説明

構造部材内の耐火部材の位置特定方法

【課題】扉、サッシ等に代表される構造部材の外部から、前記構造部材に耐火部材が含まれているかどうかを簡単に判別することのできる方法を提供すること。
【解決手段】探知手段により存在の有無を確認することができる被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材を少なくとも有する構造部材に対し、前記不透明部材の外部から、前記探知手段を用いて、前記構造部材内の前記耐火部材の位置を特定するステップを有することを特徴とする、構造部材内の耐火部材の位置特定方法。
前記被探知成分としては、磁性、導電性、分極性、電磁波反射性および放射性からなる群より選ばれる少なくとも一つの性質を示すものが使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は構造部材内の耐火部材の位置特定方法に関し、より詳しくは住宅等の構造物に設置される構造部材内の耐火部材の位置特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅等の構造物の開口部等に設置される建築部材として、扉、サッシ等が使用されている。
住宅等の構造物の内部または外部で火災が発生した場合にはこの火災による延焼を防ぐ必要がある。火災の炎等が扉、サッシ等の建築部材を貫通して延焼することがないように、扉、サッシ等の建築部材の耐火性を高めることが重要な課題となる。
この課題に関連して、サッシの耐火性を高める技術が提案されている。
具体的には、合成樹脂からなる枠材と耐火性のある板材とを備えたサッシについて、そのサッシに使用される枠材の長手方向に複数の空洞が設けられていて、この空洞に熱膨張性耐火部材と木質部材とが挿入されている防火性樹脂サッシが提案されている(特許文献1)。
この防火性樹脂サッシは枠材の長手方向に熱膨張性耐火部材が挿入されているため、合成樹脂からなる枠材が溶融、焼失した場合でも熱膨張性耐火部材による熱膨張残渣が火災の炎や熱を遮断する。これによりサッシの耐火性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−9305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記に説明したサッシの耐火性を高める従来技術の場合、サッシの内部の空洞に熱膨張性耐火部材が実際に挿入されているかどうかの点については防火性樹脂サッシを外部から観察しただけでは分からない場合が多い。
またサッシ内部の空洞に熱膨張性耐火部材が実際に挿入されている場合であっても、設計上要求される位置に正確に熱膨張性耐火部材が挿入されているかどうかについても外部から観察しただけでは分からない場合が多い。
サッシの内部の空洞に熱膨張性耐火部材が実際に挿入されているかどうか、さらに設計上要求される位置に正確に熱膨張性耐火部材が挿入されているかどうかを確認するためにはサッシを分解して内部構造を調べる必要があった。
【0005】
また調べた結果、サッシに使用される枠材の空洞内部に熱膨張性耐火部材が事前に挿入されていないか、または熱膨張性耐火部材の設置が不完全の場合には、改めてサッシに使用される枠材の空洞内部に後から熱膨張性耐火部材を挿入する必要がある。
しかしサッシに使用される枠材の内部の空洞は、通常は外部からは見えない位置にあるから、前記枠材の空洞内部に熱膨張性耐火部材を設置する場合には、サッシを住宅等の構造物の開口部から取り外して前記枠材を分解する必要があった。
【0006】
本発明の第一の目的は、扉、サッシ等に代表される構造部材の外部から、前記構造部材に耐火部材が含まれているかどうかを簡単に判別することのできる方法を提供することにある。
また本発明の第二の目的は、構造部材の外部から前記構造部材に含まれる耐火部材の位置を簡単に特定することのできる構造部材を提供することにある。
さらに本発明の第三の目的は、前記構造部材に耐火部材が含まれているかどうかを簡単に判別でき、前記耐火部材の位置を外部から簡単に判別することのできる耐火部材を与える耐火樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、探知手段により存在の有無を確認することができる被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材を有する構造部材に対し、前記構造部材の外部から、探知手段を用いて、前記構造部材内の前記耐火部材の位置を特定するステップを有する耐火部材の位置特定方法が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、
[1]探知手段により存在の有無を確認することができる被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材を少なくとも有する構造部材に対し、
前記構造部材の外部から、前記探知手段を用いて、前記構造部材内の前記耐火部材の位置を特定するステップを有することを特徴とする、構造部材内の耐火部材の位置特定方法を提供するものである。
【0009】
また本発明の一つは、
[2]前記探知手段が、磁気探知手段、電磁波探知手段、放射線探知手段および導電体探知手段からなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[1]に記載の構造部材内の耐火部材の位置特定方法を提供するものである。
【0010】
また本発明の一つは、
[3]前記被探知成分が、磁性、導電性、分極性、電磁波反射性および放射性からなる群より選ばれる少なくとも一つの性質を示すものであって、有機材料、無機材料および金属材料からなる群より選ばれる少なくとも一つである、上記[1]または[2]に記載の構造部材内の耐火部材の位置特定方法を提供するものである。
【0011】
また本発明の一つは、
[4]二以上の耐火部材が、それぞれ異なる被探知成分含む、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の構造部材内の耐火部材の位置特定方法を提供するものである。
【0012】
また本発明は、
[5]探知手段により存在の有無を確認することができる被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材を少なくとも有することを特徴とする、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の構造部材内の耐火部材の位置特定方法に使用される、構造部材を提供するものである。
【0013】
また本発明の一つは、
[6]探知手段により存在の有無を確認することができる被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材と、
不透明部材と、を含む、上記[5]に記載の構造部材を提供するものである。
【0014】
また本発明の一つは、
[7]前記不透明部材が、中空部を有し、
前記耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材が、前記不透明部材の中空部に設置されている、上記[6]に記載の構造部材を提供するものである。
【0015】
また本発明は、
[8]上記[1]〜[4]のいずれかに記載の構造部材内の耐火部材の位置特定方法に使用される樹脂組成物であって、探知手段により存在の有無を確認することができる被探知成分を含むことを特徴とする、耐火樹脂組成物を提供するものである。
【0016】
また本発明の一つは、
[9]前記被探知成分が、粉状物質および繊維状物質の少なくとも一つである、上記[8]に記載の耐火樹脂組成物を提供するものである。
【0017】
また本発明の一つは、
[10]前記被探知成分成分が、金属粒子であり、前記金属粒子の平均粒径が、0.5〜1000μmの範囲である、上記[8]または[9]に記載の耐火樹脂組成物を提供するものである。
【0018】
また本発明の一つは、
[11]前記耐火樹脂組成物が、被探知成分、反応硬化性樹脂成分、熱膨張成分および無機充填材を少なくとも含む、上記[8]〜[10]のいずれかに記載の耐火樹脂組成物を提供するものである。
【0019】
また本発明の一つは、
[12]前記耐火樹脂組成物に含まれる反応硬化性樹脂成分が、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォームおよびシリコーン樹脂フォームからなる群から選ばれる少なくとも一つである、上記[8]〜[11]のいずれかに記載の耐火樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の構造部材内の耐火部材の位置特定方法は、被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材を少なくとも有する構造部材に対し、前記構造部材の外部から探知手段を用いて、前記構造部材内の前記耐火部材の位置を特定するステップを有する。
このステップにより、例えば外部から目視等により確認することができない前記構造部材の位置を、前記耐火部材に含まれる被探知成分を手掛かりとして、前記探知手段により特定することができる。
