説明

構造体

【課題】複数のフレーム要素のフレームが連動して回転することで伸縮可能である構造体であって、所定長に伸張された状態が維持されることで、設置作業を円滑に行うことのできる構造体を提供する。
【解決手段】構造体1は、一の方向に連結される複数のフレーム要素4からそれぞれ構成されたサイドフレームが、一体に並設される。フレーム要素4は、交差部9c,10cで回動可能にピン結合される内側・外側フレーム9,10から構成される。サイドフレームは、各フレーム要素4の内側・外側フレーム9,10が連動して回転することで、一の方向に伸縮可能である。構造体1の各フレーム要素4には、内側・外側フレーム9,10が交差することで生じる4つの角のうち、一の方向に向かい合う2つの対頂角が所定角度になったときに、内側・外側フレーム9,10の回転を停止させる突出部材56A,56Bが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害時の応急仮設橋や、橋桁やトンネルの支保工、あるいは潮位上昇や簡易堤防のための水流抑制壁として使用することができる構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
地震、大雨、地すべりなどの災害により、道路や橋が破損して、交通路が遮断される場合には、代替の交通路を確保する措置が求められる。このため、近年では、トラック等で災害現場に搬送されて、応急仮設橋として使用できる構造体が提案されている。
【0003】
上記構造体の例として、特許文献1には、X字状に交差する2つのフレームからなるフレーム要素を備える構造体が開示されている。構造体は、上記のフレーム要素が一の方向に複数連結されており、各フレーム要素のフレームが連動して回転することで、一の方向に伸縮可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−107369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構造体を応急仮設橋として使用する際には、特許文献1の構造体は、所定長に伸張された状態で、一端がアンカーにより地盤に固定される。この作業を円滑に進めるためには、各フレーム要素のフレームが回転せずに、構造体の長さが安定して維持される必要がある。
【0006】
本発明は、こうした状況に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、複数のフレーム要素のフレームが連動して回転することで伸縮可能な構造体であって、所定長に伸張された状態が維持されることで、設置作業を円滑に行うことのできる構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明にかかる構造体は、一の方向に連結される複数のフレーム要素をそれぞれ有する複数のサイドフレームが一体に並設され、前記フレーム要素が、交差部で回動可能にピン結合される2つのフレームから構成されて、各前記フレーム要素のフレームが連動して回転することで、前記サイドフレームが前記一の方向に伸縮可能である構造体であって、各前記フレーム要素には、前記2つのフレームが交差することで生じる4つの角のうち、前記一の方向に向かい合う2つの対頂角が所定角度になったときに、前記フレームの回転を停止させる回転停止部材が設けられることを特徴とする。
【0008】
好ましくは、前記回転停止部材は、各前記フレーム要素の前記2つのフレームのうち、一方と一体に形成される突出部材から構成され、前記突出部材は、他方の前記フレームが回転する空間に突出しており、前記2つの対頂角が所定角度になったときに、前記他方のフレームに当接することを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記突出部材は、前記一方のフレームの長手方向に対して前記所定角度で傾斜する側面を有する物体から構成されて、前記側面が、前記他方のフレームが回転する空間に突出することを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記フレームには、交差部近傍の断面積を増加させるスティフナーが設けられることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記スティフナーは、前記フレームの交差部近傍に固定されるT型鋼によって構成されることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、前記フレームは、中空断面部材から構成されて、前記スティフナーは、前記フレームの交差部近傍の空洞内に固定されるI型鋼によって構成されることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、前記2つの対頂角が所定角度になった状態において、前記2つのフレームの一方における第1位置と、前記2つのフレームの他方における第2位置との間隔を維持する間隔維持手段を、さらに有することを特徴とする。
【0014】
好ましくは、前記2つのフレームの一方では、前記第1位置に第1貫通孔が形成され、前記他方のフレームでは、前記第2位置に第2貫通孔が形成され、前記間隔維持手段は、前記第1,2貫通孔に係止されるターンバックルから構成されることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、前記サイドフレームは、前記複数のフレーム要素が一対一で相対するように並設されて、各前記サイドフレームでは、前記一の方向に隣り合う前記フレーム要素が、前記フレームの先端部でピン結合されて、該ピン結合に用いられる先端結合軸は、前記サイドフレームの間を延びて、相対する前記フレーム要素の前記フレームの先端部を連結することを特徴とする。
【0016】
好ましくは、前記サイドフレームの間には、複数の梁材が前記一の方向に連続して配置されて、前記複数の梁材では、第1の前記先端結合軸に一端部が回動可能に軸支される第1の梁材と、該第1の梁材の他端部と一端部が突き合わされて回動可能にピン結合されるとともに、第2の前記先端結合軸に他端部が回動可能に軸支される第2の梁材とが、隣り合って配置され、前記フレームの回転により前記第1,2の先端結合軸の間隔が変化することに応じて、前記第1,2の梁材は、前記突き合わされる端部が頂点になって傾きが変化して、前記回転停止部材により前記フレームの回転が停止されたときには、前記第1,2の梁材は、略直線状になることを特徴とする。
【0017】
好ましくは、前記回転停止部材により前記フレームの回転が停止されたときには、前記第1,2の梁材の突き合わされる端部は、前記第1,2の先端結合軸の間に位置する第3の前記先端結合軸上に載置されることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、前記第1,2の梁材の突き合わされる端部が前記第3の先端結合軸上に載置された状態を固定するための固定手段を有し、前記固定手段は、前記第1,2の梁材の一方に形成される支持軸と、前記第1,2の梁材の他方に形成される係止突起と、一端が前記支持軸に回動可能に軸支される第1の回転部材とから構成され、前記第1の回転部材には、係止突起の外周に対応する形状の凹みが形成されており、前記第1,2の梁材の突き合わされる端部が前記第2の先端結合軸上に載置された状態で、前記第1の回転部材が所定位置に回転されることで、前記第1の回転部材の凹みは、前記係止突起に係合されることを特徴とする。
【0019】
好ましくは、前記凹みが前記係止突起に係合された状態において、前記第1の回転部材と、前記第1,2の梁材の突き合わされる端部とは、前記第3の先端結合軸を挟み込むことを特徴とする。
【0020】
好ましくは、前記第1,2の梁材の突き合わされる端部が前記第3の先端結合軸上に載置された状態を固定するための固定手段を有し、前記第1,2の梁材の突き合わされる端部は、梁材結合軸によってピン結合され、前記固定手段は、前記梁材結合軸に回動可能に軸支される第2,3の回転部材から構成され、前記第2の回転部材には、前記先端結合軸の外周における一方側範囲に対応する形状の凹みが形成され、前記第3の回転部材には、前記先端結合軸の外周における他方側範囲に対応する形状の凹みが形成され、前記第1,2の梁材の突き合わされる端部が前記第3の先端結合軸上に載置された状態で、前記第2の回転部材は、所定位置まで回転されることで、前記先端結合軸の外周における一方側範囲に係合し、前記第3の回転部材は、前記第2の回転部材と逆回りに所定位置まで回転されることで、前記先端結合軸の外周における他方側範囲に係合して、前記先端結合軸は、前記第2,3の回転部材によって、外周の略全体が挟み込まれることを特徴とする。
【0021】
好ましくは、各前記サイドフレームでは、前記一の方向に隣り合う2つの前記フレーム要素が、前記フレームの上端部及び下端部において、前記先端結合軸により結合されており、前記サイドフレームの間には、前記複数の梁材の2組が、それぞれ前記一の方向に配置されて、前記2組の梁材のうち、一方の組の梁材は、前記フレームの下端部を結合する前記先端結合軸によって支持され、他方の組の梁材は、前記フレームの上端部を結合する前記先端結合軸によって支持されることを特徴とする。
