検査用器具および検査用デバイス
【課題】本発明は、トランジスタを用いたバイオセンサ等の検査用デバイスにおいて効率的な測定を可能とする検査用器具および検査用デバイスを提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部を有し、電解液を収容し得る、少なくとも1個の電解液用収容部と、底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部を有し、被検査液を収容し得る、少なくとも1個の検査用収容部とを有することを特徴とする検査用器具を提供することにより、上記目的を達成する。
【解決手段】本発明は、底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部を有し、電解液を収容し得る、少なくとも1個の電解液用収容部と、底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部を有し、被検査液を収容し得る、少なくとも1個の検査用収容部とを有することを特徴とする検査用器具を提供することにより、上記目的を達成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタを用いた検査用デバイスおよびそれに用いられる検査用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、疾患の診断、薬物代謝に関する個人差の検出、または、食品若しくは環境モニタ等の目的で、DNA、糖鎖、たんぱく質等の生体関連物質の検査をするための種々の方法が開発されており、特に、電気的な信号によって生体分子を検出するバイオセンサの研究が進んでいる。最近では、電気的な信号の転換が速く、集積回路とMEMSの接続が容易であるという観点から、電界効果トランジスタ(FET)を使用して生物学的な反応を検出するバイオセンサについて多くの研究が為されている。
【0003】
従来、FETを用いたバイオセンサは、MOSFETからゲート電極を除去し、絶縁層上にイオン感応層を被着した構造を有しており、ISFETと呼ばれている。そして、イオン感応層上に酸化還元酵素、各種タンパク質、DNA、抗原または抗体等を配置することによって、各種バイオセンサとして機能するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、バイオセンサに用いられるFETは、シリコン基板の表面にソース電極、ドレイン電極およびゲート絶縁層を形成し、ソース電極とドレイン電極間のゲート絶縁層表面に金属電極を有している。この金属電極の表面には、DNAプローブとアルカンチオールが配置されている。実際に測定を行う場合には、金属電極と、金属電極の表面上に配置されたDNAプローブおよびアルカンチオールと、参照電極とが測定セル内の反応溶液中に配置されるようになっており、参照電極を介して高周波電圧が印加されると、反応溶液中に含まれるターゲットDNAとDNAプローブとの結合の前後で変化する絶縁ゲート電界効果トランジスタの電気特性変化、すなわち、ソース電極とドレイン電極との間を流れる電流値の変化を検出することにより、反応溶液中に含まれるターゲットDNAの伸長の有無を検出することができるようになっている。
【0005】
従来、トランジスタを用いたバイオセンサにおいては、電気特性の変化を検出する際に、酸化還元酵素、各種タンパク質、DNA、抗原または抗体等のサンプルを含む被検査液に、電極および電解液を内包する参照電極構造体を挿入することで、参照電極構造体を介して被検査液に電圧を印加している。そのため、例えばマイクロプレート等を用いて多サンプルの検査を行う場合には、サンプル毎に参照電極構造体が必要であり、検査プロセスに手間がかかり、効率が悪いという問題があった。
【0006】
一方、バイオセンサに用いられるトランジスタにおいては、参照電極構造体を用いる他に、参照電極をバイオセンサに作り込むことも提案されている。
例えば特許文献2においては、複数個のウェルに共通する参照電極を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−108160号公報
【特許文献2】特表2003−532116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載のバイオセンサにおいては、参照電極が形成された第2ウェルにも細胞等のサンプルが注入された第1ウェルと同じ培養液を注入し、第1ウェルおよび第2ウェル間の切り欠き等により第1ウェルおよび第2ウェルの液体間には電気化学的連続性が確立されている。そのため、単一の第2ウェルに対して複数の第1ウェルを設ける場合には、単一の第2ウェルと複数の第1ウェルとで液体間に電気化学的連続性が確立されるように第1ウェルおよび第2ウェル間に切り欠き部等を形成する必要があり、また測定の際にはすべてのウェルに同じ培養液を注入する必要がある。したがって、異なる培養液を用いた測定は実質上不可能である。また、細胞電位やイオン電位を測定する際には、別途、電極および電解液を内包する参照電極構造体を用いる必要がある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、トランジスタを用いたバイオセンサ等の検査用デバイスにおいて効率的な測定を可能とする検査用器具および検査用デバイスを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部を有し、電解液を収容し得る、少なくとも1個の電解液用収容部と、底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部を有し、被検査液を収容し得る、少なくとも1個の検査用収容部とを有することを特徴とする検査用器具を提供する。
【0011】
本発明においては、検査用収容部とは別に電解液用収容部が設けられているので、本発明の検査用器具を検査用デバイスに用いた場合には、プラスとマイナスのイオンを一定に保つことができ、安定的にイオンの変化を電気信号に変えることが可能となる。また本発明においては、検査用収容部が複数個設けられている場合には、本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する際に、電解液用収容部の参照電極用開口部に配置される参照電極と検査用収容部の参照電極用開口部に配置される参照電極とが電気的に接続されていれば、同時に複数の検査が可能となり、効率的な測定が可能である。また、本発明の検査用器具は電解液用収容部および検査用収容部を有していればよく、電解液用収容部を検査用収容部の近傍に配置することができるので、本発明の検査用器具を検査用デバイスに用いた場合には、電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に配置される参照電極の長さを短くすることができ、ノイズの影響を極力低減することが可能である。
【0012】
上記発明においては、底面にトランジスタ基板を配置し得るトランジスタ基板配置用凹部が形成され、上記トランジスタ基板配置用凹部の深さが配置される上記トランジスタ基板の厚さ以上であることが好ましい。本発明の検査用器具のトランジスタ基板配置用凹部にトランジスタ基板を配置して検査用デバイスを作製した場合には、トランジスタ基板配置用凹部の深さがトランジスタ基板の厚さ以上であることで、トランジスタ基板配置用凹部内にトランジスタ基板を埋め込むことができ、安定的な測定が可能となる。また、検査用デバイスが緩衝材となり、検査用デバイスによってトランジスタ基板を保護することができる。
【0013】
また本発明においては、複数個の上記検査用収容部を有し、上記検査用収容部の1列毎に上記電解液用収容部が1個形成されていることが好ましい。本発明の検査用器具を用いた検査用デバイスにおいて、アクティブマトリクス駆動の測定が可能となり、より効率的な測定が可能となるからである。また、トランジスタへのバイアスストレスを低減することができるからである。
【0014】
また本発明は、基板と、上記基板上に形成された少なくとも1個のトランジスタと、上記トランジスタを覆うように形成された層間絶縁層と、上記層間絶縁層上に形成された参照電極および外部電極と、上記層間絶縁層上に形成されたイオン感応層とを有するトランジスタ基板、および、上記トランジスタ基板の上記イオン感応層、上記参照電極および上記外部電極上に配置された上述の検査用器具を備え、上記イオン感応層が少なくとも上記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置され、上記参照電極が上記検査用器具の電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に配置され、上記外部電極が上記検査用器具の電解液用収容部の外部電極用開口部に配置されていることを特徴とする検査用デバイスを提供する。
【0015】
本発明においては、上述の検査用器具を用いるので、イオンの変化を効率的に電気信号に変換することが可能となる。また、検査用収容部が複数個設けられている場合には、電解液用収容部の参照電極用開口部に配置される参照電極と検査用収容部の参照電極用開口部に配置される参照電極とが電気的に接続されていれば、同測定条件で同時に複数の検査が可能となり、効率的な測定が可能である。
【0016】
上記発明においては、上記基板が透明基板であることが好ましい。基板が透明基板であれば、イオン感応層上の試料の電気特性の測定とともに、倒立型の透過型顕微鏡等の観察機器によってイオン感応層上の試料を観察することができるからである。
【0017】
上記発明においては、上記トランジスタが、上記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていてもよい。この場合には、本発明の検査用デバイスの集積度を高めることができる。
【0018】
上記の場合、上記トランジスタが酸化物半導体層を有することが好ましい。酸化物半導体は透明性を有するものとすることができるので、イオン感応層上の試料の電気特性の測定とともに、倒立型の透過型顕微鏡等の観察機器によってイオン感応層上の試料を観察することができるからである。
【0019】
また上記発明においては、上記トランジスタが、上記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部には配置されておらず、上記層間絶縁層上に検知用電極が形成されており、上記検知用電極が上記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていることが好ましい。トランジスタが検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていない場合には、トランジスタの透明性の有無にかかわらず、イオン感応層上の試料を倒立型の透過型顕微鏡等の観察機器によって観察することが可能となる。したがって、本発明の検査用デバイスの用途等にかかわらず、トランジスタを構成する部材に用いられる材料が制約されないという利点を有する。また、トランジスタに対する培養液、細胞、薬品等が含まれる被検査液の影響を極力減らすことが可能となる。
【0020】
上記の場合、上記検知用電極が透明電極であることが好ましい。検知用電極が透明電極であれば、イオン感応層上の試料の電気特性の測定とともに、倒立型の透過型顕微鏡等の観察機器によってイオン感応層上の試料を観察することができるからである。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、検査用器具が所定の開口部を有する電解液用収容部および検査用収容部を有するので、効率的な測定が可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の検査用器具の一例を示す概略平面図および断面図である。
【図2】本発明の検査用デバイスの一例を示す概略平面図および断面図である。
【図3】本発明の検査用デバイスの動作原理を説明するための模式図である。
【図4】本発明の検査用器具の他の例を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の検査用器具の他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図6】本発明の検査用器具の他の例を示す概略平面図である。
【図7】本発明の検査用器具の他の例を示す概略平面図である。
【図8】本発明の検査用器具の他の例を示す概略平面図である。
【図9】本発明の検査用器具の他の例を示す概略平面図である。
【図10】本発明の検査用器具の他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図12】本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図である。
【図13】本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図14】本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図15】本発明の検査用デバイスにおける検査用器具およびトランジスタ基板のアライメントマークの一例を示す模式図である。
【図16】本発明の検査用デバイスにおける検査用器具およびトランジスタ基板のアライメントマークの他の例を示す模式図である。
【図17】本発明の検査用デバイスを用いた測定方法の一例を示す模式図である。
【図18】本発明の検査用デバイスを用いた測定方法の他の例を示す模式図である。
【図19】実施例の検査用デバイスにおけるトランジスタのトラスファー特性を示すグラフである。
【図20】実施例の検査用デバイスにおけるトランジスタのトラスファー特性を示すグラフである。
【図21】実施例の検査用デバイスにおけるトランジスタのトラスファー特性を示すグラフである。
【図22】実施例の検査用デバイスにおけるHeLa細胞の倒立型顕微鏡写真および正立型顕微鏡写真である。
【図23】実施例の検査用デバイスにおけるHeLa細胞の顕微鏡写真である。
【図24】実施例の検査用デバイスにおけるHeLa細胞のアポトーシス試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の検査用器具および検査用デバイスについて詳細に説明する。
【0024】
A.検査用器具
本発明の検査用器具は、底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部を有し、電解液を収容し得る、少なくとも1個の電解液用収容部と、底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部を有し、被検査液を収容し得る、少なくとも1個の検査用収容部とを有することを特徴とするものである。
【0025】
まず、本発明の検査用器具について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)、(b)は本発明の検査用器具の一例を示す概略平面図および断面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。
図1(a)、(b)に例示するように、検査用器具1は、底面11に外部電極用開口部h1および参照電極用開口部h2を有し、電解液を収容し得る電解液用収容部3と、底面12に参照電極用開口部h3および信号取出用開口部h4を有し、被検査液を収容し得る検査用収容部4とを有している。
【0026】
図2(a)、(b)は本発明の検査用器具を備える検査用デバイスの一例を示す概略平面図および断面図であり、薄膜トランジスタを用いた検査用デバイスの例であり、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図である。
図2(a)、(b)に例示するように、検査用デバイス10は、トランジスタ基板30と、トランジスタ基板30上に配置された検査用器具1とを備えている。
トランジスタ基板30は、基板21と、基板21上に形成されたトランジスタ20と、トランジスタ20を覆うように形成された層間絶縁層27と、層間絶縁層27上に形成された検知用電極28と、層間絶縁層27上に形成されたイオン感応層29と、イオン感応層29上に形成された参照電極31および外部電極32とを有している。トランジスタ20は、基板21上に形成されたゲート電極22と、ゲート電極22を覆うように形成されたゲート絶縁層23と、ゲート絶縁層23上に形成された半導体層24と、半導体層24上に形成されたソース電極25およびドレイン電極26とを有している。トランジスタ20のゲート電極22と検知用電極28とは電気的に接続されている。
検査用器具1は、底面に外部電極用開口部h1および参照電極用開口部h2を有し、電解液を収容し得る電解液用収容部3と、底面に参照電極用開口部h3および信号取出用開口部h4を有し、被検査液を収容し得る検査用収容部4と、電解液用収容部3および検査用収容部4の底面に配置された接着層5とを有している。
検査用器具1は、接着層5を介して、トランジスタ基板30のイオン感応層29、参照電極31および外部電極32上に配置されており、イオン感応層29が検査用器具1の検査用収容部4の信号取出用開口部h4に配置され、参照電極31が検査用器具1の電解液用収容部3の参照電極用開口部h2および検査用収容部4の参照電極用開口部h4に配置され、外部電極32が検査用器具1の電解液用収容部3の外部電極用開口部h1に配置されている。
【0027】
次に、図3を参照して本発明の検査用器具を備える検査用デバイスの動作原理について説明する。なお、図3に示す検査用デバイスは図2(a)、(b)に示す検査用デバイスと同様である。
図3に例示するように、検査用器具において、電解液用収容部3にはKCl溶液等の電解液51が収容され、検査用収容部4には細胞、DNA、糖鎖、タンパク質等の生体関連物質等の試料を含む被検査液52が収容されている。
検査用収容部4では、信号取出用開口部h4にイオン感応層29が配置されているので、イオン感応層29上に被検査液52を付与することができるようになっている。
また、電解液用収容部3では、外部電極用開口部h1に外部電極32が配置され、参照電極用開口部h2に参照電極31が配置され、また検査用収容部4では、参照電極用開口部h3に参照電極31が配置されているので、外部電極32に電圧を印加すると、外部電極32と電解液51と参照電極31とを介して、被検査液52に電圧が印加されることとなる。
したがって、ソース電極25およびドレイン電極26間に所定の電圧VDSを印加しつつ、外部電極32と電解液51と参照電極31とを介して可変電圧VGを被検査液52に印加すると、イオン感応層29に生ずる電位の変化に応じて、半導体層24に形成されるチャネル領域が変化し、ドレイン電流IDの変化を検出することができる。その結果、例えば、可変電圧VGに基づくドレイン電流IDの変化、すなわち電流−電圧特性を、予め測定した試料における電流−電圧特性と比較することによって、被検査液52に含まれる試料の種別を特定することができるようになっている。
【0028】
従来では、イオン感応層上に被検査液を滞留させた後に電極や電解液を内包する参照電極構造体を被検査液に挿入することで参照電極構造体を介して被検査液に電圧を印加していたが、本発明によれば、参照電極を予め備える所定のトランジスタ基板上に所定の位置で検査用器具を配置することにより、参照電極構造体を挿入することなく、トランジスタ基板に形成された参照電極を介して被検査液に電圧を印加することができるので、検査プロセスを簡易化することができる。
また、本発明の検査用器具においては、電解液用収容部の底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部が設けられ、検査用収容部の底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部が設けられているので、本発明の検査用器具と所定のトランジスタ基板とを用いて検査用デバイスを組み立てる際には、所定の位置で本発明の検査用器具と所定のトランジスタ基板とを配置するだけでよく、参照電極との接続に関して効率良く取り付けることが可能である。
【0029】
また本発明においては、従来のように電極や電解液を内包する参照電極構造体を被検査液に挿入するのではなく、電解液用収容部を設け、この電解液用収容部に電解液を収容するので、プラスとマイナスのイオンを一定に保つことが可能となり、安定的にイオンの変化を電気信号に変えることが可能となる。