本発明の方法によれば、構造部材の内部に全く耐火部材が含まれていない場合はもちろんのこと、設計上構造部材内部のあるべき位置に耐火部材が含まれていない場合にもその事実を特定することができる。
従来技術の場合、外部から構造部材の内部構造が見えない位置に耐火部材が設置されている場合には、構造部材を分解、破壊等しなければ前記耐火部材の位置等を特定することができなかった。
これに対して本発明の方法を用いた場合には、前記構造部材を分解、破壊等する必要がなく外部から簡単に前記構造部材内部の前記耐火部材の位置等を特定することができる。
この様に、本発明の構造部材内の耐火部材の位置特定方法によれば、先に説明した本発明の第一の課題を解決することができる。
【0021】
本発明の構造部材は、被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材を含む。このため探知手段を用いて容易に構造部材内部の耐火部材の位置を把握することができる構造部材を提供することができる。
また耐火部材毎に被探知成分を変更すれば、複数の耐火部材の中から特定の耐火部材の位置を特定することもできる。
この様に本発明の構造部材により先に説明した本発明の第二の課題を解決することができる。
【0022】
本発明の耐火樹脂組成物は被探知成分を含む。このため被探知成分を含む耐火樹脂組成物を所望の形状の耐火部材に成形することができる。
また例えば、外部から目視により確認することができない位置に配置する形状の耐火部材を提供することができ、外部から探知手段を用いて簡単に耐火部材が実際に設置されているかどうかを確認することができる。
この様に、本発明の耐火樹脂組成物により、先に説明した本発明の第三の課題を解決することができる。
【0023】
また前記耐火樹脂組成物として熱膨張成分を含むものを使用した場合には、前記耐火樹脂組成物を成形して得られる耐火部材は、火災等の熱により膨張して熱膨張残渣を形成する。この熱膨張残渣が火災等の炎、煙、熱等を遮断する。このため前記耐火樹脂組成物を使用した構造部材の耐火性を向上させることができる。
【0024】
また前記耐火樹脂組成物として、ウレタン樹脂フォーム等の合成樹脂フォームを使用した場合には、構造物の断熱性を維持向上させることができる。
【0025】
さらに前記耐火樹脂組成物が流動性を有する場合には、中空部を有する構造部材を使用した場合には前記構造部材に前記耐火樹脂組成物を注入することにより耐火補強を行うことから、構造部材の耐火性を簡単に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は本発明の実施例1に係る建築部材100の構造を説明するための模式正面図である。
【図2】図2は、実施例1に使用した耐火樹脂組成物を注入する前の図1のA−A線に沿う要部断面図である。
【図3】図3は、実施例1に使用した耐火樹脂組成物を注入した後の図1のA−A線に沿う要部断面図である。
【図4】図4は、実施例2に使用した耐火樹脂組成物を注入した後の図1のA−A線に沿う要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は構造部材内の耐火部材の位置特定方法に関するものであるが、最初に本発明に使用する構造部材について説明する。
本発明に使用する構造部材としては、例えば、一戸建住宅、集合住宅、高層住宅、高層ビル、商業施設、公共施設等の建築物、客船、輸送船、連絡船等の船舶等の構造物(以下、「住宅等の構造物」という。)に使用される部材が挙げられる。
前記構造部材の一例を示すとすれば、例えば、住宅等の構造物の壁、天井、床、柱、梁等の基礎部材、住宅等の構造物の開口部に設置される組込部材等が挙げられる。前記組込部材としては、具体的には開閉窓、固定窓等のサッシ、ドア、引戸、シャッター、回転扉等の扉等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
また前記構造部材は、耐火部材を少なくとも有する。
前記構造部材に使用される前記耐火部材は、探知手段により存在の有無を確認することができる被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形してなるものである。
【0029】
前記被探知成分としては、例えば、磁性、導電性、分極性、電磁波反射性、放射性等の少なくとも一つの性質を有するものが挙げられる。
前記磁性としては、例えば、磁場をかけなくても磁性を示す強磁性、磁場をかけたときに磁場に反発する方向の磁性を示す反磁性、磁場をかけたときに磁場に引き合う方向の弱い磁性を示す常磁性が挙げられる。
前記強磁性を示すものとしては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、ガドリニウム等の金属材料、Fe、フェリクロム、マンガン亜鉛フェライト、ニッケル亜鉛フェライト、銅亜鉛フェライト、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の無機材料等が挙げられる。
前記反磁性を示すものとしては、例えば、金、銀、銅、亜鉛、鉛、ビスマス等の金属材料、FeO等の無機材料等が挙げられる。
前記常磁性を示すものとしては、例えば、アルミニウム、マンガン、クロム、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、錫等の金属材料、常磁性ガラス、酸化チタン等の無機材料等が挙げられる。
【0030】
前記導電性を示すものとしては、例えば、鉄、銅、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム、合金等の金属材料、酸化インジウムスズ等の無機材料、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリチオフェン等の有機材料等が挙げられる。
【0031】
前記電磁波反射性を示すものとしては、例えば、先に説明した導電性を示すものと同様のものが挙げられる。
【0032】
前記放射性を示すものとしては、例えばコバルト60等を挙げることができる。
【0033】
前記被探知成分は、先に説明した磁性、導電性、分極性、電磁波反射性、放射性等の少なくとも一つの性質を有するものであれば、その素材に限定はなく、金属材料、無機材料、有機材料等の一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0034】
また前記被探知成分は、粉状物質、繊維状物質等のものを使用することができる。
前記粉状物質としては、例えば、球形等の粒子状のもの、成形物を粉砕した破砕状のもの等を挙げることができる。
前記粉状物質は平均粒径が、0.1〜1000μmの範囲であれば好ましく、1〜500μmの範囲であればより好ましい。
前記平均粒径が0.1μm以上の場合には探知されやすく、また1000μm以下であれば成形性に優れる。
前記繊維状物質としては、平均繊維径が0.1〜1000μmの範囲であり、平均繊維長が20μm〜1mmの範囲であれば好ましい。
平均繊維径が0.1以上であり、平均繊維長が20μmが以上の場合には探知されやすく、また平均繊維長が1000μm以下であり、平均繊維長が1mm以下の場合には成形性に優れる。
【0035】
なお前記平均粒径および平均繊維径の測定は、光散乱法、レーザー回折法等の方法により行うことができる。前記平均粒径および平均繊維径の測定装置は市販されているから、既知の平均粒径および平均繊維径を有する物質と比較することにより本発明に使用する被探知成分の前記平均粒径および平均繊維径を特定することができる。
【0036】
本発明に使用する被探知成分は、取り扱い易いことと、探知され易いことから金属材料、無機材料であることが好ましく、金属材料であればより好ましい。
さらに本発明に使用する被探知成分は、耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材に均一に被探知成分が分散する様に、平均粒径が、0.1〜1000μmの範囲の金属粉であることがより好ましい。
【0037】
次に前記被探知成分を調べるための探知手段について説明する。
前記探知手段としては、例えば、磁気探知手段、電磁波探知手段、放射線探知手段、導電体探知手段等を挙げることができる。
前記磁気探知手段としては、例えば、磁気センサーにより磁性を有する被探知成分を探知する手段を挙げることができる。
被探知成分が磁性を有している場合、外部から磁石を近づけると前記被探知成分と外部磁石との間に磁力に基づく相互作用が生じる。この相互作用を磁力センサに連結された検針器の磁性針の力学的な動きとして検出する方法、磁力センサにより電気信号に変換し、この電気信号を検出する方法等により前記磁性を有する被探知成分を探知することができる。
【0038】
前記磁気探知手段を使用する場合には、前記被探知成分に対して外部から電圧を加えながら実施することができる。
【0039】
前記電磁波探知手段としては、例えば、電磁波を前記被探知成分に対して照射し、前記被探知成分から反射された電磁波を検出する手段等が挙げられる。
導電性を有する被探知成分は通常電磁波を受けたときにその電磁波を反射する性質を有する。前記被探知成分の種類、使用する電磁波の波長により反射される電磁波の強度が変化することから、反射される電磁波の強度、波長等を調べることにより電磁波反射性を有する被探知成分を探知することができる。