【0022】
好ましくは、前記サイドフレームの間には、前記一の方向に間隔をおいて、上下方向に延びるポールが複数配置されており、各前記ポールは、前記2組の梁材のうち、一方の組の梁材上に載置されて、他方の組の梁材を支持することを特徴とする。
【0023】
好ましくは、前記サイドフレームは、前記複数のフレーム要素が一対一で相対するように並設されて、各前記フレーム要素は、内側フレームと外側フレームとから構成され、相対する前記フレーム要素では、2つの前記外側フレームの間に、前記一の方向に隣り合う他の前記フレーム要素の2つの内側フレームが差し込まれ、前記2つの内側フレームの先端は、前記外側フレームの縁から延び出て、該内側フレームの先端には、前記外側フレームの外側に突出した後、前記内側フレームの中央側に屈曲する形状を呈して、前記外側フレームの縁に係合する係合部材が設けられ、前記2つの外側フレームの先端は、前記内側フレームの縁から延び出て、第1の結合部材により結合され、前記第1の結合部材は、前記内側フレーム及び前記外側フレームが回転する際に前記内側フレームに当接することを特徴とする。
【0024】
好ましくは、前記2つの内側フレームの先端は、第2の結合部材によって結合されることを特徴とする。
【0025】
好ましくは、各前記サイドフレームにおいて、前記一の方向に隣り合う2つの前記フレーム要素は、一方の前記外側フレームと、他方の前記内側フレームとが、一方側の先端部でピン結合され、該ピン結合に用いられる前記先端結合軸は、前記サイドフレームの間を延びて、前記相対するフレーム要素の前記外側フレームの一方側の先端同士、及び前記内側フレームの一方側の先端同士を連結し、前記第1の結合部材は、前記相対するフレーム要素の前記外側フレームの他方側の先端に結合され、前記第2の結合部材は、前記相対するフレーム要素の前記内側フレームの他方側の先端に結合されることを特徴とする。
【0026】
好ましくは、前記第1の結合部材は、前記相対するフレーム要素の前記外側フレームの両側の先端に結合され、前記第2の結合部材は、前記相対するフレーム要素の前記内側フレームの両側の先端に結合されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、対頂角が所定角度になったときに、回転停止部材により、2つのフレームの回転が停止される。これにより、構造体は、所定長になった状態から伸張することが規制される。このため、構造体の設置作業を円滑に行うことができる。
【0028】
また、各フレーム要素に、回転停止部材が設けられていることで、いずれかの回転停止部材が損傷して機能しなくなった場合でも、他の回転停止部材が、フレームの回転を停止させる。これにより、構造体の伸張を確実に止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる構造体を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1の構造体の一部を拡大して示す斜視図である。
【図3】内側フレームの断面図である。
【図4】床版を構成する梁材を拡大して示す斜視図である。
【図5】構造体の一部を拡大して示す平面図である。
【図6】構造体を伸縮させるために使用される伸縮機構を示す側面図である。
【図7】構造体が伸縮する状態を示す側面図である。
【図8】構造体を伸張させる手順を示す側面図である。
【図9】突出部材が形成された部分を拡大して示す斜視図である。
【図10】第1の固定手段を示す斜視図である。
【図11】第1の固定手段により、第1,2の梁材の端部を固定する手順を示す概略図である。
【図12】第2,3の固定手段を示す斜視図である。
【図13】第2,3の固定手段により、第1,2の梁材の端部を固定する手順を示す概略図である。
【図14】結合部材により第1,2の梁材が連結される状態を示す斜視図である。
【図15】結合部材により連結された第1,2の梁材の動きを示す側面図である。
【図16】本発明の実施の形態2の構造体の一部を拡大して示す斜視図である。
【図17】ターンバックルが取り付けられる部分を拡大して示す斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態3の構造体を示す概略側面図である。
【図19】実施の形態3の構造体の一部を拡大して示す斜視図である。
【図20】実施の形態3の構造体が橋桁を支持する支保工として使用される状態を示す概略図である。
【図21】実施の形態3における変形例の構造体を示す概略側面図である。
【図22】本発明の変形例の構造体の中央部を拡大して示す斜視図である。
【図23】本発明の実施の形態4の構造体の一部を拡大して示す斜視図である。
【図24】第1の結合部材及び係合部材を拡大して示す斜視図である。
【図25】本発明の実施の形態5の構造体の一部を拡大して示す斜視図である。
【図26】T型鋼の設置範囲が変更された内側・外側フレームを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、この発明の実施の形態1について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付す。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態1にかかる構造体1を示す斜視図である。構造体1は、災害時の応急仮設橋として使用される。
【0032】
構造体1は、並設される一対のサイドフレーム2と、これらサイドフレーム2の間に配置される床版3とを有する。
【0033】
各サイドフレーム2は、一の方向に連結される複数のフレーム要素4から構成される。サイドフレーム2は、フレーム要素4が、一対一で相対するように並設される。床版3は、サイドフレーム2の間に連続して配置される複数の梁材5から構成される。梁材5は、板状を呈して、相対する2つのフレーム要素4の間に1つずつ配置される。
【0034】
図1の符号6は、地盤上に設置されるレール架台を示している。レール架台6は、構造体1の一端側が載置される床材7と、床材7の両端から立設して、構造体1の一端側を挟み込む壁材8と、床材7上に固定されて、両側の壁材8を繋ぐ連結材60とを備える。
【0035】
また、レール架台6には、床版3の後方において、踏み板61(斜線の範囲)が取り付けられる。踏み板61は、連結材60に支持されており、人は、踏み板60の上を床版3に向けて歩行できる。
【0036】
図2は、構造体1の一部を拡大して示す斜視図である。
【0037】
各フレーム要素4は、内側・外側フレーム9,10から構成される。内側・外側フレーム9,10は、X字状に交差しており、交差部9c,10cで回動可能にピン結合される。
【0038】
一の方向に隣り合う2つのフレーム要素4は、一方の内側フレーム9の上端部9aと他方の外側フレーム10の上端部10aとがピン結合される。また、一方の内側フレーム9の下端部9bと他方の外側フレーム10の下端部10bとがピン結合される。これらのピン結合には、相対する2つのフレーム要素4の間(一対のサイドフレーム2の間)を延びる先端結合軸11が用いられる。
【0039】
相対する2つのフレーム要素4では、内側フレーム9の上端部9a同士と、内側フレーム9の下端部9b同士と、外側フレーム10の上端部10a同士と、外側フレーム10の下端部10b同士とが、それぞれ共通の先端結合軸11により連結される。この連結が相対するフレーム要素4の各組で行われることで、一対のサイドフレーム2,2(図1)は一体に連結される。
【0040】
また、上記の先端結合軸11の連結により、構造体1は、構成部材が輪状に連なる閉断面構造を有する。すなわち、相対するフレーム要素4の2つの内側フレーム9と、これらの上端部9aに連結される先端結合軸11と、下端部9bに連結される先端結合軸11と、が輪状に連なる。また、相対するフレーム要素4の2つの外側フレーム10と、これらの上端部10aに連結される先端結合軸11と、下端部10bに連結される先端結合軸11とが輪状に連なる。
【0041】
図3は、内側フレーム9の断面図である。図3(a)は、図2のA−A線で切断した断面図であり、内側フレーム9の先端近傍の断面を示す。図3(b)は、図2のB−B線で切断した断面図であり、内側フレーム9の交差部9c近傍の断面を示す。
【0042】
以下、図3を用いて、内側・外側フレーム9,10の構造について説明する。なお、図3には、外側フレーム10は示していないが、内側・外側フレーム9,10の構造は同様であるため、外側フレーム10も含めて説明する。
【0043】
内側・外側フレーム9,10は、複数の空洞部12のある中空断面を有する(図3の例では、3室の空洞部12が設けられている)。
【0044】
内側・外側フレーム9,10の交差部9c,10c近傍では、スティフナーとしてのT型鋼13及びI型鋼14(図3(b))が設けられて、断面積が増加される。
【0045】
T型鋼13は、フランジ部13aが内側・外側フレーム9,10の縁に溶接されることで、内側・外側フレーム9,10に固定される。
【0046】
I型鋼14は、各空洞部12に挿入される。各I型鋼14は、フランジ部14aが空洞部12の上下面に圧着(添溶接)されることで、内側・外側フレーム9,10に固定される。
