説明

植物細胞に生体分子を送達するためのデンドリマーナノテクノロジーの使用

デンドリマー、及び場合により1つ又はそれ以上のCPPを使用することにより細胞壁を有する植物細胞に対象の分子を導入する方法を提供する。植物を遺伝子修飾又は別様に修飾する方法、及び細胞壁を含む植物細胞における病害を治療又は予防する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、「USE OF DENDRIMER NANOTECHNOLOGY FOR DELIVERY OF BIOMOLECULES INTO PLANT CELLS」に関する、2009年10月16日出願の米国仮特許出願第61/252,607号の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノ粒子は、細胞へのDNAの送達に使用するために活用されている、ユニークな特性を有する。金属ナノ粒子、例えば金(Au)ナノ粒子は、それらの細胞毒性が低く、生物学的に有意な様々なリガンドでの官能化が容易であるため、DNA送達に使用されている。金属ナノ粒子に加えて、3〜5nmの粒径範囲内の半導体ナノ粒子(例えば、量子ドット)(「QD」)も、細胞に分子を送達するための担体として使用されている。DNA及びタンパク質は、QD表面に付着するリガンドに連結することができる(例えば、F. Patolsky et al., J. Am. Chem. Soc. 125, 13918 (2003)を参照のこと)。
【0003】
ナノ粒子は、プラスミドDNAを様々な動物細胞に送達するために使用されている。DNA被覆ナノ粒子を、細胞壁を有さない細胞と共にインキュベートすると、該細胞は、該ナノ粒子を取り込み、該DNAにコードされた任意の遺伝子の発現を開始することが見出されている。しかし、当今の植物遺伝子送達は、植物細胞壁の存在のため難しく、植物の遺伝子形質転換のための侵襲的送達手段に一般に依存することとなる。細胞壁を通常有する細胞へのナノ粒子媒介送達が望まれる場合、植物のプロトプラストへ該粒子を添加する前に細胞壁は取り除かれる(F. Torney et al., Nature Nanotechnol. 2, (2007)を参照のこと)。植物細胞において、細胞壁は、外因的に適用される分子の送達に対するバリアとして存在する。多くの侵襲的方法、例えば遺伝子銃(微粒子銃)、微量注入法、電気穿孔法、及びアグロバクテリウム属(Agrobacterium)が、これらの壁を有する植物細胞への遺伝子及び小分子送達を達成するために用いられているが、タンパク質の送達は微量注入法によってのみ達成されている。植物細胞壁の存在下での小分子及びタンパク質の送達は、未だ探究されておらず、無傷の植物細胞/組織又は器官において展開される、in vitro及びin vivo操作のための実現技術を開発するために有利であろう。
【0004】
細胞透過性ペプチド(CPP)は、哺乳動物及びヒト細胞系における、生体膜を越える広範なカーゴ複合体(タンパク質及びDNAを含む)の転位に重要な役割を果たすことが知られている短鎖ペプチドの新規で急速に拡大しつつあるクラスである。J. Schwartz and S. Zhang (2000), Peptide-Mediated Cellular Delivery, Curr. Opin. Mol. Ther. 2: 162-167; U Langel (2002), Preface in: Cell Penetrating Peptides; Processes and Applications, U. Langel, Editor, CRC Press, Boca Raton; E. Vives and B. Lebleu (2002), The Tat-Derived Cell-Penetrating Peptide in: Cell-Penetrating Peptides; Processes and Applications, U. Langel, Editor, CRC Press, Boca Raton: pp. 3-22。CPPが哺乳動物細胞におけるカーゴ送達を促進することは示されているが、形質移入研究のための植物細胞におけるCPPの使用は、多数の要因により制限されている。植物へのこの技術の適応に対する主な障害は、動物細胞とは異なり、植物細胞がCPP及びそれらのカーゴの内在化に対して二重バリアシステム(細胞壁及び形質膜)を提示することである。従って、CPPは、有効な転位のためにこれら2つのバリアを克服しなければならない。CPPは植物細胞において用いられているが、植物細胞へのカーゴの送達を実現するには、CPPの使用と共に透過性化剤及び技術の使用に概して依存する。HIV−1 TATタンパク質導入ドメイン(PTD)は、最もよく研究されている転位ペプチドの1つである。最近の報告により、哺乳動物細胞において負の電荷を有するDNAと複合体を形成することによってプラスミドを送達する、TAT−PTD及びそのオリゴマーの可能性が示された。I. Ignatovich, E. Dizhe, A. Pavlotskaya, B. Akifiev, S. Burov, S. Orlov, and A. Perevozchikov (2003), Complexes of Plasmid DNA with Basic Domain 47-57 of the HIV-1 Tat Protein Are Transferred to Mammalian Cells by Endocytosis-mediated Pathways, J. Biol. Chem. 278: 42625-42636; C. Rudolph, C. Plank, J. Lausier, U. Schillinger, R.H. Muller, and J. Rosenecker (2003), Oligomers of the Arginine-Rich Motif of the HIV-1 TAT Protein are Capable of Transferring Plasmid DNA into Cells, J. Biol. Chem. 278: 11411-11418; Z. Siprashvili, F. Scholl, S. Oliver, A. Adams, C. Contag, P. Wender, and P. Khavari (2003), Gene Transfer via Reversible Plasmid Condensation with Cysteine-Flanked, Internally Spaced Arginine-Rich Peptides, Hum. Gene. Ther. 14 (13): 1225-33; I. Hellgren, J. Gorman, and C. Sylven (2004), Factors Controlling the Efficiency of Tat-mediated Plasmid DNA Transfer, J. Drug. Target. 12 (1): 39-47。
【0005】
デンドリマーは、ユニークなコア・シェル高分子アーキテクチャを有する「カスケード分子」である。デンドリマーは、Donald Tomaliaにより1979年に研究室において初めて作られた(D.A. Tomalia et al., Preprints of the 1st SPSJ Int’l Polymer conference, Society of Polymer Science, Japan, Kyoto, 1984, p. 65;米国特許第6,316,694号も参照のこと)。デンドリマーは、動物細胞にDNA及び他の生体分子を送達するために使用されている。しかし、植物細胞壁の存在が、植物における遺伝子送達に課題を示している。加えて、デンドリマーに基づく送達を用いるトランスジーンの安定したゲノム組み込みは、植物に関して報告されておらず、実証されていない。従って、デンドリマーに基づく送達の使用により対象の遺伝子及び他の分子を植物に安定して組み込む方法が、今なお必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,316,694号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】F. Patolsky et al., J. Am. Chem. Soc. 125, 13918 (2003)
【非特許文献2】F. Torney et al., Nature Nanotechnol. 2, (2007)
【非特許文献3】J. Schwartz and S. Zhang (2000), Peptide-Mediated Cellular Delivery, Curr. Opin. Mol. Ther. 2: 162-167
【非特許文献4】U Langel (2002), Preface in: Cell Penetrating Peptides
【非特許文献5】Processes and Applications, U. Langel, Editor, CRC Press, Boca Raton
【非特許文献6】E. Vives and B. Lebleu (2002), The Tat-Derived Cell-Penetrating Peptide in: Cell-Penetrating Peptides
【非特許文献7】I. Ignatovich, E. Dizhe, A. Pavlotskaya, B. Akifiev, S. Burov, S. Orlov, and A. Perevozchikov (2003), Complexes of Plasmid DNA with Basic Domain 47-57 of the HIV-1 Tat Protein Are Transferred to Mammalian Cells by Endocytosis-mediated Pathways, J. Biol. Chem. 278: 42625-42636
【非特許文献8】C. Rudolph, C. Plank, J. Lausier, U. Schillinger, R.H. Muller, and J. Rosenecker (2003), Oligomers of the Arginine-Rich Motif of the HIV-1 TAT Protein are Capable of Transferring Plasmid DNA into Cells, J. Biol. Chem. 278: 11411-11418
【非特許文献9】Z. Siprashvili, F. Scholl, S. Oliver, A. Adams, C. Contag, P. Wender, and P. Khavari (2003), Gene Transfer via Reversible Plasmid Condensation with Cysteine-Flanked, Internally Spaced Arginine-Rich Peptides, Hum. Gene. Ther. 14 (13): 1225-33
【非特許文献10】I. Hellgren, J. Gorman, and C. Sylven (2004), Factors Controlling the Efficiency of Tat-mediated Plasmid DNA Transfer, J. Drug. Target. 12 (1): 39-47