【0040】
一方、分極性を有する誘電体に対して交流電圧を印加すると誘電体は前記交流電圧のプラスとマイナスに合わせて分極を繰り返す。この分極を繰り返す際に電磁波が発生される場合にはこの電磁波を検出することにより、分極性を有する被探知成分を探知することができる。
【0041】
前記放射線探知手段としては、例えば、不活性ガスを封入した筒状容器の内部に電極を取り付けておき、この電極に高い電圧を掛けた検出器を使用する手段等が挙げられる。
放射性を有する被探知成分から放射線、放射性粒子が発せられた場合、放射線、放射性粒子等により前記不活性ガスが電離する。この電離した不活性ガスにより電圧を掛けた電極間にパルス電流が流れる。このパルス電流を検出することにより放射性を有する被探知成分を探知することができる。
【0042】
前記導電体探知手段としては、例えば、金属線が巻き付けられているコイルを使用した発振回路を使用する手段が挙げられる。
前記コイルを使用した発振回路を導電性を有する被探知成分に近づけると、被探知成分に渦電流が生じて磁界ができる。この磁界により前記発振回路のコイルのインダクタンスが変化する。この変化を電気信号に変換し、前記電気信号を検出することにより導電性を有する被探知成分を探知することができる。
【0043】
前記探知手段は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0044】
次に耐火部材が二種以上の場合について説明する。
本発明に使用する探知手段により存在の有無を確認することができる被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材が二種以上の場合には、それぞれの耐火部材は、それぞれ異なる種類の被探知成分を含むことが好ましい。
二以上の耐火部材がそれぞれ異なる種類の被探知成分を含む場合には、前記被探知成分の種類に応じた探知手段を採用することにより、それぞれの耐火部材の位置をより詳細に探知することができる。
【0045】
次に本発明に使用する耐火部材の組成について説明する。
前記耐火部材は、前記被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形してなるものである。前記耐火部材の形状に限定はなく、使用される構造部材の用途、目的等に応じて適宜選択される。
【0046】
また前記耐火樹脂組成物としては、例えば、具体的には前記被探知成分に加えて、樹脂成分、熱膨張成分、無機充填材等を含む組成物等を挙げることができる。
【0047】
前記樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂成分、反応硬化性樹脂成分等を挙げることができる。
前記熱可塑性樹脂成分の具体例としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ(1−)ブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フェノール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイソブチレン等の合成樹脂類、
天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、1,2−ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多加硫ゴム、非加硫ゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等のゴム物質等が挙げられる。
【0048】
また前記反応硬化性樹脂成分としては、例えば、時間の経過と共に前記反応硬化性樹脂成分に含まれる構成成分の反応が進むことにより粘度が増大し、当初は流動性があるが時間の経過と共に流動性を失うもの等が挙げられる。
前記反応硬化性樹脂成分としては、具体例を挙げるとするなら、例えば、ウレタン樹脂、イソシアヌレート樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0049】
前記ウレタン樹脂としては、例えば、主剤としてのポリイソシアネート化合物、硬化剤としてのポリオール化合物、触媒等を含むものが挙げられる。
前記ウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0050】
前記芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等が挙げられる。
前記脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジメチルジシシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0051】
前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
前記ポリイソシアネート化合物は一種もしくは二種以上を使用することができる。
前記ウレタン樹脂の主剤は、使い易いこと、入手し易いこと等の理由から、ジフェニルメタンジイソシアネート等であれば好ましい。
【0052】
前記ウレタン樹脂の硬化剤であるポリオール化合物としては、例えば、芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。
【0053】
前記芳香族ポリオールとしては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等が挙げられる。
前記脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシシクロヘキシルメタンジオール等が挙げられる。
前記脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。
前記ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン等のラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と上記多価アルコール等との縮合物が挙げられる。
【0054】
ここで前記多塩基酸としては、具体的には、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸等が挙げられる。
また前記多価アルコールとしては、具体的には、例えば、ビスフェノールA、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
また前記ヒドロキシカルボン酸としては、具体的には、例えば、ひまし油、ひまし油とエチレングリコールの反応生成物等が挙げられる。
【0055】
前記ポリマーポリオールとしては、例えば、前記芳香族ポリオール、脂環族ポリオール、脂肪族ポリオール、ポリエステル系ポリオール等に対し、アクリロニトリル、スチレン、メチルアクリレート、メタクリレート等のエチレン性不飽和化合物をグラフト重合させた重合体、ポリブタジエンポリオール、または、これらの水素添加物等が挙げられる
【0056】
前記ウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物と硬化剤であるポリオール化合物とを、ポリオール化合物中の活性水素基(OH)とポリイソシアネート化合物中の活性イソシアネート基(NCO)の割合(NCO/OH)が当量比で、1.2〜15となる様に混合することが好ましい。より好ましくは1.2〜12の範囲である。
前記当量比が1.2以上ではウレタン樹脂の粘度が高くなりすぎることを防ぐことができ、15以下では良好な接着強度を保つことができる。
【0057】
前記ウレタン樹脂の触媒としては、例えば、トリエチルアミン、N−メチルモルホリンビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’−トリメチルアミノエチル−エタノールアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−メチル,N´−ジメチルアミノエチルピペラジン、イミダゾール環中の第2級アミン官能基をシアノエチル基で置換したイミダゾール化合物等のアミノ系触媒等が挙げられる。
【0058】
次にイソシアヌレート樹脂としては、例えば、先に説明したポリウレタン樹脂を用いて、ポリウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基を反応させて三量化させ、イソシアヌレート環の生成を促進したもの等を挙げることができる。
【0059】
イソシアヌレート環の生成を促進するためには、例えば、触媒として、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4−ビス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の芳香族化合物、酢酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、オクチル酸カリウム等のカルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸の4級アンモニウム塩等を使用すればよい。
