説明

構造物接続用管継手

【課題】マンホールに接続された埋設管が逆勾配になるおそれがない。
【解決手段】マンホール30の壁面31に設けられた貫通孔32内に、可撓性を有する円錐台形状の筒状継手部11の一方の大径部11bが固定されており、大径部11b内に配置されたOリング14が、この筒状継手部11の内周面と埋設管20の外周面との間を水密状態に保持するように埋設管20に嵌合されている。筒状継手部11の内部には埋設管20の端部が挿通しており、筒状継手部11の他方の端部の小径部11aは、埋設管20の端部に嵌合されて固定されている。筒状継手部11の大径部11b内には、マンホール30の内部から離れた位置でOリング14に隣接して、逆勾配防止リング15が埋設管20の上部に嵌合されており、マンホール30内部に近接した位置でOリング14に隣接して、逆勾配防止リング16が埋設管20の下部に嵌合されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マンホール等の構造物に対して、埋設管等の管を接続するために使用される構造物接続用管継手に関する。
【0002】
【従来の技術】下水管等の埋設管を、地中に埋設されたマンホールに接続する場合、施工後におけるマンホールに対する埋設管の不等沈下、地震時の沈下等に対応するために、例えば、特開昭63−219980号公報に開示されているように、マンホールに対する埋設管の沈下を吸収するような管継手が使用される。
【0003】このような管継手の一例を図5に示す。この管継手40は、可撓性を有する円錐台形状の筒状継手部41を有しており、この筒状継手部41内に埋設管20の端部が挿通している。筒状継手部41の一方の端部は、他方の端部よりも小径になった小径部41aになっており、外バンド42が巻き付けられて、埋設管20の外周面に固定されている。
【0004】筒状継手部41の他方の端部は、小径部41aよりも大径の大径部41bになっており、マンホール30の壁面31に設けられた貫通孔32内に嵌合されている。大径部41b内には、内バンド43が嵌合されており、この内バンド43によって大径部41bが、貫通孔32内に固定されている。大径部41bの内部には、Oリング44が嵌合されており、筒状継手部41内を挿通する埋設管20の端部外周面に嵌合されて、その外周面に圧接されるとともに、筒状継手部41の大径部41b内周面に圧接されている。これにより、Oリング44は、筒状継手部41と埋設管20との間を水密状態に保持している。
【0005】このような管継手40では、マンホール30に対して埋設管20が沈下して傾斜した状態になっても、可撓性を有する筒状継手部41によって、マンホール30との接続状態が保持される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような管継手40では、マンホール30に対して埋設管20が、マンホール30側が低くなるような逆勾配の傾斜状態になっても、管継手40は、マンホール30と埋設管20との接続状態を保持し得ることができる。このように、マンホール30側が低くなった逆勾配の傾斜状態になると、マンホール30内の下水等は、埋設管20によって排出することができなくなり、埋設管20は、所定の機能を発揮しなくなるという問題がある。
【0007】本発明は、このような問題を解決するものであり、その目的は、マンホール等の構造物に対して、管が傾斜状態になっても、接続状態を保持することができ、しかも、管が逆勾配に傾斜するおそれのない構造物接続用管継手を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の構造物接続用管継手は、構造物と管とを接続するために使用される構造物接続用管継手であって、構造物の壁面に設けられた貫通孔内に一方の端部が固定されており、接続される管の端部が挿通するように嵌合されて、他方の端部がその管の外周面に固定された可撓性を有する筒状継手部と、その筒状継手部の内周面と管の外周面との間を水密状態に保持するように、構造物の貫通孔内に位置する筒状継手部の端部内に嵌合されたOリングと、筒状継手部内におけるこのOリングよりも構造物の内部から離れた位置にて、管の上部に嵌合された逆勾配防止リングと、筒状継手部内における前記Oリングよりも構造物の内部に近接した位置にて、管の下部に嵌合された逆勾配防止リングと、を具備することを特徴とする。
