説明

植物病害の防除方法

エタボキサムとトランスジェニック植物との組合せは、植物病害の防除において、向上した植物保護を与える。本発明によれば、植物の茎葉部分に施用される;浸漬または土壌混入で土壌に施用される;あるいは種子スラリー施用技術、種子フィルムコート技術および種子ペレットコート技術を使用して種子に施用される、トランスジェニック植物への有効量のエタボキサムの施用は、良好な植物病害防除効果を与える。トランスジェニック植物へのエタボキサムの施用は、病害を患う単子葉植物および双子葉植物への施用を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物病害の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
N-(シアノ-2-チエニルメチル)-4-エチル-2-(エチルアミノ)-5-チアゾールカルボキサミド(エタボキサム)は、米国特許第6,740,671号における殺菌剤の有効成分として知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、植物病害の防除方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、エタボキサムとトランスジェニック植物との組合せを特徴とする。本発明によれば、有効量のエタボキサムのトランスジェニック植物への施用は、植物病害に対して良好な防除効果を示す改善された植物の苗立ちを与える。
【発明を実施するための形態】
【0005】
(本発明の詳細な説明)
エタボキサムは、米国特許第6,740,671号(これは引用により本明細書中に包含される)に開示された方法により製造することができ、また、市販もされている。
【0006】
本発明において、トランスジェニック植物は、組換えDNA技術によって形質転換された植物と定義される。トランスジェニック植物は、殺虫性タンパク質(これは、昆虫および他の植物の有害生物に対する植物保護を与える)を発現する一以上の遺伝子を含み得る。該植物は、農薬(特に特定の種類の除草剤)に耐性であり得る。該植物は、菌、細菌またはウイルスの攻撃に耐性であり得る。さらに、該植物は、農業において有益な特徴である植物ストレスに対する耐性を有し得る。或いは、トランスジェニック植物は、有益な特徴(例えば、高い収穫量、向上した品質、長期保管期間および他の有用な特性)を与え得る。
【0007】
トランスジェニック植物の例としては、例えば、HPPD阻害剤(例えば、イソキサフルトール)、ALS阻害剤(例えば、イマゼタピル、チフェンスルフロンメチル)、EPSPシンターゼ阻害剤、グルタミンシンターゼ阻害剤、ブロモキシニルおよび合成オーキシン(ジカンバ)のような除草剤に耐性である植物;農薬有効成分(例えば、バチルス属菌(Bacillus spp.)由来の毒素)を発現する一以上の遺伝子を含有する植物;および抗微生物物質を産生し得る植物が挙げられる。トランスジェニック植物は、二以上の上記特徴を有し得る。
【0008】
除草剤耐性植物の典型例としては、グリホサートまたはグルホシネートに対する耐性を有するトウモロコシ、ダイズ、ワタおよびナタネが挙げられる。Roundup Ready(Monsantoの商標)、Roundup Ready 2(Monsantoの商標)およびLibertyLink(Bayer Crop Scienceの商標)は、市販のグリホサートまたはグルホシネート耐性製品である。トランスジェニック植物において発現する毒素の例としては、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)由来のタンパク質およびバチルス・ポプリア(Bacillus popliae)由来のタンパク質;バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来のエンドトキシン(例えば、Cry1Ab、Cry1Ac、Cry1F、Cry1Fa2、Cry2Ab、Cry3a、Cry3Bb1、Cry9C)、VIP1、VIP2、VIP3およびVIP3A;線虫由来の殺虫性タンパク質;動物由来の毒素、例えば、サソリ毒、クモ毒、ハチ毒および昆虫に特異的な神経毒;真菌毒素;凝集素、例えば、植物レクチン;プロテアーゼ阻害剤、例えば、トリプシン阻害剤、セリンプロテアーゼ阻害剤、パタチン、シスタチンおよびパパイン阻害剤;リボソーム不活性化タンパク質(RIP)、例えば、リシン、トウモロコシ-RIP、アブリン、ルフィン、サポリンおよびブリオジン;ステロイド代謝酵素、例えば、3-ヒドロキシステロイドオキシダーゼ、エクジステロイド-UDP-グルコシルトランスフェラーゼおよびコレステロールオキシダーゼ;エクジソン阻害剤;HMG-COAレダクターゼ;イオンチャネル阻害剤、例えば、ナトリウムチャネル阻害剤およびカルシウムチャネル阻害剤;幼若ホルモンエステラーゼ;利尿ホルモン受容体;スチルベンシンターゼ;ビベンジルシンターゼ;キチナーゼ;およびグルカナーゼが挙げられる。
