説明

検査装置

【課題】安定してマイクロチップに送液し精度の良い検査ができる検査装置を提供する。
【解決手段】中間流路の内部の駆動液を除去する除去手段と、除去手段の駆動を制御する除去駆動制御手段と、を有し、除去駆動制御手段は、ポンプからマイクロチップに駆動液を注入する前に除去手段を制御して中間流路の内部の駆動液を除去することを特徴とする検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロマシン技術および超微細加工技術を駆使することにより、従来の試料調製、化学分析、化学合成などを行うための装置、手段(例えばポンプ、バルブ、流路、センサなど)を微細化して1チップ上に集積化したシステムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。これは、μ−TAS(Micro Total Analysis System:マイクロ総合分析システム)、バイオリアクタ、ラボ・オン・チップ(Lab−on−chips)、バイオチップとも呼ばれ、医療検査・診断分野、環境測定分野、農産製造分野でその応用が期待されている。特に遺伝子検査に見られるように、煩雑な工程、熟練した手技、機器類の操作が必要とされる場合には、μ−TASを用いることによりコスト、必要試料量、所要時間を削減できる。
【0003】
本出願人は、マイクロチップの微細流路内に試薬などを封入し、ポンプによって微細流路に駆動液を注入して試薬などを移動させ、反応部、次いで検出部へ流すことにより、血液など検体との反応結果を測定することができる検査装置を提案している(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、微細流路を流れる液体に気泡が混入すると、微細流路を塞ぎ送液が不安定になる問題があり、混入した気泡を除去する方法が提案されている。
【0005】
例えば、第1の基板と第2の基板の間に、所定の流路を形成する、疎水性及び通気性を有する中間部材を設け、流路内に混入もしくは発生した気泡を中間部材から抜けるようにして気泡が流路内に留まらないようにしたマイクロチップが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−28589号公報
【特許文献2】特開2006−149379号公報
【特許文献3】特開2005−181095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に開示されているマイクロチップを用いても、流路内を流れる駆動液に混入もしくは発生した気泡が多ければ、全てを追い出すことはできない。そのため、駆動液をマイクロチップに注入する前に気泡を除去する必要がある。
【0007】
近年、ポンプから中間流路を形成した送液接続部を介して駆動液をマイクロチップに注入するように構成し、検査装置の内部配置の自由度を増すことが行われている。また、中間流路に流量センサを設けて流量を計測することも行われている。
【0008】
中間流路にはマイクロチップに駆動液を注入した後も多量の駆動液が残っている場合が多く、長時間経過すると残留した駆動液に溶解した酸素等が気泡となって析出しやすい。発生した気泡は流量センサによる流量測定の誤差要因になるとともに、マイクロチップに注入されると流路を塞ぎ送液が不安定になってしまう。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、安定してマイクロチップに送液し精度の良い検査ができる検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、下記構成により達成することができる。
【0011】
1.ポンプから送液接続部に形成された中間流路を介して駆動液をマイクロチップに注入し、反応結果を該マイクロチップから検出する検査装置において、
前記中間流路の内部の駆動液を除去する除去手段と、
前記除去手段の駆動を制御する除去駆動制御手段と、
を有し、
前記除去駆動制御手段は、
前記ポンプから前記マイクロチップに前記駆動液を注入する前に前記除去手段を制御して前記中間流路の内部の駆動液を除去することを特徴とする検査装置。
【0012】
2.前記除去手段は真空ポンプであり、前記送液接続部の開口から前記中間流路の内部の駆動液を吸引して除去することを特徴とする前記1に記載の検査装置。
【0013】
3.前記ポンプまたは前記送液接続部を移動させて、前記ポンプの吐出口と前記送液接続部の開口とが連通する状態と、互いに開放状態になる状態との何れかにする第1の駆動手段と、
前記第1の駆動手段の駆動を制御する第1駆動制御手段と、
前記除去手段または前記送液接続部を移動させて、前記除去手段と前記送液接続部の開口とが連通する状態と、互いに開放状態になる状態との何れかにする第2の駆動手段と、
