説明

楽器収納ケース

【課題】 楽器を収納した楽器収納ケースの運送又は携帯時においても該楽器を安定して支持する。
【解決手段】 上部開口を有する箱体2と、該上部開口を覆う蓋体3と、楽器Vの本体部41側面形状に略合わせた形状の側壁を有する収納部が形成され、該箱体2内に収容される緩衝材7とを備えた楽器収納ケース1であって、緩衝材7の収納部側壁の一部である移動部14の楽器当接面に対する裏面に当接する押板30を、操作片26の操作により楽器Vの本体部41側面に接近する方向に移動させることにより、該移動部14により楽器Vの本体部41側面を押圧する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器収納ケースに係わり、更に詳しくは、ヴァイオリン、ビオラ、チェロ又はギター等の楽器の収納に適した楽器収納ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の楽器収納ケースとして、例えばヴァイオリン、ビオラ、チェロ等の収納ケースにおいて、該収納ケース内に該楽器の形状に合わせた収納部(開口部)が形成された緩衝材を設けると共に該楽器のネック部分をストラップ、ベルト等により固定するもの(以下において、「タイプ1」という。)、前記楽器の塗装面と前記緩衝材との擦れ合いを防止できるようにするため、該楽器を周囲に余裕を持って収納可能な蓋付の梱包箱本体の底部上に複数の支持体を配設し、該支持体により該楽器を浮かせて支持するもの(以下において、「タイプ2」という。例えば、特許文献1参照。)等がある。
【0003】
また、例えばギター等の収納ケースにおいて、形状、大きさ、長さ等が異なる弦楽器に対して共通に使用できるようにするため、内装部材の収納凹部の幅を楽器に対して余裕を持たせると共に、該楽器を支持する仕切部材を長手方向に位置調整可能としてなるもの(以下において、「タイプ3」という。例えば、特許文献2参照。)等がある。
【0004】
【特許文献1】特開2003−76362号公報(図1−3)
【特許文献2】特開2004−61802号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイプ1の構成では、楽器の収納又は取出し時に該楽器側面の塗装面を損傷しないようにするために、該楽器側面と前記緩衝材開口部の側壁との間に間隙を設ける必要がある。したがって、このような間隙の存在により、該楽器を収納した楽器収納ケースの運送又は携帯時等において、振動等により加速度がかかると、該楽器が該緩衝材開口部内でがたつき、該楽器及び緩衝材との相対移動により擦れが生じ、該楽器側面の塗装面を損傷する場合がある。また、このような楽器のがたつきにより、該楽器の調整に狂いが生じる場合がある。
【0006】
また、タイプ2及び3の構成では、楽器を部分的に支持体(仕切部材)により支持するものであるため、該楽器を収納した楽器収納ケースの運送又は携帯時において該楽器を安定して支持することができず、振動等により加速度がかかると、該楽器が該支持体(仕切部材)上でがたつき、該楽器及び支持体(仕切部材)との相対移動により擦れが生じ、該楽器の被支持部の塗装面を損傷する場合がある。また、このような楽器のがたつきにより、該楽器の調整に狂いが生じる場合がある。
【0007】
さらに、タイプ1ないし3の構成では、前記問題点の存在により、該楽器収納ケースの運送を、大きな衝撃及び振動等が繰り返しかかる一般運送業へ委託することができないものである。
【0008】
本発明は、前記のような問題点を解決するためになされたものであり、楽器の収納又は取出し時における該楽器の塗装面の損傷を抑制することができると共に、該楽器を収納した楽器収納ケースの運送又は携帯時においても該楽器を安定して支持することができるため、該楽器のがたつきを抑制して該楽器の塗装面の損傷及び調整の狂いを抑制することができる楽器収納ケースを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る楽器収納ケースは、上部開口を有する箱体と、該上部開口を覆う蓋体と、楽器の本体部側面形状に略合わせた形状の側壁を有する収納部が形成され、該箱体内に収容される緩衝材とを備えた楽器収納ケースであって、前記箱体内に収納された楽器の本体部側面に接近及び離反する方向に移動可能な、前記緩衝材の収納部側壁の一部である移動部を、該楽器の本体部側面に接近する方向に移動させる緩衝材移動装置を備えたものである。