【非特許文献11】D.A. Tomalia et al., Preprints of the 1st SPSJ Int’l Polymer conference, Society of Polymer Science, Japan, Kyoto, 1984, p. 65
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例示的及び例証的であることを意図し、範囲を限定するものでないシステム、ツール及び方法に関連して、以下の実施形態を説明する。
【0009】
本発明は、デンドリマー、及び場合により1つ又はそれ以上のCPPを使用して、細胞壁を有する細胞に分子性物質を非侵襲的に送達する、それらの中への該分子性物質の安定した取り込みのための、方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの実施形態は、細胞壁を有する植物細胞に関心のある分子を導入して、植物及び種子の安定した形質転換を果たす方法を含む。この方法は、細胞壁を有する植物細胞を提供する工程、並びにデンドリマー、及び場合により1つ又はそれ以上のCPPを対象の分子と相互作用させて、活性化されたデンドリマー構造を形成する工程を含む。前記細胞及び前記活性化されたデンドリマー構造を、前記細胞壁を有する細胞へのそれらの取り込みを可能にする条件下で、互いに接触させる。
【0011】
本発明のもう1つの実施形態は、遺伝子を安定して発現させる方法を含む。この方法は、細胞壁を有する植物細胞を提供する工程、並びにデンドリマー、及び場合により1つ又はそれ以上のCPPを遺伝子と相互作用させて、活性化されたデンドリマー構造を形成する工程を含む。細胞壁を有する前記植物細胞及び前記活性化されたデンドリマー構造を互いに接触させ、前記デンドリマー及び前記遺伝子を、前記細胞壁を有する植物細胞へのそれらの取り込みを可能にする条件下に置く。その後、前記植物細胞を有する植物の後代において前記遺伝子を発現させる。
【0012】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、分子性物質を植物細胞に移行させる方法を含む。この方法は、デンドリマー、及び場合により1つ又はそれ以上のCPPをプラスミドDNAと相互作用させて、活性化されたデンドリマー構造を形成する工程を含む。前記活性化されたデンドリマー構造を、無傷の壁保有植物細胞と、該植物細胞への前記デンドリマーと前記プラスミドDNAからの遺伝子の取り込みを可能にする条件下で接触させる。
【0013】
上で説明した例示的態様及び実施形態に加えて、さらなる態様及び実施形態が以下の説明に鑑みて明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プラスミドpDAB3831を示す。
【図2】プラスミドpDAB7331を示す。
【図3】シロイヌナズナ属(Arabidopsis)トランスジェニック植物のゲノムDNAからのPAT PCR増幅を示す、エチジウムブロマイド染色ゲル画像である:100 DNAラダー(Promega Inc)1;pDAB3831処理を伴うSUPERFECT(商標)からのシロイヌナズナ属トランスジェニック系2;ポジティブ対照としてのプラスミドDNA pDAB3831;アスタリスクは、PAT PCRアンプリコンを示す。
【図4】シロイヌナズナ属トランスジェニック植物のゲノムDNAからのYFP PCR増幅を示す、ゲル画像である:100 DNAラダー(Promega Inc)1;pDAB3831処理を伴うSUPERFECT(商標)からのシロイヌナズナ属トランスジェニック系2;ポジティブ対照としてのプラスミドDNA pDAB3831;アスタリスクは、YFP PCRアンプリコンを示す。
【図5】デンドリマー媒介(SUPERFECT(商標))形質転換シロイヌナズナ属植物の葉組織からのPATタンパク質発現レベルを示す;市販のELISAキットを使用して、PATタンパク質を該デンドリマー媒介トランスジェニック植物において検出し、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)により形質転換された植物と比較した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
後続の説明及び表の中で多数の用語を用いる。所定のそのような用語に対する範囲を含めて、本明細書及び特許請求の範囲の明確で一貫した理解をもたらすために、以下の定義を提供する。
戻し交配。戻し交配は、育種家が、ハイブリッド後代を、親のうちの1つ、例えばFハイブリッドの親遺伝子型のうちの1つを有する第1世代ハイブリッドFと繰り返し交配させる方法であり得る。
【0016】
胚。胚は、成熟種子の中に含有される小植物体であり得る。
【0017】
デンドリマー。デンドリマーは、反復的な一連の反応によって得られる三次元、多分岐、単分散ナノメートル級高分子である。
【0018】
デンドリマーは、それらのサイズ、形状、表面化学及び内部ボイド空間に応じて設計及び調節することができる、調整可能な「ナノ構造」として通常合成されている。デンドリマーは、旧来の生体高分子、例えばDNNPNA又はタンパク質のものにほぼ等しい構造制御によって得ることができ、それらの正確なナノスケール足場及びナノコンテナー特性によって区別される。デンドリマーは、少なくとも1つのナノスケール次元、通常は100nm未満を有する微視的粒子である。本発明での使用に適するデンドリマーは、1nm〜0.4umのサイズを有し得る。
【0019】
グリホサートに対する耐性。グリホサートの投薬に対する耐性は、植物の、そのグリホサート投薬を生き残る(すなわち、植物が殺傷され得ない)能力を指す。場合によっては、耐性植物は一時的に黄変することがあり、あるいは多少のグリホサート誘導傷害(例えば、過剰な分げつ及び/若しくは成長阻害)を呈示することがあるが、回復することができる。
【0020】
安定化された。安定化されたは、同じ品種の同系交配植物のある世代から次世代へと再現可能に受け継がれる、植物の特徴を指す。
【0021】
取り込み。取り込みは、デンドリマーなどの粒子の細胞壁又は細胞膜を越えての転位を指し、この場合の転位は、該粒子が取り込まれる細胞以外の何かによって該粒子に付与される運動量の単なる結果としては起こらない。細胞壁又は細胞膜を越える粒子の転位を該粒子に付与された運動量の単なる結果として生じさせる装置又は方法の非限定的な例は、微粒子銃、遺伝子銃、微量注入法、及び/又はインペールフェクション(impalefection)技術である。
【0022】
特定の実施形態において、本発明は、小分子、生体分子送達、遺伝子送達、イメージング、並びに様々なバイオテクノロジー的診断及び検出機能に関する用途に材料を適応させるためのペイロードを開発するナノ工学の選択肢としての、デンドリマーの応用に関する。デンドリマーアーキテクチャは、それらを他のポリマー及びナノ粒子と区別する多数の特有の特性をもたらし、例えば、比較的低い多分散度指数を有する明確に定義されたサイズ及び構造を生じさせることができる段階的合成方法がある。加えて、デンドリマーケミストリーは、種々の官能基を有する広範な分子の合成に適応可能であり得、従って、該合成を促進することができる。本発明の特定の方法によるデンドリマーの使用は、高密度の末端基の使用により生体分子及び遺伝子送達を促進する。
【0023】
本発明の他の実施形態では、前記デンドリマー上の様々な及び/又は多数の部位に対して遺伝子工学により「付加」又は「ゲスト」分子の多数の結合部位を作る又は充填を行うことができる。この特性は、例えば、バイオミメティックスなどの分野のための細胞内における分子部位の特異的ターゲッティング及びエディティング、非遺伝子修飾生物オプションのためのターゲット指向型送達、並びに形質及び病害耐性オプションのための様々な樹木又は野菜作物のにおける一過性形質転換オプションに、利用することができる。本発明の実施形態を、適するバイオセンサーの開発に用いることもできる。加えて、人工染色体(ACES)を、正確なターゲッティング及び相同組換えオプションのための現行の真核細胞ベクターの代替として、本発明の方法と共に用いることができる。
【0024】
本発明の実施形態に従って、細胞壁を含む植物細胞に対象の分子を導入する方法を提供することができ、この方法は、対象の分子を含有するデンドリマーを植物細胞と接触させる工程、及び該植物細胞壁を越えて該デンドリマーを取り込ませる工程を含む。本発明の特定の態様において、前記デンドリマーは、任意のデンドリマーであってよく、対象の分子を可逆的に若しくは不可逆的に含有することができ、対象の分子と相互作用することができ、あるいは対象の分子に結合する及び/又は対象の分子を担持することができる。特定の実施形態において、対象の分子は、細胞壁を有する植物細胞との接触前に前記デンドリマーに、又は細胞壁を有する植物細胞への該デンドリマーの導入と同時に、導入することができる。
【0025】
本発明の実施形態によると、細胞壁を有する植物細胞は、無傷の完全な細胞壁を含む任意の植物細胞であり得る。細胞壁を有する細胞の例としては、藻類、タバコ、ニンジン、トウモロコシ、キャノーラ、ナタネ、綿、ヤシ、ラッカセイ、大豆、サトウキビ、イネ属種(Oryza sp.)、シロイヌナズナ属種及びトウゴマ属種(Ricinus sp.)の細胞;好ましくはタバコ、ニンジン、トウモロコシ、綿、キャノーラ、大豆及びサトウキビの細胞;さらに好ましくはタバコ及びニンジンの細胞が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施形態は、任意の組織からの細胞壁を含む細胞、又は胚、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、根、根尖、花、種子、莢、茎及び組織培養におけるものを含めて(しかし、これらに限定されない)、それらがどこで見つけられようと、細胞壁を含む細胞を含むことができる。
【0026】
本発明の実施形態において、対象の分子は、本発明に従って植物細胞に送達することができる任意の分子であり得る。対象の分子、又は対象の分子の成分は、これらに限定されないが、核酸、DNA、RNA、RNAi分子、遺伝子、プラスミド、コスミド、YAC、BAC、植物人工染色体、植物ミニ染色体、遺伝子工学で形質遺伝子座が改変された植物のDNA(Plant Engineered Trait Loci DNA);ポリペプチド、酵素、ホルモン、糖ペプチド、糖、脂肪、シグナリングペプチド、抗体、ビタミン、メッセンジャー、二次メッセンジャー、アミノ酸、cAMP、薬物、除草剤、殺真菌剤、抗生物質、及び/又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0027】
本発明の実施形態は、病害の予防又は治療のための方法を含む。非限定的例示実施形態としては、本発明の方法を用いる、その必要がある細胞への殺真菌剤、抗生物質及び/又は他の薬物の送達が挙げられる。
【0028】
本発明の態様では、前記デンドリマーを細胞の様々な部に取り込ませることができる。デンドリマーを取り込ませることができる位置の例としては、サイトゾル、核、液胞膜、色素体、エチオプラスト、有色体、白色体、エライオプラスト、プロテイノプラスト、アミロプラスト、葉緑体、及び二重膜の内腔が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の他の実施形態において、細胞壁を含む細胞へのデンドリマー取り込みは、シンプラスト経路によって行われることもあり、又はアポプラスト経路によって行われることもある。
