説明

検査装置及び検査方法

【課題】テレビ等の表示装置において、高度な画像処理を行なうことなく、リモコン等の操作が正常に実行されたか否かを自動的に検査できる検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】液晶テレビ11のディスプレイ12の表示画面による操作機能を検査する検査装置21において、検査の手順を記憶するシナリオ保持部41と、検査を実行する制御信号を生成し出力するシナリオ処理部31と、マスク制御信号を生成し出力するマスク処理部33と、検査制御信号により検査が実行され、マスク制御信号により光の透過が調整された表示画面を撮像するカメラ23と、検査及びマスクの制御により表示される期待表示画面を生成し記憶する期待画像保持部44と、撮像された表示画面と期待表示画面とを比較して検査対象が正常に動作しているか否かを判定する判定処理部35とを備えることを特徴とするものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置及び検査方法に関し、特に表示装置、リモートコントロール装置その他の電子機器を検査する検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルテレビ等に代表される表示装置には、入力切替機能、電子番組ガイド機能、画質調整機能その他の様々な機能が搭載されるようになっている。これらの機能を実行するための操作は、主に表示装置に付随するリモートコントロール装置(略してリモコン)を使用してなされている。
【0003】
そのため、表示装置の機能を検査する際には、リモコンを操作することにより、表示装置本体の機能が正常に動作するか否かの検査が重要となっているが、前述したように、表示装置の多機能化によって、リモコン操作に関する検査項目も多くなり、更に検査内容も複雑化している。
【0004】
しかし、従来、リモコン操作に限らず機能を実行するための操作が正常であるか否かの検査は、手作業によってなされていることが多く、検査時間及び信頼性等の観点から問題があり、検査の自動化が急務となっていた。
【0005】
そこで、携帯電話の操作ボタンによる種々の設定動作が設計通りに行えるようになっているかどうかを簡単かつ自動的に判定できるようにしたものが開示されている。
この従来技術は、予め撮像しておいた携帯電話の全体像を表示部に表示させるとともに、表示した携帯電話の全体画像の表示位置に撮像手段で得た前記表示部の画像を表示し、携帯電話の全体画像の操作ボタンの画像に対して複数の押下手段の一つを割り当て、この割り当てられた操作ボタンの画像部に対する指示操作によって上記押下手段を動作させ、この動作によって変化する携帯電話の表示部の表示内容から、該携帯電話の操作ボタンの押下と上記携帯電話の表示との一致性を確認可能としたものである(特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2001−268202号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、デジタルテレビ等の表示装置の検査においては、以下に示す理由により、上述したような従来の技術をそのまま適用することは困難である。
すなわち、携帯電話の表示部が主に静止画を表示するのに対して、テレビに代表される表示装置の表示部は主に放送番組等の動画を表示する点で状況が異なっている。
【0007】
具体的には、テレビのリモコンによって、何らかの機能を実行するような操作を行った場合には、実行された機能に応じて、動画である放送番組の上に別の表示内容が表示される。別の表示内容とは、例えば、画質調整を行うためのメニュー表示、現在視聴している放送番組のチャンネル表示、EPG(Electronic Program Guide:電子番組ガイド)表示等である。
【0008】
それゆえ、撮像された表示部の画像は、静止画の場合とは異なり、撮像されたタイミングにより変化するので、表示画面全体としては同一の表示となることは極めて稀である。
【0009】
また、テレビの画像表示は、リモコンによりEPG表示等の機能を実行すると、EPG等が表示されている矩形領域の中で、放送番組等の動画をアルファブレンディングにより透過させて見せる場合がある。ここで、アルファブレンディングとは、2枚の画像に対して係数(アルファ値)を使って半透明合成を行うことである。
【0010】
このような場合に、従来の技術を適用するには、テレビの表示内容からアルファブレンディングによる合成がされていない静止画像部分のみを抽出して、あらかじめ撮像した画像と比較する必要がある。しかし、このような静止画像の抽出には、高度な画像処理の手法が必要であり、実現するにはかなりの困難がある。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、テレビ等の動画を表示可能な表示装置において、高度な画像処理を行なうことなく、リモコン等の操作が正常に実行されたか否かを自動的に検査できる検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するための本発明に係る検査装置及び検査方法は、次の通りである。