【0010】
ここで、前記箱体が、対向二長側面及び対向二短側面並びに底面からなる平面視略長方形状のものであり、前記楽器の長手方向が該箱体の長手方向となるように、該楽器を該箱体内に収納すると共に、該対向二長側面の少なくとも一方側から該楽器の本体部側面に接近する方向に前記移動部を移動させる単又は複数の緩衝材移動装置を備え、該緩衝材移動装置が、取付手段により前記箱体又は前記箱体内の底板に取り付けられた基体と、該基体により前記楽器の本体部側面に接近及び離反する方向に移動可能に支持された押圧片と、該押圧片の移動を操作する操作片と、該操作片の操作力を該押圧片に伝達する操作力伝達手段と、該押圧片と一体又は別体に設けられ、該楽器の本体部側面の長手方向に延びると共に前記移動部の楽器当接面に対する裏面に当接する押板とからなると好ましい。
【0011】
また、前記押板が、前記楽器の本体部側面形状に略合わせた形状に形成されてなると好ましい。
【0012】
さらに、前記取付手段と前記箱体又は前記箱体内の底板との取付位置を、前記楽器の本体部側面に接近又は離反する方向に調整可能としてなると好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る楽器収納ケースによれば、上部開口を有する箱体と、該上部開口を覆う蓋体と、楽器の本体部側面形状に略合わせた形状の側壁を有する収納部が形成され、該箱体内に収容される緩衝材とを備えた楽器収納ケースであって、前記箱体内に収納された楽器の本体部側面に接近及び離反する方向に移動可能な、前記緩衝材の収納部側壁の一部である移動部を、該楽器の本体部側面に接近する方向に移動させる緩衝材移動装置を備えたので、簡素な構成により、該楽器の収納又は取出し時における楽器塗装面の損傷を抑制することができると共に、該楽器を収納した楽器収納ケースの運送又は携帯時においても該楽器を安定して支持することができるため、該楽器のがたつきを抑制して該楽器の塗装面の損傷及び調整の狂いを抑制することができる。よって、該楽器収納ケースの運送を、大きな衝撃及び振動等が繰り返しかかる一般運送業へ委託することもできる。
【0014】
また、前記箱体が、対向二長側面及び対向二短側面並びに底面からなる平面視略長方形状のものであり、前記楽器の長手方向が該箱体の長手方向となるように、該楽器を該箱体内に収納すると共に、該対向二長側面の少なくとも一方側から該楽器の本体部側面に接近する方向に前記移動部を移動させる単又は複数の緩衝材移動装置を備え、該緩衝材移動装置が、取付手段により前記箱体又は前記箱体内の底板に取り付けられた基体と、該基体により前記楽器の本体部側面に接近及び離反する方向に移動可能に支持された押圧片と、該押圧片の移動を操作する操作片と、該操作片の操作力を該押圧片に伝達する操作力伝達手段と、該押圧片と一体又は別体に設けられ、該楽器の本体部側面の長手方向に延びると共に前記移動部の楽器当接面に対する裏面に当接する押板とからなると、該楽器本体部側面の略全体が包み込まれるように押圧されて、該押圧力が該楽器本体部側面に分散して掛かるため、該楽器を、ソフトに、かつ、安定して支持することができる。
【0015】
さらに、前記押板が、前記楽器の本体部側面形状に略合わせた形状に形成されてなると、該楽器をさらに安定して支持することができる。
【0016】
さらにまた、前記取付手段と前記箱体又は前記箱体内の底板との取付位置を、前記楽器の本体部側面に接近又は離反する方向に調整可能としてなると、該楽器の形状又は大きさが異なるものに対して楽器収納ケースを共用する場合に対しても容易に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。なお、本明細書においては、収納ケースを構成する、対向する二長側面及び二短側面並びに底面からなる箱体の上部開口から、楽器の長手方向が該二長側面に略平行な略水平方向となるように、該楽器を該箱体内に収納した状態で、対向する二長側面側から該楽器に接近する方向を前とし、前方に向かって左右を左右とする。また、前記のとおり箱体の上部開口からに楽器を収納して蓋体を閉じた状態における上下方向を上下とする。
【0018】