イソシアヌレート樹脂の主剤と硬化剤については先のポリウレタン樹脂の場合と同様である。
【0060】
次に前記エポキシ樹脂としては例えば、主剤としてのエポキシ基を持つモノマーと硬化剤とを反応させて得られる樹脂等を挙げることができる。
【0061】
前記エポキシ基を持つモノマーとしては、例えば、2官能のグリシジルエーテル型として、ポリエチレングリコール型、ポリプロピレングリコール型、ネオペンチルグリコール型、1,6−ヘキサンジオール型、トリメチロールプロパン型、プロピレンオキサイド−ビスフェノールA、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型等のモノマーが挙げられる。
【0062】
また、グリシジルエステル型として、ヘキサヒドロ無水フタル酸型、テトラヒドロ無水フタル酸型、ダイマー酸型、p−オキシ安息香酸型等のモノマーが挙げられる。
【0063】
更に多官能のグリシジルエーテル型として、フェノールノボラック型、オルトクレゾール型、DPPノボラック型、ジシクロペンタジエン、フェノール型等のモノマーが挙げられる。
【0064】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0065】
また、前記硬化剤としては、例えば、重付加型硬化剤、触媒型硬化剤等が挙げられる。
前記重付加型硬化剤としては、例えば、ポリアミン、酸無水物、ポリフェノール、ポリメルカプタン等が挙げられる。
前記触媒型硬化剤としては、例えば三級アミン類、イミダゾール類、ルイス酸錯体等が挙げられる。
これらエポキシ樹脂の硬化方法は特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【0066】
なお、前記樹脂成分の溶融粘度、柔軟性、粘着性等の調整のため、二種以上の樹脂成分を混合したものを使用することができる。
【0067】
次に前記フェノール樹脂としては、例えば、レゾール型フェノール樹脂組成物等が挙げられる。
前記レゾール型フェノール樹脂組成物は、例えば、主剤としてのレゾール型フェノール樹脂、硬化剤等を含むものである。
【0068】
前記フェノール樹脂の主剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等のフェノール類およびその変性物と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒド類とを、触媒量の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリの存在下に反応させて得られるものがあげられるが、これに限定されるものではない。
フェノール類等とアルデヒド類の混合割合は特に限定はないが、モル比で通常1.0:1.5〜1.0:3.0の範囲である。前記混合割合は、1.0:1.8〜1.0:2.5の範囲であれば好ましい。
【0069】
前記フェノール樹脂の硬化剤としては、例えば、硫酸、リン酸等の無機酸、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸が挙げられる。
【0070】
次に尿素樹脂としては、例えば、主剤としての尿素、硬化剤としてのホルムアルデヒド、触媒としての塩基性化合物、酸性化合物を含む組成物等が挙げられる。
前記尿素とホルムアルデヒド等は重合反応により尿素樹脂を形成する。
【0071】
次に不飽和ポリエステル樹脂としては、主剤としての不飽和多塩基酸、硬化剤としてのポリオール化合物、触媒等を含む組成物等が挙げられる。
前記不飽和ポリエステル樹脂の主剤としては、具体的には、例えば、無水マレイン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0072】
前記不飽和ポリエステル樹脂の硬化剤としては、具体的には、例えば、先に説明したウレタン樹脂に使用するポリオール化合物等が挙げられる。
前記不飽和ポリエステル樹脂は、必要に応じて無水フタル酸、イソフタル酸等の飽和多塩基酸を併用することもできる。
【0073】
さらに前記不飽和ポリエステル樹脂の主剤と重合するスチレン、ビニルトルエン、メチルメタクリレート等の架橋用ビニルモノマーを添加することができる。
前記不飽和ポリエステル樹脂の触媒としては、具体的には、例えば、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン等の有機過酸化物等が挙げられる。
【0074】
次にアルキド樹脂としては、例えば、主剤としての多塩基酸、硬化剤としてのポリオール化合物、油脂等を含む組成物等が挙げられる。
前記アルキド樹脂の主剤としては、具体的には、例えば、無水マレイン酸、無水フタル酸、アジピン酸等が挙げられる。
【0075】
前記アルキド樹脂の硬化剤としては、具体的には、例えば、先に説明したウレタン樹脂に使用するポリオール化合物等が挙げられる。
前記油脂としては、例えば、大豆油、ヤシ油、アマニ油等を挙げることができる。
【0076】
次にメラミン樹脂としては、例えば、主剤としてのメラミン、硬化剤としてのホルムアルデヒド等を含む組成物等が挙げられる。
必要に応じて、前記組成物にベンゾグアナミン等を添加することもできる。
【0077】
次にジアリルフタレート樹脂としては、例えば、主剤としての無水フタル酸等の多塩基酸、硬化剤としてのアリルアルコール等、架橋剤等を含む組成物等が挙げられる。
前記架橋剤としては、例えば、スチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0078】
次にシリコーン樹脂としては、例えば、主剤としてジアルキルシリルジクロリド、ジアルキルシリルジオール等、反応抑制剤としてトリアルキルシリルクロリド、トリアルキルシリルジオール等、硬化剤として塩化白金酸等の白金化合物を含む組成物等を挙げることができる。
【0079】
前記ジアルキルシリルジクロリドとしては、具体的には、例えば、ジメチルシリルジクロリド、ジエチルシリルジクロリド、ジプロピルシリルジクロリド等が挙げられる。
前記ジアルキルシリルジオールとしては、具体的には、例えば、ジメチルシリルジオール、ジエチルシリルジオール、ジプロピルシリルジオール等が挙げられる。
前記トリアルキルシリルクロリドとしては、具体的には、例えば、トリメチルシリルクロリド、トリエチルシリルクロリド、トリプロピルシリルクロリド等が挙げられる。
前記トリアルキルシリルジオールとしては、具体的には、例えば、トリメチルシリルオール、トリエチルシリルオール、トリプロピルシリルオール等が挙げられる。
前記反応抑制剤は、ポリシロキサン主鎖の末端に結合し、反応を制御してポリシロキサン主鎖の重合度を制御する役割を果たす。
【0080】
本発明に使用する反応硬化性樹脂成分は、火災等の熱にさらされた場合でも容易に溶融することを防止するために、熱硬化性樹脂を使用することが好ましい。
本発明に使用する反応硬化性樹脂成分は、取り扱い性の面からエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等であることがより好ましい。
【0081】
本発明に使用する反応硬化性樹脂成分は、主剤と硬化剤等とを予め予備的に反応させて使用することもできる。
【0082】
本発明に使用する前記耐火樹脂組成物に含まれる前記反応硬化性樹脂成分の主剤、硬化剤、触媒等はそれぞれ一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0083】
本発明に使用する前記耐火樹脂組成物に含まれる前記反応硬化性樹脂成分に対し、発泡剤、整泡剤を併用することにより、前記耐火樹脂組成物を発泡した状態で硬化させることができる。
【0084】
前記発泡剤としては、例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の低沸点の炭化水素、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等の塩素化脂肪族炭化水素化合物、トリクロルモノフルオロメタン、トリクロルトリフルオロエタン等のフッ素化合物、ジイソプロピルエーテル等のエーテル、あるいはこれらの化合物の混合物などの有機系物理発泡剤、窒素ガス、酸素ガス、アルゴンガス、二酸化炭素ガスなどの無機系物理発泡剤、水等が挙げられる。
【0085】
前記反応硬化性樹脂成分に対する発泡剤の使用量は、使用する前記反応硬化性樹脂成分により適宜設定されるが、一例を示すとすれば、例えば、前記反応硬化性樹脂成分100重量部に対して、通常1〜20重量部の範囲であり、5〜10重量部の範囲であれば好ましい。
【0086】
前記整泡剤としては、例えば、有機ケイ素系界面活性剤等が挙げられる。
前記反応硬化性樹脂成分に対する整泡剤の使用量は、使用する前記反応硬化性樹脂成分により適宜設定されるが、一例を示すとすれば、例えば、前記樹脂成分100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲であれば好ましい。
【0087】
