説明

植物育成装置

【課題】花卉、葉物野菜等の植物に対して光照射の位置や強度を制御して、植物を所望の形状に造形可能な植物育成装置を提供すること。
【解決手段】植物育成装置において、育成対象の植物が配置される本体部と、この本体部の所定の位置に配置された複数の光源と、を有し、植物を所望の形状に造形するために、植物の特定部位に対応して複数の光源が点灯制御可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、花卉、野菜などを育成するための植物育成装置に関し、特に、人工光として、光半導体素子を用いて花卉、野菜の生長を制御する植物育成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然環境(天候、気候、害虫等)の影響を受けない、人工光を利用した植物育成装置が提案され、そして、その実用化が進められている。
【0003】
ところで、植物は、光をエネルギー源として、光合成と光形態形成の光反応により生長する。その光の波長は、あらゆる波長の光が植物に吸収されているのではなく、青色領域の450nm付近と赤色領域の660nm付近の2ヵ所にピークを持つ光であることが知られている。
【0004】
そして、赤色領域の波長660nm付近は、植物の生長を促す基本的な光合成の作用を担う光であり、青色領域の波長450nm付近は、光形態形成である種子発芽、花芽分化、開花、子葉と葉の生長、葉緑素合成、節間伸長など植物の質的変化の作用を担う光であり、さらに、光形態形成をつかさどる植物の光受容体のフォトトロピンは、青色波長の光に向かって植物が伸長する光屈性を制御する。
【0005】
従って、植物の特定部位である茎の先端部(頂芽)や葉に、この二つの赤色と青色の波長領域の光の照射を制御することにより、植物の生長と形態形成を制御することが可能となる。そして、この波長領域に一致した人工光として、赤色発光ダイオードと青色発光ダイオードが消費電力、耐久性、照射光強度の制御の容易性などの特徴から広く採用されている。
【0006】
従来の植物育成装置としては、下記特許文献1に記載の「蕎麦スプラウト育成装置」が知られている。この蕎麦スプラウト育成装置は、装置の天井部に配置された複数の赤色・青色・緑色・近赤外・紫外の発光ダイオード(以後LEDと記す)からの光を上方からスプラウトの子葉へ照射して、健康によいといわれるルチンの含有量を最大にするように構成されている。更に、その装置は、青色のLEDからなる補助光照射部が側壁部に配置され、スプラウトの茎を横から照射し、スプラウトの茎部を赤色化して、外観的にも良く、食感をそそる蕎麦のスプラウトを育成する装置として提案されている。
【0007】
また、他の従来の植物育成方法としては、下記特許文献2に記載のものが知られており、植物の上方から青緑色LEDと白色LEDから個別に発せられる光を混合して照射し、且つ、植物の横方向から赤色LEDによる光を照射するようになっている。すなわち、植物の生長を促進する波長の光が植物を取り巻くように複数の方向に配置され、LEDから発せられた光が植物の部位に均等に照射されることにより、植物を偏らないで健全に生長させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−151850号公報(5頁、図1)
【特許文献2】特開2005−192517号公報(3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に示す従来の植物育成装置は、上方の光だけでなく側方からの光を植物に照射しているにもかかわらず、側壁部に配置された青色LEDの光は、補助的に単にスプラウトの茎部の赤色化に用いられているだけであって、植物の光形態形成に与える効果を意図せず、植物の生長を制御する装置の提案ではない。
【0010】
そして、特許文献2に示す従来の植物育成方法は、複数の光源が植物を取り巻くように配置され、回りから満遍なく光を植物に照射しているのであるが、それは単に植物を偏らないように生長させる育成方法を提案しているに過ぎず、植物の生長を制御して育成する方法でない。
【0011】