図1〜図3は、本発明の実施の形態に係る楽器収納ケースを示す説明図であり、図1は該楽器収納ケースの斜視図、図2は箱体及び該箱体に収容される緩衝材の構成を示す斜視図であり、図3は緩衝材移動装置等の要部拡大斜視図である。また、図4及び図5は緩衝材移動装置の動作説明図であり、図4は斜視図、図5は横断底面図(下から見た図)である。
【0019】
図1に示すように、楽器収納ケース1は、上部開口A(図2参照。)を有する箱体2、図示しないヒンジまわりに箱体2に対して開閉可能とされ、箱体2の上部開口Aを覆う蓋体3、箱体2及び蓋体3内に収容される緩衝材4,5、及び、緩衝材4の収納部側壁の一部である移動部14を、箱体2内に収納された楽器の例として示すヴァイオリンVの本体部41側面に接近する方向に移動させる緩衝材移動装置6等からなるものである。
【0020】
図2に示すように、箱体2は、対向二長側面21a,21b及び対向二短側面22a,22b並びに底面23からなる平面視略長方形状のものであり、該箱体2は、ポリアセタール、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート若しくはABS等の合成樹脂若しくはFRP等の繊維強化複合材料のシート成形若しくは射出成形、アルミニウム合金若しくはマグネシウム合金等の軽合金のプレス成形若しくはダイカスト、又は、合板等の木材の組付等により製作される。なお、箱体2を合板等の木材により製作する場合には、布、ビニール又はレザー等により外面の主要部が覆われる。
【0021】
また、蓋体3も箱体2と同様の構成からなるものである。なお、図1及び図2等における箱体2及び蓋体3は、平面状の、対向二長側面、対向二短側面及び底面により形成されるが、該対向二長側面、対向二短側面及び底面は曲面であってもよい。
【0022】
図1及び図2に示すように、箱体2及び蓋体3内に収容される緩衝材4及び5は、その外形が該箱体2及び蓋体3の内面形状に合うように、例えばポリエチレン又はポリウレタン等からなる合成樹脂フォームにより成形される。また、箱体2内に収容される緩衝材4には、該箱体2内にヴァイオリンVが収納可能なように、該ヴァイオリンVの本体部41側面形状に略合わせた形状の側壁を有する収納部9が設けられている。
【0023】
緩衝材4は、本体部緩衝材7及び頭部緩衝材8からなり、本体部緩衝材7は上層7a及び下層7bの二層構成となっている。そして、本体部緩衝材7の上層7aはヴァイオリンVの本体部41を収納可能なように該本体部41の側面形状(側板44の側面形状)に略合わせた形状の側壁を有する収納部9が形成されている。該収納部9の側壁部分は、楽器に当接する部分であるため、楽器を包み込むような柔軟性を有すると共に、変形後の復元性が高い材料を用いるのが好ましい。なお、本体部緩衝材7の下層7bは、単なる発泡スチレン等の板材としてもよい。
【0024】
また、本体部緩衝材7の下層7bの上面には、収納部9の外周部にテーパを形成した凹部が設けられているため(図2参照。)、ヴァイオリンVの本体部41の下面を安定して保持することができる。また、ヴァイオリンVの収納又は取出し時に、ヴァイオリンVの本体部41側面(側板44及びパーフリング等)の塗装面を損傷しないようにするために、ヴァイオリンVの本体部41側面と本体部緩衝材7の収納部9の側壁との間には間隙が設けられている。
【0025】
頭部緩衝材8には、ヴァイオリンVの渦巻き、糸巻き等の頭部42と干渉しないように収納部10が形成される。なお、該頭部緩衝材8は、単なる発泡スチレン等のブロックを切削加工して形成してもよい。また、該収納部9,10間には、切欠き11,12が形成されており、該切欠き11,12内にヴァイオリンVのネック部43が収納される。したがって、該切欠き11,12もヴァイオリンVの収納部となっている。なお、頭部緩衝材8に形成された切欠き13は、図示しない湿度計等を収納するためのものである。
【0026】
本体部緩衝材7の上層7aには、緩衝材移動装置6の後述する押板30を挿入するための押板挿入スペース15が形成されると共に、該押板挿入スペース15の前側には、ヴァイオリンVの本体部41側面形状に略合わせた形状に成形され、該ヴァイオリンVの本体部41側面に押圧される、本体部緩衝材7の収納部9側壁の一部である移動部14が設けられている。また、本体部緩衝材7の上層7a及び下層7bの箱体2の長側面21a側には、緩衝材移動装置6の後述する取付手段28を上下方向に通すための切欠き16及び17が形成されている。
【0027】
