槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造
【課題】精度の高い計量を行うことができる秤を提供する。
【解決手段】体重計1が備える支点板バネ6は、板バネから形成されており、ベースエッジ34の備える連結溝34aにその圧入部62を圧入させている。各槓桿4,5は、支点板バネ6が備える圧入片61をその支点溝43,53に圧入させており、ベース3方向への荷重を加えられることにより、支点溝43,53への圧入片61の圧入部分を支点として同方向に回動する状態となっている。また、支点板バネ6は、屈曲方向への荷重を加えられることにより、同方向に撓む状態となっている。重点板バネ7は、各槓桿4,5が備える重点溝44,54にその圧入片71を圧入させると共に、カバーエッジ24の備える連結溝24aが圧入部72に圧入されており、カバー2に加えられた荷重を各槓桿4,5に伝達する。
【解決手段】体重計1が備える支点板バネ6は、板バネから形成されており、ベースエッジ34の備える連結溝34aにその圧入部62を圧入させている。各槓桿4,5は、支点板バネ6が備える圧入片61をその支点溝43,53に圧入させており、ベース3方向への荷重を加えられることにより、支点溝43,53への圧入片61の圧入部分を支点として同方向に回動する状態となっている。また、支点板バネ6は、屈曲方向への荷重を加えられることにより、同方向に撓む状態となっている。重点板バネ7は、各槓桿4,5が備える重点溝44,54にその圧入片71を圧入させると共に、カバーエッジ24の備える連結溝24aが圧入部72に圧入されており、カバー2に加えられた荷重を各槓桿4,5に伝達する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、槓桿式秤における槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カバーをベースに取り付けて構成される槓桿式秤としては、下記の特許文献1に記載の体重計が開示されている。この体重計は、ベースの内面の4隅にある支点エッジで、それぞれベースの中央部側に向けて延びた各槓桿の一端を支持している。ベースの後側隅部の支点エッジで支持された各長機槓桿は、ベースの前端部まで延びて先端部を受け台で支持されている。ベースの前側隅部の支点エッジで支持された各短機槓桿の他端は、後側隅部の支点エッジで支持された各長機槓桿の中央部で支持されている。受け台はロードセルの可動部に取り付けられている。
【0003】
カバーの内面の4隅の中央部寄りには、それぞれ重点エッジが取り付けられている。各重点エッジは、それぞれ各槓桿に支持されている。ベースとカバーとの間には引っ張りバネが介装されており、この引っ張りバネによりカバーはベース側に付勢されている。
【0004】
上方からカバーに荷重が加えられると、前側隅部の支点エッジで支持された各短機槓桿が、後側隅部の支点エッジで支持された槓桿を下方に付勢する。後側隅部の支点エッジで支持された長機槓桿は、カバーから直接加えられる荷重と、前側隅部の支点エッジで支持された各短機槓桿から加えられる荷重とを、受け台を介してロードセルに伝達する。これによりカバーに加えられた荷重がロードセルで検知され、体重が計量される。
【0005】
【特許文献1】特開平8−86686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の体重計では、カバーの上に足を載置する際に加えられる荷重がカバーの側方に向けて働くと、ベースに対するカバーの取付位置がずれ、これに伴い各槓桿での重点エッジの支持位置が、所定の位置からずれることがある。また、各槓桿が水平方向に移動して、支点エッジでの各槓桿の支持位置が、所定の位置からずれることがある。これらの位置ずれが生じると、各槓桿によりロードセルに伝達される荷重値も本来伝達されるべき値と異なる値となり、計量値に大きな誤差が生じることがあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決することのできる槓桿式秤における槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造を提供することを目的とする。
【0008】
この欄の記載は特許請求の範囲の記載に応じて変更されます。
このような課題を解決するために、本発明は、槓桿式秤における槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造であって、長機及び/又は短機に、それらの軸方向に直行する方向に重点板バネ及び/又は支点板バネが圧入されていることを特徴とする。
また、本発明は、槓桿式秤における槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造であって、長機及び/又は短機に、前記槓桿式秤のベースの側面に平行する方向に重点板バネ及び/又は支点板バネが圧入されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記支点板バネは、ベースエッジに圧入された一対の圧入部間に、前記圧入部の圧入方向と逆方向に向けて前記長機及び/又は短機に圧入された圧入片を備えていることを特徴とする。
また、本発明は、前記重点板バネは、カバーエッジに圧入された一対の圧入部間に、前記圧入部の圧入方向と逆方向に向けて前記長機及び/又は短機に圧入された圧入片を備えていることを特徴とする。
また、本発明は、支点板バネ及び/又は重点板バネは、一対の前記圧入部と前記圧入片との間に、それぞれ括れ部を備えていることを特徴とする。
また、本発明は、前記圧入片が圧入された前記長機及び/又は短機を側面から挟み込む挟持片を備えていることを特徴とする。