すなわち、従来の植物育成装置は、植物の生長において、茎、葉、開花等の促進や抑制の制御を可能とする装置及び方法ではなかった。
【0012】
本発明の目的は、花卉、葉物野菜等の植物に対して光照射の位置や照度の強さを制御して、植物を所望の形状に造形可能な植物育成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、植物育成装置において、育成対象の植物が配置される本体部と、この本体部の所定の位置に配置された複数の光源と、を有し、植物を所望の形状に造形するために、植物の特定部位に対応して複数の光源が点灯制御可能であることを特徴とするものである。
【0014】
この場合、点灯制御のパターンを記憶するメモリを有し、該メモリに記憶させた点灯制御のパターンのプログラムに従って光源の点灯制御を行う制御部を有するのが好ましい。
【0015】
また、制御部は、植物の生育特性に応じて光源を点灯制御するのが好ましい。
【0016】
複数の光源には、少なくとも青色光源が含まれており、植物の上方よりも側方の方が、青色光の植物への照度が大きくなっていてもよい。
【0017】
この場合、植物の側方に照射される青色光の照度は、植物の上方に行くに従って小さくなっているのが好ましい。
【0018】
生育特性は、植物の屈光性または光屈性によって特定の光の方向へ植物が生長する特性であってもよい。
この場合、特定の光とは、青色光であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の植物育成装置は、特定波長の光に対する植物の光屈性による生長、伸長の特性に基づき、茎の特定部位の頂芽に対応して、複数の光源の点灯を制御して頂芽を照射することで、頂芽の生長方向の制御が可能であるので、花卉をトピアリーのように造形することが可能となる。更に、特定波長の光に対する植物の光形態形成の特性に基づき、葉物野菜の葉の特定部位に対応して複数の光源の点灯を制御して、それぞれの葉に照射する光量を変え、それぞれの葉の伸長、拡張を制御することで、所望の形状に葉物野菜を生長させることが可能な植物育成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1における植物育成装置の部分断面模式図である。
【図2】本発明の実施例1における植物育成装置の植物の生長の制御を説明するための部分断面模式図である。
【図3】図2に続く植物の生長の制御を説明するための部分断面模式図である。
【図4】本発明の実施例2における植物育成装置の植物の生長を説明するための部分断面模式図である。
【図5】本発明の実施例3における植物育成装置の植物の生長を説明するための部分断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の植物育成装置の実施例を図面に基づき説明する。
なお、以下に説明する実施例1については、植物が有する光屈性の特性に基づいて、トピアリーのような、植物を所望の形状に造形して、懸崖の菊のように造形する例で説明する。
[実施例1]
図1から図3は、本実施例1の植物育成装置の構成と植物の造形を説明するための図面であり、図1は、この植物育成装置の構成を説明するための模式的な部分断面図であり、図2は、植物育成装置の複数の光源を制御して植物を造形する過程を説明するための部分断面模式図であり、図3は、図2の続きの造形過程を説明するための部分断面模式図である。
[実施例1の全体構成:図1]
図1を用いて、実施例1の植物育成装置1の全体構成を説明する。
図1(a)に示すように、実施例1の植物育成装置1は、本体部11と培養容器21からなり、培養容器21の培土22に植えられ懸崖の菊のように生長した植物5(以下花卉5と記す)を覆い囲うように本体部11が形成されている。本体部11と培養容器21には、その本体部11の上方、側方、下方の内側にそれぞれ光源A1〜A8が配置構成され、それぞれの光源が花卉5に向かって光を照射する複数のLEDを備えている。
【0022】
