楽器等の収納ケース
【課題】
従来の観音開きの楽器ケースは、楽器を取り出した後、別途に楽器スタンドを用意する必要があり、備品が増え、取扱いに不便がある。更に、施錠忘れにおいて、不意の楽器の落下により破損するという事態に至る。
【解決手段】
楽器ケースを上下に分かれる縦型とし、下部ケースは楽器を抱持して収納し、該下部ケースの側面に飛出し脚を設け、下部ケースを楽器スタンドとして使用する。
従来の観音開きの楽器ケースは、楽器を取り出した後、別途に楽器スタンドを用意する必要があり、備品が増え、取扱いに不便がある。更に、施錠忘れにおいて、不意の楽器の落下により破損するという事態に至る。
【解決手段】
楽器ケースを上下に分かれる縦型とし、下部ケースは楽器を抱持して収納し、該下部ケースの側面に飛出し脚を設け、下部ケースを楽器スタンドとして使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、楽器等の収納ケースに関し、更に詳しくは、自立して楽器用のスタンドとして使用できる収納ケースに関する。本発明において楽器のみに限定されるものではなく、その他の用途への適用もなされる。
【背景技術】
【0002】
従来の一般に使用されている楽器ケースは、蝶番を介して観音開きの形式を採るものが多い。
しかし、この従来型楽器ケースにあっては、楽器を取り出した後は他に格別の用をなさず、容量の減少(例えば折り畳み)も行えず、収納場所を取るものである。また、楽器ケースより取り出された楽器を支持する場合は、別途に楽器スタンドを用意する必要があり、それだけ用意する備品が増え、取扱いに不便である。更に、当該スタンドは取扱い上の関係から小型のものが求められ、大型楽器(例えばサキソホーン)に対しても前面2点でのみ支持する構成になり、その結果、倒れ易く、時として楽器を損傷する事態にも至るものである。
また、従来の観音開き型ケースでは、施錠忘れにおいて、不意に楽器が落下し、破損するという事態に至ることもしばしばである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、上述した問題を解決する新規な構成の楽器ケースを提供することを目的とするものである。
本発明はまた、楽器に限らず楽器に類似する物品一般の収納ケースについても適用することも他の目的とする。
本発明はこのため、楽器ケースを上下の縦型とし、その下方部を楽器スタンドとして使用することを基本的技術思想としてこの目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の収納ケースは具体的には以下の構成を採る。
すなわち、請求項1のとおり、縦長状の筒状をなし、該筒状の内部空間に縦長状をなす楽器等の内容物を収納するケースであって、
前記ケースの本体は上部ケース体と下部ケース体とに分かれ、前記上部ケース体は前記下部ケース体より引抜きをもって取り外し可能とされ、前記下部ケース体は前記内容物を抱持するとともに、該下部ケース体の下端の外側面には外方へ引出し可能な飛出し脚が取り付けられ、
前記下部ケース体は、前記内容物を抱持したまま、前記上部ケースが取り外され、その底面が着底した状態で、前記飛出し脚の外方への引出しによる着底により安定的に自立する、
ことを特徴とする。
本発明はまた、更に特定すれば、請求項2のとおり、
縦長状の筒状をなし、該筒状の内部空間に縦長状をなす楽器等の内容物を収納するケースであって、
当該ケースの底面は所定の着底面積を保持する着底面を有し、かつ、当該ケースは着底状態で特定の一方向へ倒れる指向性を有し、
前記ケースの本体は上部ケース体と下部ケース体とに分かれ、前記上部ケース体は前記下部ケース体より引抜きをもって取り外し可能とされ、前記下部ケース体は前記内容物を抱持するとともに、該下部ケース体の下端の外側面には前記指向性に対抗する外方向へ引出し可能な飛出し脚が取り付けられ、
前記下部ケース体は、前記内容物を抱持したまま、前記上部ケースが取り外され、その底面が着底した状態で、前記飛出し脚の外方向への引出しによる着底により完全状態で安定的に自立する、
ことを特徴とする。
ここに、「縦長状をなす楽器等の内容物」は、以下の実施形態で具体的に示されるが、それに限定されるものではなく、他の同等のものを含む。また、「抱持」は内容物の正立状態を保つ固定把持状態を含み、「所定の着底面積」は、床面との当接状態に限られず、点接触であってもよく、点相互の閉合面積により着底面を保持することも含む。
上記構成において、
1)飛出し脚は下部ケース内の凹部内に収容され、該凹部内の軸部を中心に回動して外方へ引き出されること、
2)下部ケース体の底面の着底面積は不変であること、
3)飛出し脚は下部ケースの前面に1か所配されること、
4)飛出し脚は下部ケースの側面に倒れの指向方向に対抗して2か所配されること、
5)下部ケース体の底部には緩衝部が配されてなること、
は適宜実施される選択的事項である。
【0005】
(作用)
本収納ケースの移動は、飛出し脚を収納状態とし、内容物を収納した状態をもって移動される。
本収納ケースは底面を着底させて仮置き状態とする。仮置き状態において、内容物は正立状態を保持し、特定の一方向に倒れる特性すなわち指向性を有し、かつこれによっても本収納ケースは容易には倒れない。すなわち、重心の垂線は着底面積の内方に存する。また、この仮置き状態から飛出し脚が前記した指向方向に引き出され、その着底をもって本ケースは安定的に支持される。すなわち、不意の外力が指向方向に作用したときにも、外力の一定範囲内でその作用力線は着底面積と飛出し脚との合成面積の内方に存するものである。
下部ケース体をスタンドとして使用するとき、本収納ケースを縦長の状態を保って着底させ、飛出し脚を前記した指向方向へ引き出し、上部ケース体を下部ケース体から引き抜く。
内容物は下部ケース体に抱持されて、正立状態を保って安定的に支持される。すなわち、この場合にも、不意の外力が指向方向に作用したときにも、外力の一定範囲内でその作用力線は着底面積と飛出し脚との合成面積の内方に存するものである。
内容物の除去された下部ケース体はもとより転倒性は一切ない。
【発明の効果】
【0006】
