説明

業務状況可視化システム

【課題】 各看護師の状況や各患者への業務実施履歴を一目で把握できるように可視化する。
【解決手段】 業務状況可視化システム100はPC10を含む。PC10は、各看護師の状況を各種センサ12〜16からの情報に基づいて各種エンジン20〜23で検知し、検知結果を含む看護師状況情報を時計12T〜16Tに基づく時刻情報と共にコンテキスト管理サーバ26に蓄積する。そして、蓄積された看護師状況情報に基づいて任意の時刻における各看護師の状況を示す画像(i1X〜i1Z,i2X〜i2Z,i3,i4)を看護師状況ビューワ30でモニタ(52)に一覧表示する。また、蓄積された看護師状況情報に基づいて各患者の処置履歴情報を作成して、任意の時刻における各患者への処置履歴を示す画像(W1,W2)を患者状況ビューワ32でモニタ(52)に一覧表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、業務状況可視化システムに関し、特にたとえば、医療現場において看護師が患者に対して行う看護業務の状況を可視化する、業務状況可視化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のシステムとしては、非特許文献1に記載された看護支援システムが知られている。この背景技術では、看護師が携帯する情報端末に患者情報の表示,業務実施状況や体温測定結果の記録といった機能を持たせる一方、情報端末で記録された実施情報や測定情報をサーバPCの画面に表示することで、看護業務の効率向上を図っている。
【非特許文献1】「携帯情報端末を用いた看護支援システムの開発と評価」(助田浩子ほか,情報処理学会論文誌,Vol.40,No.10,pp.3782〜3791,1999年10月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の背景技術では、サーバPCの画面に実施情報等が表示されるものの、各看護師の状況や各患者への業務実施履歴を一目で把握することは困難なので、師長などの管理者は、各看護師の状況に応じて業務の割り振りを変更したり、業務実施が遅滞している患者の担当看護師にアドバイスを行ったりして、更なる業務効率の向上を図ることはできなかった。各看護師もまた、自分自身の状況しかわからないので、看護師同士で連携して効率化を図ることもできなかった。
【0004】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な業務状況可視化システムを提供することである。
【0005】
この発明の他の目的は、各看護師(業務を実行する各作業者)の状況や各患者(業務を受ける各対象者)への業務実施履歴を一目で把握することができる、業務状況可視化システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0007】
第1の発明は、業務の状況を可視化する業務状況可視化システムであって、業務を行う各作業者の状況をセンサからの情報に基づいて検知する検知手段、検知手段の検知結果を含む作業者状況情報を時計に基づく時刻情報と共に蓄積する第1蓄積手段、および第1蓄積手段に蓄積された作業者状況情報に基づいて任意の時刻における各作業者の状況を示す作業者状況画像をモニタに一覧表示する第1表示手段を備える。
【0008】
第1の発明では、業務状況可視化システム(100)は、検知手段(20〜22)、第1蓄積手段(26)および第1表示手段(32,S91〜S97,S101〜S113)を備える。検知手段は、業務を行う各作業者の状況をセンサ(12〜16)からの情報に基づいて検知する。第1蓄積手段には、検知手段の検知結果を含む作業者状況情報が、時計(12T〜16T)に基づく時刻情報と共に蓄積されていく。第1表示手段は、第1蓄積手段に蓄積された作業者状況情報に基づいて、任意の時刻における各作業者の状況を示す作業者状況画像(i1X〜i1Z,i2X〜i2Z,i3,i4)をモニタ(52)に一覧表示する。
【0009】
第1の発明によれば、任意の時刻における各作業者の状況がモニタに一覧表示されるので、各作業者の状況を一目で把握することができる。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に従属する業務状況可視化システムであって、センサは赤外線センサおよび動きセンサを含み、検知手段は、各作業者の位置を赤外線センサからの情報に基づいて推定する推定手段、および各作業者の行動を動きセンサからの情報に基づいて識別する識別手段を含み、作業者状況情報は推定手段の推定結果である位置情報および識別手段の識別結果である行動情報を含み、そして作業者状況画像は各作業者の位置および行動を示す。
【0011】
第2の発明では、センサは赤外線センサ(12)および動きセンサ(14)を含み、検知手段は推定手段(20)および識別手段(22)を含む。推定手段は各作業者の位置を赤外線センサからの情報に基づいて推定し、識別手段は各作業者の行動を動きセンサからの情報に基づいて識別する。なお、識別にあたって推定手段の推定結果や他のセンサからの情報を参照してもよい。したがって、第1蓄積手段が蓄積する作業者状況情報には推定手段の推定結果である位置情報および識別手段の識別結果である行動情報が含まれ、第1表示手段が表示する作業者状況画像は各作業者の位置および行動を示す結果となる。
【0012】
第2の発明によれば、各作業者の位置および行動を一目で把握することができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明に従属する業務状況可視化システムであって、センサは近接センサをさらに含み、検知手段は各作業者の近接対象を近接センサからの情報に基づいて特定する特定手段をさらに含み、作業者状況情報は特定手段の特定結果である近接対象情報をさらに含み、そして作業者状況画像は各作業者の近接対象をさらに示す。
【0014】
第3の発明では、センサは推定手段および識別手段に加えて近接センサ(16)も含み、検知手段は推定手段および識別手段に加えて特定手段(23)も含む。特定手段は各作業者の近接対象を近接センサからの情報に基づいて特定するので、第1蓄積手段が蓄積する作業者状況情報には位置情報および行動情報に加えて特定手段の特定結果である近接対象情報も含まれ、第1表示手段が表示する作業者状況画像は各作業者の位置および行動に加えて近接対象をも示す結果となる。
【0015】
第3の発明によれば、各作業者の位置,行動および近接対象を一目で把握することができる。
【0016】
第4の発明は、第3の発明に従属する業務状況可視化システムであって、各作業者の近接対象は業務用の各機材のうち当該作業者に近接している機材を含む。
【0017】
第4の発明では、第1表示手段が表示する作業者状況画像は、各作業者の位置および行動に加えて近接機材も示す。
【0018】
第4の発明によれば、各作業者の位置,行動および近接機材を一目で把握することができる。
【0019】
