植物細胞における色素体標的タンパク質の生成方法
予め決定した植物の細胞で、対象のタンパク質を生成する方法であって、(i)融合タンパク質を色素体内にターゲティングする輸送ペプチド、及びそれに隣接して(ii)前記対象のタンパク質をN末端からC末端に含む前記融合タンパク質をコードするベクターを前記細胞内に導入することを含み、前記輸送ペプチドC末端の3個のアミノ酸X−3X−2X−1及び前記対象のタンパク質N末端のアミノ酸Zが、色素体で前記対象のタンパク質を放出するためにX−1とZとの間で前記融合タンパク質を開裂するための開裂部位X−3X−2X−1−Zを形成し、前記対象のタンパク質の予め決定したアミノ酸Zに対して、アミノ酸配列X−3X−2X−1が、植物の色素体を標的とする融合タンパク質で天然に存在するZに隣接するアミノ酸配列X−3X−2X−1の組から選択され、それにより前記開裂部位を形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子組換え植物細胞、特にその色素体における対象の異種タンパク質の生成方法、及びその方法で生成されたタンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は、薬剤的及び産業的応用を含む組換えタンパク質の安価で制限なく大規模に実現できる生成システムであるため、魅力ある選択となっている(Stogerら、2000年、Plant Mol.Biol.、42巻、583〜590頁、及びLarrick及びThomas、2001年、Curr.Opin.Biotechnol.、12巻、411〜418頁)。特に薬剤分野の殆どのタンパク質は分泌性であり、例えば、最初にシグナルペプチドを有するタンパク質前駆体として翻訳され、シグナルペプチドはさらなる翻訳後プロセシング及び区画化のためにタンパク質を小胞体の網状構造(ER)に導く。前記プロセシングには、正確な折りたたみとアセンブリ、即ちジスルフィド結合の形成及び複合的な酵素的修飾が含まれる。しかし、植物はグリコシル化部位に結合した様々なタイプの炭水化物を合成するため、動物細胞と植物細胞のERでは翻訳後のタンパク質修飾、特にグリコシル化パターンに大幅な相違があり得る(Wilson,IB.、2002年、Curr.Opin.Struct.Biol.、12巻、569〜577頁、及びSchillberg、Fischer及びEmans、2003年、Cell Mol.Life Sci.、60巻、433〜445頁)。植物に特有の翻訳後修飾、特に植物が産生した薬剤用タンパク質のグリコシル化は、患者にアレルギー反応を引き起こすことがあるため、多くの場合、避ける方が好都合である。葉緑体にはそれ自体のタンパク質品質管理システムがあり、ER同様正確なジスルフィド結合形成及びタンパク質の折りたたみを提供することができる(Dicksonら、2000年、J.Biol.Chem.、275巻、11829〜11835頁)。タンパク質の活性にいかなる役割も演じないグリコシル化は、2つの異なる手段、即ちa)プロセシングのために対象のタンパク質を様々な細胞レベル下の区画、例えば葉緑体内にターゲティングする手段、b)トランスプラストミック植物を操作することにより、対象のタンパク質を植物の色素体で発現する手段を用いれば容易に避けることができる。後者の方法は、メチオニン(M)以外のN末端アミノ酸残基を必要とするタンパク質を発現させるのには適当でない。ユビキチンの開裂の際必要とされるN末端を得るために、ヒトの分泌タンパク質であるソマトトロピンをトランスプラストミックタバコで、ユビキチン融合として発現させることによりこの問題に取り組む試みがあった(Staubら、2000年、Nature Biotechnol.、18巻、333〜338頁)。ユビキチン融合タンパク質は、ユビキチンプロテアーゼによりユビキチンのC末端残基のすぐ下流で開裂され、プロリン以外の選択したN末端残基を含む組換えタンパク質が生成できるようになる(Baker、R.T.、1996年、Curr.Opin.Biotechnol.7巻、541〜546頁)。しかし、葉緑体にはユビキチンに特異性のあるプロテアーゼは存在せず、ユビキチン−ソマトトロピン融合体のプロセシングはタンパク質の抽出過程の間にのみ起こり、高レベル(70%まで)のプロセシングされていないソマトトロピンが得られた。
【0003】
異種タンパク質を色素体の外で発現させた後に、植物細胞の色素体内にターゲティングする試みがあった(米国特許第6,063,601号、米国特許第6,130,366号)。これには、対象のタンパク質をN末端の輸送ペプチドと融合する必要がある。輸送ペプチドには、色素体の膜を通過するトランスロケーションを促進する機能がある。色素体内部で、輸送ペプチドは色素体プロテアーゼにより開裂する。天然の色素体標的植物タンパク質の開裂部位については、詳しく調べられている(Gavel及びVon Heijne、1990年、FEBS Lett.、261巻、455〜458頁)。これらは、適応の良好なある植物の天然タンパク質に関する調査である。しかし、異種タンパク質は、進化により植物色素体に適合していない。したがって、望ましい対象のタンパク質を高品質で、特にN末端配列を高い正確度で生成する、輸送ペプチド、及び対象の異種タンパク質、及び効率的かつ規定の融合タンパク質の開裂を確実にするための予想される開裂場所周辺の配列を有する融合タンパク質を構築するという普遍的な問題が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、対象の色素体標的異種タンパク質の生成方法を提供し、それにより前記対象のタンパク質の望ましいN末端配列を高い信頼性で容易に得ることが、本発明の問題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この問題は、予め決定した植物の細胞で、対象のタンパク質を生成する方法であって、
(i)融合タンパク質を色素体内にターゲティングする輸送ペプチド、及びそれに隣接して、
(ii)前記対象のタンパク質
をN末端からC末端の方向で含む前記融合タンパク質をコードするベクターを前記細胞内に導入することを含み、
前記輸送ペプチドC末端の3個のアミノ酸X−3X−2X−1及び前記対象のタンパク質N末端のアミノ酸Zが、色素体で前記対象のタンパク質を放出するためにX−1とZとの間で前記融合タンパク質を開裂するための開裂部位:
X−3X−2X−1−Z
を形成し、前記対象のタンパク質の予め決定したアミノ酸Zに対して、アミノ酸配列X−3X−2X−1が、植物の色素体を標的とする融合タンパク質のN末端側のZに天然に存在するZに隣接するアミノ酸配列X−3X−2X−1の組から選択され、これらにより前記開裂部位を形成する方法により解決される。
本明細書において、一文字コードは、20個の標準アミノ酸に対して一般的に用いられるものである。同様に、X−3、X−2、X−1、及びZの記号はそれぞれ標準アミノ酸を意味する。−1、−2、及び−3の数字は、輸送ペプチドのN末端に向かう方向で輸送ペプチド配列におけるそれぞれのアミノ酸の位置を示す。
【0006】
開裂の正確さ及び効率が、開裂場所付近の輸送ペプチド及び色素体標的天然タンパク質の配列に依存することは、一般的に認められている。しかし、任意の輸送ペプチド及び選択された対象のタンパク質の組合せにまで拡張することのできる一般的な知識を、異種タンパク質に応用することはできない。
【0007】
開裂場所を共同して決定する、輸送ペプチドのC末端配列の長さ及び対象のタンパク質のN末端配列の長さは明らかではない。天然タンパク質では、これら2つの配列は進化の間に相互に調節されてきたと仮定するのが理にかなっている。色素体に導かれる異種タンパク質では、適当な輸送ペプチドを試行錯誤で決定しなければならない。前記試行錯誤の成功は予測できない。全くの幸運で好適な配列の組合せが見つかることもある。しかし、不確実性は大きく、あてにならない。
【0008】
我々は驚くべきことに、対象のタンパク質のN末端配列に適合する輸送ペプチドのC末端配列を見出すという問題が、考慮の序列に基づきさらに高い成功率で解決できることを見出した。この序列の中では、対象の異種タンパク質のN末端アミノ酸及び輸送ペプチドの最後の3個のアミノ酸のみを主に考えれば十分であることが見出された。特に、対象のタンパク質のN末端のアミノ酸はそれぞれ、輸送ペプチドの好適なC末端アミノ酸の3つ組の特定の組と相関があることが見出されている。
【0009】
本発明の方法では、前記融合タンパク質をコードするベクターを植物細胞内に導入する。すると、前記対象のタンパク質は、前記植物細胞、例えば細胞培養物で発現することができる。前記対象のタンパク質を植物全体で発現させるのが好ましい。これは、前記ベクターで形質転換された植物細胞から植物を再生することにより達成できる。或いは、前記ベクターを植物全体の植物細胞に導入する。植物又は植物細胞の形質転換方法、又はトランスフェクション方法のいくつかは当業者に知られており、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)を介した形質転換、微粒子銃、PEGが介するプロトプラスト形質転換、ウィルス感染等が含まれる。一過性発現又は一過性発現のためのトランスフェクションの好ましい実施形態では、ウィルス感染又はアグロバクテリウム属が介する形質転換を用いると好都合である。植物又は植物細胞を、前記融合タンパク質をコードするコード領域を有するヌクレオチド配列(ベクター)で形質転換またはトランスフェクションする。形質転換により、例えばトランスジェニック植物のような、安定に形質転換された植物又は植物細胞を生成することができる。或いは、前記植物又は植物細胞を、前記融合タンパク質の一過性発現のためにトランスフェクションすることができる。成熟した植物の一過性トランスフェクションが、最も好ましい。
【0010】
前記ベクターは、形質転換又はトランスフェクションの方法に応じて、DNA又はRNAのベクターとすることができる。殆どの場合は、DNAである。一方、重要な実施形態においては、形質転換又はトランスフェクションは、RNAウィルスをベースとしたベクターを用いて行われ、この場合、前記ヌクレオチド配列は、RNAとすることができる。ある非常に便利な方法では、ウィルスをベースとしたDNAベクターを用いる。DNAベクターがRNAウィルスをベースとした、即ちDNAベクターが前記ヌクレオチド配列に加えてウィルスのRNA配列のcDNAを含むのが好ましい。本発明によるウィルスベクターに用いることができる植物DNA又はRNAウィルスの配列の例は、WO02/29068及びWO0288369に示されている。このようなDNAベクターは、RNAウィルスの転写物を生成する転写プロモータをさらに含む。これらの実施形態では、形質転換又はトランスフェクションは、好ましくはウィルスのトランスフェクションにより、より好ましくはアグロバクテリウム属を介する形質転換により行われる。
【0011】
本発明の方法により生成される対象のタンパク質のN末端アミノ酸Zに対して、3つ組のアミノ酸X−3X−2X−1は、植物の色素体標的融合タンパク質のZに隣接したN末端側のZに天然に存在するアミノ酸配列X−3X−2X−1の組から選択される。前記対象のタンパク質が被子植物で生成されるのが好ましい。この場合、予め決定したZに対して、被子植物に天然に存在するX−3X−2X−1の3つ組を選択する。より好ましくは、前記予め決定した植物がそのメンバーである科、より好ましくは属の植物の色素体標的融合タンパク質のZに隣接する天然に存在するX−3X−2X−1のアミノ酸配列の組から、アミノ酸配列X−3X−2X−1(又は3つ組)が選択される。アミノ酸配列X−3X−2X−1が、前記予め決定した植物と同じ種の植物の色素体標的融合タンパク質のZに隣接する天然に存在するX−3X−2X−1のアミノ酸配列の組から選択されるのが、最も好ましい。
【0012】
ZがMである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、FRV、NRE、VNC、VSC、VQC、VRC、VKC、又はVPEであるのが好ましい。
ZがCである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、RGA、SIR、TIV、又はVRAであるのが好ましい。
ZがIである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、AHS、GST、又はVHCであるのが好ましい。
ZがAである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、ASN、ACR、AAA、FVA、HVR、ICC、IGA、IRA、IRC、ISA、ISC、IQC、QIR、KTK、KAK、PLQ、PIA、PIQ、RMG、RCM、RAQ、RVK、SAA、SCT、SLA、SIC、SIV、TCQ、TAM、TAQ、TCK、VCK、VAM、VVA、VKA、VRA、VTR、VGA、VVR、VVY、VVQ、VSC、VVC、又はVFAであるのが好ましい。
ZがNである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、GST、KAT、又はKQSであるのが好ましい。
ZがHである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、GSDであるのが好ましい。
ZがYである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、VAAであるのが好ましい。
ZがFである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、PSR、又はRFNであるのが好ましい。
ZがPである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、IAE、RVA、RSA、又はSVDであるのが好ましい。
ZがQである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、DDN、IRA、SLG、又はPGLであるのが好ましい。