本発明の収納ケースによれば、下部ケースを上部ケースを取り外した後の内容物のスタンドとして使用され、別途スタンドが不要であり、備品の削減となる。この状態で、内容物は安定的に支持され、不意の外力から防護され、安全である。また、施錠忘れによる下部ケースの落下についても内容物は安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(第1実施形態)
本発明の収納ケースの実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図8は本収納ケースの一実施形態を示し、楽器ケースへの適用例を示す。
図において、図1及び図2は本楽器ケースYの全体を示し、図3〜図8はその部分構成を示す。すなわち、図1は本楽器ケースYの全体的構成を示す立体斜視図、図2はその側面図である。
図において、Mは本楽器ケースYに収納される内容物、すなわち楽器であり、本実施形態ではサキソホーンを示す。これらの図において、内容物すなわち楽器Mにつき、その前部を楽器ケースYの前部と定義する。
【0008】
図1・図2に示すように、本楽器ケースYは、実質的に鉛直方向に長い筒状をなし、上部ケース体1と下部ケース体2とに継口部3を介して上下に分かれ、該上部ケース1は内容物Mの上部を収納し、該下部ケース2は内容物Mの下部を抱持収納し、該上部ケース体1は下部ケース体2より引抜きをもって取り外される。2aは下部ケース体2の底面であり、前後の長さ及び幅は十分な着底面積を確保する。また、該継口部3には周方向に沿って該上部ケース1と該下部ケース2とを一体保持する複数のロック4が配され、該下部ケース体2の底側面部には出入自在の飛出し脚5が取り付けられてなる。更には、ストラップ7、把手8を含む。
【0009】
以下、各構成要素につき詳述する。
上部ケース体1(図1、図2参照)
上部ケース体1は、殻体10による躯体構造をなし、内部空間S1をもって、内容物Mの上部を収納し、下部ケース体2と同径もしくは該下部ケース体2よりも細身で、継口部3を介して下部ケース体2に被さる。
本実施形態では、下部ケース体2の大径に連なって下半部が大径となり、漸次上方に径を縮径し、上半部は細身を採る。10aは殻体10の頭部であって、閉塞空間を形成する。
該上部ケース体1の躯体は剛性を保持するものであるが、その素材、組織構成については特に限定されるものではなく、また重さについても軽量であることは好ましいが、重量物であってもよい。
該上部ケース体1の内部空間S1は、内容物Mの上部を収納するものであるが、上方からの被嵌に障害となることなく挿入されることを要する。
【0010】
下部ケース体2(図1、図2、図3参照)
下部ケース体2は、殻体12による躯体構造をなし、内部空間S2をもって内容物Mの下半部を収納し、大径をもって形成され、底面2aは平坦状とされる。底面2aは前記のとおり十分な着底面積を有し、従って本楽器ケースYの横方向の倒れは前方向への倒れよりも小さくされ、不意の外力に対抗する。
該下部ケース体2の躯体は、剛性を上部ケース体1と同等もしくはそれ以上に大きくされ、素材、組織構成並びに重さについても上記した上部ケース1に準じる。
また、該下部ケース体2の躯体は後記するように飛出し脚5を収納する凹部が形成され、かつ、該凹部に飛出し脚5用の軸が固定されるものであり、強固な構造とする。
該下部ケース体2の内部空間S2は、上方から挿入される内容物Mを受入れ、かつ該内容物Mの下面及び側面を抱持する形状とされる。このため、該下部ケース体2の内面部には内容物Mを抱持する内部ケース13が配される。13aは該内部ケース13の上面に形成され、内容物Mの下部を抱き込む抱持面である。本実施形態の内部ケース13はやや硬目の柔軟材が選ばれ、十分な厚みを有し、本楽器ケースYの不意の落下において緩衝作用をなす。
図3は内容物Mを収納した下部ケース体2のみの立設状態を示す。内容物すなわちサキソホーンMには更にネック及びマウスピースMaが装着されている。この状態でサキソホーンMは正立状態を採り、かつ飛出し脚5が収容され、着底状態でやや安定な支持状態、すなわち、特定の一軸方向への倒れ傾向すなわち指向性を示すが、底面2aの着底のみで自立状態を保つ。換言すれば、この状態での全体の重心の垂線は着底面積の内方に存する。これにより、不意の外力が加わらない限り転倒しない重心位置状態を採る。
【0011】
継口部3(図4参照)
継口部3は、下部ケース体2が上部ケース体1の挿入嵌合を受け入れる構造、例えば入子状を採る。
継口部3の周方向の形状は、本実施形態ではサキソホーンの形状に対応する波状となっているが、この形状に限定されず、他の楽器に応じて適宜変更される。
図4はこの継口部3の拡大構成を示す。図において、15aは上部ケース体1の上部凹部、15bは下部ケース体2の下部凹部である。上部凹部15aと下部凹部15bとは互いに嵌合し、外側面において面一となる。
【0012】
ロック4(図5参照)
ロック4は、継口部3に沿って2又は3以上の複数か所に配される。
該ロック4は、上部ケース体1と下部ケース体2とを施錠作用をもって離脱を阻止し、開錠作用により離脱可能とされる。該ロック4は公知のものが使用されるが、上部ケース体1を取り外した状態での下部ケース体2において、装飾性のあるものが好ましい。
該ロック4の通常の態様においては、雄部と雌部とからなり、雄部が上部ケース体1に固定され、雌部が下部ケース体2に固定され、雄部の雌部への嵌合とともに施錠がなされる。
図5はその摸式構成を示し、上部ケース体1に固設された雄金具装置17から突設される雄金具17aを、下部ケース体2に固設された雌金具18に係合させ、雄金具押し具17bを倒し込んで施錠する。
【0013】
飛出し脚5(図6〜図8参照)
飛出し脚5は、下部ケース体2の下端前部の側面部に形成された凹部20内に収納され、該凹部20より引出し自在に取り付けられる。
該飛出し脚5は、一端をケースに枢着され該ケースより飛出し可能な脚本体22、一端をケースに枢着され他端を該脚本体22に枢着される支えリンク23を主体とし、これらの脚本体22、支えリンク23は下部ケース2内の軸24,25に相対移動を許容して枢着される。なお、凹部20は、脚本体22を収容する凹部22aと支えリンク23を収容する凹部22bとからなる。軸24は凹部22aに配され、軸25は凹部22bに配される。