請求項1に記載した検査装置は、動画を表示可能な表示装置における表示画面による操作機能を検査する検査装置において、検査に関する手順を記憶する検査手順記憶手段と、前記記憶された検査手順に基づいて検査を実行するための制御信号を生成し出力する検査制御信号生成出力手段と、前記記憶された検査手順に基づいて表示画面から発する光の透過を調整するマスクを制御するマスク制御信号を生成し出力するマスク制御信号生成出力手段と、前記記憶された検査手順に基づいて前記検査制御信号により検査が実行され、かつ前記マスク制御信号により光の透過が調整された検査対象の表示画面を撮像する表示画面撮像手段と、前記検査手順に基づく検査及び前記マスクの制御により表示が期待される期待表示画面を生成し記憶する期待表示画面生成記憶手段と、前記撮像された表示画面と前記期待表示画面とを比較して検査対象が正常に動作しているか否かを判定する検査判定手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0013】
この検査装置を用いて、それぞれ機能する前記手段をコンピュータの制御により次の手順で検査を行う。
まず、検査実行前にリモコンの操作、カメラによる撮像、画像判定を行うタイミング、リモコンの操作に対応するマスクデータと結果として期待される画像を記録しておいたテストシナリオを用意し、検査装置に保存しておく。次に、検査開始命令を受けると検査手順に従い、リモコン操作命令の場合はリモコンの操作を行い、判定操作の場合はマスクの制御、カメラによる撮像、画像の判定の順に処理を行う。このようにして本発明に係る検査装置により自動的にリモコン機能の検査を行うことが可能となる。
【0014】
請求項2に記載の検査装置は、請求項1に記載した発明の構成に加えて、前記マスク制御信号を、前記検査対象の表示画面と前記表示画面撮像手段との間に設けられた液晶シャッターを制御する信号とすることを特徴とするものである。
【0015】
請求項3に記載の検査装置は、請求項1に記載した発明の構成に加えて、前記マスク制御信号を、前記検査対象の表示画面の明るさを調整するバックライトを制御する信号とすることを特徴とするものである。
【0016】
請求項4に記載の検査装置は、請求項1に記載した発明の構成に加えて、前記マスク制御信号を、前記検査対象の表示画面を表示するためのドライバを制御する信号とすることを特徴とするものである。
【0017】
また、請求項5に記載の検査方法は、動画を表示可能な表示装置における表示画面による操作機能を検査する検査方法において、検査に関する手順を記憶する工程と、前記記憶された検査手順に基づいて検査を実行するための制御信号を生成し出力する工程と、前記記憶された検査手順に基づいて表示画面から発する光の透過を調整するマスクを制御するマスク制御信号を生成し出力する工程と、前記記憶された検査手順に基づいて前記検査制御信号により検査が実行され、かつ前記マスク制御信号により光の透過が調整された検査対象の表示画面を撮像する工程と、前記検査手順に基づく検査及び前記マスクの制御により表示が期待される期待表示画面を生成し記憶する工程と、前記撮像された表示画面と前記期待表示画面とを比較して検査対象が正常に動作しているか否かを判定する工程と、を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載した発明によれば、動画を表示可能な表示装置における表示画面による操作機能を検査する検査装置において、検査に関する手順を記憶する検査手順記憶手段と、前記記憶された検査手順に基づいて検査を実行するための制御信号を生成し出力する検査制御信号生成出力手段と、前記記憶された検査手順に基づいて表示画面から発する光の透過を調整するマスクを制御するマスク制御信号を生成し出力するマスク制御信号生成出力手段と、前記記憶された検査手順に基づいて前記検査制御信号により検査が実行され、かつ前記マスク制御信号により光の透過が調整された検査対象の表示画面を撮像する表示画面撮像手段と、前記検査手順に基づく検査及び前記マスクの制御により表示が期待される期待表示画面を生成し記憶する期待表示画面生成記憶手段と、前記撮像された表示画面と前記期待表示画面とを比較して検査対象が正常に動作しているか否かを判定する検査判定手段と、を備えることにより、それぞれ機能する前記手段をコンピュータにより制御して、検査実行前にリモコンの操作、カメラによる撮像、画像判定を行うタイミング、リモコンの操作に対応するマスクデータと結果として期待される画像を記録しておいたテストシナリオを用意し、検査装置に保存し、検査開始命令を受けると検査手順に従い、リモコン操作命令の場合はリモコンの操作を行い、判定操作の場合はマスクの制御、カメラによる撮像、画像の判定の順に処理を行うことで、テレビ等の動画を表示可能な表示装置において、高度な画像処理を行なうことなく、リモコン等の操作が正常に実行されたか否かを自動的に検査できる検査装置を実現できる。