【0030】
さらに、本発明の検査用器具は電解液用収容部と検査用収容部とを有していればよいので、電解液用収容部を検査用収容部の近傍に配置することが可能であり、これにより参照電極の長さを極力短くすることができ、ノイズの影響を極力低減することが可能となる。
【0031】
図4は本発明の検査用器具の他の例を示す概略斜視図である。図4に示す例において、検査用器具1は、1個の電解液用収容部3と3個の検査用収容部4とを有しており、1個の電解液用収容部3に対して複数個の検査用収容部4が形成されている。
図4に例示するような検査用器具を備える検査用デバイスにおいては、1個の電解液用収容部3の参照電極用開口部h2に配置される参照電極と、3個の検査用収容部4の各参照電極用開口部h3に配置される参照電極とが電気的に接続されていることで、1個の電解液用収容部3で3個の検査用収容部4に収容される被検査液を検査することが可能である。
【0032】
このように本発明においては、検査用収容部とは別に電解液用収容部が設けられていることにより、1個の参照電極で複数個の検査用収容部にそれぞれ収容される被検査液を検査することが可能である。
従来のように参照電極構造体を被検査液に挿入する場合には、被検査液毎に参照電極構造体が必要であったが、本発明においては検査用収容部毎に電解液用収容部を設ける必要はなく、効率的な測定が可能である。
【0033】
以下、本発明の検査用器具における各構成ついて説明する。
【0034】
1.電解液用収容部
本発明における電解液用収容部は、底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部を有するものである。本発明の検査用器具は、少なくとも1個の電解液用収容部を有している。
なお、底面とは、電解液の注入口とは反対側の面をいい、本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する際にトランジスタ基板が配置される面である。
【0035】
外部電極用開口部および参照電極用開口部の配置、大きさ、形状等としては、本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する際に、外部電極用開口部に外部電極を配置することができ、また参照電極用開口部に参照電極を配置することができれば特に限定されるものではなく、任意の配置、大きさ、形状等とすることができる。
また、電解液用収容部の大きさ、形状は、後述の検査用収容部の大きさ、形状と同じであってもよく異なっていてもよい。
【0036】
外部電極用開口部および参照電極用開口部としては、図1(a)、(b)に例示するように外部電極用開口部h1および参照電極用開口部h2が別々に形成されていてもよく、図5(a)、(b)に例示するように外部電極用開口部h1および参照電極用開口部h2が一体として形成されていてもよい。なお、「一体として」とは、外部電極用開口部および参照電極用開口部が単一の開口部として形成されていることを意味する。
ここで、図5(a)、(b)は本発明の検査用器具の他の例を示す概略平面図および断面図であり、図5(b)は図5(a)のC−C線断面図である。
【0037】
電解液用収容部の高さとしては、電解液を収容可能な高さであれば特に限定されるものではなく、任意の高さとすることができる。
また、外部電極用開口部および参照電極用開口部の厚みとしては、本発明の検査用器具を備える検査用デバイスにおいて、電解液用収容部内に電解液を収容可能であれば特に限定されるものではなく、任意の厚みとすることができる。
【0038】
電解液用収容部に用いられる材料としては、本発明の検査用器具を備える検査用デバイスにおいて、電解液用収容部外に電解液を漏出させないものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、ガラス、樹脂等が挙げられる。
樹脂は、耐化学薬品性、透明性、成型性、剛性等を有するものであることが好ましく、要求特性に応じて適宜選択される。具体的には、ポリスチレン、白色ポリスチレン、三井化学株式会社製のバレックス等のポリアクリロニトリル、ナチュラルポリプロピレン、ガラス入ポリプロピレン、GEヘルスケアジャパン株式会社製のマルチケム等のフッ素樹脂、シリコンゴム等が挙げられる。ポリスチレンは、硬質で成型が容易なためマイクロプレートの材質として汎用されているとともに、ガラスに準ずる透明度があり電解液用収容部や後述の検査用収容部の収容部の中身が確認しやすく、サンプル調製や吸光度測定に適している。白色ポリスチレンは、収容部間のシグナルクロストークが起きにくくなるため、化学発光測定などのアプリケーションに適している。三井化学株式会社製のバレックスは、白色不透明で耐化学薬品性があるため、液体シンチレーション測定等に適している。ナチュラルポリプロピレンは、耐化学薬品性に優れタンパク質等の分子の吸着が少なく、またポリスチレンに比べ割れにくく、有機溶媒性サンプルの調製やリキッドハンドリングシステムのリザーバに用いられる。ガラス入ポリプロピレンは、ポリプロピレンにガラス繊維を加えて剛性を高めている。GEヘルスケアジャパン株式会社製のマルチケムは、フッ素ポリマー製で耐化学薬品性が極めて高く、また分子が吸着しにくいためサンプルの保存に適している。
【0039】
電解液用収容部は、透明性を有していてもよく、または不透明であってもよい。
電解液用収容部の形状としては特に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
電解液用収容部の数としては、1個以上であればよく、本発明の検査用器具の用途等に応じて適宜選択される。
【0040】
また、電解液用収容部の配置としては、本発明の検査用器具が少なくとも1個の電解液用収容部を有していればよく、特に限定されるものではない。
例えば、図1(a)、(b)に示すように、1個の電解液用収容部3に対して1個の検査用収容部4が形成されていてもよく、図4および図6〜図9に示すように1個の電解液用収容部3に対して複数個の検査用収容部4が形成されていてもよい。
図6においては、検査用器具1が、規則的に配列された複数個の電解液用収容部3および複数個の検査用収容部4を有しており、検査用収容部4の1列毎に電解液用収容部3が1個形成されている。図6に示す例においては、端一列に電解液用収容部3が設けられているが、図示しないが真ん中一列に電解液用収容部が設けられていてもよい。図6に例示するように、検査用収容部の1列毎に電解液用収容部が1個形成されている場合には、アクティブマトリクス駆動の測定が可能となり、より効率的な測定が可能である。また、本発明の検査用器具を用いた検査用デバイスにおいて、トランジスタへのバイアスストレスを低減することができる。
図7においては、検査用器具1が、規則的に配列された1個の電解液用収容部3および複数個の検査用収容部4を有しており、複数個の検査用収容部4に対して電解液用収容部3が1個のみ形成されている。図7に示す例においては、端に電解液用収容部3が設けられているが、図示しないが真ん中に電解液用収容部が設けられていてもよい。
図8および図9においては、検査用器具1が、電解液の注入口の平面視形状が矩形である1個の電解液用収容部3と、規則的に配列され、被検査液の注入口の平面視形状が円形である複数個の検査用収容部4とを有しており、複数個の検査用収容部4に対して電解液用収容部3が1個のみ形成されている。図8においては、端に電解液用収容部3が設けられており、図9においては、真ん中に電解液用収容部3が設けられている。
このように電解液用収容部の配置としては、任意の配置とすることができる。
【0041】
電解液用収容部の形成方法としては、材料に応じて適宜選択される。例えば樹脂を用いる場合には、金型を用いる方法等が挙げられる。
【0042】
2.検査用収容部
本発明における検査用収容部は、底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部を有し、被検査液を収容し得るものである。本発明の検査用器具は、少なくとも1個の検査用収容部を有している。
なお、底面とは、被検査液の注入口とは反対側の面をいい、本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する際にトランジスタ基板が配置される面である。
【0043】
参照電極用開口部および信号取出用開口部の配置、大きさ、形状等としては、本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する際に、参照電極用開口部に参照電極を配置することができ、また信号取出用開口部にイオン感応層を配置することができれば特に限定されるものではなく、任意の配置、大きさ、形状等とすることができる。
【0044】
検査用収容部の高さとしては、被検査液を収容可能な高さであれば特に限定されるものではなく、任意の高さとすることができる。
また、参照電極用開口部および信号取出用開口部の厚みとしては、本発明の検査用器具を備える検査用デバイスにおいて、検査用収容部内に被検査液を収容可能であれば特に限定されるものではなく、任意の厚みとすることができる。
【0045】
検査用収容部に用いられる材料としては、本発明の検査用器具を備える検査用デバイスにおいて、検査用収容部外に被検査液を漏出させないものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、ガラス、樹脂等が挙げられる。
なお、樹脂については、上記電解液用収容部に用いられる樹脂と同様である。
【0046】
検査用収容部は、透明性を有していてもよく、または不透明であってもよい。
検査用収容部の形状としては特に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
検査用収容部の数としては、1個以上であればよく、本発明の検査用器具の用途等に応じて適宜選択される。
【0047】
また、検査用収容部の配置としては、本発明の検査用器具が少なくとも1個の検査用収容部を有していればよく、特に限定されるものではない。
なお、検査用収容部の配置の例については、上記電解液用収容部の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
検査用収容部の配置としては、任意の配置とすることができる。
【0048】
検査用収容部の形成方法としては、材料に応じて適宜選択される。例えば樹脂を用いる場合には、金型を用いる方法等が挙げられる。
【0049】
通常、電解液用収容部および検査用収容部は一体として形成されている。なお、「一体として」とは、電解液用収容部および検査用収容部が単一の部材として形成されていることを意味する。
【0050】
3.トランジスタ基板配置用凹部
本発明においては、図10に例示するように、検査用器具1の底面13にトランジスタ基板を配置し得るトランジスタ基板配置用凹部15が形成されていることが好ましい。これにより、本発明の検査用器具を備える検査用デバイスにおいては、例えば図11(b)に示すように、検査用器具1の底面に形成されたトランジスタ基板配置用凹部15に、トランジスタ基板30を埋め込むことが可能となる。
【0051】
この場合、トランジスタ基板配置用凹部の深さは、トランジスタ基板の厚さ以上であることが好ましい。トランジスタ基板配置用凹部の深さがトランジスタ基板の厚さと同程度である場合には、検査用デバイスの底面を平坦にすることができ、安定的な測定が可能になる。また、トランジスタ基板配置用凹部の深さがトランジスタ基板の厚さよりも大きい場合には、検査用デバイスを例えば台の上に設置した際にトランジスタ基板は台に触れなくなるので、より安定的に測定することが可能となる。さらには、検査用器具が緩衝材となり、検査用器具でトランジスタ基板を保護することができる。
中でも、トランジスタ基板配置用凹部の深さは、トランジスタ基板の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0052】
トランジスタ基板配置用凹部の深さとしては、トランジスタ基板の厚さ以上であれば特に限定されるものではなく、配置されるトランジスタ基板の厚さに応じて適宜調整される。具体的には、トランジスタ基板配置用凹部の深さとトランジスタ基板の厚さとの差は、0mm〜3mmの範囲内であることが好ましい。トランジスタ基板配置用凹部の深さが、トランジスタ基板の厚さに対して過剰に大きいと、トランジスタ基板をトランジスタ基板配置用凹部に配置することが困難となったり、検査用デバイスの安定性が損なわれたりする場合がある。
【0053】
トランジスタ基板配置用凹部の配置、大きさ、形状等としては、配置されるトランジスタ基板に応じて適宜選択される。
【0054】
トランジスタ基板配置用凹部に用いられる材料としては、例えば、ガラス、樹脂等が挙げられる。
なお、樹脂については、上記電解液用収容部に用いられる樹脂と同様である。
【0055】
トランジスタ基板配置用凹部の形成方法としては、材料に応じて適宜選択される。例えば樹脂を用いる場合には、金型を用いる方法等が挙げられる。
通常、電解液用収容部と検査用収容部とトランジスタ基板配置用凹部とは一体として形成されている。なお、「一体として」とは、電解液用収容部と検査用収容部とトランジスタ基板配置用凹部とが単一の部材として形成されていることを意味する。
【0056】
4.接着層
本発明においては、図5に例示するように、電解液用収容部3および検査用収容部4の底面11、12に接着層が配置されていてもよい。本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する際に、接着層によって検査用器具およびトランジスタ基板を貼り合わせることができる。
【0057】
接着層に用いられる材料としては、本発明の検査用器具およびトランジスタ基板を接着することができ、また電解液および被検査液を漏出させないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂が好ましく用いられる。
【0058】
また、接着層は再剥離可能であることが好ましい。本発明の検査用器具を用いた検査用デバイスにおいて、容易に検査用器具を取り換えることができるからである。また、本発明の検査用器具が取り外し可能となり、再利用も可能となるからである。
ここで、「再剥離可能」とは、検査用器具とトランジスタ基板とを接着した後、剥離した場合に、検査用器具およびトランジスタ基板が破損することなく剥離することができることをいう。
このような再剥離可能な接着層に用いられる材料としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム系樹脂等を挙げることができる。
【0059】
接着層の膜厚としては、本発明の検査用器具およびトランジスタ基板を接着することができ、また電解液および被検査液を漏出させなければ特に限定されるものではなく、適宜調整される。
【0060】
接着層の形成方法としては、電解液用収容部および検査用収容部の底面に接着層を配置することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記材料を塗布する方法、接着シートを貼付する方法等が挙げられる。
【0061】
接着層は、検査用器具に形成されていてもよく、トランジスタ基板に形成されていてもよいが、接着層形成によるトランジスタへの影響を低減する観点から、検査用器具に形成されていることが好ましい。
【0062】
5.アライメントマーク
本発明の検査用器具には、アライメントマークが形成されていることが好ましい。本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する場合、電解液用収容部の外部電極用開口部に外部電極を配置し、電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に参照電極を配置し、検査用収容部の信号取出用開口部にイオン感応層を配置する際に、検査用器具がアライメントマークを有することにより、確実に位置合せを行うことができるからである。
なお、アライメントマークについては、後述の「B.検査用デバイス」の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。
【0063】
6.参照電極
本発明においては、電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に参照電極が配置されるように、電解液用収容部および検査用収容部の底面に参照電極が形成されていてもよい。
【0064】
参照電極としては、電極として機能するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、Al等の一般的な金属電極に加え、ITO、IZO、ZnO等の透明電極も使用することができる。
【0065】
参照電極は、透明性を有していてもよく、または不透明であってもよい。
参照電極の厚みは、通常、50nm〜10μmの範囲内とされる。
【0066】
参照電極の形成方法としては、電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に参照電極が配置されるように、電解液用収容部および検査用収容部の底面に参照電極を形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂基板と電極層との積層体を用い、電極層をパターニングすることにより、参照電極を形成する方法や、スパッタ法、蒸着法等を挙げることができる。
【0067】
7.外部電極
本発明においては、電解液用収容部の外部電極用開口部に外部電極が配置されるように、電解液用収容部の底面に外部電極が形成されていてもよい。電解液用収容部の底面に上記参照電極が形成されている場合には、外部電極および参照電極は導通しないように配置される。
【0068】
外部電極としては、電極として機能するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、Al、Pt、Au等の一般的な金属電極に加え、ITO、IZO、ZnO等の透明電極も使用することができる。
【0069】
外部電極は、透明性を有していてもよく、または不透明であってもよい。
外部電極の厚みは、通常、50nm〜10μmの範囲内とされる。
【0070】
外部電極の形成方法としては、電解液用収容部の外部電極用開口部に外部電極が配置されるように、電解液用収容部の底面に外部電極を形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂基板と電極層との積層体を用い、電極層をパターニングすることにより、外部電極を形成する方法や、スパッタ法、蒸着法等を挙げることができる。
【0071】
B.検査用デバイス
本発明の検査用デバイスは、基板と、上記基板上に形成された少なくとも1個のトランジスタと、上記トランジスタを覆うように形成された層間絶縁層と、上記層間絶縁層上に形成された参照電極および外部電極と、上記層間絶縁層上に形成されたイオン感応層とを有するトランジスタ基板、および、上記トランジスタ基板の上記イオン感応層、上記参照電極および上記外部電極上に配置された上述の検査用器具を備え、上記イオン感応層が少なくとも上記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置され、上記参照電極が上記検査用器具の電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に配置され、上記外部電極が上記検査用器具の電解液用収容部の外部電極用開口部に配置されていることを特徴とするものである。
【0072】
以下、本発明の検査用デバイスについて、図面を参照しながら説明する。
【0073】
図11(a)、(b)は本発明の検査用器具を備える検査用デバイスの一例を示す概略平面図および断面図であり、薄膜トランジスタを用いた検査用デバイスの例であり、図11(b)は図11(a)のD−D線断面図である。
図11(a)、(b)に例示するように、検査用デバイス10は、トランジスタ基板30と、トランジスタ基板30上に配置された検査用器具1とを備えている。