詳しくは、脚本体22は2つの縦脚22aが上方より下方に幅を広げるとともに、該2つの縦脚22aは上部及び中間部で横棒22b,22cをもって連結されてなる形状、いわゆるA字状をなす。脚本体22の上部棒22bは軸方向に長い軸孔が形成され、該軸孔内に下部ケース2の本体に軸支される軸24が挿通され、脚本体22の下端面は引き出されたとき床面に当接する平面をなす。軸孔は軸24に対し上下にずれ移動を許容する。
脚本体22の中間棒22cは支えリンク23と連結される。
支えリンク23は2つの第1及び第2リンク棒23a,23bがピン23cを介してリンク節を形成する。第1リンク棒23aの他端は、軸方向に長い軸孔が形成され、該軸孔をもって下部ケース2の本体に軸支される軸25を挿通し、軸孔は軸25に対し上下にずれ移動を許容する。第2リンク棒23bは他端を脚本体22の中間棒22cにピンをもって連結される。
【0014】
しかして、該飛出し脚5は該下部ケース体2の底面2aより突出することなく、下部ケース体2の凹部20に収納される。また、その引出し状態では下部ケース体2の底面2aと同一水準を保持して安定状態となる。
飛出し脚5の収納状態において、脚本体22は凹部22aに、支えリンク23は収縮状態をもって凹部22bに折り込まれ、おのおの収容される。このとき、脚本体22及び支えリンク23はそれらの軸孔の長孔作用により上方へずれ変位をなす。これにより、脚本体22は下部ケース2の底面より突出することはない。
飛出し脚5を引き出すとき、脚本体22を一旦下方へ引き下げ、(このとき、軸孔は長孔をもってそれぞれ脚本体22及び支えリンク23の引き下げ移動を許容する。図8のイ方向)、次いで、脚本体22を前方へ引き出す(このとき、軸孔は長孔をもってそれぞれ脚本体22及び支えリンク23の軸24,25を中心とする回転移動を許容する。図8のロ方向)。支えリンク23は伸長する。定置状態では支えリンク23が直線状を採り、飛出し脚5を固定状態となす。
【0015】
その他の付属物
(ストラップ7)
ストラップ7は、本楽器ケースYの前面に上部ケース1と下部ケース2とに両端を固定される。該ストラップ7は取外し可能とされ、上部ケース体1と下部ケース体2とに装着された留め具(雌)に、両端に止め具(雄)を係合させる。
(取っ手8)
取っ手8は、本楽器ケースYの前面に上部ケース体1の大径部の上面に固定される。該取っ手8を把持して持ち上げるとき、本楽器ケースYは安定した重心作用をなし、回転することはない。
【0016】
使用の態様
本楽器ケースYに所定の楽器Mを収納する。すなわち、開放された下部ケース体2に楽器Mを上方より収容し、その内部ケース13の抱持面13aで楽器Mの下方部を抱持する。上部ケース体1を被せて、継口部3を嵌合させ、ロック4を施錠する。このとき、飛出し脚5は収納状態となっている。
持ち運びにおいて、ストラップ7を肩に下げて移動する。このとき、楽器ケースY内のサキソホーンMは正立状態を保つ。
収納状態のまま本楽器ケースYを床面に定置する。この状態において、本楽器ケースYは容易には転倒しない。すなわち、重心の垂線は着底面積の内方に存する。また、飛出し脚5を引き出して着底させると安定的に支持される。すなわち、不意の外力が指向方向に作用したときにも、外力の一定範囲内でその作用力線は着底面積と飛出し脚との合成面積の内方に存するものである。
スタンド態様の使用につき、飛出し脚5を引き出して着底させ、次いでロック4を解除し、上部ケース体1を下部ケース体2から引き抜く。下部ケース体2は楽器Mを抱持し、安定的に支持される。すなわち、この場合にも、不意の外力が指向方向に作用したときにも、外力の一定範囲内でその作用力線は着底面積と飛出し脚との合成面積の内方に存するものである。
【0017】
(効果)
本実施形態の収納ケースYによれば、下部ケース体2を内容物Mのスタンドとして使用され、スタンドが不要であり、備品の削減となる。この状態で、内容物Mは不意の外力から防護され、安全である。また、施錠忘れによる下部ケース体2の落下についても内容物Mは安全である。
【0018】
(第2実施形態)
図9〜図11は本収納ケースの他の実施形態(第2実施形態)の楽器ケースを示す。
本楽器ケースY1は、ギター用ケースへの適用例を示し、先の実施形態と同等の部材については同一の符号が附されている。ギターはそれ自体で自立性がなく、極めて不安定である。
本ギター用楽器ケースY1においても、先に実施形態に準じ、上部ケース体1と下部ケース体2とは継口部3を介して上下に分かれ、それらの内部空間にギターGを収納し、継口部3周りに適宜物(本実施形態では3か所)ロック4が配されてなる。下部ケース体2において、内部ケース体13の抱持面13aをもってギターGの下部を抱持する。2aは下部ケース体2の底面である。
図により明らかなとおり、本楽器ケースY1は背面への倒れ指向性を有する。
【0019】
本実施形態における特徴は、本楽器ケースY1の背面において、下部ケース体2から上部ケース体1に継口部3を介して支柱部2bが立設状に形成されてなる。該支柱部2bの縁部は継口部3となることから、上方へ至るにつれ幅狭に形成されるが、等幅であってもよい。
【0020】
支柱部2bに本実施形態に特有の飛出し脚5Aが配される。該飛出し脚5Aも本発明の趣旨に沿い、本楽器ケースY1の倒れ指向側に配されるものである。
当該飛出し脚5Aは、1本の縦脚形式の脚本体22Aと、支えリンク23Aとからなる。脚本体22A、支えリンク23Aは凹部20に収納される。
脚本体22Aは、軸24をもって下部ケース体に枢着されるとともに下方に中空部30を有する上方脚22dと、該上部脚22dの中空部30に挿通される下方脚22eとからなる。
下方脚22eは上部棒(カン)31と該上部棒31の下端にT字状に固設される接地棒32とからなり、上部棒31は上部脚22dの中空部30に嵌挿され、適宜の留め具(ねじ又はストッパー)をもって抜出しを阻止させる。