【0019】
また、請求項2〜4に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明で得られる上記共通の効果に加え、次の効果を得ることができる。
【0020】
すなわち、請求項2に記載した発明によれば、請求項1に記載の発明で得られる効果に加えて、前記マスク制御信号を、前記検査対象の表示画面と前記表示画面撮像手段との間に設けられた液晶シャッターを制御する信号とすることで、液晶シャッターを制御して容易に自動検査を行うことができる。
【0021】
請求項3に記載した発明によれば、請求項1に記載の発明で得られる効果に加えて、前記マスク制御信号を、前記検査対象の表示画面の明るさを調整するバックライトを制御する信号とすることで、バックライトを制御して容易に自動検査を行うことができる。
【0022】
請求項4に記載した発明によれば、請求項1に記載の発明で得られる効果に加えて、前記マスク制御信号を、前記検査対象の表示画面を表示するためのドライバを制御する信号とすることで、表示画面を制御して容易に自動検査を行うことができる。
【0023】
また、請求項5に記載した発明によれば、動画を表示可能な表示装置における表示画面による操作機能を検査する検査方法において、検査に関する手順を記憶する工程と、前記記憶された検査手順に基づいて検査を実行するための制御信号を生成し出力する工程と、前記記憶された検査手順に基づいて表示画面から発する光の透過を調整するマスクを制御するマスク制御信号を生成し出力する工程と、前記記憶された検査手順に基づいて前記検査制御信号により検査が実行され、かつ前記マスク制御信号により光の透過が調整された検査対象の表示画面を撮像する工程と、前記検査手順に基づく検査及び前記マスクの制御により表示が期待される期待表示画面を生成し記憶する工程と、前記撮像された表示画面と前記期待表示画面とを比較して検査対象が正常に動作しているか否かを判定する工程と、を備えることにより、それぞれ機能する前記手段をコンピュータにより制御して、検査実行前にリモコンの操作、カメラによる撮像、画像判定を行うタイミング、リモコンの操作に対応するマスクデータと結果として期待される画像を記録しておいたテストシナリオを用意し、検査装置に保存し、検査開始命令を受けると検査手順に従い、リモコン操作命令の場合はリモコンの操作を行い、判定操作の場合はマスクの制御、カメラによる撮像、画像の判定の順に処理を行うことで、テレビ等の動画を表示可能な表示装置において、高度な画像処理を行なうことなく、リモコン等の操作が正常に実行されたか否かを自動的に検査できる検査方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1〜図2は発明を実施する形態の一例であって、図1は本発明の実施形態に係る検査装置の全体の構成を示す説明図、図2は前記検査装置を構成するコンピュータの構成を示すブロック図である。
【0025】
本実施形態に係る検査装置21は、図1に示すように、主に、リモコン24、液晶シャッター25、カメラ23、およびこれらを制御するコンピュータ22から構成され、動画表示が可能な液晶テレビ11のディスプレイ(表示装置)12の表示画面による操作機能を検査するものである。
【0026】
カメラ23は、ディスプレイ12の撮像を行うための表示画面撮像手段である。
液晶シャッター25は、ディスプレイ12の前方に配置され、このディスプレイ12の液晶パネルにマスクをかけるためのマスク制御手段である。
ここで、マスクとはディスプレイ12からの光を遮ることにより、表示される映像の任意の部分を隠すことである。
【0027】
検査対象となる液晶テレビ11は、ディスプレイ12とリモコン受信部13を備えている。リモコン24は赤外線信号出力手段である。リモコン24から出力された信号を液晶テレビ11がリモコン受信部13で受け取ったときに、ディスプレイ12に動画表示さている放送番組の上に、リモコン24の操作内容に従って別の表示内容が表示されるようになっている。
【0028】
検査装置21は、ディスプレイ12の表示内容の変化をカメラ23によって撮像し、撮像した画像と検査開始前にコンピュータ22に記憶しておいた期待表示画像とをコンピュータ22が比較することにより、液晶テレビ11が正常に動作しているかを判定する。
【0029】
次に、検査装置21を構成するコンピュータ22について説明する。
コンピュータ22は、図2に示すように、シナリオ処理部31、リモコン信号制御部32、マスク処理部33、撮像処理部34、判定処理部35、シナリオ保持部41、マスクデータ保持部42、撮像画像保持部43、期待画像保持部44、編集画像保持部45、および入力装置51、結果表示・保存部52で構成される。
【0030】
シナリオ保持部41は、検査対象に対して検査する手順を記録したシナリオを記憶させる検査手順記憶手段である。
【0031】
