説明

検査対象の機械的パラメータ及び弾性パラメータをイメージングするエラストグラフィ装置及び方法

本発明は、検査対象の特に弾性パラメータのような機械的パラメータを決定する装置であって、a)前記検査対象の少なくとも1つの検査領域における磁性粒子の空間分布を決定する少なくとも1つの装置であって、少なくとも1つの検査領域に、低い磁界強度をもつ第1の部分領域及びより高い磁界強度をもつ第2の部分領域が生成されるような、磁界強度の空間プロファイルを有する磁界を生成する手段と、前記粒子の空間的変化によって影響を及ぼされる特に検査領域における検査対象の磁化に依存する信号を検出する手段と、前記検査領域の磁性粒子の特に時間的に変化する空間分布に関する情報を得るために、前記信号を評価する手段と、を有する装置と、b)少なくとも検査対象の検査領域に及び/又はその近傍に、特に振動のような少なくとも機械的変位を生成する少なくとも1つの手段と、を有する装置に関する。本発明は、更に、特に本発明による装置を使用して、検査対象の機械的及び/又は物理的パラメータを決定する方法に関する。本発明は、更に、本発明による方法において使用されることができる磁性粒子組成に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の機械的なパラメータ、特に弾性パラメータを決定し、特にイメージングする装置及び方法に関する。本発明は、更に、本発明による方法において使用されることができる磁性粒子組成に関する。
【背景技術】
【0002】
材料及び生物学的組織の機械的特性、特に弾性特性の決定は、このような検査対象内の正確な条件を知ることができるようにするために非常に重要である。これは、検査対象の構造的特性の変化が、多くの場合、弾性挙動の変化にも関連するからである。例えば、対象内の内部摩擦の増減は、前記対象の弾性挙動に影響を及ぼす。同様に、密度の差が、例えば材料及び生物学的組織の条件を決定するために検出されることができ、使用されることができる。
【0003】
知られているエラストグラフィ方法は、機械的パラメータを決定するために使用され、超音波技法を使用してイメージングを行う。一例として、ドイツ特許出願公開第A19754085号明細書は、弾性組織の特性が技術的な態様で検出され、断面画像の形で質的に且つ量的に視覚化される超音波エラストグラフィ方法を開示している。前記方法は、機械的な圧力が組織のセクションに及ぼされ、その結果、組織の変形をもたらすとき、さまざまな異なる弾性特性を有する領域が、さまざまに変形することを利用する。このような方法は、例えば米国特許出願公開第2002/0010399号及び米国特許4,993,416号明細書に記述されている。米国特許出願公開第2002/0010399A1号明細書は、本質的に、好適に柔軟な組織の弾性パラメータの検出について記載している。第1及び第2の超音波パルスが、トランスデューサ軸に沿って検査されるべき対象に向けられ、各ケースにおいて反射される信号が、フーリエ解析を使用して評価される。米国特許第4,993,416号明細書によれば、多数の超音波トランスデューサが、半径方向に配置され、組織検査の目的で逐次に使用される場合に有利である。今日、これらの方法は、普遍的に使用されることができず、概して検査対象の表面領域に関してのみ有益なイメージングを提供する。
【0004】
検査対象の機械的パラメータを決定するための磁気共鳴エラストグラフィ(MRE)もまた知られている。MRE方法において、検査対象の磁気共鳴画像のフェーズが、その中でアクティブな機械的振動の結果として、変化することが利用される。この変化の程度は、機械的振動の結果としての変位に依存する。従って、得られたMRフェーズ画像を使用して、核磁化のフェーズをイメージングすることが可能であり、そこから、組織の特定の機械的パラメータに関する情報を導き出すことが可能である。欧州特許出願公開第708340号明細書又はProceeding of ISMRM 1997, page 1905, Vancouverに記載されるような通常のMRE方法は、反射が検査対象において生じず、横の振動のみが対象に広がる場合にのみ、評価するのに適した結果が得られることができるという不利益をもつ。この問題を克服するために、ドイツ特許出願公開第19952880A1号明細書は、変位の寄与及びフェーズが、3次元領域において、互いに垂直である3方向に関して決定され、少なくとも1つの機械的パラメータが、3次元領域の少なくとも一部におけるこれらの変位値及びその空間微分から計算される、MRE方法を提案する。機械的特性の決定のために、検査対象における縦方向の振動を使用することが可能であることも記述されている。このような方法において、ドイツ特許出願公開第第29722630U1号明細書に既に記述されている磁気共鳴装置が利用される。しかしながら、MRE技術は、装置に関して複雑であり、コスト集約的であり、従って、限られた数のアプリケーションにのみ適している。更に、MRE方法におけるあまり高くない信号対雑音比により、相対的に長い検査時間が、考慮に入れられなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、従来技術の不利益をもたず、特に生産するのにシンプルであり、費用対効果が大きく、普遍的に使用されることができ、高い解像度と同時に短い測定時間を可能にする、検査対象の特に弾性挙動のような機械的挙動を決定する装置を使用できるようにすることが望まれている。更に、本発明の目的は、検査対象のいかなる位置においても、その表面からの距離に関係なく、機械的特性及び/又は弾性特性を決定することができるようにすることである。本発明の目的は、検査対象の広い範囲において使用されることができるとともに、再生可能な態様で非常に精確な結果を提供するエラストグラフィ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、a)検査対象の少なくとも1つの検査領域における磁性粒子の空間分布を決定する少なくとも1つの装置であって、少なくとも1つの検査領域に、低い磁界強度をもつ第1の部分領域及びより高い磁界強度をもつ第2の部分領域が生成されるような、磁界強度の空間プロファイルを有する磁界を生成する手段と、粒子の空間的な変化によって影響を及ぼされる検査対象の特に検査領域の磁化に依存する信号を検出する手段と、検査領域の磁性粒子の、特に時間的に変化する空間分布に関する情報を得るために、信号を評価する手段と、b)少なくとも検査対象の検査領域において及び/又はその近傍に、特に振動のような機械的変位を生成する少なくとも1つの手段と、を有する、装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明による装置を使用して、高い解像度をもって、既知の技法によるよりも身体のより深くの磁性粒子の静止位置からの変位及び変位の程度を追跡し、記憶することが可能である。特に以下に記述するように磁性粒子が気泡内にあるとき、検査領域における圧力バリエーションをイメージングすることも可能である。本発明による装置は、結果的に、表面の近くの領域及び表面から離れた領域の特に組織及び器官のような物及び身体の機械的挙動、特に弾性挙動を決定するのに適している。更に、本発明による装置が、特にリアルタイムに呼吸器官を調べるのに適していることが分かった。