支えリンク23Aは先の実施形態のものと実質的に変わらず、一端を下部ケース体2に軸25をもって枢着され、他端を脚本体22Aの上部脚22dにピン接合される。
【0021】
脚本体22Aの引出しにおいて、軸24を中心に揺動回転し、支えリンク23Aにより回転が阻止され、次いで、上方脚22dより下方脚22eを引き出し、その接地棒32を床面に当てる。
脚本体22Aを収納するためには、支えリンク23Aのツッパリ力を解除し、また下方脚22eを上方脚22dに引き入れ、しかる後、軸24,25を中心に揺動して凹部20に収納する。
【0022】
この脚本体22Aの引出しにおいて、支えリンク23Aがストッパーとなるが、該脚本体22Aを廃し、上方脚22dの頭部と凹部20との係合をもってストッパー作用をさせることも可能である。
【0023】
支柱部2bの上端部の内側には、前部に向け凹部34を有する枕部材35が固設される。
該凹部34にギターGの首部を預ける。
ギターGはこの下部ケース体2において、内部ケース13と枕部材35とによって抱持され、正立状態を保つ。
【0024】
(第2実施形態の作用・効果)
本楽器ケースY1に所定の楽器ギターGを収納する。すなわち、開放された下部ケース体2に楽器Gを上方より収容し、その内部ケース13の抱持面13aで楽器Gの下方部を抱持する。上部ケース体1を被せて、継口部3を嵌合させ、ロック4を施錠する。このとき、飛出し脚5Aは収納状態となっている。
収納状態のまま本楽器ケースY1を床面に定置する。この状態において、本楽器ケースY1は容易には転倒しない。すなわち、重心の垂線は底面2aの着底面積の内方に存する。また、飛出し脚5Aを引き出して着底させると安定的に支持される。すなわち、不意の外力が指向方向に作用したときにも、外力の一定範囲内でその作用力線は着底面積と飛出し脚5Aとの合成面積の内方に存するものである。
スタンドの使用において、飛出し脚5Aを引き出し、本楽器ケースY1を着底させ、上部ケース体1を上方へ引き抜く。
内容物としてのギターGは細身状であり、それ自体で自立性はないが、その下部で下部ケース体2に抱持されるとともに、首部で下部ケース体2の支持部2bの枕部材35で支持され、該ギターGは立設状態を保ったまま安定して支持されることになる。すなわち、この場合にも、不意の外力が指向方向に作用したときにも、外力の一定範囲内でその作用力線は着底面積と飛出し脚との合成面積の内方に存するものである。
【0025】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術思想の範囲内で種々設計変更が可能である。すなわち、以下の態様は本発明の技術的範囲に属する。
1)叙上の実施形態では長孔並び入れ子機構による飛出し脚5、5Aを引出し(ロ方向)を伴うものであるが、底面2aの着底面積が不変であれば、これらの機構を省略することができる。
支えリンク23も他のストッパー機構が採用することができれば省略することができる。
2)叙上の実施形態では楽器についての収納ケースであったが、スタンドを要する他の同等のもの、例えばスポーツ用品にも適用されうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の楽器ケースの一実施形態(サキソホーン用楽器ケース)の立体図。
【図2】本楽器ケースYの側面図。
【図3】本楽器ケースMの下部ケース体と内容物との収納状態を示す図。
【図4】継口部の構成を示す図。
【図5】ロックの模式構成図。
【図6】飛出し脚の前面図。
【図7】図6の7−7線拡大断面図。
【図8】飛出し脚の引出し状態を示す図。
【図9】本発明の他の実施形態(ギター用楽器ケース)の立体図。
【図10】その背面の構成を示す図。
【図11】図10の11−11線断面図。
【符号の説明】
【0027】
Y,Y1…楽器ケース、M, G…楽器(内容物)、1…上部ケース体、2…下部ケース体、2b…支柱部、3…継口部、4…ロック、5,5A…飛出し脚、10, 12…殻体、13…内部ケース、13a…抱持面、20…凹部、22, 22A…脚本体、23,23A…支えリンク、24,25…軸
【技術分野】
【0001】
この発明は、楽器等の収納ケースに関し、更に詳しくは、自立して楽器用のスタンドとして使用できる収納ケースに関する。本発明において楽器のみに限定されるものではなく、その他の用途への適用もなされる。
【背景技術】
【0002】
従来の一般に使用されている楽器ケースは、蝶番を介して観音開きの形式を採るものが多い。
しかし、この従来型楽器ケースにあっては、楽器を取り出した後は他に格別の用をなさず、容量の減少(例えば折り畳み)も行えず、収納場所を取るものである。また、楽器ケースより取り出された楽器を支持する場合は、別途に楽器スタンドを用意する必要があり、それだけ用意する備品が増え、取扱いに不便である。更に、当該スタンドは取扱い上の関係から小型のものが求められ、大型楽器(例えばサキソホーン)に対しても前面2点でのみ支持する構成になり、その結果、倒れ易く、時として楽器を損傷する事態にも至るものである。
また、従来の観音開き型ケースでは、施錠忘れにおいて、不意に楽器が落下し、破損するという事態に至ることもしばしばである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであって、上述した問題を解決する新規な構成の楽器ケースを提供することを目的とするものである。
本発明はまた、楽器に限らず楽器に類似する物品一般の収納ケースについても適用することも他の目的とする。
本発明はこのため、楽器ケースを上下の縦型とし、その下方部を楽器スタンドとして使用することを基本的技術思想としてこの目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の収納ケースは具体的には以下の構成を採る。
すなわち、請求項1のとおり、縦長状の筒状をなし、該筒状の内部空間に縦長状をなす楽器等の内容物を収納するケースであって、
前記ケースの本体は上部ケース体と下部ケース体とに分かれ、前記上部ケース体は前記下部ケース体より引抜きをもって取り外し可能とされ、前記下部ケース体は前記内容物を抱持するとともに、該下部ケース体の下端の外側面には外方へ引出し可能な飛出し脚が取り付けられ、
