説明

植物覆い具

【課題】 地面に確実に固定でき、かつ撤去後に部材が地面または地中に放置されてトラブルとなる恐れのない植物覆い具を提供しようとする。
【解決手段】 土に載置されて該土に植生された植物を透視可能に覆う覆い具であって、該土に面接する開口部と、該開口部の周縁から立ち上がり、該周縁に沿って一巡する側壁とを有する覆い部を備え、該側壁の外側に、該側壁の周方向に一巡し前記覆い具と同重量以上の水が留置される溝が設けられた植物覆い具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植えられた植物を覆って保護するための植物覆い具に関する。
【背景技術】
【0002】
育苗時の苗に保温、霜よけ、あるいは鳥害対策として透明な覆いを被せることが行なわれる。この目的に対してはハウスと呼ばれる大規模のものもあるが(例えば、特許文献1参照)、図7に示すような透明樹脂製の径が30cm前後、高さが30cm前後のドーム型(椀型)の植物覆い具100も簡便かつ安価であるとの理由で普及している。植物覆い具100は、地面に載置して個々の苗や苗の小集団に被せて用いられ、覆い部110を備える。覆い部110は、土に面接する開口部102と、開口部102の周縁104から立ち上がり、苗106の周囲を土の面と平行方向に一巡して即ち周縁104に沿って一巡して苗106を囲む側壁108とを有する。
【0003】
側壁108の外側には、周縁104から外側に向けて水平方向に延出し周縁104に沿って一巡する鍔112が形成されている。植物覆い具100が地面に載置されると、鍔112の下面が地面に面接する。
【0004】
植物覆い具100は透明樹脂でできており、材料コストの面や透光性確保のため側壁の厚さが通常0.5mm以下と薄く作られているので軽量である。従って、風に飛ばされやすいので鍔112を貫通する固定用具114を用いて地面に固定する。固定用具114は全体としてコの字形の細長金属部材からなり、地面に突き刺され先端が鋭利な一対の針部116、116を備え、針部116の根元には抜け止め部118が形成されている。抜け止め部118は針部116、116の間の針部116、116と直交する細長の部分からなり、針部116が鍔112を貫通して先端から地面に突き刺されたときの抜け止めとなる。
【0005】
固定用具114を用いたこのような態様により、植物覆い具100は地面に確実に固定されるが、用済み後に植物覆い具100を撤去する際に、往々にして、地面から引き抜かれた固定用具114が撤去作業中にまぎれてそのまま地面または地中に放置されることがある。放置された固定用具114はいつまでも畑に残存しその後の農作業の障害になる。例えば、根菜類を収穫するときの手作業中に手に突き刺す危険性がある。あるいは農機具に巻き込んでトラブルになったり、農機具で跳ね飛ばして人体に危害を与えたりしかねない。
【特許文献1】特開平6−209657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、地面に確実に固定でき、かつ撤去後に部材が地面または地中に放置されてトラブルとなる恐れのない植物覆い具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨とするところは、土に載置されて該土に植生された植物を覆う覆い具であって、該土に面接する開口部と、該開口部の周縁から立ち上がり、該周縁に沿って一巡する側壁とを有する覆い部を備え、該側壁の外側に、該側壁の周方向に一巡し前記覆い具と同重量以上の水が留置可能な容量の溝が設けられた植物覆い具であることにある。
【0008】
前記植物覆い具においては、前記側壁が前記開口部の周縁で外側に曲げ返されて上方に延出して該側壁の周方向に前記側壁と隔てて一巡する延出部が形成されることにより前記溝が形成され得る。
【0009】
前記植物覆い具においては、前記覆い部の側壁に1又は複数のメッシュ部が形成され得る。
【0010】
前記植物覆い具においては、前記覆い部の側壁の全面にわたって通気孔が形成されてもよい。
【0011】
前記植物覆い具においては、前記通気孔が、少なくとも前記溝の上端と同じ高さの位置から上方に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、地面に確実に固定でき、かつ撤去後に部材が地面または地中に放置されてトラブルとなる恐れのない植物覆い具が提供される。
【0013】
本発明によると、保温、防霜、防鳥、防虫効果に優れた植物覆い具が提供される。
【0014】
本発明によると、植物覆い具の内部の積極的な温度調節が、特別の温度調整機器を用いずとも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の植物覆い具の態様について説明する。なお、本明細書においては、各図にわたって記される同じ符号は同一又は同様の部材やものを示す。図1に示すように、本発明の植物覆い具2は、土に面接する開口部4と、開口部4の周縁6から立ち上がり、周縁6に沿って一巡する側壁8とを有する自立性の覆い部10を備える。覆い部10は透明もしくは半透明で全体として深い椀を伏せたようなドーム形あるいは釣鐘形の形状をなすが、全体として下方に開口を有する箱形の形状をなすものであってもよい。覆い部10の頂上部には空気抜きの孔13が形成されている。使用目的によっては、孔13はなくてもよい。あるいは、覆い部10に数箇所の孔が形成されていてもよい。