【0008】
本発明によれば、機械的な変位又は振動を生成する手段が、少なくとも1つの振動素子、振動発生器及び振動発生器から振動素子に振動を伝える振動伝達手段、及び/又は特に超音波源のような少なくとも1つの音源、を有することができる。
【0009】
振動は、通常、振動発生器の磁石装置の外側の、磁石装置から或る距離のところに生成される。従来技術から知られる振動発生器が使用されてもよい。適切な振動発生器は、同様に、金属素子を有することができる。振動は、例えばピエゾ素子、振動コイル又は振動子によって、生成されることができ、50Hz乃至500Hzのレンジ、特に500Hz乃至250Hzのレンジの振動が、本発明による方法のために使用されることが好ましい。これらの振動は、通常、適切な振動伝達手段によって、動作中に検査対象に置かれる実際の振動素子に伝達される。磁石装置に又はその近傍に配置されるすべての部品は、有利には、勾配磁界に影響を与えず、従って金属から形成されないことが好ましい。従って、振動発生器が、磁石装置の外部の、磁石装置から或る距離のところに配置され、振動素子及び振動伝達手段が、非金属及び/又は金属材料からなることが好ましい。
【0010】
磁性粒子の空間分布を決定する装置は、知られているエラストグラフィ方法及びソノグラフィ方法と組み合わせられることができる。従って、適切な振動は、例えば磁気共鳴エラストグラフィのようなエラストグラフィにおいて使用されるような振動中に対象のボリュームを変化させない表面波と、更には所与の周波数で対象のより一層深くに浸透することができるバルク波とである。バルク波は、例えばソノグラフィにおいて使用される。エラストグラフィ又はソノグラフィにおいて使用されるような振動又は波を生成する適切な装置及び機器は、当業者に知られている。
【0011】
本発明による装置の1つの好都合な改良例は、粒子の磁化が局所的に変化するように、検査領域の2つの部分領域の空間位置を変化させる少なくとも1つの手段、特に少なくとも1つのコイル装置を有する。
【0012】
原則として、検査領域は、低い磁界強度をもつ部分領域及びより高い磁界強度をもつ部分領域の相対的な空間位置を変えることによって、走査され、検査されることができる。これは、同様に、このように低い磁界強度をもつ部分領域の磁性粒子の磁化の変化又は程度を検出するために、特に低い磁界強度をもつ部分領域のような勾配磁界に磁界が重ねられる装置を有する。
【0013】
更に、別の改良例によれば、磁界を生成する手段は、検査領域の第1の部分領域においてその方向を反転させるとともに、ゼロ交差を有する勾配磁界を生成する勾配コイル装置を有することが、考慮されるべきである。
【0014】
更に、検査領域の2つの部分領域を移動させるために勾配磁界に重ねられる時間的に変化する磁界を生成する手段を有する本発明による装置が適切である。
【0015】
本発明による適切な装置は、検査領域の磁化の時間的変化によって誘導される信号を受け取るコイル装置によって特徴付けられる。
【0016】
他の実施例により、本発明による装置は、勾配磁界に重ねられる第1及び少なくとも第2の磁界を生成する手段であって、第1の磁界が、高い振幅をもって、時間に関してゆっくりと変化し、第2の磁界が、低い振幅をもって、時間に関して速く変化する手段を有する。
【0017】
本発明による装置の他の改良例は、2つの磁界が、検査領域において本質的に互いに垂直であることを提供する。
【0018】
空間的に不均一な磁界が、本発明により使用される装置によって、検査領域に生成される。第1の部分領域において、磁界は、粒子の磁化が外部磁界と多かれ少なかれ異なり、すなわち飽和しないほどに弱い。この第1の部分領域は、好適には、空間的にコヒーレントな領域であり、点状の領域であってもよく、ライン又は平坦な領域であってもよい。第2の部分領域(すなわち第1の部分の外側の検査領域の残りの部分)において、磁界は、粒子を飽和の状態に保つのに十分強い。ほとんどすべての粒子の磁化が、ほぼ外部磁界の方向に並べられるとき、磁化は飽和し、従って、磁界の更なる増加によるそこでの磁化の増加は、磁界の対応する増加を与えられる第1の部分領域よりもずっと少ない。検査領域内の2つの部分領域の位置を変化させることによって、検査領域の(全体的な)磁化が変化する。従って、検査領域内の磁化又はそれによって影響を及ぼされる物理的パラメータが測定される場合、検査領域内の磁性粒子の空間分布に関する情報が、そこから導き出されることができる。例えば、検査領域の2つの部分領域の空間位置を変化させるために、局所的及び/又は時間的に変化されることができる磁界が生成されることができる。更に、検査領域の磁化の時間変化によって少なくとも1つのコイルに誘導される信号は、検査領域の磁性粒子の空間分布に関する情報を得るために、受け取られ、評価されることができる。可能な限り高い信号は、2つの部分領域の空間位置が可能な限り速く変化することによって得られることができる。検査領域に磁界を生成するために使用されるコイルは、信号を検出するために使用されることができる。しかしながら、少なくとも1つの特別なコイルが使用されることが好ましい。
【0019】
部分領域の空間位置の変化は、例えば時間的に変化する磁界によっても生じうる。この場合、同様に周期的な信号が、コイルに誘導される。しかしながら、検査領域に生成される信号及び時間的に変化する磁界が同時にアクティブであるので、この信号を受け取るのは困難でありうる。従って、磁界によって誘導される信号と、検査領域の磁化を変化させることによって誘導される信号とを区別することは容易には可能でない。しかしながら、これは、時間的に変化する磁界が第1の周波数帯で検査領域に作用し、コイルにおいて受け取られる信号から、第1の周波数帯より高い周波数成分を含む第2の周波数帯が、磁性粒子の空間分布に関する情報を得るために評価されることによって、回避されることができる。これは、第2の周波数帯の周波数成分が、磁化特性の非線形性の結果として、検査領域の磁化の変化によってのみ生じることができるということを利用する。時間的に変化する磁界が、正弦波の周期的なプロファイルを有する場合、第1の周波数帯は、単一の周波数成分、すなわち正弦波の基本成分のみからなる。対照的に、この基本成分の他に、第2の周波数帯は、評価のために使用されることができる正弦波の基本成分のより高い調波(いわゆる高調波)も含む。
【0020】
本発明による装置の好適な実施例において、磁界を生成する手段は、検査領域の第1の部分領域においてその方向を反転させるとともに、ゼロ交差を有する勾配磁界を生成する勾配コイル装置を有する。勾配コイル装置が、例えば検査領域の両側に配置されるが、反対の電流が流れる2つの同じ巻線(マックスウェルコイル)を有する場合、この磁界は、巻線の軸上のポイントでゼロであり、このポイントの両側で反対極性でほぼ線形に増加する。この磁界ゼロポイントの周辺の領域に位置する粒子の場合のみ、磁化は飽和しない。この領域の外側の粒子に関して、磁化は飽和の状態にある。