【0047】
図4は、床版3を構成する梁材5を拡大して示す斜視図である。
【0048】
梁材5は、一端部5a及び他端部5bに、複数の突起15,16が設けられる。各突起15,16には、貫通孔15a,16aが形成される。各梁材5では、隣り合う2つの突起(15,15)(16,16)の間に、他の梁材5の突起16,15を1つずつ差し込むことが可能である。
【0049】
上述の梁材5は、図2に示す先端結合軸11が用いられて、構造体1に取り付けられる。以下、梁材5の取り付け方法について説明する。
【0050】
図5は、構造体1の一部を拡大して示す平面図である。図5には、一の方向に隣り合って配置される第1,2の梁材5A,5Bと、第1,2の梁材5A,5Bが連結される第1,2の先端結合軸11A,11Bと、第1,2の先端結合軸11A,11Bの間に配置される第3の先端結合軸11Eとが示されている。
【0051】
第1の梁材5Aは、突起15の貫通孔15aに第1の先端結合軸11Aが通されることで、一端部5aが第1の先端結合軸11Aに回動可能に軸支される。
【0052】
また、第1の梁材5Aは、突起16の間に第2の梁材5Bの突起15が差し込まれることで、他端部5bが、第2の梁材5Bの一端部5aと、突き合わされる。
【0053】
突き合わされた第1,2の梁材5A,5Bの他端部5b及び一端部5aは、貫通孔16a,15aに梁材結合軸17が通されることで、梁材結合軸17に回動可能に軸支される。第3の先端結合軸11Eは、第1,2の梁材5A,5Bの他端部5b及び一端部5aの下方に位置している。
【0054】
また、第2の梁材5Bは、突起16の貫通孔16aに、第2の先端結合軸11Bが通されることで、他端部5bが第2の先端結合軸11Bに回動可能に軸支される。
【0055】
また、第1の先端結合軸11Aは、他の組の第2の梁材5Bの他端部5bを支持する。この他の組の第2の梁材5Bは、第1の梁材5Aの一端側に隣り合って配置されるものであり、突起16の間に、第1の梁材5Aの突起15が差し込まれて、貫通孔16aに、第1の先端結合軸11Aが通される。
【0056】
また、第2の先端結合軸11Bは、他の組の第1の梁材5Aの一端部5aを支持する。この他の組の第1の梁材5Aは、突起15の間に、第2の梁材5Bの突起16が差し込まれて、貫通孔15aに、第2の先端結合軸11Bが通される。
【0057】
図6は、構造体1を伸縮させるために使用される伸縮機構18を示す側面図である。
【0058】
伸縮機構18は、レール架台6(図1)の床材7上に設けられる。この伸縮機構18は、螺旋棒19と、固定支持部20と、スライド部21とを有している。
【0059】
螺旋棒19は、外面に螺旋が形成されて、一の方向に延びている。固定支持部20は、床版3と一体の板材から構成されて、螺旋棒19の一端部19aを回動自在に支持する。スライド部21は、一の方向に間隔をあけて相対する2つの板材22と、これら板材22をつなぐ連結材23とを有する。2つの板材22は、床材7上に載置される。各板材22には、螺旋棒19の他端部19bが貫通され、該貫通孔の孔壁には螺旋が形成されて、螺旋棒19の外面に形成された螺旋と噛み合う。この噛み合いにより、スライド部21は、螺旋棒19の回転により、床材7上を移動可能である。スライド部21の移動方向は、螺旋棒19の回転方向に応じて変更される。例えば、螺旋棒19を時計回りに回転させたときには、スライド部21は、一の方向の他端側に移動し、螺旋棒19を反時計回りに回転させたときには、スライド部21は、一の方向の一端側に移動する。
【0060】
図6の符号4Aは、構造体1の一端側の基端に配置されるフレーム要素を示している。このフレーム要素4Aでは、外側フレーム10Aの長さが、他のフレーム要素4の外側フレーム10の長さに比して、2分の1程度に設定される。外側フレーム10Aは、その上端10aが内側フレーム9Aと交差してピン結合される。また、図6の符号11C,11Dは、相対するフレーム要素4A(図1参照)を連結する第4,5の先端結合軸を示している。
【0061】
第4,5の先端結合軸11C,11Dは、相対する2つのフレーム要素4Aの間を延びている。このうち、先端結合軸11Cは、内側フレーム9Aの下端部9bに結合される。固定支持部20は、先端結合軸11Cの中央部に当接するように配置され、先端結合軸11Cを一の方向の他端側に押圧する。
【0062】
先端結合軸11Dは、外側フレーム10Aの下端部10bと、フレーム要素4Aと隣り合う他のフレーム要素4の内側フレーム9の下端部9bとに結合される。2つの板材22は、先端結合軸11Dの中央部を挟み込んでいる。
【0063】
図7は、構造体1が伸縮する状態を示す側面図である。図7(a)は、構造体1が収縮した状態を示している。図7(b)は、構造体1が伸張した状態を示している。
【0064】
図7(a)の状態から、例えば螺旋棒19を時計回りに回転させると、スライド部21は、構造体1の他端側に向けて、床版3上を移動する。この間、2つの板材22(図6)に挟み込まれた先端結合軸11Dは、スライド部21とともに、構造体1の他端側に移動し、一方、先端結合軸11Cは、固定支持部20に固定されて停止した状態にある。この結果、フレーム要素4では、先端結合軸11C,11Dの間隔K1が大きくなって、内側・外側フレーム9A,10Aが回転する。この際には、各フレーム要素4が先端結合軸11により一体に連結されていることで、各フレーム要素4の内側・外側フレーム9,10も、上記の回転に連動して、回転する。この回転は、内側・外側フレーム9,10がX字状に交差することで生じる4つの角のうち、一の方向に向かい合う2つの対頂角Tが小さくなる方向に生じる。この回転が生じた結果、構造体1は、一の方向に伸張して、図7(b)の状態になる。
【0065】
また、各フレーム要素4の内側・外側フレーム9,10が回転する際には、第1,2の先端結合軸11A,11Bの間隔K2が変化する。この間隔変化により、第1,2の梁材5A,5B(図5)は、突き合わされる端部5b,5aが頂点になって傾きが変化する。
【0066】
具体的には、上述のように、各内側・外側フレーム9,10が対頂角Tが小さくなる方向に回転する際には、第1,2の梁材5A,5Bは、端部5b,5aが下側に移動するように、傾きが変化する。これにより、床板3の起伏は大きくなる。
【0067】
一方、図7(b)の状態から、例えば螺旋棒19を反時計回りに回転させると、スライド部21は、構造体1の一端側に向けて床版3上を移動する。この間、先端結合軸11Dは、スライド部21とともに構造体1の一端側に移動し、先端結合軸11Cは停止した状態にある。この結果、フレーム要素4では、先端結合軸11C,11Dの間隔K1が小さくなって、内側・外側フレーム9A,10Aは、上記伸張時と逆方向に回転する。そして、この回転に連動して、各フレーム要素4の内側・外側フレーム9,10は、対頂角Tが大きくなる方向に回転する。この回転が生じた結果、構造体1は一の方向に収縮して、図7(a)の状態になる。
【0068】
また、各内側・外側フレーム9,10が対頂角Tが大きくなる方向に回転する際には、第1,2の梁材5A,5Bは、端部5b,5aが上側に移動するように、傾きが変化する。これにより、床板3の起伏は小さくなる。
【0069】
図8は、構造体1を伸張させる手順を示す側面図である。構造体1を応急架設橋として使用する際には、以下の設置作業が行われる。
【0070】
まず、トラック等により、構造体1及びレール架台6を一方の岸(以下、自岸と記す)に搬送する。
【0071】
次に、レール架台6を、アンカー等により、自岸の地盤J1に固定する(図8(a))。
【0072】
次に、構造体1の他端側が対岸を向くように、構造体1の一端側をレール架台6上に載置し、伸縮機構18(図6)を先端結合軸11C,11Dにセットする。なお、構造体1とレール架台6とは、予め一体にされていてもよい。
【0073】
次に、螺旋棒19を回転させることで(図7の例では時計回りに回転)、構造体1を伸張させる。これにより、構造体1の他端が対岸に向けて延びていく。この間、内側・外側フレーム9,10は、対頂角T(図8(b))が小さくなる方向に回転し、これに応じて、梁材5の傾きが変化することで、床版3の起伏は徐々に小さくなる。
【0074】
そして、構造体1の他端が対岸に到達した時点で、螺旋棒19の回転を停止する。この際には、床版3は、起伏の小さな状態で自岸から対岸まで延びている。
【0075】
次に、構造体1の他端を、支点支持手段あるいはアンカー等により、対岸の地盤J2に固定する。以上の作業が終了することで、構造体1は、応急仮設橋として使用できる状態になる。
【0076】
本実施の形態では、構造体1を地盤J2に固定する作業が円滑に行えるように、内側・外側フレーム9,10の回転を停止させるための部材として、突出部材56A,56B(図2)が設けられる。
【0077】
図9は、突出部材56A,56Bが形成された部分を拡大して示す斜視図である。突出部材56A,56Bは、それぞれ直方体の物体から構成される。突出部材56Aは、内側フレーム9の交差部9cの縁に形成され、突出部材56Bは、外側フレーム10の交差部10cの縁に形成される。
【0078】