前記第2の駆動手段の駆動を制御する第2駆動制御手段と、
を有し、
前記第1駆動制御手段が前記第1の駆動手段を制御して前記送液接続部の一方の開口を開放状態にするとともに、前記第2駆動制御手段が前記第2の駆動手段を制御して前記除去手段と前記送液接続部の他方の開口とを連通させた後、
前記除去駆動制御手段は、前記除去手段を制御して前記中間流路に残留した前記駆動液を除去することを特徴とする前記1または2に記載の検査装置。
【0014】
4.前記除去手段が前記中間流路に残留した前記駆動液を除去した後、
前記第1駆動制御手段は、
前記第1の駆動手段を制御して前記ポンプの吐出口と前記送液接続部の一方の開口とを連通させ、
前記除去駆動制御手段は、
前記除去手段を制御して前記中間流路に前記駆動液を充填することを特徴とする前記3に記載の検査装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、中間流路に残っている駆動液を除去した後、新たに駆動液を中間流路に充填してからマイクロチップに送液するので、安定してマイクロチップに送液し精度の良い検査ができる検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態における検査装置80の外観図である。
【0018】
検査装置80はマイクロチップ1に予め注入された検体と、試薬との反応を自動的に検出し、表示部84に結果を表示する装置である。
【0019】
検査装置80の筐体82には挿入口83があり、マイクロチップ1を挿入口83に差し込んで筐体82の内部にセットするようになっている。なお、挿入口83はマイクロチップ1を挿入時に挿入口83に接触しないように、マイクロチップ1の厚みより十分高さがある。85はメモリカードスロット、86はプリント出力口、87は操作パネル、88は入出力端子、89は電源スイッチである。
【0020】
検査担当者は電源スイッチ89をオンにした後、図1の矢印方向にマイクロチップ1を挿入し、操作パネル87を操作して検査を開始させる。検査装置80の内部では、マイクロチップ1内の反応の検査が自動的に行われ、検査が終了すると液晶パネルなどで構成される表示部84に結果が表示される。検査結果は操作パネル87の操作により、プリント出力口86よりプリントを出力したり、メモリカードスロット85に挿入されたメモリカードに記憶することができる。また、外部入出力端子88から例えばLANケーブルを使って、パソコンなどにデータを保存することができる。
【0021】
検査担当者は、検査終了後、マイクロチップ1を挿入口83から取り出す。
【0022】
次に、本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1の一例について、図2を用いて説明する。
【0023】
図2(a)、図2(b)はマイクロチップ1の外観図である。図2(a)において矢印は、検査装置80にマイクロチップ1を挿入する挿入方向であり、図2(a)は挿入時にマイクロチップ1の下面となる面を図示している。図2(b)はマイクロチップ1の側面図である。
【0024】
図2(a)の検出部111の窓111aと流路111bは検体と試薬の反応を光学的に検出するために設けられており、ガラスや樹脂などの透明な部材で構成されている。110a、110b、110c、110d、110eは内部の微細流路に連通する駆動液注入部であり、各駆動液注入部110から駆動液を注入し内部の試薬等を駆動する。113はマイクロチップ1に検体を注入するための検体注入部である。
【0025】
図2(b)に示すように、マイクロチップ1は溝形成基板108と、溝形成基板108を覆う被覆基板109から構成されている。
【0026】
マイクロチップ1を構成する溝形成基板108と被覆基板109に用いる材料について説明する。
【0027】
マイクロチップ1は、加工成形性、非吸水性、耐薬品性、耐候性、コストなどに優れていることが望まれており、マイクロチップ1の構造、用途、検出方法などを考慮して、マイクロチップ1の材料を選択する。その材料としては従来公知の様々なものが使用可能であり、個々の材料特性に応じて通常は1以上の材料を適宜組み合わせて、基板および流路エレメントが成形される。
【0028】
検出部111において、呈色反応の生成物や蛍光物質などの検出を光学的に行うので、少なくともこの部位の基板は光透過性の材料(例えばアルカリガラス、石英ガラス、透明プラスチック類)を用い、光が透過するようにする必要がある。検出部111の窓111aと、少なくとも検出部111の流路を形成する溝形成基板は、光透過性の材料が用いられていて、検出部111を光を透過するようになっている。
【0029】
