説明

構造物

【課題】採光面積を確保しつつ、設備機器類の更新やレイアウト変更に柔軟に対応できる構造物を提供する。
【解決手段】建物10は、両側の側面29の対向する位置に壁柱12を有し、壁柱12は、柱幅寸法aより側面29と直交する方向の柱成寸法bの方が長い。壁柱12は側面29から外側に突き出して配置され、建物10の内部空間36側には入り込んでいない。隣り合う壁柱12で挟まれた空間が設備シャフト24とされ、壁柱12は設備シャフト24の側壁を兼ねている。設備シャフト24は、区画壁22で内部空間36と区画されている。設備シャフト24は壁柱12の間に1つ置きに設けられ、設備シャフト24が設けられていない壁柱12の間には壁梁30が設けられ、上下に重ねられた壁梁30の間が窓とされている。建物10の内部空間36を挟んで向かい合う壁柱12の間には大梁20が架け渡されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
設備機器の配置や設備配管類の引き回しは、部屋のレイアウト、部屋の天井高さ、及び階高等を決めるときの要因の1つであり、各階に分配される設備配管類が収められる配管シャフトの位置や構造は、設備機器の配置や設備配管類の引き回しに影響を及ぼし、構造物の設計上重要である。
【0003】
特に、研究施設、医療施設、病院等のように、多くの設備機器を使用し、それらの更新やレイアウト変更が頻繁に発生する構造物では、建築計画時の設備機器や設備配管類の納まりに加え、稼動後の設備機器類の更新やレイアウト変更に柔軟に対応できることが重要となる。
【0004】
これは、多くの場合、設備機器類の更新やレイアウト変更は、単に設備機器類の交換や設置場所の移動に留まらず、設備機器類に付属する設備配管類の引き回し位置の変更や、それに伴う構造物の躯体の改築等も必要となるためである。
【0005】
このため、配管シャフトを外壁と廊下の2ヶ所に分割し、設備機器や設備配管類を部屋からなくし、二重天井を省略して、低階高で天井高を高くした建物が提案されている(特許文献1)。
【0006】
即ち、特許文献1の建物は、図10(A)(B)に示すように、廊下88を挟んで両側に教室(室内)84を配置し(図示は片側のみ。)、廊下88の天井裏空間に、室内負荷処理用の空調機90、空調された空気を供給する空調ダクト91、及び冷温水配管を設置している。また、大梁92に貫通孔を設け、教室84側に吹出口94を取付けている。そして、廊下88の天井裏から貫通孔に空調ダクト91を挿入し、吹出口94と接続している。
【0007】
また、外周部(外壁)の柱82の間の梁を壁梁93とし、窓85の中央にダクトシャフト80を設けている。ダクトシャフト80の内部にはダクト87が納められ、ダクトシャフト80と教室84を区画している壁面には吹出口86が設けられている。
これにより、建物の階高を低く抑えたまま、教室84の天井高が高くできる。
【0008】
このとき、廊下の天井裏空間に配置した設備配管類を、全て外壁側の配管シャフトに収めることができれば、設備機器類の更新やレイアウト変更への対応は容易となる。しかし、ダクトシャフト80は、柱82の間に形成された窓85の中央部にあるため、ダクトシャフト80を大きくすると窓85の大部分が塞がれ、室内に必要な採光面積が確保できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3752657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事実に鑑み、採光面積を確保しつつ、設備機器類の更新やレイアウト変更に柔軟に対応できる構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明に係る構造物は、構造物の両側面に所定の間隔で設けられた壁柱と、前記構造物の内部方向であり前記壁柱の間に架設された梁と、を備えた構造物であって、前記壁柱で設備シャフトの両側面を構成し、前記構造物の内部と前記設備シャフトの内部を区画壁で区画すると共に、前記設備シャフトが設けられていない前記壁柱の間には、上下に所定の間隔で外壁が設けられ、前記外壁の間が窓とされていることを特徴としている。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、設備シャフトの両側面が壁柱で構成されている。そして、設備シャフトの内部と構造物の内部が区画壁で区画され、設備シャフトから構造物の内部への設備配管類の取り込みは区画壁を介してなされる。また、窓が、上下方向に配置された上側の外壁の下端部と、下側の外壁の上端部との間に設けられている。
【0013】
このように、設備シャフトを壁柱で構成することで、構造物の内部の設備シャフトをなくすことができる。
これにより、構造物の内部の平面計画の自由度が高くなり、構造物を有効に活用できる。