【0021】
装置は、検査領域の2つの部分領域を移動させるために勾配磁界に重ねられる時間的に変化する磁界を生成する手段を備えることができる。勾配コイル装置によって生成される領域は、この場合、時間的に変化する磁界によって検査領域内の磁界ゼロポイント、すなわち第1の部分領域の周りを移動される。こうして、この磁界の適切な時間プロファイル及び向きを与えられる場合、磁界ゼロポイントが検査領域全体を通ることが可能である。
【0022】
磁界ゼロポイントの移動に関連する磁化の変化は、適当なコイル装置によって受け取られることができる。検査領域に生成される信号を受け取るために使用されるコイルは、検査領域に磁界を生成するために既に使用されるコイルであってもよい。しかしながら、受信用の少なくとも1つの特別なコイルを使用することもまた有利である。これは、時間的に変化する磁界を生成するコイル装置から切り離されることができるからである。更に、改善された信号対雑音比が、1つのコイルによって達成されることができるが、複数のコイルによって一層改善された信号対雑音比が達成される。
【0023】
コイル装置に誘導される信号の振幅が大きいほど、検査領域の磁界ゼロポイントの位置がより速く変化し、すなわち勾配磁界に重ねられる時間的に変化する磁界がより速く変化する。しかしながら、一方で、その振幅が磁界ゼロポイントを検査領域のポイントへ移動させるに十分であり、その変化のレートが十分な振幅を有する信号を生成するに十分高い、時間的に変化する磁界を生成することは、技術的に難しい。特にこれに適しているのは、勾配磁界に重ねられる第1及び少なくとも第2の磁界を生成する手段を有し、第1の磁界が、時間に関してゆっくりと、高い振幅をもって変化し、第2の磁界が、時間に関して速く、低い振幅をもって変化する、装置である。異なるレートで、異なる振幅をもって変化する2つの磁界は、好適には2つのコイル装置によって生成される。更なる利点は、磁界の変化が、人間の可聴の制限より上になるように速いことである(例えば>20kHz)。2つの磁界は、検査領域において互いに対して本質的に垂直でありうる。これは、2次元領域における磁界のないポイントの移動を可能にする。3次元領域への拡張は、2つの磁界に対して垂直な成分を有する他の磁界によって得られる。コイル装置の下流に接続されるフィルタを有する装置も同様に有利である。前記フィルタは、コイル装置に誘導される信号から、第1の周波数帯の信号成分を抑制し、第1の周波数成分より高い周波数成分を含む第2の周波数帯の信号成分を通すことを許す。これは、磁化が不飽和状態から飽和状態に移る領域の磁化特性が非線形であることを利用する。この非線形性は、非線形性のレンジの周波数fとともに、ある時間にわたって正弦波の態様で存在する磁界が、周波数f(基本成分)及び周波数fの整数倍(より高い調波)をもつ時間的に変化する誘導をもたらすことを意味する。高調波の評価は、磁界のないポイントを動かすために同時にアクティブである磁界の基本成分が、評価にいかなる影響も及ぼさないという利点をもつ。
【0024】
本発明の更に別の見地によれば、検査対象の機械的パラメータ及び/又は物理的パラメータを決定する方法であって、検査対象の検査領域の少なくとも一部に磁性粒子を導入するステップと、検査対象の少なくとも検査領域に、少なくとも1つの機械的変位、特に機械的振動を生成するステップと、低い磁界強度をもつ第1の部分領域及びより高い磁界強度をもつ第2の部分領域が検査領域に生成されるような、磁界強度の空間プロファイルを有する磁界を生成するステップと、粒子の磁化が局所的に変化するように、検査領域の2つの部分領域の空間位置を変化させるステップと、この変化によって影響を及ぼされる検査領域の磁化に依存する信号を検出するステップと、検査領域における磁性粒子の時間的に変化する空間分布に関する情報を得るために信号を評価するステップと、特にそれぞれ異なる機械的応力の状態の弾性パラメータを決定するために、磁性粒子の空間分布に関して得られる情報を比較するステップと、を含む方法が提供される。
【0025】
本発明による方法の好適な実施例において、検査領域の磁性粒子が、ガス気泡及び/又は液滴の表面に及び/又はその表面上に存在する。解像度、感度及び測定の正確さに関する特に有利な結果は、検査領域の気泡上に磁性粒子がある気泡又はガス気泡が使用されるときに得られることができる。表面現象のため、磁性粒子は、多くの場合、これらのガス気泡の表面に自発的に集まる。しかしながら、ガス気泡及び磁性粒子を同時に又はほぼ同時に検査対象に導入することも同様に可能である。
【0026】
ガス気泡は、変位又は圧力波の影響を受けて変形し、これによって、ガス気泡と周囲の媒体との間のインタフェースにおける磁性粒子間の距離に小さな変化を引き起こし、その結果、外部磁界に対するそれぞれ異なる応答をもたらす。磁性粒子が飽和に近い状態にある磁界のないポイントの位置の近傍の位置では、磁気バブルは、圧力又は変位の変動に非常に敏感である。これらのいわゆる磁気バブルは、ある程度一様に分散された態様で検査領域に存在しうるいわば広い応答マイクロフォンである。これらの磁気バブルは、例えば約50kHz、特に100kHz、最高20MHzという高い振動周波数で特に適切であり、非常に高い解像度を提供する。特に前述のいわゆる磁気バブルを使用するときの更なる利点は、低い磁界強度を有する部分領域の検査中、磁化の変化は、例えば音場を介して、振動によってすでに検出されることができるので、外部磁界による励起の必要がないことである。これは、特に高周波の音波の使用にあてはまる。例えば、1つの位置の勾配磁界が飽和に達する大きさに近い大きさをもつ場合、磁気バブルの振動は、磁化に変化をもたらすことができる。このように、特に勾配磁界の磁界ゼロポイントの近傍には、圧力の変動に対して敏感に反応し、これらの変動を外部磁界に変換する位置がある。測定期間において、これは、この磁界の検出中、励起周波数の強いバックグラウンドがないという利点をもつ。コイル又は送信器ユニットによって、低い磁界強度及びより高い磁界強度を有する部分領域の相対位置を互いに対して移動させる代わりに、示される実施例において、対象及び磁界ゼロポイントのみが、互いに対して動かされればよい。方法のこの変形例において、少なくとも第1の近似に対して、1つの位置における波場の圧力の方向の偏差がある。
【0027】
特にガス気泡又は液滴上に集まる磁性粒子を使用するとき、検査領域のこれらの気泡又は滴の不均一な分布は、感度のバリエーションをもたらすことがあることに留意すべきである。しかしながら、この不均一な分布は、上記の磁気イメージング方法によって測定されることができ、その結果、第1の較正を与える。それにもかかわらず、本発明による方法の間、特に非常に高い振動周波数を使用するとき、個別の気泡は、関連する高い圧力のために壊され、又は例えば周囲媒体中のガスの消滅によって、時間とともに単にガスボリュームを失うこともある。上述したように、磁性粒子の分布の決定を介して、較正を実行することに制約がある場合、これは、おそらく誤った情報をもたらす可能性がある。検査領域に知られている圧力変化を適用し、得られた応答信号と、それにこの知られている圧力変化を再び受けさせるときに得られるものとを比較することが有利であることが分かった。適用される圧力の変動は、低周波であることが好ましく、全ての側から一様に検査領域又は検査対象に適用されることが最も有利である。一例として、好適には約16Hzの可聴閾値より低い周囲空気圧の圧力変動が、このような較正に適している。この検査領域に知られている圧力変化を受けさせることは、本発明による測定方法から離れて、実際の測定方法の間に、例えば周期的に実行されることができる。この場合、低周波振動が、較正の目的で、実際の測定周波数に重ねられる。