ZがGである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、DSC、IIC、IVC、LRQ、SAT、VHC、VHA、又はVKCであるのが好ましい。
ZがKである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、IVA、LLV、LPL、LAS、LRQ、MAA、NNN、RTD、TAE、TAQ、TEA、TSE、VAA、VEA、又はVVCであるのが好ましい。
ZがRである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、AAA、IPA、MPT、又はVPSであるのが好ましい。
ZがEである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、ALA、CRA、IVC、TPS、又はVRAであるのが好ましい。
ZがLである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、VLA又はLSRであるのが好ましい。
ZがSである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、AGA、CLS、GKR、FPI、IAG、ITC、IVA、KAM、LCM、NMT、PAK、RLR、SVS、TTR、VCM、VVA、VAQ、VCC、VRC、VCA、又はVRAであるのが好ましい。
ZがVである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、KMS、PRA、PKA、SLF、STS、TGV、TRM、VSF、VRAであるのが好ましい。
ZがDである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、ASAであるのが好ましい。
ZがTである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、AVA、PAA、VAA、VAG、VSA、VNN、又はWPRであるのが好ましい。
【0013】
3つ組X−3X−2X−1と対象のタンパク質の予め決定したN末端残基Zとの上記の組合せを用いることにより、得られた融合タンパク質が効率的に色素体に導かれ、開裂して、N末端終末の高度の正確さで対象のタンパク質を放出するように選ばれた対象のタンパク質に好適な輸送ペプチドを見出す確率は、運任せであった従来技術の方法に比較して大幅に上昇する。あるZに対し1を超えるX−3X−2X−1が可能である場合、これら3つ組X−3X−2X−1の有効性は異なることがある。ある対象のタンパク質に特に適したX−3X−2X−1のアミノ酸3つ組は、次のステップ:
(a)そのN末端からC末端の方向に、前記予め決定したZに対する表1で定義されたC末端アミノ酸X−3X−2X−1を有する輸送ペプチド、及びそれに隣接して、予め決定したN末端アミノ酸Zを有する緑色蛍光タンパク質のようなレポータータンパク質を含む融合タンパク質をコードするベクターを構築すること、
(b)前記融合タンパク質を発現させるために、前記ベクターを植物細胞に導入すること、
(c)色素体のX−1とZとの間での前記融合タンパク質の開裂を評価すること、
(d)前記予め決定したZに対する、請求項5又は6で定義したように1つまたは複数の別のX−3X−2X−1について、ステップ(a)から(c)を繰り返すこと、
(e)好ましい開裂に導くX−3X−2X−1を選択すること、
を含むアッセイにより選択することができる。
前記レポータータンパク質をX−3X−2X−1のC末端側に入れる代わりに、前記対象のタンパク質をX−3X−2X−1に隣接して配置することができ、この場合前記対象のタンパク質にレポータータンパク質が続くことができる。前記対象のタンパク質を前記アッセイで用いる場合には、本発明の方法では効果的なターゲティング及び開裂を付与する確率がより高くなるため、アッセイではX−3X−2X−1の3つ組が選択される。
【0014】
簡潔にするために、アッセイは植物細胞培養物で行うのが好ましく、この場合細胞は対象のタンパク質を生成するのに用いるのと同じ植物に由来することができる。或いは、植物の葉を、アッセイのベクターで一過性にトランスフェクションしてもよい。どちらの方法でも、融合タンパク質の色素体へのターゲティング、及び融合タンパク質の開裂を直接評価できる。融合タンパク質の色素体へのターゲティングは、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)のような蛍光レポータータンパク質と共に図4で行っているように蛍光顕微鏡を用いて評価することができる。融合タンパク質の正確な開裂は、レポータータンパク質、又は(GFPのようなレポータータンパク質に融合することができる)前記対象のタンパク質を分離し、続けてN末端の配列を決定して確認することができる。要約すると、前記アッセイにより色素体にターゲティングされる対象のタンパク質に適した輸送ペプチドを見つける成功率をさらに上昇させることができる。
【0015】
本発明の方法で用いる前記輸送ペプチドに関して、特に制限はない。しかし、本発明の方法に用いる予め決定した植物に関係のある植物から知られている、色素体輸送ペプチドを用いると好都合である。本発明の方法を双子葉植物細胞又は双子葉植物で行う場合、非常に好ましい輸送ペプチドは、N末端からC末端方向にMASSMLSSAA VVATRASAAQ ASMVAPFTGL KSAASFPVTR KQNNLDITSI ASNGGRX−3X−2X−1の配列を有する。本発明の方法を単子葉植物細胞又は単子葉植物で行う場合、非常に好ましい輸送ペプチドは、N末端からC末端方向にMAPTVMASSA TTVAPFQGLK STAGRLPVAR RSSGSLGSVS NGGRX−3X−2X−1の配列を有する。
【0016】
本発明により生成される対象のタンパク質に関して、特に制限はない。対象のタンパク質は、細菌、ウィルス、植物、若しくは動物起源とすることができるか、又は人工的に設計されたものとすることができる。前記対象のタンパク質は農業的形質、ヒト又は動物の健康タンパク質、免疫応答タンパク質、ポリペプチドホルモン等とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の原則は以下の通りである:
(i)C末端アミノ酸残基X−3X−2X−1を有する葉緑体輸送ペプチドTP(X−3X−2X−1)、及びそれに隣接して、
(ii)対象のタンパク質(Z)P[(Z)は対象のタンパク質PのN末端アミノ酸を示す]を含む融合タンパク質TP(XXX)−(Z)P(N末端からC末端)をコードする遺伝子を、好ましくはDNA又はRNAベクターを用いて植物細胞内に送達する。輸送ペプチドTPは、輸送ペプチドの前記3個のC末端アミノ酸残基X−3X−2X−1が、対象のタンパク質のN末端アミノ酸Zと共に、ストロマのプロセシングペプチダーゼにより認識される開裂部位を形成するような方法で操作される。(Robinson及びEllis、1984年、Eur.J.Biochem、142巻、337〜342頁)。このような開裂の結果、前記対象のタンパク質に必要なN末端のZが設けられる。この目的を達成するために、輸送ペプチドは、前記対象のタンパク質のN末端Zに応じてアミノ酸残基X−3X−2X−1が選択されるよう操作される(表1を参照)。例えば様々なZと合致できるなど、縮重が限定されたX−3X−2X−1以外、大部分は、それぞれのN末端アミノ酸Zに対してX−3X−2X−1の組は特有である(表2に示す)。
【0018】
表1に示したデータは、公的に入手できるデータベースから得られた、約400種の核にコードした葉緑体標的タンパク質に対する輸送ペプチド開裂部位を分析した結果である。Gavel及びVon Heijne、1990年、FEBS Lett.、261巻、455〜458頁に示された開裂モチーフ(I/V)−X−(A/C)−Aと関係のある3つ組X−3X−2X−1もあった。表1を作成するにあたり、我々は、輸送ペプチドを開裂して分離した後に1〜2個のアミノ酸残基がN末端からはずれる可能性を考慮に入れた(Emanuelsson、Nielsen及びHeijne、Protein Sci.、8巻、978〜984頁)。我々は、トリプトファン(trp、W)を除く、殆ど全ての可能なN末端アミノ酸残基Zに対して、適するX−3X−2X−13つ組を見出した。しかし、N末端則によると、N末端にWがあると真核細胞及び原核細胞におけるタンパク質が不安定になり、タンパク質の半減期を2〜3分に短縮する(Varshavsky,A.、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93巻、12142〜12149頁)。
【0019】
我々は、また、対象のタンパク質を双子葉植物の色素体(図1)及び単子葉植物の色素体内(図2)に効率的に導入するのに適した人工コンセンサス輸送ペプチドを構築するために、様々な植物種に由来するルビスコの小サブユニットの輸送ペプチドの配列アラインメントを用いた。このような配列を操作し、その機能を試験することについては、詳細を実施例1に述べる。人工輸送ペプチドとのGFP融合体を有する構築体を設計し(図3A、B)、タバコ及びコムギの葉の微粒子銃を用いて試験した。図4に示した結果は、図3A、Bに示した人工輸送ペプチドは、レポータータンパク質を効率的に単子葉植物及び双子葉植物の植物細胞の葉緑体内に導くことを実証する。コンセンサスを構築するために用いられる輸送ペプチドをコードするDNA配列との相同性は最小となるように輸送ペプチドを設計したが、そのターゲティング効率を脅やかすことはなかった。これは、ホストにコードした輸送ペプチドの導入遺伝子の一つに対する相同性が引き起こす、起こり得る導入遺伝子サイレンシングを避けるための予防的措置として行った。
【0020】
実施例1に記載したように設計した配列を、特異的なZと3つ組X−3X−2X−1との全ての可能な組合せを試験するために用いることができる。実験の概要は、実施例2に記載する。
【0021】
本発明の実施例3では、ヒト成長ホルモン(hGH)ソマトトロピン及びヒトインターフェロンα2bを、ニコチアナベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)植物の葉緑体に送達する人工輸送ペプチドの使用について、記載する。タンパク質は両者とも分泌性であり、プロセシングされた型(輸送ペプチドを開裂し分離した後)では、ソマトトロピンではフェニルアラニン(F)、インターフェロンα2bではシステイン(C)から開始するN末端を有する。図6の、枠で囲んだものは、対象のタンパク質のそれぞれのN末端に可能な3つ組X−3X−2X−1である。図6の融合タンパク質をコードする構築体は、ウィルス発現系の3’プロベクター中(図8)にサブクローニングされ(Marillonnetら、2004年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、101巻、6852〜6857頁)、ニコチアナベンサミアナ植物で一過性に発現された。或いは、前記融合タンパク質をコードするベクターは、植物の核DNAに安定して形質転換することができた。図9に示したウェスタンブロット分析の結果は、2つの3つ組のうち一方(X−3X−2X−1=R−F−N;pICH14061A)は正確にプロセシングされたタンパク質に期待されるサイズのhGHの大部分を生成するが、第二の融合体(X−3X−2X−1=P−S−R;pICH14061B)は期待されたサイズにバンドを示さないが、プロセシングされていないhGH前駆体(U)及び正確にプロセシングされた成熟タンパク質より小型の不正確に開裂したタンパク質に関連したバンド(S)を実証している。3つ組の両方とも、Gavel及びVon Heijne、1990年、FEBS Lett.、261巻、455〜458頁で示された、予測された輸送ペプチド開裂部位(I/V)−X−(A/C)−Aの部分ではないことを考えると、これは本発明の方法が有効であることを実証している。
【0022】
植物細胞中にDNA又はRNAベクターを送達するのに、微粒子銃、電気穿孔、又はPEGを介するプロトプラスト処理により前記ベクターを直接植物細胞内に導入することを含む、様々な方法を用いることができる(総説としては、Gelvin,S.B.、1998年、Curr.Opin.Biotechnol.、9巻、227〜232頁、及びHansen及びWright、1999年、Trends Plant Sci.、4巻、226〜231頁を参照のこと)。植物RNA及びDNAウィルスもまた、効率的な送達システムである(Hayesら、1988年、Nature、334巻、179〜182頁、及びPalmerら、1999年、Arch.Virol.、144巻、1345〜1360頁、Lindboら、2001年、Curr.Opin.Plant.Biol.、4巻、181〜185頁)。前記ベクターは、植物のゲノムに安定に組み込むか(直接又はアグロバクテリウム属の介するDNA組込み)、又は導入遺伝子を一過性に発現させる(「アグロインフィルトレーション」(“agroinfiltration“))のいずれかのために、導入遺伝子を送達することができる。
【0023】
本発明に使用する好ましい植物には、農薬的及び園芸的に重要な種を優先してあらゆる植物の種を含む。本発明で使用する一般的な作物には、アルファルファ、オオムギ、豆、カノーラ、ササゲ、綿花、トウモロコシ、クローバー、ハス、レンズマメ、ルピナス、キビ、カラスムギ、エンドウ、ナンキンマメ、コメ、ライムギ、スイートクローバー、ヒマワリ、スイートピー、ダイズ、モロコシ、ライコムギ、ヤムビーン、ベルベットビーン、カラスノエンドウ、コムギ、フジ、及びナッツ植物がある。本発明を実践するのに好ましい植物種は、イネ科、キク科、ナス科、及びバラ科の典型を含むが、これらに制限されない。