【0029】
本発明の追加の実施形態は、遺伝子修飾植物細胞及びそれらを産生する方法を含み、植物細胞は、本発明の方法によってそれらに導入された1つ又はそれ以上の核酸を有する。ある実施形態の1つの例では、対象の遺伝子と選択マーカーとを含むプラスミドを、細胞壁を有する植物細胞に、本発明によるデンドリマーによって導入することができる。さらなる実施形態では、対象の遺伝子及び/又は選択マーカーが安定して組み込まれている、安定した形質転換体を選択することができる。代替実施形態では、対象の遺伝子を今や含んでいる植物細胞を増殖させて、対象の分子を含む別の細胞を生産することができる。他の実施形態において、対象の分子を今や含んでいる植物細胞は、対象の該分子を含む全植物を再生するために使用することができる再生可能細胞であり得る。
【0030】
もう1つの態様において、本発明は、組織培養において使用するための対象の分子を含む再生可能植物細胞を作る方法を提供する。前記組織培養は、好ましくは、前記再生可能細胞と実質的に同じ遺伝子型を有する植物を再生することができるだろう。そのような組織培養における再生可能細胞は、胚、プロトプラスト、分裂組織細胞、カルス、花粉、葉、葯、根、根尖、花、種子、莢又は茎であり得る。尚さらに、本発明のある実施形態は、本発明の組織培養物から再生される植物を提供する。
【0031】
あるいは、本発明は、細胞壁を有する植物細胞に所望の形質を導入する方法を提供し、この方法は、該植物細胞に所望の形質をもたらすことができるデンドリマー及び対象の分子を、該細胞と接触させる工程、並びに該細胞壁を越えて該デンドリマーを取り込ませる工程を含む。所望の形質の例としては、雄性不稔、除草剤耐性、虫害耐性、並びに細菌病、真菌病及び/又はウイルス病に対する耐性から選択される形質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明のさらなる態様は、所望の形質又は対象の分子を含む安定化植物系統の産生方法に備えており、この方法では、植物細胞壁を越えてのデンドリマーの取り込みにより、所望の形質又は対象の分子を最初に導入することができる。安定化植物系統の産生方法は、当業者に周知であり、これらに限定されないが自家受精、戻し交配、ハイブリッド生産、個体群との交配及びこれらに類するものなどの技術を含み得る。細胞壁を越えてのデンドリマーの取り込みによって、植物細胞(又はその祖先)に最初に導入される所望の形質又は対象の分子を含むすべての植物及び植物細胞が、本発明の範囲内である。有利には、細胞壁を越えてのデンドリマーの取り込みによって、植物又は細胞(又はその祖先)に最初に導入される所望の形質又は対象の分子を含む前記植物細胞を、他の異なる植物細胞との交配に使用して、優れた特徴を有する第一世代(F)ハイブリッド細胞、種子及び/又は植物を生産することができる。
【0033】
対象の分子が1つ又はそれ以上の遺伝子を含む実施形態において、該遺伝子は、優性対立遺伝子である場合もあり、又は劣性対立遺伝子である場合もある。例として、前記遺伝子は、除草剤耐性、虫害耐性、耐菌性に対する耐性、耐真菌性、ウイルス病耐性、雄性稔性、雄性不稔、向上した栄養価、及び産業利用などの形質を付与するだろう。
【0034】
特定のタンパク質又はRNA産物(例えば、RNAi)をコードする遺伝子の単離及び特性づけを可能にした分子生物学技術の出現により、植物生物学分野の科学者は、特異的な手法で細胞の形質を改変するために、外来遺伝子を、又は天然若しくは内在遺伝子の(おそらく異なるプロモーターによって駆動される)さらなる若しくは修飾されたバージョンを、含有及び発現するように細胞ゲノムを遺伝子工学で作り変えることに強い関心を持つようになった。そのような外来の、さらなる及び/又は修飾された遺伝子を、本明細書では、総称して「トランスジーン」と呼ぶ。過去15から20年にわたって、トランスジェニック細胞を生産するための幾つかの方法が開発されており、特定の実施形態において、本発明は、細胞の形質転換バージョン、及び細胞壁を越えてのデンドリマーの取り込みによる細胞壁トランスジーンを有する細胞への導入によってそれらを生産する方法に関する。本発明の実施形態において、前記トランスジーンは、発現ベクターに含有されることがある。
【0035】
細胞形質転換は、特定の細胞において機能するであろう発現ベクターの構築を含む場合がある。そのようなベクターは、調節要素(例えば、プロモーター)の制御下の、又は該要素に作動的に連結された、遺伝子を含むDNAを含む場合がある。前記発現ベクターは、1つ又はそれ以上のそのような作動可能に連結された遺伝子/調節要素の組み合わせを含有する場合がある。前記ベクターは、プラスミドの形態である場合があり、並びに細胞壁を含む植物細胞の遺伝物質にトランスジーンを組み込むための本明細書に記載の形質転換方法を用いて形質転換細胞を生じさせるために、単独で使用することができ、又は他のプラスミドと併用することができる。
【0036】
本発明の特定の実施形態において、多目的STARBURST(登録商標)PAMAM(ポリアミドアミン)デンドリマー原型は、(i)ターゲット指向型診断用MRI(磁気共鳴画像法)INIR(近IR)造影剤としての、(ii)及び/又は癌療法の制御送達のための、使用に適する特性を呈示する。それらの中で、筆頭候補は、(コア:1,4−ジアミノブタン(1,4-diaminobotane);G(世代)[PAMAM(CO2Na)64Jである。この樹状ナノ構造(すなわち、−5.0nm直径)を非常に好適な生体適合性プロフィールに基づいて選択した。ナノテクノロジー評価研究所(The Nanotechnology Characterization Laboratory)NCL)、米国国立がん研究所(NCI)の付属機関は、前記筆頭化合物に関して広範なin vitro研究を遂行し、それが非常に良性であり高生体適合性であることを見出し、望ましい哺乳動物腎排泄特性を呈示するであろうと予測し、ターゲッティング機能を実証した。本発明の方法で使用するデンドリマーは、高い分子均一度及び低い多分散性を有するそれらの明確に定義された構造を特徴とするポリマーのクラスの代表である。加えて、これらのデンドリマーは、排出輸送体を回避できることが証明されている。
【0037】
本発明の方法によるデンドリマーの使用により、安定して形質転換された植物が生産され、トランスジェニックT1植物への高除草剤抵抗性にされた表現型を有する安定して形質転換された除草剤遺伝子の発現が実証された。この植物は、T2種子を生産するので、稔性であることが分かった。
【0038】
特定の実施形態では、SUPERFECT(商標)Transfection Reagentを使用した。この試薬は、特別に設計された活性化デンドリマーの溶液としてQiagenのSUPERFECT(商標)試薬(Qiagenカタログ#301307)として入手できる、被定義形状及び直径を有するポリカチオンである。デンドリマーは、中心コアから放射状に広がり、荷電アミノ基を末端に有する枝を有する、球形ポリアミドアミン分子である。化学的活性化は、真核細胞によるDNAの効率的な取り込みを促進する。特定の理論に限定されないが、この試薬は、DNAをコンパクトな構造に集合させ、それによって細胞へのDNAの侵入を最適化すると考えられる。SUPERFECT(商標)−DNA複合体を、核へのそれらの輸送中に安定させるために、SUPERFECT(商標)試薬は、エンドソームとの融合後にリソソームを緩衝してリソソームヌクレアーゼのpH阻害をもたらすように設計されている。
【0039】
デンドリマーによる取り込みのための発現ベクター:マーカー遺伝子
発現ベクターは、少なくとも1つの遺伝子マーカーであって、該マーカーを含有する形質転換細胞を、ネガティブ選択(すなわち、選択マーカー遺伝子を含有しない細胞の成長の阻害)又はポジティブ選択(すなわち、該遺伝子マーカーによってコードされた産物についてのスクリーニング)のいずれかによって回収することができる調節要素(例えば、プロモーター)に作動可能に連結されたものである遺伝子マーカーを含むことがある。形質転換のための多くの選択マーカー遺伝子が形質転換分野では周知であり、それらとしては、例えば、抗生物質若しくは除草剤であり得る選択的化学薬品を代謝的に解毒する酵素をコードする遺伝子、又は阻害剤に対して非感受性であり得る改変ターゲットをコードする遺伝子が挙げられる。少数のポジティブ選択法も当分野において公知である。
【0040】
植物形質転換に適する1つの一般に使用されている選択マーカー遺伝子としては、カナマイシンに対する耐性を付与する、植物調節シグナルの制御下のネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)遺伝子を挙げることができる。例えば、Fraley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80: 4803 (1983)を参照のこと。もう1つの一般に使用されている選択マーカー遺伝子は、抗生物質ヒグロマイシンに対する耐性を付与する、ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子であり得る。例えば、Vanden Elzen et al., Plant Mol. Biol., 5: 299 (1985)を参照のこと。
【0041】
抗生物質に対する耐性を付与する細菌起源のさらなる選択マーカー遺伝子としては、ゲンタマイシンアセチルトランスフェラーゼ、ストレプトマイシンホスホトランスフェラーゼ、アミノグリコシド−3’−アデニルトランスフェラーゼ、及びブレオマイシン耐性決定基が挙げられる。Hayford et al., Plant Physiol. 86: 1216 (1988); Jones et al., Mol. Gen. Genet., 210: 86 (1987); Svab et al., Plant Mol. Biol. 14: 197 (1990); Hille et al., Plant Mol. Biol. 7: 171 (1986)を参照のこと。他の選択マーカー遺伝子は、除草剤、例えばグリホサート、グルホシネート又はブロモキシニルに対する耐性を付与する。Comai et al., Nature 317: 741-744 (1985); Gordon-Kamm et al., Plant Cell 2: 603-618 (1990);及びStalker et al., Science 242: 419-423 (1988)を参照のこと。
【0042】
植物形質転換に適する他の選択マーカー遺伝子は、細菌起源のものではない。これらの遺伝子としては、例えば、マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ、植物5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸シンターゼ及び植物アセト乳酸シンターゼが挙げられる。Eichholtz et al., Somatic Cell Mol. Genet. 13: 67 (1987); Shah et al., Science 233: 478 (1986); Charest et al., Plant Cell Rep. 8: 643 (1990)を参照のこと。
