説明

検査機構

【課題】コストが嵩むことが抑制された検査機構を提供する。
【解決手段】検査装置(30)は、複数の角速度センサ(10)が搭載された回転テーブル(40)と、角速度センサ(10)の出力信号を測定しつつ、角速度センサ(10)の動作を指示する指示部(50)と、を有し、角速度センサ(10)は、センサ部(11)、スイッチ(13)、制御部(14)を有し、各センサ部(11)が対応するスイッチ(13)を介して共通配線(73)に接続され、共通配線(73)は指示部(50)と接続され、制御部(14)の1つが指示配線(71)を介して指示部(50)と接続され、全ての制御部(14)が連結配線(72)によって数珠つながりに連結され、指示信号は、遅延部(17)を介して後段の制御部(14)に入力され、制御部(14)は、指示信号が入力されると遅延時間以下の間スイッチ(13)を閉じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の角速度センサの出力を、検査装置によって検査する検査機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、複数の外力検知センサが配置される回転テーブルと、回転テーブルの外部に設けられ、回転テーブルの回転に起因した外力検知センサのセンサ出力を測定する指示部と、回転テーブルの回転中心軸上に配置され、外力検知センサ側と指示部側との配線導通を中継するスリップリングと、を有する外力検知センサの検査装置が提案されている。
【0003】
この検査装置では、回転テーブル上に、センサ接続用入力端子(以下、単に入力端子と示す)よりも少ない数の出力端子を備えたセンサ出力切り換え装置(以下、単に切り換え装置と示す)が設けられている。切り換え装置の入力端子は、対応する外力検知センサに配線接続され、その出力端子は、スリップリングに配線接続されている。切り換え装置は、入力端子を順次選択することで、選択した入力端子と配線接続された外力検知センサのセンサ出力を、出力端子から順次出力する。
【0004】
スリップリングに接続できる配線材の本数には限りがあるが、上記構成によれば、外力検知センサの出力配線よりも少ない数である、切り換え装置の出力端子がスリップリングに配線接続されるので、スリップリングに接続される配線材の本数が、回転テーブル上に配置された外力検知センサの出力配線の本数よりも少なくなる。これにより、スリップリングに接続可能な配線材の上限本数によって、回転テーブルに配置される外力検知センサの数が制限されることが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−310660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記したように、特許文献1に示される検査装置では、切り換え装置が回転テーブルに設けられている。切り換え装置とは、具体的にはマルチプレクサであり、外力検知センサとは、角速度センサである。角速度センサのセンサ出力を測定する場合、温度特性などを測定するために、回転テーブル周囲の環境を、測定環境に変化させる。環境を1,2回変化させるだけであれば、その環境下に晒される機器に不具合が生じる可能性は少ない。しかしながら、長期に渡って何回も環境変化に晒される場合、機器に不具合が生じる虞がある。上記したように、特許文献1では、マルチプレクサが回転テーブル上に設けられている。この構成の場合、マルチプレクサは、長期に渡って何回も環境変化に晒されることとなるので、マルチプレクサに不具合が生じる虞がある。このため、マルチプレクサを定期的に点検・補修、若しくは取り替えなくてはならなくなり、コストが嵩む虞がある。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、コストが嵩むことが抑制された検査機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数の角速度センサ(10)の出力を、検査装置(30)によって検査する検査機構であって、検査装置(30)は、複数の角速度センサ(10)を搭載しつつ、自身が回転することで、角速度センサ(10)に角速度を印加する回転テーブル(40)と、該回転テーブル(40)から離れて配置され、角速度センサ(10)の出力信号を測定しつつ、角速度センサ(10)の動作を指示する指示部(50)と、角速度センサ(10)と指示部(50)とを電気的に中継するスリップリング(60)と、を有し、角速度センサ(10)は、センサ部(11)と、該センサ部(11)と指示部(50)との電気的な接続を制御するためのスイッチ(13)と、該スイッチ(13)の開閉を制御する制御部(14)と、を有し、各角速度センサ(10)のセンサ部(11)が、対応するスイッチ(13)を介して、1つの共通配線(73)によって互いに連結され、共通配線(73)は、スリップリング(60)を介して指示部(50)の入力端子(52)と接続される入力配線(75)と電気的に接続され、1つの角速度センサ(10)の制御部(14)は、指示配線(71)とスリップリング(60)とを介して指示部(50)の出力端子(51)と接続される出力配線(74)と電気的に接続され、各角速度センサ(10)の制御部(14)は、連結配線(72)によって数珠つながりに連結されており、制御部(14)は、指示部(50)から出力される指示信号を遅延する遅延部(17)を有し、指示信号は、遅延部(17)を介して、後段に位置する角速度センサ(10)の制御部(14)に入力され、制御部(14)は、指示信号が入力されると、遅延部(17)が遅延する遅延時間以下の間、スイッチ(13)を閉状態とすることを特徴とする。
【0009】
以下、説明を簡便とするために、nを2以上の自然数として、n個の角速度センサ(10)が回転テーブル(40)に搭載されているとする。また、指示配線(71)が接続された制御部(14)を第1制御部(14)、それよりも後段に位置する制御部(14)の番数を順に1ずつ増加して示す。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、第1から第n番目までの制御部(14)が、連結配線(72)を介して数珠つながりに接続され、指示信号は、各制御部(14)の遅延部(17)を介して、後段に位置する制御部(14)に入力される。これによれば、先ず、第1制御部(14)に指示信号が入力されるが、第2制御部(14)には、第1制御部(14)の遅延部(17)によって遅延された時間分遅れて、指示信号が入力される。また、第3制御部(14)には、第1制御部(14)及び第2制御部(14)それぞれの遅延部(17)によって遅延された時間分遅れて指示信号が入力され、第4制御部(14)には、第1制御部(14)〜第3制御部(14)それぞれの遅延部(17)によって遅延された時間分遅れて指示信号が入力される。このように、後段に行けば行くほど、それよりも前段に位置する全ての制御部(14)の遅延部(17)によって指示信号が遅延され、その遅延された指示信号が制御部(14)に入力される。これにより、任意の制御部(14)に指示信号が入力されたタイミングでは、それよりも後段に位置する制御部(14)には指示信号が入力されていないこととなる。