マイクロチップ1には、検査、試料の処理などを行うための、微小な溝状の流路(微細流路)および機能部品(流路エレメント)が、用途に応じた適当な態様で配設されている。本実施形態では、これらの微細流路および流路エレメントによってマイクロチップ1内で行われる特定の遺伝子の増幅およびその検出を行う処理の一例を図2(c)を用いて説明する。
【0030】
図2(c)はマイクロチップ1内部の微細流路および流路エレメントの機能の一例を説明するための説明図である。
【0031】
微細流路には、例えば検体液を収容する検体収容部121、試薬類を収容する試薬収容部120a、120b、120c、120dなどが設けられており、場所や時間を問わず迅速に検査ができるよう、試薬収容部120a、120b、120c、120dには必要とされる試薬類があらかじめ収容されている。図2(c)において、試薬収容部120a、120b、120c、120d、検体収容部121および流路エレメントは四角形で表し、その間の微細流路は実線と矢印で表す。
【0032】
マイクロチップ1は、微細流路を形成した溝形成基板108と溝状の流路を覆う被覆基板109から構成されている。微細流路はマイクロメーターオーダーで形成されており、例えば幅は数μm〜数百μm、好ましくは10〜200μmで、深さは25〜500μm程度、好ましくは25〜250μmである。
【0033】
少なくともマイクロチップ1の溝形成基板108には、上記の微細流路が形成されている。被覆基板109は、少なくとも溝形成基板の微細流路を密着して覆う必要があり、溝形成基板の全面を覆っていても良い。なお、マイクロチップ1の微細流路には、例えば、図示せぬ送液制御部、逆流防止部(逆止弁、能動弁など)などの送液を制御するための部位が設けられ、逆流を防止し、所定の手順で送液が行われるようになっている。
【0034】
検体注入部113はマイクロチップ1に検体を注入するための注入部、駆動液注入部110はマイクロチップ1に駆動液11を注入するための注入部である。マイクロチップ1による検査を行うに先立って、検査担当者は検体を検体注入部113から注射器などを用いて注入する。図2(c)に示すように、検体注入部113から注入された検体は、連通する微細流路を通って検体収容部121に収容される。検体を注入後、検体注入部113はシール材などを貼り付けて塞ぐ。
【0035】
次に、駆動液注入部110aから駆動液を注入すると、駆動液11は連通する微細流路を通って検体収容部121に収容されている検体を押し出し、増幅部122に検体を送り込む。
【0036】
一方、駆動液注入部110bから注入された駆動液は、連通する微細流路を通って試薬収容部120aに収容されている試薬を押し出す。試薬収容部120aから押し出された試薬は増幅部122に駆動液によって送り込まれる。このときの反応条件によっては、増幅部122の部分を所定の温度にする必要があり、検査装置80の内部で加熱または吸熱して所定の温度で反応させる。
【0037】
所定の反応時間の後、さらに駆動液11により増幅部122から送り出された反応後の検体を含む溶液は、検出部111に注入される。続いて駆動液注入部110c、110d、110eから駆動液11を注入すると、駆動液11は連通する微細流路を通って試薬収容部120b、120c、120dに収容されている試薬を押し出し、検出部111に注入する。
【0038】
検出部111に光を照射すると、検体と反応した試薬が例えば蛍光を発光するので蛍光の光量を測定することにより反応結果を計測することができる。
【0039】
次に検査装置80で用いるポンプユニット5について図3を用いて説明する。
【0040】
図3は、本発明の実施形態におけるポンプユニット5の構成の一例を示す説明図である。
【0041】
このポンプユニット5は、シリコン製の基板67と、その上のガラス製の基板68と、その上のガラス製の基板69との3つの基板から構成されている。基板67と基板68は陽極結合、基板68と基板69は接着や融着によって接合されている。
【0042】
シリコン製の基板67と、その上に陽極接合によって貼り合わされたガラス製の基板68との間の内部空間によってマイクロポンプ62(ピエゾポンプ)が構成されている。マイクロポンプ62の駆動源は一例として圧電素子であり、内部の加圧室の体積を変化させることにより図3の左から右方向に送液する。
【0043】
マイクロポンプ62の上流側は基板67に設けられた流路から基板68の貫通孔66aを介して、ガラス製の基板に設けられた吸入口64に連通されている。吸入口64は、図3には図示せぬ配管15を介して駆動液タンク10に接続されていて、駆動液タンク10に充填された駆動液11を吸い込むようになっている。
【0044】
基板69には、流路70がパターンニングされている。一例として、流路70の寸法および形状は、幅が150μm程度、深さが300μm程度の断面矩形状である。流路70の下流側には開口65が設けられ、駆動液11がマイクロポンプ62によって流路70を通って送液される。