【0043】
植物形質転換に適するマーカー遺伝子のもう1つのクラスは、抗生物質などの毒性物質に対する耐性についての形質転換細胞の直接的遺伝子選択ではなく、推定形質転換植物細胞のスクリーニングを必要とする。これらの遺伝子は、遺伝子発現の研究のために遺伝子又は遺伝子調節配列に融合することができるため、特定の組織における遺伝子の発現の空間的パターンの定量又は視覚化に特に有用であり、多くの場合、レポーター遺伝子と呼ばれる。形質転換細胞をスクリーニングするために一般に使用されている遺伝子としては、β−グルクロニダーゼ(GUS)、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ及びクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼが挙げられる。Jefferson, R. A., Plant Mol. Biol. Rep. 5: 387 (1987); Teeri et al., EMBO J. 8: 343 (1989); Koncz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84: 131 (1987); DeBlock et al., EMBO J. 3: 1681 (1984)を参照のこと。
【0044】
最近、植物組織の破壊を必要としないGUS活性を視覚化するためのin vivo法が利用できるようになった。Molecular Probes publication 2908, Imagene GreenTM, p. 1-4(1993);及びNaleway et al., J. Cell Biol. 115: 151a (1991)。しかし、GUS活性を視覚化するためのこれらのin vivo法は、低い感受性、高い蛍光バックグラウンド、及び選択マーカーとしてのルシフェラーゼ遺伝子の使用に付随する制限のため、形質転換細胞の回収に有用であることは証明されていない。
【0045】
より最近、蛍光タンパク質(例えば、GFP、EGFP、EBFP、ECFP、及びYFP)をコードする遺伝子が、原核及び真核細胞における遺伝子発現のためのマーカーとして利用されている。Chalfie et al., Science 263: 802 (1994)を参照のこと。蛍光タンパク質及び蛍光タンパク質の突然変異は、スクリーニング用マーカーとして使用することができる。
【0046】
デンドリマーによる取り込みのための発現ベクター:プロモーター
発現ベクターの中に含まれる遺伝子は、調節要素、例えばプロモーターを含むヌクレオチド配列によって駆動されなければならない。幾つかのタイプのプロモーターが形質転換分野において今や周知であり、単独で使用することができる又はプロモーターと併用することができる他の調節要素も周知である。
【0047】
本明細書において用いる場合、「プロモーター」は、転写の始点から上流にあり得る、並びにRNAポリメラーゼ及び転写を開始させる他のタンパク質の認識及び結合に関与し得る、DNAの領域への言及を含む。「植物プロモーター」は、植物細胞において転写を開始させることができるプロモーターであり得る。発育制御下のプロモーターの例としては、一定の組織、例えば葉、根、種子、繊維、木質部、道管、仮道管又は厚膜組織において優先的に転写を開始させるプロモーターが挙げられる。そのようなプロモーターを「組織優先的(tissue-preferred)」と呼ぶ。一定の組織においてしか転写を開始させないプロモーターを「組織特異的」と呼ぶ。「細胞タイプ」特異的プロモーターは、1つ又はそれ以上の器官における一定の細胞タイプ、例えば根又は葉における道管細胞での発現を主として駆動する。「誘導性」プロモーターは、環境的制御下にあり得るプロモーターであり得る。誘導性プロモーターによる転写に影響を及ぼし得る環境条件の例としては、嫌気的条件又は光の存在が挙げられる。組織特異的、組織優先的、細胞タイプ特異的、及び誘導性プロモーターは、「非構成的」プロモーターのクラスを構成する。「構成的」プロモーターは、殆どの環境条件下で活性であることができるプロモーターであり得る。
【0048】
A.誘導性プロモーター
誘導性プロモーターは、細胞における発現のための遺伝子に作動可能に連結されていることがある。場合により、誘導性プロモーターは、細胞における発現のための遺伝子に作動可能に連結されていることがあるシグナル配列をコードするヌクレオチド配列に、作動可能に連結されていることがある。誘導性プロモーターを用いると、転写速度は誘導剤に応答して増加する。
【0049】
任意の誘導性プロモーターを本発明において使用することができる。Ward et al., Plant Mol. Biol. 22: 361-366 (1993)を参照のこと。例示的誘導性プロモーターとしては、銅に応答するACEI系からのもの(Mett et al., PNAS 90: 4567-4571 (1993));ベンゼンスルホンアミド除草剤解毒剤に応答するトウモロコシからのIn2遺伝子(Hershey et al., Mol. Gen Genetics 227: 229-237 (1991);及びGatz et al., Mol. Gen. Genetics 243: 32-38 (1994));及びTn10からのTetレプレッサー(Gatz et al., Mol. Gen. Genetics 227: 229-237 (1991))が挙げられるが、これらに限定されない。特に有用な誘導性プロモーターは、植物が通常応答しない誘導剤に対して応答するプロモーターであり得る。例示的誘導性プロモーターは、その転写活性が糖質コルチコステロイドホルモンによって誘導され得る、ステロイドホルモン遺伝子からの誘導性プロモーターであり得る。Schena et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 88: 0421 (1991)。
【0050】
B.構成的プロモーター
構成的プロモーターは、細胞における発現のための遺伝子に作動可能に連結されていることもあり、又は構成的プロモーターは、細胞における発現のための遺伝子に作動可能に連結されていることがあるシグナル配列をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されていることもある。
【0051】
種々の構成的プロモーターを本発明において用いることができる。例示的構成的プロモーターとしては、植物ウイルスからのプロモーター、例えば、CaMVからの35Sプロモーター(Odell et al., Nature 313: 810-812 (1985));イネアクチン遺伝子からのプロモーター(McElroy et al., Plant Cell 2: 163-171 (1990));ユビキチン(Christensen et al., Plant Mol. Biol. 12: 619-632 (1989);及びChristensen et al., Plant Mol. Biol. 18: 675-689 (1992)); pEMU(Last et al., Theor. Appl. Genet. 81: 581-588 (1991)); MAS(Velten et al., EMBO J. 3: 2723-2730 (1984));及びトウモロコシH3ヒストン(Lepetit et al., Mol. Gen. Genetics 231: 276-285 (1992);及びAtanassova et al., Plant Journal 2 (3): 291-300 (1992))が挙げられるが、これらに限定されない。ALSプロモーター、アブラナ(Brassica napus)ALS3構造遺伝子に対して5’のXba1/NcoIフラグメント(又は該Xba1/NcoIフラグメントに類似するヌクレオチド配列)は、特に有用な構成的プロモーターの代表である。PCT出願WO96/30530を参照のこと。
【0052】
C.組織特異的又は組織優先的プロモーター
組織特異的プロモーターは、細胞における発現のための遺伝子に作動可能に連結されていることがある。場合により、組織特異的プロモーターは、細胞における発現のための遺伝子に作動可能に連結されていることがあるシグナル配列をコードするヌクレオチド配列に、作動可能に連結されていることがある。組織特異的プロモーターに作動可能に連結されている対象の遺伝子で形質転換された植物は、特定の組織において排他的に、又は優先的に、トランスジーンのタンパク質産物を生産することができる。
【0053】
任意の組織特異的又は組織優先的プロモーターを本発明において用いることができる。例示的組織特異的又は組織優先的プロモーターとしては、根優先的プロモーター、例えば、ファセオリン遺伝子からのもの(Murai et al., Science 23: 476-482 (1983);及びSengupta-Gopalan et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 82: 3320-3324 (1985));葉特異的で光により誘導されるプロモーター、例えば、cab若しくはrubiscoからのもの(Simpson et al., EMBO J. 4(11): 2723-2729 (1985);及びTimko et al., Nature 318: 579-582 (1985));葯特異的プロモーター、例えば、LAT52からのもの(Twell et al., Mol. Gen. Genetics 217: 240-245 (1989));花粉特異的プロモーター、例えば、Zm13からのもの(Guerrero et al., Mol. Gen. Genetics 244: 161-168 (1993))又は小胞子優先的プロモーター、例えばapgからのもの(Twell et al., Sex. Plant Reprod. 6: 217-224 (1993))が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
トランスジーンによって生産されたタンパク質の、細胞内区画、例えば葉緑体、空胞、ペルオキシソーム、グリオキシソーム、細胞壁若しくはミトコンドリアへの輸送、又はアポプラストへの分泌のための輸送は、シグナル配列をコードするヌクレオチド配列を、対象のタンパク質をコードする遺伝子の5’及び/又は3’領域に作動可能に連結することによって果たすことができる。構造遺伝子の5’及び/又は3’末端のターゲッティング配列は、タンパク質合成及びプロセッシング中に、コードされたタンパク質が最終的に区画化され得る場所を決定し得る。あるいは、そのような細胞内区画ターゲッティングタンパク質をデンドリマーに直接連結して、対象の分子で被覆された該デンドリマーを所望の細胞内区画に指向させることができる。
【0055】