トランジスタ基板30は、基板21と、基板21上に形成されたトランジスタ20と、トランジスタ20を覆うように形成された層間絶縁層27と、層間絶縁層27上に形成された検知用電極28と、層間絶縁層27上に形成されたイオン感応層29と、イオン感応層29上に形成された参照電極31および外部電極32とを有している。トランジスタ20は、基板21上に形成されたゲート電極22と、ゲート電極22を覆うように形成されたゲート絶縁層23と、ゲート絶縁層23上に形成された半導体層24と、半導体層24上に形成されたソース電極25およびドレイン電極26とを有している。トランジスタ20のゲート電極22と検知用電極28とは電気的に接続されている。
検査用器具1は、底面に外部電極用開口部h1および参照電極用開口部h2を有し、電解液を収容し得る電解液用収容部3と、底面に参照電極用開口部h3および信号取出用開口部h4を有し、被検査液を収容し得る検査用収容部4と、電解液用収容部3および検査用収容部4の底面に配置された接着層5とを有している。
検査用器具1は、接着層5を介して、トランジスタ基板30のイオン感応層29、参照電極31および外部電極32上に配置されており、イオン感応層29が検査用器具1の検査用収容部4の信号取出用開口部h4に配置され、参照電極31が検査用器具1の電解液用収容部3の参照電極用開口部h2および検査用収容部4の参照電極用開口部h4に配置され、外部電極32が検査用器具1の電解液用収容部3の外部電極用開口部h1に配置されている。
なお、図11(a)において参照電極31および外部電極32は一点鎖線で示されている。
【0074】
本発明の検査用デバイスの動作原理については、上記「A.検査用器具」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0075】
従来では、イオン感応層上に被検査液を滞留させた後に電極や電解液を内包する参照電極構造体を被検査液に挿入することで参照電極構造体を介して被検査液に電圧を印加していたが、本発明によれば、参照電極を有するトランジスタ基板上に所定の位置で検査用器具が配置されているので、検査用収容部に収容される被検査液に参照電極構造体を挿入することなく、トランジスタ基板に形成された参照電極を介して被検査液に電圧を印加することができ、検査プロセスを簡易化することができる。
また、本発明においては、検査用器具では、電解液用収容部の底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部が設けられ、検査用収容部の底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部が設けられているので、検査用器具とトランジスタ基板とを組み合わせる際には、所定の位置で検査用器具とトランジスタ基板とを配置するだけでよく、参照電極との接続に関して効率良く取り付けることが可能である。それにより、検査用器具の検査用収容部に収容される被検査液のイオンの変化を効率的に電気信号に変換することが可能となる。
【0076】
また本発明においては、従来のように電極や電解液を内包する参照電極構造体を被検査液に挿入するのではなく、電解液用収容部を設け、この電解液用収容部に電解液を収容するので、プラスとマイナスのイオンを一定に保つことが可能となり、安定的にイオンの変化を電気信号に変えることが可能となる。
【0077】
さらに本発明においては、検査用器具は電解液用収容部と検査用収容部とを有していればよいので、電解液用収容部を検査用収容部の近傍に配置することが可能であり、これにより参照電極の長さを極力短くすることができ、ノイズの影響を極力低減することが可能となる。
【0078】
図12は本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図である。図12に例示する検査用デバイス10において、検査用器具1は、規則的に配列された複数個の電解液用収容部3と複数個の検査用収容部4とを有しており、検査用収容部4の1列毎に電解液用収容部3が1個形成されている。また、1個の電解液用収容部3の参照電極用開口部h2に配置された参照電極31と、3個の検査用収容部4の各参照電極用開口部h3に配置される参照電極31とは電気的に接続されている。そのため、1個の電解液用収容部3で3個の検査用収容部4に収容される被検査液を検査することが可能である。
なお、図12において参照電極31および外部電極32は一点鎖線で示されている。
【0079】
このように本発明においては、検査用器具では、検査用収容部とは別に電解液用収容部が設けられていることにより、1個の参照電極で複数個の検査用収容部にそれぞれ収容される被検査液を検査することが可能である。したがって、検査用収容部が複数個設けられている場合には、同測定条件で複数の被検査液について同時に評価することが可能となる。また、従来のように参照電極構造体を被検査液に挿入する場合には、被検査液毎に参照電極構造体が必要であったが、本発明においては検査用収容部毎に電解液用収容部を設ける必要はなく、効率的な測定が可能である。
【0080】
以下、本発明の検査用デバイスにおける各構成ついて説明する。
【0081】
1.検査用器具
本発明に用いられる検査用器具は、上記「A.検査用器具」の項に記載したものと同様である。
【0082】
2.トランジスタ基板
本発明に用いられるトランジスタ基板は、基板と、上記基板上に形成された少なくとも1個のトランジスタと、上記トランジスタを覆うように形成された層間絶縁層と、上記層間絶縁層上に形成された参照電極および外部電極と、上記層間絶縁層上に形成されたイオン感応層とを有するものである。
以下、トランジスタ基板における各構成について説明する。
【0083】
(1)トランジスタ
本発明に用いられるトランジスタは、基板上に形成されるものである。本発明におけるトランジスタ基板は、少なくとも1個のトランジスタを有している。
【0084】
トランジスタは、通常、上記検査用器具の検査用収容部毎に設けられるものであり、1個の検査用収容部に対して1個のトランジスタが設けられる。また、安定したトランジスタ特性を得る等のために、1個の検査用収容部に対して複数個のトランジスタが設けられていてもよい。上記検査用器具が複数個の検査用収容部を有する場合には、トランジスタ基板には複数個のトランジスタが設けられる。また、増幅器や信号処理回路が設けられている場合には、トランジスタが複数個存在する。
【0085】
トランジスタとしては、トランジスタとして機能するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)、電界効果トランジスタ(FET)、SOI(Silicon on Insulator)等を挙げることができる。薄膜トランジスタは、マイクロプレート等の大面積の検査用器具を用いたとしても、安価に検査用デバイスを提供することが可能である。また、電界効果トランジスタおよびSOIでは、シリコンデバイスを用いるので、性能の良い電気特性の測定が可能となる。
【0086】
トランジスタの配置としては、図11(a)、(b)および図14(a)、(b)に例示するようにトランジスタ20が検査用器具1の検査用収容部4の信号取出用開口部h4に配置されていてもよく、または図13(a)、(b)に例示するようにトランジスタ20が検査用器具1の検査用収容部4の信号取出用開口部h4には配置されていなくてもよい。
なお、図13(a)、(b)は本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図および断面図であり、薄膜トランジスタを用いた検査用デバイスの例であり、図13(b)は図13(a)のE−E線断面図である。
また、図14(a)、(b)は本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図および断面図であり、SOIを用いた検査用デバイスの例であり、図14(b)は図14(a)のF−F線断面図である。図14(a)、(b)において、トランジスタ20は、シリコン基板35と、シリコン基板35表面に形成されたp−well領域36と、p−well領域36表面に形成されたn+領域37、38とを有している。
【0087】
トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていない場合には、トランジスタの透明性の有無にかかわらず、イオン感応層上の試料を透過光で観察することが可能となる。したがって、本発明の検査用デバイスの用途等にかかわらず、トランジスタを構成する部材に用いられる材料が制約されないという利点を有する。また、この場合には、トランジスタに対する培養液、細胞、薬品等が含まれる被検査液の影響を極力減らすことが可能となる。そのため、層間絶縁層やイオン感応層の膜厚が比較的薄い場合には、トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていないことが好ましい。
一方、トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されている場合には、検査用デバイスの集積度を高めることが可能である。
【0088】
また、トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されている場合には、トランジスタは薄膜トランジスタであることが好ましい。後述するように、薄膜トランジスタの半導体層が酸化物半導体層である場合には、透明性を有するものとすることができ、イオン感応層上の試料を例えば透過型顕微鏡を用いて観察することが可能となるからである。
【0089】
以下、薄膜トランジスタを例に挙げて説明する。
【0090】
(薄膜トランジスタ)
本発明に用いられる薄膜トランジスタの構造としては、トランジスタとして機能するものであれば特に限定されるものではなく、ボトムゲート型構造であってもよく、またはトップゲート構造であってもよい。また、コプレーナ型構造であってもよい。
【0091】
トップゲート型構造を有する薄膜トランジスタは、通常、半導体層と、上記半導体層に接し、かつ互いに対向するように形成されたソース電極およびドレイン電極と、上記半導体層上に形成されたゲート絶縁層と、上記ゲート絶縁層上に形成されたゲート電極とを有する。また、トップゲート型構造を有する薄膜トランジスタは、ゲート電極を有さなくてもよい。
【0092】
ボトムゲート型構造を有する薄膜トランジスタは、通常、ゲート電極と、上記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層と、上記ゲート絶縁層上に形成された半導体層と、上記半導体層に接し、かつ互いに対向するように形成されたソース電極およびドレイン電極とを有する。
【0093】
以下、薄膜トランジスタにおける各構成について説明する。
【0094】
(i)半導体層
本発明に用いられる半導体層としては、半導体としての機能を有する材料からなるものであれば特に限定されるものではない。
【0095】
半導体層に求められる透明性は、トランジスタの配置等により適宜選択される。トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていない場合には、半導体層は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよい。一方、トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されている場合には、半導体層は透明性を有することが好ましい。
【0096】
透明性を有する半導体層に用いられる材料としては、例えば、InMZnO(MはGa、Al、Feのうち少なくとも1種)を主成分とするアモルファス酸化物等を挙げることができる。この場合、特に、MがGaであるInGaZnO系のアモルファス酸化物が好ましい。また、このInGaZnO系のアモルファス酸化物を用いる場合には、必要に応じて、Al、Fe、Sn等を構成元素として加えたものであってもよい。また、透明性を有する材料としては、ZnOを主成分とする酸化物半導体を用いることもできる。このZnOを主成分とする材料には、真性の酸化物亜鉛の他に、必要に応じて、Li、Na、NおよびC等のp型ドーパントおよびB、Al、Ga、In等のn型ドーパントがドーピングされた酸化亜鉛およびMg、Be等がドーピングされた酸化亜鉛を加えたものであってもよい。さらに、透明性を有する材料としては、ITO、IZOまたはMgO等の材料を用いることもできる。
一方、透明性を有さない半導体層に用いられる材料の例としては、アモルファスシリコン、ポリシリコン、有機半導体等を挙げることができる。
【0097】
半導体層の厚みは、構成材料の種類等に応じて所望の半導体特性を実現できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、5nm〜100nmの範囲内とされる。
【0098】
(ii)ゲート電極
本発明に用いられるゲート電極としては、電極としての機能を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなゲート電極としては、例えば、Al等の一般的な金属電極に加え、ITO等の透明電極も使用することができる。
ゲート電極の厚みは、通常、50nm〜500nmの範囲内とされる。
【0099】
(iii)ゲート絶縁層
本発明に用いられるゲート絶縁層としては、所望の絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなゲート絶縁層としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiNx)、窒化酸化ケイ素(SiOxNy)等のシリコン酸化物もしくはシリコン窒化物からなるもの等を挙げることができる。
【0100】
ゲート絶縁層は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよく、本発明の検査用デバイスの用途等に応じて適宜選択される。中でも、本発明の検査用デバイスを用いた測定に際して、電圧変化のみならず、試料の形態変化も評価する場合には、ゲート絶縁層は透明性を有することが好ましい。これにより、イオン感応層上の生体関連物質を、例えば透過型顕微鏡を用いて観察することが可能になるからである。
透明性を有するゲート絶縁層としては、上記のものを挙げることができる。
【0101】
ゲート絶縁層の厚みは、通常、50nm〜1μmの範囲内とされる。
【0102】
(iv)ソース電極およびドレイン電極
本発明に用いられるソース電極およびドレイン電極は、上記半導体層と接し、かつ互いに対向するように形成されたものである。
【0103】
ソース電極およびドレイン電極に求められる透明性は、トランジスタの配置等により適宜選択される。トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていない場合には、ソース電極およびドレイン電極は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよい。一方、トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されている場合には、ソース電極およびドレイン電極は透明性を有することが好ましい。
【0104】
透明性を有するソース電極およびドレイン電極としては、例えば、ITO、ZnO、SnO2等からなるものを挙げることができる。
また、透明性を有さないソース電極およびドレイン電極としては、例えば、Ti、Mo、Cr、Wからなるもの等を挙げることができる。
ソース電極およびドレイン電極の厚みは特に限定されるものではないが、通常、20nm〜200nmの範囲内とされる。
【0105】
(2)参照電極
本発明に用いられる参照電極は、層間絶縁層上に形成されるものであり、検査用器具の電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に配置されるものである。
【0106】
参照電極の形成位置としては、参照電極が層間絶縁層上に形成されていれば特に限定されるものではなく、参照電極が層間絶縁層上に形成されていてもよくイオン感応層上に形成されていてもよい。
【0107】
なお、参照電極のその他の点については、上記「A.検査用器具」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0108】
(3)外部電極
本発明に用いられる外部電極は、層間絶縁層上に形成されるものであり、検査用器具の電解液用収容部の外部電極用開口部に配置されるものである。
【0109】
外部電極の形成位置としては、外部電極が層間絶縁層上に形成されていれば特に限定されるものではなく、外部電極が層間絶縁層上に形成されていてもよくイオン感応層上に形成されていてもよい。
【0110】
なお、外部電極のその他の点については、上記「A.検査用器具」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0111】
(4)検知用電極
本発明のトランジスタ基板は、層間絶縁層上に形成され、検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置され、トランジスタのゲート電極に電気的に接続された検知用電極をさらに有していてもよい。
上述したように、トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていない場合には、検知用電極が検査用収容部の信号取出用開口部に配置される。
【0112】
検知用電極としては、電極として機能するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、Al等の一般的な金属電極に加え、ITO、IZO、ZnO等の透明電極も使用することができる。
【0113】
検知用電極は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよく、本発明の検査用デバイスの用途等に応じて適宜選択される。
ここで、本発明の検査用デバイスを用いて測定を行う場合は、検査用収容部内のイオン感応層上に測定対象となる試料を付与し、これに伴う電圧変化を後述するトランジスタで検知することになる。本発明の検査用デバイスの用途によっては、単に電圧変化を評価するのみではなく、イオン感応層上に付与された測定対象試料の形態変化も同時に行えることが望ましい場合がある。特に、本発明の検査用デバイスをバイオセンサとして用いる場合には、生体関連物質をイオン感応層上に付与することになるが、生体関連物質の評価に際しては、単に電圧変化を評価することにより、pH等の変化を測定することのみならず、生体関連物質の経時的な形態変化の評価を同時に行えることが望ましい場合がある。また、このような場合において、イオン感応層上の生体関連物質の形態を観察する方法としては、生体関連物質は、例えば細胞等のサイズが微小なものである場合が多いことから、顕微鏡観察が行えることがより好ましいといえる。
このような観点から、検知用電極は、透明性を有する透明電極であることが好ましい。これにより、イオン感応層上の生体関連物質を、例えば、倒立型の透過型顕微鏡を用いて観察することが可能になるからである。なお、この場合、後述のイオン感応層、層間絶縁層、基板等も透明性を有することが好ましい。
【0114】
上述の検知用電極に用いられる材料のうち、透明性を有する検知用電極を形成可能なものとしては、例えば、ITO、IZO、ZnO等を挙げることができる。
【0115】
検知用電極の厚みは、通常、50nm〜500nmの範囲内とされる。
【0116】
検知用電極は、通常、上記トランジスタのゲート電極に接続するように形成される。検知用電極は、上記トランジスタのゲート電極と一体として形成されていてもよい。なお、「一体として」とは、検知用電極とゲート電極とが両者の機能を兼ねる単一の部材として形成されていることを意味する。
【0117】
(5)イオン感応層
本発明に用いられるイオン感応層は、少なくとも検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置されるものである。上記検知用電極が形成されている場合には、イオン感応層は少なくとも検知用電極上に形成される。
【0118】
イオン感応層としては、絶縁性材料からなり、所望のイオンに対する感応性を有するものであれば特に限定されるものではなく、本発明の検査用デバイスの用途や、本発明の検査用デバイスを用いて評価したい対象に応じて適宜選択して用いることができる。イオン感応層に用いられる絶縁性材料としては、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)、シリコン窒化膜(Si3N4)、タンタル酸化膜(Ta2O5)または酸化アルミニウム膜(Al2O3)等を挙げることができる。これらの絶縁性材料はいずれも好適に用いることができる。
