説明

検査装置

【課題】無機質成形体の製造ラインでグリーンシートの検査を行う際、グリーンシートに対して養生硬化が進む前に速やかに外形検査を行い、且つ検査後にセメント系成形材料として再生する。
【解決手段】グリーンシート1が載置されたトレー2を搬送する搬送コンベア3から任意のトレー2を取り出して移送するトレー移送装置4、トレー移送装置4にて供給されるトレー2に載置されたグリーンシート1の検査がなされる検査ステージ5、検査後のトレー2がトレー移送装置4により供給され、これを搬送するトレー返送コンベア6、トレー返送コンベア6における搬送途中のトレー2に載置されたグリーンシート1が供給されてこのグリーンシート1を搬送する材料返送コンベア7を具備する。トレー返送コンベア6が、トレー2を傾動させることでトレー2に載置されているグリーンシート1をトレー2から材料返送コンベア7へ滑落させて移送する材料移送装置8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系成形材料を成形して得られるグリーンシートを養生硬化することにより無機質成形体を製造するにあたって、製造過程の任意のグリーンシートについて外形形状検査を行うための検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
セメント系成形材料を成形してグリーンシートを形成し、これを養生硬化することにより得られる無機質成形体は、外装建材等として広く利用されている。
【0003】
このような無機質成形体を製造するにあたっては、従来、例えば押出成形機等によりセメント系成形材料を押出成形して所望の形状のグリーンシートを形成し、このグリーンシートを適宜のトレーに載置した状態でコンベアベルト等により搬送し、このグリーンシートを複数段積載して養生庫内へ移送し、この養生庫内にてグリーンシートを養生硬化して無機質成形体を得るようにしている。
【0004】
このような無機質成形体の製造ラインにおいては、グリーンシートが所望の寸法に形成されているか否かを定期的に検査する必要がある。特に近年、その表面に凹凸模様を設けることにより高い意匠性を付与することが求められるようになってきており、そのためグリーンシートの搬送過程においてロールプレスや平板プレス等により所望の凹凸模様を形成することが行われるようになってきている。このため、グリーンシートに凹凸模様が正確に形成されているかを検査する必要が生じるようになってきている。
【0005】
また、グリーンシートの養生硬化により所望の強度を有する無機質成形体を得るようにするために、グリーンシートが所望の硬度(アスカー硬度)に形成されているか否かも検査する必要がある。
【0006】
このようなグリーンシートの検査を行う場合は、従来、例えばコンベアベルト等にて搬送されたグリーンシートを複数段積載した後に、任意のグリーンシート(例えば最上段に配置されたグリーンシート)を取り出して、このグリーンシートの外形形状をノギス等により検査したり、その硬度を硬度計にて測定したりし、不良が発生した場合に製造ラインにおける不良発生の原因を調査してこれを取り除くようにしていた。そして、検査後のグリーンシート1はノギスや硬度計等をあてるために表面にキズ(検査キズ)がつくため、通常は製品化することなく廃棄するようにしていた。
【0007】
しかし、上記のように検査後のグリーンシートを廃棄したのでは材料の無駄が生じてしまうため、製造コストの上昇の原因となり、また近年の資源の有効活用への要請にも反するものとなってしまう。
【0008】
そこで、検査後のグリーンシートを破砕するなどしたものを、グリーンシートを形成するためのセメント系成形材料として再利用することも考えられるが、検査に供したグリーンシートを移送するために煩雑な手間がかかり、また搬送工程や積載工程を経た後、更に外形検査が為されたグリーンシートは、成形後、相当の時間が経過してしまっているものであるため、ある程度の養生硬化が進行することは避けがたい。このような養生硬化が進行しているグリーンシートをセメント系成形材料として再利用すると、セメント系成形材料の品質を一定に保つことが困難となり、ひいては最終的に得られる無機質成形体の品質安定性も損なわれることとなってしまう。
【0009】
また、養生硬化が進む前のグリーンシートに対する検査を行うために成形後、積載前のグリーンシートに対して外形検査を行うことも考えられるが、自動化が進んだ無機質成形体の製造ラインにおいてグリーンシートの外形検査を行うためは、検査を行うごとにラインを停止してラインから検査に供されるグリーンシートを取り除かなければならず、生産効率の低下を招いてしまうものであり、またラインを一旦停止した後に再稼動する場合には稼動させた初期に成形不良が発生しやすくなって、歩留まりの悪化を招いてしまう。また、検査に供したグリーンシートを再利用のために移送するための煩雑な手間も解消されないものである。