光源A1、A2は、図1(b)に示すように、回路基板43に複数個の赤色LED41、青色LED42が均等に実装されている。そして、本体部11の側方に配置される光源A3、A4,A5、A6と下方に配置される光源A7、A8も、光源A1、A2とほぼ同じような回路基板に、複数個の赤色LED41、青色LED42が均等に実装されている。
【0023】
制御部31は、図示しないCPU、入出力装置、メモリ、制御回路、LED駆動回路等を備え、メモリに記憶させた点灯制御のパターンのプログラムに従って、リード線34を介して各光源A1〜A8に電力を供給し、それぞれの光源の赤色LED41、青色LED42の点灯と消灯の制御、及び照度の強さの制御を行うようになっている。
【0024】
そして、植物育成装置1は、青色光の波長領域に反応する植物の光屈性の特性に基づき、制御部31のメモリに記憶させた点灯制御のパターンのプログラムに従って、花卉5の特定部位である茎の頂芽を伸長させる方向の光源A1〜A8から青色LEDの光を照射して、茎を誘導させ、茎の形状を所望の形状に形成する。
[実施例1の花卉の所望の形状育成の説明:図2、図3]
図1に示す花卉5のような所望の形状に造形するプログラムを、図2と図3に示す順序で説明する。すなわち、培養する花卉5をトピアリーのように造形するため、制御部31のメモリ(図示せず)に記憶させたプログラムに基づいて、花卉5の特定部位の茎の頂芽に対応して光源の青色LEDを点灯する順序と花卉5の頂芽の伸長とを、順を追って説明する。
【0025】
図2に示すステップST01の植物育成装置1において、花卉5の発芽から茎の頂芽の位置P1までの生長については、通常の生育のように、上方の左光源A1と右光源A2から赤色LEDと青色LEDの光を均等に点灯して照射する。これにより、花卉5は、真直ぐ上に向かって生長する。
【0026】
そして、ステップST01に示すように、花卉5の茎の頂芽がP1の位置に達すると、頂芽がP2に伸長するように、制御部31の点灯制御のパターンにより、光源の点灯を変更する。すなわち、上方の左光源A1と左側方の上の光源A5から青色LEDの光a1、a5を点灯して、花卉5の特定部位の茎の頂芽を照射する。そして、茎の頂芽は、植物の光屈性の特性に従って、左斜め上方の位置P2に向かって伸長する。
【0027】
次に、ステップST02に示すように、茎の頂芽がP2の位置に達すると、前ステップと同様に、点灯制御のパターンに従って、頂芽が位置P3に伸長するように、光源の青色LEDの光の照射を変更する。
【0028】
すなわち、点灯制御のパターンは、上方の光源A1と左側方の上の光源A5の青色LEDの光a1、a5を消灯し、上方の光源A2と右側方の上の光源A3の青色LEDの光a2、a3を花卉5の特定部位の茎の頂芽P2に照射することである。従って、植物の頂芽P2は光屈性により右方向の位置P3に向かって伸長する。
【0029】
次に、ステップST03に示すように、茎の頂芽がP3の所定の位置に達すると、前ステップと同様に、点灯制御のパターンに従って、頂芽が位置P4に伸長するように、光源の照射を変更する。
【0030】
すなわち、点灯制御のパターンは、上方の光源A2と右側方の上の光源A3の青色LEDの光a2、a3を消灯し、右側方の下の光源A4の青色LEDの光a4を茎の頂芽P3に照射する。従って、茎の頂芽P3は光屈性により右斜め下方向の位置P4に向かって伸長する。
【0031】
次に、図2に引き続き図3のステップST04に示すように、茎の頂芽がP4の位置に達すると、点灯制御のパターンに従って、頂芽が位置P5に伸長するように、右側方の下の光源A4の青色LEDの光a4を継続し、加えて下方の右光源A8の青色LEDの光a8を茎の頂芽P4に照射する。従って、植物の頂芽P4は光屈性により更に右斜め下方向の位置P5に向かって伸長する。
【0032】
次に、ステップST05に示すように、茎の頂芽がP5の位置に達すると、点灯制御のパターンに従って、頂芽が位置P6に伸長するように、右側方の下の光源A4の青色LEDの光a4を消灯し、下方の右光源A8の青色LEDの光a8だけを茎の頂芽P5に照射する。従って、茎の頂芽P5は、光屈性により、位置P6に向かって伸長する。
【0033】