【0009】逆勾配防止リングは、一方がOリングよりも構造物の内部から離れた位置にて、管の下部に嵌合され、他方がOリングよりも構造物の内部に近接した位置にて、管の上部に嵌合されていてもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】図1は、本発明の構造物接続用管継手によって埋設管20をマンホール30に接続した状態を示す縦断面図、図2は図1におけるA−A線における断面図である。この構造物接続用管継手10は、埋設管20の端部に外嵌される筒状継手部11を有している。この筒状継手部11は、可撓性を有するゴム等によって円錐台状に構成されており、その内部を、埋設管20が挿通している。筒状継手部11の一方の端部には、埋設管20の外周面に密着される小径部11aが設けられており、埋設管20の他方の端部には、マンホール30の壁面31に設けられた貫通孔32内に密着状態で嵌合される大径部11b設けられている。小径部11aおよび大径部11bは、それぞれ、内径および外径が一定になった直管状になっている。
【0012】小径部11aの内周面は、埋設管20の外周面に対して固定されるように、鋸刃状になっている。そして、小径部11aには、外部バンド12が巻き付けられており、この外部バンド12によって、小径部11aの鋸刃状の内周面が埋設管20の外周面に圧接されている。大径部11bの外周面も、マンホール30の貫通孔32内に対して固定されるように、鋸刃状になっている。そして、その大径部11bの内周面に、大径部11bを拡径状態に保持する内バンド13が嵌合されており、この内バンド13によって、大径部11bの鋸刃状の外周面が、マンホール30の貫通孔32内周面に圧接されている。
【0013】内バンド13内には、内部が中空になったOリング14が嵌合されている。このOリング14は、筒状継手部11内を挿通する埋設管20の端部外周面と、内バンド13の内周面とに、それぞれ水密状態となるように圧接されており、両者の間を水密状態に保持している。
【0014】筒状継手部11の大径部11b内には、図2R>2および図3に示すように、Oリング14に対してマンホール30の内部の遠方側に隣接して、筒状継手部11内を挿通する埋設管20の上部に、1/4周にわたって嵌合される円弧状になった逆勾配防止リング15が配置されている。また、筒状継手部11の大径部11b内には、Oリング14に対してマンホール30の内部側に隣接して、筒状継手部11内を挿通する埋設管20の下部に1/4周にわたって嵌合される円弧状になった逆勾配防止リング16が嵌合されている。各逆勾配防止リング15および16は、筒状継手部11の大径部11b内周面、および、埋設管20の外周面に、それぞれ圧接された状態になっている。
【0015】各逆勾配防止リング15および16は、金属、プラスチック等の材料によって構成されるようになっており、マンホール30および埋設管20の材質によって、適当な材料が選択される。
【0016】このような構成の構造物接続用管継手10は、マンホール30の壁面31に設けられた貫通孔32内に、予め、筒状継手部11の大径部11bが嵌合されて、内バンド13によって、その貫通孔32内に固定された状態になっている。そして、筒状継手部11の小径部11aから埋設管20の端部が挿入されて、筒状継手部11の全長にわたって挿通される。そして、マンホール30内から、筒状継手部11の大径部11bと埋設管20との間に、円弧状になった逆勾配防止リング15が挿入されて、埋設管20の上部に嵌合される。次に、Oリング14が筒状継手部11の大径部11bと埋設管20との間に挿入されて、筒状継手部11の大径部11b内周面と埋設管20の外周面との間を水密状態に保持する。その後、マンホール30内から、筒状継手部11の大径部11bと埋設管20との間に、円弧状の逆勾配防止リング16が挿入されて、埋設管20の下部に嵌合される。
【0017】このような状態になると、埋設管20に嵌合された筒状継手部11の小径部11aに外バンド12が巻き付けられて締め付けられる。これにより、マンホール30と埋設管20とが、構造物用管継手10によって接続された状態になる。
【0018】マンホール30に接続された埋設管20には、マンホール30の内部に対して遠方側の上部に逆勾配防止リング15と嵌合されているとともに、マンホール30の内部に近接した下部に逆勾配防止リング16が嵌合されている。埋設管20の上部に嵌合された逆勾配防止リング15は、埋設管20を下方にのみ移動可能に支持するとともに、埋設管20の下部に嵌合された逆勾配防止リング16は、埋設管20を上方にのみ移動可能に支持している。従って、埋設管20は、各逆勾配防止リング15および16が嵌合されているにもかかわらず、マンホールから離れるにつれて順次レベルが低くなるように傾斜した状態とされる。これに対して、マンホール30から離れるにつれてレベルが高くなるように傾斜することは、各逆勾配防止リング15および16によって防止される。
【0019】各逆勾配防止リング15および16は、マンホール30における内径が900mm、マンホール30の壁面31の肉厚が90mm、マンホール30の壁面31に形成される貫通孔32の内径が254mm、埋設管20の外径が200mmの場合には、その内側縁の半径は、埋設管20の外径に等しくなるように、100mmとされる。また、各逆勾配防止リング15および16の幅寸法は、マンホール30の厚さの1/5程度、すなわち、27mm程度とされ、各逆勾配防止リング15および16の外側縁の半径は、貫通孔31の半径に等しくされる。