第5の発明は、第3または第4の発明に従属する業務状況可視化システムであって、各作業者の近接対象は業務を受ける各対象者のうち当該作業者に近接する対象者を含み、第1蓄積手段に蓄積された作業者状況情報に基づいて各対象者への業務実施履歴を示す対象者履歴情報を作成してメモリに記憶し、対象者履歴情報に基づいて任意の時刻における各対象者への業務実施履歴を示す対象者業務履歴画像をモニタに一覧表示する、第2表示手段をさらに備える。
【0020】
第5の発明では、各作業者の近接対象は業務を受ける各対象者のうち当該作業者に近接する対象者を含む。したがって、第1表示手段が表示する作業者状況画像は、各作業者の位置および行動に加えて近接機材および/または近接対象者も示してよい。そして、業務状況可視化システムは第2表示手段(30,S21〜S56,S71〜S85)をさらに備え、第2表示手段は、第1蓄積手段に蓄積された作業者状況情報に基づいて各対象者への業務実施履歴を示す対象者履歴情報を作成してメモリ(72,74)に記憶し、このメモリに記憶している対象者履歴情報に基づいて任意の時刻における各対象者への業務実施履歴を示す対象者業務履歴画像(W1,W2)をモニタに一覧表示する。
【0021】
第5の発明によれば、任意の時刻における各対象者への業務実施履歴がモニタに一覧表示されるので、各対象者への業務実施履歴を一目で把握することができる。
【0022】
第6の発明は、第5の発明に従属する業務状況可視化システムであって、赤外線センサからの情報,動きセンサからの情報および近接センサからの情報の少なくとも1つを含むセンサ情報を時計に基づく時刻情報と共に蓄積する第2蓄積手段、および第2蓄積手段に蓄積されたセンサ情報に基づいて任意の時刻におけるセンサの検知結果を示す画像をモニタに表示する第3表示手段をさらに備える。
【0023】
第6の発明では、業務状況可視化システムは第2蓄積手段(28)および第3表示手段(34)をさらに備える。第2蓄積手段は赤外線センサからの情報,動きセンサからの情報および近接センサからの情報の少なくとも1つを含むセンサ情報を時計に基づく時刻情報と共に蓄積し、第3表示手段は第2蓄積手段に蓄積されたセンサ情報に基づいて任意の時刻におけるセンサの検知結果を示す画像をモニタに表示する。
【0024】
第6の発明によれば、任意の時刻におけるセンサの検知結果も知ることができる。
【0025】
第7の発明は、第6の発明に従属する業務状況可視化システムであって、モニタへの表示を入力装置(54)の操作に基づいて第1ないし第3表示手段を含む複数の表示手段に対応する複数の画面の間で切り換える切り換え手段(S3〜S11)をさらに備える。
【0026】
第7の発明によれば、ユーザは、入力装置を操作することで、各作業者の状況画面,各対象者への業務実施履歴画面,およびセンサの検知結果画面を含む複数の画面のうち任意の1つをモニタに表示させることができる。
【0027】
第8の発明は、業務の状況を可視化する業務状況可視化システムであって、業務を行う各作業者の位置を赤外線センサからの情報に基づいて推定する推定手段、各作業者の行動を動きセンサからの情報に基づいて識別する識別手段、各作業者の近接対象を近接センサからの情報に基づいて特定する特定手段、推定手段の推定結果である位置情報,識別手段の識別結果である行動情報および特定手段の特定結果である近接情報を含む作業者状況情報を時計に基づく時刻情報と共に蓄積する蓄積手段、および蓄積手段に蓄積された作業者状況情報に基づいて業務を受ける各対象者への業務実施履歴を示す対象者履歴情報を作成して第1メモリに記憶し、対象者履歴情報に基づいて任意の時刻における各対象者への業務実施履歴を示す対象者業務履歴画像をモニタに一覧表示する、表示手段を備える。
【0028】
第8の発明では、業務状況可視化システム(100)は、推定手段(20)、識別手段(22)、特定手段(23)、蓄積手段(26)および表示手段(30,S21〜S56,S71〜S85)を備える。推定手段は業務を行う各作業者の位置を赤外線センサ(12)からの情報に基づいて推定し、識別手段は各作業者の行動を動きセンサ(14)からの情報に基づいて識別し、そして特定手段は各作業者の近接対象を近接センサ(16)からの情報に基づいて特定する。蓄積手段(26)には、推定手段の推定結果である位置情報,識別手段の識別結果である行動情報,および特定手段の特定結果である近接情報を含む作業者状況情報が、時計(12T〜16T)に基づく時刻情報と共に蓄積されていく。表示手段は、蓄積手段に蓄積されている作業者状況情報に基づいて、業務を受ける各対象者への業務実施履歴を示す対象者履歴情報を作成して第1メモリ(72,74)に記憶し、この第1メモリに記憶している対象者履歴情報に基づいて、任意の時刻における各対象者への業務実施履歴を示す対象者業務履歴画像(W1,W2)をモニタに一覧表示する。
【0029】
第8の発明によれば、任意の時刻における各対象者への業務実施履歴がモニタに一覧表示されるので、各対象者への業務実施履歴を一目で把握することができる。
【0030】
第9の発明は、第8の発明に従属する業務状況可視化システムであって、表示手段は、各対象者への業務実施予定を示す対象者予定情報を第2メモリ(66,68)に記憶しており、対象者履歴情報と対象者予定情報とを現在時刻において比較して、業務実施履歴と業務実施予定との間に差異がある対象者の業務履歴画像に当該差異を通知するメッセージ(M1〜M3)をハイライト表示する(S55,S37,S39)。
【0031】
第9の発明によれば、現時点で業務実施状況が予定と異なる対象者がいれば、その対象者および差異を知ることができる。
【0032】
第10の発明は、第9の発明に従属する業務状況可視化システムであって、メッセージは予定業務の未実施を通知する。
【0033】
第11の発明は、第9の発明に従属する業務状況可視化システムであって、メッセージは実施時刻と予定時刻との間の時間差を通知する。
【0034】
第12の発明は、第9の発明に従属する業務状況可視化システムであって、メッセージは予定外業務の実施を通知する。
【0035】
第13の発明は、第9の発明に従属する業務状況可視化システムであって、表示手段は差異がある対象者への業務を担当する作業者の携帯端末(40)にも無線通信モジュール(10L,40L)を介してメッセージを表示する(S56,S38,S40)。
【0036】
第13の発明によれば、現時点で業務実施状況が予定と異なる対象者がいれば、その対象者を担当する作業者に直接、その差異を知らせることができる。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、各看護師の状況や各患者への業務実施履歴を一目で把握することができる、業務状況可視化システムが実現される。この結果、管理者は、各看護師の状況に応じて業務の割り振りを変更したり、業務実施が遅滞している患者の担当看護師にアドバイスを行ったりして、業務効率の向上を図ることができる。看護師同士で連携して効率化を図ることも可能となる。