シグナル配列の存在は、ポリペプチドを、細胞内小器官若しくは細胞内区画のいずれかに、又は分泌のためにアポプラストに指向させる。多くのシグナル配列が当分野において公知である。例えば、Becker et al., Plant Mol. Biol. 20: 49 (1992); P.S. Close, Master’s Thesis, Iowa State University (1993); C. Knox et al.,「Structure and Organization of Two Divergent Alpha-Amylase Genes from Barley,」Plant Mol. Biol. 9: 3-17 (1987); Lerner et al., Plant Physiol. 91: 124-129 (1989); Fontes et al., Plant Cell 3: 483-496 (1991); Matsuoka et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 88: 834 (1991); Gould et al., J. Cell. Biol. 108: 1657 (1989); Creissen et al., Plant J. 2: 129 (1991); Kalderon, et al., A short amino acid sequence able to specify nuclear location, Cell 39: 499-509 (1984); Steifel, et al., Expression of a maize cell wall hydroxyproline-rich glycoprotein gene in early leaf and root vascular differentiation, Plant Cell 2: 785-793 (1990)を参照のこと。
【0056】
外来タンパク質遺伝子及び耕種学的遺伝子(Agronomic Genes)
本発明によるトランスジェニック植物を用いて、外来タンパク質を商業量で生産することができる。例えば、当分野において十分に理解されている形質転換植物の選択技術及び繁殖技術によって多数のトランスジェニック植物を生じさせ、それらを従来の手法で収穫し、その後、対象の組織から又は全バイオマスから外来タンパク質を抽出することができる。植物バイオマスからのタンパク質抽出は、例えばHeney and Orr, Anal. Biochem. 114: 92-6 (1981)によって論じられている公知の方法により果たすことができる。
【0057】
本発明の態様において、外来タンパク質の商業生産のために提供されるトランスジェニック植物は、細胞である場合もあり、又は植物である場合もある。他の態様において、対象のバイオマスは、種子である場合がある。より高い発現レベルを示す比較的少数のトランスジェニック植物について、組み込まれたDNA分子の近似的染色体位置を同定する従来のRFLP、PCR及びSSR分析により、遺伝子マップを主に作成することができる。これに関しての例示的方法論については、Glick and Thompson, Methods in Plant Molecular Biology and Biotechnology CRC Press, Boca Raton 269: 284 (1993)を参照のこと。染色体位置に関するマップ情報は、対象トランスジェニック植物の所有権保護に有用であり得る。無許可の繁殖が企てられ得、他の生殖質と交配される場合、その組み込み領域のマップを、疑わしい植物についての類似のマップと比較して、後者(疑わしい植物)が、その対象植物と共通の血統を有するかどうかを判定することができる。マップ比較は、ハイブリダイゼーション、RFLP、PCR、SSR及びシークエンシング(これらのすべてが従来の技術である)を伴うだろう。
【0058】
同様に、耕種学的遺伝子を形質転換細胞又はそれらの後代において発現させることができる。より詳細には、本発明の方法により植物を遺伝子操作して、耕種学的対象の様々な表現型を発現させることができる。これに関して使用することができる例示的遺伝子としては、下に類別するものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0059】
1.有害生物又は病害に対する耐性を付与する及びコードする遺伝子:
A)植物病害耐性遺伝子。植物防御は、その植物中の病害耐性遺伝子(R)の産物と病原体中の対応する無発病性(Avr)遺伝子の産物との特異的相互作用によって活性化されることが多い。植物品種を、クローニングされた耐性遺伝子で形質転換して、特定の病原体株に対して耐性である植物を遺伝子工学で作ることができる。例えば、Jones et al., Science 266: 789 (1994)(トマト葉かび病菌(Cladosporium fulvum)に対する耐性のためのトマトCf−9遺伝子のクローニング);Martin et al., Science 262: 1432 (1993)(プロテインキナーゼをコードするトマト斑葉細菌病菌(Pseudomonas syringae pv. tomato)に対する耐性のためのトマトPto遺伝子);Mindrinos et al., Cell 78: 1089 (1994)(アラビドプシス(Arabidops)は、シュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)に対する耐性のためのRSP2遺伝子である)を参照のこと。
【0060】
B)有害生物、例えば、大豆シスト線虫に対する耐性を付与する遺伝子。例えばPCT出願WO96/30517;PCT出願WO93/19181を参照のこと。
【0061】
C)バシラス・スリンジエンシス(Bacillus thuringiensis)タンパク質、その誘導体又はそれをモデルにした合成ポリペプチド。例えば、Bt δ−内毒素遺伝子のクローニング及びヌクレオチド配列を開示しているGeiser et al., Gene 48: 109 (1986)を参照のこと。さらに、δ−内毒素遺伝子をコードするDNA分子は、バージニア州マナッサスのアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)から、例えばATCCアクセッション番号40098、67136、31995及び31998で購入することができる。
【0062】
D)レクチン。例えば、幾つかのクリビア・ミニアタ(Clivia miniata)マンノース結合レクチン遺伝子のヌクレオチド配列を開示しているVan Dammeらによる開示、Plant Molec. Biol. 24: 25 (1994)を参照のこと。
【0063】
E)ビタミン結合タンパク質、例えばアビジン。PCT出願US93/06487を参照のこと。この出願は、アビジン及びアビジン同族体の害虫の幼虫駆除剤としての使用を教示している。
【0064】
F)酵素阻害剤、例えば、プロテアーゼ若しくはプロテイナーゼ阻害剤又はアミラーゼ阻害剤。例えば、Abe et al., J. Biol. Chem. 262: 16793 (1987)(イネシステインプロテイナーゼ阻害剤のヌクレオチド配列);Huub et al., Plant Molec. Biol. 21: 985 (1993)(タバコプロテイナーゼ阻害剤IをコードするcDNAのヌクレオチド配列);Sumitani et al., Biosci. Biotech. Biochem. 57: 1243 (1993)(ストレプトマイセス・ニトロポレウス(Streptomyces nitrosporeus)α−アミラーゼ阻害剤のヌクレオチド配列)及び米国特許第5,494,813号(Hepher及びAtkinson、1996年2月27日発行)を参照のこと。
【0065】
G)昆虫特異的ホルモン又はフェロモン、例えばエクジステロイド若しくは幼若ホルモン、それらの変異体、それらに基づくミメティック、又はそれらのアンタゴニスト若しくはアゴニスト。例えば、クローニングされた幼若ホルモンエステラーゼ、幼若ホルモンの不活性化因子のバキュロウイルス発現についてのHammock et al., Nature 344: 458 (1990)による開示を参照のこと。
【0066】
H)発現されると、影響を及ぼされる有害生物の生理機能を破壊する、昆虫特異的ペプチド又はニューロペプチド。例えば、Regan, J. Biol. Chem. 269: 9 (1994)(発現クローニングは、昆虫利尿ホルモン受容体をコードするDNAを生じさせる);及びPratt et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 163: 1243 (1989)(アロスタチンは、ジプロプテラ・プンタタ(Diploptera puntata)において同定することができる)の開示を参照のこと。昆虫特異的、麻痺性神経毒素をコードする遺伝子を開示している、Tomalskiらの米国特許第5,266,317号も参照のこと。
【0067】
I)ヘビ、スズメバチ又は任意の他の生物により自然に生産される昆虫特異的毒液。例えば、サソリ昆虫毒性ペプチドをコードする遺伝子の植物における異種発現の開示について、Pang et al., Gene 116: 165 (1992)を参照のこと。
【0068】
J)殺虫活性を有するモノテルペン、セスキテルペン、ステロイド、ヒドロキサム酸、フェニルプロパノイド誘導体又は別の非タンパク質分子の高蓄積に関与する酵素。
【0069】
K)生物活性分子の修飾(翻訳後修飾を含む)に関与する酵素、例えば、天然のものであろうと、合成のものであろうと、糖分解酵素、タンパク質分解酵素、脂肪分解酵素、ヌクレアーゼ、シクラーゼ、トランスアミラーゼ、エステラーゼ、ヒドロラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、ホスホリラーゼ、ポリメラーゼ、エラスターゼ、キチナーゼ及びグルカナーゼ。Scottらの名においてカラーゼ(callase)遺伝子のヌクレオチド配列を開示しているPCT出願WO93/02197を参照のこと。例えばATCCからアクセッション番号39637及び67152で得ることができる、キチナーゼをコードする配列を含有するDNA分子。タバコイモムシキチナーゼをコードするcDNAのヌクレオチド配列を教示しているKramer et al., Insect Biochem. Molec. Biol. 23: 691 (1993);及びパセリubi4−2ポリユビキチン遺伝子のヌクレオチド配列を提供しているKawalleck et al., Plant Molec. Biol. 21: 673 (1993)も参照のこと。
【0070】
L)シグナル伝達を刺激する分子。例えば、マングビーンカルモジュリンcDNAクローンのヌクレオチド配列についてのBotella et al., Plant Molec. Biol. 24: 757 (1994)による開示、及びトウモロコシカルモジュリンcDNAクローンのヌクレオチド配列を提供しているGriess et al., Plant Physiol. 104: 1467 (1994)の開示を参照のこと。
【0071】
M)疎水性モーメントペプチド。PCT出願WO95/16776(真菌性植物病原体を阻害するタキプレシンのペプチド誘導体の開示)及びPCT出願WO95/18855(病害耐性を付与する合成抗微生物性ペプチドを教示している)を参照のこと。
【0072】
N)膜透過酵素、チャネルフォーマー又はチャネルブロッカー。例えば、トランスジェニックタバコ植物をシュードモナス・ソラナセアラム(Pseudomonas solanacearum)に対して耐性にするセクロピン−β溶解性ペプチドアナログの異種発現についてのJaynes et al., Plant Sci 89: 43 (1993)の開示を参照のこと。