【0119】
本発明の検査用デバイスがバイオセンサとして用いられる場合、イオン感応層に用いられる絶縁性材料としては、細胞、DNA、糖鎖、タンパク質等の生体関連物質を配置可能なものが用いられる。このような絶縁性材料としては、上述の絶縁性材料を挙げることができる。
なお、本発明の検査用デバイスがバイオセンサとして用いられる場合は、必要に応じて、イオン感応層の表面にDNA、タンパク質、糖鎖を固定化する為の表面修飾がなされていてもよい。このような表面修飾の例としては、金チオール反応やシランカップリング材を使った結合、LB膜等の自己組織化単分子膜の形成方法や、静電吸着、物理吸着等を挙げることができる。
【0120】
イオン感応層は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよく、本発明の検査用デバイスの用途等に応じて適宜選択される。中でも、本発明の検査用デバイスを用いた測定に際して、電圧変化のみならず、試料の形態変化も評価する場合には、イオン感応層は透明性を有することが好ましい。これにより、イオン感応層上の生体関連物質を、例えば透過型顕微鏡を用いて観察することが可能になるからである。
【0121】
透明性を有するイオン感応層を形成可能な材料としては、例えば、SiO2、Si3N4、Ta2O5、Al2O3等を挙げることができる。
【0122】
また、イオン感応層は、絶縁性材料からなるので、後述の層間絶縁層を兼ねることもできる。
【0123】
(6)層間絶縁層
本発明に用いられる層間絶縁層は、トランジスタを覆うように形成されるものである。
【0124】
層間絶縁層としては、絶縁性材料からなるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiNx)、窒化酸化ケイ素(SiOxNy)等のシリコン酸化物またはシリコン窒化物等が挙げられる。特に、酸化ケイ素が好ましい。
【0125】
層間絶縁層は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよく、本発明の検査用デバイスの用途等に応じて適宜選択される。中でも、本発明の検査用デバイスを用いた測定に際して、電圧変化のみならず、試料の形態変化も評価する場合には、層間絶縁層は透明性を有することが好ましい。これにより、イオン感応層上の生体関連物質を、例えば透過型顕微鏡を用いて観察することが可能になるからである。
【0126】
透明性を有する層間絶縁層を形成可能な材料としては、例えば、上述の絶縁性材料を挙げることができる。
【0127】
層間絶縁層の膜厚は、諸条件により適宜選択可能であるが、50nm〜1μm程度が好ましい。
【0128】
(7)基板
本発明に用いられる基板としては、上述のトランジスタ、外部電極、参照電極、検知用電極、層間絶縁層、イオン感応層等を支持できるものであれば特に限定されるものではない。このような基板としては、具体的には、ガラス等の無機材料、PEN、PET、透明ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂等の有機材料を挙げることができる。
【0129】
基板は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよく、本発明の検査用デバイスの用途等に応じて適宜選択される。中でも、本発明の検査用デバイスを用いた測定に際して、電圧変化のみならず、試料の形態変化も評価する場合には、基板は透明性を有することが好ましい。これにより、イオン感応層上の生体関連物質を、例えば透過型顕微鏡を用いて観察することが可能になるからである。
【0130】
基板の形態としては特に限定されるものではなく、例えば、平板、平膜、フィルム、多孔質膜等の平坦な形状や、シリンダ、スタンプ、マルチウェルプレート、マイクロ流路等の立体的な形状が挙げられる。
【0131】
基板がフィルムである場合、基板の厚さは特に限定されないが、通常、1μm〜1mm程度である。
【0132】
(8)アライメントマーク
本発明においては、トランジスタ基板にアライメントマークが形成されていることが好ましい。本発明の検査用デバイスを作製する過程において、電解液用収容部の外部電極用開口部に外部電極を配置し、電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に参照電極を配置し、検査用収容部の信号取出用開口部にイオン感応層を配置する際に、検査用器具およびトランジスタ基板がアライメントマークを有することにより、確実に位置合わせを行うことができるからである。
【0133】
アライメントマークとしては、本発明の検査用デバイスを作製する際に、検査用器具とトランジスタ基板との位置合わせを行うことができるものであれば特に限定されるものではない。
【0134】
上述したようにトランジスタ基板を構成する基板、イオン感応層、層間絶縁層、トランジスタ、検知用電極等が透明性を有する場合には、トランジスタ基板の表裏を判別し難くなる。そのため、このような場合には、アライメントマークの形状は、トランジスタ基板の辺に平行な軸に対して非対称であることが好ましい。アライメントマークの形状が非対称であれば、トランジスタ基板の表側から見たアライメントマークと、トランジスタ基板の裏側から見たアライメントマークとで形状が異なるので、トランジスタ基板の表裏の判別が容易となるからである。
さらに、トランジスタ基板の形状が、正方形等の、対角線に対して対称な形状である場合には、アライメントマークの形状は、トランジスタ基板の対角線に平行な軸に対して非対称であることが好ましい。例えば、トランジスタ基板の形状が正方形である場合、アライメントマークの形状がトランジスタ基板の対角線に平行な軸に対して対称であると、トランジスタ基板の表側から見たアライメントマークと、90度回転させてトランジスタ基板の裏側から見たアライメントマークとで形状が同じになってしまうことがあるからである。
【0135】
図15(a)は検査用器具のアライメントマークの一例を示す概略平面図であり、図15(b)はトランジスタ基板のアライメントマークの一例を示す概略平面図であり、図15(a)に示す検査用器具のアライメントマークと図15(b)に示すトランジスタ基板のアライメントマークとが位置合わせに対応している。
図15(b)に例示するように、トランジスタ基板30に形成されたアライメントマーク45の形状は、トランジスタ基板30の辺に平行な軸46a、47aに対してそれぞれ非対称である。すなわち、アライメントマーク45の形状は、上下左右非対称となっている。また、アライメントマーク45の形状は、トランジスタ基板30の対角線に平行な軸48aに対しても非対称である。
トランジスタ基板のアライメントマークの形状と同様に、図15(a)に例示するように、検査用器具1のアライメントマーク40の形状も、検査用器具1の辺に平行な軸41a、42aに対してそれぞれ非対称である。すなわち、アライメントマーク40の形状は、上下左右非対称となっている。また、アライメントマーク40の形状は、検査用器具1の対角線に平行な軸43aに対しても非対称である。
【0136】
図16(a)は検査用器具のアライメントマークの他の例を示す概略平面図であり、図16(b)はトランジスタ基板のアライメントマークの他の例を示す概略平面図であり、図16(a)に示す検査用器具のアライメントマークと図16(b)に示すトランジスタ基板のアライメントマークとが位置合わせに対応している。
図16(b)に例示するように、トランジスタ基板30に形成されたアライメントマーク45の形状は、トランジスタ基板30の辺に平行な軸46a、47aに対してそれぞれ非対称である。すなわち、アライメントマーク45の形状は、上下左右非対称となっている。また、アライメントマーク45の形状は、トランジスタ基板30の対角線に平行な軸48aに対しても非対称である。
トランジスタ基板のアライメントマークの形状と同様に、図16(a)に例示するように、検査用器具1のアライメントマーク40の形状も、検査用器具1の辺に平行な軸41a、42aに対してそれぞれ非対称である。すなわち、アライメントマーク40の形状は、上下左右非対称となっている。また、アライメントマーク40の形状は、検査用器具1の対角線に平行な軸43aに対しても非対称である。
【0137】
また、トランジスタ基板の表裏の判別を容易とするために、アライメントマークは、上下左右の方向を認識可能なものであってもよい。
例えば、図15(b)において、トランジスタ基板30に形成されたアライメントマーク45は、二つの三角形45a、45bによって上下左右の方向を認識できるようになっている。
【0138】
アライメントマークは、通常、複数形成される。例えば、トランジスタ基板の対向する二辺にアライメントマークが形成されていてもよく、トランジスタ基板の対向する角にアライメントマークが形成されていてもよい。トランジスタ基板の対向する角にアライメントマークが形成されている場合には、トランジスタ基板の四つの角にアライメントマークが形成されていてもよい。
【0139】
アライメントマークが複数形成されている場合、複数のアライメントマークは、トランジスタ基板の辺に平行な軸に対して非対称となるように配置されていることが好ましい。トランジスタ基板および検査用器具の位置合わせを行う際に、複数のアライメントマークが非対称に配置されていれば、トランジスタ基板の表裏の判別が容易となり、確実に位置合わせを行うことができるからである。
さらに、トランジスタ基板の形状が、正方形等の、対角線に対して対称な形状である場合には、複数のアライメントマークは、トランジスタ基板の対角線に平行な軸に対して非対称となるように配置されていることが好ましい。例えば、トランジスタ基板の形状が正方形である場合、アライメントマークの形状がトランジスタ基板の対角線に平行な軸に対して対称であると、トランジスタ基板の表側から見たアライメントマークと、90度回転させてトランジスタ基板の裏側から見たアライメントマークとで形状が同じになってしまうことがあるからである。
【0140】
例えば、図15(b)において、アライメントマーク45がトランジスタ基板30の四つの角に形成されており、トランジスタ基板30の四つの角に形成されたアライメントマーク45は、トランジスタ基板30の辺に平行な軸46b、47bに対してそれぞれ非対称となるように配置されている。すなわち、複数のアライメントマーク45は、上下左右非対称となるように配置されている。また、複数のアライメントマーク45は、トランジスタ基板30の対角線に平行な軸48a、49aに対してもそれぞれ非対称となるように配置されている。
トランジスタ基板のアライメントマークと同様に、図15(a)に例示するように、検査用器具1においても、アライメントマーク40が検査用器具1の四つの角に形成されており、検査用器具1の四つの角に形成されたアライメントマーク40は、検査用器具1の辺に平行な軸41a、42aに対してそれぞれ非対称となるように配置されている。すなわち、複数のアライメントマーク40は、上下左右非対称となるように配置されている。また、複数のアライメントマーク40は、検査用器具1の対角線に平行な軸43a、44aに対しても非対称となるように配置されている。
【0141】
アライメントマークに用いられる材料及び形成方法としては、一般的な材料および形成方法を適用することができる。
【0142】
(9)信号処理回路
本発明においては、トランジスタ基板に信号処理回路が内蔵されていてもよい。これにより、ノイズの影響を減らした評価が可能となるからである。
信号処理回路としては、一般的なものを用いることができる。
【0143】
3.検査用デバイスの用途
本発明の検査用デバイスは、トランジスタのソース電極−ドレイン電極間に一定の電圧を印加しつつ、イオン感応層上に被検査液を付与し、被検査液に参照電極を介して可変電圧を印加すると、イオン感応層に生ずる電位の変化に応じて、半導体層に形成されるチャネル領域が変化し、ドレイン電流の変化を検出することができるものである。この結果、可変電圧に基づくドレイン電流の変化、すなわち、トランジスタとしての電流−電圧特性を、予め測定した標準試料における電流−電圧特性と比較することによって被検査液に含まれる試料の種別を特定することができるようになっている。
【0144】
本発明において、検査用器具が複数個の検査用収容部を有する場合には、アクティブマトリクス駆動の測定が可能である。
【0145】
図17は本発明の検査用デバイスを用いた測定方法の一例を示す模式図であり、アクティブマトリクス駆動による測定の例である。図17に示す検査用デバイスの測定においては、(1)まず、ゲートドライバラインgを一本選択する。(2)次に、参照電極3の一本を選択する。(3)選択した参照電極3と同じデータラインdに電流を挿入する。そのときのデータラインdの電圧を測定する。これにより、選択された検査用収容部の出力電圧が測定可能となる。(4)(2)および(3)を繰り返し、横一列分のデータを取得する。次に、(5)他のゲートドライバラインgを選択して、(2)〜(4)を繰り返す。
【0146】
図18は本発明の検査用デバイスを用いた測定方法の他の例を示す模式図であり、アクティブマトリクス駆動による測定の例である。図18に示す検査用デバイスの測定においては、(1)まず、ゲートドライバラインgを一本選択する。(2)次に、データラインdに電流を挿入する。そのときのデータラインdの電圧を測定する。これにより、選択された検査用収容部の出力電圧が測定可能となる。(3)データラインdを横に順に選択していき、横一列分のデータを取得する。次に、(4)他のゲートドライバラインgを選択して、(1)〜(3)を繰り返す。
なお、図17および図18において、61はゲートドライバ、62は信号処理回路である。
【0147】
また、本発明においては、上記の基板、イオン感応層、層間絶縁層、検知用電極、半導体層等に透明性を有するものを用いることにより、イオン感応層上の試料の形態観察も行うことが可能になる。すなわち、イオン感応層上に付与された試料に対して、上部から光を照射し、その透過光を利用して、基板側から顕微鏡その他の光学観察機器によって観察することができる。また、必要に応じて明視野観察の他に位相差顕微鏡、微分干渉顕微鏡等を用いることも可能である。
【0148】
本発明の検査用デバイスは、このようにして動作するものであることから、あらゆる試料の評価に用いることが可能なものであるが、特に細胞、DNA、糖鎖、タンパク質等の生体関連物質を評価対象とする、バイオセンサとして好適に用いることができる。
【0149】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0150】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
1.検査用デバイスの作製
まず、図13(a)に示すような所定の開口部を有する、2種類のガラス筒を準備し、電解液用収容部および検査用収容部とした。
また、図13(b)に示すようなトランジスタ基板を作製した。イオン感応層には、SiO2、Si3N4、Ta2O5の3種類の材料を用いた。
次に、電解液用収容部および検査用収容部に接着剤を塗布し、トランジスタ基板上の所定の位置に電解液用収容部および検査用収容部を配置し、検査用デバイスを作製した。
【0151】
2.pH溶液試験
電解液用収容部にKCl溶液を入れ、検査用収容部に種々のpHの溶液を入れて、pH溶液試験を行った。図19〜図21に、トランジスタのトランスファー特性をそれぞれ示す。
イオン感応層がSiO2の場合、一定のドレイン電流IDに対する可変電圧VGの差は、pH4.01とpH7.41とで約0.18V、pH7.41とpH9.18とで約0.05Vとなり、約50mV/pHのpH感度が得られた。
シリコンデバイスを用いた検査用デバイスのpH感度は50mV/pHといわれており、各pHに対して同様の応答をすることが確認できた。
イオン感応層がSi3N4の場合、約140〜190mV/pHのpH感度が得られた。
イオン感応層がTa2O5の場合、約22〜35mV/pHのpH感度が得られた。
以上より、Si3N4をイオン感応層に用いた場合に最も感度が高くなった。
【0152】
3.細胞搭載試験
Si3N4をイオン感応層に用いた検査用デバイスを使用し、電解液用収容部にKCl溶液を入れ、検査用収容部に細胞培養液を入れて、細胞搭載試験を行った。
まず、−80度で冷凍保存してあるHeLa細胞を培養液の入ったシャーレに入れ解凍し培養した。1日ほど培養したものをシャーレからはがしとって使用した。
次に、検査用収容部内の70%をエタノールで満たし、30分間置いた後、乾燥させ、UVによる滅菌処理を15分間実施した。
次いで、検査用収容部内に培養液と2×104個の細胞を入れて1日培養した。図22(a)、(b)に倒立型顕微鏡写真および正立型顕微鏡写真をそれぞれ示す。なお、図22(a)、(b)のスケールは同じである。培養液を通して細胞を見なければならない正立型顕微鏡での観察は像が不鮮明で判断しにくかった。一方、倒立型顕微鏡では、トランジスタ基板が透明性を有することで鮮明な像を見ながらの判断が可能であった。
【0153】
また、1日培養したHeLa細胞に対してアポトーシス(細胞死)試験を実施した。
図23に1日培養したHeLa細胞の顕微鏡写真を示す。図23において、信号取出用開口部h4は破線で示されている。
図24にアポトーシス試験結果を示す。カリウムイオンによると思われる電位の上昇が確認された。
【符号の説明】
【0154】
1 … 検査用器具
3 … 電解液用収容部
4 … 検査用収容部
5 … 接着層
11 … 電解液用収容部の底面
12 … 検査用収容部の底面
13 … 検査用器具の底面
15 … トランジスタ基板配置用凹部
20 … トランジスタ
21 … 基板
22 … ゲート電極
23 … ゲート絶縁層
24 … 半導体層
25 … ソース電極
26 … ドレイン電極
27 … 層間絶縁層
28 … 検知用電極
29 … イオン感応層
30 … トランジスタ基板
31 … 参照電極
32 … 外部電極
h1 … 外部電極用開口部
h2 … 参照電極用開口部
h3 … 参照電極用開口部
h4 … 信号取出用開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタを用いた検査用デバイスおよびそれに用いられる検査用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、疾患の診断、薬物代謝に関する個人差の検出、または、食品若しくは環境モニタ等の目的で、DNA、糖鎖、たんぱく質等の生体関連物質の検査をするための種々の方法が開発されており、特に、電気的な信号によって生体分子を検出するバイオセンサの研究が進んでいる。最近では、電気的な信号の転換が速く、集積回路とMEMSの接続が容易であるという観点から、電界効果トランジスタ(FET)を使用して生物学的な反応を検出するバイオセンサについて多くの研究が為されている。
【0003】
従来、FETを用いたバイオセンサは、MOSFETからゲート電極を除去し、絶縁層上にイオン感応層を被着した構造を有しており、ISFETと呼ばれている。そして、イオン感応層上に酸化還元酵素、各種タンパク質、DNA、抗原または抗体等を配置することによって、各種バイオセンサとして機能するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、バイオセンサに用いられるFETは、シリコン基板の表面にソース電極、ドレイン電極およびゲート絶縁層を形成し、ソース電極とドレイン電極間のゲート絶縁層表面に金属電極を有している。この金属電極の表面には、DNAプローブとアルカンチオールが配置されている。実際に測定を行う場合には、金属電極と、金属電極の表面上に配置されたDNAプローブおよびアルカンチオールと、参照電極とが測定セル内の反応溶液中に配置されるようになっており、参照電極を介して高周波電圧が印加されると、反応溶液中に含まれるターゲットDNAとDNAプローブとの結合の前後で変化する絶縁ゲート電界効果トランジスタの電気特性変化、すなわち、ソース電極とドレイン電極との間を流れる電流値の変化を検出することにより、反応溶液中に含まれるターゲットDNAの伸長の有無を検出することができるようになっている。
【0005】