また、本発明は、前記圧入片は、前記長機及び/又は短機の軸方向に屈曲した屈曲片及び/又は湾曲した屈曲部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、精度の高い計量を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の最良の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の体重計1を上方から見た斜視図である。また、図2は、体重計1のカバー2を内面側から見た斜視図である。また、図3は、体重計のベース3を内面側から見た斜視図である。
【0011】
図1に示すように、体重計1は、荷重の加えられるカバー2を、ベース3に取り付けて構成された槓桿式秤である。カバー2の外面は平坦に構成されており、後端部の左右方向の中央部には、カバー2に加えられた荷重を計量値として表示する表示部2aが設けられている。表示部2aは、カバー2の内面側からカバー2の外面側を臨んで配置されている。カバー2の外面の左右方向の両側部は、それぞれ被験者が左右の足を載置する載置部2bとなっている。
【0012】
図2に示すように、カバー2は、略四角形状の板状体から構成される荷重受部21と、この荷重受部21の縁部から内面側に延びる側壁部22とを備えて構成されている。荷重受部21の内面の四隅には連結部23が固定されている。各連結部23は、互いに向かい合う一対のカバーエッジ24を備えている。両カバーエッジ24の対向する位置には、連結溝24aが形成されている。連結溝24aは、カバーエッジ24の両主面間を貫通し、カバーエッジ24の上縁から下縁側に向けて垂直に延びている。連結部23は、両カバーエッジ24の連結溝24aに後述する重点板バネ7の備える圧入部72が圧入されて、重点板バネ7を支持する。連結溝24aは、重点板バネ7の圧入部72の厚さとほぼ等しい幅を有している。
【0013】
荷重受部21の前端側の左右の隅部に位置する連結部23は、支持した重点板バネ7の一主面が荷重受部21の後端側の左右の幅方向の中央部を向くように、荷重受部21に固定されている。また、荷重受部21の後端側の左右の隅部に位置する連結部23は、支持した重点板バネ7の一主面が荷重受部21の前端側を向くように、荷重受部21に固定されている。
【0014】
図3に示すように、ベース3は、略四角形状の板状体から構成される底板部31と、この底板部31の縁部から内面側に延びる側壁部32とを備えて構成されている。底板部31の内面の四隅には、連結部33が固定されている。
【0015】
各連結部33は、互いに向かい合う一対のベースエッジ34を備えている。両ベースエッジ34の対向する位置には、連結溝34aが形成されている。連結溝34aは、ベースエッジ34の両主面間を貫通し、ベースエッジ34の上縁から下縁側に向けて垂直に延びている。連結部33は、両ベースエッジ34の連結溝34aに後述する支点板バネ6が備える圧入部62が圧入されて、支点板バネ6を支持する。連結溝34aは、支点板バネ6の圧入部62の厚さとほぼ等しい幅を有している。
【0016】
底板部31の前端側の左右の隅部に位置する連結部33は、支持した支点板バネ6の一主面が底板部31の後端側の左右の幅方向の中央部を向くように、底板部31に固定されている。また、底板部31の後端側の左右の隅部に位置する連結部33は、支持した支点板バネ6の一主面が底板部31の前端側を向くように、底板部31に固定されている。
【0017】
図4(a)は体重計1が備える支点板バネ6、同図(b)は重点板バネ7、同図(c)は中間エッジ8の構成の概略を示す正面図である。図4(a)に示すように、支点板バネ6は、左右方向に向けて直線状に延びる上辺部6aの左右の両端部及び中央部に、それぞれ下方に向けて直線状に延びる左辺部6b,右辺部6c,及び中辺部6dを設けると共に、左辺部6bの先端に左方に延びる左突辺部6b1、右辺部6cの先端に右方に延びる右突辺部6c1をそれぞれ設けた形状の板バネから構成されている。
【0018】
左辺部6b,右辺部6c,及び中辺部6dは、それぞれほぼ同じ幅を有して上辺部6aから下方に延びている。左突辺部6b1及び右突辺部6c1の先端には、それぞれ上方に向けて拡幅した拡幅部6b2,6c2が設けられている。中辺部6dの先端は、左突辺部6b1及び右突辺部6c1の拡幅部6b2,6c2の上縁とほぼ等しい高さに位置している。中辺部6dは、後述する各槓桿4,5の支点溝43,53に圧入される圧入片61を構成している。また、左突辺部6b1及び右突辺部6c1の拡幅部6b2,6c2よりも基端側は、ベース3のベースエッジ34が備える連結溝34aに圧入される圧入部62を構成している。
【0019】
図4(b)に示すように、重点板バネ7は、支点板バネ6と同様の形状を有した板バネから構成されている。重点板バネ7の中辺部7dは、後述する各槓桿4,5の重点溝44,54に圧入される圧入片71を構成している。また、左突辺部7b1及び右突辺部7c1の拡幅部7b2,7c2よりも基端側は、カバー2のカバーエッジ24が備える連結溝24aに圧入される圧入部72を構成している。
【0020】
図4(c)に示すように、中間エッジ8は、略四角形の環状を呈した平板から構成されている。中間エッジ8は、後述する短機槓桿4の作用点溝45及び長機槓桿5の荷重伝達溝55を受ける溝受部81を、一対の短辺8a,8bの内側の縁部に備えている。溝受部81は、中間エッジ8の各短辺8a,8bの内側の縁部に、矩形の切欠部を設けることにより構成されている。中間エッジ8の各短辺8a,8bと隣り合う一対の長辺は、同一方向に同じ回転角度だけねじれた形状を有している。このねじれ角度は、支点板バネ6を介してベースエッジ34に取り付けられた短機槓桿4の作用点溝45の延設方向に対する、支点板バネ6を介してベースエッジ34に取り付けられた長機槓桿5の荷重伝達溝55の延設方向の角度と等しい角度に設定されている。
【0021】
