説明

構造体における営巣防止装置および巣の撤去方法

【課題】簡単な構造で営巣を未然に防止することができるとともに、できてしまった巣を容易に撤去することができる構造体における営巣防止装置を提供する。
【解決手段】鉄構11の上部における鉄構11の構成部材11Aに吊下されている水平な支持部材12と、支持部材12の両端部にそれぞれ回転可能に取り付けられた滑車14,15と、両側の滑車14,15に跨って各滑車14,15、に掛けられ、しかも複数の補強部材19,20を組み合わせてなる鉄構11の補強部17における補強部材19,20と枠体18とで形成する間21〜24を通過して垂直下方に垂下されているロープ16とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造体における営巣防止装置および巣の撤去方法に関し、特に変電所構内の鉄構、送電鉄塔等電気的な充電部に近接する位置における営巣を未然に防止するとともに作られてしまった巣を撤去する場合に適用して有用なものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、変電所構内の鉄構、送電線鉄塔等の電気的な充電部が近接する構造体には、当該構造体の前記充電部近傍位置における鳥類の営巣を防止するための対策を講じる必要がある。従来、変電所構内の鉄構等の構造体に対するカラス等の営巣防止対策として、営巣の可能性が高い鉄構部材にテグスやツリーを取付けて、小枝等の巣の材料を載せることができないようにしている。ここで、テグスによる営巣防止は、営巣の可能性が高い場所にテグスを張り巡らすことにより行っている。また、図4に示すように、ツリー1は円筒状のパイプ部材2からその周囲に斜め下方に向けて放射状に多数の枝部材3を突出させてなる部材である。かかるツリー1を営巣の可能性が高い場所に設置することにより営巣を行わせないための障害物として機能させている。
【0003】
ところが、テグスは経年的な劣化で切れる可能性があり、ツリー1はその未設置場所へ営巣する等の問題を生起していた。かかる問題の解決手法としては特許文献1および特許文献2に開示するような発明が提案されている。特許文献1は、回転自在な羽根車を備えることで鳥類による鉄構ポスト内等への営巣を確実に防止することができる上、様々なサイズの営巣防止箇所に容易に適用させることが可能であって、コストが抑えられる鳥類営巣防止装置を開示する。また、特許文献2は、鉄構内に侵入防止網を用いた三角柱構造体を設けることにより、鳥害防止効果が長続きして鉄構での作業の邪魔にならず、メンテナンスも簡単な鳥害防止装置を開示するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3146181号公報
【特許文献2】特開2007−195483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1および特許文献2に記載する発明にはそれぞれ以下のような課題が残されている。特許文献1では、鉄構等の構造体を昇って高所にある営巣場所へ当該営巣防止装置を設置しなければならず、設置コストがかかる。また、風により羽根車が回転するものの経年的な劣化により羽根車が回転しなくなり、営巣防止の効果が薄れてしまう。もし、仮に巣を作ってしまった場合には撤去することができず、停電等により人の手で撤去しなくてはならないという問題も発生する。特許文献2では、特許文献1と同様に、設置コストがかかり、設置のための停電も必要になる。さらに、経年劣化により網がやぶれ、そこに営巣する可能性もあることから営巣防止効果は薄い。巣を作ってしまった場合には特許文献1の場合と同様に停電等により人の手で撤去しなくてはならない。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、簡単な構造で営巣を未然に防止することができるとともに、できてしまった巣を容易に撤去することができる構造体における営巣防止装置および巣の撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、構造体の上部における前記構造体の構成部材に吊下されている水平な支持部材と、支持部材の両端部にそれぞれ回転可能に取り付けられた滑車と、両側の前記滑車に跨って各滑車に掛けられ、しかも複数の補強部材を組み合わせてなる前記構造体の補強部における前記複数の補強部材の間を通過して垂直下方に垂下されているロープとを有することを特徴とする構造体における営巣防止装置にある。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載する構造体における営巣防止装置において、
下端部同士を結合してループ状に形成した前記ロープの途中に前記ロープの軸方向から突出する少なくとも一個の枝部材を有する撤去部材を固定したことを特徴とする構造体における営巣防止装置にある。
【0009】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載する構造体における営巣防止装置において、
前記撤去部材は、前記ロープを挿通し得る円筒状のパイプ部材からその周囲に斜め下方に向けて放射状に複数の枝部材を突出させて構成したことを特徴とする構造体における営巣防止装置にある。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1〜第3の態様の何れか一つに記載する構造体における営巣防止装置において、前記支持部材、滑車およびロープの対は前記補強部材と同数設けてあり、前記補強部材の組み合わせで形成されるすべての前記補強部材の間を前記ロープが通過するように構成したことを特徴とする構造体における営巣防止装置にある。
【0011】