【0073】
O)ウイルス侵襲性タンパク質又はそれに由来する複合毒素。例えば、形質転換植物細胞におけるウイルスコートタンパク質の蓄積は、該コートタンパク質遺伝子が由来し得るウイルスによる、及び関連ウイルスによる、影響を受けるウイルス感染症及び/又はウイルス病発生に対する耐性を付与する。Beachy et al., Ann. rev. Phytopathol. 28: 451 (1990)を参照のこと。アルファルファモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス、タバコ条斑病ウイルス、ジャガイモウイルスX、ジャガイモウイルスY、タバコエッチ病ウイルス、タバコ茎壊疽ウイルス及びタバコモザイクウイルスに対するコートタンパク質媒介耐性が形質転換植物に付与されている。同書。
【0074】
P)昆虫特異的抗体又はそれに由来するイムノトキシン。例えば、昆虫の腸における重要な代謝機能をターゲットにする抗体は、作用を受けた酵素を不活性化してその昆虫を殺す。Taylor et al., Abstract #497, Seventh Int’l Symposium on Molecular Plant-Microbe Interactions (Edinburgh, Scotland)(1994)(一本鎖抗体フラグメントの生産によるトランスジェニックタバコにおける酵素的不活性化)を参照のこと。
【0075】
Q)ウイルス特異的抗体。例えば、組換え抗体遺伝子を発現するトランスジェニック植物をウイルス攻撃から防護することを示している、Tavladoraki et al., Nature 366: 469 (1993)を参照のこと。
【0076】
R)病原体又は寄生虫により自然に生産される発育抑止(developmental-arrestive)タンパク質。例えば、真菌エンドα−1,4−D−ポリガラクツロナーゼは、植物細胞壁ホモ−α−1,4−D−ガラクツロナーゼを可溶化することにより、真菌コロニー形成及び植物栄養素放出を促進する。Lamb et al., Bio/Technology 10: 1436 (1992)を参照のこと。豆エンドポリガラクツロナーゼ阻害性タンパク質をコードする遺伝子のクローニング及び特性づけは、Toubart et al., Plant J. 2: 367 (1992)によって記載され得る。
【0077】
S)植物により自然に生産される発育抑止タンパク質。例えば、Logemann et al., Bio/Technology 10: 305 (1992)は、大麦リボソーム不活性化遺伝子を発現するトランスジェニック植物が真菌病に対する耐性増加を有することを示している。
【0078】
2.除草剤に対する耐性を付与する遺伝子:
A)成長点又は分裂組織を阻害する除草剤、例えば、イミダゾリノン、スルホンアミド又はスルホニル尿素。このカテゴリーの中の例示的遺伝子は、例えばLee et al., EMBO J. 7: 1241 (1988)、及びMiki et al., Theor. Appl. Genet. 80: 449 (1990)によりそれぞれ記載されているように、突然変異体ALS及びAHAS酵素をコードする。
【0079】
B)グリホサート(例えば、突然変異体5−エノールピルビルシキミ酸−3−リン酸シンターゼ(EPSP)遺伝子(組み換え核酸の導入及び/又は天然EPSP遺伝子の様々な形態のin vivo突然変異誘発により)、aroA遺伝子及びグリホサートアセチルトランスフェラーゼ(GAT)遺伝子によってそれぞれ付与される耐性)、他のホスホノ化合物、例えば、グルホシネート(ストレプトマイセス・ハイグロスコピカス及びストレプトマイセス・ビリドクロモゲネスを含むストレプトマイセス属種からのホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(PAT)遺伝子)、並びにピリジノキシ(pyridinoxy)又はフェノキシプロピオン酸及びシクロヘキソン(cyclohexones)(AACアーゼ阻害剤をコードする遺伝子)、例えば、植物にグリホサート耐性を付与することができるEPSPの形態のヌクレオチド配列を開示している、Shahらの米国特許第4,940,835号及びBarryらの米国特許第6,248,876号を参照のこと。突然変異体aroA遺伝子をコードするDNA分子は、ATCCアクセッション番号39256で入手することができ、その突然変異体遺伝子のヌクレオチド配列は、Comaiの米国特許第4,769,061号に開示され得る。Kumadaらの欧州特許出願第0 333 033号、及びGoodmanらの米国特許第4,975,374号は、L−ホスフィノトリシンなどの除草剤に対する耐性を付与するグルタミンシンセターゼ遺伝子のヌクレオチド配列を開示している。PAT遺伝子のヌクレオチド配列は、Leemansらの欧州出願第0 242 246号に提供され得、DeGreef et al., Bio/Technology 7: 61 (1989)には、PAT活性をコードするキメラbar遺伝子を発現するトランスジェニック植物の生産が記載されている。フェノキシプロパン酸及びシクロヘキソン、例えばセトキシジム及びハロキシホップに対する耐性を付与する遺伝子の例としては、Marshall et al., Theor. Appl. Genet. 83: 435 (1992)によって記載されているAcc1−S1、Acc1−S2及びAcc1−S3遺伝子が挙げられる。グリホサート耐性を付与することができるGAT遺伝子は、CastleらのWO2005012515に記載されている。2,4−D,フェノキシプロパン酸及びピリジルオキシオーキシン除草剤に対する耐性を付与する遺伝子は、Dow AgroSciences LLCに譲渡されたWO2005107437に記載されている。
【0080】
C)光合成を阻害する除草剤、例えば、トリアジン(psbA及びgs+遺伝子)又はベンゾニトリル(ニトリラーゼ遺伝子)。Przibila et al., Plant Cell 3: 169 (1991)には、突然変異体psbA遺伝子をコードするプラスミドでのクラミドモナス属(Chlamydomonas)の形質転換が記載されている。ニトリラーゼ遺伝子についてのヌクレオチド配列は、Stalkerの米国特許第4,810,648号に開示されており、これらの遺伝子を含有するDNA分子は、ATCCアクセッション番号53435、67441及び67442で入手できる。グルタチオンS−トランスフェラーゼをコードするDNAのクローニング及び発現は、Hayes et al., Biochem. J. 285: 173 (1992)により記載され得る。
【0081】
3.付加価値形質を付与する又は寄与する遺伝子、例えば:
A)例えば、植物を該植物のステアリン酸含有量を増加させるようにステアリル−ACPデサチュラーゼのアンチセンス遺伝子で形質転換することによる、修飾脂肪酸代謝。Knultzon et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89: 2624 (1992)を参照のこと。
【0082】
B)フィチン酸塩含有量減少−−1)フィターゼをコードする遺伝子の導入は、フィチン酸塩の分解を増進して、より多くの遊離リン酸塩をその形質転換植物に加える。例えば、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)フィターゼ遺伝子のヌクレオチド配列の開示について、Van Hartingsveldt et al., Gene 127: 87 (1993)を参照のこと。2)フィチン酸塩含有量を低減する遺伝子を導入することができる。例えばトウモロコシの場合、これは、低いフィチン酸レベルを特徴とするトウモロコシ突然変異体の原因になり得る単一対立遺伝子を伴うDNAをクローニングして再び導入することにより、果たすことができる。Raboy et al., Maydica 35: 383 (1990)を参照のこと。
【0083】
C)例えばデンプンの分岐パターンを改変する酵素をコードする遺伝子で植物を形質転換することによってもたらされる、修飾炭水化物組成物。Shiroza et al., J. Bacteol. 170: 810 (1988)(連鎖球菌属(Streptococcus)突然変異体フルクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列);Steinmetz et al., Mol. Gen. Genet. 20: 220 (1985)(レバンスクラーゼ遺伝子であり得る枯草菌(Bacillus subtilis)のヌクレオチド配列);Pen et al., Bio/Technology 10: 292 (1992)(α−アミラーゼであり得るバシラス・リシェニフォルミス(Bacillus lichenifonn)を発現するトランスジェニック植物の生産);Elliot et al., Plant Molec. Biol. 21: 515 (1993)(トマトインベルターゼ遺伝子のヌクレオチド配列);Sogaard et al., J. Biol. Chem. 268: 22480 (1993)(大麦α−アミラーゼ遺伝子のものであり得る部位特異的ミュータジーン(mutagenes));及びFisher et al., Plant Physiol. 102: 1045 (1993)(トウモロコシ胚乳デンプン分枝酵素II)を参照のこと。
[実施例]
【0084】
本発明を以下の実施例においてさらに説明する。これらの実施例は、例証として提供するものであり、いかようにも本発明を限定することを意図したものではない。
【実施例1】
【0085】
デンドリマー/DNA複合体の調製及び細胞の処理
1.1 プラスミドの調製
pDAB3831プラスミドDNA(図1)(配列番号1及び2)を、デンドリマー媒介植物形質転換のために、単離し、調製した。環化DNAと線形化DNAの両方を使用して、形質転換試験を行った。
【0086】
pDAB3831を線形化するために、PCR反応を遂行した。以前に例えばWO2008045288に記載されている連続熱サイクリングシステムを使用してpDAB3831をPCR増幅した。小型管を使用するのではなく、連続熱サイクラーは、異なる温度ゾーンを繰り返し通過する流体の一定した又は連続した流れを用いてDNAを増幅する。PCR反応混合物を、そのPCR反応混合物を浸すことができるキャリア液に注入した。その後、そのキャリア液を多数の温度ゾーンに通して、PCR反応混合物中のDNA増幅を促進した。12% MgCl(25mM)、0.33% Taq DNAポリメラーゼ(5単位/μL)、2.0% dNTP(デオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)及びデオチチミジン(deothythimidine)三リン酸(dTTP)、8.0% テンプレート(2μg/mL)、61.66% Pluronic F108溶液(1.5% 溶液)、4% フォワードプライマー、4% リバースプライマー、及び8% 反応バッファー(10X濃度)を含有するサンプルを調製した。そのシステムの隣接セクターを、解離、アニーリング及び伸長のためにそれぞれ95℃、59℃及び72℃の温度にセットした。加圧容器を使用してPCR反応混合物をポンプにより13.79N/cmでそのシステムに通した。反応混合物を温度制御体に送った後、鉱物油を使用してサンプルを押してチュービングの全長を通過させた。反応混合物の流量をフローバルブで0.25mL/分に制御した。サンプル中に存在する特異的DNA配列を、循環的に温度ゾーンに通しながら、増幅した。第30サイクル後、内容物を回収した。PCR産物をゲル濾過カラムで、その後、エタノール沈殿で精製した。精製産物のサンプルをAgilent Bioanalyzer並びにアガロースゲル電気泳動で分析して、PCR産物のサイズ及び濃度を確認した。