前記下部ケース体は、前記内容物を抱持したまま、前記上部ケースが取り外され、その底面が着底した状態で、前記飛出し脚の外方への引出しによる着底により安定的に自立する、
ことを特徴とする。
本発明はまた、更に特定すれば、請求項2のとおり、
縦長状の筒状をなし、該筒状の内部空間に縦長状をなす楽器等の内容物を収納するケースであって、
当該ケースの底面は所定の着底面積を保持する着底面を有し、かつ、当該ケースは着底状態で特定の一方向へ倒れる指向性を有し、
前記ケースの本体は上部ケース体と下部ケース体とに分かれ、前記上部ケース体は前記下部ケース体より引抜きをもって取り外し可能とされ、前記下部ケース体は前記内容物を抱持するとともに、該下部ケース体の下端の外側面には前記指向性に対抗する外方向へ引出し可能な飛出し脚が取り付けられ、
前記下部ケース体は、前記内容物を抱持したまま、前記上部ケースが取り外され、その底面が着底した状態で、前記飛出し脚の外方向への引出しによる着底により完全状態で安定的に自立する、
ことを特徴とする。
ここに、「縦長状をなす楽器等の内容物」は、以下の実施形態で具体的に示されるが、それに限定されるものではなく、他の同等のものを含む。また、「抱持」は内容物の正立状態を保つ固定把持状態を含み、「所定の着底面積」は、床面との当接状態に限られず、点接触であってもよく、点相互の閉合面積により着底面を保持することも含む。
上記構成において、
1)飛出し脚は下部ケース内の凹部内に収容され、該凹部内の軸部を中心に回動して外方へ引き出されること、
2)下部ケース体の底面の着底面積は不変であること、
3)飛出し脚は下部ケースの前面に1か所配されること、
4)飛出し脚は下部ケースの側面に倒れの指向方向に対抗して2か所配されること、
5)下部ケース体の底部には緩衝部が配されてなること、
は適宜実施される選択的事項である。
【0005】
(作用)
本収納ケースの移動は、飛出し脚を収納状態とし、内容物を収納した状態をもって移動される。
本収納ケースは底面を着底させて仮置き状態とする。仮置き状態において、内容物は正立状態を保持し、特定の一方向に倒れる特性すなわち指向性を有し、かつこれによっても本収納ケースは容易には倒れない。すなわち、重心の垂線は着底面積の内方に存する。また、この仮置き状態から飛出し脚が前記した指向方向に引き出され、その着底をもって本ケースは安定的に支持される。すなわち、不意の外力が指向方向に作用したときにも、外力の一定範囲内でその作用力線は着底面積と飛出し脚との合成面積の内方に存するものである。
下部ケース体をスタンドとして使用するとき、本収納ケースを縦長の状態を保って着底させ、飛出し脚を前記した指向方向へ引き出し、上部ケース体を下部ケース体から引き抜く。
内容物は下部ケース体に抱持されて、正立状態を保って安定的に支持される。すなわち、この場合にも、不意の外力が指向方向に作用したときにも、外力の一定範囲内でその作用力線は着底面積と飛出し脚との合成面積の内方に存するものである。
内容物の除去された下部ケース体はもとより転倒性は一切ない。
【発明の効果】
【0006】
本発明の収納ケースによれば、下部ケースを上部ケースを取り外した後の内容物のスタンドとして使用され、別途スタンドが不要であり、備品の削減となる。この状態で、内容物は安定的に支持され、不意の外力から防護され、安全である。また、施錠忘れによる下部ケースの落下についても内容物は安全である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(第1実施形態)
本発明の収納ケースの実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図8は本収納ケースの一実施形態を示し、楽器ケースへの適用例を示す。
図において、図1及び図2は本楽器ケースYの全体を示し、図3〜図8はその部分構成を示す。すなわち、図1は本楽器ケースYの全体的構成を示す立体斜視図、図2はその側面図である。
図において、Mは本楽器ケースYに収納される内容物、すなわち楽器であり、本実施形態ではサキソホーンを示す。これらの図において、内容物すなわち楽器Mにつき、その前部を楽器ケースYの前部と定義する。
【0008】
図1・図2に示すように、本楽器ケースYは、実質的に鉛直方向に長い筒状をなし、上部ケース体1と下部ケース体2とに継口部3を介して上下に分かれ、該上部ケース1は内容物Mの上部を収納し、該下部ケース2は内容物Mの下部を抱持収納し、該上部ケース体1は下部ケース体2より引抜きをもって取り外される。2aは下部ケース体2の底面であり、前後の長さ及び幅は十分な着底面積を確保する。また、該継口部3には周方向に沿って該上部ケース1と該下部ケース2とを一体保持する複数のロック4が配され、該下部ケース体2の底側面部には出入自在の飛出し脚5が取り付けられてなる。更には、ストラップ7、把手8を含む。
【0009】
以下、各構成要素につき詳述する。
上部ケース体1(図1、図2参照)
上部ケース体1は、殻体10による躯体構造をなし、内部空間S1をもって、内容物Mの上部を収納し、下部ケース体2と同径もしくは該下部ケース体2よりも細身で、継口部3を介して下部ケース体2に被さる。
本実施形態では、下部ケース体2の大径に連なって下半部が大径となり、漸次上方に径を縮径し、上半部は細身を採る。10aは殻体10の頭部であって、閉塞空間を形成する。
該上部ケース体1の躯体は剛性を保持するものであるが、その素材、組織構成については特に限定されるものではなく、また重さについても軽量であることは好ましいが、重量物であってもよい。
該上部ケース体1の内部空間S1は、内容物Mの上部を収納するものであるが、上方からの被嵌に障害となることなく挿入されることを要する。
【0010】
下部ケース体2(図1、図2、図3参照)
下部ケース体2は、殻体12による躯体構造をなし、内部空間S2をもって内容物Mの下半部を収納し、大径をもって形成され、底面2aは平坦状とされる。底面2aは前記のとおり十分な着底面積を有し、従って本楽器ケースYの横方向の倒れは前方向への倒れよりも小さくされ、不意の外力に対抗する。