【0011】
また、請求項1に記載の発明では、全てのセンサ部(11)が、対応するスイッチ(13)を介して、1つの共通配線(73)によって互いに連結されており、制御部(14)は、指示信号が入力されると、遅延部(17)が遅延する時間以下の間、スイッチ(13)を閉状態とする閉信号をスイッチ(13)に出力する。これによれば、任意の1つのスイッチ(13)が閉状態となっているタイミングでは、他のスイッチ(13)は開状態となるので、任意の1つのセンサ部(11)のみが共通配線(73)と電気的に接続される。これにより、連結配線(72)と遅延部(17)とを介して指示信号が各角速度センサ(10)を伝播すると、各角速度センサ(10)の出力信号が、共通配線(73)に順次出力される。この結果、各角速度センサ(10)の出力信号が、指示部50に順次出力される。
【0012】
以上、示したように、請求項1に記載の構成によれば、各角速度センサ(10)のセンサ部(11)を独立してスリップリング(60)に接続せずとも、各角速度センサ(10)の出力信号を、指示部50に順次出力することができる。
【0013】
ところで、角速度センサ(10)とスリップリング(60)とを接続する信号配線(70)は、指示配線(71)と共通配線(73)の2つであり、指示部(50)とスリップリング(60)とを接続する信号配線(70)は、出力配線(74)と入力配線(75)の2つである。この信号配線(70)の数は、回転テーブル(40)に設ける角速度センサ(10)が増加しても変わらない。したがって、マルチプレクサを回転テーブルに設けなくとも、回転テーブル40に設ける角速度センサ(10)の増加に伴って、スリップリング(60)に接続される配線数が増大することが抑制される。
【0014】
また、マルチプレクサが回転テーブルに設けられないので、マルチプレクサを定期的に点検・補修、若しくは取り替えなくともよくなり、コストが嵩むことが抑制される。
【0015】
更に言えば、回転テーブル(40)上には角速度センサ(10)のみが配置されるので、回転テーブル上に角速度センサだけではなくマルチプレクサが配置される構成とは異なり、回転テーブル(40)上の角速度センサ(10)の搭載面積が低減することが抑制される。
【0016】
なお、請求項1に記載の具体的な構成としては、請求項2に記載のように、指示信号は、1周期に複数のビットを送信するシリアル信号であり、遅延部(17)は、指示信号を、1周期分遅延するラッチ(17)である構成を採用することができる。この構成の場合、請求項3に記載のように、角速度センサ(10)は、補正値を記憶する記憶部(15)を有し、制御部(14)は、指示信号を復号する復号部(16)を有し、指示信号は、スイッチ(13)の開閉を指示する開閉信号と、記憶部(15)に記憶された補正値の書き換えを指示する書換信号が来ない旨を伝える報知信号とを含む第1指示信号、及び、開閉信号と、センサ部の認識情報を含む書換信号とを含む第2指示信号を有し、角速度センサ(10)の出力信号を測定する場合には、第1指示信号が指示部(50)から出力され、角速度センサ(10)の出力信号を測定しつつ補正する場合には、第2指示信号が指示部(50)から出力され、復号部(16)は、第1指示信号が入力されると、開閉信号をスイッチ(13)に出力し、第2指示信号が入力されると、開閉信号をスイッチ(13)に出力した後に、自身のセンサ部(11)の認識情報を含む書換信号を記憶部(15)に出力する構成が好ましい。
【0017】
これによれば、回転テーブル(40)上に角速度センサ(10)を搭載した状態で、角速度センサ(10)の出力信号を測定しつつ、補正することができる。
【0018】
請求項1に記載の具体的な構成としては、請求項4に記載のように、指示信号は、立ち上がりパルスであり、制御部(14)は、EXOR(20)を有し、遅延部(17)は、第1遅延回路(18)を有し、EXOR(20)の第1入力端子に、第1遅延回路(18)を介して、指示配線(71)若しくは連結配線(72)が接続され、EXOR(20)の第2入力端子に、指示配線(71)若しくは連結配線(72)が接続され、指示信号が、第1遅延回路(18)を介して、後段に位置する角速度センサ(10)の制御部(14)に入力される構成を採用することができる。この構成の場合、請求項5に記載のように、遅延部(17)は、第1遅延回路(18)よりも、遅延時間が短い第2遅延回路(19)を有し、EXOR(20)の第2入力端子に、第2遅延回路(19)を介して、指示配線(71)若しくは連結配線(72)が接続される構成が良い。
【0019】
これによれば、共通配線(73)に順次出力されるセンサ部(11)の出力信号の間隔が、第2遅延回路(19)の遅延時間となるので、共通配線(73)に順次出力されるセンサ部(11)の出力信号が連続的である場合と比べて、指示部(50)が、各センサ部(11)の出力信号を区別することが容易となる。
【0020】
なお、請求項6に記載のように、回転テーブル(40)の回転方向及び回転速度は、指示部(50)によって制御される構成を採用することができる。また、請求項7に記載のように、角速度センサ(10)は、センサ部(11)の出力信号を処理する処理部(12)を有する構成を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係る検査機構の概略構成を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る検査機構の概略構成を示す回路図である。
【図3】図2に示す角速度センサを説明するための回路図である。
【図4】各角速度センサを伝播する第1指示信号を説明するためのタイミングチャートである。
【図5】各角速度センサを伝播する第2指示信号を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】第2実施形態に係る検査機構の概略構成を示す回路図である。