突出部材56Aは、内側フレーム9の長手方向に対して、所定角度ほど傾斜する側面560を有する。側面560は、外側フレーム10が回転する空間に突出しており、対頂角Tが所定角度になったときに、外側フレーム10の縁に当接する。
【0079】
突出部材56Bは、外側フレーム9の長手方向に対して、所定角度ほど傾斜する側面561を有する。側面561は、内側フレーム10が回転する空間に突出しており、対頂角Tが所定角度になったときに(側面560が外側フレーム10の縁に当接するときに)、内側フレーム10の縁に当接する。
【0080】
上記の側面560,561の当接により、内側・外側フレーム9,10の回転は停止され、構造体1は、所定長に延びた状態が維持される。これにより、構造体1は、形状が安定するとともに、全体の剛性が高められ、耐力が向上する。
【0081】
また、突出部材56A,56Bにより内側・外側フレーム9,10の回転が停止されたときには、図2に示すように、第1,2の梁材5A,5Bは略直線状になる。またさらに、第1,2の梁材5A,5Bの突き合わされた端部5b,5aは、第1,2の先端結合軸11A,11Bの間にある第3の先端結合軸11E上に載置される。
【0082】
本実施の形態では、第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aを、第3の先端結合軸11E上に固定するための固定手段が設けられる。
【0083】
図10は、上記固定手段の一例としての第1の固定手段24を示す斜視図である。第1の固定手段24は、第1の梁材5Aに形成される支持軸25と、第2の梁材5Bに形成される係止突起26と、支持軸25に一端27aが回動可能に軸支される第1の回転部材27とから構成される。
【0084】
係止突起26は、第2の梁材5Bの内部に挿入される部分(図示せず)を有している。該挿入部分は、図示しないバネにより付勢される。このバネは、係止突起26の先端を指で押すことで縮めることができる。このバネの収縮により、係止突起26は、A方向に移動して、第2の梁材5Bに挿入される部分が長くなる。この状態から、係止突起26の先端から指を離すと、バネが初期の長さに復帰することで、係止突起26は、B方向に移動して、初期位置に戻る。
【0085】
第1の回転部材27の他端27bには、凹み28が形成される。凹み28は、係止突起26の外周に対応する形状を呈している。第1の回転部材27の中間部27cは円弧状に湾曲している。この湾曲の向きは、一端27aが他端27bよりも第2の梁材5B側に位置している状態(図10の状態)では、上方に凸になっている。
【0086】
図11は、第1の固定手段24により、第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aを固定する手順を示す概略図である。
【0087】
第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aが第3の先端結合軸11E上に載置される前では、第1の回転部材27は、図示しない係止手段により、第1の梁材5Aに係止された状態にある(図11(a))。
【0088】
第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aが第3の先端結合軸11E上に載置された際には(図11(b))、第1の回転部材27の係止を解除する。
【0089】
次に、係止突起26を指で押してA方向に移動させた状態で、第1の回転部材27を、C方向(第1,2の梁材5A,5Bに対して第3の先端結合軸11Eが存在する側を通過する方向)に回転させる(図11(b))。この回転は、凹み28が係止突起26の位置にくるまで行われる。
【0090】
凹み28が係止突起26の位置にきたときには、第1の回転部材27の回転を停止させて、係止突起26の先端から指を離す。これにより、係止突起26は、B方向に移動して、初期位置に復帰することで、凹み28に係合する(図11(c))。この係合により、第1,2の梁材5A,5Bは、支持軸25と係止突起26の位置関係が変わる横方向の動きが規制される。
【0091】
また、係止突起26が凹み28に係合した状態では、第3の先端結合軸11Eは、第1の回転部材27の中間部27cと、第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aとに挟み込まれる。この挟み込みにより、第1,2の梁材5A,5Bは、端部5b,5aと第3の先端結合軸11Eとが離れる上下方向の動きが規制される。以上の第1の固定手段24による動きの規制により、第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aは、第3の先端結合軸11E上に固定される。
【0092】
図12は、第1の固定手段24に代えて使用される第2,3の固定手段29,30を示す斜視図である。
【0093】
第2の固定手段29は、第2,3の回転部材31,32から構成される。第2,3の回転部材31,32は、略円弧状に湾曲しており、この湾曲により、凹み33,34が形成される。第2の回転部材31の凹み33は、第3の先端結合軸11Eの外周の一方側範囲に対応した形状を呈する。第3の回転部材32の凹み34は、第3の先端結合軸11Eの外周の他方側範囲に対応した形状を呈する。
【0094】
第2,3の回転部材31,32は、突起15,16の貫通孔15a,16a(図5)を通過した梁材結合軸17の先端に、一端31a,32aが回動可能に支持される。
【0095】
図12では、第2,3の回転部材31,32の他端31b,32bが、梁材結合軸17の下方にある状態が示されている。この状態では、正面視で他端31a,32aが重なり、凹み33,34により、第3の先端結合軸11Eが通過可能な空間が構成される。
【0096】
第3の固定手段30は、第1の梁材5Aに形成される支持軸36と、第2の梁材5Bに形成される係止突起37と、略直線状を呈する第4の回転部材38とから構成される。
【0097】
係止突起37は、第2の梁材5Bの内部に挿入される部分(図示せず)を有している。該挿入部分は、図示しないバネにより付勢される。このバネは、係止突起37の先端を指で押すことで縮めることができ、この収縮により、係止突起37は、A方向に移動して、第2の梁材5Bに挿入される部分が長くなる。この状態から、係止突起37の先端から指を離すと、バネが初期の長さに復帰することで、係止突起37は、B方向に移動して、初期位置に戻る。
【0098】
第4の回転部材38は、一端38aが支持軸36に回動可能に軸支される。また、第4の回転部材38の他端38bには、凹み39が形成される。凹み39は、係止突起37の外周に対応する形状を呈している。
【0099】
図13は、第2,3の固定手段29,30により、第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aを固定する手順を示す概略図である。
【0100】
第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aが第3の先端結合軸11E上に載置される前では、第2の回転部材32と第4の回転部材38とは、図示しない係止手段により、第1の梁材5Aに係止された状態にある。また、第3の回転部材31は、図示しない係止手段により、第2の梁材5Bに係止された状態にある(図13(a))。
【0101】
第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aが第3の先端結合軸11E上に載置された際には(図13(b))、第2〜4の回転部材31,32,38の係止を解除する。
【0102】
次に、第2の回転部材31をC方向に回転させ、また、第3の回転部材32をC方向とは逆のD方向に回転させる(図13(b))。これにより、図13(c)のように、第2の回転部材31の凹み33は、第3の先端結合軸11Eの外周の一方側範囲に係合する。また、第3の回転部材32の凹み34は、第3の先端結合軸11の外周の他方側範囲に係合する。以上の係合により、第2,3の回転部材31,32は、第3の先端結合軸11Eの外周全体を挟み込んだ状態になり、第1,2の梁材5A,5Bは、第3の先端結合軸11Eから離れる上下方向の動きが規制される。
【0103】
次に、係止突起37を指で押して、A方向に移動させた状態で、第4の回転部材38を、E方向(第3の先端結合軸11Eに対して第1,2の梁材5A,5Bが存在する側を通過する方向)に回転させる(図13(c))。この回転は、凹み39が係止突起37の位置にくるまで行われる。
【0104】
凹み39が係止突起37の位置にきた際には、第4の回転部材38の回転を停止して、係止突起37の先端から指を離す。これにより、係止突起37は、B方向に移動して、初期位置に復帰する(図13(d))。この結果、凹み39は係止突起37に係合した状態になる。この係合により、第1,2の梁材5A,5Bは、支持軸36と係止突起37の位置関係が変わる横方向の動きが規制される。
【0105】
以上の第2,3の固定手段29,30による動きの規制により、第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aは、第3の先端結合軸11E上に固定される。
【0106】