【0009】
トランスジェニック植物において発現する毒素には、殺虫性タンパク毒素のハイブリッド毒素、例えば、δ-エンドトキシンタンパク質(例えば、Cry1Ab、Cry1Ac、Cry1F、Cry1Fa2、Cry2Ab、Cry3a、Cry3Bb1、Cry9C)、VIP1、VIP2、VIP3およびVIP3A;アミノ酸が部分的に欠損した毒素;および修飾された毒素も含まれる。ハイブリッド毒素は組換え技術を用いて、これらのタンパクの異なるドメインの新しい組み合わせによって産出される。アミノ酸が部分的に欠損した毒素としては、アミノ酸配列の一部が欠損したCry1Abが知られている。修飾された毒素において、天然型毒素の一以上のアミノ酸が、他のアミノ酸で置換されている。
【0010】
毒素および毒素を発現する植物の例は、EP-0374753A、EP-0427529A、EP-0451878A、WO93/07278、WO95/34656およびWO03/52073のような数多くの特許公報に記載されている。
トランスジェニック植物における毒素は、特に、甲虫類(Coleoptera)害虫、双翅目(Diptera)害虫および鱗翅目(Lepidoptera)害虫に対する耐性を植物に与える。
【0011】
毒素を産生するトランスジェニック植物の典型例としては、Yieldgard(Monsantoの商標、Cry1Ab毒素を発現するトウモロコシ)、Yieidgard Rootworm(Monsantoの商標、Cry3Bb1毒素を発現するトウモロコシ)、Yieidgard Plus(Monsantoの商標、Cry1Ab毒素とCry3Bb1毒素とを発現するトウモロコシ)、Hercuiex I(Dow AgroSciencesの商標、Cry1Fa2毒素とグルホシネートへの耐性を与えるためにホスフィノとリシン N-アセチルトランスフェラーゼ(PAT)を発現するトウモロコシ)、NuCOTN33B(Cry1Ac毒素を発現するワタ)、Bollgard I(Monsantoの商標、Cry1Ac毒素を発現するワタ)、Bollgard Il(Monsantoの商標、Cry1Ac毒素とCry2Ab毒素とを発現するワタ)、VIPCOT(Syngentaの商標、VIP毒素を発現するワタ)、Newleaf(Monsantoの商標、Cry3A毒素を発現するジャガイモ)、Naturegard(Syngentaの商標)、Agrisure GT Advantage(Syngentaの商標、GA21グリホサート耐性)およびAgrisure CB Advantage(Syngentaの商標、Bt11コーンボーラー耐性(CB))が挙げられる。
【0012】
トランスジェニック植物が産生する抗微生物物質の例としては、PRタンパク質(EP-392225A参照)が挙げられる。これらの抗微生物物質およびトランスジェニック植物は、EP-0353191A、EP-0392225AおよびWO 95/33818に記載されている。
【0013】
トランスジェニック植物で発現する抗微生物物質の例としては、イオンチャネル阻害剤、例えば、ナトリウムチャネル阻害剤およびカルシウムチャネル阻害剤(ウイルスがKP1毒素、KP4毒素、KP6毒素等を産生することが知られている);スチルベンシンターゼ;ビベンジルシンターゼ;キチナーゼ;グルカナーゼ;PRタンパク質、ペプチド抗微生物物質;複素環式微生物物質;植物病害に対する耐性に関連するタンパク質因子(植物病害耐性遺伝子;WO 03/00906参照)が挙げられる。
【0014】
本発明において、エタボキサムは、単子葉植物(例えば、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、ライムギ、イネ、モロコシ、シバ);および双子葉植物(例えば、ワタ、テンサイ、ピーナッツ、ジャガイモ、ヒマワリ、ダイズ、アルファルファ、ナタネ、野菜)を含む上記トランスジェニック植物に施用される。
【0015】
さらに、エタボキサムは、以下のものを含むトランスジェニック植物に施用され得る:オートムギ;サトウキビ;タバコ;ナス科(Solanaceae)植物、例えば、ナス、トマト、ピーマン、トウガラシ;ウリ科(Cucurbitaceae)植物、例えば、キュウリ、カボチャ、ズッキーニ、スイカ、メロン、スカッシュ;アブラナ科(Brassicaceae)植物、例えば、ダイコン、カブ、セイヨウワサビ、コールラビ、ハクサイ、キャベツ、カラシナ、ブロッコリー、カリフラワー;キク科(Asteraceae)植物、例えば、ゴボウ、シュンギク、チョウセンアザミ、レタス;ユリ科(Liliaceae)植物、例えば、ニラネギ、タマネギ、ニンニク、アスパラガス;セリ科(Apiaceae)植物、例えば、ニンジン、パセリ、セロリー、パースニップ;アカザ科(Chenopodiaceae)植物、例えば、ホウレンソウ、チャード;シソ科(Lamiaceae)植物、例えば、シソ、ミント、バジル;イチゴ;サツマイモ;ヤムイモ;タロイモ;花、例えば、ペチュニア、アサガオ、カーネーション、キク、バラ;観葉植物;シバ;果樹、例えば、仁果類(例えば、リンゴ、セイヨウナシ、ニホンナシ、カリン、マルメロ)、核果類(例えば、モモ、プラム、ネクタリン、ウメ、サクランボ、アプリコット、プルーン)、カンキツ類(例えば、ウンシュウミカン、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ)、堅果類(例えば、クリ、ペカン、クルミ、ハシバミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、マカダミアナッツ)、液果類(例えば、ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー);ブドウ;カキ;オリーブ;ビワ;バナナ;コーヒー;ヤシ;ココヤシ;他の樹木、例えば、チャ、クワ、花木類および景観樹木(例えば、セイヨウトネリコ、カバノキ、ハナミズキ、ユーカリ、イチョウ、ライラック、カエデ、オーク、ポプラ、ハナズオウ、フウ、セイヨウカジカエデ、ケヤキ、ニオイヒバ、モミ、ツガ、ネズ、マツ、トウヒ、イチイ)。
【0016】
本発明により防除される植物病害の例としては、植物病原菌(特に、子嚢菌類(Ascomycetes)、不完全菌類(Deuteromycetes)、卵菌類(Oomycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)のクラスのもの)によって引き起こされる病害、例えば、以下のものが挙げられる:
イネのいもち病(Magnaporthe grisea)、ごま葉枯病(Cochliobolus miyabeanus)、紋枯病(Rhizoctonia solani)、馬鹿苗病(Gibberella fujikuroi);コムギおよびオオムギのうどんこ病(Erysiphe graminis)、赤かび病(Fusarium graminearum、F. avenacerum、F. culmorum、Microdochium nivale)、さび病(Puccinia striiformis、P. graminis、P. recondita、P. hordei)、雪腐小粒菌核病(Typhula sp.)、紅色雪腐病(Micronectriella nivale)、裸黒穂病(Ustilago tritici、U. nuda)、なまぐさ黒穂病(Tilletia caries)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、雲形病(Rhynchosporium secalis)、葉枯病(Septoria tritici)、ふ枯病(Leptosphaeria nodorum)、網斑病(Pyrenophora teres);カンキツ類の黒点病(Diaporthe citri)、そうか病(Elsinoe fawcetti)、果実腐敗病(Penicillium digitatum, P. italicum)、フィトフトラ病(Phytophthora parasitica、Phytophthora citrophthora);リンゴのモニリア病(Monilinia mali)、腐らん病(Valsa ceratosperma)、うどんこ病(Podosphaera leucotricha)、斑点落葉病(Alternaria alternata apple pathotype)、黒星病(Venturia inaequalis)、炭そ病(Colletotrichum acutatum)、疫病(Phytophtora cactorum);ナシの黒星病(Venturia nashicola、V. pirina)、黒斑病(Alternaria alternata Japanese pear pathotype)、赤星病(Gymnosporangium haraeanum)、疫病(Phytophtora cactorum);モモの灰星病(Monilinia fructicola)、黒星病(Cladosporium carpophilum)、フォモプシス腐敗病(Phomopsis sp.);ブドウの黒とう病(Elsinoe ampelina)、晩腐病(Glomerella cingulata)、うどんこ病(Uncinula necator)、さび病(Phakopsora ampelopsidis)、ブラックロット病(Guignardia bidwellii)、べと病(Plasmopara viticola);カキの炭そ病(Gloeosporium kaki)、落葉病(Cercospora kaki, Mycosphaerella nawae);ウリ類の炭そ病(Colletotrichum lagenarium)、うどんこ病(Sphaerotheca