マスクデータ保持部42は、検査手順の中でリモコン操作に対応した表示画面へかけるマスクの画像をマスクデータファイルとして記憶させるマスク制御情報記憶手段である。
【0032】
入力装置51は、ユーザがシナリオ保持部41に記憶されたシナリオから検査する手順のシナリオを選び検査開始命令を出すための入力手段である。
【0033】
撮像画像保持部43は、カメラ23が撮像した画像を記憶する撮像画像記憶手段である。
【0034】
期待画像保持部44は、シナリオ中のリモコン操作に対応した表示結果である期待表示画面を生成し検査開始前に記憶する期待表示画面生成記憶手段である。
【0035】
シナリオ処理部31は、シナリオ保持部41から取り出したシナリオの内容、実行時間に従って、リモコン信号制御部32に、マスク処理部33、撮像処理部34、および判定処理部35へ検査制御信号を出力する検査制御信号生成出力手段である。
【0036】
ここで、リモコン信号制御部32に対する検査制御信号とは、リモコン24に対してどのように赤外線出力させるかのキーコードおよび、実行命令である。
マスク処理部33に対する検査制御信号とは、マスクデータ内容を液晶シャッター25に出力させるかのマスクデータファイル名および、実行命令である。
撮像処理部34に対する検査制御信号とは、カメラ23に対してディスプレイ12の撮像を行い撮像画像保持部43に撮像画像を保存させる実行命令である。
判定処理部35に対する検査制御信号とは、撮像画像保持部43から撮像画像を取り出させる実行命令、期待画像保持部44からどの期待表示画像を取り出させるかのファイル名、および判定実行命令である。
【0037】
リモコン信号制御部32は、シナリオ処理部31から検査制御信号が送られてきたときに、指定されたキーコードに対応した赤外線制御信号をリモコン24へ出力する赤外線信号生成手段である。
【0038】
マスク処理部33は、シナリオ処理部31から検査制御信号が送られてきたときに、マスクデータ保持部42から取り出すマスクデータファイルをマスク制御信号として出力し、液晶シャッター25が取り出したマスクデータに従った光の調整を行うように命令するマスク制御信号生成出力手段である。
【0039】
撮像処理部34は、シナリオ処理部31から検査制御信号が送られてきたときに、液晶シャッター25によってマスクのかけられた表示画面を撮像し、撮像した画像を撮像画像保持部43に保存するようにカメラ23に命令するものである。
【0040】
判定処理部35は、シナリオ処理部31から検査制御信号が送られてきたときに、期待画像保持部44から指定された期待画像ファイルを取り出し、この期待画像と撮像画像保持部43から取り出した撮像画像とを重ね合わせることにより差分画像を作成し、これら2つの画像が一致するか否かの判定を行う検査判定手段であり、その判定結果を結果表示・保存部52へ送るものである。
【0041】
結果表示・保存部52は、判定処理部35より送られたシナリオの判定結果をコンピュータ22のディスプレイに表示するものである。
【0042】
次に、コンピュータ22を構成するシナリオ処理部31について図面を参照して説明する。
図3は本実施形態に係るシナリオ処理部の構成を示すブロック図である。
シナリオ処理部31は、図3に示すように、入力処理部311、シナリオ読み出し部312、シナリオ解釈部313、シナリオ実行部314、およびタイマー315を備える。
【0043】
入力処理部311は、入力装置51から検査開始命令を受け取り、シナリオ読み出し部312にシナリオの読み出しを指示するものである。
【0044】
シナリオ読み出し部312は、入力処理部311から命令を受けたときに、シナリオ保持部41からテストシナリオを取り出し、テストシナリオを1行読み出し、シナリオ解釈部313に渡すものである。
【0045】
シナリオ解釈部313は、シナリオ読み出し部312が読み出した命令から、操作実行時間、操作分類、操作内容を解釈し、タイマー315に操作実行時間、シナリオ実行部314操作分類と操作内容を渡すものである。
【0046】
タイマー315は、シナリオ解釈部313から渡された操作実行時間を計測しシナリオ実行部314に通知するものである。
【0047】
シナリオ実行部314は、シナリオ解釈部313が解釈した命令を受け取り、タイマー315から操作実行時間が通知されると、操作分類、操作内容に従って各制御部へ検査制御信号を出力するものである。ここで、操作分類とは、シナリオに書かれた操作がリモコン操作であるか判定操作であるかを指す。また、操作内容とは、シナリオに書かれた操作分類がリモコン操作である場合にはリモコンのキーコードを指す。
【0048】
操作分類がリモコン操作である場合には、シナリオ実行部314は、リモコン信号制御部32へ操作内容に書かれた検査制御信号を出力する。
【0049】
一方、操作分類が判定操作である場合には、シナリオ実行部314は、マスク処理部33、撮像処理部34、判定処理部35の順に操作内容に書かれた検査制御信号を出力する。
【0050】
次に、本実施形態に係る検査装置21により表示画面による操作機能を検査する処理工程についてフローチャートに基づき説明する。