【図7】図6に示す角速度センサを説明するための回路図である。
【図8】各角速度センサを伝播する指示信号を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る検査機構の概略構成を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る検査機構の概略構成を示す回路図である。図3は、図2に示す角速度センサを説明するための回路図である。図4は、各角速度センサを伝播する第1指示信号を説明するためのタイミングチャートである。図5は、各角速度センサを伝播する第2指示信号を説明するためのタイミングチャートである。なお、煩雑となることを避けるために、図1では連結配線72を省略し、図3ではモータ43と第2出力配線76を省略している。
【0023】
検査機構100は、複数の角速度センサ10の出力を、検査装置30によって検査するものである。図1及び図2に示すように、検査装置30は、複数の角速度センサ10を搭載しつつ、自身が回転することで、角速度センサ10に角速度を印加する回転テーブル40と、角速度センサ10の出力信号を測定する指示部50と、角速度センサ10と指示部50とを電気的に中継するスリップリング60と、を有する。信号配線70とスリップリング60とを介して角速度センサ10と指示部50との間で電気信号の授受が行われ、信号配線70を介して指示部50から回転テーブル40に電気信号が入力される。
【0024】
角速度センサ10は、図2に示すように、センサ部11と、センサ部11の出力信号を処理する処理部12と、センサ部11(処理部12)と共通配線73(指示部50)との電気的な接続を制御するためのスイッチ13と、該スイッチ13の開閉を制御する制御部14と、補正値を記憶する記憶部15と、を有する。nを2以上の自然数とすると、n個の角速度センサ10が回転テーブル40の搭載盤41に搭載されており、第1角速度センサ10の制御部14に、指示配線71が接続され、第1から第n番目までの角速度センサ10の制御部14が、連結配線72を介して数珠つながりに接続されている。また、n個のセンサ部11(処理部12)それぞれが、対応するスイッチ13を介して、1つの共通配線73によって互いに連結され、指示配線71と共通配線73とが、スリップリング60に接続されている。なお、図示しないが、各角速度センサ10には、上記した信号配線の他に、電源配線とグランド配線とが接続されている。電源配線及びグランド配線共に、1本の配線がn本に分岐して成り、1本にまとめられた部位が、スリップリング60に接続されている。したがって、スリップリング60には、4本の配線が接続されている。
【0025】
センサ部11は、図示しないが、x方向において、逆位相で振動する対を成す2つの振動子と、該振動子の一部によって構成される可動電極と、y方向において、可動電極と対向する固定電極と、を有する。振動子がx方向に振動している状態で、回転テーブル40が回転して、z方向に角速度が印加されると、y方向に沿うコリオリ力が振動子に発生する。すると、このコリオリ力によって振動子がy方向に変位(振動)し、その変位(振動)に伴って、振動子の一部である可動電極もy方向に変位(振動)する。この結果、可動電極と固定電極との電極間隔が変動し、可動電極と固定電極間の静電容量が変動する。この静電容量の変動が、センサ部11の出力信号として、処理部12に出力される。
【0026】
処理部12は、図示しないが、CV変換回路を有する。センサ部11から処理部12に、静電容量の変動を含む電気信号が入力されると、その静電容量の変動が、上記したCV変換回路によって電圧に変換される。変換された電圧は、処理部12の出力信号、すなわち、角速度センサ10の出力信号として、スイッチ13、共通配線73、スリップリング60、及び、入力配線75を介して、指示部50に入力される。
【0027】
スイッチ13は、共通配線73と処理部12との間に設けられている。本実施形態に係るスイッチ13は、Nチャネル型MOSFETであり、電圧レベルがLoレベルの信号(以下、Lo信号と示す)が入力されると開状態(オフ状態)となり、電圧レベルがHiレベルの信号(以下、Hi信号と示す)が入力されると閉状態(オン状態)となる。
【0028】
制御部14は、図3に示すように、指示部50から入力される指示信号を復号する復号部16と、指示信号を遅延する遅延部17と、を有する。指示信号は、1周期に複数のビットを送信するシリアル信号であり、遅延部17は、指示信号を1周期分遅延するラッチ、記憶部15はROMである。なお、復号部16は、後で説明する。
【0029】
回転テーブル40は、角速度センサ10が搭載される円環状の搭載盤41と、搭載盤41の中心軸上(図1に一点鎖線で示す、z方向に沿う線)に位置し、搭載盤41を支持する支持軸42と、支持軸42を回転するモータ43と、搭載盤41、支持軸42、モータ43が設けられる箱部44と、を有する。搭載盤41は、x方向とy方向とによって規定される平面に沿う搭載面41aを有しており、この搭載面41aに角速度センサ10が搭載される。搭載盤41は、支持軸42と共に、モータ43によって、左右両方向に回転可能となっており、その回転方向と回転速度とは、指示部50から出力される回転指示信号によって調節される。
【0030】
指示部50は、角速度センサ10の出力信号を測定しつつ、角速度センサ10の動作を指示するものである。本実施形態に係る指示部50は、角速度センサ10の出力信号に基づいて、角速度センサ10の補正値を算出し、モータ43の動作を指示する機能も果たす。指示部50の第1出力端子51は、第1出力配線74とスリップリング60とを介して指示配線71と電気的に接続され、入力端子52は入力配線75とスリップリング60とを介して共通配線73と電気的に接続され、第2出力端子53は第2出力配線76を介してモータ43と電気的に接続されている。上記した電気的な接続構成により、第1出力端子51から出力された指示信号が第1角速度センサ10の制御部14に入力され、共通配線73に出力された角速度センサ10の出力信号が入力端子52に入力され、第2出力端子53から出力された回転指示信号がモータ43に入力される。なお、第1角速度センサ10の制御部14に入力した指示信号は、前段に位置する制御部14と連結配線72とを介して、第2〜第n角速度センサ10の制御部14に順次入力される。
【0031】