さらに、本発明で用いる好ましい種は:アラビドプシス属、コヌカグサ属、ネギ属、キンギョソウ属、オランダミツバ属、ナンキンマメ属、アスパラガス属、ロウトウ属、カラスムギ属、ホウライチク属、アブラナ属、スズメノチャヒキ属、ルリマガリバナ属、チャノキ属、アサ属、トウガラシ属、ヒヨコマメ属(Cicer)、アカザ属、キコリウム属(Chichorium)、ミカン属、コーヒー属、ハトムギ属、キュウリ属、カボチャ属(Curcubita)、ギョウギシバ属、カモガヤ属、チョウセンアサガオ属、ニンジン属、ジギタリス属、ヤマノイモ属、エラエイス属(Elaeis)、オヒシバ属、ウシノゲグサ属、オランダイチゴ属、フウロソウ属、ダイズ属、ヒマワリ属、ヘテロカリス属、ゴムノキ属、オオムギ属、ヒヨス属、サツマイモ属、アキノノゲシ属、ヒラマメ属(Lens)、ユリ属、アマ属、ドクムギ属、ハス属、トマト属、マジョラナ属(Majorana)、リンゴ属、マンギフェラ属、イモノキ属、ウマゴヤシ属、アフリカウンラン属、タバコ属、オノブリキス属(Onobrychis)、イネ属、キビ属、ペラルゴニウム属(Pelargonium)、チカラシバ属、ペチュニア属、エンドウ属、インゲンマメ属、アワガエリ属、イチゴツナギ属、サクラ属、キンポウゲ属、ダイコン属、スグリ属、トウゴマ属、キイチゴ属、サトウキビ属、サルピグロッシス属、ライムギ属、キオン属、エノコログサ属、シロガラシ属、ナス属、モロコシ属、ステノタフルム属(Stenotaphrum)、カカオ属、シャジクソウ属、トリゴネラ属(Trigonella)、コムギ属、ソラマメ属、ササゲ属(Vigna)、ブドウ属、トウモロコシ属、及びオリルアエ(Olyreae)、ファロイダエ(Pharoideae)、及びその他多数の属に由来する植物である。
【0024】
本発明の範囲内では、薬剤上及び実用のタンパク質を生成するには、食物又は食物連鎖に含まれない植物種が特に好ましい。その中でもタバコ種は、形質転換、及びよく発達した発現ベクター(特にウィルスベクター)系との栽培が容易であるため、最も好ましい。
【0025】
本発明を用いて対象の細胞のプロセスとして発現させ、分離することができる対象の遺伝子、そのフラグメント(機能的又は非機能的)、及びその人工誘導体は、デンプン修飾酵素(デンプン合成酵素、デンプンリン酸化酵素、枝切り酵素、デンプン分枝酵素、デンプン分枝酵素II、粒結合デンプン合成酵素)、スクロースリン酸合成酵素、スクロースホスホリラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ポリフルクタンスクラーゼ(polyfructan sucrase)、ADPグルコースピロホスホリラーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、フルクトシルトランスフェラーゼ、グリコーゲン合成酵素、ペクチンエステラーゼ、アプロチニン、アビジン、細菌性レバンスクラーゼ、大腸菌(E.coli)glgAタンパク質、MAPK4及びオーソログ、窒素同化/代謝酵素、グルタミン合成酵素、植物オスモチン、2Sアルブミン、タウマチン、部位特異的リコンビナーゼ/インテグラーゼ(FLP、Cre、Rリコンビナーゼ、Int、SSVIインテグラーゼR、インテグラーゼphiC31、又はこれらの活性フラグメント若しくは変異体)、イソペンテニルトランスフェラーゼ、ScaM5(ダイズカルモジュリン)、甲殻類タイプの毒素又は殺虫活性フラグメント、ユビキチン結合酵素(E2)融合タンパク質、脂肪、アミノ酸、糖、核酸、及び多糖類を代謝する酵素、スーパーオキシドジスムターゼ、プロテアーゼの不活性プロ酵素型、植物タンパク質毒素、繊維生成植物における形質変更繊維、バチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来の甲虫類活性毒素(Bt2毒素、殺虫性結晶タンパク質(ICP)、CrylC毒素、デルタエンドトキシン、ポリオペプチド毒素、プロ毒素等)、昆虫特有毒素AaIT、セルロース分解酵素、アシドサームスセルロティカス(Acidothermus celluloticus)由来のE1セルラーゼ、リグニン修飾酵素、シンナモイルアルコール脱水素酵素、トレハロース−6−リン酸合成酵素、サイトカイニン代謝経路の酵素、HMG−CoA還元酵素、大腸菌無機ピロホスファターゼ、種子貯蔵タンパク質、エルウィニアハービコラ(Erwinia herbicola)リコペン合成酵素、ACC酸化酵素、pTOM36コードタンパク質、フィターゼ、ケト加水分解酵素、アセトアセチルCoA還元酵素、PHB(ポリヒドロキシブタン酸)合成酵素、アシルキャリアータンパク質、ナピン、EA9、非高等植物フィトエン合成酵素、pTOM5コードタンパク質、ETR(エチレンレセプター)、色素体ピルビン酸リン酸ジキナーゼ、線虫誘導性膜孔タンパク質、植物細胞の形質増強光合成又は色素体機能、スチルベン合成酵素、フェノールを水酸化できる酵素、カテコールジオキシゲナーゼ、カテコール2,3−ジオキシゲナーゼ、クロロムコネートシクロイソメラーゼ、アントラニル酸合成酵素、アブラナ属AGL15タンパク質、フルクトース1,6−ビスホスファターゼ(FBPase)、AMV RNA3、PVYレプリカーゼ、PLRVレプリカーゼ、ポティウィルスコートタンパク質、CMVコートタンパク質、TMVコートタンパク質、ルテオウィルスレプリカーゼ、MDMVメッセンジャーRNA、変異ジェミニウィルスレプリカーゼ、ウンベルラリアカリフォルニカ(Umbellularia californica)C12:0選択性アシル−ACPチオエステラーゼ、植物C10又はC12:0選択性アシル−ACPチオエステラーゼ、C14:0選択性アシル−ACPチオエステラーゼ、(luxD)、植物合成因子A、植物合成因子B、Δ6−不飽和化酵素、植物細胞において脂肪酸のペルオキシソーム性β酸化における酵素活性を有するタンパク質、アシルCoA酸化酵素、3−ケトアシルCoAチオラーゼ、リパーゼ、トウモロコシアセチルCoAカルボキシラーゼ、5−エノールピルビン酸シキメート−3−リン酸合成酵素(EPSP)、ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(BAR、PAT)、CP4タンパク質、ACCデアミナーゼ、翻訳後開裂部位を有するタンパク質、スルホンアミド耐性を授与するDHPS遺伝子、細菌性ニトリラーゼ、2,4−Dモノオキシゲナーゼ、アセト乳酸合成酵素又はアセトヒドロキシ酸合成酵素(ALS、AHAS)、ポリガラクツロナーゼ、Taqポリメラーゼ、細菌性ニトリラーゼ、制限エンドヌクレアーゼを含むその他多くの細菌又はファージの酵素、メチラーゼ、DNA及びRNAリガーゼ、DNA及びRNAポリメラーゼ、逆転写酵素、ヌクレアーゼ(DNase及びRNAse)、ホスファターゼ、トランスフェラーゼ等を含むがこれらに限定されない。
【0026】
我々の発明は、また、分子農業、並びに工業用酵素(セルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、フィターゼ等)及び線維性タンパク質(コラーゲン、クモの糸のタンパク質等)を含む商業的に価値がありかつ薬剤的に重要なタンパク質の精製の目的に使用することができる。ヒト又は動物の健康タンパク質はいずれも、我々の発明の方法に記載したものを用いて発現し精製することができる。そのような対象のタンパク質の例として、特に、免疫反応タンパク質(モノクローナル抗体、単鎖抗体、T細胞レセプター等)、病原性微生物に由来するものを含む抗原、コロニー刺激因子、レラキシン、ソマトトロピン(HGH)及びプロインスリンを含むポリペプチドホルモン、サイトカイン及びそのレセプター、インターフェロン、増殖因子及び凝固因子、酵素的活性のあるリソソーム酵素、フィブリノーゲン溶解ポリペプチド、血液凝固因子、トリプシノーゲン、a1−アンチトリプシン(AAT)、ヒト血清アルブミン、グルコセレブロシダーゼ、天然コレラ毒素B、並びに上記タンパク質の融合、変異型、及び合成誘導体のような機能保存性タンパク質が含まれる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
単子葉植物及び双子葉植物の合成輸送ペプチド配列の生成
a)双子葉植物における色素体標的のための輸送ペプチド
様々な双子葉植物由来のルビスコ小サブユニットの前駆体タンパク質(rbcs)に由来する輸送ペプチドを標的とする9個の葉緑体のコンセンサスアミノ酸配列を、DNASTARソフトウェアパッケージの配列分析で作成した(図1)。コンセンサス輸送ペプチドをコードするヌクレオチド配列を、双子葉植物のコドンの使用頻度を考慮に入れて設計し、平均GC含量が43.6%になる最高コドン使用頻度値を基準にして各々の3つ組コドンを選択した。また、我々は配列を設計することにより、コンセンサス配列のcDNAと、コンセンサスを構築するのに用いられる双子葉植物種の輸送ペプチドをコードするcDNAとの間のcDNAレベルの相違を最大にしようと試みた。N末端翻訳融合体をレポーター遺伝子(GFP)と共に作成するため、好都合な制限部位の側面に位置する最終ヌクレオチド配列をde novo合成し、ClaI/NcoIフラグメント(ClaI 5’−cATCGATaac atggcttctt ctatgctttc ttctgctgct gttgttgcta ctcgtgctag tgctgctcaa gctagtatgg ttgctccttt tactggactt aagtctgctg cttcttttcc tgttactaga aagcaaaaca accttgatat tacttctatt gctagtaacg gaggaagagt tcaatgcgCC ATGG−3’ NcoI)として対象の構築体内にサブクローンした(図3A、プラスミドpICH5300を参照のこと)。
【0028】
b)単子葉植物における標的のための輸送ペプチド
上記に述べたのと同様の方法を用いて、単子葉植物において、シグナル配列を標的にして発現する人工葉緑体、及び単子葉植物を標的とする色素体を作製した。様々な単子葉植物のrbcsタンパク質由来の6個の葉緑体輸送ペプチドに導出されるコンセンサスアミノ酸配列を、DNASTARソフトウェアパッケージの配列分析で作成した(図2)。コンセンサス輸送ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、単子葉植物のコドンの使用頻度を考慮に入れて設計し、最終ヌクレオチド配列の平均GC含量が71.0%になる最高コドン使用頻度値を基にして各々の3つ組コドンを選択した。単子葉植物種のコンセンサス輸送ペプチドをコードするヌクレオチド配列をde novo合成し、ClaI/NcoI又はBamHI/NcoI−フラグメント(ClaI/BamHI 5’−cATCGATAGG ATCCacgatg gccccaaccg tgatggcctc ctccgccacc accgtggccc cattccaggg cctcaagtcc accgccggcc tcccagtggc caggaggtcc tccggcagcc tcggcagcgt gagcaacggc ggcaggatca ggtgcgCCAT GG−3’NcoI)として対象のベクター内にサブクローンした(図3B、プラスミドpICH5320を参照のこと)。
【0029】
人工輸送ペプチドの助けを借りて葉緑体ターゲティングの有効性を試験するために、輸送ペプチド−レポーター遺伝子融合体をコードするプラスミドを、微粒子銃の助けを借りてタバコ及びコムギの葉の細胞内に送達した。結果は、人工輸送ペプチドの助けを借りて、双子葉植物種及び単子葉植物種の両方の葉緑体内に導く効果的なGFPを示した(図4)。
【0030】
(実施例2)
対象のタンパク質の望ましいN末端(アラニン以外)を提供するための輸送ペプチド開裂部位の設計及び試験
葉緑体内にターゲティングする対象のタンパク質に必要なN末端を生成するために、我々は公的に入手できるデータベースから、予想又は実験的に確認された、約400個の核にコードされた葉緑体を標的とするタンパク質の輸送ペプチド開裂部位を分析した。この分析の結果を表1に示した。図5に示した構築体を用いて対象のタンパク質に望ましいN末端を提供する適性があるか、開裂部位を試験することができる。最も単純な型(構築体A)は、輸送ペプチド(TP)及びレポーター遺伝子(GFP)側面に並ぶクローニング部位からなる。GFPの最初のメチオニン(M)は、共に開裂部位を生成するのに適合性のある3つ組X−3X−2X−1を見出すために、あらゆる他のアミノ酸Zで置換することができる。好適な制限部位であるRS1及びRS2は、TP及びGFPのコード領域内に位置することができるが、相互に離れておらず(好ましくは30〜50bpの範囲内)、そのため構築体に3つ組X−3X−2X−1及びアミノ酸残基Zの望ましい組合せを導入するために、2個の部分的に一致する対象のプライマーの合成が容易になっている。調製された構築体は、植物細胞で一過性に発現することができ、GFPの区画化は紫外線顕微鏡下で容易に観察でき、必要とされるN末端はタンパク質マイクロシーケンシングで存在を確認できる。GFPの分離を促進するために、レポータータンパク質のC末端終末を(例えば、6xHIS−タグで)タギングすることができる。より複雑な型の試験構築体は対象の遺伝子のGFP融合体を含む(構築体B、図5)、というのは、これにより葉緑体で前記対象の遺伝子をプロセシングするという期待された結果についてのさらに精密なデータを提供できるからである。
【0031】
(実施例3)
本発明による開裂部位に人工輸送ペプチドを用いることによる、ソマトトロピン(hGH)及びインターフェロンα2Bの葉緑体へのターゲティング