【0087】
上で説明したPCRのために使用したテンプレートは、シロイヌナズナ属ユビキチン10プロモーター(AtUbi10)によって駆動されるPAT選択マーカー遺伝子と、カッサバ葉脈モザイクウイルスプロモーター(CsVMV)によって駆動されるフィラジウム(Philadium)黄色蛍光タンパク質遺伝子(PhiYFP)とを含有する、DASプラスミドpDAB3831であった。フォワードプライマー配列番号:3及びリバースプライマー配列番号:4を合成して、遺伝子とそれらのプロモーターの両方を含有する4.6kbp完全発現カセット(すなわち、線形化DNA)を増幅した。加えて、ナノ粒子の表面への線形dsDNAのコンジュゲーションを促進するために、ビオチン−TEG−CE−ホスホルアミダイトを使用してそれらのプライマーのリン酸基にビオチン分子を化学的に連結させた。このホスホルアミダイトは、トリエチレングリコールリンカーに基づく、伸長された15原子混合極性スペーサーアームを有する。この伸長されたスペーサーアームは、オリゴの残部からビオチン官能基を分離して、ストレプタビジン分子への結合中に起こり得る一切の立体障害効果を有利に低減することができる。フォワードプライマーを標識する場合、ビオチンは、DNAの始点にあった。リバースプライマーを標識する場合、ビオチンは、DNAフラグメントの末端にあった。従って、ビオチン化(両方の配向)DNAフラグメントを、ストレプタビジン被覆ナノ粒子に取り付けることができる。ビオチン化オリゴ及び連続熱サイクリングシステムを使用して、約20mgの線形DNAフラグメントを生産した。
【0088】
1.2 DNA/デンドリマー複合体の調製
これらの実験に使用したデンドリマーは、表面の第一級アミンと内部の第三級アミンとから成る球形カチオン性ポリアミドアミン(PAMAM)カスケードポリマーであった。それらのデンドリマーを加溶媒分解用溶媒中での加熱処理によって部分的に分解し、それにより、結果として、より少ない立体的拘束及びより大きな柔軟性を得る。デンドリマーの高い正電荷は、DNAとの静電相互作用を促進し、その柔軟な構造が、デンドリマーを、DNAに結合するとコンパクトにさせ、DNAから解放されると膨張させる。形質移入又は形質転換効率は、デンドリマーの正電荷及び柔軟な構造特性の結果として増加される。
【0089】
SUPERFECT(商標)Transfection Reagent(Cat # 301305)として販売されているデンドリマーをQiagen(メリーランド州ジャーマンタウン)から入手した。プラスミドDNAを0.6mLのSUPERFECT(商標)試薬と混合し、30分間、24℃でインキュベートして、DNA/デンドリマー複合体を形成した。様々な濃度の環化プラスミドDNA(0.1mg及び0.5mg)を使用して、DNA/デンドリマー複合体を形成した。加えて、上の実施例1.1において説明した線形化DNAを使用して、DNA/デンドリマー複合体を形成した。0.1mg及び0.5mgの線形DNAの濃度を用いた。DNA/デンドリマー複合体の形成後、5%スクロースと.02〜.04% Silwet−L77とを含有する10mL量の溶液をそのDNA/デンドリマー反応物に添加した。
【実施例2】
【0090】
DNA/デンドリマー複合体送達及びシロイヌナズナ(ARABIDOPSIS THALIANA)の安定した形質転換
2.1 in planta形質転換のための植物材料:
種子の同調発芽は、T0植物における花芽発育の均一性を確実にするために重要である。シロイヌナズナ・コロンビア株(Arabidopsis thaliana cv. Columbia)種子を0.1% 寒天溶液に懸濁させ、4℃で48時間インキュベートして層積貯蔵を遂行した。60mgの種子を計量し、15mL 試験管に移した。13mLの0.1% 寒天溶液を添加し、種子が均等に分散されるまでボルテックスした。これは、4.6mg 種子/1mL 溶液(又は約230 種子/mL)の濃度を生じさせた。6本の試験管(72mL 溶液)を用意して、各トレーに18(31/2インチ)のポットが入っている4つの平箱に播種した。その溶液を4℃で48時間インキュベートして、層積貯蔵を遂行した。1ポットあたり1.0mLの層積貯蔵種子溶液を各ポットに個別に播種した。すべてのポットに播種したら、トレーの上にプロパゲーションドームを配置して、土壌を湿った状態に保った。播種日の5日後にドームを取り外した。種子を発芽させ、植物をCONVIRON(登録商標)(モデルCMP4030及びCMP3244、カナダ、マニトバ州ウィニペグのControlled Environments Limited)において長日条件(16時間 明/8時間 暗)下、120〜150μmol/m秒の光の強さで、一定温度(22℃)及び湿度(40〜50%)のもとで成長させた。植物播種の10から14日後、ホアグランド溶液と共に植物に水をやり、その後、DI水で土壌を濡れた状態ではなく湿った状態に保った。ポット播種日の4週間後、花を短く摘みこんで、二次花のさらなる一層の成長を生じさせた。播種後5週間の間に、形質転換プロセス用の植物が作られた。
【0091】
2.2 in planta形質転換及びT1耐性植物のスクリーニング:
シロイヌナズナ・コロンビア株のデンドリマー媒介形質転換を、CloughおよびBentからの修正プロトコルを用いて遂行した(S.J. Clough and A.F. Bent, 1998, Plant J 16: 735-43)。DNA/デンドリマー溶液を用いて10mL 懸濁液を作り、シロイヌナズナ属植物(多少の受精長角果を有する大部分未成熟の花房)の処理に使用した。環状DNA/デンドリマー複合体と線形DNA/デンドリマー複合体の両方を、互いに独立して使用した。植物を浸漬する前に、0.05%(250uL/500mL)〜0.005%の濃度のSilwet L−77をそのDNA/デンドリマー溶液に添加し、十分に混合した。植物の地上部分をDNA/デンドリマー溶液に穏やかに攪拌しながら2〜30秒間浸漬した。処理した植物をプラスチックドームカバーのもと、16〜24時間、22〜24℃で保持した。それらの植物をCONVIRONS(登録商標)に移し、成長させて成熟させ、種子を成長させた。選択トレー(10.5”×21”×1”トレー)を使用して、T植物からのバルク収穫種子、トレーごとに約10,000個の種子をスクリーニングした。選択噴霧が確実に正確に行われるように、2つの対照:Col−0ネガティブ形質転換体対照と、ポジティブ形質転換体対照としてのPAT(ホスフィノトリシン(Phospinothricin)アセチルトランスフェラーゼ)選択マーカーのためのホモ接合種子でスパイクしたコロンビアCol−0野生型を使用した。同調を達成するために、播種前に48時間、0.1% 寒天溶液中で種子を層積貯蔵した。選択トレーあたり10,000個の種子を提供するために、200mgの種子を0.1%寒天溶液に添加し、種子が均質に懸濁されるまでボルテックスした。その後、層積貯蔵種子を、Sunshine mix LP5を満たした選択トレーに播種し、ホアグランド溶液を用いて地下潅水した。選択噴霧の有効性を増すために、40mLの懸濁種子を選択トレーに均等に播種した。播種後、プロパゲーションドームを各選択トレー上に配置し、植物を選択のために成長させ、播種の約5日後にプロパゲーションドームを取り外した。
【0092】
加えて、デンドリマーなしでDNAのみを含有する溶液を使用してシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)を形質転換する対照実験を遂行した。前に説明したプロトコルを、裸のDNAの形質転換に用いた。線形と環状、両方の形態のDNAを互いに独立して使用した。
【0093】
アグロバクテリウム属を使用してシロイヌナズナについてのさらなる対照形質転換を遂行した。この形質転換は、デンドリマー媒介形質転換の効率を判定するためのベンチマークとして用いた。プラスミド、pDAB7331(図2)を、Hanahan(1983)からの修正プロトコルを用いて、アグロバクテリウム属に形質転換し、この株を、シロイヌナズナ・コロンビア株のアグロバクテリウム属媒介形質転換に使用した。
【0094】
Clough及びBentによって記載された花芽浸漬法を用いて、シロイヌナズナ属を形質転換した。選択したアグロバクテリウム属コロニーを使用して、スペクチノマイシン(100mg/L)とカナマイシン(50mg/L)の両方を含有するYEPの1つ又はそれ以上の100mL 前培養物を接種した。該培養物を一晩、28℃で、225rpmで絶えず攪拌しながらインキュベートした。細胞を約5000xgで10分間、室温でペレット化し、得られた上清を廃棄した。5%(w/v) スクロースと10μg/L 6−ベンジルアミノプリンと0.04% Silwet L−77とを含有する400mL ダンキング培地(dunking media)に細胞ペレットを穏やかに再懸濁させた。約1月齢の植物をその培地に穏やかに攪拌しながら5〜10分間浸漬した。植物をそれらの側面を下にして置き、2〜3時間、カバー(透明又は不透明)をかけ、その後、真っ直ぐに立てた。それらの植物を22℃で、16時間 明/8時間 暗の光周期で成長させた。浸漬の約4週間後、種子を収穫した。
【0095】
2.3 形質転換植物の選択
収穫したてのT種子を7日間、室温で放置して乾燥させた。T種子を、26.5×51−cm発芽トレーに、各トレーが、40mLの0.1% アガロース溶液に事前に懸濁させ、4℃で2日間保管して休眠要件を果たし、確実に種子発芽を同調させたものである層積貯蔵T種子(〜10,000個の種子)の200mg アリコートを受けるように、播種した。
【0096】
Sunshine Mix LP5に細いバーミキュライトをかぶせ、湿潤するまでホアグランド溶液を用いて地下潅水し、その後、放置して重力排水した。層積貯蔵種子の各40mL アリコートをペプチドと共にそのバーミキュライト上に均等に播種し、湿気ドーム(humidity dome)で4〜5日間、覆った。グルホシネート発芽後噴霧を用いる初期形質転換体選択の1日前に、ドームを取り外した。
【0097】
種まきの7日後(DAP)、T植物(それぞれ、子葉及び2〜4葉工程)に、5日以内に5回、1回あたり280g ae/haのグルホシネートの有効薬量を送達するDeVilbiss圧縮空気スプレーチップを使用して10mL/トレー(703L/ha)の噴霧量で、Liberty除草剤(200g ae/L グルホシネート、ミズーリ州カンザス・シティーのBayer Crop Sciences)の0.2% 溶液を噴霧した。生き残った物(活発に成長する植物)を最終噴霧の4〜7日後に特定し、鉢植え用培地(Metro Mix 360)を用いて用意した3インチポットに個々に移した。移植した植物を、湿気ドームで3〜4日間覆い、前のように22℃の成長チャンバの中に置くか、温室に直接移動した。その後、ドームを取り外し、植物を温室(22±5℃、50±30% RH、14時間 明:10時間 暗、最低500μE/m 自然+補助光)で栽培した。