図5は、短機槓桿4の構成の概略を示す側面図である。また、図6は、長機槓桿5の構成の概略を示す側面図である。図5に示すように、短機槓桿4は、基端部4bから先端部4aにかけて全体として徐々に縮幅して延びる側面形状を有している。短機槓桿4の先端部4aは、上縁部に矩形の切欠を設けて縮幅させた形状を有している。短機槓桿4の先端部4aの縮幅部分は、中間エッジ8に挿通される挿通部41を構成している。また、短機槓桿4の基端部4bは、下縁が上縁側に向けて基端側に傾斜した後、基端側に向けて延びる形状の切欠を設けて縮幅させた側面形状を有している。短機槓桿4の基端部4bの縮幅部分は、支点板バネ6に支持される支持部42を構成している。
【0022】
支持部42には、支点板バネ6を受ける支点溝43が形成されている。支点溝43は、短機槓桿4の左右の両側面を貫通し、下縁部から上縁部側に向けて延びている。支点溝43は、支持部42の下縁から奥側に向けて徐々に縮幅し、深さ方向の中央部ではほぼ等しい幅で延びた後、奥側に向けて徐々に縮幅し、奥部43aではほぼ等しい幅で平坦な底面まで延びる側面形状を有している。支点溝43の奥部43aは、支点板バネ6の圧入片61の厚さとほぼ等しい幅を有している。
【0023】
短機槓桿4の基端部4b寄りの中央部4cには、重点板バネ7を受ける重点溝44が形成されている。重点溝44は、短機槓桿4の上縁部から下縁部側に向けて延びる、支点溝43と同じ形状の溝から構成されている。
【0024】
挿通部41には、中間エッジ8を受ける作用点溝45が形成されている。作用点溝45は、短機槓桿4の左右の両側面を貫通し、下縁部から上縁部側に向けて延びている。作用点溝45は、2等辺三角形の頂点を短機槓桿4の上縁側に向けて配置した側面形状を有している。
【0025】
図6に示すように、長機槓桿5は、基端部5bから長さ方向の中央部にかけて全体として等しい幅で延びる側面形状を有している。長機槓桿5の先端部5aは、下縁が上縁側に向けて上昇する2段の段差5a1,5a2を有する側面形状を呈している。基端側に位置する1段目の段差部分5a1は、中間エッジ8に挿通される挿通部51を構成している。また、先端側に位置する2段目の段差部分5a2は、後述する連結片91に固定される固定部56を構成している。固定部56の下縁には、固定部56の延設方向に沿って配列された2つの固定突起56aが設けられている。固定突起56aは、固定部56の下方に向けて突出している。
【0026】
また、長機槓桿5の基端部5bは、下縁が上縁側に向けて基端側に傾斜した後、基端側に向けて延びる切欠を設けて縮幅させた側面形状を有している。長機槓桿5の基端部5bの縮幅部分は、支点板バネ6に支持される支持部52を構成している。
【0027】
長機槓桿5は、支持部52に形成されて支点板バネ6を受ける支点溝53と、基端部5b寄りの中央部5cに形成されて重点板バネ7を受ける重点溝54と、挿通部51に形成されて中間エッジ8を受ける荷重伝達溝55とを備えている。
【0028】
支点溝53及び重点溝54は、短機槓桿4の備える支点溝43又は重点溝44とほぼ同じ形状を有しているが、ほぼ等しい幅で延びる奥部53a,54aを除いて、支点溝43又は重点溝44に比べてやや幅広に形成された側面形状を有している。また、奥部53a,54aが、長機槓桿5の延設方向に対して所定角度だけ傾斜して、長機槓桿5の左右の幅方向に延びている。
【0029】
荷重伝達溝55は、直角三角形の頂点を長機槓桿5の下縁部に向けて配置した側面形状を有している。また、三角形の頂点部分からなる奥部55aが、支点溝53及び重点溝54の奥部53a,54aとほぼ等しい所定角度だけ、長機槓桿5の延設方向に対して傾斜して、長機槓桿5の左右の幅方向に延びている。
【0030】
これらを備えて構成される体重計1において、支点板バネ6は、図3に示すように、ベースエッジ34の備える連結溝34aにその圧入部62を圧入させてベースエッジ34に取り付けられている。具体的には、連結溝34aの底面に圧入部62が当接するまで圧入部62を連結溝34aに圧入することにより、ベースエッジ34に支点板バネ6が取り付けられている。
【0031】
図5及び図6に示すように、各槓桿4,5は、支点板バネ6が備える圧入片61をその支点溝43,53に圧入させて支点板バネ6に取り付けられている。具体的には、支点溝43,53の奥部43a,53aに圧入片61を圧入することにより、支点板バネ6に各槓桿4,5が取り付けられている。支点溝43に圧入されて短機槓桿4に取り付けられた支点板バネ6は、各短機槓桿4の軸方向に直行する方向に延び、支点溝53に圧入されて長機槓桿5に取り付けられた支点板バネ6は、ベース3の後端側の側壁部32に平行する方向に延びて、それぞれ位置している。
【0032】
このようにして支点板バネ6に取り付けられた各槓桿4,5は、ベース3側(図5及び図6中矢印A方向)への荷重を加えられることにより、支点溝43,53への圧入片61の圧入部分を支点として同方向に回動する状態となっている。また、支点板バネ6は、図5及び図6中矢印B方向への荷重を加えられることにより、同方向に撓む状態となっている。
【0033】
図5及び図6に示すように、重点板バネ7は、各槓桿4,5が備える重点溝44,54にその圧入片71を圧入させて各槓桿4,5に取り付けられている。具体的には、重点溝44,54の奥部44a,54aに圧入片71を圧入することにより、各槓桿4,5に重点板バネ7が取り付けられている。このようにして各槓桿4,5に取り付けられた重点板バネ7は、図2に示すカバーエッジ24の備える連結溝24aが圧入部72に圧入されてカバーエッジ24に取り付けられている。具体的には、連結溝24aの底面に圧入部72が当接するまで圧入部72を連結溝24aに圧入することにより、カバーエッジ24に重点板バネ7が取り付けられている。これにより、カバー2に加えられた荷重が、カバーエッジ24を介して、重点板バネ7により各槓桿4,5に伝達される状態となっている。
【0034】