図6に示したタンパク質融合体のコード配列を作成し、標準分子生物学クローニングプロトコール(Sambrook,J.、Fritsch,E.F.及びManiatis,T.、1989年、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、CSH Laboratory Press)に従い、バイナリーベクターにクローンした(図8)。図6に示したタンパク質融合体に関連したDNA構築体を、図8に示す。ソマトトロピンの輸送ペプチドとの2個の融合体、及びインターフェロンα2bの4個の異なる融合体を、表1のX−3X−2X−1の3つ組に従い、N末端のアミノ酸を、ソマトトロピンはフェニルアラニン(F)で、インターフェロンα2bはシステイン(C)でそれぞれ作成した。図8に示したバイナリーベクターは、タバコモザイクウィルス(TMV)をベースとした発現システムの3’構成部分(プロベクター)であり、WO02088369に、及びMarillonnetら(2004年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、101巻、6852〜6857頁)により詳しく記載されている。ニコチアナべンサミアナ植物を用いて、プロベクター技術を用い、両タンパク質を発現させた。或いは、この実験の目的を達成するために、あらゆる適当な植物発現系を用いることができる。葉緑体のターゲティング及び輸送ペプチドの標的タンパク質から開裂分離の効率を調査するために、葉の材料から可溶タンパク質を全て抽出し、市販で入手できる抗ソマトトロピンモノクローナル抗体(マウス抗−hGH、カタログNo:RDI−TRK2G2−Gh29、米国ニュージャージー州、フランダース、RDI Research Diagnostic)及び抗インターフェロンα2bモノクローナル抗体(カタログNo.95360−0128、ドイツ、ケルン、Biotrend)を用いてウェスタンブロットで分析した。2つの異なるX−3X−2X−13つ組を用いた色素体標的hGHのウェスタンブロット分析結果を、図9Aに示す。これら2つの融合体の発現に用いた構築体(pICH14061A、X−3X−2X−1=R−F−N;pICH14061B、X−3X−2X−1=P−S−R)を図9Bに示す。
【表1】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】9種の異なる双子葉植物に由来するルビスコ小サブユニットの輸送ペプチドのペプチド配列であり、下はそれらから導かれたコンセンサス配列を示す図である。
【図2】6種の異なる単子葉植物種に由来するルビスコ小サブユニットの輸送ペプチドのペプチド配列であり、下はそれらから導かれたコンセンサス配列示す図である。
【図3A】pICH5300ベクターの概要を示す図である。
【図3B】pICH5320ベクターの概要を示す図である。
【図4】タバコ(A、C)及びコムギ(B、D)の表皮細胞における、GFPの一過性発現を示す図である。A、Bは輸送ペプチドのないGFP、Cは双子葉植物種の合成輸送ペプチドとのGFP融合体、Dは単子葉植物の合成輸送ペプチドとのGFP融合体である。
【図5】ある所定のN末端アミノ酸Zで対象のタンパク質の最適なX−3X−2X−1の3つ組をスクリーニングするための構築体を示す図である。TPはC末端アミノ酸X−3X−2X−1のない輸送ペプチドをコードする配列、GOIは対象の遺伝子、GFPは緑色蛍光タンパク質をコードする配列、pr1及びpr2はX−3X−2X−1−Z配列をコードする領域を設計しクローニングするオーバーラッププライマー、RS1及びRS2はカスタムの制限酵素切断部位である。
【図6】合成輸送ペプチドにより対象のタンパク質(ソマトトロピン又はインターフェロンα2b)を色素体内にターゲティングするための融合タンパク質に予想される全てのタイプのアミノ酸配列を示す図である。融合タンパク質は、輸送ペプチドを開裂して分離した後、対象のタンパク質の必要なN末端アミノ酸配列を生成するように設計されている。下線を付けたものは合成輸送ペプチド、枠で囲んだものは輸送ペプチドのC末端アミノ酸として予想されたX−3X−2X−13つ組の変異体、太文字は対象のタンパク質の最初のアミノ酸配列である。
【図7】図6に示したタンパク質融合体をコードするDNA配列を示す図である。
【図8】バイナリーベクターであるpICH14061及びpICH14071のT−DNA領域の概要を示す図である。
【図9A】輸送ペプチドのC末端アミノ酸として、予想された2つの異なる3つ組X−3X−2X−1の変異体を用いて、色素体標的ヒト成長ホルモン(hGH)ソマトトロピンのウェスタンブロット分析の結果を示す図である。 抗hGH抗体のウェスタンブロットである。レーンCは成熟hGH(対照)、レーン1、2はpICH14061Aから発現されたhGH、レーン3、4はpICH14061Bから発現されたhGH、UはhGH前駆物質(未処理)、Mは成熟、正確にプロセシングされたhGH、Sは不正確にプロセシングされた(小型)hGHである。
【図9B】バイナリーベクターpICH14061A及びpICH14061BのT−DNA領域の詳細図である。TPは輸送ペプチド、Pは転写プロモータ、Tは転写ターミネータ、NPTはネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、NTRはタバコモザイクウィルスの3’非翻訳領域である。アミノ酸3つ組R−F−N(pICH14061A)及びP−S−R(pICH14061B)は、N末端側からC末端側の方向に一文字アミノ酸コードで示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子組換え植物細胞、特にその色素体における対象の異種タンパク質の生成方法、及びその方法で生成されたタンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は、薬剤的及び産業的応用を含む組換えタンパク質の安価で制限なく大規模に実現できる生成システムであるため、魅力ある選択となっている(Stogerら、2000年、Plant Mol.Biol.、42巻、583〜590頁、及びLarrick及びThomas、2001年、Curr.Opin.Biotechnol.、12巻、411〜418頁)。特に薬剤分野の殆どのタンパク質は分泌性であり、例えば、最初にシグナルペプチドを有するタンパク質前駆体として翻訳され、シグナルペプチドはさらなる翻訳後プロセシング及び区画化のためにタンパク質を小胞体の網状構造(ER)に導く。前記プロセシングには、正確な折りたたみとアセンブリ、即ちジスルフィド結合の形成及び複合的な酵素的修飾が含まれる。しかし、植物はグリコシル化部位に結合した様々なタイプの炭水化物を合成するため、動物細胞と植物細胞のERでは翻訳後のタンパク質修飾、特にグリコシル化パターンに大幅な相違があり得る(Wilson,IB.、2002年、Curr.Opin.Struct.Biol.、12巻、569〜577頁、及びSchillberg、Fischer及びEmans、2003年、Cell Mol.Life Sci.、60巻、433〜445頁)。植物に特有の翻訳後修飾、特に植物が産生した薬剤用タンパク質のグリコシル化は、患者にアレルギー反応を引き起こすことがあるため、多くの場合、避ける方が好都合である。葉緑体にはそれ自体のタンパク質品質管理システムがあり、ER同様正確なジスルフィド結合形成及びタンパク質の折りたたみを提供することができる(Dicksonら、2000年、J.Biol.Chem.、275巻、11829〜11835頁)。タンパク質の活性にいかなる役割も演じないグリコシル化は、2つの異なる手段、即ちa)プロセシングのために対象のタンパク質を様々な細胞レベル下の区画、例えば葉緑体内にターゲティングする手段、b)トランスプラストミック植物を操作することにより、対象のタンパク質を植物の色素体で発現する手段を用いれば容易に避けることができる。後者の方法は、メチオニン(M)以外のN末端アミノ酸残基を必要とするタンパク質を発現させるのには適当でない。ユビキチンの開裂の際必要とされるN末端を得るために、ヒトの分泌タンパク質であるソマトトロピンをトランスプラストミックタバコで、ユビキチン融合として発現させることによりこの問題に取り組む試みがあった(Staubら、2000年、Nature Biotechnol.、18巻、333〜338頁)。ユビキチン融合タンパク質は、ユビキチンプロテアーゼによりユビキチンのC末端残基のすぐ下流で開裂され、プロリン以外の選択したN末端残基を含む組換えタンパク質が生成できるようになる(Baker、R.T.、1996年、Curr.Opin.Biotechnol.7巻、541〜546頁)。しかし、葉緑体にはユビキチンに特異性のあるプロテアーゼは存在せず、ユビキチン−ソマトトロピン融合体のプロセシングはタンパク質の抽出過程の間にのみ起こり、高レベル(70%まで)のプロセシングされていないソマトトロピンが得られた。
【0003】
異種タンパク質を色素体の外で発現させた後に、植物細胞の色素体内にターゲティングする試みがあった(米国特許第6,063,601号、米国特許第6,130,366号)。これには、対象のタンパク質をN末端の輸送ペプチドと融合する必要がある。輸送ペプチドには、色素体の膜を通過するトランスロケーションを促進する機能がある。色素体内部で、輸送ペプチドは色素体プロテアーゼにより開裂する。天然の色素体標的植物タンパク質の開裂部位については、詳しく調べられている(Gavel及びVon Heijne、1990年、FEBS Lett.、261巻、455〜458頁)。これらは、適応の良好なある植物の天然タンパク質に関する調査である。しかし、異種タンパク質は、進化により植物色素体に適合していない。したがって、望ましい対象のタンパク質を高品質で、特にN末端配列を高い正確度で生成する、輸送ペプチド、及び対象の異種タンパク質、及び効率的かつ規定の融合タンパク質の開裂を確実にするための予想される開裂場所周辺の配列を有する融合タンパク質を構築するという普遍的な問題が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、対象の色素体標的異種タンパク質の生成方法を提供し、それにより前記対象のタンパク質の望ましいN末端配列を高い信頼性で容易に得ることが、本発明の問題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この問題は、予め決定した植物の細胞で、対象のタンパク質を生成する方法であって、
(i)融合タンパク質を色素体内にターゲティングする輸送ペプチド、及びそれに隣接して、
(ii)前記対象のタンパク質
をN末端からC末端の方向で含む前記融合タンパク質をコードするベクターを前記細胞内に導入することを含み、
前記輸送ペプチドC末端の3個のアミノ酸X−3X−2X−1及び前記対象のタンパク質N末端のアミノ酸Zが、色素体で前記対象のタンパク質を放出するためにX−1とZとの間で前記融合タンパク質を開裂するための開裂部位:
X−3X−2X−1−Z
を形成し、前記対象のタンパク質の予め決定したアミノ酸Zに対して、アミノ酸配列X−3X−2X−1が、植物の色素体を標的とする融合タンパク質のN末端側のZに天然に存在するZに隣接するアミノ酸配列X−3X−2X−1の組から選択され、これらにより前記開裂部位を形成する方法により解決される。
本明細書において、一文字コードは、20個の標準アミノ酸に対して一般的に用いられるものである。同様に、X−3、X−2、X−1、及びZの記号はそれぞれ標準アミノ酸を意味する。−1、−2、及び−3の数字は、輸送ペプチドのN末端に向かう方向で輸送ペプチド配列におけるそれぞれのアミノ酸の位置を示す。
【0006】
開裂の正確さ及び効率が、開裂場所付近の輸送ペプチド及び色素体標的天然タンパク質の配列に依存することは、一般的に認められている。しかし、任意の輸送ペプチド及び選択された対象のタンパク質の組合せにまで拡張することのできる一般的な知識を、異種タンパク質に応用することはできない。
【0007】
開裂場所を共同して決定する、輸送ペプチドのC末端配列の長さ及び対象のタンパク質のN末端配列の長さは明らかではない。天然タンパク質では、これら2つの配列は進化の間に相互に調節されてきたと仮定するのが理にかなっている。色素体に導かれる異種タンパク質では、適当な輸送ペプチドを試行錯誤で決定しなければならない。前記試行錯誤の成功は予測できない。全くの幸運で好適な配列の組合せが見つかることもある。しかし、不確実性は大きく、あてにならない。
【0008】
我々は驚くべきことに、対象のタンパク質のN末端配列に適合する輸送ペプチドのC末端配列を見出すという問題が、考慮の序列に基づきさらに高い成功率で解決できることを見出した。この序列の中では、対象の異種タンパク質のN末端アミノ酸及び輸送ペプチドの最後の3個のアミノ酸のみを主に考えれば十分であることが見出された。特に、対象のタンパク質のN末端のアミノ酸はそれぞれ、輸送ペプチドの好適なC末端アミノ酸の3つ組の特定の組と相関があることが見出されている。
【0009】
本発明の方法では、前記融合タンパク質をコードするベクターを植物細胞内に導入する。すると、前記対象のタンパク質は、前記植物細胞、例えば細胞培養物で発現することができる。前記対象のタンパク質を植物全体で発現させるのが好ましい。これは、前記ベクターで形質転換された植物細胞から植物を再生することにより達成できる。或いは、前記ベクターを植物全体の植物細胞に導入する。植物又は植物細胞の形質転換方法、又はトランスフェクション方法のいくつかは当業者に知られており、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)を介した形質転換、微粒子銃、PEGが介するプロトプラスト形質転換、ウィルス感染等が含まれる。一過性発現又は一過性発現のためのトランスフェクションの好ましい実施形態では、ウィルス感染又はアグロバクテリウム属が介する形質転換を用いると好都合である。植物又は植物細胞を、前記融合タンパク質をコードするコード領域を有するヌクレオチド配列(ベクター)で形質転換またはトランスフェクションする。形質転換により、例えばトランスジェニック植物のような、安定に形質転換された植物又は植物細胞を生成することができる。或いは、前記植物又は植物細胞を、前記融合タンパク質の一過性発現のためにトランスフェクションすることができる。成熟した植物の一過性トランスフェクションが、最も好ましい。
【0010】
前記ベクターは、形質転換又はトランスフェクションの方法に応じて、DNA又はRNAのベクターとすることができる。殆どの場合は、DNAである。一方、重要な実施形態においては、形質転換又はトランスフェクションは、RNAウィルスをベースとしたベクターを用いて行われ、この場合、前記ヌクレオチド配列は、RNAとすることができる。ある非常に便利な方法では、ウィルスをベースとしたDNAベクターを用いる。DNAベクターがRNAウィルスをベースとした、即ちDNAベクターが前記ヌクレオチド配列に加えてウィルスのRNA配列のcDNAを含むのが好ましい。本発明によるウィルスベクターに用いることができる植物DNA又はRNAウィルスの配列の例は、WO02/29068及びWO0288369に示されている。このようなDNAベクターは、RNAウィルスの転写物を生成する転写プロモータをさらに含む。これらの実施形態では、形質転換又はトランスフェクションは、好ましくはウィルスのトランスフェクションにより、より好ましくはアグロバクテリウム属を介する形質転換により行われる。