【特許文献1】特開2000−28216号公報
【特許文献2】特開平7−1424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、セメント系成形材料を成形して得られるグリーンシートを養生硬化することにより無機質成形体を製造するにあたって、製造過程の任意のグリーンシートについて検査を行うにあたり、セメント系成形材料を成形して得られるグリーンシートに対して養生硬化が進む前に速やかに外形検査を行うことができて、且つ検査後のグリーンシートをセメント系成形材料として再生することができる検査装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る検査装置は、セメント系成形材料を成形してグリーンシート1を形成する成形装置9と、前記グリーンシート1を積載する積載工程10と、積載した前記グリーンシート1を養生硬化する養生庫11とを有する製造ラインにより無機質成形体Aを製造するにあたって、任意のグリーンシート1について外形形状検査を行うための検査装置であって、グリーンシート1が載置されたトレー2を成形装置9から積載工程10へ搬送するための搬送コンベア3から任意のトレー2を取り出して移送するトレー移送装置4、前記トレー移送装置4から前記トレー2が供給されてこのトレー2に載置されているグリーンシート1の検査がなされる検査ステージ5、検査ステージ5による検査が為された後のトレー2が前記トレー移送装置4により移送されて供給され、このトレー2を搬送するトレー返送コンベア6、及び前記トレー返送コンベア6における搬送途中のトレー2に載置されたグリーンシート1が供給されてこのグリーンシート1を搬送する材料返送コンベア7を具備し、前記トレー返送コンベア6が、トレー2を傾動させることでこのトレー2に載置されているグリーンシート1を前記トレー2から前記材料返送コンベア7へ滑落させて移送する材料移送装置8を備えることを特徴とするものである。
【0012】
このような検査装置では、無機質成形体Aの製造ラインにおいて、トレー移送装置4を用いて搬送コンベア3上の任意のトレー2を取り出して検査ステージ5に移送することで、このトレー2に載置されているグリーンシート1を検査に供することができ、このためセメント系成形材料を成形してグリーンシート1を形成した後、このグリーンシート1の養生硬化が進む前に速やかに検査に供することができる。また、このとき搬送コンベア3を停止させることなくトレー2を取り出すことで、無機質成形体Aの製造ラインを停止させることなくグリーンシート1の検査を行うことが可能となる。また、検査ステージ5にて検査がなされた後は、トレー2はトレー移送装置4によってトレー返送コンベア6に移送されて、所望の位置まで搬送することができて、このトレー2を再度無機質成形体Aの製造に利用することができるものであり、またこのときトレー返送コンベア6での搬送途中においてトレー2を傾動させてトレー2に載置されているグリーンシート1を材料返送コンベア7へ滑落させて移送することでトレー2からグリーンシート1を容易に取り除いて分離することができ、このグリーンシート1は材料返送コンベア7にて所望の位置まで搬送し、無機質成形体Aの製造のためのセメント系成形材料として再利用することができる。
【0013】
上記検査装置においては、上記検査ステージ5が、上記搬送コンベア3及びトレー返送コンベア6の上方に配置され、上記トレー移送装置4が、上記トレー2を上下移動させることにより前記トレー2の搬送コンベア3から検査ステージ5への移送と検査ステージ5からトレー返送コンベア6への移送とを行うものであることが好ましい。このようにすると、トレー2を作業者が作業しやすい位置に容易に配置することができ、作業性が良好となる。
【0014】
また、上記検査装置においては、上記材料返送コンベア7が搬送速度が異なる二つのコンベアを連結した連結部位を有し、前記連結部位よりも下流側のコンベアの搬送速度が、上流側のコンベアの搬送よりも速いものであることが好ましい。