なお、凹み33,34が第3の先端結合軸11Eに係合した後において、第2,3の回転部材31,32がC,D方向と逆方向に回転しないようにすることで、第2,3の回転部材31,32によっても、横方向の動きを規制することができる。
【0107】
本実施の形態の構造体1によれば、内側・外側フレーム9,10が対頂角Tが大きくなる方向に回転するときに、一の方向に長さが延びる。そして、対頂角Tが所定角度になったときには、突出部材56A,56B(図2,9)により、内側・外側フレーム9,10の回転が停止される。これにより、構造体1は、所定長になった状態から伸張することが規制されるため、構造体1の設置作業を円滑に行うことができる。
【0108】
また、突出部材56A,56Bが、各フレーム要素4に設けられることで、いずれかの突出部材56A,56Bが内側・外側フレーム9,10との接触で損傷して機能しなくなった場合でも、他の突出部材56A,56Bが、内側・外側フレーム9,10の回転を停止させる。これにより、構造体1の伸張を確実に止めることができる。
【0109】
また、突出部材56A,56Bが、内側フレーム9の長手方向から所定角度傾斜する側面560,561(図9)を有し、この側面560,561が外側フレーム10や内側フレーム9に当接することで、内側・外側フレーム9,10の回転が停止される。これにより、側面560,561の傾斜角度を調整することで、内側・外側フレーム9,10の回転停止位置を調整できる。つまり、側面560,561の傾斜角度を調整することで、構造体1の伸張が止まる長さを、任意に設定できる。
【0110】
また、先端結合軸11が、隣り合う2つのフレーム要素4の内側・外側フレーム9,10の結合とともに、相対する2つのフレーム要素4の連結にも用いられることで、構造体1の部品点数は少なく抑えられる。
【0111】
また、構造体1は、構成部材が輪状に連なる閉断面構造を有することで、高い剛性を有して、外力の作用による変形が生じにくい。
【0112】
また、構造体1を応急仮設橋として使用する際には、床版3が荷重を受けることで、内側フレーム9の交差部9c近傍に剪断力が加えられるが、I型鋼14又はT型鋼13(図3)の設置により、内側フレーム9の交差部9c近傍における断面積が増加されることで、交差部9c近傍に生じる応力は小さくなる。これにより、構造体1に生じる変形は小さく抑えられる。
【0113】
また構造体1では、内側・外側フレーム9,10の回転に応じて、サイドフレーム2の延長が変わり、これと共に、梁材5の傾きが変化することで、床版3の延長も変わる。つまり、内側・外側フレーム9,10の回転操作(伸縮機構18の螺旋棒19の回転操作)を行うことで、構造体1の全体が伸縮する。よって、構造体1を応急仮設橋に使用した場合には、構造体1を対岸まで延ばした時点で、対岸に至る通路が床版3により構築される。このため、災害現場等で代替の交通路が求められる場合、この要求に迅速に対応することができる。
【0114】
また、内側・外側フレーム9,10の回転が停止されて、構造体1が所定長に延びた状態では、第1,2の梁材5A,5Bが略直線状になり(図2)、床版3は略平坦になる。これにより、上記長さにある構造体1を、応急仮設橋として使用することで、移動の容易な通路が確保される。
【0115】
第1,2の梁材5A,5Bは、内側・外側フレーム9,10の回転が停止されたときには、突き合わされる端部5b,5aが、第3の先端結合軸11E上に載置される(図2)。これにより、第1,2の梁材5A,5Bは、これらを合わせた範囲の両端と中央の位置において、第1,2,3の先端結合軸11A,11B,11Eに支持された状態になる。よって、内側・外側フレーム9,10の回転が停止されて、構造体1が所定長に延びた状態では、床版3の平坦な状態が安定して維持される。
【0116】
また、内側・外側フレーム9,10の回転が停止されたときには、上述のように、第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aは、第3の先端結合軸E上に載置される。この状態において、第1〜3の固定手段24,29,30による固定を行わない場合には、外力の作用時に、第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aは、第3の先端結合軸Eから分離する動きを生じ得る。このため、第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aから第3の先端結合軸Eに伝達される力は小さく抑えられ、上記外力の作用により、内側・外側フレーム9,10に損傷が生じることを防止できる。
【0117】
また、第3の先端結合軸11Eが、第1,2の梁材5A,5Bの支持手段として用いられることで、部品点数を少なく抑える上で有利になる。
【0118】
また、第1〜3の固定手段24,29,30(図10,12)を用いて、第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aを第3の先端結合軸11E上に固定した場合には、床版3の平坦な状態が確実に維持される。
【0119】
なお本実施の形態では、第1の梁材5Aと、第2の梁材5Bとは、図14に示す結合部材70が用いられて、連結されてもよい。
【0120】
結合部材70は、本体部71と、突起72,73とを備える。本体部71は、第1,2の梁材5A,5Bの幅と略同一の長さを有する柱状体である。突起は、本体部71の一方の側部71aに形成される。突起73は、本体部71の他方の側部71bに形成される。この結合部材70では、隣り合う2つの突起(72,72)(73,73)の間に、梁材5の突起16,15を1つずつ差し込むことが可能である。また突起72,73には、貫通孔72a,73aが形成される。
【0121】
結合部材70を用いて第1,2の梁材5A,5Bを連結する際には、2つの突起72の間に、第1の梁材5Aの突起16が一つずつ差し込まれて、貫通孔72a,16aに、第1の梁材結合軸17Aが通される。また、2つの突起73の間に、第2の梁材5Bの突起15が差し込まれて、貫通孔73a,15aに、第2の梁材結合軸17Bが通される。
【0122】
図15は、結合部材70により連結された第1,2の梁材5A,5Bの動きを示す側面図である。内側・外側フレーム9,10が回転する際には、第1,2の梁材5A,5Bは、結合部材70を頂点として傾きが変化する(図15(a))。また、突出部材56A,56B(図2)との接触により内側・外側フレーム9,10の回転が停止されたときには、結合部材70は、第3の先端結合軸11E上に載置されて(図15(b))、第1,2の梁材5A,5Bは略直線状になる。
【0123】
上記の結合部材70を用いて、第1,2の梁材5A,5Bを連結した場合には、第1,2の梁材5A,5Bの傾き変化の自由度が増す。例えば、第1,2の梁材5A,5Bのうち、一方が止まっているときでも、他方は、結合部材70をヒンジとして傾きを変化することが可能である。これにより、第1,2の梁材5A,5Bの傾き変化が生じないことで、内側・外側フレーム9,10の回転が停止する虞れは小さくなり、構造体1を所望の長さに調整する上で有利になる。
【0124】
次に、本発明の実施の形態2について説明する。実施の形態2の構造体41は、内側・外側フレーム9,10の回転が停止された状態(構造体が所定長になった状態)を維持するために、後述のターンバックル42(間隔維持手段)を設けたものである。
【0125】
図16は、実施の形態2の構造体41の一部を拡大して示す斜視図である。図17は、ターンバックル42が取り付けられる部分を拡大して示す斜視図である。
【0126】
本実施の形態では、内側フレーム9の交差部9c近傍における第1の位置に、貫通孔43が形成される。図17の例では、貫通孔43は、T型鋼13のウエブ部13bに形成される。
【0127】
また、外側フレーム10の交差部10c近傍における第2の位置には、貫通孔44が形成される。図17の例では、貫通孔43は、外側フレーム10の縁に設けられる突起45に形成される。突起45は、内側・外側フレーム9,10の回転時に、内側フレーム9と接触しないように設けられている。
【0128】
ターンバックル42は、突出部材56A,56Bにより内側・外側フレーム9,10の回転が停止された状態(対頂角Tが所定角度になった状態)で、内側・外側フレーム9,10に取り付けられる。この取り付けは、一方のボルト46のフック46aを、貫通孔43に係止し、他方のボルト47のフック47aを、貫通孔44に係止することで行われる。
【0129】
本実施の形態によれば、ターンバックル42が、貫通孔43,44が形成される第1、2位置の間の距離dを維持することで、内側・外側フレーム9,10は、対頂角Tが大きくなる方向に回転することが規制される。このため、対頂角Tが所定角度になった状態、つまり構造体41が所定長になった状態は、安定して維持される。これにより、構造体41の設置作業を、より一層円滑に行えるようになる。また、ターンバックル42が取り付けられることで、構造体41は形状が固定されて、構造体41に生じる振動が抑制される。
【0130】
