したように、生育ルームの例は、温室およびガラスハウスである。生育ルームには、内部の環境を制御するため、特に、温度および湿度を制御するための手段が備えられてもよい。生育ルームには、ガラスハウスの場合のように、自然光が与えられてもよい。代替的には、またはそれに加えて、本発明の装置は、植物が動かされる際に植物に人工光を与えるための手段を備えてもよい。
【0029】
添付の図面を参照して、本発明の実施形態を例示によってのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に従う生育ルームの一実施形態の斜視図である。
【図2】トラックアセンブリのレイアウトを示す図1の生育ルーム内部の平面図である。
【図3】図2のトラックアセンブリの斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に従う装置の斜視図である。
【図5】図4の装置のトラックアセンブリの斜視図である。
【図6】図4の装置に用いられる代替的な支持アセンブリの斜視図である。
【図7】本発明の装置の給水/施肥場所において植物に水および栄養分を与えるためのシステムの概略図である。
【図8】トラックアセンブリおよび図7のシステムの一体化を示す本発明の装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
まず図1を参照して、本発明の装置を収納する本発明の一実施形態の生育ルームが示される。全体的に2で示される生育ルームは、曲線の透明屋根4を有するガラスハウスの形態である。図1に示されるように、全体的に6で示される装置は、ガラスハウス内に配置され、概ね蛇行パターンに延びる、閉じたトラック8を有する。植物10は、トラック8に沿って移動可能な支持アセンブリ(図1では見えない)上に支持される。装置の配列は、ガラスハウスの内部の実質的に全体が植物の茎葉で満たされ、生育ルームが最大限に活用されるような配列である。給水/施肥場所12は、作業場所16とともに、ガラスハウスの一方端14に配置され、それにより、作業者は、ガラスハウス内に生育する植物がトラック8の隣接部分に沿って通過する際に、植物を手入れし得る。
【0032】
図2を参照して、トラック8の全体的なレイアウトを示す、図1のガラスハウスの内部の平面図が示される。図2により明確に示されるように、トラックは概ね蛇行の配列を有し、すなわち、ガラスハウス内で縦方向に、かつ互いに平行に延びる複数の直線部18を有する。隣接する直線部のそれぞれの端は、曲線部20により連結される。さらなる直線部22は、ガラスハウスの端14にわたって横方向に延び、給水/施肥場所12および作業場所16が設けられる。全体的に24で示される複数の支持アセンブリおよび容器は、トラック8の1つの曲線部をうまく通り抜ける(negotiating)ように図2に示される。
【0033】
図2のトラックアセンブリの斜視図が図3に示される。示されるように、トラック8は、複数の柱26および横材28を備える支持構造上に支持される。トラック8は、以下に詳細に説明するように、支持アセンブリが設置される、リンクを有する鎖を備える。モータ30は、鎖が動かされ、かつ支持アセンブリが矢印Aの方向にトラック8に沿って動かされるような駆動力を与える。
【0034】
図1から図3に示されるトラック配列は、本発明の装置とともに使用し得る多数のトラックパターンのほんの一例であることが理解されるべきである。トラックの特定のパターンは、利用可能な空間に収容される植物の数が最大限となるように、装置が動作される空間またはルームに適合するように選ばれればよい。
【0035】
図4を参照して、全体的に102で示される、本発明のさらなる実施形態に従う装置が示される。装置102は、トラック108を支持する複数の鉛直支柱104および横材106を備える。トラック108は、概ね楕円形の構成の閉じたトラックである。トラック108は、図5により詳細に示される、鎖アセンブリ112が延びるトラックガイド110を備える。トラックガイド110は、概ね管状であり、トラック108の経路に沿って延び、かつ横材106から延びるブラケット114により支持される。トラックガイド110は、その全長に沿って下側に延びる縦方向のスロットを有する。鎖アセンブリ112は、複数の鎖リンク120を備え、各リンクは、回転自在で、かつトラックガイド110の内側表面で支えられるホイール122を有することにより、鎖が自由走行することが確実になる。隣接するリンクのホイール122は、互いに対して垂直の軸を中心に回転するように設置され、鎖がトラックガイド110内を動くための自由を低下させる横方向および鉛直方向の力の両方を防止する。ブラケット124は、鎖リンク120、特に水平軸を中心に回転するホイールを有するリンクから下方向に鉛直に延び、トラックガイドのスロットを通って延び、支持アセンブリを鎖アセンブリに取付けるための手段を設ける。図5に示すように、フック126は、支持アセンブリの上部部材128を鎖アセンブリに解放可能に取付ける。
【0036】
図4を再び参照して、鎖アセンブリ112は、好適な伝達装置およびスプロケット(明瞭さのために図示せず)を通して鎖アセンブリに駆動力を与えるモータ130により、トラックガイド110に沿って動かされる。
【0037】
図4には、全体的に140で示され、トラック108の鎖アセンブリ112から吊るされている、1対の支持アセンブリが示される。各支持アセンブリ140は、鉛直に延びる支持フレーム142を備え、支持フレーム142は、トラック108の縦軸に垂直に横方向に延び、支持フレーム142からは複数のブラケット144が延びる。各支持フレーム142は、トラック108中の鎖アセンブリ112から下方向に延びるそれぞれのブラケット124に連結される。細長いトレー146の形態の植物用の容器は、ブラケット144により支持され、トラック108の縦軸に垂直に水平方向に延びる。トレー146は、複数のトレーを含む鉛直方向のスタックに配列される。図4に示されるように、各支持アセンブリには、トレー146の2つのスタックが設けられ、支持フレーム142の各対向側に1つずつ設けられている。この配列は、利用可能な空間を利用する際に特に効率的であり、隣接する支持アセンブリ140の間の間隔と、使用されるトラックの曲線部の曲率半径との最適な組合せが可能になることが分かった。