図4は本実施形態に係る検査装置により検査を行なう際の処理フローを示すフローチャートである。
【0051】
まず、検査開始前に検査を実行するためのシナリオファイルをシナリオ保持部41に保存し、マスクデータをマスクデータ保持部42に保存し、及び期待画像を期待画像保持部44に保存する。
【0052】
検査開始の命令がキーボード入力部よりシナリオ処理部へ渡されると、ステップS11において、シナリオ処理部31がシナリオ保持部41より検査開始時に指定されたシナリオファイルを取り出し、ステップS12へ進む。
【0053】
ステップS12において、シナリオ処理部31がシナリオを一行読み出し、ステップS13へ進む。
【0054】
ステップS13において、シナリオ処理部31が読み出したシナリオがあるか(Y)否か(N)を判定し、シナリオが存在しない場合はテスト終了となる。一方、シナリオが存在する場合はステップS14へ進む。
【0055】
ステップS14において、シナリオ処理部31がテスト開始からの時間が命令実行時間に一致するか(Y)否か(N)を判定し、一致する場合はステップS15へ進み、一致しない場合は再びステップS14に戻り、命令実行時間まで繰り返す。
【0056】
ステップS15において、シナリオ処理部31が読み出したシナリオの実行命令がリモコン操作であるか(Y)否か(N)を判断し、リモコン操作である場合はステップS16へ進み、リモコン操作でない場合はステップS17へ進む。
【0057】
ステップS16において、シナリオ処理部31がリモコン信号制御部32へ検査制御信号を送り、対応する赤外線信号の出力を行い、終了後にステップS12へ戻る。
【0058】
ステップS17において、シナリオ処理部31がシナリオの実行命令が判定操作であるか(Y)否か(N)を判断し、判定操作である場合はステップS18へ進み、判定操作でない場合はステップS12へ戻る。
【0059】
ステップS18において、シナリオ処理部31がマスク処理部33へ検査制御信号を送り、マスクデータ保持部42からシナリオの判定操作の中で指定されたマスクデータを取り出し、液晶シャッター25を制御してディスプレイ12にマスクをかける制御を行い、終了後ステップS19に進む。
【0060】
ステップS19において、シナリオ処理部31が撮像処理部34へ検査制御信号を送り、マスクのかけられたディスプレイ12をカメラ23で撮像し、撮像した画像を撮像画像保持部43に保存することを行い、終了後ステップS20に進む。
【0061】
ステップS20において、シナリオ処理部31が判定処理部35へ検査制御信号を送り、撮像画像保持部43に保存されている撮像画像と、期待画像保持部44に保存されているシナリオの判定の中で指定された期待画像を取り出し、操作終了後ステップS21に進む。
【0062】
ステップS21において、判定処理部35が取り出した2つの画像を重ね合わせて、差分画像を作り、画像のずれを考慮して閾値によるフィルタをかけ、終了後ステップS22に進む。
【0063】
ステップS22において、判定処理部35が画像全体に対するフィルタをかけた後の差分の割合がシナリオで指定した範囲内におさまる場合は2つの画像が一致していると判定し、範囲を超える場合は不一致と判定し、終了後ステップS23へ進む。
【0064】
ステップS23において、結果表示・保存部52が判定処理部35の出した判定結果をディスプレイに表示し、ファイルを作成して保存することを行い、終了後ステップS12に戻る。
【0065】
ここで、本実施形態におけるマスク制御について図面を参照して説明する。
図5は本実施形態に係る液晶テレビにおけるマスク制御の一例を示す説明図であって、(a)は前記液晶テレビのディスプレイの映像画面に現れる表示画像の一例を示す簡略化した説明図、(b)は前記表示画像を評価するための期待画像を示す説明図、(c)は前記映像画面にマスクをかけるためのマスクデータを示す説明図、(d)は前記マスクデータの一部を拡大したマスク拡大図を示す部分詳細図、(e)は前記映像画面にマスクデータを重ね合わせた状態を示す説明図である。
【0066】
本実施形態に係る液晶テレビ11は、リモコン24の操作により機能実行を行うと、ディスプレイ12の表示画面上で放送番組等の動画の上に別の表示内容が表示されるようになっている。
【0067】
例えば、リモコン24のチャンネルボタンを押すとチャンネル番号が表示されたり、メニューボタンを押すとメニューバーが表示されたり、番組表ボタンを押すとEPG画面が表示されたりする。
【0068】
ディスプレイ12に表示される映像画面61は、図5(a)に示すように、例えば、リモコン24のいずれかのボタンが操作された際に、放送番組の表示画面上に、前記操作により出現する表示画像61aが表示される。
【0069】
この表示状態の時に、リモコン操作後に期待された画面が表示されたかどうかを評価するために、新たに表示された図形(表示画像61a)が正しく表示されているかをチェックすることが好ましい。
【0070】