次に、本発明の実施の形態3について説明する。図18は、実施の形態3の構造体48を示す概略側面図である。図19は、実施の形態3の構造体48の一部を拡大して示す斜視図である。実施の形態3の構造体48は、応急仮設橋や支保工として使用されるものであり、サイドフレーム2の間に、複数の梁材5が、2組上下に配置される。
【0131】
上記2組のそれぞれは、実施の形態1で示した第1,2の梁材5A,5Bが、一の方向に順次連続して配置されたものである。
【0132】
下側の組では、第1,2の梁材5A,5Bが、内側・外側フレーム9,10の下端部9b,10bに結合される第1,2先端結合軸11A,11Cに支持される。
【0133】
上側の組では、第1,2の梁材5A,5Bが、内側・外側フレーム9,10の上端部9a,10aに結合される第1,2先端結合軸11A,11Cに支持される。
【0134】
以上の構成により、内側・外側フレーム9,10が回転する際には、上側及び下側の第1,2先端結合軸11A,11Bの間隔が変化することで、各組の第1,2の梁材5A,5Bの傾きは変化する。そして、突出部材56A,56Bとの接触により、内側・外側フレーム9,10の回転が停止されたときには、各組の第1,2の梁材5A,5Bは、略直線状になる。この際、一方の組の第1,2の梁材5A,5Bは、第3先端結合軸11E上に載置される。これにより、下側の組の梁材5は、安定して直線状態に維持される。
【0135】
図19の符号49は、相対するフレーム要素4の間(サイドフレーム2の間)に配置される2つのポールを示している。これらポール49は、下側の組の梁材5上に載置されて、上端が上側の組の梁材5に接する(具体的には、第1,2の梁材5A,5Bの端部5b,5aに接する)。また、2つのポール49は、所定の間隔をあけて配置され、これらの間を人や車が通過できる。
【0136】
本実施の形態では、サイドフレーム2の間に、2つのポール49の組が、一の方向に間隔をおいて、複数の箇所に配置される。これにより、上側の組の梁材5は、安定して直線状態に維持される。なお、上側の組は、第1,2の梁材5A,5Bが押し合う抵抗力によっても、梁材5の直線状態が維持される。なお、上側の組の梁材5を支持する部材を、例えば上側の第3の先端結合軸11Eに取り付けることで、ポール49は省略され得る。
【0137】
本実施の形態の構造体48を、応急仮設橋として使用する場合には、2組の梁材により、2つの通路が上下に確保される。また、2組の梁材がそれぞれ直線状に維持されることで、2つの通路は、それぞれ通行が容易なものとなる。
【0138】
また、構造体48が支保工として使用される際には、構造体48は、一の方向が上下に向いて、各組の梁材5が直線状になるように設置される。この場合、梁材5は、直線状に連なることで、圧縮力に抗する突っ張りとして機能する。これにより、構造体48に生じる変形は小さく抑えられる。
【0139】
また、各組の梁材5がそれぞれ直線状を呈することや、突出部材56A,56Bが内側・外側フレーム9,10の回転を規制することで、先端結合軸11の間隔は維持される。これにより、構造体48は、圧縮力が作用した際にも、所定長に延びた状態が安定して維持される。
【0140】
図20は、実施の形態3の構造体48が橋桁39を支持する支保工として使用される状態を示す概略図である。
【0141】
構造体48を上記の支保工として使用する場合には、以下の手順により、構造体48は設置される。まず、フレーム要素4が連結される一の方向が、上下に向くように、構造体48を地盤J3上に固定する。次に、先端結合軸11の間隔を変化させることで、構造体48を上方に伸張させる。この伸張は、梁材5が略直線状になるまで行われる。この伸張が行われた後では、構造体48の上端に、岸から延び出させた橋桁39を連結する。
【0142】
上述のように設置された構造体48には、略直線状に連続する梁材5が、圧縮力に抗する突っ張りとして機能する。これにより、構造体48に生じる変形は小さく抑えられる。
【0143】
また、梁材5が略直線状を呈することや、突出部材56A,56B(図19)が内側・外側フレーム9,10の回転を規制することで、先端結合軸11の間隔は維持される。これにより、構造体48は、圧縮力が作用されても、所定長に延びた状態が維持される。
【0144】
なお、構造体48が支保工として使用される場合には、梁材5は、板状の部材に限らず、柱状を呈する部材によっても構成され得る。
【0145】
図21は、実施の形態3における変形例の構造体50を示す概略側面図である。本変形例の構造体50は、中央部や基端部にのみ、梁材5が配置される。この構造体50は、支保工として使用される。
【0146】
図22は、構造体50の中央部を拡大して示す斜視図である。構造体50の中央部では、相対するフレーム要素4の間に、梁材結合軸17に連結された第1,2の梁材5A,5Bが、上下に2組配置される。
【0147】
下側の組の梁材5A,5Bは、内側・外側フレーム9,10の下端部9b,10bに結合される第1,2先端結合軸11A,11Bに支持される。
【0148】
上側の組の梁材5A,5Bは、内側・外側フレーム9,10の上端部9a,9bに結合される第1,2先端結合軸11A,11Bに支持される。
【0149】
また図21に示すように、構造体50の基端部では、梁材結合軸17に連結された第1,2の梁材5A,5Bが、1組配置される。この第1,2の梁材5A,5Bは、内側・外側フレーム9,10の下端部9b,10bに結合される第1,2先端結合軸11A,11Bに支持される。
【0150】
構造体50では、内側・外側フレーム9,10の回転により、中央部及び基端部における第1,2の先端結合軸11A,11Bの間隔が変化することに応じて、各梁材5A,5Bの傾きは変化する。また、第1,2の梁材5A,5Bは、突出部材56A,56Bにより内側・外側フレーム9,10の回転が停止されたときに、略直線状になるよう長さが設定される。
【0151】
構造体50が支保工として使用される場合には、構造体50は、一の方向が上下に向いて、第1,2の梁材5A,5Bが略直線状になるよう設置される。この場合、第1,2の梁材5A,5Bが直線状を呈することや、突出部材56A,56Bが内側・外側フレーム9,10の回転を規制することで、構造体50は、所定長に維持される。
【0152】
また、梁材5の設置数が少ないことで、構造体50の製造に要するコストや手間を小さく抑えられる。なお、梁材5が設置される位置は、上記の中央部・基端部に限らず、任意に設定され得る。
【0153】
次に、本発明の実施の形態4について説明する。図23は、実施の形態4の構造体51の一部を拡大して示す斜視図である。
【0154】
実施の形態4の構造体51は、相対するフレーム要素4の2つの外側フレーム10の間に、内側フレーム9が差し込まれた状態を維持する手段を設けたものであり、この手段により、隣り合うフレーム要素4が連結される。この構造体51は、応急仮設橋や支保工として使用される。
【0155】
図24は、第1の結合部材52及び係合部材53を拡大して示す斜視図である。 図22(a)は、内側・外側フレーム9,10が回転しているときの状態を示している。図22(b)は、突出部材56A,56Bにより内側・外側フレーム9,10の回転が停止されたときの状態を示している。
【0156】
2つの外側フレーム10の間に差し込まれた2つの内側フレーム9は、これらの上端9aが、外側フレーム10の縁から上方に延び出ており、第1の結合部材52により結合される。
【0157】
第1の結合部材52は、内側・外側フレーム9,10が回転する際に、内側フレーム9と接触可能な位置に設けられる。第1の結合部材52は、内側フレーム9が外側フレーム10の長手方向に相対的に移動することで、内側フレーム9が外側フレーム10の間から外側へ抜け出ることを防止する。
【0158】
また、2つの外側フレーム10の間に内側フレーム9が差し込まれた状態では、外側フレーム10の上端10aが内側フレーム9の縁から上方に延び出ている。これら外側フレーム10の上端10aには、係合部材53が設けられる。
【0159】
係合部材53は、外側フレーム10の外側に突出した後、下方(内側フレーム9の中央側)に屈曲する形状を呈して、外側フレーム10の縁に係合する。係合部材53は、内側フレーム9が、内側フレーム9の長手方向に相対的に移動することで、内側フレーム9が外側フレーム10の間から抜け出ることを防止する。
【0160】
また、係合部材53は、内側・外側フレーム9,10の回転時に、外側フレーム10の移動をガイドする。この機能により、外側フレーム10と内側フレーム9とは、横方向の位置関係が維持されて、スムーズに回転する。
【0161】
また、相対するフレーム要素4では、2つの内側フレーム9の上端同士が、第2の結合部材54によって結合される。
【0162】
また本実施の形態では、一の方向に隣り合う2つのフレーム要素4は、一方の内側フレーム9の下端部9bと、他方の外側フレーム10の下端部10bとがピン結合される。このピン結合には、先端結合軸11が用いられ、この先端結合軸11により、相対するフレーム要素4が連結される。すなわち、先端結合軸11は、相対するフレーム要素4の2つの外側フレーム10の下端10b同士や、2つの内側フレーム9の下端9b同士を連結する。また、先端結合軸11により梁材5が支持される。
【0163】