そして、ステップST06に示すように、茎の頂芽がP6の位置に達し、花卉5が所望の形状に造形されて、造形に関する点灯制御が終了する。なお、各ステップにおいて、青色光の照射をしない光源からは、赤色光の照射をおこなって、花卉植物5の生長を促す光合成を行うことが好ましい。
【0034】
そして、開花の点灯制御のパターンのプログラムに基づき、赤色LEDの光の照射を行って、花卉5に十分な光合成を行わせ、栄養生長から生殖生長への転換を促す。そして、花芽分化の時期のタイミングを見計らって光源A1、A2、A3、A4から青色LEDの光の照射を行い、花芽分化を促し、開花させて、図1に示すような、トピアリーとしての
、懸崖の菊のような造形が完成する。
【0035】
すなわち、実施例1の植物育成装置1は、植物の青色の光に対する光屈性を用いて、本体部、培養容器に備えられた複数の光源の青色LEDの光を、予めメモリされた点灯制御のパターンのプログラムに基づき、花卉の頂芽の位置に対応して順次青色光を照射することで、花卉の形状を所望の形状に伸長生長させることが可能となり、トピアリーとしての造形が可能となる。この点灯制御のパターンの切り替えは、目視で監視して行ってもよいし、センサをつけて監視しながら行っても良い。
[実施例2]
以下に説明する実施例2は、植物の生育特性の光形態形成にあって、実施例1の光屈性の茎の伸長を制御することと異なり、青色光に対する光形態形成の葉の伸長と拡張の特性に基づき、葉物野菜の葉っぱを所望の形状、すなわち、丈の低い大きな葉っぱを有する葉物野菜を育成する植物育成装置を提案するものである。
【0036】
図4は、この植物育成装置の全体構成を説明するための部分断面模式図である。なお、図において実施例1と同一の構成部材には同一の番号を付して、重複する説明は省略する。
[実施例2の全体構成:図4]
図4を用いて、実施例2の植物育成装置2の全体構成を説明する。
図4に示すように、実施例2の植物育成装置2は、実施例1と同様に、本体部12と培養容器21からなり、培養容器21で生長した葉物野菜6を覆い囲うように本体部12が形成されている。その本体部12の上方に光源B1、側方の両側にそれぞれ光源B2が配置され、それぞれの光源が葉物野菜6に光を照射する構成を形成している。
【0037】
光源B1は、図1(b)に示す実施例1と同様に、回路基板44に赤色LED41と青色LED42が複数個均等に実装され、光源B2も、回路基板45に赤色LED41と青色LED42が複数個均等に実装されている。
【0038】
制御部32は、実施例1と同様に、図示しないCPU、入出力装置、メモリ、制御回路、LED駆動回路等を備え、メモリに記憶させた点灯制御のパターンのプログラムに従って、リード線34を介して光源B1、B2に電力を供給し、光源B1、B2に実装された個々の赤色、青色LEDの点灯時間及び照度の大きさを、葉物野菜6の葉っぱの位置に対応して点灯制御する機能を有している。
[葉物野菜の所望の形状育成の説明]
葉物野菜6が発芽してから図4に示す大きさに生長する間は、制御部32の点灯制御により、上方の光源B1から、赤色光と青色光の光を照射して葉物野菜6の光合成と光形態形成により頂芽と葉っぱの生長を促し、側方両側の光源B2の赤色光、青色光の照射で全体バランスの取れた葉物野菜6の生長を可能としている。
【0039】
そして、図4に示すような葉物野菜6の葉っぱの伸長と拡張を図る時期において、制御部32の点灯制御のパターンに基づき、両側方の光源B2は、葉物野菜6の特定部位の葉っぱ61、62、63の、下から上それぞれの位置に対応して、青色光だけをそれぞれ図中矢印で示すb21、b22、b23のように照射する。しかも、青色光b21、b22、b23の照度の大きさがb21>b22>b23になるように制御部32により青色LEDに供給する電力を制御する。
【0040】
従って、光形態形成の特性により、より強い青色光の照射を受ける下の葉っぱほど、上の葉っぱより大きく伸長、拡張した所望の形状の葉物野菜を形成することが可能となる。
【0041】
一方、光源B1は、図4に示すような葉物野菜6の葉っぱ61、62、63の伸長拡張