【0011】
本発明の方法により生成される対象のタンパク質のN末端アミノ酸Zに対して、3つ組のアミノ酸X−3X−2X−1は、植物の色素体標的融合タンパク質のZに隣接したN末端側のZに天然に存在するアミノ酸配列X−3X−2X−1の組から選択される。前記対象のタンパク質が被子植物で生成されるのが好ましい。この場合、予め決定したZに対して、被子植物に天然に存在するX−3X−2X−1の3つ組を選択する。より好ましくは、前記予め決定した植物がそのメンバーである科、より好ましくは属の植物の色素体標的融合タンパク質のZに隣接する天然に存在するX−3X−2X−1のアミノ酸配列の組から、アミノ酸配列X−3X−2X−1(又は3つ組)が選択される。アミノ酸配列X−3X−2X−1が、前記予め決定した植物と同じ種の植物の色素体標的融合タンパク質のZに隣接する天然に存在するX−3X−2X−1のアミノ酸配列の組から選択されるのが、最も好ましい。
【0012】
ZがMである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、FRV、NRE、VNC、VSC、VQC、VRC、VKC、又はVPEであるのが好ましい。
ZがCである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、RGA、SIR、TIV、又はVRAであるのが好ましい。
ZがIである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、AHS、GST、又はVHCであるのが好ましい。
ZがAである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、ASN、ACR、AAA、FVA、HVR、ICC、IGA、IRA、IRC、ISA、ISC、IQC、QIR、KTK、KAK、PLQ、PIA、PIQ、RMG、RCM、RAQ、RVK、SAA、SCT、SLA、SIC、SIV、TCQ、TAM、TAQ、TCK、VCK、VAM、VVA、VKA、VRA、VTR、VGA、VVR、VVY、VVQ、VSC、VVC、又はVFAであるのが好ましい。
ZがNである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、GST、KAT、又はKQSであるのが好ましい。
ZがHである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、GSDであるのが好ましい。
ZがYである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、VAAであるのが好ましい。
ZがFである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、PSR、又はRFNであるのが好ましい。
ZがPである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、IAE、RVA、RSA、又はSVDであるのが好ましい。
ZがQである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、DDN、IRA、SLG、又はPGLであるのが好ましい。
ZがGである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、DSC、IIC、IVC、LRQ、SAT、VHC、VHA、又はVKCであるのが好ましい。
ZがKである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、IVA、LLV、LPL、LAS、LRQ、MAA、NNN、RTD、TAE、TAQ、TEA、TSE、VAA、VEA、又はVVCであるのが好ましい。
ZがRである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、AAA、IPA、MPT、又はVPSであるのが好ましい。
ZがEである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、ALA、CRA、IVC、TPS、又はVRAであるのが好ましい。
ZがLである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、VLA又はLSRであるのが好ましい。
ZがSである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、AGA、CLS、GKR、FPI、IAG、ITC、IVA、KAM、LCM、NMT、PAK、RLR、SVS、TTR、VCM、VVA、VAQ、VCC、VRC、VCA、又はVRAであるのが好ましい。
ZがVである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、KMS、PRA、PKA、SLF、STS、TGV、TRM、VSF、VRAであるのが好ましい。
ZがDである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、ASAであるのが好ましい。
ZがTである場合、前記3つ組X−3X−2X−1は、AVA、PAA、VAA、VAG、VSA、VNN、又はWPRであるのが好ましい。
【0013】
3つ組X−3X−2X−1と対象のタンパク質の予め決定したN末端残基Zとの上記の組合せを用いることにより、得られた融合タンパク質が効率的に色素体に導かれ、開裂して、N末端終末の高度の正確さで対象のタンパク質を放出するように選ばれた対象のタンパク質に好適な輸送ペプチドを見出す確率は、運任せであった従来技術の方法に比較して大幅に上昇する。あるZに対し1を超えるX−3X−2X−1が可能である場合、これら3つ組X−3X−2X−1の有効性は異なることがある。ある対象のタンパク質に特に適したX−3X−2X−1のアミノ酸3つ組は、次のステップ:
(a)そのN末端からC末端の方向に、前記予め決定したZに対する表1で定義されたC末端アミノ酸X−3X−2X−1を有する輸送ペプチド、及びそれに隣接して、予め決定したN末端アミノ酸Zを有する緑色蛍光タンパク質のようなレポータータンパク質を含む融合タンパク質をコードするベクターを構築すること、
(b)前記融合タンパク質を発現させるために、前記ベクターを植物細胞に導入すること、
(c)色素体のX−1とZとの間での前記融合タンパク質の開裂を評価すること、
(d)前記予め決定したZに対する、請求項5又は6で定義したように1つまたは複数の別のX−3X−2X−1について、ステップ(a)から(c)を繰り返すこと、
(e)好ましい開裂に導くX−3X−2X−1を選択すること、
を含むアッセイにより選択することができる。
前記レポータータンパク質をX−3X−2X−1のC末端側に入れる代わりに、前記対象のタンパク質をX−3X−2X−1に隣接して配置することができ、この場合前記対象のタンパク質にレポータータンパク質が続くことができる。前記対象のタンパク質を前記アッセイで用いる場合には、本発明の方法では効果的なターゲティング及び開裂を付与する確率がより高くなるため、アッセイではX−3X−2X−1の3つ組が選択される。
【0014】
簡潔にするために、アッセイは植物細胞培養物で行うのが好ましく、この場合細胞は対象のタンパク質を生成するのに用いるのと同じ植物に由来することができる。或いは、植物の葉を、アッセイのベクターで一過性にトランスフェクションしてもよい。どちらの方法でも、融合タンパク質の色素体へのターゲティング、及び融合タンパク質の開裂を直接評価できる。融合タンパク質の色素体へのターゲティングは、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)のような蛍光レポータータンパク質と共に図4で行っているように蛍光顕微鏡を用いて評価することができる。融合タンパク質の正確な開裂は、レポータータンパク質、又は(GFPのようなレポータータンパク質に融合することができる)前記対象のタンパク質を分離し、続けてN末端の配列を決定して確認することができる。要約すると、前記アッセイにより色素体にターゲティングされる対象のタンパク質に適した輸送ペプチドを見つける成功率をさらに上昇させることができる。
【0015】
本発明の方法で用いる前記輸送ペプチドに関して、特に制限はない。しかし、本発明の方法に用いる予め決定した植物に関係のある植物から知られている、色素体輸送ペプチドを用いると好都合である。本発明の方法を双子葉植物細胞又は双子葉植物で行う場合、非常に好ましい輸送ペプチドは、N末端からC末端方向にMASSMLSSAA VVATRASAAQ ASMVAPFTGL KSAASFPVTR KQNNLDITSI ASNGGRX−3X−2X−1の配列を有する。本発明の方法を単子葉植物細胞又は単子葉植物で行う場合、非常に好ましい輸送ペプチドは、N末端からC末端方向にMAPTVMASSA TTVAPFQGLK STAGRLPVAR RSSGSLGSVS NGGRX−3X−2X−1の配列を有する。
【0016】
本発明により生成される対象のタンパク質に関して、特に制限はない。対象のタンパク質は、細菌、ウィルス、植物、若しくは動物起源とすることができるか、又は人工的に設計されたものとすることができる。前記対象のタンパク質は農業的形質、ヒト又は動物の健康タンパク質、免疫応答タンパク質、ポリペプチドホルモン等とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の原則は以下の通りである:
(i)C末端アミノ酸残基X−3X−2X−1を有する葉緑体輸送ペプチドTP(X−3X−2X−1)、及びそれに隣接して、
(ii)対象のタンパク質(Z)P[(Z)は対象のタンパク質PのN末端アミノ酸を示す]を含む融合タンパク質TP(XXX)−(Z)P(N末端からC末端)をコードする遺伝子を、好ましくはDNA又はRNAベクターを用いて植物細胞内に送達する。輸送ペプチドTPは、輸送ペプチドの前記3個のC末端アミノ酸残基X−3X−2X−1が、対象のタンパク質のN末端アミノ酸Zと共に、ストロマのプロセシングペプチダーゼにより認識される開裂部位を形成するような方法で操作される。(Robinson及びEllis、1984年、Eur.J.Biochem、142巻、337〜342頁)。このような開裂の結果、前記対象のタンパク質に必要なN末端のZが設けられる。この目的を達成するために、輸送ペプチドは、前記対象のタンパク質のN末端Zに応じてアミノ酸残基X−3X−2X−1が選択されるよう操作される(表1を参照)。例えば様々なZと合致できるなど、縮重が限定されたX−3X−2X−1以外、大部分は、それぞれのN末端アミノ酸Zに対してX−3X−2X−1の組は特有である(表2に示す)。
【0018】
表1に示したデータは、公的に入手できるデータベースから得られた、約400種の核にコードした葉緑体標的タンパク質に対する輸送ペプチド開裂部位を分析した結果である。Gavel及びVon Heijne、1990年、FEBS Lett.、261巻、455〜458頁に示された開裂モチーフ(I/V)−X−(A/C)−Aと関係のある3つ組X−3X−2X−1もあった。表1を作成するにあたり、我々は、輸送ペプチドを開裂して分離した後に1〜2個のアミノ酸残基がN末端からはずれる可能性を考慮に入れた(Emanuelsson、Nielsen及びHeijne、Protein Sci.、8巻、978〜984頁)。我々は、トリプトファン(trp、W)を除く、殆ど全ての可能なN末端アミノ酸残基Zに対して、適するX−3X−2X−13つ組を見出した。しかし、N末端則によると、N末端にWがあると真核細胞及び原核細胞におけるタンパク質が不安定になり、タンパク質の半減期を2〜3分に短縮する(Varshavsky,A.、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93巻、12142〜12149頁)。
【0019】
我々は、また、対象のタンパク質を双子葉植物の色素体(図1)及び単子葉植物の色素体内(図2)に効率的に導入するのに適した人工コンセンサス輸送ペプチドを構築するために、様々な植物種に由来するルビスコの小サブユニットの輸送ペプチドの配列アラインメントを用いた。このような配列を操作し、その機能を試験することについては、詳細を実施例1に述べる。人工輸送ペプチドとのGFP融合体を有する構築体を設計し(図3A、B)、タバコ及びコムギの葉の微粒子銃を用いて試験した。図4に示した結果は、図3A、Bに示した人工輸送ペプチドは、レポータータンパク質を効率的に単子葉植物及び双子葉植物の植物細胞の葉緑体内に導くことを実証する。コンセンサスを構築するために用いられる輸送ペプチドをコードするDNA配列との相同性は最小となるように輸送ペプチドを設計したが、そのターゲティング効率を脅やかすことはなかった。これは、ホストにコードした輸送ペプチドの導入遺伝子の一つに対する相同性が引き起こす、起こり得る導入遺伝子サイレンシングを避けるための予防的措置として行った。
【0020】
実施例1に記載したように設計した配列を、特異的なZと3つ組X−3X−2X−1との全ての可能な組合せを試験するために用いることができる。実験の概要は、実施例2に記載する。
【0021】