従来、トランジスタを用いたバイオセンサにおいては、電気特性の変化を検出する際に、酸化還元酵素、各種タンパク質、DNA、抗原または抗体等のサンプルを含む被検査液に、電極および電解液を内包する参照電極構造体を挿入することで、参照電極構造体を介して被検査液に電圧を印加している。そのため、例えばマイクロプレート等を用いて多サンプルの検査を行う場合には、サンプル毎に参照電極構造体が必要であり、検査プロセスに手間がかかり、効率が悪いという問題があった。
【0006】
一方、バイオセンサに用いられるトランジスタにおいては、参照電極構造体を用いる他に、参照電極をバイオセンサに作り込むことも提案されている。
例えば特許文献2においては、複数個のウェルに共通する参照電極を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−108160号公報
【特許文献2】特表2003−532116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載のバイオセンサにおいては、参照電極が形成された第2ウェルにも細胞等のサンプルが注入された第1ウェルと同じ培養液を注入し、第1ウェルおよび第2ウェル間の切り欠き等により第1ウェルおよび第2ウェルの液体間には電気化学的連続性が確立されている。そのため、単一の第2ウェルに対して複数の第1ウェルを設ける場合には、単一の第2ウェルと複数の第1ウェルとで液体間に電気化学的連続性が確立されるように第1ウェルおよび第2ウェル間に切り欠き部等を形成する必要があり、また測定の際にはすべてのウェルに同じ培養液を注入する必要がある。したがって、異なる培養液を用いた測定は実質上不可能である。また、細胞電位やイオン電位を測定する際には、別途、電極および電解液を内包する参照電極構造体を用いる必要がある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、トランジスタを用いたバイオセンサ等の検査用デバイスにおいて効率的な測定を可能とする検査用器具および検査用デバイスを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部を有し、電解液を収容し得る、少なくとも1個の電解液用収容部と、底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部を有し、被検査液を収容し得る、少なくとも1個の検査用収容部とを有することを特徴とする検査用器具を提供する。
【0011】
本発明においては、検査用収容部とは別に電解液用収容部が設けられているので、本発明の検査用器具を検査用デバイスに用いた場合には、プラスとマイナスのイオンを一定に保つことができ、安定的にイオンの変化を電気信号に変えることが可能となる。また本発明においては、検査用収容部が複数個設けられている場合には、本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する際に、電解液用収容部の参照電極用開口部に配置される参照電極と検査用収容部の参照電極用開口部に配置される参照電極とが電気的に接続されていれば、同時に複数の検査が可能となり、効率的な測定が可能である。また、本発明の検査用器具は電解液用収容部および検査用収容部を有していればよく、電解液用収容部を検査用収容部の近傍に配置することができるので、本発明の検査用器具を検査用デバイスに用いた場合には、電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に配置される参照電極の長さを短くすることができ、ノイズの影響を極力低減することが可能である。
【0012】
上記発明においては、底面にトランジスタ基板を配置し得るトランジスタ基板配置用凹部が形成され、上記トランジスタ基板配置用凹部の深さが配置される上記トランジスタ基板の厚さ以上であることが好ましい。本発明の検査用器具のトランジスタ基板配置用凹部にトランジスタ基板を配置して検査用デバイスを作製した場合には、トランジスタ基板配置用凹部の深さがトランジスタ基板の厚さ以上であることで、トランジスタ基板配置用凹部内にトランジスタ基板を埋め込むことができ、安定的な測定が可能となる。また、検査用デバイスが緩衝材となり、検査用デバイスによってトランジスタ基板を保護することができる。
【0013】
また本発明においては、複数個の上記検査用収容部を有し、上記検査用収容部の1列毎に上記電解液用収容部が1個形成されていることが好ましい。本発明の検査用器具を用いた検査用デバイスにおいて、アクティブマトリクス駆動の測定が可能となり、より効率的な測定が可能となるからである。また、トランジスタへのバイアスストレスを低減することができるからである。
【0014】
また本発明は、基板と、上記基板上に形成された少なくとも1個のトランジスタと、上記トランジスタを覆うように形成された層間絶縁層と、上記層間絶縁層上に形成された参照電極および外部電極と、上記層間絶縁層上に形成されたイオン感応層とを有するトランジスタ基板、および、上記トランジスタ基板の上記イオン感応層、上記参照電極および上記外部電極上に配置された上述の検査用器具を備え、上記イオン感応層が少なくとも上記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置され、上記参照電極が上記検査用器具の電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に配置され、上記外部電極が上記検査用器具の電解液用収容部の外部電極用開口部に配置されていることを特徴とする検査用デバイスを提供する。
【0015】
本発明においては、上述の検査用器具を用いるので、イオンの変化を効率的に電気信号に変換することが可能となる。また、検査用収容部が複数個設けられている場合には、電解液用収容部の参照電極用開口部に配置される参照電極と検査用収容部の参照電極用開口部に配置される参照電極とが電気的に接続されていれば、同測定条件で同時に複数の検査が可能となり、効率的な測定が可能である。
【0016】
上記発明においては、上記基板が透明基板であることが好ましい。基板が透明基板であれば、イオン感応層上の試料の電気特性の測定とともに、倒立型の透過型顕微鏡等の観察機器によってイオン感応層上の試料を観察することができるからである。
【0017】
上記発明においては、上記トランジスタが、上記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていてもよい。この場合には、本発明の検査用デバイスの集積度を高めることができる。
【0018】
上記の場合、上記トランジスタが酸化物半導体層を有することが好ましい。酸化物半導体は透明性を有するものとすることができるので、イオン感応層上の試料の電気特性の測定とともに、倒立型の透過型顕微鏡等の観察機器によってイオン感応層上の試料を観察することができるからである。
【0019】
また上記発明においては、上記トランジスタが、上記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部には配置されておらず、上記層間絶縁層上に検知用電極が形成されており、上記検知用電極が上記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていることが好ましい。トランジスタが検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていない場合には、トランジスタの透明性の有無にかかわらず、イオン感応層上の試料を倒立型の透過型顕微鏡等の観察機器によって観察することが可能となる。したがって、本発明の検査用デバイスの用途等にかかわらず、トランジスタを構成する部材に用いられる材料が制約されないという利点を有する。また、トランジスタに対する培養液、細胞、薬品等が含まれる被検査液の影響を極力減らすことが可能となる。
【0020】
上記の場合、上記検知用電極が透明電極であることが好ましい。検知用電極が透明電極であれば、イオン感応層上の試料の電気特性の測定とともに、倒立型の透過型顕微鏡等の観察機器によってイオン感応層上の試料を観察することができるからである。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、検査用器具が所定の開口部を有する電解液用収容部および検査用収容部を有するので、効率的な測定が可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の検査用器具の一例を示す概略平面図および断面図である。
【図2】本発明の検査用デバイスの一例を示す概略平面図および断面図である。
【図3】本発明の検査用デバイスの動作原理を説明するための模式図である。
【図4】本発明の検査用器具の他の例を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の検査用器具の他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図6】本発明の検査用器具の他の例を示す概略平面図である。
【図7】本発明の検査用器具の他の例を示す概略平面図である。
【図8】本発明の検査用器具の他の例を示す概略平面図である。
【図9】本発明の検査用器具の他の例を示す概略平面図である。
【図10】本発明の検査用器具の他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図12】本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図である。
【図13】本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図14】本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図および断面図である。
【図15】本発明の検査用デバイスにおける検査用器具およびトランジスタ基板のアライメントマークの一例を示す模式図である。
【図16】本発明の検査用デバイスにおける検査用器具およびトランジスタ基板のアライメントマークの他の例を示す模式図である。
【図17】本発明の検査用デバイスを用いた測定方法の一例を示す模式図である。
【図18】本発明の検査用デバイスを用いた測定方法の他の例を示す模式図である。
【図19】実施例の検査用デバイスにおけるトランジスタのトラスファー特性を示すグラフである。
【図20】実施例の検査用デバイスにおけるトランジスタのトラスファー特性を示すグラフである。
【図21】実施例の検査用デバイスにおけるトランジスタのトラスファー特性を示すグラフである。
【図22】実施例の検査用デバイスにおけるHeLa細胞の倒立型顕微鏡写真および正立型顕微鏡写真である。
【図23】実施例の検査用デバイスにおけるHeLa細胞の顕微鏡写真である。
【図24】実施例の検査用デバイスにおけるHeLa細胞のアポトーシス試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の検査用器具および検査用デバイスについて詳細に説明する。
【0024】
A.検査用器具
本発明の検査用器具は、底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部を有し、電解液を収容し得る、少なくとも1個の電解液用収容部と、底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部を有し、被検査液を収容し得る、少なくとも1個の検査用収容部とを有することを特徴とするものである。
【0025】
まず、本発明の検査用器具について、図面を参照しながら説明する。
図1(a)、(b)は本発明の検査用器具の一例を示す概略平面図および断面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。
図1(a)、(b)に例示するように、検査用器具1は、底面11に外部電極用開口部h1および参照電極用開口部h2を有し、電解液を収容し得る電解液用収容部3と、底面12に参照電極用開口部h3および信号取出用開口部h4を有し、被検査液を収容し得る検査用収容部4とを有している。
【0026】
図2(a)、(b)は本発明の検査用器具を備える検査用デバイスの一例を示す概略平面図および断面図であり、薄膜トランジスタを用いた検査用デバイスの例であり、図2(b)は図2(a)のB−B線断面図である。
図2(a)、(b)に例示するように、検査用デバイス10は、トランジスタ基板30と、トランジスタ基板30上に配置された検査用器具1とを備えている。
トランジスタ基板30は、基板21と、基板21上に形成されたトランジスタ20と、トランジスタ20を覆うように形成された層間絶縁層27と、層間絶縁層27上に形成された検知用電極28と、層間絶縁層27上に形成されたイオン感応層29と、イオン感応層29上に形成された参照電極31および外部電極32とを有している。トランジスタ20は、基板21上に形成されたゲート電極22と、ゲート電極22を覆うように形成されたゲート絶縁層23と、ゲート絶縁層23上に形成された半導体層24と、半導体層24上に形成されたソース電極25およびドレイン電極26とを有している。トランジスタ20のゲート電極22と検知用電極28とは電気的に接続されている。
検査用器具1は、底面に外部電極用開口部h1および参照電極用開口部h2を有し、電解液を収容し得る電解液用収容部3と、底面に参照電極用開口部h3および信号取出用開口部h4を有し、被検査液を収容し得る検査用収容部4と、電解液用収容部3および検査用収容部4の底面に配置された接着層5とを有している。
検査用器具1は、接着層5を介して、トランジスタ基板30のイオン感応層29、参照電極31および外部電極32上に配置されており、イオン感応層29が検査用器具1の検査用収容部4の信号取出用開口部h4に配置され、参照電極31が検査用器具1の電解液用収容部3の参照電極用開口部h2および検査用収容部4の参照電極用開口部h4に配置され、外部電極32が検査用器具1の電解液用収容部3の外部電極用開口部h1に配置されている。
【0027】
次に、図3を参照して本発明の検査用器具を備える検査用デバイスの動作原理について説明する。なお、図3に示す検査用デバイスは図2(a)、(b)に示す検査用デバイスと同様である。
図3に例示するように、検査用器具において、電解液用収容部3にはKCl溶液等の電解液51が収容され、検査用収容部4には細胞、DNA、糖鎖、タンパク質等の生体関連物質等の試料を含む被検査液52が収容されている。
検査用収容部4では、信号取出用開口部h4にイオン感応層29が配置されているので、イオン感応層29上に被検査液52を付与することができるようになっている。
また、電解液用収容部3では、外部電極用開口部h1に外部電極32が配置され、参照電極用開口部h2に参照電極31が配置され、また検査用収容部4では、参照電極用開口部h3に参照電極31が配置されているので、外部電極32に電圧を印加すると、外部電極32と電解液51と参照電極31とを介して、被検査液52に電圧が印加されることとなる。
したがって、ソース電極25およびドレイン電極26間に所定の電圧VDSを印加しつつ、外部電極32と電解液51と参照電極31とを介して可変電圧VGを被検査液52に印加すると、イオン感応層29に生ずる電位の変化に応じて、半導体層24に形成されるチャネル領域が変化し、ドレイン電流IDの変化を検出することができる。その結果、例えば、可変電圧VGに基づくドレイン電流IDの変化、すなわち電流−電圧特性を、予め測定した試料における電流−電圧特性と比較することによって、被検査液52に含まれる試料の種別を特定することができるようになっている。
【0028】
従来では、イオン感応層上に被検査液を滞留させた後に電極や電解液を内包する参照電極構造体を被検査液に挿入することで参照電極構造体を介して被検査液に電圧を印加していたが、本発明によれば、参照電極を予め備える所定のトランジスタ基板上に所定の位置で検査用器具を配置することにより、参照電極構造体を挿入することなく、トランジスタ基板に形成された参照電極を介して被検査液に電圧を印加することができるので、検査プロセスを簡易化することができる。
また、本発明の検査用器具においては、電解液用収容部の底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部が設けられ、検査用収容部の底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部が設けられているので、本発明の検査用器具と所定のトランジスタ基板とを用いて検査用デバイスを組み立てる際には、所定の位置で本発明の検査用器具と所定のトランジスタ基板とを配置するだけでよく、参照電極との接続に関して効率良く取り付けることが可能である。
【0029】
また本発明においては、従来のように電極や電解液を内包する参照電極構造体を被検査液に挿入するのではなく、電解液用収容部を設け、この電解液用収容部に電解液を収容するので、プラスとマイナスのイオンを一定に保つことが可能となり、安定的にイオンの変化を電気信号に変えることが可能となる。
【0030】
さらに、本発明の検査用器具は電解液用収容部と検査用収容部とを有していればよいので、電解液用収容部を検査用収容部の近傍に配置することが可能であり、これにより参照電極の長さを極力短くすることができ、ノイズの影響を極力低減することが可能となる。
【0031】
図4は本発明の検査用器具の他の例を示す概略斜視図である。図4に示す例において、検査用器具1は、1個の電解液用収容部3と3個の検査用収容部4とを有しており、1個の電解液用収容部3に対して複数個の検査用収容部4が形成されている。
図4に例示するような検査用器具を備える検査用デバイスにおいては、1個の電解液用収容部3の参照電極用開口部h2に配置される参照電極と、3個の検査用収容部4の各参照電極用開口部h3に配置される参照電極とが電気的に接続されていることで、1個の電解液用収容部3で3個の検査用収容部4に収容される被検査液を検査することが可能である。
【0032】
このように本発明においては、検査用収容部とは別に電解液用収容部が設けられていることにより、1個の参照電極で複数個の検査用収容部にそれぞれ収容される被検査液を検査することが可能である。
従来のように参照電極構造体を被検査液に挿入する場合には、被検査液毎に参照電極構造体が必要であったが、本発明においては検査用収容部毎に電解液用収容部を設ける必要はなく、効率的な測定が可能である。
【0033】
以下、本発明の検査用器具における各構成ついて説明する。
【0034】
1.電解液用収容部
本発明における電解液用収容部は、底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部を有するものである。本発明の検査用器具は、少なくとも1個の電解液用収容部を有している。
なお、底面とは、電解液の注入口とは反対側の面をいい、本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する際にトランジスタ基板が配置される面である。
【0035】
外部電極用開口部および参照電極用開口部の配置、大きさ、形状等としては、本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する際に、外部電極用開口部に外部電極を配置することができ、また参照電極用開口部に参照電極を配置することができれば特に限定されるものではなく、任意の配置、大きさ、形状等とすることができる。
また、電解液用収容部の大きさ、形状は、後述の検査用収容部の大きさ、形状と同じであってもよく異なっていてもよい。
【0036】
外部電極用開口部および参照電極用開口部としては、図1(a)、(b)に例示するように外部電極用開口部h1および参照電極用開口部h2が別々に形成されていてもよく、図5(a)、(b)に例示するように外部電極用開口部h1および参照電極用開口部h2が一体として形成されていてもよい。なお、「一体として」とは、外部電極用開口部および参照電極用開口部が単一の開口部として形成されていることを意味する。
ここで、図5(a)、(b)は本発明の検査用器具の他の例を示す概略平面図および断面図であり、図5(b)は図5(a)のC−C線断面図である。
【0037】
電解液用収容部の高さとしては、電解液を収容可能な高さであれば特に限定されるものではなく、任意の高さとすることができる。
また、外部電極用開口部および参照電極用開口部の厚みとしては、本発明の検査用器具を備える検査用デバイスにおいて、電解液用収容部内に電解液を収容可能であれば特に限定されるものではなく、任意の厚みとすることができる。