該下部ケース体2の躯体は、剛性を上部ケース体1と同等もしくはそれ以上に大きくされ、素材、組織構成並びに重さについても上記した上部ケース1に準じる。
また、該下部ケース体2の躯体は後記するように飛出し脚5を収納する凹部が形成され、かつ、該凹部に飛出し脚5用の軸が固定されるものであり、強固な構造とする。
該下部ケース体2の内部空間S2は、上方から挿入される内容物Mを受入れ、かつ該内容物Mの下面及び側面を抱持する形状とされる。このため、該下部ケース体2の内面部には内容物Mを抱持する内部ケース13が配される。13aは該内部ケース13の上面に形成され、内容物Mの下部を抱き込む抱持面である。本実施形態の内部ケース13はやや硬目の柔軟材が選ばれ、十分な厚みを有し、本楽器ケースYの不意の落下において緩衝作用をなす。
図3は内容物Mを収納した下部ケース体2のみの立設状態を示す。内容物すなわちサキソホーンMには更にネック及びマウスピースMaが装着されている。この状態でサキソホーンMは正立状態を採り、かつ飛出し脚5が収容され、着底状態でやや安定な支持状態、すなわち、特定の一軸方向への倒れ傾向すなわち指向性を示すが、底面2aの着底のみで自立状態を保つ。換言すれば、この状態での全体の重心の垂線は着底面積の内方に存する。これにより、不意の外力が加わらない限り転倒しない重心位置状態を採る。
【0011】
継口部3(図4参照)
継口部3は、下部ケース体2が上部ケース体1の挿入嵌合を受け入れる構造、例えば入子状を採る。
継口部3の周方向の形状は、本実施形態ではサキソホーンの形状に対応する波状となっているが、この形状に限定されず、他の楽器に応じて適宜変更される。
図4はこの継口部3の拡大構成を示す。図において、15aは上部ケース体1の上部凹部、15bは下部ケース体2の下部凹部である。上部凹部15aと下部凹部15bとは互いに嵌合し、外側面において面一となる。
【0012】
ロック4(図5参照)
ロック4は、継口部3に沿って2又は3以上の複数か所に配される。
該ロック4は、上部ケース体1と下部ケース体2とを施錠作用をもって離脱を阻止し、開錠作用により離脱可能とされる。該ロック4は公知のものが使用されるが、上部ケース体1を取り外した状態での下部ケース体2において、装飾性のあるものが好ましい。
該ロック4の通常の態様においては、雄部と雌部とからなり、雄部が上部ケース体1に固定され、雌部が下部ケース体2に固定され、雄部の雌部への嵌合とともに施錠がなされる。
図5はその摸式構成を示し、上部ケース体1に固設された雄金具装置17から突設される雄金具17aを、下部ケース体2に固設された雌金具18に係合させ、雄金具押し具17bを倒し込んで施錠する。
【0013】
飛出し脚5(図6〜図8参照)
飛出し脚5は、下部ケース体2の下端前部の側面部に形成された凹部20内に収納され、該凹部20より引出し自在に取り付けられる。
該飛出し脚5は、一端をケースに枢着され該ケースより飛出し可能な脚本体22、一端をケースに枢着され他端を該脚本体22に枢着される支えリンク23を主体とし、これらの脚本体22、支えリンク23は下部ケース2内の軸24,25に相対移動を許容して枢着される。なお、凹部20は、脚本体22を収容する凹部22aと支えリンク23を収容する凹部22bとからなる。軸24は凹部22aに配され、軸25は凹部22bに配される。
詳しくは、脚本体22は2つの縦脚22aが上方より下方に幅を広げるとともに、該2つの縦脚22aは上部及び中間部で横棒22b,22cをもって連結されてなる形状、いわゆるA字状をなす。脚本体22の上部棒22bは軸方向に長い軸孔が形成され、該軸孔内に下部ケース2の本体に軸支される軸24が挿通され、脚本体22の下端面は引き出されたとき床面に当接する平面をなす。軸孔は軸24に対し上下にずれ移動を許容する。
脚本体22の中間棒22cは支えリンク23と連結される。
支えリンク23は2つの第1及び第2リンク棒23a,23bがピン23cを介してリンク節を形成する。第1リンク棒23aの他端は、軸方向に長い軸孔が形成され、該軸孔をもって下部ケース2の本体に軸支される軸25を挿通し、軸孔は軸25に対し上下にずれ移動を許容する。第2リンク棒23bは他端を脚本体22の中間棒22cにピンをもって連結される。
【0014】
しかして、該飛出し脚5は該下部ケース体2の底面2aより突出することなく、下部ケース体2の凹部20に収納される。また、その引出し状態では下部ケース体2の底面2aと同一水準を保持して安定状態となる。
飛出し脚5の収納状態において、脚本体22は凹部22aに、支えリンク23は収縮状態をもって凹部22bに折り込まれ、おのおの収容される。このとき、脚本体22及び支えリンク23はそれらの軸孔の長孔作用により上方へずれ変位をなす。これにより、脚本体22は下部ケース2の底面より突出することはない。
飛出し脚5を引き出すとき、脚本体22を一旦下方へ引き下げ、(このとき、軸孔は長孔をもってそれぞれ脚本体22及び支えリンク23の引き下げ移動を許容する。図8のイ方向)、次いで、脚本体22を前方へ引き出す(このとき、軸孔は長孔をもってそれぞれ脚本体22及び支えリンク23の軸24,25を中心とする回転移動を許容する。図8のロ方向)。支えリンク23は伸長する。定置状態では支えリンク23が直線状を採り、飛出し脚5を固定状態となす。
【0015】
その他の付属物
(ストラップ7)
ストラップ7は、本楽器ケースYの前面に上部ケース1と下部ケース2とに両端を固定される。該ストラップ7は取外し可能とされ、上部ケース体1と下部ケース体2とに装着された留め具(雌)に、両端に止め具(雄)を係合させる。
(取っ手8)
取っ手8は、本楽器ケースYの前面に上部ケース体1の大径部の上面に固定される。該取っ手8を把持して持ち上げるとき、本楽器ケースYは安定した重心作用をなし、回転することはない。
【0016】
使用の態様
本楽器ケースYに所定の楽器Mを収納する。すなわち、開放された下部ケース体2に楽器Mを上方より収容し、その内部ケース13の抱持面13aで楽器Mの下方部を抱持する。上部ケース体1を被せて、継口部3を嵌合させ、ロック4を施錠する。このとき、飛出し脚5は収納状態となっている。