本発明の実施例3では、ヒト成長ホルモン(hGH)ソマトトロピン及びヒトインターフェロンα2bを、ニコチアナベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)植物の葉緑体に送達する人工輸送ペプチドの使用について、記載する。タンパク質は両者とも分泌性であり、プロセシングされた型(輸送ペプチドを開裂し分離した後)では、ソマトトロピンではフェニルアラニン(F)、インターフェロンα2bではシステイン(C)から開始するN末端を有する。図6の、枠で囲んだものは、対象のタンパク質のそれぞれのN末端に可能な3つ組X−3X−2X−1である。図6の融合タンパク質をコードする構築体は、ウィルス発現系の3’プロベクター中(図8)にサブクローニングされ(Marillonnetら、2004年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、101巻、6852〜6857頁)、ニコチアナベンサミアナ植物で一過性に発現された。或いは、前記融合タンパク質をコードするベクターは、植物の核DNAに安定して形質転換することができた。図9に示したウェスタンブロット分析の結果は、2つの3つ組のうち一方(X−3X−2X−1=R−F−N;pICH14061A)は正確にプロセシングされたタンパク質に期待されるサイズのhGHの大部分を生成するが、第二の融合体(X−3X−2X−1=P−S−R;pICH14061B)は期待されたサイズにバンドを示さないが、プロセシングされていないhGH前駆体(U)及び正確にプロセシングされた成熟タンパク質より小型の不正確に開裂したタンパク質に関連したバンド(S)を実証している。3つ組の両方とも、Gavel及びVon Heijne、1990年、FEBS Lett.、261巻、455〜458頁で示された、予測された輸送ペプチド開裂部位(I/V)−X−(A/C)−Aの部分ではないことを考えると、これは本発明の方法が有効であることを実証している。
【0022】
植物細胞中にDNA又はRNAベクターを送達するのに、微粒子銃、電気穿孔、又はPEGを介するプロトプラスト処理により前記ベクターを直接植物細胞内に導入することを含む、様々な方法を用いることができる(総説としては、Gelvin,S.B.、1998年、Curr.Opin.Biotechnol.、9巻、227〜232頁、及びHansen及びWright、1999年、Trends Plant Sci.、4巻、226〜231頁を参照のこと)。植物RNA及びDNAウィルスもまた、効率的な送達システムである(Hayesら、1988年、Nature、334巻、179〜182頁、及びPalmerら、1999年、Arch.Virol.、144巻、1345〜1360頁、Lindboら、2001年、Curr.Opin.Plant.Biol.、4巻、181〜185頁)。前記ベクターは、植物のゲノムに安定に組み込むか(直接又はアグロバクテリウム属の介するDNA組込み)、又は導入遺伝子を一過性に発現させる(「アグロインフィルトレーション」(“agroinfiltration“))のいずれかのために、導入遺伝子を送達することができる。
【0023】
本発明に使用する好ましい植物には、農薬的及び園芸的に重要な種を優先してあらゆる植物の種を含む。本発明で使用する一般的な作物には、アルファルファ、オオムギ、豆、カノーラ、ササゲ、綿花、トウモロコシ、クローバー、ハス、レンズマメ、ルピナス、キビ、カラスムギ、エンドウ、ナンキンマメ、コメ、ライムギ、スイートクローバー、ヒマワリ、スイートピー、ダイズ、モロコシ、ライコムギ、ヤムビーン、ベルベットビーン、カラスノエンドウ、コムギ、フジ、及びナッツ植物がある。本発明を実践するのに好ましい植物種は、イネ科、キク科、ナス科、及びバラ科の典型を含むが、これらに制限されない。
さらに、本発明で用いる好ましい種は:アラビドプシス属、コヌカグサ属、ネギ属、キンギョソウ属、オランダミツバ属、ナンキンマメ属、アスパラガス属、ロウトウ属、カラスムギ属、ホウライチク属、アブラナ属、スズメノチャヒキ属、ルリマガリバナ属、チャノキ属、アサ属、トウガラシ属、ヒヨコマメ属(Cicer)、アカザ属、キコリウム属(Chichorium)、ミカン属、コーヒー属、ハトムギ属、キュウリ属、カボチャ属(Curcubita)、ギョウギシバ属、カモガヤ属、チョウセンアサガオ属、ニンジン属、ジギタリス属、ヤマノイモ属、エラエイス属(Elaeis)、オヒシバ属、ウシノゲグサ属、オランダイチゴ属、フウロソウ属、ダイズ属、ヒマワリ属、ヘテロカリス属、ゴムノキ属、オオムギ属、ヒヨス属、サツマイモ属、アキノノゲシ属、ヒラマメ属(Lens)、ユリ属、アマ属、ドクムギ属、ハス属、トマト属、マジョラナ属(Majorana)、リンゴ属、マンギフェラ属、イモノキ属、ウマゴヤシ属、アフリカウンラン属、タバコ属、オノブリキス属(Onobrychis)、イネ属、キビ属、ペラルゴニウム属(Pelargonium)、チカラシバ属、ペチュニア属、エンドウ属、インゲンマメ属、アワガエリ属、イチゴツナギ属、サクラ属、キンポウゲ属、ダイコン属、スグリ属、トウゴマ属、キイチゴ属、サトウキビ属、サルピグロッシス属、ライムギ属、キオン属、エノコログサ属、シロガラシ属、ナス属、モロコシ属、ステノタフルム属(Stenotaphrum)、カカオ属、シャジクソウ属、トリゴネラ属(Trigonella)、コムギ属、ソラマメ属、ササゲ属(Vigna)、ブドウ属、トウモロコシ属、及びオリルアエ(Olyreae)、ファロイダエ(Pharoideae)、及びその他多数の属に由来する植物である。
【0024】
本発明の範囲内では、薬剤上及び実用のタンパク質を生成するには、食物又は食物連鎖に含まれない植物種が特に好ましい。その中でもタバコ種は、形質転換、及びよく発達した発現ベクター(特にウィルスベクター)系との栽培が容易であるため、最も好ましい。
【0025】
本発明を用いて対象の細胞のプロセスとして発現させ、分離することができる対象の遺伝子、そのフラグメント(機能的又は非機能的)、及びその人工誘導体は、デンプン修飾酵素(デンプン合成酵素、デンプンリン酸化酵素、枝切り酵素、デンプン分枝酵素、デンプン分枝酵素II、粒結合デンプン合成酵素)、スクロースリン酸合成酵素、スクロースホスホリラーゼ、ポリガラクツロナーゼ、ポリフルクタンスクラーゼ(polyfructan sucrase)、ADPグルコースピロホスホリラーゼ、シクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ、フルクトシルトランスフェラーゼ、グリコーゲン合成酵素、ペクチンエステラーゼ、アプロチニン、アビジン、細菌性レバンスクラーゼ、大腸菌(E.coli)glgAタンパク質、MAPK4及びオーソログ、窒素同化/代謝酵素、グルタミン合成酵素、植物オスモチン、2Sアルブミン、タウマチン、部位特異的リコンビナーゼ/インテグラーゼ(FLP、Cre、Rリコンビナーゼ、Int、SSVIインテグラーゼR、インテグラーゼphiC31、又はこれらの活性フラグメント若しくは変異体)、イソペンテニルトランスフェラーゼ、ScaM5(ダイズカルモジュリン)、甲殻類タイプの毒素又は殺虫活性フラグメント、ユビキチン結合酵素(E2)融合タンパク質、脂肪、アミノ酸、糖、核酸、及び多糖類を代謝する酵素、スーパーオキシドジスムターゼ、プロテアーゼの不活性プロ酵素型、植物タンパク質毒素、繊維生成植物における形質変更繊維、バチルスチューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)由来の甲虫類活性毒素(Bt2毒素、殺虫性結晶タンパク質(ICP)、CrylC毒素、デルタエンドトキシン、ポリオペプチド毒素、プロ毒素等)、昆虫特有毒素AaIT、セルロース分解酵素、アシドサームスセルロティカス(Acidothermus celluloticus)由来のE1セルラーゼ、リグニン修飾酵素、シンナモイルアルコール脱水素酵素、トレハロース−6−リン酸合成酵素、サイトカイニン代謝経路の酵素、HMG−CoA還元酵素、大腸菌無機ピロホスファターゼ、種子貯蔵タンパク質、エルウィニアハービコラ(Erwinia herbicola)リコペン合成酵素、ACC酸化酵素、pTOM36コードタンパク質、フィターゼ、ケト加水分解酵素、アセトアセチルCoA還元酵素、PHB(ポリヒドロキシブタン酸)合成酵素、アシルキャリアータンパク質、ナピン、EA9、非高等植物フィトエン合成酵素、pTOM5コードタンパク質、ETR(エチレンレセプター)、色素体ピルビン酸リン酸ジキナーゼ、線虫誘導性膜孔タンパク質、植物細胞の形質増強光合成又は色素体機能、スチルベン合成酵素、フェノールを水酸化できる酵素、カテコールジオキシゲナーゼ、カテコール2,3−ジオキシゲナーゼ、クロロムコネートシクロイソメラーゼ、アントラニル酸合成酵素、アブラナ属AGL15タンパク質、フルクトース1,6−ビスホスファターゼ(FBPase)、AMV RNA3、PVYレプリカーゼ、PLRVレプリカーゼ、ポティウィルスコートタンパク質、CMVコートタンパク質、TMVコートタンパク質、ルテオウィルスレプリカーゼ、MDMVメッセンジャーRNA、変異ジェミニウィルスレプリカーゼ、ウンベルラリアカリフォルニカ(Umbellularia californica)C12:0選択性アシル−ACPチオエステラーゼ、植物C10又はC12:0選択性アシル−ACPチオエステラーゼ、C14:0選択性アシル−ACPチオエステラーゼ、(luxD)、植物合成因子A、植物合成因子B、Δ6−不飽和化酵素、植物細胞において脂肪酸のペルオキシソーム性β酸化における酵素活性を有するタンパク質、アシルCoA酸化酵素、3−ケトアシルCoAチオラーゼ、リパーゼ、トウモロコシアセチルCoAカルボキシラーゼ、5−エノールピルビン酸シキメート−3−リン酸合成酵素(EPSP)、ホスフィノスリシンアセチルトランスフェラーゼ(BAR、PAT)、CP4タンパク質、ACCデアミナーゼ、翻訳後開裂部位を有するタンパク質、スルホンアミド耐性を授与するDHPS遺伝子、細菌性ニトリラーゼ、2,4−Dモノオキシゲナーゼ、アセト乳酸合成酵素又はアセトヒドロキシ酸合成酵素(ALS、AHAS)、ポリガラクツロナーゼ、Taqポリメラーゼ、細菌性ニトリラーゼ、制限エンドヌクレアーゼを含むその他多くの細菌又はファージの酵素、メチラーゼ、DNA及びRNAリガーゼ、DNA及びRNAポリメラーゼ、逆転写酵素、ヌクレアーゼ(DNase及びRNAse)、ホスファターゼ、トランスフェラーゼ等を含むがこれらに限定されない。
【0026】
我々の発明は、また、分子農業、並びに工業用酵素(セルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、フィターゼ等)及び線維性タンパク質(コラーゲン、クモの糸のタンパク質等)を含む商業的に価値がありかつ薬剤的に重要なタンパク質の精製の目的に使用することができる。ヒト又は動物の健康タンパク質はいずれも、我々の発明の方法に記載したものを用いて発現し精製することができる。そのような対象のタンパク質の例として、特に、免疫反応タンパク質(モノクローナル抗体、単鎖抗体、T細胞レセプター等)、病原性微生物に由来するものを含む抗原、コロニー刺激因子、レラキシン、ソマトトロピン(HGH)及びプロインスリンを含むポリペプチドホルモン、サイトカイン及びそのレセプター、インターフェロン、増殖因子及び凝固因子、酵素的活性のあるリソソーム酵素、フィブリノーゲン溶解ポリペプチド、血液凝固因子、トリプシノーゲン、a1−アンチトリプシン(AAT)、ヒト血清アルブミン、グルコセレブロシダーゼ、天然コレラ毒素B、並びに上記タンパク質の融合、変異型、及び合成誘導体のような機能保存性タンパク質が含まれる。
【実施例】
【0027】
(実施例1)
単子葉植物及び双子葉植物の合成輸送ペプチド配列の生成
a)双子葉植物における色素体標的のための輸送ペプチド
様々な双子葉植物由来のルビスコ小サブユニットの前駆体タンパク質(rbcs)に由来する輸送ペプチドを標的とする9個の葉緑体のコンセンサスアミノ酸配列を、DNASTARソフトウェアパッケージの配列分析で作成した(図1)。コンセンサス輸送ペプチドをコードするヌクレオチド配列を、双子葉植物のコドンの使用頻度を考慮に入れて設計し、平均GC含量が43.6%になる最高コドン使用頻度値を基準にして各々の3つ組コドンを選択した。また、我々は配列を設計することにより、コンセンサス配列のcDNAと、コンセンサスを構築するのに用いられる双子葉植物種の輸送ペプチドをコードするcDNAとの間のcDNAレベルの相違を最大にしようと試みた。N末端翻訳融合体をレポーター遺伝子(GFP)と共に作成するため、好都合な制限部位の側面に位置する最終ヌクレオチド配列をde novo合成し、ClaI/NcoIフラグメント(ClaI 5’−cATCGATaac atggcttctt ctatgctttc ttctgctgct gttgttgcta ctcgtgctag tgctgctcaa gctagtatgg ttgctccttt tactggactt aagtctgctg cttcttttcc tgttactaga aagcaaaaca accttgatat tacttctatt gctagtaacg gaggaagagt tcaatgcgCC ATGG−3’ NcoI)として対象の構築体内にサブクローンした(図3A、プラスミドpICH5300を参照のこと)。
【0028】
b)単子葉植物における標的のための輸送ペプチド
上記に述べたのと同様の方法を用いて、単子葉植物において、シグナル配列を標的にして発現する人工葉緑体、及び単子葉植物を標的とする色素体を作製した。様々な単子葉植物のrbcsタンパク質由来の6個の葉緑体輸送ペプチドに導出されるコンセンサスアミノ酸配列を、DNASTARソフトウェアパッケージの配列分析で作成した(図2)。コンセンサス輸送ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、単子葉植物のコドンの使用頻度を考慮に入れて設計し、最終ヌクレオチド配列の平均GC含量が71.0%になる最高コドン使用頻度値を基にして各々の3つ組コドンを選択した。単子葉植物種のコンセンサス輸送ペプチドをコードするヌクレオチド配列をde novo合成し、ClaI/NcoI又はBamHI/NcoI−フラグメント(ClaI/BamHI 5’−cATCGATAGG ATCCacgatg gccccaaccg tgatggcctc ctccgccacc accgtggccc cattccaggg cctcaagtcc accgccggcc tcccagtggc caggaggtcc tccggcagcc tcggcagcgt gagcaacggc ggcaggatca ggtgcgCCAT GG−3’NcoI)として対象のベクター内にサブクローンした(図3B、プラスミドpICH5320を参照のこと)。
【0029】
人工輸送ペプチドの助けを借りて葉緑体ターゲティングの有効性を試験するために、輸送ペプチド−レポーター遺伝子融合体をコードするプラスミドを、微粒子銃の助けを借りてタバコ及びコムギの葉の細胞内に送達した。結果は、人工輸送ペプチドの助けを借りて、双子葉植物種及び単子葉植物種の両方の葉緑体内に導く効果的なGFPを示した(図4)。