従って、期待表示画像としては、図5(b)に示すように、図形のみを評価対象として、図形以外の部分全体を取り除いた期待画像62を用意する。
なお、文字を対象とする場合でも、文字を図形とみなすことによって同様に扱うことができる。
【0071】
マスクデータ63は、図5(c)に示すように、映像画面61にマスクをかけるための画像である。このマスクデータ63は、検査実行前に期待画像62を基にしてドット単位で光を透過させる部分を白、光を透過させない部分を黒と表現するように作成されている。
そして、図5(d)に示すマスクデータ63の一部を拡大した一例としてマスク拡大図64のように、光を透過させないか否かを1画素ずつ指定することにより、全体としてマスクデータ63となるように構成されている。
【0072】
以上のように構成されたマスクデータ63を映像画面61の上に配置して撮像することにより、図5(e)に示す重ね合わせ図65のように、評価に必要のない部分に対してマスクをかけた画像を得ることができる。
【0073】
以上のように、マスクデータ63は、その光を透過させる部分を評価に必要な図形部分だけに絞り込むことが可能なため、表示画面の他の部分の影響を極力排除した撮像画像を得ることが可能となる。これにより、放送番組の動画の上に図形を含む表示内容がアルファブレンディングで半透明合成されている場合でも、半透明の放送番組の動画の影響を極力少なくすることが可能である。
【0074】
次に、本実施形態に係る検査装置21によるリモコン操作機能の検査について図面を参照して説明する。
図6は本実施形態に係る液晶テレビにおける表示画像の一例を示す説明図であって、(a)はリモコン操作機能が正常に機能した時の前記液晶テレビのディスプレイに表示された映像画面にマスクデータを重ね合わせた撮像画像の一例を示す説明図、(b)は前記撮像画像と期待画像から作成した差分画像の一例を示す説明図、(c)はリモコン操作機能が正常に機能しなかった時の前記液晶テレビのディスプレイに表示された映像画面にマスクデータを重ね合わせた撮像画像の別の例を示す説明図、(d)は前記撮像画像と期待画像から作成した差分画像の一例を示す説明図である。
【0075】
リモコン操作機能が正常に機能した場合、マスクデータ63を映像画面61の上に配置して撮像された撮像画像(成功)66は、図6(a)に示すように、表示画像61aとこの表示画像61aの部分全体を取り除いた期待画像62とを重ねた通りの画像となる。
【0076】
この時の期待画像62と撮像画像66を重ね合わせたときの差分を取ることによって得られた差分画像(成功)67は、図6(b)に示すように、真っ白な差分画像となる。
これにより、期待画像62とまったく同じ画像が撮像されたことを意味し、リモコン操作が正常に機能したと判定することができる。
【0077】
一方、リモコン操作機能が正常に機能していない場合の撮像画像(失敗)68は、図6(c)に示すように、表示画像61aとこの表示画像61aの部分全体を取り除いた期待画像62とを重ねたものとは異なる画像となる。本実施形態では、表示画像61aに相当する部分が白く抜けた状態となり、その中央部が丸くマスクがかかった状態となっている。
【0078】
この時の期待画像62と撮像画像66を重ね合わせたときの差分を取ることによって得られた差分画像(失敗)69は、図6(d)に示すように、真っ白な差分画像とは成らずに、表示画像61aに相当する部分に差分領域が存在して、上記差分画像67とは異なる差分画像となる。すなわち、リモコン操作が正常に機能していないと判定することができる。
【0079】
以上のように構成したので、本実施形態によれば、マスクデータ63を映像画面61の上に配置して撮像画像を得るとともに、とその撮像画像に対応する期待画像とを重ね合わせて得られる差分画像に基づき、容易にリモコン操作が正常に機能したか否かを判定することができる。
【0080】
尚、一般的にはカメラによる撮像を行った場合には、本実施形態に示すように全く同じ画像を得られるとは限らず、従って、正常にリモコン操作が機能した場合でも真っ白な差分画像が得られるとは限らない。
【0081】
そこで、差分画像内に現れた差分領域が全体に占める割合にあらかじめ上限を設定し、その範囲内(上限の値内)に収まっている場合は正常に機能したと判定するようにしたものであっても良い。
【0082】
以下に、本実施形態に係る検査装置21における検査手順のシナリオについて図面を参照して説明する。
図7は本実施形態に係る検査装置における検査手順のシナリオの内容を示す説明図である。
【0083】
検査装置21における検査手順のシナリオにおける一つの実行命令は、例えば、図7に示すように、実行時間71、操作分類72、及び操作内容73で構成される。
実行時間71は、検査開始からの経過時間を表すものである。
操作分類72は、操作がリモコン操作であるか判定操作であるかを示すものである。
操作内容73は、操作分類72に対して具体的な操作を行うための情報である。
【0084】
例えば、操作分類72がリモコン操作である場合は、操作内容73にはリモコン操作を行うためにキーコードを書いておく。