fuliginea)、つる枯病(Mycosphaerella melonis)、つる割病(Fusarium oxysporum)、べと病(Pseudoperonospora cubensis)、疫病(Phytophthora sp.);トマトの輪紋病(Alternaria solani)、葉かび病(Cladosporium fulvum)、疫病(Phytophthora infestans);ナスの褐紋病(Phomopsis vexans)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum);アブラナ科野菜の黒斑病(Alternaria japonica)、白斑病(Cercosporella brassicae)、根こぶ病(Plasmodiophora brassicae)、べと病(Peronospora parasitica);ネギのさび病(Puccinia allii)、べと病(Peronospora destructor);ダイズの紫斑病(Cercospora kikuchii)、黒とう病(Elsinoe glycines)、黒点病(Diaporthe phaseolorum var.sojae)、さび病(Phakopsora pachyrhizi)、茎疫病(Phytophthora sojae);インゲンの炭そ病(Colletotrichum lindemthianum);ラッカセイの黒渋病(Cercospora personata)、褐斑病(Cercospora arachidicola)、白絹病(Sclerotium rolfsii);エンドウのうどんこ病(Erysiphe pisi);ジャガイモの夏疫病(Alternaria solani)、疫病(Phytophthora infestans)、緋色腐敗病(Phytophthora erythroseptica)、粉状そうか病(Spongospora subterranean F.sp.subterranea);イチゴのうどんこ病(Sphaerotheca humuli)、炭そ病(Glomerella cingulata);チャの網もち病(Exobasidium reticulatum)、白星病(Elsinoe leucospila)、輪斑病(Pestalotiopsis sp.)、炭そ病(Colletotrichum theae-sinensis);タバコの病害:赤星病(Alternaria longipes)、うどんこ病(Erysiphe cichoracearum)、炭そ病(Colletotrichum tabacum)、べと病(Peronospora tabacina)、疫病(Phytophthora nicotianae);テンサイの褐斑病(Cercospora beticola)、葉腐病(Thanatephorus cucumeris)、黒根病(Aphanidermatum cochlioides);バラの黒星病(Diplocarpon rosae)、うどんこ病(Sphaerotheca pannosa)、べと病(Peronospora sparsa); キク及びキク科野菜の病害:べと病(Bremia lactucae)、褐斑病(Septoria chrysanthemi-indici)、白さび病(Puccinia horiana); ダイコンの黒斑病(Alternaria brassicicola);シバのダラースポット病(Sclerotinia homeocarpa)、ブラウンパッチ病(Rhizoctonia solani);バナナのシガトカ病(Mycosphaerella fijiensis、Mycosphaerella musicola); ヒマワリのべと病(Plasmopara halstedii);およびピシウム属菌(例えば、Pythium aphanidermatum、Pythium debarianum、Pythium graminicola、Pythium irregulare、Pythium ultimum)、Botrytis cinerea、Sclerotinia sclerotiorum、Aspergillus属、Penicillium属、Fusarium属、Gibberella属、Tricoderma属、Thielaviopsis属、Rhizopus属、Mucor属、Corticium属、Phoma属、Rhizoctonia属、Diplodia、Polymixa属またはOlpidium属菌によって引き起こされる種々の作物の病害。
【0017】