このようにすると、材料返送コンベア7における連結部位においてグリーンシート1は搬送速度差により引っ張り応力がかけられて引きちぎられ、このグリーンシート1を破砕等してセメント系成形材料として再生する際の作業効率が高まる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、セメント系成形材料を成形して得られるグリーンシートを養生硬化することにより無機質成形体を製造するにあたって、製造過程の任意のグリーンシートについて検査を行うにあたり、検査に供されたグリーンシートをセメント系成形材料として再生することができて、材料の無駄が生じることによる製造コストの上昇を抑制すると共に資源の有効活用を図ることができ、また、この検査の際にはセメント系成形材料を成形して得られるグリーンシートを形成した後、その養生硬化が進む前に、製造ラインを停止することなく取り出して速やかに外形検査に供することができて、検査の過程におけるグリーンシートの養生硬化による変質を防止することができ、このグリーンシートをセメント系成形材料として再生する場合に得られる無機質成形体の品質安定性が低下することを防止することができるものである。また、検査後のトレーとグリーンシートとはトレーをトレー返送コンベアにおいて搬送される過程で材料移送装置により容易に分離して別個に搬送することができ、またこのときトレーも再び無機質成形体の製造のために利用することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0017】
図1は、無機質成形体Aの製造ラインに本発明に係る検査装置を設けた例を示す。
【0018】
この無機質成形体Aの製造ラインにおいては、工程の始端にセメント系成形材料を所望の形状に成形する成形装置9が設けられている。図示の例では成形装置9は塊状のセメント系成形材料が投入されこのセメント系成形材料の切り出し、混練等をなす切出機12と、前記切出機12から供給されるセメント系成形材料を板状等の適宜の形状に押し出してグリーンシート1を形成する押出機13とを備えている。また押出機13からのグリーンシート1の導出側にはロール成形型14が設けられており、必要に応じて前記グリーンシート1の表面に前記ロール成形型14を接触させた状態で回転させることでロール成形型14の周面の凹凸模様を転写し、グリーンシート1の表面に凹凸模様を形成することができるようになっている。
【0019】
ここで、セメント系成形材料としては適宜の組成のものを用いることができるが、例えばセメントに必要に応じて骨材、繊維、着色剤等を配合して水と混練することによって調製されるものであり、セメントとしては普通ポルトランドセメント、スラグセメント、アルミナセメント、早強セメントなど任意のものを用いることができる。また骨材としては、シリカ、珪石粉、珪砂、フライアッシュ、スラグ、砕石等を用いることができる。繊維としてはポリプロピレン繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、パルプ、カーボン繊維、綿、麻、金属繊維等を用いることができる。さらに着色剤としては鉄黒、カーボンブラック、酸化クロム等を用いることができる。
【0020】
成形装置9の下流側には成形装置9にて成形されたグリーンシート1が供給される引取装置15が設けられている。この引取装置15にはトレー2(図1では図示省略)が配置されており、このトレー2の上面に前記グリーンシート1が供給されて載置されるようになっている。
【0021】
引取装置15の下流側にはベルトコンベアやロールコンベア等で構成される搬送コンベア3が設けられており、グリーンシート1が載置されたトレー2が引取装置15から前記搬送コンベア3へ送られて、この搬送コンベア3を搬送されるようになっている。このとき引取装置15には順次トレー2が供給されると共に、成形装置9にて形成されるグリーンシート1が順次前記トレー2に供給されて搬送コンベア3へと送られるようになっている。
【0022】
上記搬送コンベア3は、図示の例ではトレー2を次工程へと搬送する主経路16によって構成されており、また主経路16から一旦分岐した後に下流側で合流するプレス成形経路17も設けられている。前記プレス成形経路17には、その上方に上下駆動可能なプレス成形型18が配設されており、プレス成形経路17にトレー2が搬送される場合にはプレス成形型18の直下にトレー2が配置された状態で前記プレス成形型18が下動することで、トレー2に載置されているグリーンシート1の表面がプレス成形型18によって押圧されて、プレス成形型18の凹凸模様がグリーンシート1の表面に転写されるようになっている。
【0023】
この搬送コンベア3においては、トレー2が主経路16のみを搬送されるようにするほか、トレー2が搬送経路とプレス成形経路17との合流位置に達した際にこのトレー2をプレス成形経路17へと移送し、このトレー2がプレス成形経路17を搬送されてプレス成形がなされた後、主経路16へ返送し、更にこの主経路16で下流側に搬送されるようにすることができる。主経路16からプレス成形経路17への移送は適宜の手法を用いてなすことができるが、例えば主経路16上のトレー2をプレス成形経路17へと押し出して移送する押出手段を設けることができ、また、主経路16上にトレー2をプレス成形経路17へと送るための横移動ロールを設け、主経路16からプレス成形経路17へとトレー2を移送する場合にのみ前記横移動ロールを駆動させてプレス成形経路17への移送を行うようにすることができる。