【0028】
例えば10kHz、特に1kHz以下の低周波で振動を生成するとき、検査領域の弾性特性は、磁性粒子がガス気泡上に存在する必要なく、この領域に分布した態様で存在する磁性粒子によって特に良好に決定されることもできる。より低い周波数は、例えば身体のより深くにある器官のような、検査領域のより深い対象が検査されることができるという利点をもつ。
【0029】
本発明の方法の一実施例において、異方性の磁性粒子、好適には、少なくとも0.1mTの内部異方性磁場を有する磁性粒子が使用される。方法は、1)異方性粒子を検査領域に導入するステップと、2)磁界のないゾーンの近傍のゾーンに粒子の向きを生成するステップと、3)磁性粒子の応答磁界を測定するために、磁界のないゾーンを移動させるステップと、4)音波又は変位をオンにするステップと、5)前記音波又は変位の結果として、新たな位置の指向された磁性粒子の応答磁界を測定するために、磁界のないゾーンを移動させるステップと、を含む。これは、例えば組織中の粒子の不均一な分布によって適切なコントラストがない場合に特に有用である。この方法によって、人工的なコントラストが、不均一なやり方で磁性粒子を並べることによって、生成されることができる。
【0030】
本発明に従う方法により、検査領域の音波を視覚化することが可能である。均一な弾性材料が、検査領域に存在する場合、音波は妨げられる。音波のデコンボルーションから、コントラストが検査領域の弾性特性の差に関する対象の画像が生成されることができる。この方法は、例えば特に胸部腫瘍のような腫瘍を検出するために適用されることができる。腫瘍は、それらが概してその周囲組織より高い弾性係数を有するので、この方法によって視覚化されることができる。適当な較正により、弾性テンソル又は弾性係数が決定されることができる。変位ファクタ又は弾性テンソルを測定するために必要な走査スピードは非常に高いので、好適には、検査領域の小さい部分が、この非常に高いスピードで走査される。イメージングのために、検査領域の領域全体が、前記小さいボリュームの近傍での連続するイメージングによって走査される。
【0031】
本発明による方法の1つの他の展開例は、時間的に変化する磁界が、第1の周波数帯で検査領域に作用し、コイルにおいて受け取られる信号から、第1の周波数帯より高い周波数成分を好適に含む第2の周波数帯が、磁性粒子の空間分布に関する情報を得るために、評価されることを特徴とする。
【0032】
本発明によれば、磁性粒子は、特に約100mT以下の強度を有する外部磁界の印加時に、飽和する。当然ながら、より高い飽和磁界強度もまた本発明による方法に適している。
【0033】
多くのアプリケーションについて、適切な磁界強度は、約10mT以下でさえある。この強度は、多くの組織又は器官の検査の場合にも十分である。しかしながら、良好な測定結果は、1mT以下の範囲又は約0.1mT以下の範囲の磁界強度によって達成されることもできる。一例として、濃度、温度、圧力又はpHが、約10mT以下、約1mT以下及び約0.1mT以下の磁界強度で、正確さ及び明確さの高い程度をもって決定されることができる。
【0034】
本発明の文脈の範囲内で、磁性粒子が飽和する又は飽和している外部磁界という語は、およそ半分の飽和磁化が達成される磁界を意味するものとして理解されたい。
【0035】
適切な磁性粒子は、十分に小さい磁界の場合に飽和することができるものである。これに必要な前提条件は、磁性粒子が、最小サイズ又は最小双極子モーメントを有することである。従って、本発明の文脈の範囲内で、磁性粒子という語は、磁化可能な粒子をも含む。
【0036】
適切な磁性粒子は、有利には、ボクセルの大きさと比較して小さい寸法を有し、その磁化は、本発明による方法によって測定されることができる。更に、粒子の磁化は、可能な限り低い磁界強度で飽和しなければならないことが好ましい。これに必要な磁界強度が低ければ低いほど、空間分解能の能力は高くなり、検査領域に生成されるべき(外部)磁界は弱くなる。更に、磁性粒子は、磁化の変化が結果として可能な限り高い出力信号をもたらすように、可能な限り高い双極子モーメントと、高い飽和誘導と、を有するべきである。医学的検査のために方法を使用するとき、粒子が非毒性であることも重要である。
【0037】
本発明の方法の好適な改良例によれば、磁性粒子は、磁化がニール回転によって及び/又はブラウン回転によって反転されることができるモノドメイン粒子である。
【0038】
適切な磁性モノドメイン粒子は、単一の磁区(モノドメイン)のみが、その中に形成されることができ、ホワイト領域が存在しないような大きさに規定されることが好ましい。本発明の特に好適な変形例によれば、適切な粒子サイズは、20ナノメートル乃至約800ナノメートルのレンジにあり、上限は、使用される材料にも依存する。モノドメイン粒子に関して、好適には磁鉄鉱(Fe)、マグヘマイト(γ−Fe)及び/又は不定比性の磁性酸化鉄が使用されることが好ましい。
【0039】
一般に、特にニール回転に基づく磁化の急速な反転が望ましい場合に、モノドメイン粒子が低い効果的な異方性を有することが有利である。効果的な異方性という語は、この場合、形状の異方性及び結晶異方性に起因する異方性を意味するものと理解されるべきである。上述の場合、磁化方向の変化は、粒子の回転を必要としない。代替例として、外部磁界の印加時の磁化反転がブラウン回転又は幾何学的な回転によって生じることが望まれる場合、高い効果的な異方性を有するものドメイン粒子が使用される。
【0040】
本発明による方法の別の実施例によれば、磁性粒子は、硬磁性又は軟磁性のマルチドメイン粒子でありうる。これらのマルチドメイン粒子は、通常、複数の磁区が形成されることが可能である相対的に大きい磁性粒子である。このようなマルチドメイン粒子は、有利には、低い飽和誘導をもつ。
【0041】
硬磁性マルチドメイン粒子は、本質的に、高い効果的な異方性を有するモノドメイン粒子と同じ磁気特性を有する。低い飽和磁化を有する軟磁性マルチドメイン粒子は、それらが本発明による方法において使用されることができるようにするために、いかなる態様に形作られてもよいという利点を持つ。それらが非対称の外部形状を有する場合、それらは、検査領域の局所的な粘性測定に特に適している。高い飽和磁化を有する軟磁性のマルチドメイン粒子は、減磁係数が小さくなるように構成されることが有利である。対称及び非対称の形状が、使用されることができる。例えば、高い飽和磁化を有する軟磁性の活性物質は、それ自体磁化することができない球体又は立方体に、薄いコーティングとして適用されることができる。