【0020】なお、逆勾配防止リング15および16は、図4(a)および(b)に示すように、可撓性を有する一対の連結部材17によって連結するようにしてもよい。この場合には、各連結部材17を、Oリング14の内部を通過させて、各逆勾配防止リング15および16を、それぞれ、Oリング14を挟んで上部および下部に配置することにより、Oリング14と一体化して、筒状継手部11の大径部11b内に挿入し、一方の逆勾配防止リング15を埋設管20の上部に嵌合させるとともに、Oリング14を埋設管20に嵌合させ、さらに、他方の逆勾配防止リング16を埋設管20の下部に嵌合させればよい。
【0021】また、各逆勾配防止リング15および16は、埋設管20と接する内周面、あるいは、筒状継手部11に接する外周面に、それぞれギザギザになった係止部を設けるようにしてもよい。
【0022】さらに、 一方の逆勾配防止リング15は、Oリング14よりもマンホール30の内部から離れた位置にて、埋設管20の下部に嵌合され、他方の逆勾配防止リング16が、Oリング14よりもマンホール30の内部に近接した位置にて、埋設管20の上部に嵌合されていてもよい。この場合には、マンホール30から離れるにつれてレベルが高くなるように埋設管20が傾斜することが、各逆勾配防止リング15および16によって防止される。
【0023】
【発明の効果】本発明の構造物接続用管継手は、このように、筒状継手部内に配置された一対の逆勾配防止用リングが管に嵌合するようになっているために、マンホール等の構造物に対して、管は、逆勾配に傾斜した状態になるおそれがなく、マンホールから離れるにつれてレベルが低くなるようにのみ傾斜し得るようになっている。従って、地震による沈下、不等沈下等によっても、所定の状態にのみ傾斜されるために、管は、構造物からの排水機能を確実に発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の構造物接続用管継手の実施の形態の一例を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A線における断面図である。
【図3】その構造物接続用管継手に使用される逆勾配防止リングの正面図である。
【図4】(a)は、その構造物接続用管継手に使用される逆勾配防止リングの他の例を示す正面図、(b)はその側面図である。
【図5】従来の構造物接続用管継手の一例を示す一部破断側面図である。
【符号の説明】
10 構造物接続用管継手
11 筒状継手部
11a 小径部
11b 大径部
12 外バンド
13 内バンド
14 Oリング
15 逆勾配防止リング
16 逆勾配防止リング
17 連結部材
20 埋設管
30 マンホール
31 壁面
32 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 構造物と管とを接続するために使用される構造物接続用管継手であって、構造物の壁面に設けられた貫通孔内に一方の端部が固定されており、接続される管の端部が挿通するように嵌合されて、他方の端部がその管の外周面に固定された可撓性を有する筒状継手部と、その筒状継手部の内周面と管の外周面との間を水密状態に保持するように、構造物の貫通孔内に位置する筒状継手部の端部内に嵌合されたOリングと、筒状継手部内におけるこのOリングよりも構造物の内部から離れた位置にて、管の上部に嵌合された逆勾配防止リングと、筒状継手部内における前記Oリングよりも構造物の内部に近接した位置にて、管の下部に嵌合された逆勾配防止リングと、を具備することを特徴とする構造物接続用管継手。
【請求項2】 構造物と管とを接続するために使用される構造物接続用管継手であって、構造物の壁面に設けられた貫通孔内に一方の端部が固定されており、接続される管の端部が挿通するように嵌合されて、他方の端部がその管の外周面に固定された可撓性を有する筒状継手部と、その筒状継手部の内周面と管の外周面との間を水密状態に保持するように、構造物の貫通孔内に位置する筒状継手部の端部内に嵌合されたOリングと、筒状継手部内におけるこのOリングよりも構造物の内部から離れた位置にて、管の下部に嵌合された逆勾配防止リングと、筒状継手部内における前記Oリングよりも構造物の内部に近接した位置にて、管の上部に嵌合された逆勾配防止リングと、を具備することを特徴とする構造物接続用管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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