する時期においては、青色光を消灯し、上方から赤色光を葉物野菜6に照射し光合成を促す機能が主となる。すなわち、上方から照射される赤色LEDの光は、上から下に向かって順に大きくなる葉っぱを照射するから、上から下までの全ての葉っぱに赤色光が行き渡って葉物野菜6の十分な光合成を可能としている。
【0042】
しかも、葉物野菜6の頂芽は、赤色光だけでは伸長が弱く、弱い青色光の照射を両側方から受けていても、上方に伸長しにくく、丈の低い大きな葉っぱを有する所望の形状の葉物野菜を得る事が可能となる。
【0043】
本実施例の植物育成装置2は、上方から主に赤色光、両側方から主に青色光を葉物野菜に照射する構成を形成し、植物の光形態形成に強く影響する青色光を制御して、下方の葉っぱに対する照度を大きく、上方の葉っぱに対する照度を小さくする点灯制御によって、葉幅のある大きな葉を有する草丈の低い所望の形状の葉物野菜の育成が可能である。
更に、植物工場においては、葉丈の低い葉物野菜の育成により、植物育成装置を配置する栽培棚の段数が多くなり、栽培効率の向上が図れる。
【0044】
青色光は光形態形成に強く影響し葉の伸長拡張効果が顕著であるから、両側方の光源B2は、赤色LEDを減らし青色LEDの実装個数を増やし、下の葉っぱを照射する青色光の照度を大きくすることが望ましい。
[実施例3]
以下に説明する実施例3については、実施例2と同様に、植物が有する光形態形成の葉の伸長と拡張を促す特性に基づいて、葉物野菜の葉の伸長、拡張を所望の形状、すなわち、丈の低い大きな葉っぱを有する葉物野菜を育成する植物育成装置について説明する。
【0045】
図5は、この植物育成装置の全体構成を説明するための部分断面模式図である。なお、図において実施例2と同一の構成部材には同一の番号を付して、重複する説明は省略する。
[実施例3の全体構成:図5]
図5を用いて、実施例3の植物育成装置3の全体構成を説明する。
【0046】
図5に示すように、実施例3の実施例2と異なる点は、本体部13の両側方の壁が培養容器21の下方から上方に向かって拡幅する斜面を形成し、その両側の斜面に光源B3が配置されていることにある。更に、光源B3には、青色LED42だけが複数個実装され、そして、その発光方向が水平となるように回路基板46に斜めに実装されている。
【0047】
その他の構成は、実施例2と同様であって、葉物野菜6に対する光の照射に関しては、上方から光源B1の光が照射され、側方の両側からは、光源B3の光が照射する構造を形成している。
【0048】
そして、両側方の斜面に配置された光源B3の青色LED42は、葉物野菜6との距離は下方が近く、上方に行くに従って遠く離れる構成を形成している。従って、制御部33が光源B3の青色LED42に一定電力を供給しても、葉物野菜6に対し照射する光は、葉物野菜6の特定部位の葉っぱ61、62、63に対し青色光b31、b32、b33の照度の大きさがb31>b32>b33であることを可能としている。
[葉物野菜の所望の形状育成の説明]
葉物野菜6が発芽してから図5に示す大きさに生長するまでは、実施例2と同様に、制御部33の点灯制御により、少なくとも上方の光源B1から、赤色光、青色光の両方の光を照射して葉物野菜6の光合成と光形態形成の頂芽と葉っぱの生長を上方向に促し、葉物野菜の生長を可能としている。
【0049】
そして、図5に示すような葉物野菜6の葉っぱの伸長拡張を図る時期において、実施例2と同様に、植物育成装置3で培養されている葉物野菜6に対して、上方からは光源B1の赤色光が照射され、両側の側方からは、斜めに配置された光源B3の青色光が照射される。そして、光源B3の青色LEDによって、下方の葉っぱが最も照度の大きい青色光の照射を受け、上に行くに従って、徐々に照度が小さくなる。すなわち、上述したように、葉物野菜6に対し照射する光は、葉物野菜6の特定部位の葉っぱ61、62、63に対し青色光b31、b32、b33の照度の大きさは、b31>b32>b33の順となる。
【0050】
従って、光形態形成の特性により、より強い青色光の照射を受ける下の葉っぱほど、上の葉っぱより大きく伸長、拡張した所望の形状の葉物野菜を形成することが可能となる。
【0051】