【実施例3】
【0098】
シロイヌナズナ・コロンビア株のT1子孫におけるトランスジーンのゲノム組み込みの分子分析
3.1 トランスジーンのgDNA PCR増幅
シロイヌナズナ属トランスジェニック植物からのゲノムDNAを、Plant DNAZOLキットをその製造業者の説示に従って使用して、6週齢植物の全葉材料から抽出した。YFP及びPATトランスジーンの検出のためのPCRプライマーを設計した。YFPプライマーを配列番号:5及び配列番号:6として表す。PATプライマーを配列番号:7及び配列番号:8として表す。
【0099】
PAT及びYFPについてのPCR増幅反応を、TaKaRa EXTAQ(商標)キット(日本、滋賀県大津のTakara)を使用して遂行した。遺伝子産物を50μLの全反応量で増幅させた。PCR反応は、100ng ゲノムDNAテンプレート、1X EtTaq反応バッファー、0.2mM dNTP、10pMolの各プライマー、及び.025単位/μL ExTaqを含有した。以下のPCR条件を用いた:96℃で5分間の1サイクル、及び次の条件の31サイクル:94℃で15秒間、65℃で30秒間、72℃で1分間、そして72℃で7分間の最終伸長。PCR増幅産物を、0.8% TAEアガロースゲル電気泳動によって分析し、エチジウムブロマイド染色によって視覚化した。図5及び図6は、これらの反応から得た増幅産物を示す。
【0100】
PATフォワードプライマー(配列番号:7)及びYFPフォワードプライマー(配列番号:5)を用い、改良型サンガーシークエンシング技術(advanced Sanger sequencing technology)(アラバマ州ハンツヴィルのMWG Biotech)を用いて、PCRフラグメントをシークエンシングした。Sequencherソフトウェアを用いて配列データを分析した。
【0101】
PAT及びYFP PCRアンプリコンのシークエンシング結果は、これらの遺伝子の予想ヌクレオチド配列と一致した。これらの結果はSUPERFECT(商標)Transfection Reagentを使用して、pDAB3831からのPAT及びYFP配列がシロイヌナズナ属のgDNAに安定して組み込まれたことを示している。
【0102】
3.2 PATのELISAスクリーニング
発現されたPATタンパク質のELISA(酵素結合イムノソルベントアッセイ)による検出のために、6週齢トランスジェニックシロイヌナズナ属植物の葉からタンパク質を抽出した。葉のサンプルが入っているミクロチューブを液体窒素で冷却した。使い捨てホモジナイザーを使用して、葉材料を粉砕した。氷上で5分間、平衡させた後、200μLの抽出バッファー(PBST;.05%(v/v)TWEEN(登録商標)20を含有する20mM リン酸緩衝食塩水)を添加した。内容物をボルテックスで混合し、4℃で10分間、13,000xgで遠心分離した。上清を細胞破壊片から抽出し、さらなる分析まで氷上で保管した。
【0103】
LIBERTYLINK(登録商標)PAT/pat−(メイン州ポートランドのEnvirologix)用のQUALIPLATE(商標)Kitについて修正プロトコルを用いて、ELISAを行った。ELISAプレート及び他の試薬を室温で平衡させた。50μLの酵素コンジュゲートをそのプレートの各ウエルに添加した。別の50μLの抽出バッファーをそのプレートの各ウエルに添加した。精製トランスジェニックシロイヌナズナ属タンパク質の系列希釈物をそれらのウエルに添加した。10、5、2.5及び1.25ng/mLの濃度を用いた。追加の標準物質及び植物抽出物を対照としてウエルに添加した。そのプレートを200rpmで振盪し、室温で2時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートをプレート洗浄機において抽出バッファーで5回洗浄した。検出のために、そのキットからの100μLの基質を各ウエルに添加し、そのプレートを30分間インキュベートした。マイクロプレートリーダーを使用して595nmの吸収で活性を読取り、記録した。
【0104】
標準物質からのELISAシグナルの吸収は、吸収シグナルが各ウエルに存在するPATの量に正比例することを示した。このデータを図5に表す。SUPERFECT(商標)及びアグロバクテリウム属媒介形質転換植物のサンプルは、ELISAから強いシグナルを示す。これらの量は、10ng/mL 標準物質(このアッセイにおいて試験した最高標準物質)の3倍もの高さである。これらの結果は、PATが、SUPERFECT(商標)媒介植物形質転換によって形質転換されたシロイヌナズナ属トランスジェニック植物において発現されることを示している。
【0105】
本発明を特定の実施形態に関して説明したが、本開示の精神及び範囲内で本発明をさらに変更することができる。従って、本出願は、その一般原理を用いる本発明のあらゆる変形、使用又は適応を包含するものと解釈される。さらに、本出願は、本発明が属する分野において公知又は通例の実施の範囲内に入るような本開示からの逸脱を包含すると解釈され、それらは添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内に入る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞壁を有する植物細胞に対象の分子を導入して、植物及び種子の安定した形質転換を果たす方法であって、
細胞壁を有する植物細胞を提供する工程、
デンドリマー、及び場合により1つ又はそれ以上のCPPを対象の分子と相互作用させて、活性化されたデンドリマー構造を形成する工程、
細胞壁を有する前記細胞と前記活性化されたデンドリマー構造とを互いに接触させる工程、及び
前記デンドリマー及び前記対象の分子を、前記細胞壁を有する細胞に取り込ませる工程
を含む方法。
【請求項2】
デンドリマーを対象の分子と相互作用させる工程が、前記デンドリマーの表面への前記対象の分子の集合を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
デンドリマーを対象の分子と相互作用させる工程が、前記対象の分子の負電荷を有する基を、前記デンドリマーの末端の荷電アミノ基と相互作用させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
細胞壁を含む前記植物細胞の区画に前記デンドリマーを取り込ませる工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記区画が、サイトゾル、核、液胞膜、色素体、エチオプラスト、有色体、白色体、エライオプラスト、プロテイノプラスト、アミロプラスト、葉緑体、及び二重膜の内腔から成る群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
細胞壁を含む前記植物細胞が、タバコ、ニンジン、トウモロコシ、キャノーラ、ナタネ、綿、ヤシ、ラッカセイ、大豆、イネ属種(Oryza sp.)、シロイヌナズナ属種(Arabidopsis sp.)、トウゴマ属種(Ricinus sp.)及びサトウキビ、細胞から成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記植物細胞が、胚、分裂組織、カルス、花粉、葉、葯、根、根尖、花、種子、莢及び茎から成る群より選択される組織からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記デンドリマーが、ポリアミドアミンデンドリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記デンドリマーの表面を誘導体化する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記対象の分子が、核酸、DNA、RNA、RNAi分子、遺伝子、プラスミド、コスミド、YAC、BAC、ポリペプチド、酵素、ホルモン、糖ペプチド、糖、脂肪、シグナリングペプチド、抗体、ビタミン、メッセンジャー、二次メッセンジャー、アミノ酸、cAMP、薬物、除草剤、殺真菌剤、抗生物質、及びこれらの組み合わせから成る群より選択される成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記対象の分子が、遺伝子を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記遺伝子が、外来タンパク質遺伝子、耕種学的遺伝子(agronomic gene)、又はマーカー遺伝子である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記対象の分子を安定して組み込んでいる細胞を選択する工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記選択される細胞が、再生可能な細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記再生可能な細胞から植物を再生する工程をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記デンドリマーが、デンドリマー試薬を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
遺伝子を安定して発現させる方法であって、
細胞壁を有する植物細胞を提供する工程、
デンドリマー、及び場合により1つ又はそれ以上のCPPを遺伝子と相互作用させて、活性化されたデンドリマー構造を形成する工程、
細胞壁を有する前記植物細胞と前記活性化されたデンドリマー構造とを互いに接触させる工程、
前記デンドリマー及び前記遺伝子を、細胞壁を含む前記植物細胞に取り込ませる工程、及び
前記植物細胞を有する植物の後代において前記遺伝子を発現させる工程
を含む方法。
【請求項18】
前記遺伝子を葉緑体において発現させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記遺伝子を安定して発現する細胞について選択する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
分子性物質を植物細胞に移行させる方法であって、
デンドリマー、及び場合により1つ又はそれ以上のCPPをプラスミドDNAと相互作用させて、活性化されたデンドリマー構造を形成する工程、及び
前記活性化されたデンドリマー構造と無傷の壁保有植物細胞とを、前記植物細胞への前記デンドリマーと前記プラスミドDNAからの遺伝子との取り込みを可能にする条件下で接触させる工程
を含む方法。
【請求項21】
前記植物細胞を有する植物の後代において前記遺伝子を安定して発現させる工程をさらに含む、請求項20に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2013−507919(P2013−507919A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534227(P2012−534227)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/051655
【国際公開番号】WO2011/046786
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】