【0024】
ここで、上記構成では、グリーンシート1には必要に応じてロール成形とプレス成形のうち任意の手法にて表面成形をなすことができるものであり、例えばロール成形型14にて表面成形(ロール成形)を行う場合には押出成形時にロール成形型14を駆動させると共に形成されたグリーンシート1が載置されたトレー2は搬送コンベア3において主経路16のみにて搬送させるようにし、またプレス成形型18にて表面成形(プレス成形)を行う場合には押出成形時にロール成形型14を駆動させず、形成されたグリーンシート1が載置されたトレー2は搬送コンベア3においてプレス成形経路17にて搬送されるようにしてこのプレス成形経路17にてプレス成形型18を駆動するようにするものである。
【0025】
上記搬送コンベア3の下流側終端には積載工程10が設けられている。この積載工程10では搬送コンベア3から順次搬送されてくるトレー2が多段に積載されるものであり、このトレー2の積載は適宜の手法にてなされる。
【0026】
このときトレー2には例えばその下面に複数の脚部19を突出させて設けることで、積載工程10においてトレー2が多段に重ねられた場合には上下のトレー2間には前記脚部19がスペーサとなることにより空間が形成され、この空間にグリーンシート1が配置されることとなって、これによりグリーンシート1が多段に積載されるものである。
【0027】
このように多段に積載されたトレー2は人力或いは適宜の移送手段によって養生庫11内に移送され、トレー2に載置されたグリーンシート1が適宜の条件で養生硬化されて、無機質成形体Aが得られる。
【0028】
養生硬化後は、トレー2を養生庫11から取り出し、脱板工程21においてトレー2と無機質成形体Aとを分離する。トレー2と無機質成形体Aとの分離は人力で行うほか、適宜の移載手段を用いて行うことができる。回収されたトレー2はベルトコンベアやロールコンベア等から構成される成形後トレー返送コンベア22に移送され、更に後述するようにトレー返送コンベア6を介して引取装置15の近傍まで搬送される。また無機質成形体Aは例えば二次養生、乾燥、塗装、その他必要に応じた適宜の処理を行うために、次工程へ搬送される。
【0029】
上記のような無機質成形体Aの製造ラインに設ける検査装置について説明する。
【0030】
この検査装置は、トレー移送装置4、検査ステージ5、トレー返送コンベア6及び材料返送コンベア7を備えている。
【0031】
トレー返送コンベア6はベルトコンベアやロールコンベア等にて形成することができ、図示の例ではトレー返送コンベア6は搬送コンベア3の主経路16の側方にこの主経路16と平行並列に、且つその搬送方向が前記主経路16とは反対方向となるように配設されている。
【0032】
検査ステージ5は適宜の位置に設けることができるが、図示の例ではトレー返送コンベア6の上方に設けられている。図示の検査ステージ5は平面視略コ字状に形成された作業台であり、コ字状の検査ステージ5にて囲まれる部分は検査に供されるグリーンシート1が載置されたトレー2が供給される供給部23として形成されている。そして作業者がこの検査ステージ5上に乗った状態でこの検査ステージ5に移送されるトレー2に載置されたグリーンシート1に対して、寸法検査や硬度検査等の検査を行うことができるようになっている。
【0033】
トレー移送装置4は、搬送コンベア3から任意のトレー2を取り出し、これを後述するように検査ステージ5へ移送した後、トレー返送コンベア6へ移送するものである。
【0034】
トレー移送装置4によるトレー2の取り出しは、搬送コンベア3における適宜の位置で為すようにすることができるが、図示の例では、主経路16における、プレス成形経路17との分岐位置と合流位置との間に、トレー2が取り出される取出位置24が設定されている。また、本実施形態では、搬送コンベア3における、主経路16がプレス成形経路17の下流側の終端と合流する合流位置と上記取出位置24との間の経路は、トレー2の搬送方向を逆方向に変更可能に形成している。また、上記トレー返送コンベア6の始端部にはトレー移送装置4にて移送されたトレー2が供給される受取位置25が設定されており、図示の例では受取位置25は搬送コンベア3におけるトレー2の取出位置24の側方に設定されている。このトレー2の受取位置25は、上記検査ステージ5における供給部23の直下に位置するようになっている。
【0035】
