説明

楽器のリガチャー

【課題】本発明によれば、強く締め付けても、リードのエッジ部分にリガチャーが触れることがなく、所望の音を出すことのできるリガチャーを提供できる。
【解決手段】リード3が動かないように、リード3とマウスピース2とを締め付けるためのリガチャー100であって、リード3とマウスピース2とを巻回するための薄板部10と、マウスピース2を挟んでリード3に対向する位置で薄板部10の両端の締め付けを行なう締め付け部13と、リード3に対して突出し、その先端でリード3に接触する突出部14と、突出部14の近傍における薄板部10の曲げ強度を補強するための補強材16と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は楽器のマウスピースに取り付けられるリガチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
サックスやクラリネットなどのシングルリード楽器においては、リガチャーを用いて、リードを演奏者の好みに応じた位置でマウスピースに固定することが一般的に行なわれている。リードの材質や形状や位置などによって音色が変わるため、演奏者が容易に操作できるよう、通常リガチャーは、特許文献1に開示されているように、マウスピースに巻きつけたベルトの両端をねじによって締め付ける構成となっている。また、通常は、ねじをゆるめて形成した環状リガチャーの中央部分の空間にリードとマウスピースとを挿入して、ねじを締め付けることにより、リードをマウスピースに固定する。また、特許文献1に記載のリガチャーには、レールが取り付けられ、リガチャーとリードとの接触面積を小さくする工夫が加えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−84756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術では、リガチャーを強く締め付けて使い続けた場合に、リードのエッジ部分にリガチャーが触れてしまい、リードがうまく振動せずに音が変わってしまう場合があった。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るリガチャーは、
リードが動かないように、リードとマウスピースとを締め付けるためのリガチャーであって、
リードとマウスピースとを巻回するための薄板部と、
マウスピースを挟んでリードに対向する位置で前記薄板部の両端の締め付けを行なう締め付け部と、
リードに対して突出し、その先端でリードに接触する突出部と、
前記突出部の近傍における前記薄板部の曲げ強度を補強するための補強材と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
ここで、補強材は、薄板部のリード側の面に設けられた穴の周囲に付加されたことを特徴とする。
【0008】
また、前記薄板部及び前記補強材は、共に金属製であり、
補強材は、薄板の上に金属を接着、溶接、または蒸着することによって形成されることを特徴とする。
【0009】
前記補強材は、ステンレス、チタン、スチールの何れか1つまたはその合金によって形成される。
【0010】
前記補強材を取り付ける前記薄板部の面を略平面に形成したことを特徴とする。
【0011】
前記補強材は、クリップ形状であって、前記薄板部を挟み込むことにより前記薄板部に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、強く締め付けても、リードのエッジ部分にリガチャーが触れることがなく、所望の音を出すことのできるリガチャーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るリガチャーの構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るリガチャーの構成を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るリガチャーの構成を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るリガチャーの構成を示す図である。
【図5】本発明の前提となるリガチャーの構成を示す図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係るリガチャーの構成を示す図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るリガチャーの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
(第1実施形態)
図1〜図4を用いて、本発明の第1実施形態としてのリガチャーの構成を説明する。図1は、マウスピース2及びリード3(点線で図示)に取り付けられるリガチャー100を示す斜視図である。図2は、リガチャー100の内側面の構造を示す斜視図である。図3は、リガチャー100の上面の構造を示す斜視図である。
【0016】
本実施形態に係るリガチャー100は、リードとマウスピースとを巻回するため円筒状に撓められた金属製の薄板部10を含む。リガチャー100を形づくる金属としては、金、洋白、銅、銀、プラチナなどを採用できる。更に、銀や銅や真鍮(brass)にイエローゴールドやピンクゴールドのめっきを施したものであってもよい。
【0017】
薄板部10の一端には、ねじ13をねじ込むためのねじ穴11が一対設けられ、薄板部10の他端にはそれらのねじ穴11に対向して、ねじ13の外径よりも大きな内径を備えた円筒部(いわゆるばか穴)12が一対設けられている。ねじ13を円筒部12を通してねじ穴11に螺合することにより、薄板部10の両端は接続され、そのねじ13の回し具合によって、マウスピース2及びリード3の締め付け具合を変えることができる。つまり、ねじ穴11と円筒部12とねじ13とで、マウスピース2を挟んでリード3に対向する位置で薄板部10の両端の締め付けを行なう締め付け部を構成する。
【0018】
リガチャー100をマウスピース2に装着する際には、リガチャー100の両端をねじ13によって緩く接続し、マウスピース2にリード3を重ねた状態で、それら全体をリガチャー100に挿入し、その後、ねじ13を回して締め付ける。本実施形態に係るリガチャー100は、いわゆる逆締めであり、ねじ13が、リード3とは逆側、つまり演奏者からみて上側に設けられている。
【0019】
リガチャー100の内側表面には、突出部14が設けられ、突出部14の先端がリード3に当接して、リード3を押圧することにより、リード3がマウスピース2に押し付けられて固定される。
【0020】
図2に示すように、本実施形態に係る突出部14は、レール状に設けられており、リード3に沿って接触することとなる。このように突出部14を設けるのは、リガチャー100とリード3との接触面積を少なくすることによりリードの反応が早く音のレスポンスが良くなり、奏でる音のとおりをよくするためである。すなわち、透明感のある音を出すことが可能となる。また、突出部14としての2本のレールは、歌口側(図2の下側)に向けて広がるように傾きを持って設けられている。これは、リード3の形状に合わせたものである。なお、ここでは突出部14がレール状であるとしているが、本発明はこれに限定されるものはなく、他の形状(例えば半球、円錐台、角錐台、円柱、角柱など)であってもよい。