図3に示すように、中間エッジ8には、各槓桿4,5の挿通部41,51が挿通されている。中間エッジ8は、図5に示すように下側の短辺8bの溝受部81で短機槓桿4の作用点溝45を受けると共に、図6に示すように上側の短辺8aの溝受部81で長機槓桿5の荷重伝達溝55を受けている。これらの各図に示すように、下側の短辺8bの溝受部81には、作用点溝45の奥部45aが係入している。また、上側の短辺8aの溝受部81には、荷重伝達溝55の奥部55aが係入している。このようにして中間エッジ8に両槓桿4,5の挿通部41,51が挿通されることにより、短機槓桿4は、図3に示すように、中間エッジ8を介して長機槓桿5の下方に吊り下げられた状態となっている。
【0035】
長機槓桿5の固定部56は、その下縁に設けられた固定突起56aが連結片91の図示しない固着孔に挿通されると共に固定突起56aの先端が拡開されることにより、拡開部分を図示しない固着孔の周縁に係止させて、図3に示すように連結片91に固定されている。
【0036】
図3に示すように、連結片91には伝達槓桿92が取り付けられている。連結片91から突出した伝達槓桿92の先端部には、略四角形の環状を呈した終端エッジ93が挿通されている。終端エッジ93は取付片94に支持されており、伝達槓桿92は終端エッジ93を介して取付片94に吊り下げられた状態となっている。取付片94は、ロードセル95の可動部に固定されている。ロードセル95の固定部は、固定片96を介してベース3に固定されている。
【0037】
次に、本実施形態の体重計1での計量時の動作について説明する。ベース3が床面上に載置された状態において、図3に示すように、体重計1が備える各短機槓桿4は、支点板バネ6で支持部42を支持されると共に、挿通部41を中間エッジ8で支持されている。また、各長機槓桿5は、支点板バネ6で支持部52を支持されると共に、固定部56を連結片91で支持され、挿通部51で中間エッジ8を支持している。また、各槓桿4,5は、重点板バネ7を介してカバー2を支持している。
【0038】
カバー2のカバーエッジ24からは、重点板バネ7を介して所定の大きさの荷重が各槓桿4,5に加えられており、この荷重により、各槓桿4,5はベース3側(図5及び図6中矢印A方向)へ押圧されている。この押圧力により各槓桿4,5が支点溝43,53への圧入片61の圧入部分を支点として同方向に回動すると、この各槓桿4,5の回動に伴い、ベースエッジ34に取り付けられた各支点板バネ6が、図5及び図6中矢印B方向に撓む。この撓みにより支点板バネ6に生じた弾発力で、各槓桿4,5には重点板バネ7からの押圧力に抗してカバー2を上方(図5及び図6中矢印A方向と逆方向)に押し付ける力が働く。これにより、ベース3に対するカバー2の取付位置が所定の位置に保たれている。
【0039】
この状態で、被験者がカバー2の載置部2bに両足を載置する等して、カバー2に荷重が加えられると、カバー2のカバーエッジ24から重点板バネ7を介して各槓桿4,5に荷重が伝達される。このようにしてカバー2に加えられた荷重を受けた各槓桿4,5は、支点溝43,53への圧入片61の圧入部分を支点として、ベース3側(図5及び図6中矢印A方向)に大きく回動する。この各槓桿4,5の回動に伴い、ベースエッジ34に取り付けられた支点板バネ6は、図5及び図6中矢印B方向に大きく撓む。
【0040】
各短機槓桿4で受けられた荷重は、中間エッジ8を介して各長機槓桿5に伝達される。各長機槓桿5は、重点板バネ7から直接受けた荷重と、中間エッジ8を介して各短機槓桿4から伝達された荷重とを、固定部56から連結片91に伝達する。このようにして連結片91に伝達された荷重は、伝達槓桿92から終端エッジ93を介してロードセル95に伝達され、計量が行われる。
【0041】
被験者がカバー2の載置部2bに両足を載置する際等に、カバー2に対して水平方向への荷重が加えられると、カバーエッジ24を介して重点板バネ7には水平方向(図5及び図6中矢印C方向)への力が働く。
【0042】
この際、重点板バネ7の圧入部72がカバーエッジ24の連結溝24aに圧入されていることから、カバーエッジ24に対する重点板バネ7の移動が規制される。また、重点板バネ7の圧入片71が各槓桿4,5の重点溝44,54に圧入されていることから、各槓桿4,5に対する重点板バネ7の移動も規制される。また、各槓桿4,5には、重点板バネ7の圧入片71から、図5及び図6中矢印C方向への荷重が加えられるが、支点板バネ6の圧入片61が各槓桿4,5の支点溝43,53に圧入されていることから、支点板バネ6に対する各槓桿4,5の移動が規制される。また、支点板バネ6の圧入部62がベースエッジ34の連結溝34aに圧入されていることから、ベースエッジ34に対する支点板バネ6の移動も規制される。
【0043】
また、重点板バネ7は、カバーエッジ24から伝達される力により、図5及び図6中矢印D方向に撓む。この撓みにより、重点板バネ7には、伝達された荷重に抗して、荷重の負荷方向と逆方向にカバーエッジ24を押し付ける力が働く。これにより、カバーエッジ24に対する各槓桿4,5の位置が所定の位置に保たれる。また、支点板バネ6は、各槓桿4,5に伝達された力により、図5及び図6中矢印B方向に撓む。この撓みにより、重点板バネ6には、伝達された荷重に抗して、荷重の負荷方向と逆方向に各槓桿4,5を押し付ける力が働く。これにより、ベースエッジ34に対する各槓桿4,5の位置が所定の位置に保たれる。この結果、ベース3に対するカバー2の取付位置が所定の位置に保たれる。
【0044】
このように、本実施形態の体重計1によれば、カバー2に対して水平方向への荷重が加えられても、カバーエッジ24による重点板バネ7の支持位置や、各槓桿4,5による重点板バネ7の支持位置や、支点板バネ6による各槓桿4,5の支持位置や、ベースエッジ34による支点板バネ6の支持位置が所定の位置に保たれ、これによりベース3に対するカバー2の取付位置も所定位置に保たれる。この結果、これらの位置ずれが生じた状態で計量が行われるのを防止することができる。また、これらの位置ずれに伴い、カバーエッジ24やベースエッジ34や各板バネ6,7や各槓桿4,5が摩耗して、取付姿勢が変化するのを防止することもできる。この結果、計量値に大きな誤差が生じるのを防いで、計量の精度を高めることができる。