【0016】
側壁8の外側には、側壁8の周方向に一巡し上方に開口する溝12が設けられている。溝12は覆い具2と同重量以上の水が留置できる容量を有している。
【0017】
側壁8が開口部4の周縁6で外側に曲げ返されて上方に延出し、周縁6で側壁8と連接する延出部14が形成されている。延出部14は側壁8の周方向に側壁8と隔てて一巡する。これにより溝12が形成される。延出部14は自立性であることが好ましい。あるいは、延出部14が外力で変形しないように延出部14を維持する不図示の補強部材が延出部14に備えられていてもよい。
【0018】
覆い部10には、覆い部10の周方向に波打ち覆い部10の頂上部から周縁6にかけて稜線が延びるひだ15が形成されていることが好ましい。これにより覆い部10の内部の結露により生じ覆い部10の内壁に付着している水滴がひだの内側の稜線を伝わって覆い部10の内壁に沿って下方に移動するので、水滴が直接苗に落下することが防止される。
【0019】
図2に示すように、溝12に水22を留置した状態で植物覆い具2を苗20にかぶせて土の面16に載置することにより、苗20が覆い部10で覆われる。溝12に覆い具2と同重量以上の水が留置されていると植物覆い具2は水22の重量で土の面16に押し付けられ風で移動したり飛ばされたりする恐れが極めて少なくなる。
【0020】
蒸発による水の目減りは降雨により人手をかけずに補填することもできる。植物覆い具2の平面投影面積分の降雨が溝12に流れ込むので降雨による効率的な水の補填が可能である。また、人手で水を充填や補填する場合にも、植物覆い具2の上面に無作為で水を懸けることにより水が溝12に流れ込むので水の充填・補填操作は極めて容易である。
【0021】
用済みになって植物覆い具2を撤去するときには、溝12内の水を地面等しかるべきところに撒いて捨てればよい。このように、本発明においては、植物覆い具2の固定のために特別の部材を使用する必要がないので、このような部材が地面に放置されるおそれは全くない。
【0022】
本発明の他の態様の一例を図3に示す。図3の植物覆い具2aは、土(地面16)に面接する開口部4と、開口部4の周縁6から立ち上がり、周縁6に沿って一巡する側壁8とを有する覆い部10を備える。周縁6にはフック状の受け部30が複数箇所設けられている。また、植物覆い具2aは側壁8の外側を周方向に一巡する環状の水貯め部材32を備える。水貯め部材32には上方に開口する溝12aが形成されている。水貯め部材32は断面がコの字形であり、コの字形の内側が溝12aを形成している。水貯め部材32を覆い部10に嵌め、受け部30で下方から受けることにより、水貯め部材32が覆い部10に連結される。
【0023】
この態様は、水貯め部材32が覆い部10から着脱自在であり、水貯め部材32の交換が可能であり、溝12aの掃除が容易である。
【0024】
本発明の植物覆い具は樹脂を素材として製造される。この樹脂としては透明もしくは半透明で所定の強度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等、ポリカーボネート系樹脂、生分解性樹脂等が挙げられる。特に生分解性樹脂を素材とすれば、用済みになって撤去された植物覆い具が仮に地面に放置された場合であっても環境に悪影響を与えることがない。またこれらの樹脂には、植物の生育を促進するために着色が施されてもよい。
【0025】
溝(12、12a)の高さHは5〜15cmであることが好ましい。溝(12、12a)の幅Wは0.5〜3cmであることが好ましい。側壁8等植物覆い具の各所の厚みは強度を損なわない限り薄いことが透明性と材料コストの点で好ましく、例えば0.05〜1mmである。
【0026】
また、本発明の植物覆い具においては、溝(12、12a)に留置された水により覆い部10の周囲に水の壁が形成されることになる。水の壁は空気の壁に比べて熱容量が大きいので、温まりにくく、かつ冷えにくい。従って、この水の壁により植物覆い具の内部が効率よく保温される。例えば、朝方のきびしい冷え込みに対して充分に苗が保護される。また、真昼の暑さに対しても苗が保護される。さらに、溝(12、12a)に積極的に場合に応じて冷水や温水を充填することにより植物覆い具の内部の積極的な温度調節が、特別の温度調整機器を用いずとも可能である。
【0027】
溝(12、12a)には土、砂利、小石などの重量物が入れられて重しの役目をしてもよい。
【0028】
本発明の他の態様の一例を図4に示す。図4の植物覆い具2bは、基本的には図1に示す植物覆い具2と構造が同じであるが、側壁8に覆い部10を内外に貫通する貫通孔17が形成されている。貫通孔17は、側壁8の、延出部14の上縁とほぼ同じ高さ(地面からの)あるいはこの高さよりやや低い高さ(地面からの)の位置に形成されている。貫通孔17は、側壁8の周方向に例えば数箇所乃至十数箇所形成される。
【0029】
植物覆い具2bにおいては、溝12に水を注入し続けると、貫通孔17から水がオーバーフローして覆い部10の内部に注がれる。これにより、植物覆い具2bをセットしたままで植物覆い具2bの内側の地面に水遣りを行うことができる。また、無作為に水を溝12に注入するという操作で、苗20に直接水をふりかけることなく、苗20から等距離の位置に環状に水遣りを行うことができる。