【0042】
本発明による方法は、検査対象の検査領域に存在するガス気泡の内部圧力、内部圧力の変化、ボリューム及び/又はボリュームの変化を特に局所的に決定するのに適している。
【0043】
更に、本発明による方法は、検査対象の検査領域における温度、温度の変化、硬さ、硬さの変化、密度及び/又は密度の変化、圧力、変位、弾性係数及び/又はせん断弾性係数を、特に局所的に決定するのに適している。
【0044】
本発明によれば、機械的なパラメータが連続的に又は間隔をおいて検出されることができる。
【0045】
本発明は、検査対象内の局所的に区切られた領域についての機械的な特性、特に弾性特性及び密度情報が、再生可能な態様で容易に決定されることができるという驚くべき知識に基づいている。結論は、検査対象のガス気泡の内部圧力についても導かれることができる。特に、本発明による装置は、表面の近傍にある対象の領域のみを検査するためだけにもはや使用されることができず、身体内部の機械的な及び弾性の条件についての情報を得ることができるようにするために使用されることができる。このように、本発明による装置は、簡素な信頼できる態様で、例えば温度、硬さ、内部ガス圧力、ガスボリューム及び密度のようなパラメータの局所的の決定を可能にし、更に、これらのパラメータの変化を特にリアルタイムに追跡し決定することを可能にする。更に、pHの決定も可能である。
【0046】
こうして、本発明の装置を使用して、非常に高い解像度をもって、対象内の狭く区切られた位置に、機械的特性及び弾性特性を割り当てることが可能である。従来のエラストグラフィ方法と比較して、極めて高い信号対雑音比が得られ、その結果、測定の品質に関して損失を考慮する必要なく、一層短い測定時間を与える。更に、弾性テンソルの全ての弾性パラメータが決定されることができる。加えて、低周波の振動が、較正の目的で実際の測定に重ねられることができるので、非常に信頼できる測定結果が常に得られる。
【0047】
更に、磁性粒子は、前記領域についての所望の情報を得られるようにするために、必ずしも検査領域を通じて均一に分散される必要がないことが有利である。むしろ、磁性粒子の不均一な分布がある場合であっても、振動による検査領域又は磁気バブルの変形が、検出されることができ、評価されることができる。検査領域の粒子の均一な分布の場合、その磁化がニール回転及びブラウン回転によって反転されることができる磁性粒子を使用することが有利であることが分かった。この場合、ニール回転又はブラウン回転による磁化反転の異なる時間依存が、検査領域の検査対象の局所的な弾性挙動についての情報を得るために使用されることができる。一例として、不均一な粒子分布の場合、例えば、検査領域の部分領域がいかなる磁性粒子も有しない場合、いかなる磁性粒子も有しないこれらの領域についての特性変数が、記録された信号の外挿によって、間接的に測定されることもできる。例えば、それらの表面上に磁性粒子を有する気泡が、静脈に通され、それらがそれらの大きさのために静脈から他の組織に入ることができないとき、これが使用されることができる。それにもかかわらず、いかなる磁性粒子も有しないこれらの静脈のそばの又は静脈間の領域の弾性挙動に関する情報が得られることができる。
【0048】
生物の組織構造又は器官の検査の他に、本発明による装置及び本発明による方法は、更に、プラスチックス技術でますます使用されるような例えばラバー材料及び成分を検査するのに適している。ラバー成分、タイヤ又は熱可塑性エラストマに基づく成分の内部弾性特性は、本発明による方法を使用して、高解像度で、信頼性をもって、検査されることができる。弾性パラメータは、検査領域の各々の位置において得られる。
【0049】
本発明は、更に、コントラスト及び解像度を高めるために本発明による方法において使用されることができる磁性粒子組成に関する。本発明による磁性粒子組成は、磁性粒子が、それらが互いに非常に近いときに互いの磁界の影響を受けるという効果を利用する。隣接する粒子の磁界との結合により、外部磁界に対する個別の粒子の応答が変化される。粒子間の距離は、例えば例えば音波によってもたらされる周囲媒体の変位によって変化されることができる。距離の変化及び磁気特性の付随する変化は、結果的に、磁性粒子イメージング方法において印加される外部磁界に対するそれぞれ異なる応答をもたらす。それぞれ異なる応答は、画像のコントラストを生成するために使用される。粒子の分離又は凝集時の第1及び第2の状態間の磁気挙動の変化を得るために必要とされる距離は、磁性粒子の性質に依存する。好適には、粒子間の距離が、磁性粒子の直径の10倍より小さく、好適には8倍より小さく、より好適には5倍より小さい。距離という語は、コアとコアとの間の距離を意味する。粒子があまりに近いと、粒子を互いからはなすことは非常に困難なので、距離は、平均の粒子直径の少なくとも3倍、好適には少なくとも4倍であることが好ましい。
【0050】
このような磁性粒子組成の一実施例は、液状媒体中に1又は複数のガス気泡を含み、磁性粒子が、ガス気泡及び液状媒体のインタフェースに存在する磁性ガス気泡組成である。
【0051】
ガス気泡及び液状媒体間のインタフェースにおける磁性粒子間の平均の粒子と粒子の間の距離は、好適には、磁性粒子の平均直径の3倍乃至10倍であり、好適には磁性粒子サイズの8倍より小さく、より好適には5倍より小さい。磁性ガス気泡組成は、実質的にガス気泡及び液状媒体の間のインタフェースに磁性粒子を局在化するための表面活性剤を含むことができる。好適には、磁性粒子は、表面活性剤分子に付着される。磁性ガス気泡のサイズは、一般に、広い範囲で変化することができる。生物体を調べるための、磁性粒子イメージング方法の好適な使用において、ガス気泡の直径は、好適には1乃至10μメートルである。好適には、磁性ガス気泡は、特にガスが水に実質的に溶解せず及び/又は急速に溶解しない低水溶解性を有するガスを含む。身体アプリケーションにおいて適切な溶解可能でないガスは、パーフルオロ化されたガスである。
【0052】
磁性ガス気泡組成は、さまざまな異なるやり方で作られることができる。1つのやり方は、液状媒体中にガス気泡を導入することである。液状の磁性ガス気泡組成の不利益は、保存安定性が相対的に低く、それらを作るのが相対的に困難であることである。本発明の別の見地によれば、磁性ガス気泡組成を製造するための磁性ガス気泡プレカーサであって、ガス気泡プレカーサが、ガスボリュームを囲むシェルを含み、シェルが、磁性粒子を含む、磁性ガス気泡プレカーサが提供される。磁性乾燥ガス気泡プレカーサは、乾燥した状態において使用されることができるが、好適には、例えば乾燥磁性ガス気泡プレカーサを適切な液状媒体に溶解することによって、上述したような磁性ガス気泡組成を製造するために使用される。この乾燥磁性ガス気泡プレカーサの利点は、それが相対的に長い保存寿命をもって保存されることができることである。
【0053】