トレー移送装置4としては、適宜の構造のものを用いることができるが、その一例を図2乃至4に示す。図示の例では、搬送コンベア3とトレー返送コンベア6とを、それぞれ両側の支持フレーム26の間に複数の搬送ロール27を掛架して構成されるロールコンベアにて形成しており、この搬送コンベア3とトレー返送コンベア6は、略同一高さにおいて平行並列に設けている。
【0036】
トレー移送装置4は、上記搬送コンベア3における取出位置24の下方からトレー返送コンベア6における受取位置25の下方に亘って設けられた、各コンベアの搬送方向と直交する方向の移動レール28と、この移動レール28に沿って駆動可能な移動体29にて構成されている。この移動体29は移動レール28に支持されてこの移動レール28に沿って走行駆動可能な水平位置移動部30と、この水平位置移動部30にて支持されると共にこの水平位置移動部30に対して上下昇降駆動可能な上下位置移動部31とで構成されている。上下位置移動部31は、水平位置移動部30に支持されている上下方向に長い昇降部32の先端に、上記各コンベアの搬送方向と直交する方向に長いトレー支持部33を設けて構成されている。ここで、水平位置移動部30はトレー支持部33の平面視における配置位置が搬送コンベア3と重なる位置とトレー返送コンベア6と重なる位置との間で駆動可能に形成され、また上下位置移動部31はトレー2トレー支持部33の上面が上記各コンベアの上面と同一又はこれよりもやや低い位置と、各コンベアの上方の、後述する検査ステージ5よりも上方の位置との間で昇降駆動可能に形成されている。このトレー移送装置4における駆動機構は適宜の構成のものを採用することができる。
【0037】
また、搬送コンベア3のトレー返送コンベア6側の支持フレーム26と、トレー返送コンベア6の搬送コンベア3側の支持フレーム26には、トレー移送装置4における移動体29が通過可能な切欠部34が設けられており、移動体29の上下位置移動部31は水平位置移動部30が移動レール28に沿って移動する際に平面視においてこの切欠部34の形成位置と、搬送コンベア3の取出位置24における隣り合う搬送ロール27の間と、トレー返送コンベア6の受取位置25における隣り合う搬送ロール27の間とを通過するように移動するものである。
【0038】
このようなトレー移送装置4にてトレー2を移送する際には、まず移動体29における水平位置移動部30と上下位置移動部31の配置位置を調整して、図3(a)に示すようにトレー支持部33を、搬送コンベア3の取出位置24における隣り合う搬送ロール27間に配置されると共にこのトレー支持部33の上面が搬送コンベア3の上面(搬送ロール27の上端)の高さと同一又はそれよりやや下方に位置するように配置する。
【0039】
この状態で、検査に供されるグリーンシート1が配置されているトレー2が搬送コンベア3の取出位置24に到達したら、上下位置移動部31を上昇駆動させて図3(b)に示すようにトレー支持部33が搬送コンベア3の上方且つ検査ステージ5よりも低い位置に配置する。このときトレー2はトレー支持部33の上面によって支持されて搬送コンベア3から取り出される。
【0040】
次に水平位置移動部30をトレー返送コンベア6側へ走行駆動させて、図3(b)に示すように、トレー支持部33及びこのトレー支持部33にて支持されているトレー2を、トレー返送コンベア6における受取位置25と、検査ステージ5との間に配置する。
【0041】
次いで、上下位置移動部31を更に上昇駆動させて、図4(a)に示すようにトレー支持部33及びこのトレー支持部33にて支持されているトレー2が検査ステージ5の供給部23を通過して検査ステージ5の上方の、検査ステージ5に乗っている作業者が作業しやすい高さに配置する。
【0042】
次に、上下位置移動部31を下降駆動させて、図4(b)に示すようにトレー支持部33を、トレー返送コンベア6の受取位置25における隣り合う搬送ロール27間に配置されると共にこのトレー支持部33の上面がトレー返送コンベア6の上面(搬送ロール27の上端)の高さと同一又はそれよりやや下方に位置するように配置する。このときトレー支持部33に支持されていたトレー2はトレー返送コンベア6上の受取位置25に配置されることとなり、これによりトレー2がトレー返送コンベア6に移送される。
【0043】
その後、移動体29を駆動して初期の状態に配置し、再びトレー2の移載を行う場合には上記の動作を繰り返すものである。
【0044】
また、上記トレー返送コンベア6の側方の下方には、ベルトコンベア等にて構成される材料返送コンベア7の始端部分が設けられている。図示の例では材料返送コンベア7の始端部分は、上記トレー返送コンベア6における受取位置25よりも下流位置において、トレー返送コンベア6の一方の支持フレーム26に支持されており、その搬送方向が材料返送コンベア7と平行になっている。
【0045】