【0038】
電解液用収容部に用いられる材料としては、本発明の検査用器具を備える検査用デバイスにおいて、電解液用収容部外に電解液を漏出させないものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、ガラス、樹脂等が挙げられる。
樹脂は、耐化学薬品性、透明性、成型性、剛性等を有するものであることが好ましく、要求特性に応じて適宜選択される。具体的には、ポリスチレン、白色ポリスチレン、三井化学株式会社製のバレックス等のポリアクリロニトリル、ナチュラルポリプロピレン、ガラス入ポリプロピレン、GEヘルスケアジャパン株式会社製のマルチケム等のフッ素樹脂、シリコンゴム等が挙げられる。ポリスチレンは、硬質で成型が容易なためマイクロプレートの材質として汎用されているとともに、ガラスに準ずる透明度があり電解液用収容部や後述の検査用収容部の収容部の中身が確認しやすく、サンプル調製や吸光度測定に適している。白色ポリスチレンは、収容部間のシグナルクロストークが起きにくくなるため、化学発光測定などのアプリケーションに適している。三井化学株式会社製のバレックスは、白色不透明で耐化学薬品性があるため、液体シンチレーション測定等に適している。ナチュラルポリプロピレンは、耐化学薬品性に優れタンパク質等の分子の吸着が少なく、またポリスチレンに比べ割れにくく、有機溶媒性サンプルの調製やリキッドハンドリングシステムのリザーバに用いられる。ガラス入ポリプロピレンは、ポリプロピレンにガラス繊維を加えて剛性を高めている。GEヘルスケアジャパン株式会社製のマルチケムは、フッ素ポリマー製で耐化学薬品性が極めて高く、また分子が吸着しにくいためサンプルの保存に適している。
【0039】
電解液用収容部は、透明性を有していてもよく、または不透明であってもよい。
電解液用収容部の形状としては特に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
電解液用収容部の数としては、1個以上であればよく、本発明の検査用器具の用途等に応じて適宜選択される。
【0040】
また、電解液用収容部の配置としては、本発明の検査用器具が少なくとも1個の電解液用収容部を有していればよく、特に限定されるものではない。
例えば、図1(a)、(b)に示すように、1個の電解液用収容部3に対して1個の検査用収容部4が形成されていてもよく、図4および図6〜図9に示すように1個の電解液用収容部3に対して複数個の検査用収容部4が形成されていてもよい。
図6においては、検査用器具1が、規則的に配列された複数個の電解液用収容部3および複数個の検査用収容部4を有しており、検査用収容部4の1列毎に電解液用収容部3が1個形成されている。図6に示す例においては、端一列に電解液用収容部3が設けられているが、図示しないが真ん中一列に電解液用収容部が設けられていてもよい。図6に例示するように、検査用収容部の1列毎に電解液用収容部が1個形成されている場合には、アクティブマトリクス駆動の測定が可能となり、より効率的な測定が可能である。また、本発明の検査用器具を用いた検査用デバイスにおいて、トランジスタへのバイアスストレスを低減することができる。
図7においては、検査用器具1が、規則的に配列された1個の電解液用収容部3および複数個の検査用収容部4を有しており、複数個の検査用収容部4に対して電解液用収容部3が1個のみ形成されている。図7に示す例においては、端に電解液用収容部3が設けられているが、図示しないが真ん中に電解液用収容部が設けられていてもよい。
図8および図9においては、検査用器具1が、電解液の注入口の平面視形状が矩形である1個の電解液用収容部3と、規則的に配列され、被検査液の注入口の平面視形状が円形である複数個の検査用収容部4とを有しており、複数個の検査用収容部4に対して電解液用収容部3が1個のみ形成されている。図8においては、端に電解液用収容部3が設けられており、図9においては、真ん中に電解液用収容部3が設けられている。
このように電解液用収容部の配置としては、任意の配置とすることができる。
【0041】
電解液用収容部の形成方法としては、材料に応じて適宜選択される。例えば樹脂を用いる場合には、金型を用いる方法等が挙げられる。
【0042】
2.検査用収容部
本発明における検査用収容部は、底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部を有し、被検査液を収容し得るものである。本発明の検査用器具は、少なくとも1個の検査用収容部を有している。
なお、底面とは、被検査液の注入口とは反対側の面をいい、本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する際にトランジスタ基板が配置される面である。
【0043】
参照電極用開口部および信号取出用開口部の配置、大きさ、形状等としては、本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する際に、参照電極用開口部に参照電極を配置することができ、また信号取出用開口部にイオン感応層を配置することができれば特に限定されるものではなく、任意の配置、大きさ、形状等とすることができる。
【0044】
検査用収容部の高さとしては、被検査液を収容可能な高さであれば特に限定されるものではなく、任意の高さとすることができる。
また、参照電極用開口部および信号取出用開口部の厚みとしては、本発明の検査用器具を備える検査用デバイスにおいて、検査用収容部内に被検査液を収容可能であれば特に限定されるものではなく、任意の厚みとすることができる。
【0045】
検査用収容部に用いられる材料としては、本発明の検査用器具を備える検査用デバイスにおいて、検査用収容部外に被検査液を漏出させないものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、ガラス、樹脂等が挙げられる。
なお、樹脂については、上記電解液用収容部に用いられる樹脂と同様である。
【0046】
検査用収容部は、透明性を有していてもよく、または不透明であってもよい。
検査用収容部の形状としては特に限定されるものではなく、任意の形状とすることができる。
検査用収容部の数としては、1個以上であればよく、本発明の検査用器具の用途等に応じて適宜選択される。
【0047】
また、検査用収容部の配置としては、本発明の検査用器具が少なくとも1個の検査用収容部を有していればよく、特に限定されるものではない。
なお、検査用収容部の配置の例については、上記電解液用収容部の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
検査用収容部の配置としては、任意の配置とすることができる。
【0048】
検査用収容部の形成方法としては、材料に応じて適宜選択される。例えば樹脂を用いる場合には、金型を用いる方法等が挙げられる。
【0049】
通常、電解液用収容部および検査用収容部は一体として形成されている。なお、「一体として」とは、電解液用収容部および検査用収容部が単一の部材として形成されていることを意味する。
【0050】
3.トランジスタ基板配置用凹部
本発明においては、図10に例示するように、検査用器具1の底面13にトランジスタ基板を配置し得るトランジスタ基板配置用凹部15が形成されていることが好ましい。これにより、本発明の検査用器具を備える検査用デバイスにおいては、例えば図11(b)に示すように、検査用器具1の底面に形成されたトランジスタ基板配置用凹部15に、トランジスタ基板30を埋め込むことが可能となる。
【0051】
この場合、トランジスタ基板配置用凹部の深さは、トランジスタ基板の厚さ以上であることが好ましい。トランジスタ基板配置用凹部の深さがトランジスタ基板の厚さと同程度である場合には、検査用デバイスの底面を平坦にすることができ、安定的な測定が可能になる。また、トランジスタ基板配置用凹部の深さがトランジスタ基板の厚さよりも大きい場合には、検査用デバイスを例えば台の上に設置した際にトランジスタ基板は台に触れなくなるので、より安定的に測定することが可能となる。さらには、検査用器具が緩衝材となり、検査用器具でトランジスタ基板を保護することができる。
中でも、トランジスタ基板配置用凹部の深さは、トランジスタ基板の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0052】
トランジスタ基板配置用凹部の深さとしては、トランジスタ基板の厚さ以上であれば特に限定されるものではなく、配置されるトランジスタ基板の厚さに応じて適宜調整される。具体的には、トランジスタ基板配置用凹部の深さとトランジスタ基板の厚さとの差は、0mm〜3mmの範囲内であることが好ましい。トランジスタ基板配置用凹部の深さが、トランジスタ基板の厚さに対して過剰に大きいと、トランジスタ基板をトランジスタ基板配置用凹部に配置することが困難となったり、検査用デバイスの安定性が損なわれたりする場合がある。
【0053】
トランジスタ基板配置用凹部の配置、大きさ、形状等としては、配置されるトランジスタ基板に応じて適宜選択される。
【0054】
トランジスタ基板配置用凹部に用いられる材料としては、例えば、ガラス、樹脂等が挙げられる。
なお、樹脂については、上記電解液用収容部に用いられる樹脂と同様である。
【0055】
トランジスタ基板配置用凹部の形成方法としては、材料に応じて適宜選択される。例えば樹脂を用いる場合には、金型を用いる方法等が挙げられる。
通常、電解液用収容部と検査用収容部とトランジスタ基板配置用凹部とは一体として形成されている。なお、「一体として」とは、電解液用収容部と検査用収容部とトランジスタ基板配置用凹部とが単一の部材として形成されていることを意味する。
【0056】
4.接着層
本発明においては、図5に例示するように、電解液用収容部3および検査用収容部4の底面11、12に接着層が配置されていてもよい。本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する際に、接着層によって検査用器具およびトランジスタ基板を貼り合わせることができる。
【0057】
接着層に用いられる材料としては、本発明の検査用器具およびトランジスタ基板を接着することができ、また電解液および被検査液を漏出させないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化型樹脂、熱硬化型樹脂が好ましく用いられる。
【0058】
また、接着層は再剥離可能であることが好ましい。本発明の検査用器具を用いた検査用デバイスにおいて、容易に検査用器具を取り換えることができるからである。また、本発明の検査用器具が取り外し可能となり、再利用も可能となるからである。
ここで、「再剥離可能」とは、検査用器具とトランジスタ基板とを接着した後、剥離した場合に、検査用器具およびトランジスタ基板が破損することなく剥離することができることをいう。
このような再剥離可能な接着層に用いられる材料としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム系樹脂等を挙げることができる。
【0059】
接着層の膜厚としては、本発明の検査用器具およびトランジスタ基板を接着することができ、また電解液および被検査液を漏出させなければ特に限定されるものではなく、適宜調整される。
【0060】
接着層の形成方法としては、電解液用収容部および検査用収容部の底面に接着層を配置することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、上記材料を塗布する方法、接着シートを貼付する方法等が挙げられる。
【0061】
接着層は、検査用器具に形成されていてもよく、トランジスタ基板に形成されていてもよいが、接着層形成によるトランジスタへの影響を低減する観点から、検査用器具に形成されていることが好ましい。
【0062】
5.アライメントマーク
本発明の検査用器具には、アライメントマークが形成されていることが好ましい。本発明の検査用器具を用いて検査用デバイスを作製する場合、電解液用収容部の外部電極用開口部に外部電極を配置し、電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に参照電極を配置し、検査用収容部の信号取出用開口部にイオン感応層を配置する際に、検査用器具がアライメントマークを有することにより、確実に位置合せを行うことができるからである。
なお、アライメントマークについては、後述の「B.検査用デバイス」の項に詳しく記載するので、ここでの説明は省略する。
【0063】
6.参照電極
本発明においては、電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に参照電極が配置されるように、電解液用収容部および検査用収容部の底面に参照電極が形成されていてもよい。
【0064】
参照電極としては、電極として機能するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、Al等の一般的な金属電極に加え、ITO、IZO、ZnO等の透明電極も使用することができる。
【0065】
参照電極は、透明性を有していてもよく、または不透明であってもよい。
参照電極の厚みは、通常、50nm〜10μmの範囲内とされる。
【0066】
参照電極の形成方法としては、電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に参照電極が配置されるように、電解液用収容部および検査用収容部の底面に参照電極を形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂基板と電極層との積層体を用い、電極層をパターニングすることにより、参照電極を形成する方法や、スパッタ法、蒸着法等を挙げることができる。
【0067】
7.外部電極
本発明においては、電解液用収容部の外部電極用開口部に外部電極が配置されるように、電解液用収容部の底面に外部電極が形成されていてもよい。電解液用収容部の底面に上記参照電極が形成されている場合には、外部電極および参照電極は導通しないように配置される。
【0068】
外部電極としては、電極として機能するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、Al、Pt、Au等の一般的な金属電極に加え、ITO、IZO、ZnO等の透明電極も使用することができる。
【0069】
外部電極は、透明性を有していてもよく、または不透明であってもよい。
外部電極の厚みは、通常、50nm〜10μmの範囲内とされる。
【0070】
外部電極の形成方法としては、電解液用収容部の外部電極用開口部に外部電極が配置されるように、電解液用収容部の底面に外部電極を形成できる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、樹脂基板と電極層との積層体を用い、電極層をパターニングすることにより、外部電極を形成する方法や、スパッタ法、蒸着法等を挙げることができる。
【0071】
B.検査用デバイス
本発明の検査用デバイスは、基板と、上記基板上に形成された少なくとも1個のトランジスタと、上記トランジスタを覆うように形成された層間絶縁層と、上記層間絶縁層上に形成された参照電極および外部電極と、上記層間絶縁層上に形成されたイオン感応層とを有するトランジスタ基板、および、上記トランジスタ基板の上記イオン感応層、上記参照電極および上記外部電極上に配置された上述の検査用器具を備え、上記イオン感応層が少なくとも上記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置され、上記参照電極が上記検査用器具の電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に配置され、上記外部電極が上記検査用器具の電解液用収容部の外部電極用開口部に配置されていることを特徴とするものである。
【0072】
以下、本発明の検査用デバイスについて、図面を参照しながら説明する。
【0073】
図11(a)、(b)は本発明の検査用器具を備える検査用デバイスの一例を示す概略平面図および断面図であり、薄膜トランジスタを用いた検査用デバイスの例であり、図11(b)は図11(a)のD−D線断面図である。
図11(a)、(b)に例示するように、検査用デバイス10は、トランジスタ基板30と、トランジスタ基板30上に配置された検査用器具1とを備えている。
トランジスタ基板30は、基板21と、基板21上に形成されたトランジスタ20と、トランジスタ20を覆うように形成された層間絶縁層27と、層間絶縁層27上に形成された検知用電極28と、層間絶縁層27上に形成されたイオン感応層29と、イオン感応層29上に形成された参照電極31および外部電極32とを有している。トランジスタ20は、基板21上に形成されたゲート電極22と、ゲート電極22を覆うように形成されたゲート絶縁層23と、ゲート絶縁層23上に形成された半導体層24と、半導体層24上に形成されたソース電極25およびドレイン電極26とを有している。トランジスタ20のゲート電極22と検知用電極28とは電気的に接続されている。
検査用器具1は、底面に外部電極用開口部h1および参照電極用開口部h2を有し、電解液を収容し得る電解液用収容部3と、底面に参照電極用開口部h3および信号取出用開口部h4を有し、被検査液を収容し得る検査用収容部4と、電解液用収容部3および検査用収容部4の底面に配置された接着層5とを有している。
検査用器具1は、接着層5を介して、トランジスタ基板30のイオン感応層29、参照電極31および外部電極32上に配置されており、イオン感応層29が検査用器具1の検査用収容部4の信号取出用開口部h4に配置され、参照電極31が検査用器具1の電解液用収容部3の参照電極用開口部h2および検査用収容部4の参照電極用開口部h4に配置され、外部電極32が検査用器具1の電解液用収容部3の外部電極用開口部h1に配置されている。
なお、図11(a)において参照電極31および外部電極32は一点鎖線で示されている。
【0074】
本発明の検査用デバイスの動作原理については、上記「A.検査用器具」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0075】
従来では、イオン感応層上に被検査液を滞留させた後に電極や電解液を内包する参照電極構造体を被検査液に挿入することで参照電極構造体を介して被検査液に電圧を印加していたが、本発明によれば、参照電極を有するトランジスタ基板上に所定の位置で検査用器具が配置されているので、検査用収容部に収容される被検査液に参照電極構造体を挿入することなく、トランジスタ基板に形成された参照電極を介して被検査液に電圧を印加することができ、検査プロセスを簡易化することができる。
また、本発明においては、検査用器具では、電解液用収容部の底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部が設けられ、検査用収容部の底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部が設けられているので、検査用器具とトランジスタ基板とを組み合わせる際には、所定の位置で検査用器具とトランジスタ基板とを配置するだけでよく、参照電極との接続に関して効率良く取り付けることが可能である。それにより、検査用器具の検査用収容部に収容される被検査液のイオンの変化を効率的に電気信号に変換することが可能となる。
【0076】
また本発明においては、従来のように電極や電解液を内包する参照電極構造体を被検査液に挿入するのではなく、電解液用収容部を設け、この電解液用収容部に電解液を収容するので、プラスとマイナスのイオンを一定に保つことが可能となり、安定的にイオンの変化を電気信号に変えることが可能となる。
【0077】
さらに本発明においては、検査用器具は電解液用収容部と検査用収容部とを有していればよいので、電解液用収容部を検査用収容部の近傍に配置することが可能であり、これにより参照電極の長さを極力短くすることができ、ノイズの影響を極力低減することが可能となる。
【0078】
図12は本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図である。図12に例示する検査用デバイス10において、検査用器具1は、規則的に配列された複数個の電解液用収容部3と複数個の検査用収容部4とを有しており、検査用収容部4の1列毎に電解液用収容部3が1個形成されている。また、1個の電解液用収容部3の参照電極用開口部h2に配置された参照電極31と、3個の検査用収容部4の各参照電極用開口部h3に配置される参照電極31とは電気的に接続されている。そのため、1個の電解液用収容部3で3個の検査用収容部4に収容される被検査液を検査することが可能である。