【0038】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の一実施例である業務状況可視化システムの構成を示すブロック図である。
【図2】看護業務への適用例を示す図解図である。
【図3】PCの構成例を示すブロック図である。
【図4】PCのメインメモリのメモリマップを示す図解図である。
【図5】PCのCPU動作の一部を示すフロー図である。
【図6】PCのCPU動作の他の一部を示すフロー図である。
【図7】PCのCPU動作のその他の一部を示すフロー図である。
【図8】看護師状況テーブルの一例を示す図解図である。
【図9】患者処置予定データの一例を示す図解図であり、(A)が患者Aの処置予定データを示し、(B)が患者Bの処置予定データを示す。
【図10】患者処置履歴定データの一例を示す図解図であり、(A)が患者Aの処置履歴データを示し、(B)が患者Bの処置履歴データを示す。
【図11】患者状況RT画面の一例を示す図解図である。
【図12】患者処置履歴定データの他の一例を示す図解図であり、(A)が患者Aの処置履歴データを示し、(B)が患者Bの処置履歴データを示す。
【図13】患者状況RT画面の他の一例を示す図解図である。
【図14】PCのCPU動作のさらにその他の一部を示すフロー図である。
【図15】患者状況PB画面の他の一例を示す図解図である。
【図16】PCのCPU動作の他の一部を示すフロー図である。
【図17】看護師状況テーブルの他の一例を示す図解図である。
【図18】看護師状況RT画面の一例を示す図解図である。
【図19】PCのCPU動作のその他の一部を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1を参照して、この発明の一実施例である業務状況可視化システム100は、PC10,携帯端末40,赤外線センサ12,動きセンサ14,近接センサ16およびマイクロフォン18を備える。赤外線センサ12,動きセンサ14,近接センサ16およびマイクロフォン18には、時計12T,14T,16T,および18Tがそれぞれ設けられており、各時計12T〜18Tは、PC10側の時計10T(図3参照:後述)と同期している。
【0041】
また、赤外線センサ12にはさらに無線LANモジュール12Lが設けられ、携帯端末40,動きセンサ14,近接センサ16およびマイクロフォン18にはさらにBluetooth(登録商標)モジュール40B,14B,16Bおよび18Bがそれぞれ設けられており、無線LANモジュール12LはPC10側の無線LANモジュール10L(図3参照:後述)との間で無線LAN通信を行い、各Bluetoothモジュール14B〜18Bは携帯端末40のBluetoothモジュール40Bとの間でBluetooth通信を行う。
【0042】
したがって、この実施例では、赤外線センサ12からの信号は無線LANで直接PC10へと伝送される一方、動きセンサ14,近接センサ16およびマイクロフォン18からの各信号は、Bluetoothで携帯端末40に集約された後に、無線LANでPC10へと伝送される。
【0043】
なお、他の実施例では、携帯端末40を省略して、動きセンサ14,近接センサ16およびマイクロフォン18が直接PC10と無線LANで通信を行うようにすることも可能である。すなわち、動きセンサ14,近接センサ16およびマイクロフォン18に設けられたBluetoothモジュール14B,16Bおよび18Bを無線LANモジュール14L,16Lおよび18L(図示せず)に置き換え、各無線LANモジュール14L〜18LがPC10側の無線LANモジュール10Lとの間で無線LAN通信を行ってもよい。
【0044】
また、PC10と赤外線センサ12との間の接続には、無線LAN方式に代えて、ZigBee(登録商標)など他の近距離無線通信方式を用いてもよく、LANケーブル等を介した有線通信方式を用いることも可能である。
【0045】
また、動きセンサ14,近接センサ16およびマイクロフォン18と携帯端末40との間の接続には、Bluetooth方式に代えて他の近距離無線通信方式を用いてもよく、接続箇所によって異なる近距離無線通信方式を用いることも可能である。
【0046】
業務状況可視化システム100の看護業務への適用例を図2に示す。図2の適用例では、PC10は、病棟内の任意の場所たとえばナースステーションに設置される。赤外線センサ12は赤外線送信機12aおよび赤外線受信機12bで構成され、赤外線送信機12aは看護師Xの頭部に装着される。赤外線受信機12bは、病棟内の所定位置たとえば各室の出入り口ENTや手洗い用シンクなどの近傍に設置される(図11,図18等参照:後述)。
【0047】
赤外線送信機12aおよび赤外線受信機12bの各々にはIDが付されており、赤外線送信機12aは自身のIDを赤外線で周期的に送信する。赤外線受信機12bは、赤外線送信機12aからIDを受信すると、このIDおよび自身のIDを時計12Tに基づくタイプスタンプと共に、無線LANモジュール12Lを通してPC10に送信する。すなわち、赤外線センサ12が出力するIDデータは、一対のIDとタイムスタンプとを含む。
【0048】
動きセンサ14は加速度センサ14a〜14dで構成され、加速度センサ14a〜14dは、看護師Xの左上腕,右上腕,胸および腰にそれぞれ装着され、3軸の加速度を繰り返し(たとえば1/100秒周期で)検知する。動きセンサ14は、各加速度センサ14a〜14dの検知結果を時計14Tに基づくタイムスタンプと共に、Bluetoothモジュール14Bおよび40Bならびに無線LANモジュール40Lを通してPC10に送信する。すなわち、動きセンサ14が出力する動きデータは、3×4=12成分の加速度値とタイムスタンプとを含む。
【0049】
近接センサ16はBluetoothモジュール16aおよび16bで構成され、Bluetoothモジュール16aは看護師X(の携帯端末40)に、Bluetoothモジュール16bは共用の看護機材42(血圧計など)および当該患者専用のベッド44(所持品や患者自身でもよい)に、それぞれ設けられる。看護機材42は、所定の場所たとえばナースステーションに保管されており、必要に応じて病室などに持ち出される。
【0050】
看護師X(の携帯端末40)に設けられたBluetoothモジュール16aは、看護機材42やベッド44に設けられたBluetoothモジュール16bのID(MACアドレス)を検知して、このIDおよび自身のIDを、現時点の電解強度(RSSI)および時計16Tに基づくタイムスタンプと共に、Bluetoothモジュール16Bおよび40Bならびに無線LANモジュール40Lを通してPC10に送信する。すなわち、近接センサ16が出力する近接データは、一対のIDと電界強度値とタイムスタンプとを含む。
【0051】
マイクロフォン18は、看護師Xの口の近くに装着され、看護師Xの発話を含む音声を捉えて符号化する。符号化して得られた音声データは、時計18Tに基づくタイムスタンプと共に、Bluetoothモジュール18Bおよび40Bならびに無線LANモジュール40Lを通してPC10に送信される。すなわち、マイクロフォン18が出力する音声データにもまた、タイムスタンプが付与される。