持ち運びにおいて、ストラップ7を肩に下げて移動する。このとき、楽器ケースY内のサキソホーンMは正立状態を保つ。
収納状態のまま本楽器ケースYを床面に定置する。この状態において、本楽器ケースYは容易には転倒しない。すなわち、重心の垂線は着底面積の内方に存する。また、飛出し脚5を引き出して着底させると安定的に支持される。すなわち、不意の外力が指向方向に作用したときにも、外力の一定範囲内でその作用力線は着底面積と飛出し脚との合成面積の内方に存するものである。
スタンド態様の使用につき、飛出し脚5を引き出して着底させ、次いでロック4を解除し、上部ケース体1を下部ケース体2から引き抜く。下部ケース体2は楽器Mを抱持し、安定的に支持される。すなわち、この場合にも、不意の外力が指向方向に作用したときにも、外力の一定範囲内でその作用力線は着底面積と飛出し脚との合成面積の内方に存するものである。
【0017】
(効果)
本実施形態の収納ケースYによれば、下部ケース体2を内容物Mのスタンドとして使用され、スタンドが不要であり、備品の削減となる。この状態で、内容物Mは不意の外力から防護され、安全である。また、施錠忘れによる下部ケース体2の落下についても内容物Mは安全である。
【0018】
(第2実施形態)
図9〜図11は本収納ケースの他の実施形態(第2実施形態)の楽器ケースを示す。
本楽器ケースY1は、ギター用ケースへの適用例を示し、先の実施形態と同等の部材については同一の符号が附されている。ギターはそれ自体で自立性がなく、極めて不安定である。
本ギター用楽器ケースY1においても、先に実施形態に準じ、上部ケース体1と下部ケース体2とは継口部3を介して上下に分かれ、それらの内部空間にギターGを収納し、継口部3周りに適宜物(本実施形態では3か所)ロック4が配されてなる。下部ケース体2において、内部ケース体13の抱持面13aをもってギターGの下部を抱持する。2aは下部ケース体2の底面である。
図により明らかなとおり、本楽器ケースY1は背面への倒れ指向性を有する。
【0019】
本実施形態における特徴は、本楽器ケースY1の背面において、下部ケース体2から上部ケース体1に継口部3を介して支柱部2bが立設状に形成されてなる。該支柱部2bの縁部は継口部3となることから、上方へ至るにつれ幅狭に形成されるが、等幅であってもよい。
【0020】
支柱部2bに本実施形態に特有の飛出し脚5Aが配される。該飛出し脚5Aも本発明の趣旨に沿い、本楽器ケースY1の倒れ指向側に配されるものである。
当該飛出し脚5Aは、1本の縦脚形式の脚本体22Aと、支えリンク23Aとからなる。脚本体22A、支えリンク23Aは凹部20に収納される。
脚本体22Aは、軸24をもって下部ケース体に枢着されるとともに下方に中空部30を有する上方脚22dと、該上部脚22dの中空部30に挿通される下方脚22eとからなる。
下方脚22eは上部棒(カン)31と該上部棒31の下端にT字状に固設される接地棒32とからなり、上部棒31は上部脚22dの中空部30に嵌挿され、適宜の留め具(ねじ又はストッパー)をもって抜出しを阻止させる。
支えリンク23Aは先の実施形態のものと実質的に変わらず、一端を下部ケース体2に軸25をもって枢着され、他端を脚本体22Aの上部脚22dにピン接合される。
【0021】
脚本体22Aの引出しにおいて、軸24を中心に揺動回転し、支えリンク23Aにより回転が阻止され、次いで、上方脚22dより下方脚22eを引き出し、その接地棒32を床面に当てる。
脚本体22Aを収納するためには、支えリンク23Aのツッパリ力を解除し、また下方脚22eを上方脚22dに引き入れ、しかる後、軸24,25を中心に揺動して凹部20に収納する。
【0022】
この脚本体22Aの引出しにおいて、支えリンク23Aがストッパーとなるが、該脚本体22Aを廃し、上方脚22dの頭部と凹部20との係合をもってストッパー作用をさせることも可能である。
【0023】
支柱部2bの上端部の内側には、前部に向け凹部34を有する枕部材35が固設される。
該凹部34にギターGの首部を預ける。
ギターGはこの下部ケース体2において、内部ケース13と枕部材35とによって抱持され、正立状態を保つ。
【0024】
(第2実施形態の作用・効果)
本楽器ケースY1に所定の楽器ギターGを収納する。すなわち、開放された下部ケース体2に楽器Gを上方より収容し、その内部ケース13の抱持面13aで楽器Gの下方部を抱持する。上部ケース体1を被せて、継口部3を嵌合させ、ロック4を施錠する。このとき、飛出し脚5Aは収納状態となっている。
収納状態のまま本楽器ケースY1を床面に定置する。この状態において、本楽器ケースY1は容易には転倒しない。すなわち、重心の垂線は底面2aの着底面積の内方に存する。また、飛出し脚5Aを引き出して着底させると安定的に支持される。すなわち、不意の外力が指向方向に作用したときにも、外力の一定範囲内でその作用力線は着底面積と飛出し脚5Aとの合成面積の内方に存するものである。
スタンドの使用において、飛出し脚5Aを引き出し、本楽器ケースY1を着底させ、上部ケース体1を上方へ引き抜く。
内容物としてのギターGは細身状であり、それ自体で自立性はないが、その下部で下部ケース体2に抱持されるとともに、首部で下部ケース体2の支持部2bの枕部材35で支持され、該ギターGは立設状態を保ったまま安定して支持されることになる。すなわち、この場合にも、不意の外力が指向方向に作用したときにも、外力の一定範囲内でその作用力線は着底面積と飛出し脚との合成面積の内方に存するものである。
【0025】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術思想の範囲内で種々設計変更が可能である。すなわち、以下の態様は本発明の技術的範囲に属する。
1)叙上の実施形態では長孔並び入れ子機構による飛出し脚5、5Aを引出し(ロ方向)を伴うものであるが、底面2aの着底面積が不変であれば、これらの機構を省略することができる。
支えリンク23も他のストッパー機構が採用することができれば省略することができる。