指示信号は、図4に示す第1指示信号と、図5に示す第2指示信号と、を有する。第1指示信号は、スイッチ13の開閉を指示する開閉信号と、記憶部15に記憶された補正値の書き換えを指示する書換信号が来ない旨を伝える報知信号とを含み、第2指示信号は、開閉信号と、センサ部11の認識情報を含むn個の書換信号とを含む。上記したように、指示信号は1周期に複数のビットを送信するシリアル信号であり、開閉信号、報知信号、及び、書換信号それぞれは1周期分の信号である。復号部16は、第1指示信号が入力されると、開閉信号をスイッチ13に出力し、第2指示信号が入力されると、開閉信号をスイッチ13に出力し、自身のセンサ部11の認識情報を含む書換信号を記憶部15に出力する。なお、復号部16は、1周期分の信号を受信して復号するのに、指示信号の1周期分の時間を要する。
【0032】
スリップリング60は、支持軸42に固定されており、図示しないが、環状の電極と、該電極に接触される配線71,73〜75の端部の位置を保持することで、配線71,73〜75と電極との接触を確保する確保部と、を有する。
【0033】
次に、本実施形態に係る検査機構100の検査・補正工程を説明する。以下においては、説明を簡便とするために、kを1以上の自然数として、第k角速度センサ10の構成要素に、「第k」を付与して表記する。また、第k角速度センサ10の制御部14(第k制御部14)と第k+1角速度センサ10の制御部14(第k+1制御部14)とを連結する連結配線72を、第k連結配線72と示す。
【0034】
先ず、角速度センサ10の出力信号の測定(検査)を図3及び図4に基づいて説明する。図4に示すように、第1指示信号は、開閉信号を先頭として、開閉信号と報知信号とが順に並ぶ信号である。第1指示信号は、第1出力配線74、スリップリング60、及び、指示配線71を介して、指示部50から第1制御部14へと伝達される。第1復号部16は、第1指示信号が入力されると、第1指示信号に含まれる開閉信号を復号し、開閉信号を第1スイッチ13に出力する。上記したように、復号部16は、1周期分の信号を受信し復号するのに1周期分の時間を要する。したがって、復号部16から第1スイッチ13に開閉信号が入力されるタイミングは、開閉信号に続く報知信号が第1復号部16(指示配線71)に入力されるタイミングとなる。この開閉信号が第1スイッチ13に入力されている間、第1スイッチ13が閉状態となり、第1センサ部11(第1処理部12)と共通配線73とが電気的に接続され、第1角速度センサ10の出力信号が、共通配線73、スリップリング60、及び、入力配線75を介して指示部50に出力される。その後、第1復号部16にて報知信号の復号が終了すると、第1復号部16は次の指示信号が入力されるまで待機状態に移行する。
【0035】
第1制御部14に入力した指示信号は、第1ラッチ17を介して第1連結配線72へと出力される。上記したように、ラッチ17は、指示信号を1周期分遅延するので、第1連結配線72(第2制御部14)には、指示配線71に入力した第1指示信号よりも1周期分遅延した第1指示信号が入力される。したがって、図4に示すように、指示配線71(第1制御部14)に報知信号が入力されている状態では、第1連結配線72(第2制御部14)に開閉信号が入力されていることとなる。復号部16は、1周期分の信号の復号に1周期分の時間を要するので、第2復号部16から第2スイッチ13に開閉信号が入力されるタイミングは、開閉信号に続く報知信号が第2復号部16に入力されるタイミングとなる。このタイミングで、第2スイッチ13よりも前段及び後段に位置するスイッチ13が開状態となり、第2スイッチ13が閉状態となる。第2スイッチ13に開閉信号が入力されている間、第2センサ部11と共通配線73とが電気的に接続され、第2角速度センサ10の出力信号が指示部50に出力される。その後、第2復号部16にて報知信号の復号が終了すると、第2復号部16は次の指示信号が入力されるまで待機状態に移行する。
【0036】
第2制御部14に入力した指示信号は、第2ラッチ17を介して第2連結配線72へと出力される。この場合、指示信号は、第3角速度センサ10よりも前段に位置する全てのラッチ17(2個のラッチ17)によって遅延されるので、第2連結配線72(第3制御部14)には、指示配線71に入力した第1指示信号よりも2周期分遅延した第1指示信号が入力される。したがって、図4に示すように、第1制御部14への第1指示信号の入力が終了し、第1連結配線72(第2制御部14)に報知信号が入力されているタイミングで、第2連結配線72(第3制御部14)に開閉信号が入力されることとなる。また、1周期分の信号の復号には1周期分の時間を要するので、第3復号部16から第3スイッチ13に開閉信号が入力されるタイミングは、報知信号が第3復号部16に入力されるタイミングとなる。このタイミングで、第3スイッチ13よりも前段及び後段に位置するスイッチ13が開状態となり、第3スイッチ13が閉状態となる。第3スイッチ13に開閉信号が入力されている間、第3センサ部11と共通配線73とが電気的に接続され、第3角速度センサ10の出力信号が指示部50に出力される。その後、第3復号部16にて報知信号の復号が終了すると、第3復号部16は次の指示信号が入力されるまで待機状態に移行する。
【0037】
以上、示したように、指示信号は、第k+1角速度センサ10よりも前段に位置する全てのラッチ17(k個のラッチ17)によって遅延される。そのため、第k連結配線72(第k+1制御部14)には、指示配線71に入力した第1指示信号よりもk周期分遅延した第1指示信号が入力される。また、1周期分の信号の復号には1周期分の時間を要するので、第k復号部16から第k+1スイッチ13に開閉信号が入力されるタイミングは、報知信号が第k+1復号部16に入力されるタイミングとなる。このタイミングで、第k+1スイッチ13よりも前段及び後段に位置するスイッチ13が開状態となり、第k+1スイッチ13が閉状態となる。これにより、第k+1スイッチ13に開閉信号が入力されている間、第k+1センサ部11と共通配線73とが電気的に接続され、その出力信号が指示部50に出力される。
【0038】