なお、図12において参照電極31および外部電極32は一点鎖線で示されている。
【0079】
このように本発明においては、検査用器具では、検査用収容部とは別に電解液用収容部が設けられていることにより、1個の参照電極で複数個の検査用収容部にそれぞれ収容される被検査液を検査することが可能である。したがって、検査用収容部が複数個設けられている場合には、同測定条件で複数の被検査液について同時に評価することが可能となる。また、従来のように参照電極構造体を被検査液に挿入する場合には、被検査液毎に参照電極構造体が必要であったが、本発明においては検査用収容部毎に電解液用収容部を設ける必要はなく、効率的な測定が可能である。
【0080】
以下、本発明の検査用デバイスにおける各構成ついて説明する。
【0081】
1.検査用器具
本発明に用いられる検査用器具は、上記「A.検査用器具」の項に記載したものと同様である。
【0082】
2.トランジスタ基板
本発明に用いられるトランジスタ基板は、基板と、上記基板上に形成された少なくとも1個のトランジスタと、上記トランジスタを覆うように形成された層間絶縁層と、上記層間絶縁層上に形成された参照電極および外部電極と、上記層間絶縁層上に形成されたイオン感応層とを有するものである。
以下、トランジスタ基板における各構成について説明する。
【0083】
(1)トランジスタ
本発明に用いられるトランジスタは、基板上に形成されるものである。本発明におけるトランジスタ基板は、少なくとも1個のトランジスタを有している。
【0084】
トランジスタは、通常、上記検査用器具の検査用収容部毎に設けられるものであり、1個の検査用収容部に対して1個のトランジスタが設けられる。また、安定したトランジスタ特性を得る等のために、1個の検査用収容部に対して複数個のトランジスタが設けられていてもよい。上記検査用器具が複数個の検査用収容部を有する場合には、トランジスタ基板には複数個のトランジスタが設けられる。また、増幅器や信号処理回路が設けられている場合には、トランジスタが複数個存在する。
【0085】
トランジスタとしては、トランジスタとして機能するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)、電界効果トランジスタ(FET)、SOI(Silicon on Insulator)等を挙げることができる。薄膜トランジスタは、マイクロプレート等の大面積の検査用器具を用いたとしても、安価に検査用デバイスを提供することが可能である。また、電界効果トランジスタおよびSOIでは、シリコンデバイスを用いるので、性能の良い電気特性の測定が可能となる。
【0086】
トランジスタの配置としては、図11(a)、(b)および図14(a)、(b)に例示するようにトランジスタ20が検査用器具1の検査用収容部4の信号取出用開口部h4に配置されていてもよく、または図13(a)、(b)に例示するようにトランジスタ20が検査用器具1の検査用収容部4の信号取出用開口部h4には配置されていなくてもよい。
なお、図13(a)、(b)は本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図および断面図であり、薄膜トランジスタを用いた検査用デバイスの例であり、図13(b)は図13(a)のE−E線断面図である。
また、図14(a)、(b)は本発明の検査用デバイスの他の例を示す概略平面図および断面図であり、SOIを用いた検査用デバイスの例であり、図14(b)は図14(a)のF−F線断面図である。図14(a)、(b)において、トランジスタ20は、シリコン基板35と、シリコン基板35表面に形成されたp−well領域36と、p−well領域36表面に形成されたn+領域37、38とを有している。
【0087】
トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていない場合には、トランジスタの透明性の有無にかかわらず、イオン感応層上の試料を透過光で観察することが可能となる。したがって、本発明の検査用デバイスの用途等にかかわらず、トランジスタを構成する部材に用いられる材料が制約されないという利点を有する。また、この場合には、トランジスタに対する培養液、細胞、薬品等が含まれる被検査液の影響を極力減らすことが可能となる。そのため、層間絶縁層やイオン感応層の膜厚が比較的薄い場合には、トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていないことが好ましい。
一方、トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されている場合には、検査用デバイスの集積度を高めることが可能である。
【0088】
また、トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されている場合には、トランジスタは薄膜トランジスタであることが好ましい。後述するように、薄膜トランジスタの半導体層が酸化物半導体層である場合には、透明性を有するものとすることができ、イオン感応層上の試料を例えば透過型顕微鏡を用いて観察することが可能となるからである。
【0089】
以下、薄膜トランジスタを例に挙げて説明する。
【0090】
(薄膜トランジスタ)
本発明に用いられる薄膜トランジスタの構造としては、トランジスタとして機能するものであれば特に限定されるものではなく、ボトムゲート型構造であってもよく、またはトップゲート構造であってもよい。また、コプレーナ型構造であってもよい。
【0091】
トップゲート型構造を有する薄膜トランジスタは、通常、半導体層と、上記半導体層に接し、かつ互いに対向するように形成されたソース電極およびドレイン電極と、上記半導体層上に形成されたゲート絶縁層と、上記ゲート絶縁層上に形成されたゲート電極とを有する。また、トップゲート型構造を有する薄膜トランジスタは、ゲート電極を有さなくてもよい。
【0092】
ボトムゲート型構造を有する薄膜トランジスタは、通常、ゲート電極と、上記ゲート電極を覆うように形成されたゲート絶縁層と、上記ゲート絶縁層上に形成された半導体層と、上記半導体層に接し、かつ互いに対向するように形成されたソース電極およびドレイン電極とを有する。
【0093】
以下、薄膜トランジスタにおける各構成について説明する。
【0094】
(i)半導体層
本発明に用いられる半導体層としては、半導体としての機能を有する材料からなるものであれば特に限定されるものではない。
【0095】
半導体層に求められる透明性は、トランジスタの配置等により適宜選択される。トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていない場合には、半導体層は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよい。一方、トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されている場合には、半導体層は透明性を有することが好ましい。
【0096】
透明性を有する半導体層に用いられる材料としては、例えば、InMZnO(MはGa、Al、Feのうち少なくとも1種)を主成分とするアモルファス酸化物等を挙げることができる。この場合、特に、MがGaであるInGaZnO系のアモルファス酸化物が好ましい。また、このInGaZnO系のアモルファス酸化物を用いる場合には、必要に応じて、Al、Fe、Sn等を構成元素として加えたものであってもよい。また、透明性を有する材料としては、ZnOを主成分とする酸化物半導体を用いることもできる。このZnOを主成分とする材料には、真性の酸化物亜鉛の他に、必要に応じて、Li、Na、NおよびC等のp型ドーパントおよびB、Al、Ga、In等のn型ドーパントがドーピングされた酸化亜鉛およびMg、Be等がドーピングされた酸化亜鉛を加えたものであってもよい。さらに、透明性を有する材料としては、ITO、IZOまたはMgO等の材料を用いることもできる。
一方、透明性を有さない半導体層に用いられる材料の例としては、アモルファスシリコン、ポリシリコン、有機半導体等を挙げることができる。
【0097】
半導体層の厚みは、構成材料の種類等に応じて所望の半導体特性を実現できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、5nm〜100nmの範囲内とされる。
【0098】
(ii)ゲート電極
本発明に用いられるゲート電極としては、電極としての機能を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなゲート電極としては、例えば、Al等の一般的な金属電極に加え、ITO等の透明電極も使用することができる。
ゲート電極の厚みは、通常、50nm〜500nmの範囲内とされる。
【0099】
(iii)ゲート絶縁層
本発明に用いられるゲート絶縁層としては、所望の絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではない。このようなゲート絶縁層としては、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiNx)、窒化酸化ケイ素(SiOxNy)等のシリコン酸化物もしくはシリコン窒化物からなるもの等を挙げることができる。
【0100】
ゲート絶縁層は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよく、本発明の検査用デバイスの用途等に応じて適宜選択される。中でも、本発明の検査用デバイスを用いた測定に際して、電圧変化のみならず、試料の形態変化も評価する場合には、ゲート絶縁層は透明性を有することが好ましい。これにより、イオン感応層上の生体関連物質を、例えば透過型顕微鏡を用いて観察することが可能になるからである。
透明性を有するゲート絶縁層としては、上記のものを挙げることができる。
【0101】
ゲート絶縁層の厚みは、通常、50nm〜1μmの範囲内とされる。
【0102】
(iv)ソース電極およびドレイン電極
本発明に用いられるソース電極およびドレイン電極は、上記半導体層と接し、かつ互いに対向するように形成されたものである。
【0103】
ソース電極およびドレイン電極に求められる透明性は、トランジスタの配置等により適宜選択される。トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていない場合には、ソース電極およびドレイン電極は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよい。一方、トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されている場合には、ソース電極およびドレイン電極は透明性を有することが好ましい。
【0104】
透明性を有するソース電極およびドレイン電極としては、例えば、ITO、ZnO、SnO2等からなるものを挙げることができる。
また、透明性を有さないソース電極およびドレイン電極としては、例えば、Ti、Mo、Cr、Wからなるもの等を挙げることができる。
ソース電極およびドレイン電極の厚みは特に限定されるものではないが、通常、20nm〜200nmの範囲内とされる。
【0105】
(2)参照電極
本発明に用いられる参照電極は、層間絶縁層上に形成されるものであり、検査用器具の電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に配置されるものである。
【0106】
参照電極の形成位置としては、参照電極が層間絶縁層上に形成されていれば特に限定されるものではなく、参照電極が層間絶縁層上に形成されていてもよくイオン感応層上に形成されていてもよい。
【0107】
なお、参照電極のその他の点については、上記「A.検査用器具」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0108】
(3)外部電極
本発明に用いられる外部電極は、層間絶縁層上に形成されるものであり、検査用器具の電解液用収容部の外部電極用開口部に配置されるものである。
【0109】
外部電極の形成位置としては、外部電極が層間絶縁層上に形成されていれば特に限定されるものではなく、外部電極が層間絶縁層上に形成されていてもよくイオン感応層上に形成されていてもよい。
【0110】
なお、外部電極のその他の点については、上記「A.検査用器具」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0111】
(4)検知用電極
本発明のトランジスタ基板は、層間絶縁層上に形成され、検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置され、トランジスタのゲート電極に電気的に接続された検知用電極をさらに有していてもよい。
上述したように、トランジスタが検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていない場合には、検知用電極が検査用収容部の信号取出用開口部に配置される。
【0112】
検知用電極としては、電極として機能するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、Al等の一般的な金属電極に加え、ITO、IZO、ZnO等の透明電極も使用することができる。
【0113】
検知用電極は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよく、本発明の検査用デバイスの用途等に応じて適宜選択される。
ここで、本発明の検査用デバイスを用いて測定を行う場合は、検査用収容部内のイオン感応層上に測定対象となる試料を付与し、これに伴う電圧変化を後述するトランジスタで検知することになる。本発明の検査用デバイスの用途によっては、単に電圧変化を評価するのみではなく、イオン感応層上に付与された測定対象試料の形態変化も同時に行えることが望ましい場合がある。特に、本発明の検査用デバイスをバイオセンサとして用いる場合には、生体関連物質をイオン感応層上に付与することになるが、生体関連物質の評価に際しては、単に電圧変化を評価することにより、pH等の変化を測定することのみならず、生体関連物質の経時的な形態変化の評価を同時に行えることが望ましい場合がある。また、このような場合において、イオン感応層上の生体関連物質の形態を観察する方法としては、生体関連物質は、例えば細胞等のサイズが微小なものである場合が多いことから、顕微鏡観察が行えることがより好ましいといえる。
このような観点から、検知用電極は、透明性を有する透明電極であることが好ましい。これにより、イオン感応層上の生体関連物質を、例えば、倒立型の透過型顕微鏡を用いて観察することが可能になるからである。なお、この場合、後述のイオン感応層、層間絶縁層、基板等も透明性を有することが好ましい。
【0114】
上述の検知用電極に用いられる材料のうち、透明性を有する検知用電極を形成可能なものとしては、例えば、ITO、IZO、ZnO等を挙げることができる。
【0115】
検知用電極の厚みは、通常、50nm〜500nmの範囲内とされる。
【0116】
検知用電極は、通常、上記トランジスタのゲート電極に接続するように形成される。検知用電極は、上記トランジスタのゲート電極と一体として形成されていてもよい。なお、「一体として」とは、検知用電極とゲート電極とが両者の機能を兼ねる単一の部材として形成されていることを意味する。
【0117】
(5)イオン感応層
本発明に用いられるイオン感応層は、少なくとも検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置されるものである。上記検知用電極が形成されている場合には、イオン感応層は少なくとも検知用電極上に形成される。
【0118】
イオン感応層としては、絶縁性材料からなり、所望のイオンに対する感応性を有するものであれば特に限定されるものではなく、本発明の検査用デバイスの用途や、本発明の検査用デバイスを用いて評価したい対象に応じて適宜選択して用いることができる。イオン感応層に用いられる絶縁性材料としては、例えば、シリコン酸化膜(SiO2)、シリコン窒化膜(Si3N4)、タンタル酸化膜(Ta2O5)または酸化アルミニウム膜(Al2O3)等を挙げることができる。これらの絶縁性材料はいずれも好適に用いることができる。
【0119】
本発明の検査用デバイスがバイオセンサとして用いられる場合、イオン感応層に用いられる絶縁性材料としては、細胞、DNA、糖鎖、タンパク質等の生体関連物質を配置可能なものが用いられる。このような絶縁性材料としては、上述の絶縁性材料を挙げることができる。
なお、本発明の検査用デバイスがバイオセンサとして用いられる場合は、必要に応じて、イオン感応層の表面にDNA、タンパク質、糖鎖を固定化する為の表面修飾がなされていてもよい。このような表面修飾の例としては、金チオール反応やシランカップリング材を使った結合、LB膜等の自己組織化単分子膜の形成方法や、静電吸着、物理吸着等を挙げることができる。
【0120】
イオン感応層は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよく、本発明の検査用デバイスの用途等に応じて適宜選択される。中でも、本発明の検査用デバイスを用いた測定に際して、電圧変化のみならず、試料の形態変化も評価する場合には、イオン感応層は透明性を有することが好ましい。これにより、イオン感応層上の生体関連物質を、例えば透過型顕微鏡を用いて観察することが可能になるからである。
【0121】
透明性を有するイオン感応層を形成可能な材料としては、例えば、SiO2、Si3N4、Ta2O5、Al2O3等を挙げることができる。
【0122】
また、イオン感応層は、絶縁性材料からなるので、後述の層間絶縁層を兼ねることもできる。
【0123】
(6)層間絶縁層
本発明に用いられる層間絶縁層は、トランジスタを覆うように形成されるものである。
【0124】
層間絶縁層としては、絶縁性材料からなるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、酸化ケイ素(SiO2)、窒化ケイ素(SiNx)、窒化酸化ケイ素(SiOxNy)等のシリコン酸化物またはシリコン窒化物等が挙げられる。特に、酸化ケイ素が好ましい。
【0125】
層間絶縁層は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよく、本発明の検査用デバイスの用途等に応じて適宜選択される。中でも、本発明の検査用デバイスを用いた測定に際して、電圧変化のみならず、試料の形態変化も評価する場合には、層間絶縁層は透明性を有することが好ましい。これにより、イオン感応層上の生体関連物質を、例えば透過型顕微鏡を用いて観察することが可能になるからである。
【0126】
透明性を有する層間絶縁層を形成可能な材料としては、例えば、上述の絶縁性材料を挙げることができる。
【0127】
層間絶縁層の膜厚は、諸条件により適宜選択可能であるが、50nm〜1μm程度が好ましい。
【0128】
(7)基板
本発明に用いられる基板としては、上述のトランジスタ、外部電極、参照電極、検知用電極、層間絶縁層、イオン感応層等を支持できるものであれば特に限定されるものではない。このような基板としては、具体的には、ガラス等の無機材料、PEN、PET、透明ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂等の有機材料を挙げることができる。
【0129】
基板は、透明性を有するものであってもよく、または不透明なものであってもよく、本発明の検査用デバイスの用途等に応じて適宜選択される。中でも、本発明の検査用デバイスを用いた測定に際して、電圧変化のみならず、試料の形態変化も評価する場合には、基板は透明性を有することが好ましい。これにより、イオン感応層上の生体関連物質を、例えば透過型顕微鏡を用いて観察することが可能になるからである。
【0130】
基板の形態としては特に限定されるものではなく、例えば、平板、平膜、フィルム、多孔質膜等の平坦な形状や、シリンダ、スタンプ、マルチウェルプレート、マイクロ流路等の立体的な形状が挙げられる。