【0052】
なお、他の看護師Y,Z,…の各々にも同様に、赤外線送信機12a,加速度センサ14a〜14d,Bluetoothモジュール16a(が設けられた携帯端末40),およびマイクロフォン18が装着される。
【0053】
再び図1を参照して、PC10は、位置推定エンジン20,行動識別エンジン22,対象特定エンジン23,音声認識エンジン24,コンテキスト管理サーバ26,センサデータマネージャ28,患者状況ビューワ30,看護師状況ビューワ32およびセンサデータビューワ34を備える。コンテキスト管理サーバ26はリアルタイムDB(データベース)26rおよび履歴DB26hを含み、そしてセンサデータマネージャ28はセンサDB28sを含む。
【0054】
これらの構成要素(20〜34,26r,26hおよび28s)の機能は、図3に示すハードウェア資源、つまり時計10T,無線LANモジュール10L,CPU50,LCDモニタ52,キー入力装置54およびメインメモリ56と、メインメモリ56に格納されたソフトウェア資源とによって実現される。ソフトウェア資源はミドルウェア層,コンテキスト管理層およびアプリケーション層を含む複数の層に階層化されており、位置推定エンジン20,行動識別エンジン22,対象特定エンジン23および音声認識エンジン24はミドルウェア層に、コンテキスト管理サーバ26およびセンサデータマネージャ28はコンテキスト管理層に、そして患者状況ビューワ30,看護師状況ビューワ32およびセンサデータビューワ34はアプリケーション層に、それぞれ属する。
【0055】
赤外線センサ12からのIDデータは、図示しないバッファを経て位置推定エンジン20に与えられる。位置推定エンジン20は、与えられたIDデータに基づいて看護師X,Y,…の現在位置を推定し、推定結果(位置情報)をコンテキスト管理サーバ26および行動識別エンジン22に出力する。
【0056】
近接センサ16からの近接データは、図示しないバッファを経て対象特定エンジン23に与えられる。対象特定エンジン23は、与えられた近接データに基づいて看護師X,Y,…の近接対象(患者A,Bまたは看護機材42)を特定し、特定結果(近接対象情報)をコンテキスト管理サーバ26および行動識別エンジン22に出力する。
【0057】
動きセンサ14からの動きデータは、図示しないバッファを経て行動識別エンジン22に与えられる。行動識別エンジン22は、主として与えられた動きデータに基づいて、位置推定エンジン20の推定結果および対象特定エンジン23の特定結果も参照しつつ、看護師X,Y,…の行動を識別し、識別結果(行動情報)をコンテキスト管理サーバ26に出力する。
【0058】
マイクロフォン18からの音声データは、図示しないバッファを経て音声認識エンジン24に与えられる。音声認識エンジン24は、与えられた音声データに基づいて看護師X,Y,…の発話音声を識別し、識別結果(発話情報)をコンテキスト管理サーバ26に出力する。
【0059】
コンテキスト管理サーバ26は、こうしてミドルウェア層で収集された情報を看護師毎に集約して、看護コンテキストとして管理する。
【0060】
詳しくは、コンテキスト管理サーバ26内のリアルタイムDB26rには、図8,図17に示すように構成された看護師状況テーブル74が格納されている。看護師状況テーブル74は、各々が一人の看護師に対応する複数のデータフィールドからなり、各データフィールドは、データフィールドID,看護師ID,行動状態,行動状態変更時刻,位置ID,位置変更時刻,対象患者ID,対象患者変更時刻,対象機材ID,対象機材変更時刻,音声ID,音声認識結果および音声変更時刻を含む。
【0061】
コンテキスト管理サーバ26は、位置推定エンジン20の推定結果,行動識別エンジン22の推定結果,対象特定エンジン23の特定結果,および音声認識エンジン24の認識結果を受け取ると、これらを看護師毎に集約し、結果をリアルタイムDB26r内の看護師状況テーブル74に逐次書き込む。リアルタイムDB26r内の看護師状況テーブル74が更新されると、コンテキスト管理サーバ26内の履歴DB26hに更新履歴データが追記されていく。コンテキスト管理サーバ26は、履歴DB26hの更新履歴データを参照することで、業務開始時刻から現在時刻(または業務終了時刻)までの任意の時刻における看護師状況テーブル74を再現することができる。
【0062】
コンテキスト管理サーバ26はまた、患者状況ビューワ30または看護師状況ビューワ32の要求に応じて、現在時刻または指定時刻における看護コンテキストを提供する。現在時刻における看護コンテキストとしてはリアルタイムDB26r内の看護師状況テーブル74が、指定時刻における看護コンテキストとしては履歴DB26h内の履歴データから再現される看護師状況テーブル74が、それぞれ提供される。
【0063】
センサデーマネージャ28は、各種センサ12〜16によって検出された生データの管理を行う。すなわち、赤外線センサ12からのIDデータ,動きセンサ14からの動きデータおよび近接センサ16からの近接データは、センサデーマネージャ28にも与えられる。センサデーマネージャ28は、与えられたデータをセンサDB28sに保存すると共に、センサデータビューワ34から要求があれば、センサDB28sから該当データを読み出して提供する。
【0064】
患者状況ビューワ30は、コンテキスト管理サーバ26から看護コンテキストの提供を受けて、現在時刻または指定時刻における各患者状況を一覧表示する。
【0065】
詳しくは、メインメモリ56のデータ領域56bには、図9(A),図9(B)に示すような、各患者A,Bの処置予定を示す患者処置予定データ66,68が格納されている。たとえば患者Aの処置予定データ66は、各々が患者Aへの1つの処置に対応する複数のデータフィールドからなり、各データフィールドはデータフィールドID,処置内容,場所,看護師ID,開始時刻および終了時刻を含む。この患者処置予定データ66,68は、キー入力装置54の操作によって随時更新可能である。
【0066】
患者状況ビューワ30は、コンテキスト管理サーバ26から、図8に示すような現在時刻または指定時刻における看護師状況テーブル74を取得して、図10(A),図10(B)または図12(A),図12(B)に示すような各患者A,Bの処置履歴データ70,72を作成する。患者処置履歴データ70,72は、前述した患者処置予定データ66,68(図9(A),図9(B)参照)と同様の構成を有する。そして、作成した患者処置履歴データ70,72に基づいて、図11,図13に示すような患者状況リアルタイム(RT)画面、または図15に示すような患者状況プレイバック(PB)画面をLCDモニタ52に表示する。
【0067】