【0014】
また、設備シャフトと窓が1つ置きに設けられているため、設備配管類の取出し位置の自由度が増し、構造物の内部での設備配管類の引き回しが容易となる。
また、壁柱の間隔に対応させて部屋を配置すれば、全ての部屋と設備シャフトを対応させることができ、大部屋、小部屋を問わず、容易に部屋毎の給排気、排水計画等に対応できる。
【0015】
更に、設備機器類の変更やレイアウト変更時にも、設備シャフトを利用することにより設備配管類の引き回しが容易となる。このとき、構造物の内部に入居者がいても作業が可能となり、設備機器類の変更やレイアウト変更時に柔軟に対応できる。
【0016】
区画壁は、外壁によって強度が確保されているので、開口部の形成に制約が生じない。また、窓が設備シャフトと1つ置きに設けられているため、採光面積が確保される。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構造物において、前記壁柱は、前記構造物の内部に入り込んでおらず、前記構造物の内部には、前記梁を支持する柱が設けられていないことを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、壁柱は構造物の内部に入り込んでおらず、更に、梁を支持する柱が構造物の内部に設けられていない。
【0019】
即ち、無柱空間であり、かつ柱が構造物の内部に入り込まない空間が形成される。これにより、構造物の内部空間のレイアウトの自由度が高くなり、部屋のプラン変更やレイアウト変更に柔軟に対応できる。無柱空間には、大部屋から小部屋まで、目的に応じて任意に間仕切りができる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構造物において、前記梁は、H型鋼の側面にコンクリートが充填されたコンクリート充填梁であり、前記コンクリート充填梁には小梁が設けられていないことを特徴としている。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、梁が、H型鋼の側面にコンクリートが充填されたコンクリート充填梁で構成されている。
これにより、梁の剛性が上がり、構造物の微振動が抑制される。
【0022】
また、梁を無小梁で計画することで、梁に設けられたスラブの上部、及びスラブの下部での設備配管類の引き回しが自由となる。これにより、設備機器類の更新やレイアウト変更に容易に対応できる。
【0023】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物において、前記外壁は、鉛直断面がコ字状とされ両端面が前記壁柱の側面と接合された壁梁であることを特徴としている。
請求項4に記載の発明によれば、壁梁の鉛直断面がコ字状とされ、壁梁の両端面は壁柱の側面と接合されている。
【0024】
これにより、壁梁と壁柱の接合面積を広く確保でき、地震時における壁柱のねじれ変形を拘束し、外壁に要求される強度を確保できる。また、コ字状とされ外に突き出した部分は、窓の上側を庇、窓の下側を窓台として利用できる。
【0025】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の構造物において、前記区画壁には、前記壁柱の間に架け渡す外壁梁が設けられていないことを特徴としている。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、この区画壁には、壁柱間に架け渡す梁が架けられていない。これにより、床上及び床下の配管を貫通させるための孔加工が容易となり、構造物の内部への設備配管類の取り込みが容易となる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の構造物において、前記梁と直交する方向の前記構造物の妻部に設けられ、前記梁方向の地震力に耐える第1耐震壁と、前記第1耐震壁に挟まれ、共用機能を集約したコア部と、を有することを特徴としている。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、共用機能を集約したコア部が構造物の妻部に設けられ、梁と直交する方向のコア部の壁が、梁方向の地震力に耐える第1耐震壁で構成されている。
これにより、構造物の両側の妻部にコア部が確保される。そして、コア部の壁とされた第1耐震壁で構造物の梁方向が耐震化される。
【0029】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の構造物において、前記梁と直交する方向の前記構造物の妻部に、前記梁と直交する方向の地震力に耐える第2耐震壁を設け、前記コア部が前記第2耐震壁で挟まれていることを特徴としている。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、梁と直交する方向の地震力に耐える第2耐震壁が、梁と直交する方向の構造物の妻部に設けられ、第2耐震壁がコア部の壁とされている。