【0131】
基板がフィルムである場合、基板の厚さは特に限定されないが、通常、1μm〜1mm程度である。
【0132】
(8)アライメントマーク
本発明においては、トランジスタ基板にアライメントマークが形成されていることが好ましい。本発明の検査用デバイスを作製する過程において、電解液用収容部の外部電極用開口部に外部電極を配置し、電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に参照電極を配置し、検査用収容部の信号取出用開口部にイオン感応層を配置する際に、検査用器具およびトランジスタ基板がアライメントマークを有することにより、確実に位置合わせを行うことができるからである。
【0133】
アライメントマークとしては、本発明の検査用デバイスを作製する際に、検査用器具とトランジスタ基板との位置合わせを行うことができるものであれば特に限定されるものではない。
【0134】
上述したようにトランジスタ基板を構成する基板、イオン感応層、層間絶縁層、トランジスタ、検知用電極等が透明性を有する場合には、トランジスタ基板の表裏を判別し難くなる。そのため、このような場合には、アライメントマークの形状は、トランジスタ基板の辺に平行な軸に対して非対称であることが好ましい。アライメントマークの形状が非対称であれば、トランジスタ基板の表側から見たアライメントマークと、トランジスタ基板の裏側から見たアライメントマークとで形状が異なるので、トランジスタ基板の表裏の判別が容易となるからである。
さらに、トランジスタ基板の形状が、正方形等の、対角線に対して対称な形状である場合には、アライメントマークの形状は、トランジスタ基板の対角線に平行な軸に対して非対称であることが好ましい。例えば、トランジスタ基板の形状が正方形である場合、アライメントマークの形状がトランジスタ基板の対角線に平行な軸に対して対称であると、トランジスタ基板の表側から見たアライメントマークと、90度回転させてトランジスタ基板の裏側から見たアライメントマークとで形状が同じになってしまうことがあるからである。
【0135】
図15(a)は検査用器具のアライメントマークの一例を示す概略平面図であり、図15(b)はトランジスタ基板のアライメントマークの一例を示す概略平面図であり、図15(a)に示す検査用器具のアライメントマークと図15(b)に示すトランジスタ基板のアライメントマークとが位置合わせに対応している。
図15(b)に例示するように、トランジスタ基板30に形成されたアライメントマーク45の形状は、トランジスタ基板30の辺に平行な軸46a、47aに対してそれぞれ非対称である。すなわち、アライメントマーク45の形状は、上下左右非対称となっている。また、アライメントマーク45の形状は、トランジスタ基板30の対角線に平行な軸48aに対しても非対称である。
トランジスタ基板のアライメントマークの形状と同様に、図15(a)に例示するように、検査用器具1のアライメントマーク40の形状も、検査用器具1の辺に平行な軸41a、42aに対してそれぞれ非対称である。すなわち、アライメントマーク40の形状は、上下左右非対称となっている。また、アライメントマーク40の形状は、検査用器具1の対角線に平行な軸43aに対しても非対称である。
【0136】
図16(a)は検査用器具のアライメントマークの他の例を示す概略平面図であり、図16(b)はトランジスタ基板のアライメントマークの他の例を示す概略平面図であり、図16(a)に示す検査用器具のアライメントマークと図16(b)に示すトランジスタ基板のアライメントマークとが位置合わせに対応している。
図16(b)に例示するように、トランジスタ基板30に形成されたアライメントマーク45の形状は、トランジスタ基板30の辺に平行な軸46a、47aに対してそれぞれ非対称である。すなわち、アライメントマーク45の形状は、上下左右非対称となっている。また、アライメントマーク45の形状は、トランジスタ基板30の対角線に平行な軸48aに対しても非対称である。
トランジスタ基板のアライメントマークの形状と同様に、図16(a)に例示するように、検査用器具1のアライメントマーク40の形状も、検査用器具1の辺に平行な軸41a、42aに対してそれぞれ非対称である。すなわち、アライメントマーク40の形状は、上下左右非対称となっている。また、アライメントマーク40の形状は、検査用器具1の対角線に平行な軸43aに対しても非対称である。
【0137】
また、トランジスタ基板の表裏の判別を容易とするために、アライメントマークは、上下左右の方向を認識可能なものであってもよい。
例えば、図15(b)において、トランジスタ基板30に形成されたアライメントマーク45は、二つの三角形45a、45bによって上下左右の方向を認識できるようになっている。
【0138】
アライメントマークは、通常、複数形成される。例えば、トランジスタ基板の対向する二辺にアライメントマークが形成されていてもよく、トランジスタ基板の対向する角にアライメントマークが形成されていてもよい。トランジスタ基板の対向する角にアライメントマークが形成されている場合には、トランジスタ基板の四つの角にアライメントマークが形成されていてもよい。
【0139】
アライメントマークが複数形成されている場合、複数のアライメントマークは、トランジスタ基板の辺に平行な軸に対して非対称となるように配置されていることが好ましい。トランジスタ基板および検査用器具の位置合わせを行う際に、複数のアライメントマークが非対称に配置されていれば、トランジスタ基板の表裏の判別が容易となり、確実に位置合わせを行うことができるからである。
さらに、トランジスタ基板の形状が、正方形等の、対角線に対して対称な形状である場合には、複数のアライメントマークは、トランジスタ基板の対角線に平行な軸に対して非対称となるように配置されていることが好ましい。例えば、トランジスタ基板の形状が正方形である場合、アライメントマークの形状がトランジスタ基板の対角線に平行な軸に対して対称であると、トランジスタ基板の表側から見たアライメントマークと、90度回転させてトランジスタ基板の裏側から見たアライメントマークとで形状が同じになってしまうことがあるからである。
【0140】
例えば、図15(b)において、アライメントマーク45がトランジスタ基板30の四つの角に形成されており、トランジスタ基板30の四つの角に形成されたアライメントマーク45は、トランジスタ基板30の辺に平行な軸46b、47bに対してそれぞれ非対称となるように配置されている。すなわち、複数のアライメントマーク45は、上下左右非対称となるように配置されている。また、複数のアライメントマーク45は、トランジスタ基板30の対角線に平行な軸48a、49aに対してもそれぞれ非対称となるように配置されている。
トランジスタ基板のアライメントマークと同様に、図15(a)に例示するように、検査用器具1においても、アライメントマーク40が検査用器具1の四つの角に形成されており、検査用器具1の四つの角に形成されたアライメントマーク40は、検査用器具1の辺に平行な軸41a、42aに対してそれぞれ非対称となるように配置されている。すなわち、複数のアライメントマーク40は、上下左右非対称となるように配置されている。また、複数のアライメントマーク40は、検査用器具1の対角線に平行な軸43a、44aに対しても非対称となるように配置されている。
【0141】
アライメントマークに用いられる材料及び形成方法としては、一般的な材料および形成方法を適用することができる。
【0142】
(9)信号処理回路
本発明においては、トランジスタ基板に信号処理回路が内蔵されていてもよい。これにより、ノイズの影響を減らした評価が可能となるからである。
信号処理回路としては、一般的なものを用いることができる。
【0143】
3.検査用デバイスの用途
本発明の検査用デバイスは、トランジスタのソース電極−ドレイン電極間に一定の電圧を印加しつつ、イオン感応層上に被検査液を付与し、被検査液に参照電極を介して可変電圧を印加すると、イオン感応層に生ずる電位の変化に応じて、半導体層に形成されるチャネル領域が変化し、ドレイン電流の変化を検出することができるものである。この結果、可変電圧に基づくドレイン電流の変化、すなわち、トランジスタとしての電流−電圧特性を、予め測定した標準試料における電流−電圧特性と比較することによって被検査液に含まれる試料の種別を特定することができるようになっている。
【0144】
本発明において、検査用器具が複数個の検査用収容部を有する場合には、アクティブマトリクス駆動の測定が可能である。
【0145】
図17は本発明の検査用デバイスを用いた測定方法の一例を示す模式図であり、アクティブマトリクス駆動による測定の例である。図17に示す検査用デバイスの測定においては、(1)まず、ゲートドライバラインgを一本選択する。(2)次に、参照電極3の一本を選択する。(3)選択した参照電極3と同じデータラインdに電流を挿入する。そのときのデータラインdの電圧を測定する。これにより、選択された検査用収容部の出力電圧が測定可能となる。(4)(2)および(3)を繰り返し、横一列分のデータを取得する。次に、(5)他のゲートドライバラインgを選択して、(2)〜(4)を繰り返す。
【0146】
図18は本発明の検査用デバイスを用いた測定方法の他の例を示す模式図であり、アクティブマトリクス駆動による測定の例である。図18に示す検査用デバイスの測定においては、(1)まず、ゲートドライバラインgを一本選択する。(2)次に、データラインdに電流を挿入する。そのときのデータラインdの電圧を測定する。これにより、選択された検査用収容部の出力電圧が測定可能となる。(3)データラインdを横に順に選択していき、横一列分のデータを取得する。次に、(4)他のゲートドライバラインgを選択して、(1)〜(3)を繰り返す。
なお、図17および図18において、61はゲートドライバ、62は信号処理回路である。
【0147】
また、本発明においては、上記の基板、イオン感応層、層間絶縁層、検知用電極、半導体層等に透明性を有するものを用いることにより、イオン感応層上の試料の形態観察も行うことが可能になる。すなわち、イオン感応層上に付与された試料に対して、上部から光を照射し、その透過光を利用して、基板側から顕微鏡その他の光学観察機器によって観察することができる。また、必要に応じて明視野観察の他に位相差顕微鏡、微分干渉顕微鏡等を用いることも可能である。
【0148】
本発明の検査用デバイスは、このようにして動作するものであることから、あらゆる試料の評価に用いることが可能なものであるが、特に細胞、DNA、糖鎖、タンパク質等の生体関連物質を評価対象とする、バイオセンサとして好適に用いることができる。
【0149】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0150】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。
1.検査用デバイスの作製
まず、図13(a)に示すような所定の開口部を有する、2種類のガラス筒を準備し、電解液用収容部および検査用収容部とした。
また、図13(b)に示すようなトランジスタ基板を作製した。イオン感応層には、SiO2、Si3N4、Ta2O5の3種類の材料を用いた。
次に、電解液用収容部および検査用収容部に接着剤を塗布し、トランジスタ基板上の所定の位置に電解液用収容部および検査用収容部を配置し、検査用デバイスを作製した。
【0151】
2.pH溶液試験
電解液用収容部にKCl溶液を入れ、検査用収容部に種々のpHの溶液を入れて、pH溶液試験を行った。図19〜図21に、トランジスタのトランスファー特性をそれぞれ示す。
イオン感応層がSiO2の場合、一定のドレイン電流IDに対する可変電圧VGの差は、pH4.01とpH7.41とで約0.18V、pH7.41とpH9.18とで約0.05Vとなり、約50mV/pHのpH感度が得られた。
シリコンデバイスを用いた検査用デバイスのpH感度は50mV/pHといわれており、各pHに対して同様の応答をすることが確認できた。
イオン感応層がSi3N4の場合、約140〜190mV/pHのpH感度が得られた。
イオン感応層がTa2O5の場合、約22〜35mV/pHのpH感度が得られた。
以上より、Si3N4をイオン感応層に用いた場合に最も感度が高くなった。
【0152】
3.細胞搭載試験
Si3N4をイオン感応層に用いた検査用デバイスを使用し、電解液用収容部にKCl溶液を入れ、検査用収容部に細胞培養液を入れて、細胞搭載試験を行った。
まず、−80度で冷凍保存してあるHeLa細胞を培養液の入ったシャーレに入れ解凍し培養した。1日ほど培養したものをシャーレからはがしとって使用した。
次に、検査用収容部内の70%をエタノールで満たし、30分間置いた後、乾燥させ、UVによる滅菌処理を15分間実施した。
次いで、検査用収容部内に培養液と2×104個の細胞を入れて1日培養した。図22(a)、(b)に倒立型顕微鏡写真および正立型顕微鏡写真をそれぞれ示す。なお、図22(a)、(b)のスケールは同じである。培養液を通して細胞を見なければならない正立型顕微鏡での観察は像が不鮮明で判断しにくかった。一方、倒立型顕微鏡では、トランジスタ基板が透明性を有することで鮮明な像を見ながらの判断が可能であった。
【0153】
また、1日培養したHeLa細胞に対してアポトーシス(細胞死)試験を実施した。
図23に1日培養したHeLa細胞の顕微鏡写真を示す。図23において、信号取出用開口部h4は破線で示されている。
図24にアポトーシス試験結果を示す。カリウムイオンによると思われる電位の上昇が確認された。
【符号の説明】
【0154】
1 … 検査用器具
3 … 電解液用収容部
4 … 検査用収容部
5 … 接着層
11 … 電解液用収容部の底面
12 … 検査用収容部の底面
13 … 検査用器具の底面
15 … トランジスタ基板配置用凹部
20 … トランジスタ
21 … 基板
22 … ゲート電極
23 … ゲート絶縁層
24 … 半導体層
25 … ソース電極
26 … ドレイン電極
27 … 層間絶縁層
28 … 検知用電極
29 … イオン感応層
30 … トランジスタ基板
31 … 参照電極
32 … 外部電極
h1 … 外部電極用開口部
h2 … 参照電極用開口部
h3 … 参照電極用開口部
h4 … 信号取出用開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部を有し、電解液を収容し得る、少なくとも1個の電解液用収容部と、
底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部を有し、被検査液を収容し得る、少なくとも1個の検査用収容部と
を有することを特徴とする検査用器具。
【請求項2】
底面にトランジスタ基板を配置し得るトランジスタ基板配置用凹部が形成され、前記トランジスタ基板配置用凹部の深さが配置される前記トランジスタ基板の厚さ以上であることを特徴とする請求項1に記載の検査用器具。
【請求項3】
複数個の前記検査用収容部を有し、前記検査用収容部の1列毎に前記電解液用収容部が1個形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検査用器具。
【請求項4】
基板と、前記基板上に形成された少なくとも1個のトランジスタと、前記トランジスタを覆うように形成された層間絶縁層と、前記層間絶縁層上に形成された参照電極および外部電極と、前記層間絶縁層上に形成されたイオン感応層とを有するトランジスタ基板、および、
前記トランジスタ基板の前記イオン感応層、前記参照電極および前記外部電極上に配置された請求項1から請求項3までのいずれかに記載の検査用器具
を備え、前記イオン感応層が少なくとも前記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置され、前記参照電極が前記検査用器具の電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に配置され、前記外部電極が前記検査用器具の電解液用収容部の外部電極用開口部に配置されていることを特徴とする検査用デバイス。
【請求項5】
前記基板が透明基板であることを特徴とする請求項4に記載の検査用デバイス。
【請求項6】
前記トランジスタが、前記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の検査用デバイス。
【請求項7】
前記トランジスタが酸化物半導体層を有することを特徴とする請求項6に記載の検査用デバイス。
【請求項8】
前記トランジスタが、前記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部には配置されておらず、前記層間絶縁層上に検知用電極が形成されており、前記検知用電極が前記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の検査用デバイス。
【請求項9】
前記検知用電極が透明電極であることを特徴とする請求項8に記載の検査用デバイス。
【請求項1】
底面に外部電極用開口部および参照電極用開口部を有し、電解液を収容し得る、少なくとも1個の電解液用収容部と、
底面に参照電極用開口部および信号取出用開口部を有し、被検査液を収容し得る、少なくとも1個の検査用収容部と
を有することを特徴とする検査用器具。
【請求項2】
底面にトランジスタ基板を配置し得るトランジスタ基板配置用凹部が形成され、前記トランジスタ基板配置用凹部の深さが配置される前記トランジスタ基板の厚さ以上であることを特徴とする請求項1に記載の検査用器具。
【請求項3】
複数個の前記検査用収容部を有し、前記検査用収容部の1列毎に前記電解液用収容部が1個形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の検査用器具。
【請求項4】
基板と、前記基板上に形成された少なくとも1個のトランジスタと、前記トランジスタを覆うように形成された層間絶縁層と、前記層間絶縁層上に形成された参照電極および外部電極と、前記層間絶縁層上に形成されたイオン感応層とを有するトランジスタ基板、および、
前記トランジスタ基板の前記イオン感応層、前記参照電極および前記外部電極上に配置された請求項1から請求項3までのいずれかに記載の検査用器具
を備え、前記イオン感応層が少なくとも前記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置され、前記参照電極が前記検査用器具の電解液用収容部の参照電極用開口部および検査用収容部の参照電極用開口部に配置され、前記外部電極が前記検査用器具の電解液用収容部の外部電極用開口部に配置されていることを特徴とする検査用デバイス。
【請求項5】
前記基板が透明基板であることを特徴とする請求項4に記載の検査用デバイス。
【請求項6】
前記トランジスタが、前記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の検査用デバイス。
【請求項7】
前記トランジスタが酸化物半導体層を有することを特徴とする請求項6に記載の検査用デバイス。
【請求項8】
前記トランジスタが、前記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部には配置されておらず、前記層間絶縁層上に検知用電極が形成されており、前記検知用電極が前記検査用器具の検査用収容部の信号取出用開口部に配置されていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の検査用デバイス。
【請求項9】
前記検知用電極が透明電極であることを特徴とする請求項8に記載の検査用デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図24】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図24】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2013−11482(P2013−11482A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143281(P2011−143281)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
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