たとえば図11の患者状況RT画面では、患者Aの処置状況を示す状況ウィンドウW1および患者Bの処置状況を示す状況ウィンドウW2が、病棟の間取り図FP上に表示される。各状況ウィンドウW1,W2には、現在時刻における「予定」,「履歴」および「担当」が、時間軸に沿う帯の態様で表示される。「予定」は患者処置予定データ66,68に記述された“処置内容”,“開始時刻”および“終了時刻”に基づき、「履歴」は患者処置履歴データ70,72に記述された“処置内容”,“開始時刻”および“終了時刻”に基づき、そして「担当」は患者処置履歴データ70,72または患者処置予定データ66,67に記述された“担当看護師ID”に基づく。各状況ウィンドウの内容はその後、時間の経過に従ってたとえば5秒毎に更新されていく。
【0068】
各状況ウィンドウW1,W2内で「予定」と「履歴」との間にずれが生じると、これを通知するメッセージ(M1〜M3)が当該状況ウィンドウW1,W2内にハイライト表示される。図11の患者状況RT画面では、患者Aを対象に9時30分から実施予定である検査aは、9時40分を過ぎても未だ開始されていないので、患者Aの状況ウィンドウW1に「注意!検査aが未実施です」というメッセージM1が表示されている。このメッセージM1は、無線LANを通じて担当である看護師Yの携帯端末40にも表示可能である。
【0069】
一方、患者Bを対象に9時00分から看護師Xにより実施予定である点滴は、8時57分に開始されており、このため患者Bの状況ウィンドウW2には「点滴は予定より3分早く実施中です」というメッセージM2が表示されている。このメッセージM2は、無線LANを通じて担当である看護師Xの携帯端末40にも表示可能である。
【0070】
図13の患者状況RT画面では、患者Aに対して13時30分から予定されている処置は検査bなのに、担当である看護師Xは13時32分の時点で検査cを実施しており、このため患者Aの状況ウィンドウW1には「注意!予定外の処置です」というメッセージM3が表示されている。このメッセージM3は、無線LANを通じて看護師Xの携帯端末40にも表示可能である。患者Bに対しては予定された処置が時間通りに実施中であり、このため患者Bの状況ウィンドウW2にはメッセージは表示されていない。
【0071】
図15の患者状況PB画面でも同様に各患者A,Bの処置状況を示す状況ウィンドウW1,W2が病棟の間取り図FP上に表示されるが、ここで各状況ウィンドウW1,W2に示されるのは、現在時刻ではなく指定時刻における「予定」,「履歴」および「担当」である。この患者状況PB画面では、業務の開始から終了までの期間に対応するタイムバーTBが間取り図FPの下方に表示されており、ユーザが、このタイムバーTB上のポインタPtを図示しないポインティングデバイスで移動させることによって、またはキー入力装置54で直接数字を入力することによって、所望の時刻を指定すると、各状況ウィンドウW1,W2には、指定時刻における「予定」,「履歴」および「担当」が表示される。各状況ウィンドウWI,W2の表示内容はその後、時間の経過に従ってたとえば5秒毎に更新されていく。
【0072】
看護師状況ビューワ32は、コンテキスト管理サーバ26から看護コンテキストの提供を受けて、現在時刻または指定時刻における各看護師X,Y,…の状況を一覧表示する。詳しくは、看護師状況ビューワ32は、コンテキスト管理サーバ26から図17に示すような現在時刻または指定時刻における看護師状況テーブル74を取得して、図18に示すような看護師状況RT画面または図示しない看護師状況PB画面をLCDモニタ52に表示する。
【0073】
図18の看護師状況RT画面では、各看護師X〜Zについて、現在時刻(18:23:32)における位置および行動状態が、位置アイコンi1X〜i1Zおよび行動状態アイコンi2X〜i2Zの態様で、間取り図FP上に示される。位置アイコンi1Xおよび行動状態アイコンi2Xによって、看護師Xはナースステーション内で時刻18:23から手洗いを実行中であることがわかる。位置アイコンi1Yおよび行動状態アイコンi2Yによって、看護師Yはナースステーション内で時刻18:19から記入動作を実行中であることがわかる。位置アイコンi1Zおよび行動状態アイコンi2Zによって、看護師Zは時刻18:19から廊下を歩いて移動中であることがわかる。
【0074】
また、位置アイコンi1Zおよび行動状態アイコンi2Zの近傍には、血圧計03を示す対象機材アイコンi3が表示されており、これによって、看護師Zは血圧計03を携行していることもわかる。
【0075】
そしてこの後、看護師Zが202号病室でベッド44に横たわる患者Bの血圧測定を行ったとすると、位置アイコンi1Z,行動状態アイコンi2Zおよび対象機材アイコンi3の近傍にさらに、患者Bを示す対象患者アイコンi4が表示される。このとき、行動状態アイコンi2Zは“血圧測定_18:20〜”を示している。これらのアイコンi1Z,i2Z,i3およびi4によって、看護師Zは202号病室で患者Bに対し18時20分から血圧測定を行っていることがわかる。
【0076】
上記のような4種類のアイコンi1〜i4は、図17に示すような現在時刻における看護師状況テーブル74に基づくもので、以降、時間の経過に従ってたとえば5秒毎に更新されていく。なお、図示しない看護師状況PB画面では、指定時刻における看護師状況テーブル74に基づいて、同様のアイコンi1〜i4が表示され、同様に更新されていく。
【0077】
センサデータビューワ34は、センサデータマネージャ28から現在時刻または指定時刻における生データを取得して、各種のセンサ情報たとえば動きデータに基づく加速度波形(図示せず)などをLCDモニタ52に表示する。センサ情報もまた、時間の経過に従ってたとえば5秒毎に更新されていく。
【0078】
このように、業務状況可視化システム100を看護業務に適用すれば、患者および看護師一人一人の状況をPC10の画面でリアルタイムに(またはプレイバックで)一覧できるので、師長など管理者による業務管理が容易になり、看護師同士の情報共有も促進される。また、業務の実行状況(履歴)が予定から外れていれば、PC10の画面や携帯端末40を通じて警告ないし通知が行われるので、管理者の負担を増やすことなく看護業務の質的向上を図ることができる。
【0079】
以下、このような業務状況可視化を実現するための具体的な情報処理について説明する。メインメモリ56のメモリマップの一部(アプリケーション層に割り当てられた部分)を図4に示す。メインメモリ56はプログラム領域56aおよびデータ領域56bを含み、プログラム領域56aには表示制御プログラム60および通信制御プログラム62が格納されている。表示制御プログラム60は、上述した各種ビューワ30〜34を実現するためのプログラムであって、図5に示すメインスレッドと、図6および図7に示す患者状況RT表示スレッドと、図14に示す患者状況PB表示スレッドと、図16に示す看護師状況RT表示スレッドと、図19に示す看護師状況PB表示スレッドと、図示しないセンサデータRT/PB表示スレッドとを含む。通信制御プログラム62は、無線LANモジュール10Lを制御して、PC10と赤外線センサ12および携帯端末40との間で無線LAN通信を行うためのプログラムである。
【0080】