そして、トレー返送コンベア6の、上記材料返送コンベア7の始端部分と隣接する位置には、トレー2に載置された検査済みのグリーンシート1を材料返送コンベア7へ移送するための材料移送装置8が設けられている。この材料移送装置8は、トレー返送コンベア6上にあるグリーンシート1が載置されたトレー2を傾動させることによりこのトレー2からグリーンシート1を材料返送コンベア7へ向けて滑落させるものである。
【0046】
例えば図5,6に示すものでは、トレー返送コンベア6に、このトレー返送コンベア6上のトレー2を挟持して支持した状態で材料返送コンベア7側へ傾動駆動する傾動トレー支持部20にて材料移送装置8が構成されている。傾動トレー支持部20は材料返送コンベア7の搬送方向と直交する方向に長い下支持部35に、トレー2の上面を下支持部35側に押圧する押圧クランプ36を設けて構成されている。
【0047】
下支持部35はトレー2の幅寸法よりも長く形成されており、その一端が材料返送コンベア7側の支持フレーム26において軸支部37にて傾動駆動可能に軸支されている。このとき下支持部35は、前記軸支部37から材料返送コンベア7とは反対側の支持フレーム26側へ向けて突出すると共にその上面がトレー返送コンベア6の上面(搬送ロール27の上面)と同一又はそれよりやや下方に配置された状態と、前記軸支部37を中心に反対側の端部が上方に向かうように傾動して上面が材料返送コンベア7側に向けて下方に傾斜し、或いは図6(b)に示すように前記上面が鉛直状となる状態との間で傾動駆動可能に形成されている。この下支持部35としては、トレー2の搬送方向の両端縁にそれぞれ対応するものが二つ設けられている。
【0048】
また、押圧クランプ36は適宜の構造とすることができるが、図示の例では各下支持部35の一端側と他端側とに、それぞれ支持腕43を設け、この支持腕43に下支持部35の上面側に向けて昇降駆動する押圧体44を下支持部35の上面よりも上方に配置されるように設けて構成されている。各押圧体44は、トレー2の四つの各隅部に対応する位置に設けられている。
【0049】
このような材料移送装置8における駆動機構としては、適宜の構成を採用することができる。
【0050】
このような材料移送装置8にてトレー2からグリーンシート1を取り除いて分離する際には、まず、下支持部35を軸支部37から材料返送コンベア7とは反対側の支持フレーム26側へ向けて突出すると共にその上面がトレー返送コンベア6の上面(搬送ロール27の上面)と同一又はそれよりやや下方に配置された状態にして待機させ、トレー2がトレー返送コンベア6にて搬送されて、材料移送装置8の形成位置に到達し、二つの下支持部35が前記トレー2の下方においてこのトレー2の両側の側縁に位置するようになったら、押圧体44を下降駆動して図6(a)に示すようにトレー2の各四つの隅部を押圧するようにし、これにより傾動トレー支持部20にてトレー2を挟持して支持する。
【0051】
そして、この状態で傾動トレー支持部20を傾動させることにより、トレー2を材料返送コンベア7側に向けて下方に傾斜させ、或いは図6(b)に示すように鉛直状となるようにする。このときトレー2上面のグリーンシート1は、材料返送コンベア7に向けて滑落する。
【0052】
次いで、傾動トレー支持部20を反対側へ傾動させて待機状態と同一位置に配置することで、トレー2をトレー返送コンベア6の上面に再び配置した後、押圧クランプ36を上昇駆動することによりトレー2の挟持を解除する。これにより、トレー2はグリーンシート1が分離された状態で、再びトレー返送コンベア6にて搬送されることとなる。
【0053】
上記のトレー返送コンベア6の終端は適宜の位置、例えば引取装置15の近傍位置に配置されるものであり、これによりトレー2を所望の位置まで移送することができる。また、このトレー返送コンベア6の経路途中では、上記成形後トレー返送コンベア22の終端が接続されており、この接続位置にて成形後トレー返送コンベア22にて搬送されたトレー2がトレー返送コンベア6へ移送されるようになっている。これにより、養生硬化されるグリーンシート1を載置していたトレー2と、検査に供されるグリーンシート1を載置していたトレー2とが、共にトレー返送コンベア6にて搬送されるようになっている。
【0054】
また、このトレー返送コンベア6の経路途中の上方には、グリーンシート1が分離された後のトレー2の上面を洗浄する洗浄手段38が設けられている。洗浄手段38は、例えば下方に向けて毛束が植設された複数の水平回転ブラシ39にて構成することができ、このような洗浄手段38が、材料移送装置8が設けられている位置と、トレー返送コンベア6に成形後トレー返送コンベア22が合流する位置との間に設けられている。このとき、トレー2がトレー返送コンベア6上で前記水平回転ブラシ39の下方を通過する際に、この水平回転ブラシ39がその毛束がトレー2上面と接触した状態で水平回転することによりトレー2の上面の洗浄がなされるようになっている。また、成形後トレー返送コンベア22にも同様の洗浄手段38が設けることで、養生硬化されるグリーンシート1を載置していたトレー2の上面も洗浄することができるようになっている。