指示部50は、第1指示信号を出力した後、n個の角速度センサ10の出力信号を受信すると、回転指示信号をモータ43に入力し、回転テーブル40の回転状態を調節する。回転指示信号とは、例えば、回転停止、第1速度での右回転、第2速度での右回転、第1速度での左回転、第2速度での左回転などの回転状態を指示する信号である。本実施形態では、上記した5つの回転状態を示す回転指示信号の内、4つの回転指示信号がモータ43に入力された状態それぞれで、第1指示信号が1度ずつ指示部50から出力される。したがって、4つの回転状態下それぞれにおけるn個の出力信号、すなわち、合計4n個の出力信号が測定され、これらが指示部50に記録される。なお、温度特性を測定する場合は、検査機構100周囲の温度を調整した状態で、第1指示信号が角速度センサ10に入力され、回転指示信号がモータ43に入力される。例えば、3つの温度状態に変化させる場合、合計で12n個の出力信号が測定される。
【0039】
次に、角速度センサ10の出力信号の測定と補正を図3及び図5に基づいて説明する。上記した5つの回転指示信号の内、残り1つの回転指示信号がモータ43に入力されている状態で、指示部50から第2指示信号が出力される。第2指示信号は、図5に示すように、開閉信号の後に、1周期分の間隔を空けて、n個の書換信号が並ぶ信号である。以下、説明を簡便とするために、上記した1周期分の間隔を間隔信号と示す。
【0040】
第2指示信号が第1制御部14に入力されると、第1復号部16は、第2指示信号に含まれる開閉信号を復号し、開閉信号を第1スイッチ13に出力する。1周期分の信号の復号には1周期分の時間を要するので、第1復号部16から第1スイッチ13に開閉信号が入力されるタイミングは、開閉信号に続く間隔信号が第1復号部16に入力されるタイミングとなる。この開閉信号が第1スイッチ13に入力されている間、第1スイッチ13が閉状態となり、第1センサ部11(第1処理部12)と共通配線73とが電気的に接続され、第1角速度センサ10の出力信号が指示部50に出力される。開閉信号が入力されている状態で、第1角速度センサ10の出力信号が指示部50に出力されることとなるが、この時点で、指示部50には、5つの回転状態下での第1角速度センサ10のセンサ出力が記録される。指示部50は、第1角速度センサ10の出力信号を受信している間(間隔信号を出力している間)に、今までに測定した5つのセンサ出力に基づいて、第1センサ部11の補正値(以下、第1補正値と示す)を算出する。そして、指示部50は、第1センサ部11(第1角速度センサ10)の認識情報と第1補正値とを含む第1書換信号を、間隔信号の後に出力する。第1復号部16は、第1書換信号が入力されると、第1書換信号を復号し、第1書換信号に含まれる第1補正値を第1記憶部15に出力することで、第1記憶部15に記憶された補正値を書き換える。図5に示すように、第1復号部16には、第1書換信号の他に、第2〜第n書換信号が順次入力されることとなるが、第1復号部16は、第1センサ部11(第1角速度センサ10)の認識情報を含む第1書換信号のみを復号し、他の書換信号を無視する。
【0041】
第1制御部14に入力した指示信号は、第1ラッチ17を介して第1連結配線72へと出力される。第1ラッチ17によって、指示信号は1周期分遅延されるので、第1連結配線72(第2制御部14)には、指示配線71に入力した第2指示信号よりも1周期分遅延した第2指示信号が入力される。したがって、図5に示すように、指示配線71(第1制御部14)に間隔信号が入力されている状態では、第1連結配線72(第2制御部14)に開閉信号が入力されていることとなる。1周期分の信号の復号には1周期分の時間を要するので、第2復号部16から第2スイッチ13に開閉信号が入力されるタイミングは、開閉信号に続く間隔信号が第2復号部16に入力されるタイミングとなる。このタイミングで、第2スイッチ13よりも前段及び後段に位置するスイッチ13が開状態となり、第2スイッチ13が閉状態となる。開閉信号が入力されている状態で、第2角速度センサ10の出力信号が指示部50に出力され、指示部50には、5つの回転状態下での第2角速度センサ10のセンサ出力が記録される。指示部50は、第2角速度センサ10の出力信号を受信している間(第1書換信号を出力している間)に、今までに測定した5つのセンサ出力に基づいて、第2センサ部11の補正値(以下、第2補正値と示す)を算出する。そして、指示部50は、第2センサ部11(第2角速度センサ10)の認識情報と第2補正値とを含む第2書換信号を、第1書換信号の後に出力する。第2復号部16は、第2書換信号が入力されると、第2書換信号を復号し、第2書換信号に含まれる第2補正値を第2記憶部15に出力することで、第2記憶部15に記憶された補正値を書き換える。第2復号部16には、第2書換信号以外の書換信号が入力されるが、第2復号部16は、第2書換信号のみを復号する。
【0042】
第2制御部14に入力した指示信号は、第2ラッチ17を介して第2連結配線72へと出力される。この場合、指示信号は、第3角速度センサ10よりも前段に位置する全てのラッチ17(2個のラッチ17)によって遅延されるので、第2連結配線72(第3制御部14)には、指示配線71に入力した第2指示信号よりも2周期分遅延した第2指示信号が入力される。したがって、図5に示すように、第1連結配線72(第2制御部14)に間隔信号が入力されている状態で、第2連結配線72(第3制御部14)に開閉信号が入力されていることとなる。1周期分の信号の復号には1周期分の時間を要するので、第3復号部16から第3スイッチ13に開閉信号が入力されるタイミングは、開閉信号に続く間隔信号が第3復号部16に入力されるタイミングとなる。このタイミングで、第3スイッチ13よりも前段及び後段に位置するスイッチ13が開状態となり、第3スイッチ13が閉状態となる。開閉信号が入力されている状態で、第3角速度センサ10の出力信号が指示部50に出力され、指示部50には、5つの回転状態下での第3角速度センサ10のセンサ出力が記録される。指示部50は、第3角速度センサ10の出力信号を受信している間(第2書換信号を出力している間)に、今までに測定した5つのセンサ出力に基づいて、第3センサ部11の補正値(以下、第3補正値と示す)を算出する。そして、指示部50は、第3センサ部11(第3角速度センサ10)の認識情報と第3補正値とを含む第3書換信号を、第2書換信号の後に出力する。第3復号部16は、第3書換信号が入力されると、第3書換信号を復号し、第3書換信号に含まれる第3補正値を第3記憶部15に出力することで、第3記憶部15に記憶された補正値を書き換える。第3復号部16には、第3書換信号以外の書換信号が入力されるが、第3復号部16は、第3書換信号のみを復号する。
【0043】