検査領域が液状媒体を含む場合、磁性ガス気泡プレカーサは、直接的に検査領域に投与されることができる。磁性ガス気泡プレカーサは、液状媒体に分散されたのち、投与されることもできる。シェル材料は、磁性粒子が、液状媒体中に分散されるときに回転運動に関する自由度を得るように、液状媒体と接触して少なくとも部分的に溶解することができ又は粘性を低減することができる。シェル材料は、例えば血液のように水性媒体中に溶解する材料、例えば多糖類、澱粉又は低い粘性の親水性ポリマ材料でありうる。シェル材料は、検査領域の温度で溶解し又は粘性を低減する材料、又は検査領域の条件において低い粘性へ分解する材料であってもよい。
【0054】
気泡は、薬剤を含むことができる。薬剤は、イメージング技法によって制御される制御された態様で、検査磁界中の特定の領域へ運ばれることができ、例えば磁気ひずみ効果を使用することによって又は電磁放射若しくは音波によってガス気泡を壊すことによって、局所的にリリースされることができる。
【0055】
本発明の別の実施例において、磁性粒子間の平均の粒子間距離が、平均粒子直径の3倍乃至10倍であり、粒子が、粘性の弾性媒体への埋め込みによって、空間的に区切られたやり方で凝集し及び/又は互いに結合する、2又はそれ以上の磁性粒子を含む磁性粒子組成が提供される。粘性弾性媒体は、粒子間の距離が音波によって引き起こされる変位に対する応答として変化するように選択される。
【0056】
一般に、磁性粒子組成における磁性粒子は、良好な磁性粒子画像、特に良好な解像度が、所与の勾配磁界中で得られることができるように選択される。未公開のドイツ特許出願第10151778.5号明細書には、磁性粒子イメージング方法が記述されている。概して、20乃至800ナノメートルのサイズをもつ磁性モノドメイン粒子又は磁性コーティングでコーティングされたガラスビートが、この方法において使用されることができることが記載されている。しかしながら、相対的に低い磁界勾配で良好な磁気イメージングコントラスト及び解像度を達成するために、改善された磁性粒子組成が非常に望まれている。本願発明者は、改善された磁性粒子イメージング特性を有する磁性粒子を見つけた。
【0057】
好適には、磁性粒子組成における磁性粒子は、ステップ変化をもつ磁化曲線を有し、ステップ変化は、水性懸濁液中で測定されるとき、前記ステップ変化の変曲点の周囲の大きさデルタの第1の磁界強度ウィンドウにおける磁化変化が、第1の磁界強度ウィンドウより下の大きさデルタの磁界強度ウィンドウ及び/又は第1の磁界強度ウィンドウより上の大きさデルタの磁界強度ウィンドウの磁化変化より、少なくとも3倍高く、デルタは、2000マイクロテスラより小さく、好適には1000マイクロテスラより小さく、磁化のステップ変化が第1のデルタウィンドウ内で完了する時間は、0.01秒より短く、好適には0.005秒より短く、より好適には0.001より短く、最も好適には0.0005秒より短いことを特徴とする。このような磁性粒子は、特に画像の良好な解像度を得るための磁性粒子イメージングに特に適していることが分かった。更に、磁性粒子組成は、ステップ変化が、1テスラの外部磁界において測定されるとき、粒子組成の磁化全体の少なくとも10%、好適には少なくとも20%、より好適には少なくとも30%、最も好適には少なくとも50%である磁化曲線を有することが好ましい。更に、前記ステップ変化の変曲点の周囲の大きさデルタの第1の磁界強度ウィンドウ内の磁化変化は、第1の磁界強度ウィンドウより下の大きさデルタの磁界強度ウィンドウ又は第1の磁界強度ウィンドウより上の大きさデルタの磁界強度ウィンドウ内の磁化変化の少なくとも4倍高く、好適には少なくとも5倍高いことが好ましい。
【0058】
磁性粒子組成は、磁性粒子イメージング技法において使用するのに特に有用である。粒子は、相対的に低い勾配磁界強度において良好な空間分解能を示す。更に、磁性粒子組成は、広い検査領域を調べるために相対的に高い走査スピードを可能にする。例えば、ステップ変化が1000マイクロテスラより低いデルタ値で生じることが好ましい医用の磁性粒子イメージングアプリケーションの場合、粒子組成は、10乃至0.1T/mの勾配磁界強度において、0.1乃至10mmより良好な解像度値を有する。本発明による磁性粒子組成を使用する磁性粒子イメージング技法により、例えば顕微鏡法で非常に高い勾配磁界が達成されることができるアプリケーションにおいて、0.1乃至10マイクロメートルのレンジの極めて良好な解像度が得られることができる。
【0059】
上述したような必要なステップ変化を示す磁性粒子組成は、本発明による方法及び本発明によるすべての磁性粒子組成において使用されることが好ましい。
【0060】
厳密に言うと、磁界強度はH(A/m)で表現されることに留意されたい。しかしながら、本出願において、磁界強度について言及するとき、B磁界を意味する。上述したような2000μTの磁界Bは、2mT/μ=1.6kA/mのH磁界に対応し、すなわち、真空中で2mTのB磁界を発生する等価なH磁界に対応する。
【0061】
磁化曲線及び必要とされるステップ変化を測定する方法は、次の通りである。磁性粒子組成のサンプルは、任意には単純な界面活性剤により、水中に懸濁される。磁性粒子を凝集させることを防ぎ、及び/又は散らばすために、可能な超音波処理が、使用されることができる。磁性粒子組成の濃度は、溶媒のリットル当たりのコア質量0.01grより低い。コア質量とは、磁性粒子組成における磁性材料の質量を意味する。懸濁液は、高速磁力計(すなわち、外部磁界が印加される間、サンプルの磁化を測定する装置)に入れられる。適切な高速磁力計は専門家に知られている。磁力計は、サンプル位置で同時に少なくとも2つの直交方向に外部磁界を生成すること、すなわち、所与の最大振幅及び所与の最大変化スピードより低い任意の磁界を生成することを可能にする手段を備える。更に、磁化は、同じ平面内の少なくとも2つの直交方向において測定される。
【0062】
最初に、飽和磁化が測定される。このために、約1テスラの磁界が、一方向に印加され、磁化の大きさが、少なくとも10秒後に測定される。ステップ変化を決定するための測定シーケンスが開始する。シーケンスは、20mTより低い外部磁界の大きさをもつ磁界ベクトルを選択することから始まる。この磁界は、多くとも100秒間印加される。第2の方向が選択される。この方向は、磁界H及び磁化Mのスカラ値を規定する。磁界は、高速に変化され、好適には1ミリ秒未満で変更され、それによって、磁界は、−H方向に20mTより低い大きさをもつ。磁界は、−Hから+Hに、例えば線形に変化され、(スカラ、すなわち投影される)磁化が記録される。磁化曲線は、0.01秒より小さいが1μ秒より大きい単位で記録される。磁化曲線が、ステップ変化を示す場合、大きさデルタの第1のウィンドウは、磁化のステップ変化の変曲点の中央に位置付けられる。同様に、大きさデルタのウィンドウは、第1のウィンドウより下及び上に位置付けられ、必要とされるステップ変化は、各ウィンドウ内の磁化の変化を決定することによって評価される。
【0063】