【0045】
図4、図5、図6は、本発明の実施形態における検査装置80の内部構成の一例を示す断面図である。
【0046】
検査装置80は、駆動液タンク10、第1電磁バルブ14、配管15、少なくとも一つのマイクロポンプ62からなるポンプユニット5、パッキン6、吸引ポンプ7、第2電磁バルブ18、キャップ17、送液接続部9、温度調節ユニット3などから構成される。
【0047】
図4は、送液接続部9に形成された中間流路182に残留した駆動液11を吸引ポンプ7で吸引して除去している状態である。
【0048】
図5は、中間流路182に残留した駆動液11を除去した後、送液接続部9をポンプユニット5と接続し、吸引ポンプ7で駆動液11を吸引して中間流路182に駆動液11を充填している状態である。
【0049】
図6は、送液接続部9とマイクロチップ1を接続し、ポンプユニット5から送液接続部9を介してマイクロチップ1に駆動液11を送液している状態である。
【0050】
本発明の検査装置では、図4に示すように中間流路182に残留した駆動液11を除去した後、図5に示すように中間流路182に新たな駆動液11を充填し、図6に示すように中間流路182を介してマイクロチップ1に送液する。
【0051】
最初に、図4の各部を説明する。
【0052】
駆動液タンク10は駆動液11を貯蔵するタンクであり、タンク結合針13から配管15に駆動液11を吐出する。駆動液タンク10には、駆動液タンク10に蓄積された駆動液11の残量を検出する駆動液量センサ19が取り付けられている。配管15には第1電磁バルブ14が設けられ、制御信号により流路を開閉することができる。
【0053】
配管15のマイクロポンプ62側には駆動液に含まれる不溶性物質を取り除くフィルタ12が取り付けられている。フィルタ12は例えば金属または化学繊維から構成され、フィルタ12に設けられた開口部は不溶性物質を通過させないように不溶性物質の最小径より小さい数〜数十ミクロンになっている。
【0054】
配管15はマイクロポンプ62とポンプ液だまり部16を介して結合し、マイクロポンプ62の吸入口64と連通している。
【0055】
ポンプユニット5は、図3に示すように少なくとも一つのマイクロポンプ62を有している。マイクロポンプ62の吸入口64は、駆動液タンク10と連通するように配管15と接続されおり、吸入口64から配管15に充填された駆動液11を吸い込むことができる。ポンプ液だまり部16にはゴムなどの弾性部材が取り付けられており、液漏れを防いでいる。
【0056】
マイクロポンプ62の吐出口65にはパッキン6aが取り付けられている。
【0057】
第1駆動部43は、ポンプユニット5を駆動液タンク10と接続したまま移動させて、ポンプユニット5の吐出口65と送液接続部9の開口186とが連通する状態と、互いに開放状態になる状態との何れかにする本発明の第1の駆動手段である。図4では、第1駆動部43がポンプユニット5を矢印S1方向に移動させて、ポンプユニット5の吐出口65と送液接続部9の開口186とを開放した状態を示している。
【0058】
なお、本実施形態では第1駆動部43がポンプユニット5を移動させる例を説明するが、送液接続部9を移動させても良い。送液接続部9の各部については後に詳しく説明する。
【0059】
次に、吸引ポンプ7、第2電磁バルブ18、キャップ17、第2駆動部44について説明する。
【0060】
図4は検査装置80にマイクロチップ1が挿入されていないとき、第2駆動部44が吸引ポンプ7を矢印F1方向に移動させて、吸引ポンプ7に第2電磁バルブ18を介して接続されたキャップ17をパッキン6bに密着させた状態を示している。第2駆動部44は、本発明の第2の駆動手段である。
【0061】
なお、本実施形態では第2駆動部44が吸引ポンプ7を移動させる例を説明するが、送液接続部9を移動させても良い。
【0062】
キャップ17と吸引ポンプ7の間に設けられた第2電磁バルブ18は、制御信号により流路を開閉することができる。吸引ポンプ7は例えば真空ポンプであり、第2電磁バルブ18を介してキャップ17から駆動液11を吸引し図示せぬ廃液溜めに吸引した駆動液11を排出する。
【0063】
パッキン6bに密着しパッキン6bの開口部を覆うキャップ17は吸引ポンプ7と連通し、送液接続部9の一方の開口186は開放されているので、第2電磁バルブ18を開き吸引ポンプ7を駆動することにより容易に送液接続部9の中間流路182に残留している駆動液11や気泡を吸引して排出して除去することができる。吸引ポンプ7は本発明の除去手段である。
【0064】
なお、本実施形態では吸引ポンプ7により中間流路182に残留している駆動液11や気泡を吸引して除去する例を説明するが、例えばシリンジポンプなどを用いて中間流路182に空気を注入して駆動液11や気泡を除去しても良い。
【0065】