【0055】
一方、材料返送コンベア7は、始端側部分よりも下流側では適宜屈曲して配設されており、その経路途中には材料切出部40が設けられている。この材料切出部40は、材料返送コンベア7にて搬送されるグリーンシート1を切り出して塊状にし、再利用可能な再生セメント系成形材料とするものである。材料切出部40にて塊状に切り出されて得られる再生セメント系成形材料は、更に材料返送コンベア7にて適宜の位置、例えば上記成形装置9の近傍に搬送されて、再利用のためにストックされる。また、材料返送コンベア7の終端を上記成形装置9の切出機12に接続して、再生セメント系成形材料を直接切出機12に供給できるようにしても良い。
【0056】
また、この材料返送コンベア7には、搬送速度が異なる二つのコンベアを連結した連結部位を設けて、この連結部位よりも下流側のコンベアの搬送速度が、上流側のコンベアの搬送よりも速くなるようにすることが好ましい。例えば図示の実施形態において、材料返送コンベア7の始端側部分の、トレー返送コンベア6と並列に配置されている部位を搬送速度が相対的に遅い遅動コンベア41として形成し、この遅動コンベア41の下流側端部で材料返送コンベア7の搬送方向を屈曲させて、この遅動コンベア41よりも下流側の部位を搬送速度が相対的に速い速動コンベア42として形成している。このとき遅動コンベア41と速動コンベア42との連結部位は、材料返送コンベア7における搬送方向が屈曲する部位となっている。このようにして材料返送コンベア7を形成すると、この材料返送コンベア7においてトレー2から分離されたグリーンシート1が搬送される際に、搬送速度が異なる遅動コンベア41と速動コンベア42との連結部位を通過するものであるが、このときグリーンシート1は搬送速度差により引っ張り応力がかけられて引きちぎられ、このグリーンシート1を破砕等してセメント系成形材料として再生する際の作業効率が高まるものである。このとき、連結部位における二つのコンベア間の速度差は適宜調整することができるが、好ましくは速度差が10m/min以上となるようにするものであり、例えば連結部位の上流側(遅動コンベア41)の搬送速度を20m/min、連結部位の下流側(速動コンベア42)の搬送速度を51m/minとなるようにするものである。
【0057】
このような搬送速度が増大する連結部位は、本実施形態のように材料返送コンベア7に一箇所設けるほか、搬送速度の異なる三以上の複数のコンベアを連結することにより前記搬送速度が増大する連結部位を複数箇所に設けるようにしても良い。
【0058】
上記のような検査装置を用いて、無機質成形体Aの製造ラインにおけるグリーンシート1の検査を行う際には、まず成形装置9から積載工程10へとグリーンシート1が載置されたトレー2が搬送される過程において、検査の対象となるグリーンシート1が載置されているトレー2が搬送コンベア3におけるトレー2の取出位置24に到達した時点で、既述のようにトレー移送装置4を用いてこのトレー2を取り出し、検査ステージ5に移送する。
【0059】
ここで、本実施形態では、トレー2が搬送コンベア3にて搬送する場合に、上記のように主経路16のみで搬送される場合と、主経路16からプレス成形経路17に送られた後に再び主経路16へ送られる場合とがあり、後者の場合では通常の搬送経路ではトレー2は取出位置24を通過しない。この場合は、検査に供されるグリーンシート1が載置されたトレー2がプレス成形経路17を通過してプレス成形がなされた後、主経路16がプレス成形経路17の下流側の終端と合流する合流位置に達したら、この合流位置と上記取出位置24との間の経路における搬送方向を逆方向となるように変更し、これによりトレー2を取出位置24へと搬送する。そして、上記と同様にトレー2の取出位置24に到達した時点で、トレー移送装置4を用いてこのトレー2を取り出し、検査ステージ5に移送するものである。
【0060】
これにより、トレー2に載置されているグリーンシート1を検査に供することができ、このためセメント系成形材料を成形してグリーンシート1を形成した後、このグリーンシート1の養生硬化が進む前に速やかに検査に供することができる。また、このとき搬送コンベア3を停止させることなくトレー2を取り出すことで、無機質成形体Aの製造ラインを停止させることなくグリーンシート1の検査を行うことが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では検査ステージ5を搬送コンベア3及びトレー返送コンベア6の上方に配置して、トレー移送装置4によりトレー2を上下移動させてトレー2の搬送コンベア3から検査ステージ5への移送と検査ステージ5からトレー返送コンベア6への移送とを行うようにしていることから、トレー2を作業者が作業しやすい位置に容易に配置することができ、検査時の作業性が良好なものとなっている。