2)叙上の実施形態では楽器についての収納ケースであったが、スタンドを要する他の同等のもの、例えばスポーツ用品にも適用されうるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の楽器ケースの一実施形態(サキソホーン用楽器ケース)の立体図。
【図2】本楽器ケースYの側面図。
【図3】本楽器ケースMの下部ケース体と内容物との収納状態を示す図。
【図4】継口部の構成を示す図。
【図5】ロックの模式構成図。
【図6】飛出し脚の前面図。
【図7】図6の7−7線拡大断面図。
【図8】飛出し脚の引出し状態を示す図。
【図9】本発明の他の実施形態(ギター用楽器ケース)の立体図。
【図10】その背面の構成を示す図。
【図11】図10の11−11線断面図。
【符号の説明】
【0027】
Y,Y1…楽器ケース、M, G…楽器(内容物)、1…上部ケース体、2…下部ケース体、2b…支柱部、3…継口部、4…ロック、5,5A…飛出し脚、10, 12…殻体、13…内部ケース、13a…抱持面、20…凹部、22, 22A…脚本体、23,23A…支えリンク、24,25…軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦長状の筒状をなし、該筒状の内部空間に縦長状をなす楽器等の内容物を収納するケースであって、
前記ケースの本体は上部ケース体と下部ケース体とに分かれ、前記上部ケース体は前記下部ケース体より引抜きをもって取り外し可能とされ、前記下部ケース体は前記内容物を抱持するとともに、該下部ケース体の下端の外側面には外方へ引出し可能な飛出し脚が取り付けられ、
前記下部ケース体は、前記内容物を抱持したまま、前記上部ケースが取り外され、その底面が着底した状態で、前記飛出し脚の外方への引出しによる着底により安定的に自立する、
ことを特徴とする収納ケース。
【請求項2】
縦長状の筒状をなし、該筒状の内部空間に縦長状をなす楽器等の内容物を収納するケースであって、
当該ケースの底面は所定の着底面積を保持する着底面を有し、かつ、当該ケースは着底状態で特定の一方向へ倒れる指向性を有し、
前記ケースの本体は上部ケース体と下部ケース体とに分かれ、前記上部ケース体は前記下部ケース体より引抜きをもって取り外し可能とされ、前記下部ケース体は前記内容物を抱持するとともに、該下部ケース体の下端の外側面には前記指向性に対抗する外方向へ引出し可能な飛出し脚が取り付けられ、
前記下部ケース体は、前記内容物を抱持したまま、前記上部ケースが取り外され、その底面が着底した状態で、前記飛出し脚の外方向への引出しによる着底により完全状態で安定的に自立する、
ことを特徴とする収納ケース。
【請求項3】
飛出し脚は下部ケース内の凹部内に収容され、該凹部のピンを中心に回動して外方へ引き出される請求項1又は2のいずれかに記載の収納ケース。
【請求項4】
下部ケース体の底面の着底面積は不変である請求項1ないし3のいずれかに記載の収納ケース。
【請求項5】
飛出し脚は下部ケースの前面に1か所配される請求項1ないし4のいずれかに記載の収納ケース。
【請求項6】
飛出し脚は下部ケースの側面に倒れの指向方向に対抗して2か所配される請求項1ないし4のいずれかに記載の収納ケース。
【請求項7】
下部ケース体の底部には緩衝部が配されてなる請求項1ないし6のいずれかに記載の収納ケース。
【請求項1】
縦長状の筒状をなし、該筒状の内部空間に縦長状をなす楽器等の内容物を収納するケースであって、
前記ケースの本体は上部ケース体と下部ケース体とに分かれ、前記上部ケース体は前記下部ケース体より引抜きをもって取り外し可能とされ、前記下部ケース体は前記内容物を抱持するとともに、該下部ケース体の下端の外側面には外方へ引出し可能な飛出し脚が取り付けられ、
前記下部ケース体は、前記内容物を抱持したまま、前記上部ケースが取り外され、その底面が着底した状態で、前記飛出し脚の外方への引出しによる着底により安定的に自立する、
ことを特徴とする収納ケース。
【請求項2】
縦長状の筒状をなし、該筒状の内部空間に縦長状をなす楽器等の内容物を収納するケースであって、
当該ケースの底面は所定の着底面積を保持する着底面を有し、かつ、当該ケースは着底状態で特定の一方向へ倒れる指向性を有し、
前記ケースの本体は上部ケース体と下部ケース体とに分かれ、前記上部ケース体は前記下部ケース体より引抜きをもって取り外し可能とされ、前記下部ケース体は前記内容物を抱持するとともに、該下部ケース体の下端の外側面には前記指向性に対抗する外方向へ引出し可能な飛出し脚が取り付けられ、
前記下部ケース体は、前記内容物を抱持したまま、前記上部ケースが取り外され、その底面が着底した状態で、前記飛出し脚の外方向への引出しによる着底により完全状態で安定的に自立する、
ことを特徴とする収納ケース。
【請求項3】
飛出し脚は下部ケース内の凹部内に収容され、該凹部のピンを中心に回動して外方へ引き出される請求項1又は2のいずれかに記載の収納ケース。
【請求項4】
下部ケース体の底面の着底面積は不変である請求項1ないし3のいずれかに記載の収納ケース。
【請求項5】
飛出し脚は下部ケースの前面に1か所配される請求項1ないし4のいずれかに記載の収納ケース。
【請求項6】
飛出し脚は下部ケースの側面に倒れの指向方向に対抗して2か所配される請求項1ないし4のいずれかに記載の収納ケース。
【請求項7】
下部ケース体の底部には緩衝部が配されてなる請求項1ないし6のいずれかに記載の収納ケース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−337894(P2006−337894A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165219(P2005−165219)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(305022989)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(305022989)
【Fターム(参考)】
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