以上、示したように、第k連結配線72(第k+1制御部14)には、指示配線71に入力した第2指示信号よりもk周期分遅延した第2指示信号が入力される。また、1周期分の信号の復号には1周期分の時間を要するので、第k+1復号部16から第k+1スイッチ13に開閉信号が入力されるタイミングは、開閉信号に続く間隔信号が第k+1復号部16に入力されるタイミングとなる。このタイミングで、第k+1スイッチ13よりも前段及び後段に位置するスイッチ13が開状態、第k+1スイッチ13が閉状態となり、第k+1角速度センサ10の出力信号が指示部50に出力される。指示部50は、第k+1角速度センサ10の出力信号を受信している間(第k書換信号を送信している間)に、第k+1補正値を算出し、第k+1センサ部11の認識情報と第k+1補正値とを含む第k+1書換信号を、第k書換信号の後に出力する。第k+1復号部16は、第k+1書換信号を復号し、第k+1補正値を第k+1記憶部15に出力する。
【0044】
指示部50は、第2指示信号を出力し終えると、上記した5つの回転指示信号がモータ43に入力された状態それぞれにおいて、第1指示信号を出力する。これにより、補正が正常に終了したか否かをチェックして、検査と補正とを終了する。もちろん、補正が正常に終了していない場合、指示部50は、上記した全ての工程を始めからやり直す。以上が、検査機構100の検査・補正工程である。
【0045】
次に、本実施形態に係る検査機構100の作用効果を説明する。上記記載によれば、第kスイッチ13以外のスイッチ13が開状態のタイミングで、第kスイッチ13が閉状態となり、第kスイッチに開閉信号が入力されている間、第kセンサ部11と共通配線73とが電気的に接続され、その出力信号が指示部50に出力される。換言すれば、任意の1つのスイッチ13が閉状態となっているタイミングでは、他のスイッチ13は開状態となり、任意の1つのセンサ部11のみが共通配線73と電気的に接続され、その出力信号が指示部50に出力される。また、各スイッチ13の閉状態となるタイミングが異なるので、各角速度センサ10の出力信号が、共通配線73に順次出力され、指示部50に順次出力される。このように、本実施形態に係る検査機構100によれば、各角速度センサ10のセンサ部11を独立してスリップリング60に接続しなくとも、各角速度センサ10の出力信号を、指示部50に順次出力することができる。
【0046】
ところで、角速度センサ10とスリップリング60とを接続する信号配線70は、指示配線71と共通配線73の2つであり、指示部50とスリップリング60とを接続する信号配線70は、第1出力配線74と入力配線75の2つである。この信号配線の数は、回転テーブル40に設ける角速度センサ10が増加しても変わらない。したがって、マルチプレクサを回転テーブルに設けなくとも、回転テーブル40に設ける角速度センサ10の増加に伴って、スリップリング60に接続される配線数が増大することが抑制される。
【0047】
また、マルチプレクサが回転テーブルに設けられないので、マルチプレクサを定期的に点検・補修、若しくは取り替えなくともよくなり、コストが嵩むことが抑制される。
【0048】
更に言えば、回転テーブル40上には角速度センサ10のみが配置されるので、回転テーブル上に角速度センサだけではなくマルチプレクサが配置される構成とは異なり、回転テーブル40上の角速度センサ10の搭載面積が低減することが抑制される。
【0049】
また、本実施形態では、回転テーブル40上に角速度センサ10を搭載した状態で、角速度センサ10の出力信号を測定しつつ、補正することができるので、測定のみの構成と比べて、角速度センサ10の検査工程を簡素化することができ、コストが嵩むことを抑制することができる。
【0050】
本実施形態では、図3に示すように、復号部16とラッチ17とが電気的に接続され、復号部16を介して、指示信号がラッチ17に入力される例を示した。しかしながら、復号部16とラッチ17とが電気的に接続されておらず、指示配線71若しくは連結配線72がラッチ17に接続され、ラッチ17に直接指示信号が入力される構成を採用することもできる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を、図6〜図8に基づいて説明する。図6は、第2実施形態に係る検査機構の概略構成を示す回路図であり、第1実施形態に示した図2に対応している。図7は、図6に示す角速度センサを説明するための回路図であり、第1実施形態に示した図3に対応している。図8は、各角速度センサを伝播する指示信号を説明するためのタイミングチャートであり、第1実施形態に示した図4に対応している。なお、煩雑となることを避けるために、図7ではモータ43と第2出力配線76を省略している。
【0052】
第2実施形態に係る検査機構100は、第1実施形態によるものと共通するところが多いので、以下、共通部分については詳しい説明は省略し、異なる部分を重点的に説明する。なお、第1実施形態に示した要素と同一の要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0053】
第1実施形態では、角速度センサ10が記憶部15を有し、制御部14が復号部16とラッチ17とを有し、指示部50から指示信号としてシリアル信号が出力される例を示した。これに対し、本実施形態では、角速度センサ10は記憶部15を有さず、制御部14は遅延回路18,19とEXOR20とを有し、指示部50から指示信号として立ち上がりパルスが出力される点を特徴とする。
【0054】
第1遅延回路18は、指示信号を第1遅延時間t1遅延する機能を果たすものであり、第2遅延回路19は、指示信号を、第1遅延時間t1よりも短い時間である第2遅延時間t2遅延する機能を果たすものである。図7に示すように、第1角速度センサ10では、EXOR20の第1入力端子に第1遅延回路18が接続され、EXOR20の第2入力端子に第2遅延回路19が接続されている。また、第1連結配線72は、第1遅延回路18を介して指示配線71と電気的に接続されており、第1連結配線72には、第1遅延時間t1分だけ遅延した指示信号が入力されるようになっている。
【0055】
なお、第1角速度センサ10よりも後段の第k+1角速度センサ10の詳細は図示していないが、下記構成となる。すなわち、第k+1角速度センサ10においても、EXOR20の第1入力端子に第1遅延回路18が接続され、EXOR20の第2入力端子に第2遅延回路19が接続されており、第k+1連結配線72は、第1遅延回路18を介して指示配線71と電気的に接続されている。これにより、第k+1連結配線72には、k×t1分だけ遅延した指示信号が入力される。
【0056】