箱体2内には、例えば木製の小物入れ18が収容されているため、小物の収納も容易となっている。なお、該小物入れ18には図示しない蓋が取り付けられる。また、蓋体3内に収容される緩衝材5には、ヴァイオリンVの弓を保持する弓ホルダー19,20・・・が取り付けられている。箱体2及び蓋体3内に収容される緩衝材4及び5等の内部材は、いずれも、少なくとも外部から見える部分は、例えばベルベット等の織物地により覆われるため、収納される楽器に傷が付きにくくなっている。
【0028】
蓋体3内に収容される緩衝材5は、該緩衝材5の上面が蓋体3の下面に接着され、該蓋体3に固定される。また、箱体2内に収容される緩衝材4は、本体部緩衝材7の下層7b及び頭部緩衝材8の下面が箱体2の底面23の上面又は箱体2の底面23上に載置され固定された図示しない底板の上面に接着され、該箱体2又は底板に固定される。そして、緩衝材4の本体部緩衝材7の上層7aの下面の前記移動部14以外の部分は、下層7bの上面に接着され固定される。したがって、該移動部14は、箱体2内に収納されたヴァイオリンVの本体部41側面に接近及び離反する方向に移動可能となっている。
【0029】
次に、緩衝材移動装置6の構成及び動作について説明する。緩衝材移動装置6は、図1及び図3に示すように、箱体2の対向二長側面21a,21bの一方の長側面21a側に配置されている。図4及び図5において、緩衝材移動装置6は、その基体24が取付手段28に固定され、該取付手段28が箱体2の底面23(図2参照。)の上面又は箱体2の底面23上に載置され固定された底板の上面に固定される。ここで、図4における符号29・・・は、通孔又はねじ孔である。すなわち、取付手段28は、通孔29・・・の上方から取付ねじを通して、該取付ねじを該底面23又は底板に形成したねじ孔に螺合させるか、あるいは、該底面23又は底板に形成した通孔に下方から取付ねじを通して、該取付ねじをねじ孔29・・・に螺合することにより、前記底面23又は底板に固定される。
【0030】
図5に示すように、基体24には孔24aが形成されており、該孔24aの内面により操作片26の外面が支持され、該操作面26は該孔24aの中心まわりに回動可能となっている。また、基体24には前後方向のガイド板31,31が形成されていると共に、押圧片25には、その上面に水平板32が一体又は別体に設けられて基体24内に収容されており、該水平板32の上面には前後方向に複数の突片33・・・が形成されている。
【0031】
水平板32に形成された突片33・・・の左右方向の移動は、基体24のガイド板31,31の左右方向内面により規制され、水平板32の上下方向の移動は基体24の内部空間の上面及び下面により規制される。また、水平板32の左右方向の幅は、基体24の下面に形成された図示しない孔の左右方向の幅よりも大きいため、押圧片25は基体24により支持され、基体24から垂下している。したがって、水平板32と一体に移動する押圧片25は、前後方向(ヴァイオリンVの本体部41側面に接近及び離反する方向)に移動可能に支持されている。
【0032】
操作片26には、その下面に前記孔24aの中心からの距離が段階的に変化するように、スパイラル状突片34が形成されており、該スパイラル状突片34が、前記水平板32に形成された突片33,33の間に係合している。そして、該スパイラル状突片34及び突片33・・・が、操作片26の操作力を押圧片25に伝達する操作力伝達手段27を構成している。
【0033】
すなわち、図4及び図5において、操作片26を図中矢印B方向に回転すると、前記操作力伝達手段27により、水平板32と一体に移動する押圧片25は図中矢印C方向(図3におけるヴァイオリンVの本体部41側面に接近する方向)に移動する。また、逆に、操作片26を図中矢印Bと反対方向に回転すると、前記操作力伝達手段27により、押圧片25は図中矢印Cと反対方向(図3におけるヴァイオリンVの本体部41側面から離反する方向)に移動する。
【0034】
なお、操作力伝達手段27の構成はこのような構成に限定されるものではない。例えば、操作片26に固定した垂直軸まわりに回動可能な偏心カムの外周に前後方向にスライド可能に支持されたカムフォロワを当接させ、該カムフォロワに固定した押圧片25を前後方向に進退させる確動カムの構成、操作片26に固定した垂直軸まわりに回動可能な偏心板の外周に当接する枠体を前後方向にスライド可能に支持し、該枠体に固定した押圧片25を前後方向に進退させる構成、又は、操作片26に固定した垂直軸まわりに回動可能なピニオンに前後方向にスライド可能に支持されたラックを係合させ、該ラックに固定した押圧片25を前後方向に進退させると共に、該ピニオンに逆転防止用の爪を設けてなる構成等を適宜採用することができる。