【0085】
操作分類72が判定操作の場合は、操作内容73には判定に用いるためのマスクデータファイル名、期待表示画像ファイル名、および判定値を書いておく。
【0086】
ここで、判定値とは、撮像画像と期待画像の2つの画像が一致しているかどうかを判定する際に、差分領域が画像全体に占める割合を許可する上限の値とする。
【0087】
以上のようなシナリオにすることで、差分画像内に現れた差分領域が設定の範囲内(上限の値内)に収まっている場合は正常に機能したと判定することができる。
【0088】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。
図8は本発明の第2実施形態に係る検査装置の全体の構成を示す説明図である。
尚、図8において、図1に示す第1実施形態に係る検査装置と同一の構成要素には同一符号を付することで説明を省略する。
【0089】
本実施形態に係る検査装置121は、1画素ずつ発光することが可能なディスプレイを検査対象とするものである。
例えば、有機EL(electro−luminescence)ディスプレイや、表面電界ディスプレイ(SED;Surface−conduction Electron−emitter Display)、プラズマディスプレイ、LEDバックライトを使用した液晶ディスプレイなどである。
【0090】
検査装置121は、図8に示すように、ディスプレイ12の表示画面にマスクをかけるためのマスク制御手段として、発光制御部26用いて発光部(バックライト)14を制御することによって表示画面の光の調整を行うようにしたものである。
【0091】
検査装置121を構成するコンピュータ22の構成および作用は、上述した第1実施形態の検査装置21と同様な構成を有し、同様な作用を実現するものである。
【0092】
コンピュータ22内のマスク処理部33は、発光制御部26へマスク制御信号を送る機能と、発光部14における発光させる部分と発光させない部分を調整する機能とを有している。
このように構成することで、ディスプレイ12の表示画面上で光る場所と光らない場所を作成することが可能となる。
【0093】
以上のように構成したので、本実施形態によれば上述した第1実施形態と同様に、カメラ23により撮像された撮像画像に対応する期待画像とを重ね合わせた得られる差分画像に基づき、容易にリモコン操作が正常に機能したか否かを判定することができる。
【0094】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図面を参照して説明する。
図9は本発明の第3実施形態に係る検査装置の全体の構成を示す説明図である。
尚、図9において、図1に示す第1実施形態に係る検査装置と同一の構成要素には同一符号を付することで説明を省略する。
【0095】
本実施形態に係る検査装置221は、ディスプレイ12に表示する画面情報を記録してあるフレームバッファ(記憶手段)とは別に、フレームバッファ内の情報をコピー可能なメモリ領域(記憶手段)を備え、また、メモリ領域にコピーされた画像情報に基づきディスプレイ12に画像を表示するためのドライバ15を備えている。
【0096】
検査装置221を構成するコンピュータ22の構成および作用は、上述した第1実施形態の検査装置21と同様な構成を有し、同様な作用を実現するものである。
【0097】
コンピュータ22内のマスク処理部33は、ドライバ15へマスク制御信号を送る機能と、前記メモリ領域にコピーしたメモリの上に直接マスクデータを埋めることによりディスプレイ12に表示させる内容を書き換えて、そのメモリをドライバ15に参照させる機能とを備えている。
このように構成することで、ディスプレイ12の表示画面上で光る場所と光らない場所を作成することが可能となる。
【0098】
以上のように構成したので、本実施形態によれば上述した第1実施形態と同様に、カメラ23により撮像された撮像画像に対応する期待画像とを重ね合わせた得られる差分画像に基づき、容易にリモコン操作が正常に機能したか否かを判定することができる。
【0099】
尚、本発明の検査装置及び検査方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の第1実施形態に係る検査装置の全体の構成を示す説明図である。
【図2】前記検査装置を構成するコンピュータの構成を示すブロック図である。
【図3】前記検査装置のシナリオ処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】前記検査装置により検査を行なう際の処理フローを示すフローチャートである。
【図5】(a)は本実施形態に係る液晶テレビのディスプレイの映像画面に現れる表示画像の一例を示す簡略化した説明図、(b)は前記表示画像を評価するための期待画像を示す説明図、(c)は前記映像画面にマスクをかけるためのマスクデータを示す説明図、(d)は前記マスクデータの一部を拡大したマスク拡大図を示す部分詳細図、(e)は前記映像画面にマスクデータを重ね合わせた状態を示す説明図である。