EXOR20は、2つの入力端子に入力される信号が共にHiレベル若しくはLoレベルの場合にLo信号を出力し、いずれか一方がHi(Lo)レベルの場合に、Hi信号を出力するものである。
【0057】
次に、本実施形態に係る検査機構100の検査工程を図7及び図8に基づいて説明する。以下においては、第1実施形態と同様にして、kを1以上の自然数として、第k角速度センサ10の構成要素に、「第k」を付与して表記する。また、第k角速度センサ10の制御部14(第k制御部14)と第k+1角速度センサ10の制御部14(第k+1制御部14)とを連結する連結配線72を、第k連結配線72と示す。更に、上記したナンバーリングによる混乱を避けるために、第1遅延回路18を単に遅延回路18、第2遅延回路19を単に遅延回路19と示し、「第k」を付与して表記する。
【0058】
指示部50から指示信号(立ち上がりパルス)が出力されると、指示信号は、指示配線71(第1制御部14)に入力され、第1角速度センサ10の遅延回路18,19によって遅延される。上記したように、遅延回路18は、遅延時間t1だけ指示信号を遅延し、遅延回路19は、遅延時間t2だけ指示信号を遅延する。したがって、図8に示すように、第1EXOR20の2つの入力端子それぞれには、先ず、時間t2だけLo信号が入力されることとなる。EXOR20は、2つの入力端子に入力される信号が共にLoレベルの場合にLo信号を出力するので、時間t2だけ第1EXOR20からLo信号が出力される。
【0059】
時間t2後、時間t1−t2だけ、第1EXOR20の第1入力端子にLo信号が入力され、第2入力端子にHi信号が入力される。EXOR20は、2つの入力端子のいずれか一方にHiレベル(Loレベル)の信号が入力される場合にHi信号を出力するので、第1EXOR20からはHi信号が出力される。このように、指示信号が入力され、第2遅延時間t2後に、第1遅延時間t1よりも短い時間である時間t1−t2の間、Hi信号が第1EXOR20から出力される。この時間帯に、第1スイッチ13が閉状態となり、第1センサ部11(第1処理部12)と共通配線73とが電気的に接続され、第1角速度センサ10の出力信号が指示部50に出力される。時間t1以降、第1EXOR20の2つの入力端子それぞれには、Hi信号が入力されることとなるが、EXOR20は、2つの入力端子に入力される信号が共にHiレベルの場合にLo信号を出力するので、第1EXOR20からはLo信号が出力され続けることとなる。なお、言うまでもないが、指示信号が入力されていない、第1角速度センサ10よりも後段に位置する各角速度センサ10のEXOR20からはLo信号が出力され続けており、第1スイッチ13が閉状態の時に、他のスイッチ13は開状態となっている。
【0060】
第1制御部14に入力した指示信号は、第1遅延回路18を介して第1連結配線72へと出力される。上記したように、遅延回路18は、指示信号を遅延時間t1だけ遅延するので、第1連結配線72には、指示配線71に入力した指示信号よりも遅延時間t1だけ遅延した指示信号が入力される。したがって、図8に示すように、第1EXOR20の2つの入力端子にHi信号が入力され、且つ、第2角速度センサ10よりも後段に位置する各角速度センサ10のEXOR20の2つの入力端子にLo信号が入力されているタイミングで、第2EXOR20の第1入力端子にLo信号が入力され、第2入力端子にHi信号が入力される。この時間帯では、第2角速度センサ10以外の各角速度センサ10のEXOR20からLo信号が出力され、第2EXOR20からHi信号が出力される。これにより、この時間帯において第2スイッチ13のみが閉状態となり、第2センサ部11と共通配線73とが電気的に接続され、第2角速度センサ10の出力信号が指示部50に出力される。
【0061】
第2制御部14に入力した指示信号は、第2遅延回路18を介して第2連結配線72へと出力される。指示信号は、第2連結配線72(第3角速度センサ10)よりも前段に位置する全ての遅延回路18(2個の遅延回路18)によって遅延されるので、第2連結配線72には、指示配線71に入力した指示信号よりも2×t1分遅延した指示信号が入力される。したがって、図8に示すように、第3角速度センサ10よりも前段及び後段に位置する各角速度センサ10のEXOR20からLo信号が出力されている時間帯に、第3EXOR20からHi信号が出力され、第3スイッチ13が閉状態となり、第3センサ部11の出力信号が指示部50に出力される。
【0062】
以上、示したように、指示信号は、第k連結配線72(第k+1角速度センサ10)よりも前段に位置する全ての遅延回路18(k個の遅延回路18)によって遅延されるので、第k連結配線72には、指示配線71に入力した指示信号よりもk×t1分遅延した指示信号が入力される。そして、第k+1角速度センサ10よりも前段及び後段に位置する各角速度センサ10のEXOR20からLo信号が出力されている時間帯に、第k+1EXOR20からHi信号が出力され、第k+1スイッチ13が閉状態となり、第k+1センサ部11の出力信号が指示部50に出力される。
【0063】
指示部50は、第1実施形態と同様にして、指示信号を出力した後、n個の角速度センサ10の出力信号を受信すると、回転指示信号をモータ43に入力し、回転テーブル40の回転状態を調節する。この場合、測定のみを行うので、第1実施形態に示した5つの回転指示信号がモータ43に入力された状態それぞれで、指示信号が指示部50から出力される。以上が、検査機構100の検査工程である。
【0064】
このように、本実施形態に係る検査機構100においても、任意の1つのスイッチ13が閉状態となっているタイミングでは、他のスイッチ13は開状態となり、任意の1つのセンサ部11のみが共通配線73と電気的に接続され、その出力信号が指示部50に出力される。そして、各角速度センサ10の出力信号が、共通配線73に順次出力され、指示部50に順次出力される。したがって、第1実施形態と同様にして、マルチプレクサを回転テーブルに設けなくとも、回転テーブル40に設ける角速度センサ10の増加に伴って、スリップリング60に接続される配線数が増大することが抑制される。
【0065】
また、図8に示すように、共通配線73に順次出力されるセンサ部11の出力信号の間隔が、第2遅延回路の遅延時間t2となる。したがって、共通配線73に順次出力されるセンサ部11の出力信号が連続的である場合と比べて、指示部50が、各センサ部11の出力信号を区別することが容易となる。
【0066】