【0045】
しかも、板バネから形成されている支点板バネ6により各槓桿4,5が支持されていることから、従来の槓桿式の体重計が備えていた引っ張りバネ等の付勢手段を用いることなく、支点板バネ6の弾性力を用いて、ベース3へのカバー2の上下方向での取付位置を所定位置に保持することができる。つまり、カバーエッジ24並びに各槓桿4,5への重点板バネ7の圧入、及び、ベースエッジ34並びに各槓桿4,5への支点板バネ6の圧入により、これらが互いに移動するのを規制して、ベース3からカバー2が脱落するのを防止しつつ、支点板バネ6の弾性力を用いてカバー2を上方に付勢して、ベース3へのカバー2の取付位置を所定位置に保持することができる。このため、引っ張りバネやこのバネをカバー2及びベース3に取り付けるための構造を省略することができ、体重計1の構成を簡略化して、製造コストを低減することも可能となる。
【0046】
上記実施形態の体重計1では、短機槓桿4及び長機槓桿5を2本ずつ備え、各短機槓桿4で受けた荷重を長機槓桿5を介して伝達する構成であったが、体重計1が備える短機槓桿4及び長機槓桿5の本数は任意である。また、短機槓桿4及び長機槓桿5の何れかのみを備える構成としてもよい。また、各槓桿4,5で受けた荷重をそれぞれ別個に連結片91に伝達する構成としてもよい。また、連結片91が受けた荷重をロードセル95に伝達する構成も任意である。
【0047】
また、短機槓桿4及び長機槓桿5の構成も、支点板バネ6が圧入される支点溝43,53と、重点板バネ7が圧入される重点溝44,54とを備えており、支点板バネ6で支持されて重点板バネ7で受けた荷重を伝達することができるのであれば、任意である。また、上記実施形態の説明では、本発明を体重計1に適用した場合について説明したが、本発明は他の槓桿式秤に適用することもできる。
【0048】
また、支点板バネ6の構成は、ベースエッジ34の連結溝34a、及び、各槓桿4,5の支点溝43,53に圧入されて、板バネから形成されているのであれば、任意である。この構成によれば、各槓桿4,5の回動動作に伴い弾発力を生じさせ、その弾発力で各槓桿4,5を回動方向と逆方向に付勢することができ、しかも、ベースエッジ34に対する各槓桿4,5の位置を所定の位置に保つことができるので、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
また、重点板バネ7の構成は、カバーエッジ24の連結溝24a、及び、各槓桿4,5の重点溝44,54に圧入されて、板バネから形成されているのであれば、任意である。この構成によれば、カバーエッジ24に対する各槓桿4,5の位置を所定の位置に保つことができるので、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
例えば、図7に示すように、中辺部6dの主面に弾発部63を備える、支点板バネ60のような構成としてもよい。図7は、支点板バネ60の構成の概略を示す図であり、(a)は正面図,(b)は(a)のE−E線断面図、(c)は槓桿4,5への取付状態を説明する図である。弾発部63は、図7(a)に示すように、圧入片61を構成する中辺部6dの両主面間を貫通するコの字状の切込を、コの字の開放端を下向きにして設けて形成された舌片64を、図7(b)に示すように一主面側に屈曲させると共に、舌片64を挟んで左右に位置した箇所65を他主面側に湾曲させて構成されている。
【0051】
図7(c)に示すように、各槓桿4,5の支点溝43,53に圧入されて各槓桿4,5を支持している支点板バネ60は、屈曲した舌片64の先端を支点溝43,53の一方の側面に当接させると共に、湾曲部分65を支点溝43,53の他方の側面に当接させている。槓桿4,5の回動に伴い支点板バネ60が図7(c)中矢印B方向に撓むと、舌片64及び湾曲部分65が支点溝43の側面に押し付けられて変形し、弾発力を生じさせる。このように、図7に示す支点板バネ60によれば、舌片64及び湾曲部分65に生じた弾発力によっても付勢力を働かせることができるので、ベースエッジ34に対する各槓桿4,5の取付姿勢や取付位置を、より大きな力で所定の位置に保つことができ、上述した作用効果を効果的に得ることができる。また、圧入片61の強度を高めることもできる。
【0052】
なお、重点板バネも図7に示す支点板バネ60と同様に構成することができる。このような構成の重点板バネを用いることによっても、舌片64及び湾曲部分65に生じた弾発力を用いることにより、カバーエッジ24に対する各槓桿4,5の取付姿勢や取付位置を、より大きな力で所定の位置に保つことができ、上述した作用効果を効果的に得ることができる。これらの場合において、支点板バネ及び重点板バネの備える弾発部63は、屈曲した舌片64のみを備える構成としても、また、圧入片61の左右方向に延びる湾曲部分のみを備える構成としてもよい。
【0053】
また、図8に示す支点板バネ60aのような構成としてもよい。図8は、支点板バネ60aの構成の概略を示す正面図である。支点板バネ60aの圧入片61には、各槓桿4,5の支点溝43,53に圧入片61が圧入された状態で、各槓桿4,5を側面から挟み込む挟持片66が備えられている。この構成によれば、支点板バネ60aが槓桿4,5の側方に傾くような力が働いたときに、挟持片66の内側面が槓桿4,5の左右の側面を支持することにより、支点板バネ60aの傾きが防止される。このため、体重計1による計量の精度を高めることが可能となる。
【0054】
なお、重点板バネも図8に示す支点板バネ60a等と同様に構成することができる。このような構成の重点板バネを用いることによっても、挟持片66の内側面が槓桿4,5の左右の側面を支持することにより重点板バネの傾きが防止され、同様の作用効果を得ることができる。これらの場合において、支点板バネ及び重点板バネが弾発部63を備えない構成とすることもできる。