この第2耐震壁により、構造物の梁と直交する方向が耐震化される。
【0031】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の構造物において、前記第2耐震壁は、前記外壁の最上部に前記梁と直交する方向へ架け渡された梁部と、前記梁部の両端部を支持する柱部と、を備え、正面視が門型形状とされた門型耐震壁であることを特徴としている。
【0032】
請求項8に記載の発明によれば、第2耐震壁の正面視が門型形状とされている。即ち、梁部が、外壁の最上部に梁と直交する方向へ架け渡され、柱部が梁部の両端部を支持している。
【0033】
これにより、第2耐震壁が、敷地の制約等から構造物の桁行方向に十分な幅寸法を確保できなくても、桁行方向の耐震強度を確保できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、上記構成としてあるので、採光面積を確保しつつ、設備の更新やレイアウト変更に柔軟に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る建物の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る区画壁の断面を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る建物の外観を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る壁梁の断面を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る壁柱と壁梁の接合構造を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る大梁と壁柱の接続部を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る建物の耐震構造を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る建物のレイアウト例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る建物の門型耐震壁の構造を示す図である。
【図10】従来例の建物の設備シャフトの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、第1の実施の形態に係る建物10は、両側の側面29の対向する位置に、所定の間隔で連続して並べられた壁柱12を有している。
【0037】
壁柱12は、鉄筋コンクリートで形成され、側面29と平行な方向の柱幅寸法aより、側面29と直交する方向の柱成寸法bの方が長い。壁柱12は側面29から外側に突き出る位置に配置され、建物10の内部空間36側には入り込んでいない。
【0038】
側面29より外であり、隣り合う壁柱12で挟まれた空間が設備シャフト24とされ、壁柱12は設備シャフト24の両側の側壁を兼ねている。
【0039】
設備シャフト24は、建物10の内部空間36に分配される設備配管類25が収められる空間であり、側面29の位置において、区画壁22で内部空間36と区画されている。また、設備シャフト24の外側にはガラリ28が設けられている。
【0040】
図2のP−P線断面に示すように、区画壁22は鉄筋コンクリートで形成され、各階の内部空間36と設備シャフト24を区画している。このとき、区画壁22には、区画壁22と平行な方向に設けられ、壁柱12の間を架け渡す梁は設けられていない。
これにより、区画壁22の加工が容易となり、天井裏空間37及び床下空間73に設備配管類25を取り込むための貫通孔を容易に開けることがきる。
【0041】
また、各階の区画壁22の上部には、天井裏空間37に配置された排気ダクト74と接続するためのガラリ38が設けられている。このガラリ38を利用すれば、貫通孔の加工を必要とせず、設備配管類25の取り込みができる。
【0042】
ガラリ38の上部には、区画壁22と一体に鉄筋コンクリートで形成され、外に突き出した庇部26が設けられている。これにより、風雨や直射日光からガラリ38を保護している。また、庇部26の両端面は、壁柱12の側面と接合されている。これにより、区画壁22の強度が確保される。
【0043】
また、図3の外観図に示すように、設備シャフト24の外側にはガラリ28が設けられ、視界を遮断している。
【0044】
ガラリ28は、上下方向に隙間を開け、横方向に並べられたルーバーで構成され、設備シャフト24の通気性が確保されている。ルーバーには再生木が使用され、壁柱12の間の全幅に渡り、かつ、1階から最上階までの範囲に設けられている。これにより、設備シャフト24を風雨や直射日光から保護すると共に、外部からの視界を遮り、建物10の見栄えを良くしている。