所与の磁性粒子組成が、必要とされるステップ変化をもつか否かは、例えば粒子サイズ、粒子サイズの分布、粒子の形状、ニール回転に関する減衰定数、磁性材料のタイプ、磁性材料の組成の結晶性及び化学量のような多くの変数に、複雑なやり方で依存する。粒子組成の粒子サイズの分布が狭いことが特に重要であることが分かった。好適には、本発明による磁性粒子組成は、狭い粒子サイズ分布を有し、粒子の少なくとも50重量%が、平均粒子サイズのプラスマイナス50%、好適には25%、より好適には10%の粒子サイズを有する。好適には、指定されたウィンドウ内の粒子の量は、少なくとも70重量%、好適には少なくとも80重量%、最も好適には少なくとも90重量%である。特に良好な結果は、実質的に10mT、好適には5mT、より好適には2mTより小さいニール回転をもたらすために必要とされる磁界を有する低い磁気異方性を具えるモノドメイン粒子によって得られる。好適には、磁性粒子は、20乃至80ナノメートルの平均粒子サイズ、より好適には25乃至70ナノメートル、最も好適には30乃至60ナノメートルの平均粒子サイズを有するモノドメイン粒子であり、粒子の少なくとも50重量%、好適には少なくとも60重量%、より好適には少なくとも70重量%が、平均粒子サイズのプラスマイナス10ナノメートル間の粒子サイズをもつ。
【0064】
本発明による磁性粒子組成の代替実施例において、磁性粒子は、0.001より低い減磁係数を有し、実質的にニードル形状を有するマルチドメイン粒子である。この磁性粒子組成は、ニードル形状が不利益でない非医学的アプリケーションにおいて、特に有用である。他の代替実施例において、本発明による磁性粒子組成は、磁性コーティング材料で覆われた非磁性コアを含む磁性粒子を有する。コーティングの厚さは、5乃至80ナノメートルであり、減磁係数は、0.01より小さく、直径は300μmより小さい。更にこれらの代替実施例において、上述したような小さい粒子サイズ分布を有することが有利である。これらの実施例における磁性粒子の物理的パラメータは、好適には、良好なイメージング特性を達成するために、上述したようなステップ変化要求を満たすように選ばれる。
【0065】
本発明による磁性粒子組成は、例えば、上述したように第一鉄及び第二鉄のイオンを含む溶液を水酸化ナトリウムを含む溶液と接触させることにより、例えば析出によって、まず磁性粒子を形成することによって製造されることができる。原則として、知られている析出プロセスが使用されることができる。更に、例えば高速ボールミルを使用して、バルク材料から粒子をグラインドすることも可能である。良好な磁性粒子組成を得るための基本の次のステップは、粒子の選択及び分離である。最初のステップは、フィルタリング及び/又は遠心分離方法によって、サイズ選択プロセスを実施することである。次のステップは、例えば振動する勾配磁界を使用して、粒子の磁気特性に基づいて選択プロセスを実施することである。
【0066】
上述の説明及び特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、個別に又は任意の所望の組み合わせで、さまざまな実施例における本発明の実現の基本となりうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象の特に弾性パラメータのような機械的パラメータを決定する装置であって、
a)前記検査対象の少なくとも1つの検査領域における磁性粒子の空間分布を決定する少なくとも1つの装置であって、少なくとも1つの検査領域に、低い磁界強度をもつ第1の部分領域及びより高い磁界強度をもつ第2の部分領域が生成されるような、磁界強度の空間プロファイルを有する磁界を生成する手段と、前記粒子の空間的変化によって影響を及ぼされる特に前記検査領域における前記検査対象の磁化に依存する信号を検出する手段と、前記検査領域の磁性粒子の特に時間的に変化する空間分布に関する情報を得るために、前記信号を評価する手段と、を有する装置と、
b)少なくとも前記検査対象の前記検査領域において及び/又はその近傍に、特に振動のような少なくとも機械的変位を生成する少なくとも1つの手段と、
を有する装置。
【請求項2】
前記粒子の前記磁化が局所的に変化するように、前記検査領域の前記2つの部分領域の空間位置を変化させる、特に少なくとも1つのコイル装置のような少なくとも1つの手段によって特徴付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記機械的変位又は振動を生成する前記手段が、少なくとも1つの振動素子、振動発生器、及び前記振動発生器から前記振動素子に振動を伝える振動伝達手段、及び/又は特に超音波源のような少なくとも1つの音源と、を有することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記振動発生器が、磁石装置の外部の、該磁石装置から或る距離のところに配置され、前記振動素子及び前記振動伝達手段が、非金属及び/又は金属材料からなることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記磁界を生成する前記手段が、前記検査領域の前記第1の部分領域においてその方向を反転させるとともに、ゼロ交差を有する勾配磁界を生成する勾配コイル装置を有することを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記検査領域の前記2つの部分領域を移動させるために、勾配磁界に重ねられる時間的に変化する磁界を生成する手段によって特徴付けられる、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記検査領域の磁化の時間的変化によって誘導される信号を受け取るコイル装置によって特徴付けられる、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
勾配磁界に重ねられる第1及び少なくとも第2の磁界を生成する手段であって、前記第1の磁界が、高い振幅をもって、時間に関してゆっくりと変化し、前記第2の磁界が、低い振幅をもって、時間に関して速く変化する、手段によって特徴付けられる、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記2つの磁界が、前記検査領域において互いに対して本質的に垂直に存在することを特徴とする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
検査対象の機械的及び/又は物理的パラメータを決定する方法であって、
前記検査対象の検査領域の少なくとも一部に磁性粒子を導入するステップと、
前記検査対象の少なくとも前記検査領域に、特に機械的振動のような少なくとも1つの機械的変位を生成するステップと、
低い磁界強度をもつ第1の部分領域及びより高い磁界強度をもつ第2の部分領域が前記検査領域に生成されるように、磁界強度の空間プロファイルを有する磁界を生成するステップと、
前記粒子の磁化が局所的に変化するように、前記検査領域の前記2つの部分領域の空間位置を変化させるステップと、
前記変化によって影響を及ぼされる前記検査領域の磁化に依存する信号を検出するステップと、
前記検査領域における前記磁性粒子の特に時間的に変化する空間分布に関する情報を得るために、前記信号を評価するステップと、