【0062】
次いで、グリーンシート1が検査ステージ5にて検査された後は、トレー2をトレー移送装置4によって既述のようにトレー返送コンベア6にて、所望の位置、本実施形態では引取装置15の近傍まで搬送し、これによりトレー2を再度無機質成形体Aの製造に利用することができる。このときトレー2はトレー返送コンベア6での搬送途中において材料移送装置8によって既述のようにトレー2を傾動させてトレー2に載置されているグリーンシート1を材料返送コンベア7へ滑落させることで、トレー2からグリーンシート1を容易に取り除いて分離することができ、また更に本実施形態では洗浄手段38にて洗浄されているため、そのまま再度無機質成形体Aの製造に利用できる。
【0063】
また、トレー2から分離されたグリーンシート1は材料返送コンベア7にて所望の位置、本実施形態では材料切出部40を経由して塊状に切り出された後に成形装置9の切出機12まで搬送することができ、無機質成形体Aの製造のためのセメント系成形材料として再利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す概略の平面図である。
【図2】同上の実施の形態におけるトレー移送装置の構成を示す概略の平面図である。
【図3】同上のトレー移送装置の動作を示すものであり、(a)及び(b)は概略の断面図である。
【図4】同上のトレー移送装置の動作を示すものであり、(a)及び(b)は概略の断面図である。
【図5】同上の実施の形態における材料移送装置の構成を示す平面図である。
【図6】同上の材料移送装置の動作を示すものであり、(a)及び(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 グリーンシート
2 トレー
3 搬送コンベア
4 トレー移送装置
5 検査ステージ
6 トレー返送コンベア
7 材料返送コンベア
8 材料移送装置
9 成形装置
10 積載工程
11 養生庫

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系成形材料を成形してグリーンシートを形成する成形装置と、前記グリーンシートを積載する積載工程と、積載した前記グリーンシートを養生硬化する養生庫とを有する製造ラインにより無機質成形体を製造するにあたって、任意のグリーンシートについて外形形状検査を行うための検査装置であって、グリーンシートが載置されたトレーを成形装置から積載工程へ搬送するための搬送コンベアから任意のトレーを取り出して移送するトレー移送装置、前記トレー移送装置から前記トレーが供給されてこのトレーに載置されているグリーンシートの検査がなされる検査ステージ、検査ステージによる検査が為された後のトレーが前記トレー移送装置により移送されて供給され、このトレーを搬送するトレー返送コンベア、及び前記トレー返送コンベアにおける搬送途中のトレーに載置されたグリーンシートが供給されてこのグリーンシートを搬送する材料返送コンベアを具備し、前記トレー返送コンベアが、トレーを傾動させることでこのトレーに載置されているグリーンシートを前記トレーから前記材料返送コンベアへ滑落させて移送する材料移送装置を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
上記検査ステージが、上記搬送コンベア及びトレー返送コンベアの上方に配置され、上記トレー移送装置が、上記トレーを上下移動させることにより前記トレーの搬送コンベアから検査ステージへの移送と検査ステージからトレー返送コンベアへの移送とを行うものであることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
上記材料返送コンベアが搬送速度が異なる二つのコンベアを連結した連結部位を有し、前記連結部位よりも下流側のコンベアの搬送速度が、上流側のコンベアの搬送よりも速いものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−272819(P2006−272819A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97329(P2005−97329)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】