【0030】
本発明の植物覆い具は苗の保温、霜よけ、防鳥等の保護ばかりではなく収穫前のスイカ等の果実の保護にも用いられる。また、害虫の防除にも好適に用いられる。
【0031】
害虫の防除に用いられる本発明の植物覆い具の態様の一例を図5に示す。図5の植物覆い具2cは、基本的には図1に示す植物覆い具2と構造が同じであるが、覆い部10cの頂上部(頭頂部分)に形成された孔13aをメッシュ部材50で覆うことによって、覆い部10cの側壁8にメッシュ部が形成されている。メッシュ部材50は、ポリエステル系樹脂等の樹脂、またはステンレス等の金属等から成り、このメッシュ部材50で孔13aを覆うことによって、空気抜きが可能であると共に害虫の防除効果も高まる。また、孔13aの大きさも、図1に示す植物覆い具2の孔13に比べて大きめに形成することができ、空気抜きの効率が高まる。なお、本態様では孔13aに別体のメッシュ部材50を取り付けているが、覆い部10cの頂上部に、孔13aの代わりにメッシュ部(不図示)が一体的に形成されてもよい。また、覆い部10cに数箇所の孔13aを形成して、これら複数の孔13aをメッシュ部材50で覆うことによって、覆い部10cの側壁8に数箇所のメッシュ部が形成されてもよい。
【0032】
本発明の植物覆い具の更に他の態様の一例を図6に示す。図6の植物覆い具2dも、孔13が無いことを除いて基本的には図1に示す植物覆い具2と構造が同じであるが、覆い部10dの側壁8aの全面にわたって微細な通気孔60が形成されている。通気孔60は、側壁8aの、延出部14の上縁とほぼ同じ高さ(地面からの)あるいはこの高さよりやや高い高さ(地面からの)の位置から上方に形成されている。これにより、植物覆い具2d内の通気性が向上すると共に、害虫の防除効果も得られる。なお、本態様において、更に図5に示したようなメッシュ部材50で覆われた孔13aが、覆い部10dの頭頂部分に形成されてもよい。また、最下部に形成される通気孔60の位置が延出部14の上縁とほぼ同じ高さの場合には、図4に示した貫通孔17と同様の効果が得られる。
【0033】
その他、本発明は、主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変更を加えた態様で実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の植物覆い具の態様の一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す植物覆い具が地面に設置された状態を示す断面模式図である。
【図3】本発明の植物覆い具の他の態様の一例を示し、図3(a)は斜視図、図3(b)はこの植物覆い具が地面に設置された状態を示す断面模式図である。
【図4】本発明の植物覆い具の更に他の態様の一例を示す断面模式図である。
【図5】本発明の植物覆い具のまた別の態様の一例を示す斜視図である。
【図6】本発明の植物覆い具の更に別の態様の一例を示す斜視図である。
【図7】従来の植物覆い具の態様を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0035】
2、2a〜2d、100:植物覆い具
4、102:開口部
6、104:周縁
8、108:側壁
10、10a〜10d、110:覆い部
12、12a:溝
13、13a:孔
14:延出部
50:メッシュ部材
60:通気孔
112:鍔
114:固定用具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土に載置されて該土に植生された植物を覆う覆い具であって、
該土に面接する開口部と、該開口部の周縁から立ち上がり、該周縁に沿って一巡する側壁と、を有する覆い部を備え、
該側壁の外側に、該側壁の周方向に一巡し前記覆い具と同重量以上の水が留置可能な容量の溝が設けられた植物覆い具。
【請求項2】
前記側壁が前記開口部の周縁で外側に曲げ返されて上方に延出して該側壁の周方向に前記側壁と隔てて一巡する延出部が形成されることにより前記溝が形成される請求項1に記載の植物覆い具。
【請求項3】
前記覆い部の側壁に1又は複数のメッシュ部が形成された請求項1又は請求項2に記載の植物覆い具。
【請求項4】
前記覆い部の側壁の全面にわたって通気孔が形成された請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の植物覆い具。
【請求項5】
前記通気孔が、少なくとも前記溝の上端と同じ高さの位置から上方に形成された請求項4に記載の植物覆い具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−43977(P2007−43977A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−232705(P2005−232705)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(503156895)有限会社Besgrow Japan (1)
【Fターム(参考)】