【0045】
このように、建物10の側面29の外側に設備シャフト24を設け、壁柱12で設備シャフト24の側壁を構成することで、建物10の内部空間36から設備シャフト24をなくすことができる。また、区画壁22を無梁構造とすることで、設備シャフト24から建物10の内部空間36への設備配管類25の取り込みを容易とすることができる。
【0046】
更に、図1に示すように、壁柱12の間の1つ置きに設備シャフト24が設けられている。これにより、設備配管類25の取出し位置の自由度が増し、建物10の内部空間36での設備配管類25の引き回しが容易となる。この結果、建築時のみでなく、設備機器類の変更やレイアウト変更時にも、設備シャフト24を利用することにより設備配管類25の引き回しが容易となる。
【0047】
この結果、例えば、建物10の内部空間36に入居者が居ても作業が可能となり、設備機器類の変更やレイアウト変更時に柔軟に対応できる。
また、設備シャフト24が設けられていない壁柱12の間には、壁梁30が設けられている。即ち、壁柱12の間には、設備シャフト24と壁梁30が交互に設けられている。
【0048】
壁梁30は、図4のQ−Q線断面に示すように、鉄筋コンクリートで鉛直断面がコ字状に形成され、壁梁30の中央部の鉛直部30Cが外壁とされている。外壁とされた鉛直部30Cは、床スラブ70と接合され、床スラブ70の上側が腰壁30C1とされ、床スラブ70の下側が垂壁30C2とされている。また、壁梁30の上下の端部は、外に向けて突き出され、上階の窓台30U及び下階の庇30Dとされている。
【0049】
壁梁30は、上下方向に所定の空間を開けて複数個が配置され、上側の壁梁30の下端30Dと下側の壁梁30の上端30Uの間が窓40とされている。
このように、設備シャフト24と1つ置きに設けられた窓40で、採光面積が確保されている。
【0050】
壁梁30の両端面は、図5に示すように、壁柱12の側面と接合され、接合部は継手15で補強されている。これにより、壁柱12のねじれが抑制される。
【0051】
なお、壁柱12の内部には、建物10の内部空間36側に偏らせてH型鋼14が設けられている。これにより、建物10の外側はコンクリートの仕上げ面となり、美観が保たれる。そして、壁柱12の内部空間36側の端面には、H型鋼14のフランジ14Fを露出させることができる。
【0052】
また、図1に示すように、建物10の内部空間36を挟んで向かい合う壁柱12の間には、大梁20が架け渡されている。
【0053】
図6に示すように、大梁20はH型鋼30とされ、大梁20と壁柱12の接合は、露出させた壁柱12のH型鋼14のフランジ14Fに、大梁20のH型鋼30の端部を突き合わせて溶接で接合している。
【0054】
ここに、大梁20は、H型鋼30のウェブの両側面にコンクリート34が充填されたコンクリート充填梁である。これにより、大梁20の剛性を上げることができ、大梁20に伝播された微振動が抑制される。
【0055】
また、大梁20は、建物10の内部空間36においては柱で支持されていない。このように、内部空間36を無柱空間とすることにより、内部空間36の平面計画の自由度が高くなり、内部空間36を有効に活用できる。
【0056】
また、大梁20には小梁が設けられていない。このように、大梁20を無小梁で計画することにより、大梁20に支持されるスラブ70の上部、及びスラブ70の下部での設備配管類の引き回しが自由となる。この結果、設備機器類の更新やレイアウト変更に容易に対応できる。
【0057】
次に、建物10の耐震構造について説明する。
図7の建物10の全体構造図に示すように、大梁20と直交する方向の建物10の妻部には、共用機能を集約したコアA部46とコアB部48が、無柱空間とされた内部空間36を挟んで設けられている。
【0058】
コアA部46の、梁20と平行な方向の壁42は、耐震性能を備えた第1耐震壁とされている。また、コアB部48の、梁20と平行な方向の壁44も、耐震性能を備えた第1耐震壁とされている。そして、第1耐震壁42、44と各階の床スラブ70が接合されている。
【0059】
このように、建物10を、第1耐震壁42、44で妻側から挟む構成とすることで、内部空間36が無柱空間であるにも関わらず、梁20と平行な方向の地震力に耐えることができる。
【0060】
一方、コアA部46の、大梁20と直交する方向の壁50は、耐震性能を備えた第2耐震壁とされている。また、コアB部48の、梁20と直交する方向の壁52も、耐震性能を備えた第2耐震壁52とされている。そして、第2耐震壁50、52と各階の床スラブ70が接合されている。
【0061】