前記発泡剤、整泡剤はそれぞれ一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0088】
本発明に使用する前記耐火樹脂組成物は、前記耐火樹脂組成物を発泡した状態で硬化させるため、発泡する機能を有することが好ましく、具体的には、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォーム、シリコーン樹脂フォーム等の一種もしくは二種以上を使用することが好ましい。
【0089】
前記耐火樹脂組成物を発泡した状態で硬化させることにより、硬化した前記耐火樹脂組成物に気泡の断熱効果を付与することができ、構造物の開口部等に設置される扉、サッシ等の、耐火樹脂組成物が注入された建築部材の断熱性を高めることができる。
【0090】
次に前記耐火樹脂組成物の各成分のうち、熱膨張成分について説明する。
前記熱膨張成分は加熱時に膨張するものであるが、かかる熱膨張成分として具体例を挙げるとすれは、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等の無機膨張成分、熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品等を挙げることができる。
【0091】
前記熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたものであり、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物の一種である。
【0092】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0093】
前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
【0094】
前記アルカリ金属化合物および前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0095】
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。
【0096】
粒度が20メッシュ以上であると、分散性が向上するため樹脂成分等との混練が容易になる。また、粒度が200メッシュ以下であると、黒鉛の膨張度が大きいため十分な耐火断熱層が得られ易くなる。
【0097】
上記中和された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR CARBON社製の「GRAFGUARD#160」、「GRAFGUARD#220」、東ソー社製の「GREP−EG」等が挙げられる。
【0098】
前記熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品としては、例えば、市販の熱膨張性耐火シート等を粉砕したもの等を挙げることができる。
かかる成形体粉砕品に使用する熱膨張性耐火シート等の具体例としては、例えば、積水化学工業社製のフィブロック(登録商標。エポキシ樹脂、ゴム樹脂等の樹脂成分、熱膨張性黒鉛等の熱膨張成分、リン化合物、無機充填材等を含む熱膨張性樹脂組成物の成形体)、住友スリーエム社のファイアバリア(クロロプレンゴムとバーキュライトを含有する樹脂組成物からなるシート材料、膨張率:3倍、熱伝導率:0.20kcal/m・h・℃)、三井金属塗料化学社のメジヒカット(ポリウレタン樹脂と熱膨張性黒鉛を含有する樹脂組成物からなるシート材料、膨張率:4倍、熱伝導率:0.21kcal/m・h・℃)等が挙げられる。
【0099】
市販の熱膨張性耐火シート等を裁断機等により細かく切断する等の方法、市販の熱膨張性耐火シート等を粉砕ロールに通して粉砕する等の方法により、熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品を得ることができる。
前記熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品は、5〜20メッシュの範囲のものが好ましい。
【0100】
前記熱膨張性樹脂組成物の成形体粉砕品の粒度が5メッシュ以上であると、分散性が向上するため樹脂成分等との混練が容易になる。また、粒度が20メッシュ以下であると、黒鉛の膨張度が大きいため十分な耐火断熱層が得られ易くなる。
【0101】
次に先の耐火樹脂組成物の各成分のうち、前記無機充填材について説明する。
【0102】
前記無機充填材としては、特に限定されないが、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム等のカリウム塩、バーミキュライト、カオリン、マイカ、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコン酸鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、無機系リン化合物、シリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
【0103】
これらは、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0104】
前記無機充填材は骨材的役割を果たして、加熱後に生成する熱膨張残渣の強度の向上や熱容量の増大に寄与する。
【0105】
このため、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛で代表される金属炭酸塩、骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果も付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムで代表される含水無機物が好ましく、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び周期律表IIbの金属炭酸塩又はこれらと前記含水無機物との混合物が好ましい。
【0106】
また、本発明に使用する耐火樹脂組成物に対し、難燃剤としてリン化合物を添加することもできる。
前記リン化合物は、難燃性を向上させるため、または窒素化合物、アルコール類等と組み合わせて熱膨張性機能を発現するために用いられる。
【0107】
前記リン化合物としては、特に限定されず、例えば、赤リン、
トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート等の各種リン酸エステル、
リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;ポリリン酸アンモニウム類、
下記化学式1で表される化合物等が挙げられる。
【0108】
【化1】

これらのリン化合物は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0109】
これらのうち、耐火性の観点から、赤リン、下記の化学式で表される化合物、及び、ポ
リリン酸アンモニウム類が好ましく、性能、安全性、費用等の点においてポリリン酸アンモニウム類がより好ましい。
【0110】
上記化学式中、R及びRは、水素、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は、炭素数6〜16のアリール基を表す。
【0111】
は、水酸基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1〜16の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシル基、炭素数6〜16のアリール基、又は、炭素数6〜16のアリールオキシ基を表す。
【0112】
前記化学式で表される化合物としては、例えば、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸ジエチル、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、2−メチルプロピルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、2,3−ジメチル−ブチルホスホン酸、オクチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ジオクチルフェニルホスホネート、ジメチルホスフィン酸、メチルエチルホスフィン酸、メチルプロピルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジオクチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジエチルフェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィン酸等が挙げられる。
【0113】
中でも、t−ブチルホスホン酸は、高価ではあるが、高難燃性の点において好ましい。
【0114】
ポリリン酸アンモニウム類としては、特に限定されず、例えば、ポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム等が挙げられるが、難燃性、安全性、コスト、取扱性等の点からポリリン酸アンモニウムが好適に用いられる。