本発明の第5の態様は、第1〜第4の態様の何れか一つに記載する構造体における営巣防止装置において、前記構造体は電気的な充電部が近接して存在する変電所構内の鉄構や送電線鉄塔を含む電力設備であることを特徴とする構造体における営巣防止装置にある。
【0012】
本発明の第6の態様は、第1〜第5の態様の何れか一つに記載する営巣防止装置の前記ロープの下端部同士を結合してループ状に形成するとともに前記ロープの途中に前記撤去部材を固定し、その後一方の滑車から垂下された前記ロープを引くことにより前記撤去部材を上昇させて高所に作られた巣の構成要素を引っ掛けて払い落とし、さらに他方の滑車から垂下された前記ロープを引くことにより前記撤去部材を下降させて撤収することを特徴とする構造体における巣の撤去方法にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば次のような効果が期待できる。1)営巣を確実に防止できる、2)電力設備であっても、停電や活線近接作業が不要である、3)ロープを揺らすことで、あるいは地上からロープを操作して撤去部材を巣に引っ掛けることによって容易に巣を除去することができる、4)高所作業は取り付け時だけで済む、5)巡視の都度、できかけの巣も含めて容易に撤去が可能になる、6)風の力を利用してロープを揺らすことにより容易に営巣防止を図ることができる。
【0014】
さらに、構造体が鉄構や鉄塔等の電力設備である場合には、送配電系統の操作、停電要求手続きに伴う労力を低減することができる、ロープを用いることで作成コストが安価に済む等の副次的な効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る営巣防止装置を示す図で、(a)はその全体を概念的に示す説明図、(b)は(a)のA部分を抽出して示す拡大斜視図、(c)は(a)のB部分を抽出して示す拡大平面図、(d)は(a)のC部分を抽出して示す拡大斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る巣の撤去方法を示す図で、(a)は初期の状態を概念的に示す説明図、(b)はその撤去時の状態を概念的に示す説明図である。
【図3】図2に示す撤去方法において撤去部材の一例であるツリーをロープに取り付けた状態を示す拡大斜視図である。
【図4】従来技術に係るツリーを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明の実施の形態に係る営巣防止装置を示す図で、(a)はその全体を概念的に示す説明図、(b)は(a)のA部分を抽出して示す拡大斜視図、(c)は(a)のB部分を抽出して示す拡大平面図、(d)は(a)のC部分を抽出して示す拡大斜視図である。同図に示すように、本形態は、変電所構内等に設置されている鉄構11を構造体とするものである。支持部材12は、図1(b)に明示するように、鉄構11の上部における構成部材11Aに吊下部材13を介して水平に張り出された状態で吊下されている。かかる支持部材12の両端部には滑車14,15がそれぞれ回転可能に取り付けられている。ロープ16は滑車14,15に跨って各滑車14,15に掛けられ、しかも図1(c)に明示するように、補強部17を構成する枠体18と補強部材19,20との間21,22,23,24を通過して垂下させている。さらに詳言すると、鉄構11にはこの鉄構11を強度的に補強するため、その高さ方向の複数箇所(図では4箇所)に補強部17が設けられている。補強部17は矩形の枠体18とこの枠体18を補強すべく対角線状に配設された補強部材19、20とを組み合わせて水平に構成されている。ロープ16は、水平面内に配置されている枠体18と各補強部材19,20とで形成する間21〜24を通過して垂下されている。かかる間21〜24におけるロープ16の通過位置はそれぞれの中心であることが最適である。間21〜24内で水平面内を揺れるロープ16により枠体18または補強部材19,20上における営巣を未然に良好に防止し得るからである(この点に関しては後に詳述する。)。
【0018】
また、図1(d)に明示するように、ロープ16の下端にはフック25を介して錘26が吊下されており、錘26によりロープ16に適度の張力を付与するように構成してある。ここで、適度の張力とは、ロープ16が風で揺れて枠体18や補強部材19,20に適度に当接する一方、揺れすぎて鉄構11の構成部材に絡まるような事態を回避し得る程度の張力をいう。
【0019】
かかる本形態によれば、ロープ16が風で揺れて水平面内に配置されている枠体18や各補強部材19,20に載せられた巣の構成要素となる小枝等に触れることにより小枝等を払い落とすことができる。この結果、営巣を未然に防止することができる。ここで、枠体18と各補強部材19,20で形成する全ての間21〜24をロープ16が通過して吊下されているので、全ての枠体18や各補強部材19,20に載せられた小枝等を同様に払い落とすことができ、全ての枠体18や各補強部材19,20に対する営巣を的確に防止し得る。
【0020】
このように、本形態によれば、営巣しそうな部材に営巣防止装置を取付けるのではなく、鉄構11の上部からロープ16を垂らして風で揺らし、このことにより小枝等を営巣対象位置に載せることができないようにすることができる。
【0021】
本形態に係る営巣防止装置は、ロープ16の下端部同士を連結してループを形成し、かかるループ状のロープ16の途中にロープ16の軸方向から突出する枝部材を有する撤去部材27を固定することにより枠体18や各補強部材19,20に作られてしまった巣を撤去するための巣の撤去装置としても機能させることができる。かかる機能により巣を撤去する場合の態様を図2に基づきさらに詳細に説明する。図2は巣の撤去時の態様を示す図で、(a)は初期の状態を概念的に示す説明図、(b)はその撤去時の状態を概念的に示す説明図である。なお、図2では図の簡略化のため、ロープ16は一対の滑車14,15に跨って吊下されている一本のみを示している。