【図6】(a)はリモコン操作機能が正常に機能した時の前記液晶テレビのディスプレイに表示された映像画面にマスクデータを重ね合わせた撮像画像の一例を示す説明図、(b)は前記撮像画像と期待画像から作成した差分画像の一例を示す説明図、(c)はリモコン操作機能が正常に機能しなかった時の前記液晶テレビのディスプレイに表示された映像画面にマスクデータを重ね合わせた撮像画像の別の例を示す説明図、(d)は前記撮像画像と期待画像から作成した差分画像の一例を示す説明図である。
【図7】前記検査装置における検査手順のシナリオの内容を示す説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る検査装置の全体の構成を示す説明図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る検査装置の全体の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0101】
11 液晶テレビ
12 ディスプレイ(表示装置)
13 リモコン受信部
15 ドライバ
21,121,221 検査装置
22 コンピュータ
23 カメラ(表示画面撮像手段)
24 リモコン
25 液晶シャッター
31 シナリオ処理部(検査制御信号生成出力手段)
32 リモコン信号制御部
33 マスク処理部(マスク制御信号生成出力手段)
34 撮像処理部
35 判定処理部(検査判定手段)
311 入力処理部
312 シナリオ読み出し部
313 シナリオ解釈部
314 シナリオ実行部
315 タイマー
41 シナリオ保持部(検査手順記憶手段)
42 マスクデータ保持部
43 撮像画像保持部
44 期待画像保持部(期待表示画面生成記憶手段)
45 編集画像保持部
51 入力装置
52 結果表示・保存部
61 映像画面
61a 表示画像
62 期待画像
63 マスクデータ
66 撮像画像(成功)
67 差分画像(成功)
68 撮像画像(失敗)
69 差分画像(失敗)
71 実行時間
72 操作分類
73 操作内容

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画を表示可能な表示装置における表示画面による操作機能を検査する検査装置において、
検査に関する手順を記憶する検査手順記憶手段と、
前記記憶された検査手順に基づいて検査を実行するための制御信号を生成し出力する検査制御信号生成出力手段と、
前記記憶された検査手順に基づいて表示画面から発する光の透過を調整するマスクを制御するマスク制御信号を生成し出力するマスク制御信号生成出力手段と、
前記記憶された検査手順に基づいて前記検査制御信号により検査が実行され、かつ前記マスク制御信号により光の透過が調整された検査対象の表示画面を撮像する表示画面撮像手段と、
前記検査手順に基づく検査及び前記マスクの制御により表示が期待される期待表示画面を生成し記憶する期待表示画面生成記憶手段と、
前記撮像された表示画面と前記期待表示画面とを比較して検査対象が正常に動作しているか否かを判定する検査判定手段と、
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記マスク制御信号は、前記検査対象の表示画面と前記表示画面撮像手段との間に設けられた液晶シャッターを制御する信号であることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記マスク制御信号は、前記検査対象の表示画面の明るさを調整するバックライトを制御する信号であることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記マスク制御信号は、前記検査対象の表示画面を表示するためのドライバを制御する信号であることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
動画を表示可能な表示装置における表示画面による操作機能を検査する検査方法において、
検査に関する手順を記憶する工程と、
前記記憶された検査手順に基づいて検査を実行するための制御信号を生成し出力する工程と、
前記記憶された検査手順に基づいて表示画面から発する光の透過を調整するマスクを制御するマスク制御信号を生成し出力する工程と、
前記記憶された検査手順に基づいて前記検査制御信号により検査が実行され、かつ前記マスク制御信号により光の透過が調整された検査対象の表示画面を撮像する工程と、
前記検査手順に基づく検査及び前記マスクの制御により表示が期待される期待表示画面を生成し記憶する工程と、
前記撮像された表示画面と前記期待表示画面とを比較して検査対象が正常に動作しているか否かを判定する工程と、
を備えることを特徴とする検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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