本実施形態では、遅延部17が、遅延回路18,19を有する例を示した。しかしながら、遅延部17は、遅延回路18のみを有していても良い。この場合、スイッチ13は、遅延時間t1の間、閉状態となる。
【0067】
本実施形態では、制御部14は遅延回路18,19とEXOR20とを有し、指示部50から指示信号として立ち上がりパルスが出力される例を示した。しかしながら、図7の構成において、制御部14が遅延回路18のみを有し、指示部50から単パルスが出力される構成を採用することもできる。これにおいても、各角速度センサ10のスイッチ13が閉状態へと変化するタイミングは異なるので、各角速度センサ10の出力信号が、共通配線73に順次出力される。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0069】
各実施形態では、5つの回転指示信号がモータ43に入力される例を示した。しかしながら回転指示信号の数としては、上記例に限定されず、3つ以上であればよい。
【符号の説明】
【0070】
10・・・角速度センサ
11・・・センサ部
13・・・スイッチ
14・・・制御部
16・・・復号部
17・・・遅延部
30・・・検査装置
40・・・回転テーブル
50・・・指示部
60・・・スリップリング
71・・・指示配線
72・・・連結配線
73・・・共通配線
100・・・検査機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の角速度センサ(10)の出力を、検査装置(30)によって検査する検査機構であって、
前記検査装置(30)は、複数の前記角速度センサ(10)を搭載しつつ、自身が回転することで、前記角速度センサ(10)に角速度を印加する回転テーブル(40)と、該回転テーブル(40)から離れて配置され、前記角速度センサ(10)の出力信号を測定しつつ、角速度センサ(10)の動作を指示する指示部(50)と、前記角速度センサ(10)と前記指示部(50)とを電気的に中継するスリップリング(60)と、を有し、
前記角速度センサ(10)は、センサ部(11)と、該センサ部(11)と前記指示部(50)との電気的な接続を制御するためのスイッチ(13)と、該スイッチ(13)の開閉を制御する制御部(14)と、を有し、
各角速度センサ(10)のセンサ部(11)が、対応する前記スイッチ(13)を介して、1つの共通配線(73)によって互いに連結され、
前記共通配線(73)は、前記スリップリング(60)を介して前記指示部(50)の入力端子(52)と接続される入力配線(75)と電気的に接続され、
1つの前記角速度センサ(10)の制御部(14)は、指示配線(71)と前記スリップリング(60)とを介して前記指示部(50)の出力端子(51)と接続される出力配線(74)と電気的に接続され、
各角速度センサ(10)の制御部(14)は、連結配線(72)によって数珠つながりに連結されており、
前記制御部(14)は、前記指示部(50)から出力される指示信号を遅延する遅延部(17)を有し、
前記指示信号は、前記遅延部(17)を介して、後段に位置する角速度センサ(10)の制御部(14)に入力され、
前記制御部(14)は、前記指示信号が入力されると、前記遅延部(17)が遅延する遅延時間以下の間、前記スイッチ(13)を閉状態とすることを特徴とする検査機構。
【請求項2】
前記指示信号は、1周期に複数のビットを送信するシリアル信号であり、
前記遅延部(17)は、前記指示信号を、1周期分遅延するラッチ(17)であることを特徴とする請求項1に記載の検査機構。
【請求項3】
前記角速度センサ(10)は、補正値を記憶する記憶部(15)を有し、
前記制御部(14)は、前記指示信号を復号する復号部(16)を有し、
前記指示信号は、前記スイッチ(13)の開閉を指示する開閉信号と、前記記憶部(15)に記憶された補正値の書き換えを指示する書換信号が来ない旨を伝える報知信号とを含む第1指示信号、及び、前記開閉信号と、前記センサ部の認識情報を含む書換信号とを含む第2指示信号を有し、
前記角速度センサ(10)の出力信号を測定する場合には、前記第1指示信号が前記指示部(50)から出力され、前記角速度センサ(10)の出力信号を測定しつつ補正する場合には、前記第2指示信号が前記指示部(50)から出力され、
前記復号部(16)は、前記第1指示信号が入力されると、前記開閉信号を前記スイッチ(13)に出力し、前記第2指示信号が入力されると、前記開閉信号を前記スイッチ(13)に出力した後に、自身のセンサ部(11)の認識情報を含む書換信号を前記記憶部(15)に出力することを特徴とする請求項2に記載の検査機構。
【請求項4】
前記指示信号は、立ち上がりパルスであり、
前記制御部(14)は、EXOR(20)を有し、
前記遅延部(17)は、第1遅延回路(18)を有し、
前記EXOR(20)の第1入力端子に、前記第1遅延回路(18)を介して、前記指示配線(71)若しくは前記連結配線(72)が接続され、
前記EXOR(20)の第2入力端子に、前記指示配線(71)若しくは前記連結配線(72)が接続され、
前記指示信号が、前記第1遅延回路(18)を介して、後段に位置する角速度センサ(10)の制御部(14)に入力されることを特徴とする請求項1に記載の検査機構。
【請求項5】
前記遅延部(17)は、前記第1遅延回路(18)よりも、遅延時間が短い第2遅延回路(19)を有し、
前記EXOR(20)の第2入力端子に、前記第2遅延回路(19)を介して、前記指示配線(71)若しくは前記連結配線(72)が接続されることを特徴とする請求項4に記載の検査機構。
【請求項6】
前記回転テーブル(40)の回転方向及び回転速度は、前記指示部(50)によって制御されることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の検査機構
【請求項7】
前記角速度センサ(10)は、前記センサ部(11)の出力信号を処理する処理部(12)を有することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の検査機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−154848(P2012−154848A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15418(P2011−15418)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】