【0115】
市販品としては、例えば、クラリアント社製の「商品名:EXOLIT AP422」及び「商品名:EXOLIT AP462」等が挙げられる。
【0116】
前記リン化合物は、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩と反応して、金属炭酸塩の膨張を促すと考えられ、特に、リン化合物として、ポリリン酸アンモニウムを使用した場合に、高い膨張効果が得られる。
【0117】
また、有効な骨材として働き、燃焼後に形状保持性の高い残渣を形成する。
【0118】
前記窒素化合物としては、特に限定はないが、メラミン系化合物等であれば好ましい。また前記アルコール類としては、特に限定はないが、ペンタエリスリトール等の多価アルコール等であれば好ましい。
【0119】
本発明に使用する無機充填材が粒状の場合には、その粒径としては、0.5〜200μmの範囲のものが好ましく、より好ましくは、1〜50μmの範囲のものである。
【0120】
無機充填材の添加量が少ないときは、分散性が性能を大きく左右するため、粒径の小さ
いものが好ましいが、粒径0.5μm以上では二次凝集を防ぐことができ、分散性が良好となる。
【0121】
また、無機充填材の添加量が多いときは、高充填が進むにつれて、樹脂組成物の粘度が高くなり成形性が低下するが、粒径を大きくすることによって樹脂組成物の粘度を低下させることができる点から、上記範囲の中でも粒径の大きいものが好ましい。
【0122】
なお、粒径が200μm以下の場合には、成形体の表面性、樹脂組成物の力学的物性が低下することを抑制することができる。
【0123】
前記無機充填材の中でも、特に骨材的役割を果たす炭酸カルシウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;骨材的役割の他に加熱時に吸熱効果を付与する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物が好ましい。
【0124】
前記含水無機物及び金属炭酸塩を併用することは、燃焼残渣の強度向上や熱容量増大に大きく寄与すると考えられる。
【0125】
前記無機充填材の中で、特に水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の含水無機物は、加熱時の脱水反応によって生成した水のために吸熱が起こり、温度上昇が低減されて高い耐熱性が得られる点、及び、燃焼残渣として酸化物が残存し、これが骨材となって働くことで燃焼残渣の強度が向上する点で好ましい。
【0126】
また、水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムは、脱水効果を発揮する温度領域が異なるため、併用すると脱水効果を発揮する温度領域が広くなり、より効果的な温度上昇抑制効果が得られることから、併用することが好ましい。
【0127】
前記含水無機物の粒径は、小さくなると嵩が大きくなって高充填化が困難となるので、脱水効果を高めるために高充填するには粒径の大きなものが好ましい。
【0128】
具体的には、粒径が18μmでは、1.5μmの粒径に比べて充填限界量が約1.5倍程度向上することが知られている。
【0129】
さらに、粒径の大きいものと小さいものとを組み合わせることによって、より高充填化が可能となる。
【0130】
前記含水無機物の市販品としては、例えば、水酸化アルミニウムとして、粒径1μmの「商品名:ハイジライトH−42M」(昭和電工社製)、粒径18μmの「商品名:ハイジライトH−31」(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0131】
前記炭酸カルシウムの市販品としては、例えば、粒径1.8μmの「商品名:ホワイトンSB赤」(白石カルシウム社製)、粒径8μmの「商品名:BF300」(備北粉化社製)等が挙げられる。
【0132】
冒頭に説明したとおり、本発明に使用する耐火樹脂組成物としては、上記に説明した被探知成分、反応硬化性樹脂成分、熱膨張成分、無機充填材等を含む樹脂組成物、さらに上述のリン化合物を含むもの等を挙げることができるが、次にこれらの配合について説明する。
【0133】
前記耐火樹脂組成物は、樹脂成分100重量部に対し、前記被探知成分を1〜30重量部の範囲で含むことが好ましい。
前記被探知成分が1重量部以上であると前記被探知成分の探知が容易になる。また30重量部以下の場合は前記耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材が優れた強度を維持する。
【0134】
また前記耐火樹脂組成物は、樹脂成分100重量部に対し、前記熱膨張成分を10〜150重量部および前記無機充填材を50〜300重量部の範囲で含むものが好ましい。
【0135】
また、前記熱膨張成分および前記無機充填材の合計は、200〜600重量部の範囲が好ましい。
【0136】
かかる耐火樹脂組成物は火災等の熱によって膨張し熱膨張残渣を形成する。この配合によれば、前記耐火樹脂組成物の成形体は火災等の熱によって膨張し、必要な体積膨張率を得ることができ、膨張後は所定の断熱性能を有すると共に所定の強度を有する熱膨張残渣を形成することもでき、安定した耐火性能を達成することができる。
【0137】
前記熱膨成分の量が10重量部以上であると、必要な膨張倍率が得られることから、十分な耐火、防火性能が得られる。
一方、前記熱膨張成分の量が150重量部以下であると、前記耐火樹脂組成物の25℃における流動性を確保することができる。
【0138】
また前記無機充填材の量が50重量部以上であると、燃焼後の熱膨張残渣の体積減少が少なく、耐火断熱のための熱膨張残渣が得られる。
さらに可燃物の比率が低下するため、難燃性が向上する。
【0139】
一方、無機充填材の量が300重量部以下であると、前記耐火樹脂組成物の25℃における流動性を確保することができる。
【0140】
前記耐火樹脂組成物における熱膨張成分および無機充填材の合計量は、60重量部以上では燃焼後の熱膨張残渣量が不足せず十分な耐火性能が得られやすく、450重量部以下では機械的物性の低下が小さく、実際の使用に適する。
【0141】
さらに本発明に使用する前記耐火樹脂組成物は、それぞれ本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、リン酸エステル等の可塑剤、フェノール系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤の他、熱安定剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、架橋剤、滑剤、軟化剤、顔料、粘着付与樹脂等の添加剤、ポリブテン、石油樹脂等の粘着付与剤を含むことができる。
【0142】
本発明に使用する耐火樹脂組成物の25℃における粘度は、不透明部材内部に注入される前の値を基準として、1000〜100000mPa・sの範囲であることが好ましい。
前記粘度が1000mPa・s以上であれば、建築部材内部の狭い隙間でも前記耐火樹脂組成物を容易に充填することができる。また建築部材内部に前記耐火樹脂組成物を注入するための圧力、注入機器の押圧等が必要以上に高くなることがなく、容易に注入を行うことができる。
また前記粘度が100000mPa・s以下であれば、建築部材内部に前記耐火樹脂組成物を注入する際に空気を巻き込みにくく所望の充填量を注入することが容易となる。また注入の際に耐火樹脂組成物の各成分が分離しにくく、不均一となることを防止することができるため、前記建築部材内部で前記耐火樹脂組成物の組成を均一に保つことができ、所望の耐火性能を発揮することができる。
前記粘度は2000から60000mPa・sの範囲であれば好ましく、3000〜40000mPa・sの範囲であればより好ましい。
【0143】
前記耐火樹脂組成物の粘度の調整は、本発明に使用する耐火樹脂組成物の反応硬化性樹脂成分の種類等を選択することにより調整することができる。液状の反応硬化性樹脂成分のうち、25℃における粘度が低いものを選択することにより25℃における耐火樹脂組成物の粘度を小さくすることができる。また逆に液状の反応硬化性樹脂成分のうち、25℃における粘度が高いものを選択することにより25℃における耐火樹脂組成物の粘度を大きくすることができる。
【0144】
また前記耐火樹脂組成物の粘度の調整は、前記耐火樹脂組成物に含まれる熱膨張成分、無機充填材の重量割合を変動させることによっても行うことができる。
例えば、前記耐火樹脂組成物に含まれる熱膨張成分、無機充填材等の重量割合を減少させると、25℃における耐火樹脂組成物の粘度を小さくすることができる。加えて、25℃の温度で液状の無機充填材を適宜選択することにより、粘度を小さくすることもできる。
また逆に前記耐火樹脂組成物に含まれる熱膨張成分、無機充填材等の重量割合を増加させると、25℃における耐火樹脂組成物の粘度を大きくすることができる。
【0145】
次に前記耐火樹脂組成物の製造方法について説明する。