本発明は、特に卵菌類(Oomycetes)によって引き起こされる植物病害を防除するのに有用である。本発明は、土壌(種子および根)および茎葉部分に影響を及ぼす病害に衝撃を与える。典型例としては、ジャガイモの疫病(Phytophthora infestans)、タバコの疫病(Phytophthora nicotianae)、ダイズの茎疫病(Phytophthora sojae)、ブドウのべと病(Plasmopara viticola)、レタスのべと病(Bremia lactucae)、ウリ科植物のべと病(Pseudoperonospora cubensis)、ヒマワリのべと病(Plasmopara halstedii)、およびピシウム属(Pythium spp.)、べと病菌(downy mildew fungi)およびアファノミセス属(Aphanomyces spp.)によって引き起こされるトウモロコシ、ワタ、ダイズ、モロコシ、テンサイおよびシバの植物病害が挙げられる。
【0018】
本発明において、エタボキサムはそのまま施用可能である。しかしながら、通常、固体担体、液体担体、ガス担体、界面活性剤、必要により固着剤、分散剤、安定剤等の補助剤と予め混合して、水和剤、顆粒水和剤、フロアブル剤、粉剤、粒剤、ドライフロアブル剤、乳剤、水性液剤、油剤、くん煙剤、エアゾール剤またはマイクロカプセル剤を形成することにより、製剤化される。エタボキサムは、通常、製剤の0.1〜99重量%、好ましくは0.2〜90重量%の量で含まれる。
【0019】
固体担体の例としては、粘土類(例えば、カオリン、珪藻土、シリカ、フバサミクレー、ベントナイトおよび白土);タルク;および他の無機鉱物(例えば、セリサイト、石英、硫黄、活性炭、炭酸カルシウムおよび合成含水シリカ)の微粉末および粒状物が挙げられる。液体担体の例としては、水;アルコール類(例えば、メタノール、エタノール);ケトン類(例えば、アセトン、エチルメチルケトン);芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルナフタレン);脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、灯油);エステル類(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル);ニトリル(例えば、アセトニトリル、ブチロニトリル);エーテル類(例えば、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル);酸アミド(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド);およびハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロエタン、トリクロロエチレン、四塩化炭素)が挙げられる。
【0020】
界面活性剤の例としては、アルキル硫酸エステル類、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルアリールエーテル類およびそのポリオキシエチレン化物、ポリオキシエチレングリコールエーテル類、多価アルコールエステル類、および糖アルコール誘導体が挙げられる。
【0021】
他の補助剤の例としては、固着剤および分散剤、例えば、カゼイン、ゼラチン、多糖類(例えば、でんぷん、アラビヤガム、セルロース誘導体、アルギン酸)、リグニン誘導体、ベントナイト、糖類、合成水溶性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸類)、PAP(酸性リン酸イソプロピル)、BHT(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、BHA(2-tert-ブチル-4-メトキシフェノールと3-tert-ブチル-4-メトキシフェノールとの混合物)、植物油、鉱物油、脂肪酸および脂肪酸エステルが挙げられる。
【0022】
本発明において、エタボキサムの施用方法は制限されず、任意の方法、例えば、植物の茎葉への処理、土壌施用処理方法、種子スラリー施用、種子コート施用を使用することができる。
植物への施用は、噴霧、塗沫等による茎葉部分への茎葉施用または樹幹への施用であり得る。
【0023】
土壌処理は、噴霧、滴下、浸水、混和等による土壌への施用または土壌中への施用(土壌注入)または潅水施用、例えば、土壌注入処理(土壌との混和を伴うか、または伴わない植穴施用)、畝間処理(土壌との混和を伴うか、または伴わないレイバイ(lay-by)施用、潅水中へのレイバイ施用)、土壌注入溝処理(土壌との混和を伴うか、または伴わない土壌注入溝施用)、播溝処理(土壌との混和を伴うか、または伴わない播種前の播溝施用、生育期での播溝施用)、全面処理(全面土壌施用、播種前の土壌混和施用)、植物間処理、畝処理、溝処理、苗床処理(土壌または水中への苗床施用)、育苗トレイ処理(土壌または水中への育苗トレイ施用)によって達成される。特に、畝間噴霧施用および土壌噴霧施用が好ましい。前者は、植栽の水または液体肥料中への施用、そして種子または種子が覆われる直前の種子を覆う土壌にわたる畝間中への噴霧である。後者は、植栽の水または液体肥料中への施用、および土壌への噴霧である。
【0024】