【0021】
また、リガチャー100の薄板部10は、側部にスリット状の穴17を備え、リード側の面に円形の穴15を備えている。これらはデザイン的な意味に加えて、リガチャー100の軽量化を図る目的で形成されたものである。
【0022】
図3に示すように、リガチャーのリード側の面に開けられた穴15の周囲には、金属製の補強材16が設けられている。補強材16は、薄板部10の上に洋白などの金属製の円環を接着、溶接、または蒸着することによって形成される。補強材16は、洋白以外にも、ステンレス、チタン、スチールの何れか1つまたはその合金などのような強度のある金属から形成される。補強材16により、この部分の薄板部10の曲げ強度が大きくなる。
【0023】
図4は、マウスピース2の歌口側からみたリガチャー100の正面図である。補強材16により、薄板部10の曲げ強度が大きくなり、ねじ13を強く締めても、リード3のエッジ部分と薄板部10との間の空隙41が保持される。つまり、リード3とリガチャー100との接点は、突出部14に限定されるため、所望の音を維持することができる。
【0024】
図5は、補強材16が設けられなかった場合のリガチャー1000の正面図である。この場合、51に示すように、リガチャー1000が突出部14近傍から折れ曲がり、リード3のエッジ部がリガチャー1000と接触してしまう。これでは、所望の音を奏でることができなくなってしまう。本実施形態はこのような事態を回避することができる。
【0025】
以上のように、本実施形態によれば、強く締め付けても、リードのエッジ部分にリガチャーが触れることがなく、所望の音を出すことのできるリガチャーを提供できる。なお、本実施形態では、補強材16の形状は、穴15の形状に合わせて円環状であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、角穴を設けてその周囲に、方形に付加してもよい。或いは、穴15を有しない薄板部10のリード側の面に対して、縞状、又は、格子状の補強材16を付加しても良い。
【0026】
(第2実施形態)
図6を用いて、本発明の第2実施形態としてのリガチャーの構成を説明する。本実施形態に係るリガチャー200は、突出部24が設けられるリード3側の面(演奏者から見て下側の面)が略平面に形成されている点で、第1実施形態と異なる。このようにリード側の面を平面状にすることで薄板20に、角部21が形成される。このため、ねじ23の締め付けによる、上方向の引っ張りに対して、変形強度が大きくなる。つまり、ねじ23を強く締めても、リード3のエッジ部分と薄板部10との間の空隙41が保持される。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、強く締め付けても、リードのエッジ部分にリガチャーが触れることがなく、所望の音を出すことのできるリガチャーを提供できる。
【0028】
(第3実施形態)
図7を用いて、本発明の第3実施形態としてのリガチャーの構成を説明する。本実施形態に係るリガチャー300は、別体のクリップ形状の補強材31を設けた点で、第1実施形態と異なる。このように補強材31をクリップ形状にすることで、薄板30に対する補強材31の取付が格段に容易になる。
【0029】
補強材31は、クリップ部311と平板部312とを備え、それらによって薄板30を狭持することで、薄板30に固定される。クリップ部311は突出部34を避けて、矢印でしめした3箇所に挿入すべく、設けられている。補強材31の厚みは薄いことが望ましく、平板部312を除いた厚みは、突出部34と薄板30とを加えた厚みよりも薄くなければならない。逆にクリップ部311に厚みを持たせるためには、突出部34の突出量を大きくすればよい。このような補強材31を薄板30に取り付けることにより、薄板30の曲げ強度が大きくなる。このため、ねじ33の締め付けによる、上方向の引っ張りに対して、変形強度が大きくなる。つまり、ねじ33を強く締めても、リード3のエッジ部分と薄板30との間の空隙を保持できる。
【0030】
なお、本実施形態ではクリップ形状の補強材31を本体側から嵌め込む形態について示したが、歌口側から嵌め込む構成でも良いし、さらには、両側から2つの補強材31を嵌め込む構成でも良い。
【0031】
以上のように、本実施形態によれば、強く締め付けても、リードのエッジ部分にリガチャーが触れることがなく、所望の音を出すことのできるリガチャーを提供できる。
【符号の説明】
【0032】
100、200、300 リガチャー
2 マウスピース
3 リード
11 ねじ穴
12 円筒部
13、23、33 ねじ
14、24、34 突出部
16、26、31 補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リードが動かないように、リードとマウスピースとを締め付けるためのリガチャーであって、
リードとマウスピースとを巻回するための薄板部と、
マウスピースを挟んでリードに対向する位置で前記薄板部の両端の締め付けを行なう締め付け部と、
リードに対して突出し、その先端でリードに接触する突出部と、
前記突出部の近傍における前記薄板部の曲げ強度を補強するための補強材と、
を備えたことを特徴とするリガチャー。
【請求項2】
前記補強材は、前記薄板部のリード側の面に設けられた穴の周囲に付加されたことを特徴とする請求項1に記載のリガチャー。
【請求項3】
前記薄板部及び前記補強材は、共に金属製であり、
前記補強材は、前記薄板の上に金属を接着、溶接、または蒸着することによって形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のリガチャー。
【請求項4】
前記補強材は、洋白、ステンレス、チタン、スチールの何れか1つまたはその合金によって形成されることを特徴とする請求項3に記載のリガチャー。
【請求項5】
前記補強材を取り付ける前記薄板部の面を略平面に形成したことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のリガチャー。
【請求項6】
前記補強材は、クリップ形状であって、前記薄板部を挟み込むことにより前記薄板部に固定されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のリガチャー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−48164(P2012−48164A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−192889(P2010−192889)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【特許番号】特許第4695225号(P4695225)
【特許公報発行日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(597041448)株式会社石森管楽器 (7)