これにより、第2耐震壁50、52と外壁30により、内部空間36が無柱空間であるにも関わらず、梁20と直交する方向の地震力に耐えることができる。
【0062】
次に、建物10の内部空間36のレイアウトの例について説明する。
図8に示すように、内部空間36の中央に廊下55が設けられ、コアA部46とコアB部48をつないでいる。廊下55の両側に居室が配置されており、大きな部屋56から小さな部屋58までが、目的に応じて間取りされている。
【0063】
このとき、壁柱12の間隔に対応させてそれぞれの部屋を配置すれば、全ての部屋と設備シャフト24を対応させることができる。この結果、大部屋56、小部屋58を問わず、設備の更新やレイアウト変更に柔軟に対応できる。ここに、配管シャフト24の内部空間36側には、点検用ドア62が設けられている。これにより、日常の保守、サービスが容易に行える。
【0064】
なお、廊下55を内部空間36の中央に配置した例について説明したが、廊下55を窓側に設けてもよい。また、内部空間36を区切らずに、1つの大きな部屋とすることもできる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、採光面積を確保しつつ、設備の更新やレイアウト変更に柔軟に対応できる建物10が提供できる。
【0065】
(第2の実施の形態)
図9に示すように、第2の実施の形態に係る建物60は、大梁20と直交する方向に設けられた、2つの門型耐震壁54を有している。
【0066】
門型耐震壁54は鉄筋コンクリートで形成され、建物60の向かい合う側面29を囲む構成とされている。梁部54Hは、側面29の最上部に、大梁20と直交する方向に架け渡されている。また、柱部54Vは、所定の間隔で連続して並べられた壁柱12の外部に、壁柱12を挟んで設けられ、上部で梁部54Hの両端部と接合されている。
これにより、柱部54Vが梁部54Hを支持する門型形状とされている。
他は、第1の実施の形態と同じであり、説明は省略する。
【0067】
門型形状とされた門型耐震壁54は、柱部54Vの上部と梁部54Hが接合されているため、大梁20と直交する方向の耐震強度が向上する。これにより、例えば、柱部54Vが、敷地の制約等から、建物60の大梁20と直交する方向に十分な幅寸法Wが確保できなくても、門型耐震壁54とすることで、必要な耐震強度が確保できる。
【符号の説明】
【0068】
10 建物(構造物)
12 壁柱
20 大梁(梁)
22 区画壁
24 設備シャフト
30 壁梁
32 H型鋼
34 コンクリート
40 窓
42 第1耐震壁
44 第1耐震壁
46 コアA部
48 コアB部
50 第2耐震壁
52 第2耐震壁
54 門型耐震壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の両側面に所定の間隔で設けられた壁柱と、前記構造物の内部方向であり前記壁柱の間に架設された梁と、を備えた構造物であって、
前記壁柱で設備シャフトの両側面を構成し、前記構造物の内部と前記設備シャフトの内部を区画壁で区画すると共に、
前記設備シャフトが設けられていない前記壁柱の間には、上下に所定の間隔で外壁が設けられ、前記外壁の間が窓とされている構造物。
【請求項2】
前記壁柱は、前記構造物の内部に入り込んでおらず、前記構造物の内部には、前記梁を支持する柱が設けられていない請求項1に記載の構造物。
【請求項3】
前記梁は、H型鋼の側面にコンクリートが充填されたコンクリート充填梁であり、前記コンクリート充填梁には小梁が設けられていない請求項1又は2に記載の構造物。
【請求項4】
前記外壁は、鉛直断面がコ字状とされ、両端面が前記壁柱の側面と接合された壁梁である請求項1〜3のいずれか1項に記載の構造物。
【請求項5】
前記区画壁には、前記構造物の側面に沿って前記壁柱の間に架け渡す梁が設けられていない請求項1〜4のいずれか1項に記載の構造物。
【請求項6】
前記梁と直交する方向の前記構造物の妻部に設けられ、前記梁方向の地震力に耐える第1耐震壁と、
前記第1耐震壁に挟まれ、共用機能を集約したコア部と、
を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の構造物。
【請求項7】
前記梁と直交する方向の前記構造物の妻部に、前記梁と直交する方向の地震力に耐える第2耐震壁を設け、前記コア部が前記第2耐震壁で挟まれている請求項1〜6のいずれか1項に記載の構造物。
【請求項8】
前記第2耐震壁は、前記外壁の最上部に前記梁と直交する方向へ架け渡された梁部と、
前記梁部の両端部を支持する柱部と、
を備え、正面視が門型形状とされた門型耐震壁である請求項7に記載の構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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