【0055】
また、支点板バネが、各槓桿4,5の備える支点溝43,53への圧入部分と、ベースエッジ34が備える連結溝34aへの圧入部分とを結ぶ何れかの箇所に括れ部を備える構成としてもよい。また、重点板バネが、各槓桿4,5の備える重点溝44,54への圧入部分と、カバーエッジ24が備える連結溝24aへの圧入部分とを結ぶ何れかの箇所に括れ部を備える構成としてもよい。例えば、図9に示すように、縮幅部分から構成された括れ部68を備える支点板バネ60bのような構成としてもよい。
【0056】
図9は、支点板バネ60bの構成の概略を示す図であり、(a)は正面図,(b)は槓桿4,5への取付状態を説明する斜視図である。図9(a)に示す支点板バネ60bは、矩形の平板状を呈しており、左右の両側部に圧入溝67aを備え、中央部には圧入溝67bを備えている。圧入溝67aは、下縁部から上縁部に向けて直線状に延びており、ベースエッジ34が備える連結溝34aに圧入される。圧入溝67bは、支点板バネ60bの上縁部から下縁部に向けて直線状に延びており、各槓桿4,5が備える支点溝43,53に圧入される。
【0057】
圧入溝67aが設けられた支点板バネ60bの左右の両側部と圧入溝67bが設けられた中央部との間には、上縁部に上縁切欠部67c、下縁部に下縁切欠部67dが互いに向かい合って設けられている。上縁切欠部67cは支点板バネ60bの下縁側に延び、下縁切欠部67dは支点板バネ60bの上縁側に延びており、両切欠部67c,67dに挟まれた箇所は縮幅した括れ部68となっている。
【0058】
図9(b)に示すように、ベースエッジ34に取り付けられて各槓桿4,5を支持している支点板バネ60bは、各槓桿4,5に上方から荷重が加えられると、両括れ部68に挟まれた箇所が、括れ部68を中心として図9中矢印F方向に捻れ、これに伴い各槓桿4,5が同方向に回動する。
【0059】
このように、上縁切欠部67cと下縁切欠部67dとで挟まれた括れ部68を中心として捻れ易く支点板バネ60bが構成されていることから、各槓桿4,5が回動動作を行う際の支点の位置を括れ部68に定めることができる。このため、短機槓桿4の支点溝43,重点溝44,並びに作用点溝45、及び、長機槓桿5の支点溝53,重点溝54,並びに荷重伝達溝55の形成位置等も定め易くなり、また、ロードセル95に加えられる荷重も予測し易くなる。従って、体重計1の設計を容易に行うことができるようになる。
【0060】
また、重点板バネも図9に示す支点板バネ60bと同様に縮幅部分からなる括れ部を備える構成することができ、図9に示す支点板バネ60bと同様の構成とする場合には、各圧入溝67aをカバーエッジ24の連結溝24aに圧入し、圧入溝67bを各槓桿4,5の重点溝44,54に圧入して用いることができる。このような構成の重点板バネを用いることによっても、重点板バネの捻じれの中心となる位置を括れ部68に定められることから、同様の作用効果を得ることができる。
【0061】
なお、各槓桿4,5の回動動作に伴い括れ部を中心として捻れ易いのであれば、支点板バネ及び重点板バネが備える括れ部の構成は任意である。例えば、図9に示す構成の支点板バネ及び重点板バネを用いる場合において、必ずしも上縁切欠部67c及び下縁切欠部67dの双方を備える構成とする必要はなく、何れか一方のみを有する構成としてもよい。
【0062】
また、肉薄部から構成された括れ部を備える、図10に示す支点板バネ60cのような構成としてもよい。図10は、支点板バネ60cの構成の概略を示す図であり、(a)は正面図,(b)は右側面図,(c)は槓桿4,5への取付状態を説明する図である。
【0063】
図10(a)に示すように、支点板バネ60cは、図4に示す支点板バネ6と同様の正面形状を有するが、図10(a),(b)に示すように、左辺部6b及び右辺部6cにそれぞれ肉薄部69を備えている。図10(c)に示すように、ベースエッジ34に取り付けられて各槓桿4,5を支持している支点板バネ60cは、各槓桿4,5に荷重が加えられると、肉薄部69を中心として矢印G方向に捻れ、これに伴い各槓桿4,5が同方向に回動する。
【0064】
このような構成の支点板バネ60cでも、肉薄部69を中心として捻れ易く構成されていることから、各槓桿4,5が回動動作を行う際の支点の位置を肉薄部69に定めることができ、上記支点板バネ60bと同様の作用効果を得ることができる。なお、図10に示す支点板バネ60cのように肉薄部からなる括れ部を備える構成を重点板バネに適用しても、同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
以下、従来の体重計と上記実施形態の体重計1(ただし、ベース3へのカバー2の取付位置を保持する為に引っ張りバネを備えたもの)をそれぞれ用いて行った、絞り試験の結果について説明する。
【0066】
この試験に用いた従来の体重計は、ベースエッジの延設方向に移動し得るように支点エッジを支持し、各槓桿の延設方向に移動し得るように支点溝で支点エッジを支持し、カバーエッジの延設方向に移動し得るように重点エッジを支持し、各槓桿の延設方向に移動し得るように重点溝で重点エッジを支持して構成されている点で、体重計1と異なる構成を有する。
【0067】
まず、絞り試験の結果について説明する。絞り試験は、体重計のベースを固定した状態でカバーに対して水平方向に所定の荷重を加えた後とその前とでの器差の差と荷重との関係を比較する試験である。なお、器差とは、計量値から実際に加えられた荷重の値を減じた値、又は、実際に加えられた荷重の値に対する減じて得られた値の割合であり、以下の説明では、計量値から実際の荷重の値を減じた値として説明する。
【0068】