以上の構成により、構造体51の上側では、第1の結合部材52と係合部材53とによって、隣り合う2つのフレーム要素4が連結される。構造体51の下側では、先端結合軸11により隣り合う2つのフレーム要素4が連結される。
【0164】
また、構造体51は、相対するフレーム要素4の2つの外側フレーム10と、第1の結合部材52と、先端結合軸11とが輪状に連なり、相対するフレーム要素4の2つの内側フレーム9と、第2の結合部材54と、先端結合軸11とが輪状に連なる閉断面構造を有する。
【0165】
また、第1の結合部材52・係合部材53は、内側・外側フレーム9,10を連動して回転させる機能を有している。
【0166】
すなわち、内側・外側フレーム9,10が、対頂角Tが小さくなるA方向に回転する際には、係合部材53は、これが係合する外側フレーム10を押さえ付ける。これにより、外側フレーム10も、対頂角Tが小さくなる方向に回転する。
【0167】
また、内側・外側フレーム9,10が、対頂角Tが大きくなるB方向に回転する際には、第1の結合部材52は、外側フレーム10の間に差し込まれた内側フレーム9に接触して押圧する。これにより、外側フレーム10も、対頂角Tが大きくなる方向に回転する。
【0168】
実施の形態5は、実施の形態1と同様、図6に示す伸縮機構18を、構造体51の基端にある先端結合軸11に対して設置し、螺旋棒19を回転させることで、内側・外側フレーム9,10を回転させることができる。これにより、構造体51は伸縮する。
【0169】
また、隣り合う2つの第1の結合部材52、或いは隣り合う2つの第2の結合部材54の間隔を変化させても、各フレーム要素4の内側・外側フレーム9,10は回転するので、構造体51を伸縮させることができる。
【0170】
また、内側・外側フレーム9,10の回転により、構造体51が所定長に達した際には、突出部材56A,56Bが内側・外側フレーム9,10の回転を停止させるので、上記の長さが安定して維持される。これにより、構造体51は容易に設置され得る。
【0171】
また、内側・外側フレーム9,10の回転が停止されたときに、各梁材5が直線状になるように、各梁材5の長さが設定されることで、平坦で容易に通行可能な通路が確保される。
【0172】
構造体51が支保工として使用される際には、梁材5が直線状態になることや、突出部材56A,56Bが内側・外側フレーム9,10の回転を規制することで、構造体51は、所定長に延びた状態が維持される。
【0173】
また本実施の形態によれば、隣り合う2つのフレーム要素4を連結する作業は、2つの外側フレーム10の間に、2つの内側フレーム9を差し込んだ後、これら内側フレーム9を回転させるという簡易なものとなる。これにより、構造体51は容易に組み立てられる。
【0174】
また、本実施の形態の構造体51も、構成部材が輪状に連なる閉断面構造を有するため、高い剛性を有して、外力の作用による変形が生じにくい。
【0175】
次に、本発明の実施の形態5について説明する。図25は、実施の形態5の構造体55の一部を拡大して示す斜視図である。構造体55は、梁材5や、先端結合軸11が省略されたものであって、第1,2の結合部材52,54・係合部材53により、各フレーム要素4が連結される。この構造体55は、支保工として使用される。
【0176】
各フレーム要素4において、係合部材53は、内側フレーム9の上端9a及び下端9bに設けられて、それぞれ外側フレーム10の縁に係合している。
【0177】
相対するフレーム要素4では、外側フレーム10,10における上端10a,10a同士と下端10b,10b同士とが、第1の結合部材52により結合される。また、内側フレーム9,9における上端9a,9a同士と下端9b,9b同士とが、第2の結合部材54により結合される。
【0178】
以上の結合により、構造体55は、相対するフレーム要素4の2つの外側フレーム10と、2つの第1の結合部材52とが輪状に連なり、また、相対するフレーム要素4の2つの内側フレーム9と、2つの第2の結合部材54とが輪状に連なる閉断面構造を有している。
【0179】
実施の形態5では、一の方向に隣り合う2つの第1,2の結合部材52,54の間隔を変化させることで、各内側・外側フレーム9,10を回転させて、構造体55を一の方向に伸縮することができる。
【0180】
本実施の形態によれば、軸部材による連結箇所が存在しないので、構造体55の組み立てが極めて容易である。
【0181】
また、構造体55も、構成部材が輪状に連なる閉断面構造を有することから、高い剛性を有して、外力の作用による変形が生じにくい。
【0182】
また、構造体55が支保工として使用される場合には、各フレーム要素4の突出部材56A,56Bによって、内側・外側フレーム9,10の回転が規制される。これにより、構造体55は、所定長に延びた状態が維持される。
【0183】
なお、本発明は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。
【0184】
例えば、内側・外側フレーム9,10の回転を停止させる突出部材56は、内側・外側フレーム9,10のいずれか一方に設けられてもよい。この場合、突出部材56は、内側・外側フレーム9,10の他方が回転する空間に突出するように設けられる。
【0185】
例えば、T型鋼13及びI型鋼14(図3)の設置範囲は、交差部9c,10c近傍の任意の範囲に変更可能である。図26は、T型鋼13の設置範囲が変更された内側・外側フレーム9,10を示す斜視図である。この例のように、T型鋼13は、内側・外側フレーム9,10の交差部9c,10cの両側に延びるように設けられてもよい。なお、突出部材56A,56Bが接触する範囲では、T型鋼13は省略される。
【0186】
また、I型鋼12も、T型鋼13と同様、内側・外側フレーム9,10の交差部9c,10cの両側に延びるように設けられてもよい(I型鋼12については図示を省略)。
【0187】
また、梁材5を備える構造体1,41,48,51(図2,16,19,23)は、潮位上昇や簡易堤防のための水流抑制壁として使用することができる。この場合、構造体1,41,48,51は、水の進路を横切るように配置されて、梁材5が水流を阻止する壁として機能する。このように使用される場合には、構造体1,41,48,51は、その全体を容易に伸縮できるため、迅速に水流を阻止できる。
【0188】
また、構造体1,41,48,51(図2,16,19,23)では、梁材5は予め一体とされず、構造体1,41,48,51の伸張作業が終了した後に、構造体1,41,48,51に取り付けられるようにしてもよい。この場合、梁材5は、内側・外側フレーム9,10の先端に結合される先端結合軸11や、内側・外側フレーム9,10の交差部9c,10cをピン結合する軸部材を用いて、構造体1,41,48,51に取り付けることができる。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明は、トラックなどにより災害現場に搬送される応急仮設橋、橋桁、トンネル、あるいはドーム等の支保工、さらには、潮位上昇や簡易堤防のための水流抑制壁として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0190】
1,41,48,50,51,55 構造体
2 サイドフレーム
3 床板
4,4A フレーム要素、
5 梁材
5A 第1の梁材
5B 第2の梁材
5a 第2の梁材の一端部
5b 第1の梁材の他端部
6 レール架台
7 床材
8 壁材
9 内側フレーム
9a 内側フレームの上端部
9b 内側フレームの下端部
9c 内側フレームの交差部
10 外側フレーム
10a 外側フレームの上端部
10b 外側フレームの下端部
10c 外側フレームの交差部
11 先端結合軸
11A 第1の先端結合軸
11B 第2の先端結合軸
11C 第4の先端結合軸
11D 第5の先端結合軸
11E 第3の先端結合軸
12 空洞部
13 T型鋼
13a フランジ部
13b ウエブ部
14 I型鋼
14a フランジ部
15,16 突起
15a,16a 突起の貫通孔
17,17A,17B 梁材結合軸
18 伸縮機構
19 螺旋棒
19a 一端部
19b 他端部
20 固定支持部
21 スライド部
22 板材
23 連結材
24 第1の固定手段
25,36 支持軸
26,37 係止突起
27 第1の回転部材
28 第1の回転部材の凹み
29 第2の固定手段
30 第3の固定手段
31 第2の回転部材
32 第3の回転部材
33 第2の回転部材の凹み
34 第3の回転部材の凹み
38 第4の回転部材
39 第4の回転部材の凹み
42 ターンバックル
43,44 貫通孔
49 ポール
52 第1の結合部材
53 係合部材
54 第2の結合部材
56A,56B 突出部材(回転停止部材)
60 連結材
61 踏み板
70 結合部材
560,561 側面
T 対頂角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の方向に連結される複数のフレーム要素をそれぞれ有する複数のサイドフレームが一体に並設され、前記フレーム要素が、交差部で回動可能にピン結合される2つのフレームから構成されて、各前記フレーム要素のフレームが連動して回転することで、前記サイドフレームが前記一の方向に伸縮可能である構造体であって、