次に、図5について説明する。なお、以降同じ構成要素には同番号を付し説明を省略する。
【0066】
図5では、第1駆動部43がポンプユニット5を矢印S2方向に移動させて、ポンプユニット5の吐出口65と送液接続部9の開口186とを連通した状態を示している。図4と同様にキャップ17はパッキン6bに密着しパッキン6bの開口部を覆っているので、吸引ポンプ7を駆動することにより新たな駆動液11をマイクロポンプ62を介して駆動タンク10から吸引し、送液接続部9の内部の中間流路182に駆動液11を満たすことができる。このように吸引ポンプ7を用いると、短時間で中間流路182に駆動液11を満たすことができる。
【0067】
なお、時間はかかるがマイクロポンプ62から送液して中間流路182に駆動液11を満たしても良い。
【0068】
次に、図6について説明する。
【0069】
中間流路182に新たな駆動液11充填した後、第2駆動部44が吸引ポンプ7を矢印F2方向に移動させてキャップ17をパッキン6bから離すとともに、温度調節ユニット3を、図6の状態からマイクロチップ1の厚み以上上昇させる。
【0070】
この状態ではマイクロチップ1は図6の紙面左右方向に挿抜可能であり、検査担当者は挿入口83から図示せぬ規制部材に当接するまでマイクロチップ1を挿入する。所定の位置までマイクロチップ1を挿入するとフォトインタラプタなどを用いたチップ検知部95がマイクロチップ1を検知し、オンになる。
【0071】
温度調節ユニット3とマイクロチップ1は、図示せぬ駆動機構により駆動され、紙面上下方向に移動可能である。図6はマイクロチップ1を温度調節ユニット3とパッキン6bに密着させている状態である。
【0072】
温度調節ユニット3は、ペルチェ素子、電源装置、温度制御装置などを内蔵し、発熱または吸熱を行ってマイクロチップ1の面を所定の温度に調整するユニットである。
【0073】
次に、駆動機構により温度調節ユニット3を下降させて、マイクロチップ1を温度調節ユニット3とパッキン6bに密着させる。
【0074】
マイクロポンプ62の吐出口65には送液接続部9が接続されていて、吸い込んだ駆動液11を、パッキン6a、送液接続部9、パッキン6bを介してマイクロチップ1の駆動液注入部110からマイクロチップ1内に形成された微細流路に注入する。
【0075】
パッキン6aはポンプユニット5と送液接続部9の間に挟まれ、マイクロポンプ62の開口65とパッキン6aの開口部と開口186とは連通している。また、パッキン6bは開口185とマイクロチップ1の駆動液注入部110の間に挟まれ、流路182とパッキン6bの開口部と駆動液注入部110とは連通している。このように、マイクロポンプ62から、連通しているパッキン6a、6bを介して駆動液注入部110より駆動液11を注入する。
【0076】
マイクロチップ1の検出部111では、検体とマイクロチップ1内に貯蔵された試薬が反応して、例えば呈色、発光、蛍光、混濁などをおこす。本実施形態では試薬の反応結果を測光するマイクロチップ1の検出部111を構成する溝形成基板108と被覆基板109は、光透過性の材料になっていて、試薬と検体の反応結果は、マイクロチップ1の検出部111を透過する光を測光または測色することで解析することができる。
【0077】
発光部4aと受光部4bはマイクロチップ1の検出部111を透過する光を検出できるように配置されている。
【0078】
図7は、送液接続部9の構成例を説明する図面である。
【0079】
図7(a)は、センサ基板183に形成された流量センサ280の平面図であり、図7(b)は図7(a)のA−A線断面図である。以下、図面の説明では図7(a)、図7(b)の紙面右側に示すXYZの座標軸を用いる。
【0080】
本実施形態では送液接続部9で流量を検出する方法の一例として熱移動方式の熱式流量センサを中間流路182に設けた例について説明する。
【0081】
流量センサ280は、中間流路182に沿って配置された発熱抵抗体52と、温度検出部材である第1の温度センサ53、第2の温度センサ51からなり駆動液の流量に対応する信号を出力する。流量センサ280は、図7に示すようにセンサ基板183の上に形成されている。
【0082】
センサ基板183には、8つの溝状の中間流路182に沿ってそれぞれ発熱抵抗体52、第1の温度センサ53、第2の温度センサ51、が設けられている。また、発熱抵抗体52、第1の温度センサ53、第2の温度センサ51の両端には電極54が設けられ、センサ基板183の図示せぬ配線パターンと配線されている。第1の温度センサ53、第2の温度センサ51として例えばサーミスタのように温度によって抵抗値が変化する素子を用いることができる。
【0083】
流路基板184には8つの溝状の中間流路182を備え、溝状の中間流路182の両端には開口186、開口185がそれぞれ備えられている。流路基板184は、例えば樹脂材料からなり、中間流路182は幅数100μm〜数mm、深さ数100μmである。