図11〜図13は、従来の体重計を用いた絞り試験の結果を示す図であり、図11(a)は前,図11(b)は後,図12(c)は左,図12(d)は右,図13(e)は右回り,図13(f)は左回りの各方向に荷重を加えた絞り試験の結果、得られたデータを示している。また、図14〜図16は、上記実施形態の体重計1を用いた絞り試験の結果を示す図であり、図14(a)は前,図14(b)は後,図15(c)は左,図15(d)は右,図16(e)は右回り,図16(f)は左回りの各方向に荷重を加えた絞り試験の結果、得られたデータを示している。これらの各図は、体重計に加えた荷重を横軸、器差の差を縦軸にそれぞれ示しており、各方向3回/台で20台の計測結果の平均値,最大値(MAX),最小値(MIN)がそれぞれ表されている。
【0069】
図11〜図13に示すように、従来の体重計では、何れの絞り方向でも、荷重が増加するにつれて器差の差の最大値と最小値とが大きく開いていることを確認できる。これは、荷重が大きくなるにつれて計量値の誤差が大きくなり、計量の精度が低くなっていることを表している。
【0070】
これに対し、体重計1では、図14〜図16に示すように、何れの絞り方向についても、荷重の大きさによる器差の差の最大値及び最小値の変化が、従来の体重計に比べて全体として小さく、その値も全体として小さな値に収まっていることが確認できる。これは、荷重の大きさに関わらずに計量値の誤差を小さく抑えて、従来の体重計に比べて精度の高い計量を行えることを表している。
【0071】
以上説明したように、絞り試験にて従来の体重計に比べて上記実施形態の体重計1の方が、精度の高い計量を長期間にわたって継続して行えることが確認された。
【0072】
この相違は、従来の体重計では、ベースエッジ及びカバーエッジと各槓桿とが、支点エッジや重点エッジを介して互いが移動し合うように取り付けられていることから、水平方向への荷重が加えられてこれらの位置関係にずれが生じたり、位置関係にずれが生じる際に各エッジや各槓桿の接触箇所が摩耗して取付姿勢に変化が生じ、このようなずれや変化が生じたまま計量が行われたからであると考えられる。
【0073】
これに対して、体重計1では、ベースエッジ34の連結溝34a及び支点溝43,53に支点板バネ6が圧入され、また、カバーエッジ24の連結溝24a及び重点溝44,54に重点板バネ7が圧入されていることから、水平方向への荷重が加えられたとしても、ベース3とカバー2との位置関係や、板バネ6,7や各槓桿4,5やエッジ24,34の位置関係にずれが生じることが抑えられ、位置関係のずれに伴い生じる摩耗も抑えられたからであると考えられる。しかも、支点板バネ6及び重点板バネ7が板バネから形成されていることから、これらの位置ずれが一時的に生じた場合にも、支点板バネ6及び重点板バネ7に生じた弾発力が、その位置ずれを補正するように働き、ベース3に対するカバー2の取付位置のずれが効果的に防止されるためであるとも考えられる。
【0074】
このため、従来の体重計では、精度の高い計量を行うためには、ベースエッジやカバーエッジや各槓桿に対する支点エッジや重点エッジの取付方向を調整したり、位置ずれを防止するための手段を別途設ける必要があると考えられる。一方、エッジ24,34や各槓桿4,5に板バネ6,7を圧入させて構成された上記実施形態の体重計1では、板バネ6,7や槓桿4,5やエッジ24,34の位置関係のずれを抑えるための配置や形状を考慮せずに、槓桿4,5や板バネ6,7やエッジ24,34の構成やこれらの位置関係を自由に設定することができ、体重計1の設計の自由度を高めることが可能になると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態の体重計の外観構成の概略を示す斜視図である。
【図2】図1に示す体重計が備えるカバーの構成の概略を示す斜視図である。
【図3】図1に示す体重計が備えるベースの構成の概略を示す斜視図である。
【図4】(a)は図1に示す体重計が備える支点板バネ、(b)は重点板バネ、(c)は中間エッジの構成の概略を示す正面図である。
【図5】図3に示すベースが備える短機槓桿の構成の概略を示す側面図である。
【図6】図3に示すベースが備える長機槓桿の構成の概略を示す側面図である。
【図7】支点板バネの構成の他の例を説明する第1の図である。
【図8】支点板バネの構成の他の例を説明する第2の図である。
【図9】支点板バネの構成の他の例を説明する第3の図である。
【図10】支点板バネの構成の他の例を説明する第4の図である。
【図11】従来の体重計を用いた絞り試験の結果を示す第1の図である。
【図12】従来の体重計を用いた絞り試験の結果を示す第2の図である。
【図13】従来の体重計を用いた絞り試験の結果を示す第3の図である。
【図14】図1に示す体重計を用いた絞り試験の結果を示す第1の図である。
【図15】図1に示す体重計を用いた絞り試験の結果を示す第2の図である。
【図16】図1に示す体重計を用いた絞り試験の結果を示す第3の図である。
【符号の説明】
【0076】
1 体重計
2 カバー
3 ベース
4 短機槓桿
41 挿通部
42 支持部
43 支点溝
44 重点溝
45 作用点溝
5 長機槓桿
51 挿通部
52 支持部
53 支点溝
54 重点溝
55 荷重伝達溝
6 支点板バネ
61 圧入片
62 圧入部
7 支点板バネ
71 圧入片
72 圧入部
8 中間エッジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、槓桿式秤における槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カバーをベースに取り付けて構成される槓桿式秤としては、下記の特許文献1に記載の体重計が開示されている。この体重計は、ベースの内面の4隅にある支点エッジで、それぞれベースの中央部側に向けて延びた各槓桿の一端を支持している。ベースの後側隅部の支点エッジで支持された各長機槓桿は、ベースの前端部まで延びて先端部を受け台で支持されている。ベースの前側隅部の支点エッジで支持された各短機槓桿の他端は、後側隅部の支点エッジで支持された各長機槓桿の中央部で支持されている。受け台はロードセルの可動部に取り付けられている。