【0035】
このように操作片26を操作することにより前後方向(図3におけるヴァイオリンVの本体部41側面に接近又は離反する方向)に進退する押圧片25には、その前面に押板30が取り付けられている。該押板30は、ヴァイオリンV本体部41側面の長手方向(図3参照。)に延びると共に、ヴァイオリンV本体部41の側面形状に略合わせた形状に形成されている。そして、該押板30は、図3に示すように、本体部緩衝材7の押板挿入スペース15内に挿入されて、緩衝材4の収納部9側壁の一部である移動部14の後面14b(該移動部14の楽器当接面14a(表面)に対する裏面。図2参照。)に当接する。なお、前記押圧片25も押板30と共に本体部緩衝材7の押板挿入スペース15内に上方から挿入されている。
【0036】
したがって、ヴァイオリンVを箱体2の前記収納部9,10等に収納した状態で、操作片26を前記矢印B方向(図4及び図5参照。)に回転させれば、押圧片25及び押板30が前記矢印C方向(図4及び図5参照。)に移動し、該押板30により移動部14の後面14bが押されるため、ヴァイオリンVの本体部41側面は該移動部14により押圧される。なお、該押板30の前面と該移動部14の後面14bとの接触面は接着されている。
【0037】
このようにして、ヴァイオリンV本体部41側面の長手方向に延びると共に、ヴァイオリンV本体部41側面形状に略合わせた形状に形成された押板30の移動により、ヴァイオリンV本体部41側面形状に略合わせた形状に成形された移動部14が、ヴァイオリンVの本体部41側面(側板44及びコーナー45,45等)に押圧されるため、合成樹脂フォーム製の移動部14の前面(楽器当接面)14aにより該ヴァイオリンVの本体部41側面の略全体が包み込まれるように押圧されて、該押圧力が該ヴァイオリンVの本体部41側面に分散して掛かるため、該ヴァイオリンVに局所的に大きな応力がかかることはなく、該ヴァイオリンVは、ソフトに、かつ、安定して支持される。
【0038】
したがって、楽器を楽器収納ケース1の箱体2内に収納した状態で、前記操作片26を回転させて前記移動部14により該楽器を押圧して支持すれば、該楽器を収納した楽器収納ケース1の運送又は携帯時等において、振動等により加速度がかかっても、該楽器が該楽器収納ケース1内でがたつかないため、該楽器側面の塗装面の損傷及び調整の狂いを抑制することができる。よって、該楽器収納ケース1の運送を、大きな衝撃及び振動等が繰り返しかかる一般運送業へ委託することもできるのである。
【0039】
なお、ヴァイオリンVのコーナー45,45はブロックにより補強されているため、該コーナー45,45は強度及び剛性が大きい箇所である。したがって、該コーナー45,45を押圧してヴァイオリンVの支持を行うことは、ヴァイオリンVの強度及び剛性が比較的小さい箇所を押圧して不用意にヴァイオリンVの調整に狂いを生じさせないようにするためにも効果的な支持方法である。また、押圧片25のヴァイオリンVの本体部41側面に接近する方向への移動は、基体24の下面に形成された図示しない孔の前部に押圧片25の上部が当接することにより所定位置までで規制されるため、押板30及び移動部14の該方向への移動も所定位置までで規制される。したがって、ヴァイオリンVに掛かる押圧力も所定の上限値で規制される。
【0040】
以上の説明においては、ヴァイオリンVを楽器の例として、ヴァイオリンVを収納する楽器収納ケース1を示したが、ヴァイオリンのように形状が決まっている楽器以外に対しても、また、弦楽器以外の楽器に対しても、本発明の楽器収納ケースを適用することは容易である。例えば、外形が大きな楽器に対しては緩衝材移動装置6を複数配設し、該複数の楽器移動装置により、緩衝材の収納部側壁の一部である移動部を、楽器に略均等に押圧力が掛かるように、楽器の本体部側面に接近する方向に移動させればよい。また、楽器の形状又は大きさが異なるものに対して楽器収納ケース1を共用する場合には、楽器収納ケース1の箱体2及び蓋体3を大きな楽器に合わせて製作しておき、楽器の形状に合わせて収納部を形成した緩衝材4を箱体2内に収容すればよい。