【0038】
各トレー146は、それを支持するブラケット144上に載置され、したがって、特に、支持フレームに平行かつトラック108の縦軸に垂直な方向に支持アセンブリから横方向に滑らせることにより、支持アセンブリから容易に取外されてもよい。
【0039】
トレー146は、栽培されている植物および、適宜、好適な生育培地が入るように配列される。
【0040】
図4に示されるトレー146の配列は、使用されてもよい多くのこのような配列のほんの一例である。所与の支持アセンブリにおけるトレーの数および間隔は、栽培および生育されている植物の性質によって決まる。特に、図4に示す配列は、植物の発芽および強化のために好適であってもよく、その後、植物は取出されて、異なる生育所に移植されて成熟される。より嵩高い茎葉を有する植物、またはより成熟段階まで装置中に保持されるべき植物のために、図示するよりも少ないトレーをより広い鉛直方向間隔で用いてもよい。たとえば、果物や野菜の作物を提供するためにつる性植物が生育され成熟される場合、1つのスタックは、支持フレームの底部に単一のトレーが配置されてもよい。たとえば、支持フレームには、適宜、網状、線状、または他の支持部材の形態である、つる性植物などの植物の茎葉のための支持体が設けられてもよい。
【0041】
図6を参照して、図4に示す実施形態のような、本発明の装置に用いられる代替的な支持アセンブリ配列が示される。支持アセンブリ配列は、図4に示され、以上に説明される構成の1対の支持アセンブリ140を備える。2つの支持アセンブリ140の間に、全体的に150で示される代替的な支持アセンブリ配列がある。支持アセンブリ配列150は、より大きいか、より成熟な植物を収納するように適合され、鉛直フレーム部材154上に支持される複数の円形トレー152を備え、鉛直フレーム部材154は、図5に示されるような上部支持部材128に連結される。ここでも、トレー152の数および向きは、生育されている植物の大きさおよび必要性により変更されてもよい。
【0042】
以上に説明したように、本発明の装置は、給水および/または施肥場所を備え、そこに支持アセンブリを通過させる。給水および施肥場所に供給するためのシステムの一実施形態を図7に概略的に示す。全体的に202で示されるシステムは、本発明の装置のトラックに隣接して配置される給水/施肥場所204とともに動作する。給水/施肥場所204は、植物がその場所を通過する際に、水および/または栄養分の溶液の散水または水霧を与える、散水器または噴霧器206を備える。流出物は、リターンポンプ212が配置される液溜め210を有するドレーン208に回収され、リターンポンプ212は、液溜め中の液体を沈降タンク214に汲入れ、そこで汚物が沈降され、除去される。清浄化された液体は、沈降タンク214から取出され、UVフィルタ216中で処理され、いかなる微生物も死滅させて、混合タンク220に戻される。
【0043】
混合タンク220には、上述のようにリサイクルされた液体、ならびに水および栄養分の新たな供給が与えられる。タンク222は、栽培されている植物に好適な液状養分の構成成分を含む。成分は、プロセッサ226の制御下、ぜん動ポンプ224によりタンク222から取出され、混合タンク220に必要な量が与えられる。供給ポンプ228は、液体混合物をフィルタ230およびUVフィルタ232を介して混合タンク220から給水/施肥場所204に与える。
【0044】
装置全体内での図7の給水および施肥システム202の一体化を図8に概略的に図示する。給水/施肥場所204は、トラック240の1つの曲線セクション上に配置されるように示される。トラックには、トラックの鎖アセンブリを駆動するための2つのモータ242が設けられる。動きセンサ244のアレイが、トラックの周りに配置され、支持アセンブリおよびその中に含まれる植物の移動に関するデータが提供される。データは動きセンサレイから中央プロセッサ246により受信され、中央プロセッサ246は、モータ242、給水/施肥システムの動作を制御する。プロセッサ246は、装置中、たとえばトラックに隣接して位置してもよい。代替的には、プロセッサ246は装置から遠隔にあり、さまざまな部品に連結されてネットワークによりデータを受信および送信してもよい。
【0045】
給水/施肥場所は、場所に配置される動きセンサにより作動される分配システムを備える。容器が場所に入ると、その存在がそれぞれの動きセンサにより検出され、分配システムが作動される。分配システムは、各容器の位置の真上に配置される水および養分用放出口を備える。動きセンサによる作動と同時に、電磁弁などの弁が、それぞれの容器に対応する列で開かれ、水/養分が分配される。このように分配される液体の容量は、一旦所定の容量が分配されると弁が閉じられるように、システム中で予め設定されてもよい。代替的には、容器がそれぞれの放出口の下の位置からずれるときを検出するように位置決めされる、さらなる動きセンサによる作動と同時に弁が閉じられてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラックアセンブリと、
トラックアセンブリに沿って移動可能なようにトラックアセンブリに設置される複数の支持アセンブリとを備え、
各支持アセンブリは、1つ以上の植物用の容器を備え、容器は装置から取外し可能である、植物の栽培のための装置。
【請求項2】
トラックアセンブリは、閉じたトラックアセンブリである、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
トラックアセンブリは、複数の直線のトラック部を備え、各々は、曲線トラック部により隣接する直線のトラック部に連結される、請求項1または2のいずれかに記載の装置。
【請求項4】
トラックアセンブリは、蛇行パターンに延びる、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
トラックアセンブリは、トラックアセンブリに沿って移動可能な鎖を備える、請求項1から4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
トラックアセンブリは、鎖が走行するトラックガイドをさらに備える、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