【0030】
(実施例2)
対象のタンパク質の望ましいN末端(アラニン以外)を提供するための輸送ペプチド開裂部位の設計及び試験
葉緑体内にターゲティングする対象のタンパク質に必要なN末端を生成するために、我々は公的に入手できるデータベースから、予想又は実験的に確認された、約400個の核にコードされた葉緑体を標的とするタンパク質の輸送ペプチド開裂部位を分析した。この分析の結果を表1に示した。図5に示した構築体を用いて対象のタンパク質に望ましいN末端を提供する適性があるか、開裂部位を試験することができる。最も単純な型(構築体A)は、輸送ペプチド(TP)及びレポーター遺伝子(GFP)側面に並ぶクローニング部位からなる。GFPの最初のメチオニン(M)は、共に開裂部位を生成するのに適合性のある3つ組X−3X−2X−1を見出すために、あらゆる他のアミノ酸Zで置換することができる。好適な制限部位であるRS1及びRS2は、TP及びGFPのコード領域内に位置することができるが、相互に離れておらず(好ましくは30〜50bpの範囲内)、そのため構築体に3つ組X−3X−2X−1及びアミノ酸残基Zの望ましい組合せを導入するために、2個の部分的に一致する対象のプライマーの合成が容易になっている。調製された構築体は、植物細胞で一過性に発現することができ、GFPの区画化は紫外線顕微鏡下で容易に観察でき、必要とされるN末端はタンパク質マイクロシーケンシングで存在を確認できる。GFPの分離を促進するために、レポータータンパク質のC末端終末を(例えば、6xHIS−タグで)タギングすることができる。より複雑な型の試験構築体は対象の遺伝子のGFP融合体を含む(構築体B、図5)、というのは、これにより葉緑体で前記対象の遺伝子をプロセシングするという期待された結果についてのさらに精密なデータを提供できるからである。
【0031】
(実施例3)
本発明による開裂部位に人工輸送ペプチドを用いることによる、ソマトトロピン(hGH)及びインターフェロンα2Bの葉緑体へのターゲティング
図6に示したタンパク質融合体のコード配列を作成し、標準分子生物学クローニングプロトコール(Sambrook,J.、Fritsch,E.F.及びManiatis,T.、1989年、Molecular Cloning,A Laboratory Manual、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、CSH Laboratory Press)に従い、バイナリーベクターにクローンした(図8)。図6に示したタンパク質融合体に関連したDNA構築体を、図8に示す。ソマトトロピンの輸送ペプチドとの2個の融合体、及びインターフェロンα2bの4個の異なる融合体を、表1のX−3X−2X−1の3つ組に従い、N末端のアミノ酸を、ソマトトロピンはフェニルアラニン(F)で、インターフェロンα2bはシステイン(C)でそれぞれ作成した。図8に示したバイナリーベクターは、タバコモザイクウィルス(TMV)をベースとした発現システムの3’構成部分(プロベクター)であり、WO02088369に、及びMarillonnetら(2004年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、101巻、6852〜6857頁)により詳しく記載されている。ニコチアナべンサミアナ植物を用いて、プロベクター技術を用い、両タンパク質を発現させた。或いは、この実験の目的を達成するために、あらゆる適当な植物発現系を用いることができる。葉緑体のターゲティング及び輸送ペプチドの標的タンパク質から開裂分離の効率を調査するために、葉の材料から可溶タンパク質を全て抽出し、市販で入手できる抗ソマトトロピンモノクローナル抗体(マウス抗−hGH、カタログNo:RDI−TRK2G2−Gh29、米国ニュージャージー州、フランダース、RDI Research Diagnostic)及び抗インターフェロンα2bモノクローナル抗体(カタログNo.95360−0128、ドイツ、ケルン、Biotrend)を用いてウェスタンブロットで分析した。2つの異なるX−3X−2X−13つ組を用いた色素体標的hGHのウェスタンブロット分析結果を、図9Aに示す。これら2つの融合体の発現に用いた構築体(pICH14061A、X−3X−2X−1=R−F−N;pICH14061B、X−3X−2X−1=P−S−R)を図9Bに示す。
【表1】
【表2】
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】9種の異なる双子葉植物に由来するルビスコ小サブユニットの輸送ペプチドのペプチド配列であり、下はそれらから導かれたコンセンサス配列を示す図である。
【図2】6種の異なる単子葉植物種に由来するルビスコ小サブユニットの輸送ペプチドのペプチド配列であり、下はそれらから導かれたコンセンサス配列示す図である。
【図3A】pICH5300ベクターの概要を示す図である。
【図3B】pICH5320ベクターの概要を示す図である。
【図4】タバコ(A、C)及びコムギ(B、D)の表皮細胞における、GFPの一過性発現を示す図である。A、Bは輸送ペプチドのないGFP、Cは双子葉植物種の合成輸送ペプチドとのGFP融合体、Dは単子葉植物の合成輸送ペプチドとのGFP融合体である。
【図5】ある所定のN末端アミノ酸Zで対象のタンパク質の最適なX−3X−2X−1の3つ組をスクリーニングするための構築体を示す図である。TPはC末端アミノ酸X−3X−2X−1のない輸送ペプチドをコードする配列、GOIは対象の遺伝子、GFPは緑色蛍光タンパク質をコードする配列、pr1及びpr2はX−3X−2X−1−Z配列をコードする領域を設計しクローニングするオーバーラッププライマー、RS1及びRS2はカスタムの制限酵素切断部位である。
【図6】合成輸送ペプチドにより対象のタンパク質(ソマトトロピン又はインターフェロンα2b)を色素体内にターゲティングするための融合タンパク質に予想される全てのタイプのアミノ酸配列を示す図である。融合タンパク質は、輸送ペプチドを開裂して分離した後、対象のタンパク質の必要なN末端アミノ酸配列を生成するように設計されている。下線を付けたものは合成輸送ペプチド、枠で囲んだものは輸送ペプチドのC末端アミノ酸として予想されたX−3X−2X−13つ組の変異体、太文字は対象のタンパク質の最初のアミノ酸配列である。
【図7】図6に示したタンパク質融合体をコードするDNA配列を示す図である。
【図8】バイナリーベクターであるpICH14061及びpICH14071のT−DNA領域の概要を示す図である。
【図9A】輸送ペプチドのC末端アミノ酸として、予想された2つの異なる3つ組X−3X−2X−1の変異体を用いて、色素体標的ヒト成長ホルモン(hGH)ソマトトロピンのウェスタンブロット分析の結果を示す図である。 抗hGH抗体のウェスタンブロットである。レーンCは成熟hGH(対照)、レーン1、2はpICH14061Aから発現されたhGH、レーン3、4はpICH14061Bから発現されたhGH、UはhGH前駆物質(未処理)、Mは成熟、正確にプロセシングされたhGH、Sは不正確にプロセシングされた(小型)hGHである。
【図9B】バイナリーベクターpICH14061A及びpICH14061BのT−DNA領域の詳細図である。TPは輸送ペプチド、Pは転写プロモータ、Tは転写ターミネータ、NPTはネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、NTRはタバコモザイクウィルスの3’非翻訳領域である。アミノ酸3つ組R−F−N(pICH14061A)及びP−S−R(pICH14061B)は、N末端側からC末端側の方向に一文字アミノ酸コードで示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め決定した植物の細胞内で、対象のタンパク質を生成する方法であって、
(i)融合タンパク質を色素体内にターゲティングする輸送ペプチド、及びそれに隣接して、
(ii)前記対象のタンパク質
をN末端からC末端に含む前記融合タンパク質をコードするベクターを前記細胞内に導入することを含み、
前記輸送ペプチドC末端の3個のアミノ酸X−3X−2X−1及び前記対象のタンパク質N末端のアミノ酸Zが、色素体で前記対象のタンパク質を放出するためにX−1とZとの間で前記融合タンパク質を開裂するための開裂部位:
X−3X−2X−1−Z
を形成し、
前記対象のタンパク質の予め決定したアミノ酸Zに対して、アミノ酸配列X−3X−2X−1が、植物の色素体を標的とする融合タンパク質で天然に存在するZに隣接するアミノ酸配列X−3X−2X−1の組から選択され、それにより前記開裂部位を形成する方法。
【請求項2】
前記アミノ酸配列X−3X−2X−1が、前記予め決定した植物がその一員である植物の科において、色素体を標的とする融合タンパク質で天然に存在するZに隣接するアミノ酸配列X−3X−2X−1の組から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アミノ酸配列X−3X−2X−1が、前記予め決定した植物がその一員である植物の属において、色素体を標的とする融合タンパク質で天然に存在するZに隣接するアミノ酸配列X−3X−2X−1の組から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アミノ酸配列X−3X−2X−1が、前記予め決定した植物と同じ種の植物において、色素体を標的とする融合タンパク質で天然に存在するZに隣接するアミノ酸配列X−3X−2X−1の組から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
配列X−3X−2X−1が以下の相関表に従い、前記対象のタンパク質のアミノ酸Zに応じて選択される、請求項1から4までの一項に記載の方法。
【表1】
[表中、アミノ酸の3つ組は全てN末端からC末端の方向で示され、アミノ酸は1文字アミノ酸コードで表される]
【請求項6】
Z=Aに対して、
X−3X−2X−1が、ASN、ACR、AAA、FVA、HVR、ICC、IGA、IRA、IRC、ISA、ISC、IQC、QIR、KTK、KAK、PLQ、PIA、PIQ、RMG、RCM、RAQ、RVK、SAA、SCT、SLA、SIC、SIV、TCQ、TAM、TAQ、TCK、VCK、VAM、VVA、VKA、VRA、VTR、VGA、VVR、VVY、VVQ、VSC、VVC、またはVFAである、請求項1から4までの一項に記載の方法。
【請求項7】
Z=Aに対して、
X−3X−2X−1が、ASN、ACR、AAA、FVA、IGA、IRC、IQC、QIR、KTK、KAK、PLQ、RMG、RCM、RAQ、RVK、SAA、SCT、SLA、SIC、SIV、TCQ、TCK、VCK、VAM、VTR、VGA、VVY、VVQ、VSC、VVC、またはVFAである、請求項1から4までの一項に記載の方法。
【請求項8】
予め決定したZ及び所与の輸送ペプチドに対して、輸送ペプチドのC末端アミノ酸の好適な3つ組X−3X−2X−1が、
(a)そのN末端からC末端の方向に、前記予め決定したZに対する請求項5又は6で定義したC末端アミノ酸X−3X−2X−1を有する輸送ペプチド、及びそれに隣接して、予め決定したN末端アミノ酸Zを有する緑色蛍光タンパク質のようなレポータータンパク質を含む融合タンパク質をコードするベクターを構築すること、
(b)前記融合タンパク質を発現するために、前記ベクターを植物細胞に導入すること、
(c)色素体のX−1とZとの間での前記融合タンパク質の開裂を評価すること、
(d)前記予め決定したZに対する、請求項5又は6で定義した1つ又は複数の別のX−3X−2X−1について、ステップ(a)から(c)を繰り返すこと、
(e)好ましい開裂に導くX−3X−2X−1を選択すること、
を含むアッセイにより選択される、請求項1から7までの一項に記載の方法。
【請求項9】
予め決定したZ及び所定の輸送ペプチドに対して、輸送ペプチドのC末端アミノ酸の好適な3つ組X−3X−2X−1が、
(a)そのN末端からC末端の方向に、前記予め決定したZに請求項5又は6で定義したようなC末端アミノ酸X−3X−2X−1を有する輸送ペプチド、及びそれに隣接して、緑色蛍光タンパク質のようなレポータータンパク質が続く前記対象のタンパク質を含む融合タンパク質をコードするベクターを構築すること、
(b)前記融合タンパク質を発現するために、前記ベクターを植物細胞に導入すること、
(c)色素体のX−1とZとの間での前記融合タンパク質の開裂を評価すること、
(d)前記予め決定したZに対する、請求項5又は6で定義した1つ又は複数の別のX−3X−2X−1について、ステップ(a)から(c)を繰り返すこと、
(e)好ましい開裂に導くX−3X−2X−1を選択すること、
を含むアッセイにより選択される、請求項1から7までの一項に記載の方法。
【請求項10】
前記上流の輸送ペプチドが開裂部位に配列MASSMLSSAA VVATRASAAQ ASMVAPFTGL KSAASFPVTR KQNNLDITSI ASNGGRを有する、請求項1から9までの一項に記載の方法。
【請求項11】
輸送ペプチドが開裂部位の上流に配列MAPTVMASSA TTVAPFQGLK STAGRLPVAR RSSGSLGSVS NGGRを有する、請求項1から9までの一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象のタンパク質が、細菌、ウィルス、植物、又は動物起源であるか、或いは前記対象のタンパク質が人工的に設計された、請求項1から11までの一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象のタンパク質が、農業的形質、ヒト又は動物の健康タンパク質、免疫応答タンパク質、又はポリペプチドホルモンである、請求項1から11までの一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象のタンパク質がインターフェロンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
植物で実施され、前記ベクターが植物の細胞に導入される、請求項1から14までの一項に記載の方法。