【0022】
図2(a)に示すように、ロープ16の下端部同士を連結してループ状に形成するとともに、ロープ16の途中(下部)に撤去部材27を固定する。撤去部材27は少なくとも一個(多いほど効果的な巣の撤去が可能になる)の枝部材27Aを有する構造体であり、図4に示すツリー1を好適に用いることができる。すなわち、図3に示すように、ツリー1のパイプ部材2にロープ16を挿通してその上端および下端に結び目16A,16Bを形成することによりツリー1を簡単且つ確実にロープ16に固定することができる。ここで、ツリー1は、パイプ部材2からその周囲に斜め下方に向けて放射状に複数の枝部材3が突出させてあるので、これを撤去部材27の枝部材27Aとして好適に機能させることができる。
【0023】
なお、本形態は電力設備を構成する鉄構11における営巣防止装置であるので、電気的な充電部が近接して存在する。したがって、撤去部材27は絶縁部材、例えば樹脂で形成してある。
【0024】
図2(a)の状態で鉄構11の上部に作られた巣28の撤去作業の準備が整う。そこで、図2(b)に示すように、一方の滑車14から垂下されたロープ16を作業者29が引くことにより撤去部材27を上昇させて高所に作られた巣28の構成要素である小枝等28Aを枝部材27Aで引っ掛けて払い落とす。その後、他方の滑車15から垂下されたロープ16を引くことにより撤去部材27を下降させて撤収する。
【0025】
このように、本形態によれば、鉄構11の高所に鳥の巣28を作られてもロープ16に撤去部材27を取り付けて鳥の巣まで上げて巣を払い落とすことにより地上の作業で撤去することができる。ここで、撤去部材27はロープ16に固定されているので、滑車14,15を利用することで地上から営巣場所まで簡単に移動させることができる。
【0026】
なお、上記実施の形態では構造体として電気的な充電部が近接する鉄構11や送電線鉄塔を想定したが、これに限るものではない。営巣の可能性がある構造体であれば普遍的に適用し得る。ただ、充電部が近接する上記実施の形態のような鉄構11、送電線鉄塔等における営巣防止装置とした場合がより顕著な効果を発揮させることができる。また、上記実施の形態では、支持部材12、滑車14,15およびロープ16の対は補強部材19,20と同数設けてあり、補強部材19,20の組み合わせで形成されるすべての間21〜24をロープ16が通過するように構成したが、これに限定するものではない。少なくとも2つの間をロープ16が通過するようになっていれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は鉄構や鉄塔等、営巣の被害を受ける設備を保有する業務を行う産業分野において利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
11 鉄構
11A 構成部材
12 支持部材
14、15 滑車
16 ロープ
17 補強部
18 枠体
19、20 補強部材
21〜24 間
27 撤去部材
27A 枝部材
28 巣
28A 小枝等

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造体の上部における前記構造体の構成部材に吊下されている水平な支持部材と、
支持部材の両端部にそれぞれ回転可能に取り付けられた滑車と、
両側の前記滑車に跨って各滑車に掛けられ、しかも複数の補強部材を組み合わせてなる前記構造体の補強部における前記複数の補強部材の間を通過して垂直下方に垂下されているロープとを有することを特徴とする構造体における営巣防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載する構造体における営巣防止装置において、
下端部同士を結合してループ状に形成した前記ロープの途中に前記ロープの軸方向から突出する少なくとも一個の枝部材を有する撤去部材を固定したことを特徴とする構造体における営巣防止装置。
【請求項3】
請求項2に記載する構造体における営巣防止装置において、
前記撤去部材は、前記ロープを挿通し得る円筒状のパイプ部材からその周囲に斜め下方に向けて放射状に複数の枝部材を突出させて構成したことを特徴とする構造体における営巣防止装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一つに記載する構造体における営巣防止装置において、
前記支持部材、滑車およびロープの対は前記補強部材と同数設けてあり、前記補強部材の組み合わせで形成されるすべての前記補強部材の間を前記ロープが通過するように構成したことを特徴とする構造体における営巣防止装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一つに記載する構造体における営巣防止装置において、
前記構造体は電気的な充電部が近接して存在する変電所構内の鉄構や送電線鉄塔を含む電力設備であることを特徴とする構造体における営巣防止装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一つに記載する営巣防止装置の前記ロープの下端部同士を結合してループ状に形成するとともに前記ロープの途中に前記撤去部材を固定し、その後一方の滑車から垂下された前記ロープを引くことにより前記撤去部材を上昇させて高所に作られた巣の構成要素を引っ掛けて払い落とし、さらに他方の滑車から垂下された前記ロープを引くことにより前記撤去部材を下降させて撤収することを特徴とする構造体における巣の撤去方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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