【0084】
センサ基板183には例えばガラスエポキシ基板などをパターンニングして用いることもできるが、低温焼結セラミックスを用いると厚膜印刷により発熱抵抗体52、第1の温度センサ53、第2の温度センサ51を形成できるので工程を簡略にすることができる。
【0085】
センサ基板183は図7のように流路基板184に重ねて貼り合わされている。
【0086】
センサ基板183に形成された発熱抵抗体52、第1の温度センサ53、第2の温度センサ51は中間流路182に沿うように配置されており、中間流路182を流れる駆動液11に接するようになっている。駆動液11は開口186から注入し、中間流路182を通って開口185から吐出する。上流側に設けられた第1の温度センサ53によって検出した駆動液11の液温と、下流側に設けられた第2の温度センサ51によって検出した発熱抵抗体52によって加熱された駆動液11の液温の温度差から中間流路182を流れる駆動液11の流量を算出する。
【0087】
スリット50は、図6のようにセンサ基板183に中間流路182毎に配設された発熱抵抗体52、第1の温度センサ53、第2の温度センサ51の間に設けられている。
【0088】
このように、駆動液11を発熱抵抗体52で加熱したり、駆動液11の液温を第1の温度センサ53、第2の温度センサ51で検出するので中間流路182の駆動液11に気泡が発生すると誤差が生じ正しい流量値が得られない。なお、流量検出には熱移動方式の他、熱吸収方式や光学方式など、どのような方式を用いても良いが、中間流路182の駆動液11に気泡が発生すると同様に検出した流量に誤差を生じる問題がおこる。
【0089】
本発明の検査装置80では中間流路182に残留した駆動液11を除去した後、酸素含有量を減じた新たな駆動液11を充填するので中間流路182に気泡が発生しない。したがって、正しい流量値が得られる。
【0090】
図8は、本発明の実施形態における検査装置80の回路ブロック図である。
【0091】
制御部99は、CPU98(中央処理装置)とRAM97(Random Access Memory),ROM96(Read Only Memory)等から構成され、不揮発性の記憶部であるROM96に記憶されているプログラムをRAM97に読み出し、当該プログラムに従って検査装置80の各部を集中制御する。
【0092】
以下、いままでに説明した機能と同一機能を有する機能ブロックには同番号を付し、説明を省略する。
【0093】
ポンプ駆動部91はマイクロポンプ62の駆動源、例えば圧電素子を駆動する駆動部である。メモリカード92は検査結果を記憶するために、プリンタ93は検査結果をプリントするために用いられる。
【0094】
電源部500は商用電源に接続され、検査装置80の各部に適した電圧を供給する電源回路である。商用電源が電源部500に供給されると、電源部500は制御部99に電源を供給し、制御部99からの制御信号に応じて各部に電源を供給するように構成されている。
【0095】
CPU98は第1駆動制御部411、マイクロポンプ駆動制御部412、吸引ポンプ駆動制御部413、第2駆動制御部414を有する。
【0096】
第1駆動制御部411はプログラムに基づいて、第1駆動部43を制御する。第2駆動制御部414はプログラムに基づいて、第2駆動部44を制御する。第1駆動制御部411は本発明の第1駆動制御手段、第2駆動制御部414は本発明の第2駆動制御手段である。
【0097】
マイクロポンプ駆動制御部412はプログラムに基づいて、所定量の駆動液を注入または吸入するようにポンプ駆動部91を制御する。ポンプ駆動部91は、マイクロポンプ駆動制御部412の指令を受けて、所定の駆動電圧を発生してマイクロポンプ92が備える圧電素子を駆動する。
【0098】
吸引ポンプ駆動制御部413は吸引ポンプ7の駆動を制御し、吸引ポンプ7による吸引を開始または停止する。吸引ポンプ駆動制御部413は、本発明の除去駆動制御手段である。
【0099】
CPU98は所定のシーケンスで検査を行い、検査結果をRAM97に記憶する。検査結果は、操作部87の操作によりメモリカード501に記憶したり、プリンタ503によってプリントしたり、外部入出力端子88より出力することができる。
【0100】
液量センサ280は、例えば図7のように第1の温度センサ53、第2の温度センサ51、発熱抵抗体52、抵抗R1、抵抗R2から構成される。
【0101】
第1の温度センサ53はセンサ基板183の図7には図示せぬ面に配置された抵抗R1と接続されている。発熱抵抗体52には定電圧Vcが印加され常に発熱している。
【0102】