前記耐火樹脂組成物の製造方法に特に限定はないが、例えば、前記耐火樹脂組成物を有機溶剤に懸濁させたり、加温して溶融させたりして塗料状とする方法、溶剤に分散してスラリーを調製する等の方法、また前記耐火樹脂組成物に含まれる反応硬化性樹脂成分に25℃の温度において固体である成分が含まれる場合には、前記耐火樹脂組成物を加熱下に溶融させる等の方法により前記樹脂組成物を得ることができる。
【0146】
前記耐火樹脂組成物は、前記耐火樹脂組成物の各成分を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、混練ロール、ライカイ機、遊星式撹拌機等公知の装置を用いて混練することにより得ることができる。
【0147】
また、イソシアネート基、エポキシ基等の反応性官能基をもつ主剤と硬化剤とをそれぞれ別々に充填材等と共に混練しておき、注入直前にスタティックミキサー、ダイナミックミキサー等で混練して得ることもできる。
さらに触媒を除く前記耐火樹脂組成物の成分と、触媒とを注入直前に同様に混練して得ることもできる。
【0148】
以上説明した方法により、本発明に使用する前記耐火樹脂組成物を得ることができる。
【0149】
以上の様に得られた前記反応硬化型熱膨張性樹脂組成物は25℃の温度において流動性を有するため、建築部材の内部に注入することができる。
ここで流動性を有する、とは前記耐火樹脂組成物を静置したときに一定形状を有しない場合をいい、流動性を有しない、とは前記耐火樹脂組成物を静置したときに一定形状を有する場合をいう。
【0150】
前記耐火樹脂組成物は、火災時などの高温にさらされた際にその熱膨張残渣により断熱し、かつその熱膨張残渣の強度があるものであれば特に限定されないが、600℃に設定した電気炉で30分間加熱した後の体積膨張率が1.1〜6倍のものであれば好ましい。
前記体積膨張率が1.1倍を下回ると、膨張体積が前記樹脂成分の焼失部分を十分に埋めきれず防火性能が低下することがある。また6倍を超えると、熱膨張残渣の強度が下がり、火炎の貫通を防止する効果が低下することがある。より好ましくは、体積膨張率が1.2〜5倍の範囲であり、さらに好ましくは1.3〜4倍の範囲である。
【0151】
前記熱膨張残渣が自立するためには、前記熱膨張残渣は強度の大きいことが必要であり、その強度としては、圧縮試験器にて0.25cmの圧子を用いて、前記熱膨張残渣のサンプルを0.1m/sの圧縮速度で測定した場合の破断点応力が0.05kgf/cm以上であれば好ましい。破断点応力が0.05kgf/cmを下回ると、断熱熱膨張残渣が自立できなくなり防火性能が低下することがある。より好ましくは、0.1kgf/cm以上である。
【0152】
次に前記構造部材の外部から、前記探知手段を用いて、前記構造部材内の前記耐火部材の位置を特定するステップについて説明する。
前記耐火部材は先に説明した被探知成分を含む耐火樹脂組成物を、射出成形、注型成形、プレス成形等の成形して得られる。前記構造部材は、前記耐火部材を含む。
【0153】
先に説明した探知手段を搭載したセンサ機器により、前記構造部材を検査することにより、前記構造部材内部の前記耐火部材の位置を確認することができる。
前記探知手段を搭載したセンサ機器としては、例えば、人間の手により運搬し検査することのできる携帯手動型のもの、ベルトコンベア等の移動手段を用いて前記構造部材を移動させ、固定された前記探知手段により検査することのできるベルトコンベア型のもの、前記探知手段を設置したゲートに前記構造部材を通過させるゲート型のもの等が挙げられる。
【0154】
本発明に使用する構造部材は被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形して得られる耐火部材を含む。
この耐火部材に含まれる被探知成分を、前記探知手段により探知することができる。このため、例えば通常は外部から目視により確認することができない耐火部材が構造部材の中に存在するか、所望の位置に存在するかどうかを、前記構造部材を分解、破壊することなく、前記構造部材内に存在する耐火部材の位置を特定することが可能となる。
【0155】
また前記構造部材内の耐火部材の位置特定方法により、前記構造部材内に耐火部材が存在しないことが判明した場合等には、例えば、室温で液状の耐火樹脂組成物を、内部に中空部を有する不透明部材内部に注入することにより、前記構造部材を分解、破壊することなく耐火部材を設置することができる。
【0156】
そして先の耐火部材の位置特定方法により、実際に構造部材内に耐火部材を設置できたかどうかを確認することができる。
【0157】
次に本発明に使用する構造部材は、前記耐火部材に加えて、不透明部材を組み合わせてなるものであれば好ましい。
本発明に使用する前記構造部材は、前記耐火部材と不透明部材とが組み合わせて構成されている場合には前記耐火部材の位置が外部から目視等により容易に把握することができないから、本発明の用途に適する。
このため本発明においては前記構造部材を外部から目視により観察したときに前記耐火部材の全部または一部が不透明部材により覆われていて、前記構造部材に対して使用されている前記耐火部材の形状、体積、設置位置等の全体像が把握できない構造部材を使用することが好ましい。
【0158】
前記不透明部材としては、例えば、合成樹脂材、金属材、無機材、木材等が挙げられる。
前記合成樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル等の塩素含有樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。
前記金属材としては、例えば、アルミニウム材、ステンレス材、鋼材、合金材等を挙げることができる。
前記無機材としては、例えば、ガラス、石膏、セラミック、セメント、ケイ酸カルシウム、パーライト等が挙げられる。
前記木材としては、天然の木材の他、木材片、木材シート等を樹脂により硬化させた成形木材等が挙げられる。
【0159】
なお前記不透明部材とは、目視により不透明部材内部の全てを確認することができない部材を意味する。
このため前記不透明部材はその全部または一部に不透明部分を有するものであるが、透明部分が含まれるものであってもよい。
【0160】
前記不透明部材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0161】
次に本発明について図面に基づき実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0162】
実施例1では構造部材100を作製して内部の位置探知と耐火試験を実施した。これらの探知および耐火試験ならびにその結果について説明する。
【0163】
図1は本発明の実施例1に係る建築部材100の構造を説明するための模式正面図である。また図2は、実施例1に使用した耐火樹脂組成物1を注入する前の図1のA−A線に沿う要部断面図であり、図3は、実施例1に使用した耐火樹脂組成物1を注入した後の図1のA−A線に沿う要部断面図である。
【0164】
図1に示される通り、ケイ酸カルシウム板からなる耐火性を有する板材101が、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている不透明の硬質塩化ビニルからなる枠材102により支持されている。
前記板材101と101との間には、前記板材101の外周に沿って框体103が設置されている。
【0165】
また住宅等の構造物の開口部を耐火試験用に再現するために、前記耐火性を有する板材101および前記枠材102の周囲に隙間なくコンクリート成形体104が取り囲んでいる。
図2に示される通り、前記構造部材100の枠材102の内部に長手方向に沿って内部に複数の空洞110〜118が設けられている。この様に実施例1に使用した不透明の枠材102は空洞110〜118を有する中空部材であるが、外部からは中空部材にある空洞110〜118の内部をを目視により確認することができない構造となっている。
【0166】
次に表1に示した配合に従い、耐火樹脂組成物1をA液とB液とに分けて、それぞれの成分を遊星式攪拌機を用いて攪拌した。
具体的には前記耐火樹脂組成物としてポリウレタン樹脂を使用した。A液の樹脂成分としてポリウレタン樹脂の硬化剤としてポリエーテルポリオールを用い、B液の樹脂成分としてポリウレタン樹脂の主剤としてポリイソシアネート化合物を用いた。
前記ウレタン樹脂の主剤であるポリイソシアネート化合物と硬化剤であるポリエーテルポリオールとを、ポリオール化合物中の活性水素基(OH)とポリイソシアネート化合物中の活性イソシアネート基(NCO)の割合(NCO/OH)が当量比で、1.64:1となる様に調整した。
【0167】
前記A液には被探知成分として鉄粉が使用されている。
【0168】
次に図2および図3に示される様に、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材102の空洞のうち、最も外側にある空洞110、111、112、113、114、115の内部に、前記A液とB成分とを上記の混合比を維持して注入した。
注入された耐火樹脂組成物1は、空洞110、111、112、113、114、115の内部で発泡しながら硬化して流動性を失い、耐火部材としてのウレタン樹脂フォームを形成した。
【0169】