各前記フレーム要素には、前記2つのフレームが交差することで生じる4つの角のうち、前記一の方向に向かい合う2つの対頂角が所定角度になったときに、前記フレームの回転を停止させる回転停止部材が設けられることを特徴とする構造体。
【請求項2】
前記回転停止部材は、各前記フレーム要素の前記2つのフレームのうち、一方と一体に形成される突出部材から構成され、
前記突出部材は、他方の前記フレームが回転する空間に突出しており、前記2つの対頂角が所定角度になったときに、前記他方のフレームに当接することを特徴とする請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記突出部材は、前記一方のフレームの長手方向に対して前記所定角度で傾斜する側面を有する物体から構成されて、前記側面が、前記他方のフレームが回転する空間に突出することを特徴とする請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記フレームには、交差部近傍の断面積を増加させるスティフナーが設けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項5】
前記スティフナーは、前記フレームの交差部近傍に固定されるT型鋼によって構成されることを特徴とする請求項4に記載の構造体。
【請求項6】
前記フレームは、中空断面部材から構成されて、
前記スティフナーは、前記フレームの交差部近傍の空洞内に固定されるI型鋼によって構成されることを特徴とする請求項4に記載の構造体。
【請求項7】
前記2つの対頂角が所定角度になった状態において、前記2つのフレームの一方における第1位置と、前記2つのフレームの他方における第2位置との間隔を維持する間隔維持手段を、さらに有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項8】
前記2つのフレームの一方では、前記第1位置に第1貫通孔が形成され、前記他方のフレームでは、前記第2位置に第2貫通孔が形成され、
前記間隔維持手段は、前記第1,2貫通孔に係止されるターンバックルから構成されることを特徴とする請求項7に記載の構造体。
【請求項9】
前記サイドフレームは、前記複数のフレーム要素が一対一で相対するように並設されて、各前記サイドフレームでは、前記一の方向に隣り合う前記フレーム要素が、前記フレームの先端部でピン結合されて、
該ピン結合に用いられる先端結合軸は、前記サイドフレームの間を延びて、相対する前記フレーム要素の前記フレームの先端部を連結することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項10】
前記サイドフレームの間には、複数の梁材が前記一の方向に連続して配置されて、
前記複数の梁材では、第1の前記先端結合軸に一端部が回動可能に軸支される第1の梁材と、該第1の梁材の他端部と一端部が突き合わされて回動可能にピン結合されるとともに、第2の前記先端結合軸に他端部が回動可能に軸支される第2の梁材とが、隣り合って配置され、
前記フレームの回転により前記第1,2の先端結合軸の間隔が変化することに応じて、前記第1,2の梁材は、前記突き合わされる端部が頂点になって傾きが変化して、
前記回転停止部材により前記フレームの回転が停止されたときには、前記第1,2の梁材は、略直線状になることを特徴とする請求項9に記載の構造体。
【請求項11】
前記回転停止部材により前記フレームの回転が停止されたときには、前記第1,2の梁材の突き合わされる端部は、前記第1,2の先端結合軸の間に位置する第3の前記先端結合軸上に載置されることを特徴とする請求項10に記載の構造体。
【請求項12】
前記第1,2の梁材の突き合わされる端部が前記第3の先端結合軸上に載置された状態を固定するための固定手段を有し、
前記固定手段は、前記第1,2の梁材の一方に形成される支持軸と、前記第1,2の梁材の他方に形成される係止突起と、一端が前記支持軸に回動可能に軸支される第1の回転部材とから構成され、
前記第1の回転部材には、係止突起の外周に対応する形状の凹みが形成されており、
前記第1,2の梁材の突き合わされる端部が前記第2の先端結合軸上に載置された状態で、前記第1の回転部材が所定位置に回転されることで、前記第1の回転部材の凹みは、前記係止突起に係合されることを特徴とする請求項11に記載の構造体。
【請求項13】
前記凹みが前記係止突起に係合された状態において、前記第1の回転部材と、前記第1,2の梁材の突き合わされる端部とは、前記第3の先端結合軸を挟み込むことを特徴とする請求項12に記載の構造体。
【請求項14】
前記第1,2の梁材の突き合わされる端部が前記第3の先端結合軸上に載置された状態を固定するための固定手段を有し、
前記第1,2の梁材の突き合わされる端部は、梁材結合軸によってピン結合され、
前記固定手段は、前記梁材結合軸に回動可能に軸支される第2,3の回転部材から構成され、
前記第2の回転部材には、前記先端結合軸の外周における一方側範囲に対応する形状の凹みが形成され、前記第3の回転部材には、前記先端結合軸の外周における他方側範囲に対応する形状の凹みが形成され、
前記第1,2の梁材の突き合わされる端部が前記第3の先端結合軸上に載置された状態で、前記第2の回転部材は、所定位置まで回転されることで、前記先端結合軸の外周における一方側範囲に係合し、前記第3の回転部材は、前記第2の回転部材と逆回りに所定位置まで回転されることで、前記先端結合軸の外周における他方側範囲に係合して、前記先端結合軸は、前記第2,3の回転部材によって、外周の略全体が挟み込まれることを特徴とする請求項11に記載の構造体。
【請求項15】
各前記サイドフレームでは、前記一の方向に隣り合う2つの前記フレーム要素が、前記フレームの上端部及び下端部において、前記先端結合軸により結合されており、
前記サイドフレームの間には、前記複数の梁材の2組が、それぞれ前記一の方向に配置されて、
前記2組の梁材のうち、一方の組の梁材は、前記フレームの下端部を結合する前記先端結合軸によって支持され、他方の組の梁材は、前記フレームの上端部を結合する前記先端結合軸によって支持されることを特徴とする請求項10に記載の構造体。
【請求項16】
前記サイドフレームの間には、前記一の方向に間隔をおいて、上下方向に延びるポールが複数配置されており、
各前記ポールは、前記2組の梁材のうち、一方の組の梁材上に載置されて、他方の組の梁材を支持することを特徴とする請求項15に記載の構造体。
【請求項17】
前記サイドフレームは、前記複数のフレーム要素が一対一で相対するように並設されて、各前記フレーム要素は、内側フレームと外側フレームとから構成され、
相対する前記フレーム要素では、2つの前記外側フレームの間に、前記一の方向に隣り合う他の前記フレーム要素の2つの内側フレームが差し込まれ、
前記2つの内側フレームの先端は、前記外側フレームの縁から延び出て、該内側フレームの先端には、前記外側フレームの外側に突出した後、前記内側フレームの中央側に屈曲する形状を呈して、前記外側フレームの縁に係合する係合部材が設けられ、
前記2つの外側フレームの先端は、前記内側フレームの縁から延び出て、第1の結合部材により結合され、
前記第1の結合部材は、前記内側フレーム及び前記外側フレームが回転する際に前記内側フレームに当接することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の構造体。
【請求項18】
前記2つの内側フレームの先端は、第2の結合部材によって結合されることを特徴とする請求項17に記載の構造体。
【請求項19】
各前記サイドフレームにおいて、前記一の方向に隣り合う2つの前記フレーム要素は、一方の前記外側フレームと、他方の前記内側フレームとが、一方側の先端部でピン結合され、
該ピン結合に用いられる前記先端結合軸は、前記サイドフレームの間を延びて、前記相対するフレーム要素の前記外側フレームの一方側の先端同士、及び前記内側フレームの一方側の先端同士を連結し、
前記第1の結合部材は、前記相対するフレーム要素の前記外側フレームの他方側の先端に結合され、
前記第2の結合部材は、前記相対するフレーム要素の前記内側フレームの他方側の先端に結合されることを特徴とする請求項18に記載の構造体。
【請求項20】
前記第1の結合部材は、前記相対するフレーム要素の前記外側フレームの両側の先端に結合され、
前記第2の結合部材は、前記相対するフレーム要素の前記内側フレームの両側の先端に結合されることを特徴とする請求項18に記載の構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2011−256586(P2011−256586A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131435(P2010−131435)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(708004670)星軽金属工業株式会社 (1)
【出願人】(391023518)社団法人日本建設機械化協会 (19)
【出願人】(509341008)
【Fターム(参考)】