患者状況RT表示スレッドおよび患者状況PB表示スレッドは患者状況ビューワ30に対応し、看護師状況RT表示スレッドおよび看護師状況PB表示スレッドは看護師状況ビューワ32に対応し、そしてセンサデータRT/PB表示スレッドはセンサデータビューワ34に対応する。これらの表示スレッドは、メインスレッドによって起動/終了される。
【0081】
データ領域56bには、現表示モード情報64,患者Aの処置予定データ66,患者Bの処置予定データ68,患者Aの処置履歴データ70,患者Bの処置履歴データ72,および看護師状況テーブル74などが記憶される。現表示モード情報64は、上記複数の表示スレッドにそれぞれ対応する複数の表示モードのうち、現時点で選択されている表示モードを示す情報である。患者Aの処置予定データ66は図9(A)に、患者Bの処置予定データ68は図9(B)に、患者Aの処置履歴データ70は図10(A)または図12(A)に、患者Bの処置履歴データ72は図10(B)または図12(B)に、そして看護師状況テーブル74は図8または図17に、それぞれ示されている。
【0082】
業務状況可視化システム100が起動されると、CPU50は、メインスレッドの処理を開始する。図5を参照して、最初のステップS1では初期処理を実行し、次のステップS3では現表示モード情報64(図4参照)に対応する表示スレッドを起動する。処理はその後、ステップS5〜S7のイベント待ちループに入る。
【0083】
なお、CPU50は、複数のスレッドを並列的に実行可能であり、以降、このメインスレッドと、上記複数の表示スレッドのうち起動された表示スレッドとを並列に実行する。各表示スレッドの処理については後述する。
【0084】
終了操作が行われると、ステップS5からステップS9に移り、現表示モードを記憶して現表示スレッドを終了する。そして、このメインスレッド自身を終了する。一方、モード指定操作が行われると、ステップS7からステップS11に移って、現表示スレッドを終了し、指定モードに対応する表示スレッドを起動する。そして、現表示モード情報64を更新した後、ステップS5〜S7の操作待ちループに戻る。
【0085】
患者状況RT表示スレッドが起動されると、図6および図7に示す処理が実行される。最初のステップS21では、コンテキスト管理サーバ26に対して初期設定を行う。具体的には、リアルタイムDB26r内の看護師状況テーブル74のいずれかのデータフィールドで対象患者IDに変更があったとき、当該データフィールド(つまり担当看護師の状況データ)を患者状況ビューワ30側に通知するように設定する。この結果、たとえば図8の看護師状況テーブル74のデータフィールド“3”で対象患者IDが“−”から“患者B”に変化すると、このデータフィールド“3”の内容(看護師X,点滴,09:37,…,点滴行います,9:35)が通知される。
【0086】
次のステップS22では、コンテキスト管理サーバ26から看護師状況テーブル74を取得してデータ領域56bに格納し、そして各患者IDの処置履歴データ、ここでは患者Aの処置履歴データ70および患者Bの処置履歴データ72をデータ領域56b内に作成する。そしてステップS23で、患者Aの処置履歴データ70および患者Bの処置履歴データ72に基づいて、図11,図13のような患者状況RT画面をLCDモニタ52に初期表示する。処理はその後、コンテキスト管理サーバ26からの通知の有無によって、ステップS27〜S40と、ステップS41〜S56とに2分岐する。
【0087】
まず、通知があった場合、ステップS27では、通知されたデータフィールドに基づいて、看護師状況テーブル74および当該対象患者IDの処置履歴データ(70または72)を更新する。これによって、リアルタイムDB26r側の変化が、看護師状況テーブル74および患者Aの処置履歴データ70または患者Bの処置履歴データ72に反映される。
【0088】
次のステップS29では、当該対象患者IDに関して処置予定データ(66または68)と処置履歴データ(70または72)とを現在時刻において照合し、照合結果に基づいて一致フラグを制御する。たとえば、対象患者IDが“患者B”の場合、患者Bの処置予定データ68と患者Bの処置履歴データ72とが照合される。患者Bの処置予定データ68が図9(B)に示されたものであり、患者Bの処置履歴データ72が図10(B)に示されたものであり、そして現時時刻が09:40である場合、どちらの処置内容も“点滴”なので、一致フラグにはTrueがセットされる。
【0089】
また、対象患者IDが“患者A”の場合には、患者Aの処置予定データ66と患者Aの処置履歴データ70とが照合される。患者Aの処置予定データ66が図9(A)に示されたものであり、患者Aの処置履歴データ70が図12(A)に示されたものであり、そして現時時刻が13:32である場合、処置内容が前者では“検査b”なのに後者では“検査c”なので、一致フラグにはFalseがセットされる。
【0090】
そしてステップS31で、一致フラグがTrueであるか否かを判別し、YESであればステップS32に進む一方、NOであればステップS39に進む。ステップS32では、上記の照合結果に基づいて、さらに時間差を計算する。ここでは、予定の開始時刻と履歴の開始時刻との差分を時間差とみなす。したがって、上述した患者Bに対する点滴の例では、時間差は“3分”と計算される。
【0091】
ステップS33では、時刻差が既定値(たとえば2分)未満であるか否かをさらに判別し、ここでもYESであれば、ステップS35で当該患者IDの状況ウィンドウ(W1またはW2)を処置履歴データ(70または72)に基づいて更新した後、ステップS25に戻る。
【0092】
ステップS33でNOであればステップS37に移って、処置は予定時刻からずれて実施中である旨および時刻差を示すメッセージ、たとえば図11の状況ウィンドウW2に示されたメッセージM2つまり「点滴は予定より3分早く実施中です」を、当該患者IDの状況ウィンドウ(W1またはW2)にハイライト表示する。同様のメッセージ(M2)は、次のステップS38で担当看護師(X)の携帯端末40宛に送信されてもよい。その後、ステップS25に戻る。
【0093】
一方、ステップS39では、当該患者IDの状況ウィンドウ(W1またはW2)に予定外処置が実施中である旨をハイライト表示する。たとえば、図13の状況ウィンドウW1に示されたメッセージM3つまり「注意!予定外の処置です」が、このハイライト表示に該当する。同様のメッセージ(M3)は、次のステップS40で担当看護師(X)の携帯端末40宛に送信されてもよい。その後、ステップS25に戻る。
【0094】
一方、通知がなかった場合、ステップS41では、全対象患者ID(ここでは患者Aおよび患者B)のうち未選択の対象患者IDがあるか否かを判別する。ここでYESであれば、ステップS43で未選択の対象患者IDから1つを選択し、当該対象患者IDについてステップS45〜S56の一連の処理の全部または一部を実行した後、ステップS41に戻って同様の処理を繰り返す。ステップS41の判別結果がNOとなると、ステップS25に戻る。