第1の温度センサ53の一端には定電圧Vcが印加され、抵抗R1の一端は接地されている。第1の温度センサ53と抵抗R1の分圧は第1A/D変換器310によりデジタル値に変換され制御部99に入力される。CPU98は、第1A/D変換器310の出力値から第1の温度センサ53の温度T1を算出する。
【0103】
第2の温度センサ51も同様に抵抗R2と接続されている。また、第2の温度センサ51の一端には定電圧Vcが印加され、抵抗R2の一端は接地されている。第2の温度センサ51と抵抗R2の分圧は第2A/D変換器320によりデジタル値に変換され制御部99に入力される。CPU98は、第2A/D変換器320の出力値から第2の温度センサ51の温度T2を算出する。第2の温度センサ51は発熱抵抗体52より下流側に設けられているので、温度T2は発熱抵抗体52が発生した熱を吸収した流体の液温である。
【0104】
CPU98は、上流側の液温T1と、下流側の液温T2の温度差ΔTを算出し、温度差ΔTから流量を算出する。マイクロポンプ駆動制御部は算出された流量に基づいて、マイクロポンプ62の駆動にフィードバックする。
【0105】
チップ検知部95は規制部材に設けられていて、マイクロチップ1が規制部材に当接すると検知信号をCPU98に送信する。
【0106】
表示部84は本発明の表示手段であり、検査装置80の各種情報を表示する。
【0107】
駆動液量センサ19は駆動液タンク10に蓄えられた駆動液11の残量が所定の残量以下になると警告信号を制御部98に送信する。
【0108】
図9は本発明の実施形態において、検査の手順を説明するフローチャートである。
【0109】
以下、検査担当者が操作パネル87を操作して検査モードを開始させてからの手順を説明する。
【0110】
S101:ポンプユニット5と送液接続部9とを離すステップである。
【0111】
第1駆動部43は、ポンプユニット5を駆動液タンク10と接続したまま移動させて、図4のようにポンプユニット5の吐出口65と送液接続部9の開口186とが互いに開放状態になる状態にする。
【0112】
S102:送液接続部9の開口185と吸引ポンプ7とを連通させるステップである。
【0113】
第2駆動部44は吸引ポンプ7を図4のように矢印F1方向に移動させて、吸引ポンプ7に第2電磁バルブ18を介して接続されたキャップ17をパッキン6bに密着させる。
【0114】
S103:駆動液を除去するステップである。
【0115】
吸引ポンプ駆動制御部413は、第2電磁バルブ18を開放し、所定時間吸引ポンプ7を駆動して送液接続部9の中間流路182に残留している駆動液11を吸引して除去する。
【0116】
S104:ポンプユニット5と送液接続部9とを接続するステップである。
【0117】
第1駆動部43は、ポンプユニット5を図5のように矢印S2方向に移動させて、ポンプユニット5の吐出口65と送液接続部9の開口186とを連通させる。
【0118】
S105:駆動液11を吸引するステップである。
【0119】
吸引ポンプ駆動制御部413は、所定時間吸引ポンプ7を駆動して新たな駆動液11をマイクロポンプ62を介して駆動タンク11から吸引する。
【0120】
S106:吸引ポンプ7を送液接続部9から離すステップである。
【0121】
第2駆動部44が吸引ポンプ7を矢印F2方向に移動させてキャップ17をパッキン6bから離すとともに、温度調節ユニット3を、図6の状態からマイクロチップ1の厚み以上上昇させる。
【0122】
S107:マイクロチップ1を挿入するステップである。
【0123】
検査担当者は挿入口83から図示せぬ規制部材に当接するまでマイクロチップ1を挿入する。
【0124】
S108:マイクロチップ1と送液接続部9とを接続するステップである。
【0125】
CPU98は、チップ検知部95からマイクロチップ1を検知した信号を受信すると駆動機構部32を駆動し、温度調節ユニット3を下降させて、マイクロチップ1を温度調節ユニット3とパッキン6bに密着させる。
【0126】
S109:マイクロポンプ62を駆動するステップである。
【0127】
マイクロポンプ駆動制御部412は、所定の流量でマイクロチップ1の流路に駆動液11を送液するように検査の手順に基づいてマイクロポンプ62を順次駆動する。
【0128】
S110:マイクロポンプ62を停止するステップである。
【0129】
マイクロポンプ駆動制御部412は、マイクロポンプ62を停止する。
【0130】
S111:マイクロチップ1内で検体と試薬の反応を増幅し検出するステップである。
【0131】
CPU98は、マイクロチップ1内で行われる検体と試薬の反応が終わるまで所定の時間温度調整ユニット3で温度調整を行ってから、発光部4aから発光した光が検出部111を透過する光を受光部4bで検出する。CPU98は、受光部4bが測光または測色した値を解析し、検査結果をRAM97に記憶する。
【0132】
検査ルーチンの説明は以上である。
【0133】