鎖は、トラックガイドで支えられるための複数のホイールを備える、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
鎖は、第1の方向に延びる軸を中心に回転可能なホイールを有するリンクと、第1の方向に垂直な第2の方向に延びる軸を中心に回転可能なホイールを有するリンクとを備える、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
支持アセンブリは、1つ以上の剛性の、実質的に鉛直に延びるフレーム部材を備え、容器は、前記フレーム部材に設置される、請求項1から8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
容器は、前記フレーム部材に解放可能に設置される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
支持アセンブリは、トラックアセンブリの縦軸に垂直に横方向に延びる、請求項1から10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
1つ以上の支持アセンブリは、つる性植物の茎葉を支持するための支持体を備える、請求項1から11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
支持アセンブリは、トラックアセンブリに解放可能に連結される、請求項1から12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
各支持アセンブリ上には、少なくとも1つの容器が設置される、請求項1から13のいずれかに記載の装置。
【請求項15】
容器はトレーの形態である、請求項1から14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
トレーは細長である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
トレーは、トラックアセンブリの縦軸に垂直に延びる、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
各支持アセンブリには、少なくとも1つのトレーを備える容器のスタックが設けられる、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
各支持アセンブリには容器の2つのスタックが設けられ、各スタックは少なくとも1つのトレーを備え、スタックは、支持アセンブリの対向側に配列される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
容器は、トラックアセンブリの縦軸に実質的に垂直な方向に、装置から横方向に取外し可能である、請求項1から19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
容器の取外しおよび取替えのために、トラックアセンブリに隣接する作業場所をさらに備える、請求項1から20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
単一の給水および/または施肥場所をさらに備え、支持アセンブリは、トラックアセンブリに沿って動かされるとき、前記給水および/または施肥場所を通過させられる、請求項1から21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
トラックに沿った隣接する支持アセンブリの間の距離は、トラックの全長に沿って固定されている、請求項1から22のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
水および/または養分を容器に与えるための場所をさらに備える、請求項1から23のいずれかに記載の装置。
【請求項25】
場所は、水および/または養分を容器に送るための分配システムを備え、分配システムは、容器が場所に入るおよび/または場所から出る動きにより作動される、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
分配システムは、各容器に水および/または養分を送るために配置された液体用の1つ以上の放出口を備える、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
トラックアセンブリと、
各々が1つ以上の植物用の容器を備える、トラックアセンブリに沿って移動可能なようにトラックアセンブリに設置される複数の支持アセンブリと、
トラックに隣接する作業場所とを備え、そこから容器中の植物が手入れされ得、
装置の動作中、支持アセンブリは、トラックアセンブリに沿って継続的に動かされ、トラックアセンブリに沿った隣接する支持アセンブリの間の距離は、動作中一定に保たれる、植物の栽培のための装置。
【請求項28】
トラックアセンブリと、
各々が1つ以上の植物用の容器を備える、トラックアセンブリに沿って移動可能なようにトラックアセンブリに設置される複数の支持アセンブリと、
容器中に保持される植物に水および/または養分を与えるための単一の場所とを備え、
動作中、支持アセンブリは場所を通過させられる、植物の栽培のための装置。
【請求項29】
請求項1から28のいずれかに記載の装置を備える生育ルーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−518993(P2012−518993A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551515(P2011−551515)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【国際出願番号】PCT/GB2009/000569
【国際公開番号】WO2010/097562
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511208900)バルセント・プロダクツ・(イー・ユー)・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】VALCENT PRODUCTS (EU) LIMITED
【Fターム(参考)】