種子処理は、噴霧処理、滴下処理、浸水処理、塗沫処理、フィルムコート処理、ペレットコート処理等による、種子、種イモ、球根、さし木(plant-cutting)等への施用である。特に、スラリー法が好ましく、これにより生成物が、作物に特異的な所定の施用割合で、担体(水)中の種子に送達される。スラリーは、スラリーを種子上に噴霧しながら種子を回転させることによって、または種子の処理用に設計された任意の他の装置によって、施用することができる。さらに、本発明において、エタボキサムは、水耕栽培における栄養液に施用することができる。
【0025】
本発明において、エタボキサムは、他の殺菌剤、殺虫剤、殺ダニ剤、殺線虫剤、除草剤、植物生長調節剤、肥料、土壌改良剤等との混合物として施用してもよく、あるいは、混合せずに、それらと併用することができる。
【0026】
エタボキサムの施用送達は、気象条件、製剤の種類、施用時期、施用方法、病害の種類、作物要件等に依存し、そして、通常、それは1000 m2当たり1〜500 g、好ましくは2〜20O gである。乳剤、水和剤、フロアブル剤等は、通常、水で希釈されて施用される。エタボキサムの濃度は、通常0.0005〜2重量%、好ましくは0.0005〜1重量%である。粉剤、粒剤等は、通常、希釈せずに施用される。エタボキサムが種子に施用されるとき、エタボキサムの施用量は、100 KGの種子に対して0.001〜25 g、好ましくは1.0〜10.0 gである。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を、代表的な製剤例および試験例によって詳細に説明する。実施例中、部は重量部を意味する。
【0028】
製剤例1
エタボキサム(3.75部)と、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル(14部)と、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(6部)と、キシレン(76.25部)とを、よく混合して乳剤を得る。
【0029】
製剤例2
エタボキサム(10部)と、沈殿シリカとポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウムとの混合物(重量比1:1;35部)と、水(55部)とを混合し、次いで湿式微粉砕してフロアブル剤を得る。
【0030】
製剤例3
エタボキサム(15部)と、ソルビタントリオレエート(1.5部)と、ポリビニルアルコール(2部)を含有する水溶液(28.5部)に、キサンタンガム(0.05部)とケイ酸マグネシウムアルミニウム(0.1部)とを含有する水溶液(45部)を添加し、次いで、プロピレングリコール(10部)を添加し、そして攪拌下で混合してフロアブル剤を得る。
【0031】
製剤例4
エタボキサム(5部)と、合成含水シリカ(1部)と、リグニンスルホン酸カルシウム(2部)と、ベントナイト(30部)と、カオリン粘土(62部)とを混合し、よく粉砕する。次いで、水と混練し、粒状化し、そして乾燥して粒剤を得る。
【0032】
製剤例5
エタボキサム(50部)と、リグニンスルホン酸カルシウム(3部)と、ラウリル硫酸ナトリウム(2部)と、合成含水シリカ(45部)とを混合し、次いで、よく粉砕して水和剤を得る。
【0033】
製剤例6
エタボキサム(3部)と、カオリン粘土(85部)と、タルク(10部)とを混合し、次いで、よく粉砕して粉剤を得る。
【0034】
試験例1
所定量の種子に施用される総スラリーが、100 KGの種子当たりのエタボキサムの所定薬量になるように、種子処理用フロアブル剤に製剤化したエタボキサムを水に添加した。調製したスラリーを、非トランスジェニックトウモロコシ種子と、グリホサート耐性およびルートワーム耐性の両方を有するトランスジェニックトウモロコシ種子に施用した。トレイ中に、Kimpack(吸収性セルロースウォッディング、Kimberly-Clarkの商標)を配置し、そして湿らせた。各々の処理割合の各々のトウモロコシ種子を、Kimpack上に置き、そしてピシウム属菌の被害にあった農場の土壌と砂との1:1の混合物である土壌で覆った。10℃で14日間土壌を飽和に保持した後、トレイを18℃に11日間移した。ピシウム属菌病害を防除する効果を調査するために、幼苗の出現率(%)を観察した。その結果を、表1に示す。
【0035】
【表1】


ピシウム属菌病害は、良好に防除された。そして、表1に示すように、苗立ちは、トランスジェニック幼苗の方が非トランスジェニック幼苗よりも強かった。
【0036】
試験例2
所定量の種子に施用される総スラリーが、100 KGの種子当たりのエタボキサムの所定薬量になるように、種子処理用フロアブル剤に製剤化したエタボキサムを水に添加した。調製したスラリーを、非トランスジェニックトウモロコシ種子と、グリホサート耐性およびルートワーム耐性の両方を有するトランスジェニックトウモロコシ種子に施用した。処理した種子を、ピシウム属種菌が最も活発になる早春の農場の条件下で生育させた。出現率(%)を、7 DAPおよび14 DAPで決定し、そして表2に記録した。