【0095】
ステップS45では、当該患者IDの状況ウィンドウ(W1またはW2)を当該患者IDの処置履歴データ(70または72)に基づいて更新する。ステップS47では、当該対象患者IDに関して処置予定データ(66または68)と処置履歴データ(70または72)とを現在時刻において照合して、処置漏れを検出する。たとえば、対象患者IDが“患者A”の場合、患者Aの処置予定データ66と患者Aの処置履歴データ70とが照合される。患者Aの処置予定データ66が図9(A)に示されたものであり、患者Aの処置履歴データ70が図10(A)に示されたものであり、そして現時時刻が09:40である場合、検査aの開始時刻が前者では“2009.01.27_09:30”なのに後者では“−”なので、“検査a”の処置漏れが検出される。
【0096】
ステップS49では、処置漏れか検出されたか否かを判別し、NOであればステップS41に戻る一方、YESであればステップS51に進む。ステップS51では、検出された処置漏れに関して遅延時間(予定された開始時刻と現在時刻との差分)を計算する。ステップS53では、計算結果が既定値(たとえば8分)を超えているか否かを判別し、NOであればステップS41に戻る一方、YESであればステップS55に進む。たとえば、上述した“検査b”の処置漏れであれば、ステップS51で遅延時間は10分と計算され、ステップS53ではYESと判別される。
【0097】
ステップS55では、検出された処置漏れを通知するメッセージ、たとえば図11に示したメッセージM1つまり「注意!検査aが未実施です」を、当該患者IDの状況ウィンドウ(W1またはW2)にハイライト表示する。同様のメッセージ(M1)は、次のステップS56で担当看護師(X)の携帯端末40宛に送信されてもよい。その後、ステップS41に戻る。
【0098】
患者状況PB表示スレッドが起動されると、図14に示す処理が実行される。最初のステップS71では、コンテキスト管理サーバ26から患者状況テーブル74を取得して、スタート時刻(8:00)からエンド時刻(18:00)までの期間に渡る各患者A,Bの処置履歴データ70,72をデータ領域56b内に作成する。次のステップS73では、スタート時刻におけるA,Bの処置履歴データ70,72に基づいて、図15のような患者状況PB画面をLCDモニタ52に初期表示する。処理はその後、ステップS75〜S79のイベント待ちループに入る。
【0099】
時刻指定終了操作が行われると、ステップS75からステップS77に移って、指定時刻における患者A,Bの処置履歴データ70,72に基づいて患者状況PB画面を更新し、その後ステップS75〜S79のイベント待ちループに戻る。患者状況PB画面の初期表示または前回更新から一定時間(たとえば5秒)が経過すると、ステップS79からS81に移って、現在時刻がエンド時刻を超えたか否かを判別する。ここでYESであればステップS83に進む一方、NOであればステップS85に進む。
【0100】
ステップS83では、エンド時刻における患者A,Bの処置履歴データ70,72に基づいて患者状況PB画面を更新し、その後ステップS75〜S79のイベント待ちループに戻る。ステップS85では、スタート時刻または前回更新時時刻から一定時間(たとえば5秒)後の時刻における経過後患者A,Bの処置履歴データ70,72に基づいて患者状況PB画面を更新し、その後ステップS75〜S79のイベント待ちループに戻る。
【0101】
看護師状況RT表示スレッドが起動されると、図16に示す処理が実行される。最初のステップS91では、コンテキスト管理サーバ26に対して初期設定を行う。この初期設定は、先述したステップS21のそれと同様である。次のステップS93では、コンテキスト管理サーバ26から図17のような看護師状況テーブル74を取得してデータ領域56bに格納し、図18のような看護師状況RT画面をLCDモニタ52に初期表示する。そして、ステップS95でコンテキスト管理サーバ26からの通知を待ち、通知を受けるとステップS97に進んで、当該看護師IDの状況アイコン(たとえば看護師Zの状況アイコンi1Z,i2Z,i3,i4)を更新する。更新後、ステップS95に戻る。
【0102】
看護師状況PB表示スレッドが起動されると、図19に示す処理が実行される。最初のステップS101では、コンテキスト管理サーバ26からスタート時刻における患者状況テーブル74を取得して、図示しない患者状況PB画面をLCDモニタ52に初期表示する。処理はその後、ステップS103〜S105のイベント待ちループに入る。
【0103】
時刻指定終了操作が行われると、ステップS103からステップS107に移って、コンテキスト管理サーバ26から指定時刻における患者状況テーブル74を取得して看護師状況PB画面を更新し、その後ステップS103〜S105のイベント待ちループに戻る。看護師状況PB画面の初期表示または前回更新から一定時間(たとえば5秒)が経過すると、ステップS105からS109に移って、現在時刻がエンド時刻を超えたか否かを判別する。ここでYESであればステップS111に進む一方、NOであればステップS113に進む。
【0104】
ステップS111では、コンテキスト管理サーバ26からエンド時刻における患者状況テーブル74を取得して看護師状況PB画面を更新し、その後ステップS103〜S105のイベント待ちループに戻る。ステップS113では、コンテキスト管理サーバ26からスタート時刻または前回更新時時刻から一定時間(たとえば5秒)後の時刻における患者状況テーブル74を取得して看護師状況PB画面を更新し、その後ステップS103〜S105のイベント待ちループに戻る。
【0105】
なお、図示は省略するが、センサデータRT表示スレッドでは、最初、センサデータマネージャ28から現在時刻におけるセンサデータを取得してセンサデータRT画面を初期表示し、以降、一定時間(たとえば5秒)毎に現在時刻におけるセンサデータを取得してセンサデータRT画面を更新する処理を繰り返す。
【0106】
また、図示は省略するが、センサデータPB表示スレッドでは、最初、センサデータマネージャ28からスタート時刻におけるセンサデータを取得してセンサデータRT画面を初期表示し、以降、スタート時刻または前回更新時時刻から一定時間(たとえば5秒)後の時刻におけるセンサデータを取得してセンサデータPB画面を更新する処理を繰り返す。
【0107】
以上から明らかなように、この実施例の業務状況可視化システム100はPC10を含む。PC10は、各看護師の状況を赤外線センサ12,動きセンサ14および近接センサ16からの情報に基づいて位置推定エンジン20,行動識別エンジン22および対象特定エンジン23で検知し、検知結果を時計12T〜16Tに基づく時刻情報(タイムスタンプ)と共に看護師状況テーブル74(図8等参照)の態様でコンテキスト管理サーバ26に蓄積する。そして蓄積された看護師状況テーブル74に基づいて、任意の時刻における各看護師の状況を示すアイコン(i1X〜i1Z,i2X〜i2Z,i3,i4)を看護師状況ビューワ32でLCDモニタ52に一覧表示する(図18参照)。また、蓄積された看護師状況情報に基づいて、各患者の処置履歴データ(70,72)を作成して、任意の時刻における各患者への処置履歴を示すウィンドウ(W1,W2)を患者状況ビューワ30でLCDモニタ52に一覧表示する(図11,図13,図15参照)。これによって、各看護師の状況や、各患者への処置履歴を一目で把握できるようになる。