【0041】
そして、このように楽器の形状又は大きさが異なるものに対して楽器収納ケースを共用する場合には、緩衝材移動装置6の取付位置を調整可能とするのが好ましい。例えば図4において、緩衝材移動装置6の基体24が固定される取付手段28の、箱体2の底面23(図2参照。)の上面又は箱体2の底面23上に載置され固定された底板の上面への固定位置を、前記通孔又はねじ孔29・・・を用いて、楽器の本体部41側面に接近又は離反する方向に変更することにより該取付位置を容易に調整可能とすることができる。
【0042】
以上の説明においては、楽器収納ケース1として、図1のような形態の箱体2及び蓋体3を組み合わせる場合を示したが、箱体2及び蓋体3は、運搬等に用いられるダンボール等の梱包箱も含むものである。箱体2及び蓋体3が該梱包箱である場合には、該梱包箱の収納部が箱体2であり、該収納部と一体に設けられ、折り曲げて用いられる蓋が蓋体3である。そして、緩衝材移動装置6は、該梱包箱内に収容された底板に固定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施の形態に係る楽器収納ケースを示す斜視図である。
【図2】箱体及び該箱体に収容される緩衝材の構成を示す斜視図である。
【図3】緩衝材移動装置等の要部拡大斜視図である。
【図4】緩衝材移動装置の構成及び動作説明用斜視図である。
【図5】同じく横断底面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 楽器収納ケース
2 箱体
3 蓋体
4,5 緩衝材
6 緩衝材移動装置
7 本体部緩衝材
9 収納部
14 移動部
14a 楽器当接面
14b 裏面
15 押板挿入スペース
21a,21b 長側面
22a,22b 短側面
23 底面
24 基体
25 押圧片
26 操作片
27 操作力伝達手段
28 取付手段
29 通孔(ねじ孔)
30 押板
41 本体部
44 側板
45 コーナー
A 上部開口
V ヴァイオリン(楽器)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口を有する箱体と、該上部開口を覆う蓋体と、楽器の本体部側面形状に略合わせた形状の側壁を有する収納部が形成され、該箱体内に収容される緩衝材とを備えた楽器収納ケースであって、
前記箱体内に収納された楽器の本体部側面に接近及び離反する方向に移動可能な、前記緩衝材の収納部側壁の一部である移動部を、該楽器の本体部側面に接近する方向に移動させる緩衝材移動装置を備えたことを特徴とする楽器収納ケース。
【請求項2】
前記箱体が、対向二長側面及び対向二短側面並びに底面からなる平面視略長方形状のものであり、前記楽器の長手方向が該箱体の長手方向となるように、該楽器を該箱体内に収納すると共に、
該対向二長側面の少なくとも一方側から該楽器の本体部側面に接近する方向に前記移動部を移動させる単又は複数の緩衝材移動装置を備え、
該緩衝材移動装置が、取付手段により前記箱体又は前記箱体内の底板に取り付けられた基体と、該基体により前記楽器の本体部側面に接近及び離反する方向に移動可能に支持された押圧片と、該押圧片の移動を操作する操作片と、該操作片の操作力を該押圧片に伝達する操作力伝達手段と、該押圧片と一体又は別体に設けられ、該楽器の本体部側面の長手方向に延びると共に前記移動部の楽器当接面に対する裏面に当接する押板とからなる請求項1記載の楽器収納ケース。
【請求項3】
前記押板が、前記楽器の本体部側面形状に略合わせた形状に形成されてなる請求項2記載の楽器収納ケース。
【請求項4】
前記取付手段と前記箱体又は前記箱体内の底板との取付位置を、前記楽器の本体部側面に接近又は離反する方向に調整可能としてなる請求項2記載の楽器収納ケース。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−220945(P2006−220945A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34670(P2005−34670)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000211695)中西金属工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】