このように送液接続部9の中間流路182に残留した駆動液11を除去した後、新たな駆動液11を中間流路182に充填してマイクロチップ1に送液するので、中間流路182に気泡が発生しない。
【0134】
以上このように、本発明によれば、安定してマイクロチップに送液し精度の良い検査ができる検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】本発明の実施形態における検査装置80の外観図である。
【図2】本発明の実施形態に係わるマイクロチップ1の説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係わるポンプユニット5の内部構成の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係わる検査装置80の内部構成の一例を示す断面図である。(送液接続部9に形成された中間流路182に残留した駆動液11を吸引ポンプ7で吸引して除去している状態)
【図5】本発明の実施形態に係わる検査装置80の内部構成の一例を示す断面図である。(中間流路182に残留した駆動液11を除去した後、送液接続部9をポンプユニット5と接続し、吸引ポンプ7で駆動液11を吸引して中間流路182に駆動液11を充填している状態)
【図6】本発明の実施形態に係わる検査装置80の内部構成の一例を示す断面図である。(送液接続部9とマイクロチップ1を接続し、ポンプユニット5から送液接続部9を介してマイクロチップ1に駆動液11を送液している状態)
【図7】送液接続部9の構成例の説明する図面である。
【図8】本発明の実施形態における検査装置80の回路ブロック図である。
【図9】本発明の実施形態において、検査の手順を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0136】
1 マイクロチップ
3 温度調整ユニット
4 光検出部
5 ポンプユニット
6 パッキン
7 吸引ポンプ
9 中間流路
10 駆動液タンク
11 駆動液
12 フィルタ
14 第1電磁バルブ
18 第2電磁バルブ
43 第1駆動部
44 第2駆動部
64 吸引口
80 検査装置
82 筐体
83 挿入口
84 表示部
89 電源スイッチ
111 検出部
411 第1駆動制御部
414 第2駆動制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプから送液接続部に形成された中間流路を介して駆動液をマイクロチップに注入し、反応結果を該マイクロチップから検出する検査装置において、
前記中間流路の内部の駆動液を除去する除去手段と、
前記除去手段の駆動を制御する除去駆動制御手段と、
を有し、
前記除去駆動制御手段は、
前記ポンプから前記マイクロチップに前記駆動液を注入する前に前記除去手段を制御して前記中間流路の内部の駆動液を除去することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記除去手段は真空ポンプであり、前記送液接続部の開口から前記中間流路の内部の駆動液を吸引して除去することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記ポンプまたは前記送液接続部を移動させて、前記ポンプの吐出口と前記送液接続部の開口とが連通する状態と、互いに開放状態になる状態との何れかにする第1の駆動手段と、
前記第1の駆動手段の駆動を制御する第1駆動制御手段と、
前記除去手段または前記送液接続部を移動させて、前記除去手段と前記送液接続部の開口とが連通する状態と、互いに開放状態になる状態との何れかにする第2の駆動手段と、
前記第2の駆動手段の駆動を制御する第2駆動制御手段と、
を有し、
前記第1駆動制御手段が前記第1の駆動手段を制御して前記送液接続部の一方の開口を開放状態にするとともに、前記第2駆動制御手段が前記第2の駆動手段を制御して前記除去手段と前記送液接続部の他方の開口とを連通させた後、
前記除去駆動制御手段は、前記除去手段を制御して前記中間流路に残留した前記駆動液を除去することを特徴とする請求項1または2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記除去手段が前記中間流路に残留した前記駆動液を除去した後、
前記第1駆動制御手段は、
前記第1の駆動手段を制御して前記ポンプの吐出口と前記送液接続部の一方の開口とを連通させ、
前記除去駆動制御手段は、
前記除去手段を制御して前記中間流路に前記駆動液を充填することを特徴とする請求項3に記載の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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