【0108】
なお、この実施例では、被験者の両上腕,胸および腰に4つの加速度センサ14a〜14dを装着したが、加速度センサの個数や装着部位は適宜変更可能である。加速度センサに代えて、またはこれに加えて、たとえばジャイロセンサなど他の動きセンサを用いてもよい。
【0109】
以上では、看護業務への適用例を説明したが、この発明は、たとえば製造,物流など他の業務にも適用できる。
【符号の説明】
【0110】
10 …PC
12 …赤外線センサ
12a …赤外線送信機
12b …赤外線受信機
14 …動きセンサ
14a〜14d …加速度センサ
16 …近接センサ
16a,16b …Bluetoothモジュール
20 …位置推定エンジン
22 …行動識別エンジン
23 …対象特定エンジン
26 …コンテキスト管理サーバ
28 …センサデータマネージャ
30 …患者状況ビューワ
32 …看護師状況ビューワ
34 …センサデータビューワ
40 …携帯端末
50 …CPU
52 …LCDモニタ
54 …キー入力装置
56 …メインメモリ
10T〜18T …時計
10L,12L,40L …無線LANモジュール
14B〜18B …Bluetoothモジュール
42 …看護機材(血圧計)
44 …ベッド
100 …業務状況可視化システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
業務の状況を可視化する業務状況可視化システムであって、
前記業務を行う各作業者の状況をセンサからの情報に基づいて検知する検知手段、
前記検知手段の検知結果を含む作業者状況情報を時計に基づく時刻情報と共に蓄積する第1蓄積手段、および
前記第1蓄積手段に蓄積された作業者状況情報に基づいて任意の時刻における前記各作業者の状況を示す作業者状況画像をモニタに一覧表示する第1表示手段を備える、業務状況可視化システム。
【請求項2】
前記センサは赤外線センサおよび動きセンサを含み、
前記検知手段は、前記各作業者の位置を前記赤外線センサからの情報に基づいて推定する推定手段、および前記各作業者の行動を前記動きセンサからの情報に基づいて識別する識別手段を含み、
前記作業者状況情報は前記推定手段の推定結果である位置情報および前記識別手段の識別結果である行動情報を含み、そして
前記作業者状況画像は前記各作業者の位置および行動を示す、請求項1記載の業務状況可視化システム。
【請求項3】
前記センサは近接センサをさらに含み、
前記検知手段は前記各作業者の近接対象を近接センサからの情報に基づいて特定する特定手段をさらに含み、
前記作業者状況情報は前記特定手段の特定結果である近接対象情報をさらに含み、そして、
前記作業者状況画像は前記各作業者の近接対象をさらに示す、請求項2記載の業務状況可視化システム。
【請求項4】
前記各作業者の近接対象は前記業務用の各機材のうち当該作業者に近接している機材を含む、請求項3記載の業務状況可視化システム。
【請求項5】
前記各作業者の近接対象は前記業務を受ける各対象者のうち当該作業者に近接する対象者を含み、
前記第1蓄積手段に蓄積された作業者状況情報に基づいて前記各対象者への業務実施履歴を示す対象者履歴情報を作成してメモリに記憶し、前記対象者履歴情報に基づいて任意の時刻における前記各対象者への業務実施履歴を示す対象者業務履歴画像を前記モニタに一覧表示する、第2表示手段をさらに備える、請求項3または4記載の業務状況可視化システム。
【請求項6】
前記赤外線センサからの情報,前記動きセンサからの情報および前記近接センサからの情報の少なくとも1つを含むセンサ情報を前記時計に基づく時刻情報と共に蓄積する第2蓄積手段、および
前記第2蓄積手段に蓄積されたセンサ情報に基づいて任意の時刻におけるセンサの検知結果を示す画像を前記モニタに表示する第3表示手段をさらに備える、請求項5記載の業務状況可視化システム。
【請求項7】
前記モニタへの表示を入力装置の操作に基づいて前記第1ないし第3表示手段を含む複数の表示手段に対応する複数の画面の間で切り換える切り換え手段をさらに備える、請求項6記載の業務状況可視化システム。
【請求項8】
業務の状況を可視化する業務状況可視化システムであって、
前記業務を行う各作業者の位置を赤外線センサからの情報に基づいて推定する推定手段、
前記各作業者の行動を動きセンサからの情報に基づいて識別する識別手段、
前記各作業者の近接対象を近接センサからの情報に基づいて特定する特定手段、
前記推定手段の推定結果である位置情報,前記識別手段の識別結果である行動情報および前記特定手段の特定結果である近接情報を含む作業者状況情報を時計に基づく時刻情報と共に蓄積する蓄積手段、および
前記蓄積手段に蓄積された作業者状況情報に基づいて前記業務を受ける各対象者への業務実施履歴を示す対象者履歴情報を作成して第1メモリに記憶し、前記対象者履歴情報に基づいて任意の時刻における前記各対象者への業務実施履歴を示す対象者業務履歴画像をモニタに一覧表示する、表示手段を備える、業務状況可視化システム。
【請求項9】
前記表示手段は、前記各対象者への業務実施予定を示す対象者予定情報を第2メモリに記憶しており、前記対象者履歴情報と前記対象者予定情報とを現在時刻において比較して、業務実施履歴と業務実施予定との間に差異がある対象者の業務履歴画像に当該差異を通知するメッセージをハイライト表示する、請求項8記載の業務状況可視化システム。
【請求項10】
前記メッセージは予定業務の未実施を通知する、請求項9記載の業務状況可視化システム。
【請求項11】
前記メッセージは実施時刻と予定時刻との間の時間差を通知する、請求項9記載の業務状況可視化システム。
【請求項12】
前記メッセージは予定外業務の実施を通知する、請求項9記載の業務状況可視化システム。
【請求項13】
前記表示手段は前記差異がある対象者への業務を担当する作業者の携帯端末にも無線通信モジュールを介して前記メッセージを表示する、請求項9記載の業務状況可視化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−224879(P2010−224879A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71587(P2009−71587)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人情報通信研究機構「民間基盤技術研究促進制度/日常行動・状況理解に基づく知識共有システムの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【Fターム(参考)】