【0037】
【表2】


トウモロコシのピシウム属菌苗立枯病は良好に防除された。そして、表2に示すように、農場条件下に植えた場合、苗立ちは、トランスジェニック稚苗の方が非トランスジェニック稚苗よりも強かった。
【0038】
試験例3
トウモロコシ種子の代わりに、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来のエンドトキシンを発現し、かつ、グリホサート耐性を有するワタ種子を使用した以外は、試験例2と同様の手順を行った。ピシウム・ウルティマム(Pythium ultimum)により誘発される病害は、トランスジェニックトウモロコシで低減される。非トランスジェニックワタと比較すると、トランスジェニックワタは、農場での苗立ちが高かった(表3)。
【0039】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-(シアノ-2-チエニルメチル)-4-エチル-2-(エチルアミノ)-5-チアゾールカルボキサミドを、トランスジェニック植物に施用することを含む、植物病害の防除方法。
【請求項2】
トランスジェニック植物が除草剤に耐性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
トランスジェニック植物が、グリホサートまたはグルホシネートに耐性である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
トランスジェニック植物がグリホサートに耐性である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
トランスジェニック植物が、農薬的有効成分を発現する一以上の遺伝子を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
トランスジェニック植物が、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来のエンドトキシンを発現するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
トランスジェニック植物が、単子葉植物および双子葉植物を代表するトウモロコシおよびワタである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
トランスジェニック植物がトウモロコシである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
トランスジェニック植物が、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来のエンドトキシンを発現するトウモロコシである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
トランスジェニック植物がワタである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
植物病害が卵菌類(Oomycete fungi)によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
植物病害が、フィトフトラ属菌(Phytophthora spp.)またはピシウム属菌(Pythium spp.)によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
植物病害が、ピシウム属菌(Pythium spp.)によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
病害防除方法が種子処理である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
病害防除方法が、トランスジェニック植物材料への茎葉施用、土壌施用によるか、または種子スラリー施用、種子コートまたはペレットコート施用によるものである、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2012−502109(P2012−502109A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526982(P2011−526982)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【国際出願番号】PCT/US2009/056591
【国際公開番号】WO2010/030833
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】