市販の金属探知器を用いて、不透明の枠材102の中空部にある前記耐火部材に含まれる被探知成分としての鉄粉の調査を行った。
その結果前記空洞110〜115の全ての内部に鉄粉に基づく金属反応が得られた。これにより構造部材100内に存在する耐火部材の位置を特定することができ、所望の位置に耐火部材が設置されていることを確認することができた。
【0170】
次に前記構造部材100に対してISO834の条件に従い、耐火試験を実施した。耐火試験は炎が前記構造部材100を貫通するまで実施した。
【0171】
この耐火試験の結果、加熱面と反対側の面から20分間以上炎の漏出が認められなかった場合を○、20分間未満で炎の漏出が認められた場合を×とした。この結果を表1に合わせて記載する。
【0172】
前記耐火試験を開始直後、加熱面側の耐火樹脂組成物1が膨張し、熱膨張残渣を形成した。20分経過後も、実施例1の構造部材100では炎の漏出が認められなかった。30分経過後に炎の漏出が観察された。
【実施例2】
【0173】
実施例1の場合において、被探知成分としての鉄粉の量を表1に示す量に変えたこと、図4に示す通り、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている硬質塩化ビニルからなる枠材102の空洞110〜118の全てに対して耐火樹脂組成物1を注入したこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
【0174】
市販の金属探知器を用いて、不透明の枠材102の中空部にある前記耐火部材に含まれる被探知成分としての鉄粉の調査を行った。
その結果前記空洞110〜118の全ての内部に鉄粉に基づく金属反応が得られた。これにより構造部材110内に存在する耐火部材の位置を特定することができ、所望の位置に耐火部材が設置されていることを確認することができた。
【0175】
前記耐火試験の開始と共に加熱面側の耐火樹脂組成物1が膨張し、熱膨張残渣を形成した。20分経過後も、実施例2の耐火補強建築部材120では炎の漏出が認められなかった。35分経過後に炎の漏出が観察された。
【実施例3】
【0176】
実施例1の場合において、鉄粉に代えてアルミニウム粉を表1に示す量を使用したこと、以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
【0177】
市販の金属探知器を用いて、不透明の枠材102の中空部にある前記耐火部材に含まれる被探知成分としての鉄粉の調査を行った。
その結果前記空洞110〜115の全ての内部に鉄粉に基づく金属反応が得られた。これにより構造部材100内に存在する耐火部材の位置を特定することができ、所望の位置に耐火部材が設置されていることを確認することができた。
【0178】
前記耐火試験の開始と共に加熱面側の耐火樹脂組成物1が膨張し、熱膨張残渣を形成した。20分経過後も、実施例2の耐火補強建築部材120では炎の漏出が認められなかった。30分経過後に炎の漏出が観察された。
【実施例4】
【0179】
実施例1の場合において、鉄粉に代えて銅粉を表1に示す量を使用したこと、図4に示す通り、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている不透明の硬質塩化ビニルからなる枠材102の空洞210〜218の全てに対して耐火樹脂組成物1を注入したこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
前記耐火試験を開始と共に加熱面側の耐火樹脂組成物1が膨張し、熱膨張残渣を形成した。20分経過後も、実施例2の耐火補強建築部材130では炎の漏出が認められなかった。25分経過後に炎の漏出が観察された。
【0180】
[比較例1]
実施例1の場合において、鉄粉を使用しなかったこと、使用したイソシアネートを表1に示す様に増量したこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
【0181】
市販の金属探知器を用いて、不透明の枠材102の中空部にある前記耐火部材に含まれる被探知成分としての鉄粉の調査を行った。
その結果前記空洞110〜115の内部に鉄粉に基づく金属反応が得られない場所があることが確認された。これにより構造部材100内に本来なら存在する耐火部材の位置に、実際には耐火部材が存在しない部分があることを確認することができた。
【0182】
[比較例2]
実施例1の場合において、鉄粉を使用しなかったこと、使用したイソシアネートを表1に示す様に増量したこと、図4に示す通り、長手方向に沿って内部に空洞が形成されている不透明の硬質塩化ビニルからなる枠材102の空洞110〜118の全てに対して耐火樹脂組成物1を注入したこと以外は実施例1の場合と全く同様に耐火試験を実施した。
【0183】
市販の金属探知器を用いて、不透明の枠材102の中空部にある前記耐火部材に含まれる被探知成分としての鉄粉の調査を行った。
その結果前記空洞110〜118の内部に鉄粉に基づく金属反応が得られない場所があることが確認された。これにより構造部材100内に本来なら存在する耐火部材の位置に、実際には耐火部材が存在しない部分があることを確認することができた。
【0184】
【表1】

【符号の説明】
【0185】
1 耐火樹脂組成物
100、110 構造部材
101 板材
102 不透明の枠材
104 コンクリート成形体
110〜118 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
探知手段により存在の有無を確認することができる被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材を少なくとも有する構造部材に対し、
前記構造部材の外部から、前記探知手段を用いて、前記構造部材内の前記耐火部材の位置を特定するステップを有することを特徴とする、構造部材内の耐火部材の位置特定方法。
【請求項2】
前記探知手段が、磁気探知手段、電磁波探知手段、放射線探知手段および導電体探知手段からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1記載の構造部材内の耐火部材の位置特定方法。
【請求項3】
前記被探知成分が、磁性、導電性、分極性、電磁波反射性および放射性からなる群より選ばれる少なくとも一つの性質を示すものであって、有機材料、無機材料および金属材料からなる群より選ばれる少なくとも一つである、請求項1または2に記載の構造部材内の耐火部材の位置特定方法。
【請求項4】
二以上の耐火部材が、それぞれ異なる被探知成分含む、請求項1〜3のいずれかに記載の構造部材内の耐火部材の位置特定方法。
【請求項5】
探知手段により存在の有無を確認することができる被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材を少なくとも有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の構造部材内の耐火部材の位置特定方法に使用される、構造部材。
【請求項6】
探知手段により存在の有無を確認することができる被探知成分を含む耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材と、
不透明部材と、を含む、請求項5に記載の耐火補強建築部材。
【請求項7】
前記不透明部材が、中空部を有し、
前記耐火樹脂組成物を成形してなる耐火部材が、前記不透明部材の中空部に設置されている、請求項6に記載の耐火補強建築部材。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の構造部材内の耐火部材の位置特定方法に使用される樹脂組成物であって、探知手段により存在の有無を確認することができる被探知成分を含むことを特徴とする、耐火樹脂組成物。
【請求項9】
前記被探知成分が、粉状物質および繊維状物質の少なくとも一つである、請求項8に記載の耐火樹脂組成物。
【請求項10】
前記被探知成分成分が、金属粒子であり、前記金属粒子の平均粒径が、0.5〜1000μmの範囲である、請求項8または9に記載の耐火樹脂組成物。
【請求項11】
前記耐火樹脂組成物が、被探知成分、反応硬化性樹脂成分、熱膨張成分および無機充填材を少なくとも含む、請求項8〜10のいずれかに記載の耐火補強建築部材。
【請求項12】
前記耐火樹脂組成物に含まれる反応硬化性樹脂成分が、ウレタン樹脂フォーム、イソシアヌレート樹脂フォーム、エポキシ樹脂フォーム、フェノール樹脂フォーム、尿素樹脂フォーム、不飽和ポリエステル樹脂フォーム、アルキド樹脂フォーム、メラミン樹脂フォーム、ジアリルフタレート樹脂フォームおよびシリコーン樹脂フォームからなる群から選ばれる少なくとも一つである、請求項8〜11のいずれかに記載の耐火樹脂組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−14948(P2013−14948A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148726(P2011−148726)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】