一方、光源B1は、実施例2と全く同様に、図5に示すような葉物野菜6の葉っぱ61、62、63の伸長拡張する時期においては、青色光を消灯し、上方から赤色光を葉物野菜6に照射し光合成を促す機能が主となり、上から下までの全ての葉っぱに赤色光が行き渡って葉物野菜6の十分な光合成を可能としている。
【0052】
しかも、葉物野菜6の頂芽は、赤色光だけでは伸長が弱く、弱い青色光の照射を両側方から受けていても、上方に伸長しにくく、丈の低い大きな葉っぱを有する所望の形状の葉物野菜を得る事が可能となる。
【0053】
本実施例の植物育成装置3においては、側方の光源を斜めに配置することで、制御部33に光強度の制御の負担がなく、葉物野菜6の丈の下方には、照度が大きく、上方には照度が小さい青色光の照射が提供可能であるから、草丈の低い葉幅のある大きな葉を有する所望の形状の葉物野菜の育成が、実施例2と同様に、可能となる。
更に、植物工場においても、葉丈の低い葉物野菜の育成により、植物育成装置を配置する栽培棚の段数が多くなり、実施例2と同様に、栽培効率の向上が図れる。
【0054】
本発明において、光源の光半導体素子は、複数個の赤色LEDと青色LEDが実装された例で説明したが、植物の種類によっては、光形態形成に係わる光の波長領域に違いがあり、例えば、白色LEDや青緑色LEDの光に影響される植物もあり、赤色LED、青色LEDに限定されるものではない。
【0055】
なお、本発明は、上述した植物育成装置の実施例に限定されることはなく、それらの全てを行う必要もなく、特許請求の範囲の各請求項に記載した内容の範囲で種々に変更や省略をすることが出来ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0056】
1、2、3:植物育成装置
5:花卉(植物)
6:葉物野菜
11、12、13:本体部
21:培養容器
22:培土
31、32、33:制御部
34:リード線
41:赤色LED
42:青色LED
43、44、45、46:回路基板
A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8:光源
B1、B2、B3:光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物育成装置において、
育成対象の植物が配置される本体部と、
該本体部の所定の位置に配置された複数の光源と、を有し、
前記植物を所望の形状に造形するために、 植物の特定部位に対応して
前記複数の光源が点灯制御可能であることを特徴とする植物育成装置。
【請求項2】
前記点灯制御のパターンを記憶するメモリを有し、該メモリに記憶させた点灯制御のパターンのプログラムに従って前記光源の点灯制御を行う制御部を有することを特徴とする請求項1記載の植物育成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記植物の生育特性に応じて前記光源を点灯制御することを特徴とする請求項2に記載の植物育成装置。
【請求項4】
前記複数の光源には、少なくとも青色光源が含まれており、前記植物の上方よりも側方の方が、青色光の前記植物への照度が大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載の植物育成装置。
【請求項5】
前記植物の側方に照射される前記青色光の照度は、前記植物の上方に行くに従って小さくなっていることを特徴とする請求項4記載の植物育成装置。
【請求項6】
前記生育特性は、植物の屈光性または光屈性によって特定の光の方向へ前記植物が生長する特性であることを特徴とする請求項3記載の植物育成装置
【請求項7】
前記特定の光とは、青色光であることを特徴とする請求項6記載の植物育成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−5741(P2013−5741A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139333(P2011−139333)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】