特にそれぞれ異なる機械的応力の状態の弾性パラメータを決定するために、前記磁性粒子の空間分布について得られる情報を比較するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記検査領域の前記磁性粒子は、ガス気泡及び/又は液滴の表面に及び/又はその表面上に存在することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記磁性粒子が、モノドメイン及び/又はマルチドメイン粒子であり、その磁化が、ブラウン回転及び/又はニール回転によって反転されることを特徴とする、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
時間的に変化する磁界が、第1の周波数帯で検査領域に作用し、コイルにおいて受け取られる信号から、前記第1の周波数帯より高い周波数成分を好適に含む第2の周波数帯が、前記磁性粒子の前記空間分布に関する情報を得るために評価されることを特徴とする、請求項10乃至請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
機械的又は物理的パラメータとして、前記検査対象の前記検査領域に存在するガス気泡の内部圧力、内部圧力の変化、ボリューム及び/又はボリュームの変化が、特に局所的に決定されることを特徴とする、請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
機械的又は物理的パラメータとして、前記検査領域における温度、温度の変化、硬さ、硬さの変化、密度及び/又は密度の変化、圧力、変位、弾性係数及び/又はせん断弾性係数が、特に局所的に決定されることを特徴とする、請求項10乃至請求項14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記機械的又は物理的パラメータが、連続的に又は間隔をおいて検出されることを特徴とする、請求項10乃至請求項15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記磁性粒子が、均一に又は不均一に分布する態様で前記検査領域に存在し、又は導入されることを特徴とする、請求項10乃至請求項16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記検査領域が、更に、較正のために、特に周期的な圧力の変動を受けることを特徴とする、請求項10乃至請求項17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
身体の一部及び/又は器官をイメージングするために、前記検査対象に存在するガス気泡の内部圧力又は内部圧力の変化を決定するための、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の装置の使用。
【請求項20】
ラバー成分、タイヤ、熱可塑性エラストマに基づく成分、組織又は特に呼吸器官のような器官を、特にリアルタイムに検査するための、請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の装置の使用。
【請求項21】
液状媒体中に1又は複数のガス気泡を含み、前記磁性粒子が、前記ガス気泡及び前記液状媒体のインタフェースに存在する、磁性ガス気泡組成。
【請求項22】
実質的に前記ガス気泡及び前記液状媒体の間の前記インタフェースにおいて、前記磁性粒子を局所化するための表面活性剤を更に含む、請求項21に記載の磁性ガス気泡組成。
【請求項23】
前記磁性粒子が、表面活性剤分子に付着される、請求項22に記載の磁性ガス気泡組成。
【請求項24】
前記ガス気泡の直径が、1乃至10マイクロメートルである、請求項21乃至請求項23のいずれか1項に記載の磁性ガス気泡組成。
【請求項25】
前記気泡が薬剤を含む、請求項21乃至請求項24のいずれか1項に記載の磁性ガス気泡組成。
【請求項26】
前記ガスが、低水溶解性を有し、特に前記ガスが、水に実質的に溶解せず及び/又は急速に溶解せず、好適にはパーフルオロ化されたガスである、請求項21乃至請求項25のいずれか1項に記載の磁性ガス気泡組成。
【請求項27】
前記ガス気泡及び前記液状媒体の間の前記インタフェースにおける前記磁性粒子間の平均の粒子間距離が、前記磁性粒子のサイズの10倍よリ小さい、請求項21乃至請求項26のいずれか1項に記載の磁性ガス気泡組成。
【請求項28】
前記磁性粒子が、異方性を有するモノドメイン粒子である、請求項21乃至請求項27のいずれか1項に記載の磁性ガス気泡組成。
【請求項29】
請求項1乃至請求項28のいずれか1項に記載の磁性ガス気泡組成を製造するための磁性ガス気泡プレカーサであって、前記ガス気泡プレカーサが、ガスボリュームを囲むシェルを含み、前記シェルが、磁性粒子を含む、磁性ガス気泡プレカーサ。
【請求項30】
前記シェルは、前記磁性粒子が、液体媒体中に分散されるときに回転運動に関する自由度を得るように、前記液状媒体と接触して溶解し又は粘性を低減する材料を含む、請求項29に記載の磁性ガス気泡プレカーサ。
【請求項31】
弾性媒体中に2又はそれ以上の磁性粒子を含む弾性粒子を含み、前記磁性粒子間の平均距離が、平均の磁性粒子直径の3倍乃至10倍である、弾性磁性粒子組成。
【請求項32】
磁性粒子イメージング技法におけるイメージング薬剤としての、請求項21乃至請求項28のいずれか1項に記載の磁性ガス気泡組成、請求項29又は請求項30に記載の磁性ガス気泡プレカーサ又は請求項31に記載の弾性磁性粒子組成の使用であって、特に前記技法によって前記検査領域における圧力をイメージングし、特に音波によって前記検査領域の弾性特性をイメージングするための使用。
【請求項33】
ステップ変化を有する磁化曲線を有する磁性粒子組成であって、前記ステップ変化は、前記ステップ変化の変曲点の周囲の大きさデルタの第1の磁界強度ウィンドウ内の磁化変化が、水性懸濁液中で測定されるとき、前記第1の磁界強度ウィンドウより下の大きさデルタの磁界強度ウィンドウ又は前記第1の磁界強度ウィンドウより上の大きさデルタの磁界強度ウィンドウ内の磁化変化の少なくとも3倍高く、前記デルタは、2000マイクロテスラより小さく、前記磁化の前記ステップ変化が前記第1のデルタウィンドウ内で完了する時間は、0.01秒より小さいことを特徴とする、磁性粒子組成。
【請求項34】
請求項1乃至請求項32のいずれか1項における、請求項39に記載の磁性粒子組成の使用。

【公表番号】特表2006−524086(P2006−524086A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506850(P2006−506850)
【出願日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050445
【国際公開番号】WO2004/091408
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】