【請求項16】
予め決定した植物の細胞で対象のタンパク質を生成する方法であって、
(i)融合タンパク質を色素体に導く輸送ペプチド、及びそれに隣接して、
(ii)前記対象のタンパク質
をN末端からC末端に含む前記融合タンパク質をコードするベクターを前記細胞内に導入することを含み、
前記輸送ペプチドC末端の3個のアミノ酸X−3X−2X−1及び前記対象のタンパク質N末端のアミノ酸Zが、色素体で前記対象のタンパク質を放出するためにX−1とZとの間で前記融合タンパク質を開裂するための開裂部位:
X−3X−2X−1−Z
を形成し、
前記配列X−3X−2X−1が以下の相関表に従い、前記対象のタンパク質のアミノ酸Zに応じて選択される方法。
【表2】
[表中、3つ組アミノ酸は全てN末端からC末端の方向で示され、アミノ酸は一文字アミノ酸コードで示される]
【請求項17】
予め決定した植物の細胞で対象のタンパク質を生成する方法であって、
(i)融合タンパク質を色素体内にターゲティングする輸送ペプチド、及びそれに隣接して、
(ii)前記対象のタンパク質
をN末端からC末端に含む前記融合タンパク質をコードするベクターを前記細胞内に導入することを含み、
前記輸送ペプチドC末端の3個のアミノ酸X−3X−2X−1及び前記対象のタンパク質N末端のアミノ酸Zが、色素体で前記対象のタンパク質を放出するためにX−1とZとの間で前記融合タンパク質を開裂するための開裂部位:
X−3X−2X−1−Z
を形成し、
Z=Aに対して、X−3X−2X−1は、ASN、ACR、AAA、FVA、HVR、ICC、IGA、IRA、IRC、ISA、ISC、IQC、QIR、KTK、KAK、PLQ、PIA、PIQ、RMG、RCM、RAQ、RVK、SAA、SCT、SLA、SIC、SIV、TCQ、TAM、TAQ、TCK、VCK、VAM、VVA、VKA、VRA、VTR、VGA、VVR、VVY、VVQ、VSC、VVC、及びVFAからなる群から選択される方法。
【請求項18】
予め決定した植物の細胞で対象のタンパク質を生成する方法であって、
(i)融合タンパク質を色素体内にターゲティングする輸送ペプチド、及びそれに隣接して、
(ii)前記対象のタンパク質
をN末端からC末端に含む前記融合タンパク質をコードするベクターを前記細胞内に導入することを含み、
前記輸送ペプチドC末端の3個のアミノ酸X−3X−2X−1及び前記対象のタンパク質N末端のアミノ酸Zが、色素体で前記対象のタンパク質を放出するためにX−1とZとの間で前記融合タンパク質を開裂するための開裂部位:
X−3X−2X−1−Z
を形成し、
Z=Aに対し、X−3X−2X−1は、ASN、ACR、AAA、FVA、IGA、IRC、IQC、QIR、KTK、KAK、PLQ、RMG、RCM、RAQ、RVK、SAA、SCT、SLA、SIC、SIV、TCQ、TCK、VCK、VAM、VTR、VGA、VVY、VVQ、VSC、VVC、及びVFAからなる群から選択される方法。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか一項の方法により生成される、又は生成可能である対象のタンパク質。
【請求項1】
予め決定した植物の細胞内で、対象のタンパク質を生成する方法であって、
(i)融合タンパク質を色素体内にターゲティングする輸送ペプチド、及びそれに隣接して、
(ii)前記対象のタンパク質
をN末端からC末端に含む前記融合タンパク質をコードするベクターを前記細胞内に導入することを含み、
前記輸送ペプチドC末端の3個のアミノ酸X−3X−2X−1及び前記対象のタンパク質N末端のアミノ酸Zが、色素体で前記対象のタンパク質を放出するためにX−1とZとの間で前記融合タンパク質を開裂するための開裂部位:
X−3X−2X−1−Z
を形成し、
前記対象のタンパク質の予め決定したアミノ酸Zに対して、アミノ酸配列X−3X−2X−1が、植物の色素体を標的とする融合タンパク質で天然に存在するZに隣接するアミノ酸配列X−3X−2X−1の組から選択され、それにより前記開裂部位を形成する方法。
【請求項2】
前記アミノ酸配列X−3X−2X−1が、前記予め決定した植物がその一員である植物の科において、色素体を標的とする融合タンパク質で天然に存在するZに隣接するアミノ酸配列X−3X−2X−1の組から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アミノ酸配列X−3X−2X−1が、前記予め決定した植物がその一員である植物の属において、色素体を標的とする融合タンパク質で天然に存在するZに隣接するアミノ酸配列X−3X−2X−1の組から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
アミノ酸配列X−3X−2X−1が、前記予め決定した植物と同じ種の植物において、色素体を標的とする融合タンパク質で天然に存在するZに隣接するアミノ酸配列X−3X−2X−1の組から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
配列X−3X−2X−1が以下の相関表に従い、前記対象のタンパク質のアミノ酸Zに応じて選択される、請求項1から4までの一項に記載の方法。
【表1】
[表中、アミノ酸の3つ組は全てN末端からC末端の方向で示され、アミノ酸は1文字アミノ酸コードで表される]
【請求項6】
Z=Aに対して、
X−3X−2X−1が、ASN、ACR、AAA、FVA、HVR、ICC、IGA、IRA、IRC、ISA、ISC、IQC、QIR、KTK、KAK、PLQ、PIA、PIQ、RMG、RCM、RAQ、RVK、SAA、SCT、SLA、SIC、SIV、TCQ、TAM、TAQ、TCK、VCK、VAM、VVA、VKA、VRA、VTR、VGA、VVR、VVY、VVQ、VSC、VVC、またはVFAである、請求項1から4までの一項に記載の方法。
【請求項7】
Z=Aに対して、
X−3X−2X−1が、ASN、ACR、AAA、FVA、IGA、IRC、IQC、QIR、KTK、KAK、PLQ、RMG、RCM、RAQ、RVK、SAA、SCT、SLA、SIC、SIV、TCQ、TCK、VCK、VAM、VTR、VGA、VVY、VVQ、VSC、VVC、またはVFAである、請求項1から4までの一項に記載の方法。
【請求項8】
予め決定したZ及び所与の輸送ペプチドに対して、輸送ペプチドのC末端アミノ酸の好適な3つ組X−3X−2X−1が、
(a)そのN末端からC末端の方向に、前記予め決定したZに対する請求項5又は6で定義したC末端アミノ酸X−3X−2X−1を有する輸送ペプチド、及びそれに隣接して、予め決定したN末端アミノ酸Zを有する緑色蛍光タンパク質のようなレポータータンパク質を含む融合タンパク質をコードするベクターを構築すること、
(b)前記融合タンパク質を発現するために、前記ベクターを植物細胞に導入すること、
(c)色素体のX−1とZとの間での前記融合タンパク質の開裂を評価すること、
(d)前記予め決定したZに対する、請求項5又は6で定義した1つ又は複数の別のX−3X−2X−1について、ステップ(a)から(c)を繰り返すこと、
(e)好ましい開裂に導くX−3X−2X−1を選択すること、
を含むアッセイにより選択される、請求項1から7までの一項に記載の方法。
【請求項9】
予め決定したZ及び所定の輸送ペプチドに対して、輸送ペプチドのC末端アミノ酸の好適な3つ組X−3X−2X−1が、
(a)そのN末端からC末端の方向に、前記予め決定したZに請求項5又は6で定義したようなC末端アミノ酸X−3X−2X−1を有する輸送ペプチド、及びそれに隣接して、緑色蛍光タンパク質のようなレポータータンパク質が続く前記対象のタンパク質を含む融合タンパク質をコードするベクターを構築すること、
(b)前記融合タンパク質を発現するために、前記ベクターを植物細胞に導入すること、
(c)色素体のX−1とZとの間での前記融合タンパク質の開裂を評価すること、
(d)前記予め決定したZに対する、請求項5又は6で定義した1つ又は複数の別のX−3X−2X−1について、ステップ(a)から(c)を繰り返すこと、
(e)好ましい開裂に導くX−3X−2X−1を選択すること、
を含むアッセイにより選択される、請求項1から7までの一項に記載の方法。
【請求項10】
前記上流の輸送ペプチドが開裂部位に配列MASSMLSSAA VVATRASAAQ ASMVAPFTGL KSAASFPVTR KQNNLDITSI ASNGGRを有する、請求項1から9までの一項に記載の方法。
【請求項11】
輸送ペプチドが開裂部位の上流に配列MAPTVMASSA TTVAPFQGLK STAGRLPVAR RSSGSLGSVS NGGRを有する、請求項1から9までの一項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象のタンパク質が、細菌、ウィルス、植物、又は動物起源であるか、或いは前記対象のタンパク質が人工的に設計された、請求項1から11までの一項に記載の方法。
【請求項13】
前記対象のタンパク質が、農業的形質、ヒト又は動物の健康タンパク質、免疫応答タンパク質、又はポリペプチドホルモンである、請求項1から11までの一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象のタンパク質がインターフェロンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
植物で実施され、前記ベクターが植物の細胞に導入される、請求項1から14までの一項に記載の方法。
【請求項16】
予め決定した植物の細胞で対象のタンパク質を生成する方法であって、
(i)融合タンパク質を色素体に導く輸送ペプチド、及びそれに隣接して、
(ii)前記対象のタンパク質
をN末端からC末端に含む前記融合タンパク質をコードするベクターを前記細胞内に導入することを含み、
前記輸送ペプチドC末端の3個のアミノ酸X−3X−2X−1及び前記対象のタンパク質N末端のアミノ酸Zが、色素体で前記対象のタンパク質を放出するためにX−1とZとの間で前記融合タンパク質を開裂するための開裂部位:
X−3X−2X−1−Z
を形成し、
前記配列X−3X−2X−1が以下の相関表に従い、前記対象のタンパク質のアミノ酸Zに応じて選択される方法。
【表2】
[表中、3つ組アミノ酸は全てN末端からC末端の方向で示され、アミノ酸は一文字アミノ酸コードで示される]
【請求項17】
予め決定した植物の細胞で対象のタンパク質を生成する方法であって、
(i)融合タンパク質を色素体内にターゲティングする輸送ペプチド、及びそれに隣接して、
(ii)前記対象のタンパク質
をN末端からC末端に含む前記融合タンパク質をコードするベクターを前記細胞内に導入することを含み、
前記輸送ペプチドC末端の3個のアミノ酸X−3X−2X−1及び前記対象のタンパク質N末端のアミノ酸Zが、色素体で前記対象のタンパク質を放出するためにX−1とZとの間で前記融合タンパク質を開裂するための開裂部位:
X−3X−2X−1−Z
を形成し、
Z=Aに対して、X−3X−2X−1は、ASN、ACR、AAA、FVA、HVR、ICC、IGA、IRA、IRC、ISA、ISC、IQC、QIR、KTK、KAK、PLQ、PIA、PIQ、RMG、RCM、RAQ、RVK、SAA、SCT、SLA、SIC、SIV、TCQ、TAM、TAQ、TCK、VCK、VAM、VVA、VKA、VRA、VTR、VGA、VVR、VVY、VVQ、VSC、VVC、及びVFAからなる群から選択される方法。
【請求項18】
予め決定した植物の細胞で対象のタンパク質を生成する方法であって、
(i)融合タンパク質を色素体内にターゲティングする輸送ペプチド、及びそれに隣接して、
(ii)前記対象のタンパク質
をN末端からC末端に含む前記融合タンパク質をコードするベクターを前記細胞内に導入することを含み、
前記輸送ペプチドC末端の3個のアミノ酸X−3X−2X−1及び前記対象のタンパク質N末端のアミノ酸Zが、色素体で前記対象のタンパク質を放出するためにX−1とZとの間で前記融合タンパク質を開裂するための開裂部位:
X−3X−2X−1−Z
を形成し、
Z=Aに対し、X−3X−2X−1は、ASN、ACR、AAA、FVA、IGA、IRC、IQC、QIR、KTK、KAK、PLQ、RMG、RCM、RAQ、RVK、SAA、SCT、SLA、SIC、SIV、TCQ、TCK、VCK、VAM、VTR、VGA、VVY、VVQ、VSC、VVC、及びVFAからなる群から選択される方法。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか一項の方法により生成される、又は生成可能である対象のタンパク質。
【図1】
【図2】
【図3(A)】
【図3(B)】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(A)】
【図9(B)】
【図2】
【図3(A)】
【図3(B)】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9(A)】
【図9(B)】
【公表番号】特表2007−500010(P2007−500010A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529809(P2006−529809)
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005151
【国際公開番号】WO2004/101797
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504402991)アイコン ジェネティクス アクチェンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005151
【国際公開番号】WO2004/101797
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504402991)アイコン ジェネティクス アクチェンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】
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