【0003】
カバーの内面の4隅の中央部寄りには、それぞれ重点エッジが取り付けられている。各重点エッジは、それぞれ各槓桿に支持されている。ベースとカバーとの間には引っ張りバネが介装されており、この引っ張りバネによりカバーはベース側に付勢されている。
【0004】
上方からカバーに荷重が加えられると、前側隅部の支点エッジで支持された各短機槓桿が、後側隅部の支点エッジで支持された槓桿を下方に付勢する。後側隅部の支点エッジで支持された長機槓桿は、カバーから直接加えられる荷重と、前側隅部の支点エッジで支持された各短機槓桿から加えられる荷重とを、受け台を介してロードセルに伝達する。これによりカバーに加えられた荷重がロードセルで検知され、体重が計量される。
【0005】
【特許文献1】特開平8−86686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の体重計では、カバーの上に足を載置する際に加えられる荷重がカバーの側方に向けて働くと、ベースに対するカバーの取付位置がずれ、これに伴い各槓桿での重点エッジの支持位置が、所定の位置からずれることがある。また、各槓桿が水平方向に移動して、支点エッジでの各槓桿の支持位置が、所定の位置からずれることがある。これらの位置ずれが生じると、各槓桿によりロードセルに伝達される荷重値も本来伝達されるべき値と異なる値となり、計量値に大きな誤差が生じることがあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決することのできる槓桿式秤における槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造を提供することを目的とする。
【0008】
この欄の記載は特許請求の範囲の記載に応じて変更されます。
このような課題を解決するために、本発明は、槓桿式秤における槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造であって、長機及び/又は短機に、それらの軸方向に直行する方向に重点板バネ及び/又は支点板バネが圧入されていることを特徴とする。
また、本発明は、槓桿式秤における槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造であって、長機及び/又は短機に、前記槓桿式秤のベースの側面に平行する方向に重点板バネ及び/又は支点板バネが圧入されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記支点板バネは、ベースエッジに圧入された一対の圧入部間に、前記圧入部の圧入方向と逆方向に向けて前記長機及び/又は短機に圧入された圧入片を備えていることを特徴とする。
また、本発明は、前記重点板バネは、カバーエッジに圧入された一対の圧入部間に、前記圧入部の圧入方向と逆方向に向けて前記長機及び/又は短機に圧入された圧入片を備えていることを特徴とする。
また、本発明は、支点板バネ及び/又は重点板バネは、一対の前記圧入部と前記圧入片との間に、それぞれ括れ部を備えていることを特徴とする。
また、本発明は、前記圧入片が圧入された前記長機及び/又は短機を側面から挟み込む挟持片を備えていることを特徴とする。
また、本発明は、前記圧入片は、前記長機及び/又は短機の軸方向に屈曲した屈曲片及び/又は湾曲した屈曲部を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、精度の高い計量を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の最良の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態の体重計1を上方から見た斜視図である。また、図2は、体重計1のカバー2を内面側から見た斜視図である。また、図3は、体重計のベース3を内面側から見た斜視図である。
【0011】
図1に示すように、体重計1は、荷重の加えられるカバー2を、ベース3に取り付けて構成された槓桿式秤である。カバー2の外面は平坦に構成されており、後端部の左右方向の中央部には、カバー2に加えられた荷重を計量値として表示する表示部2aが設けられている。表示部2aは、カバー2の内面側からカバー2の外面側を臨んで配置されている。カバー2の外面の左右方向の両側部は、それぞれ被験者が左右の足を載置する載置部2bとなっている。
【0012】
図2に示すように、カバー2は、略四角形状の板状体から構成される荷重受部21と、この荷重受部21の縁部から内面側に延びる側壁部22とを備えて構成されている。荷重受部21の内面の四隅には連結部23が固定されている。各連結部23は、互いに向かい合う一対のカバーエッジ24を備えている。両カバーエッジ24の対向する位置には、連結溝24aが形成されている。連結溝24aは、カバーエッジ24の両主面間を貫通し、カバーエッジ24の上縁から下縁側に向けて垂直に延びている。連結部23は、両カバーエッジ24の連結溝24aに後述する重点板バネ7の備える圧入部72が圧入されて、重点板バネ7を支持する。連結溝24aは、重点板バネ7の圧入部72の厚さとほぼ等しい幅を有している。
【0013】
荷重受部21の前端側の左右の隅部に位置する連結部23は、支持した重点板バネ7の一主面が荷重受部21の後端側の左右の幅方向の中央部を向くように、荷重受部21に固定されている。また、荷重受部21の後端側の左右の隅部に位置する連結部23は、支持した重点板バネ7の一主面が荷重受部21の前端側を向くように、荷重受部21に固定されている。
【0014】
図3に示すように、ベース3は、略四角形状の板状体から構成される底板部31と、この底板部31の縁部から内面側に延びる側壁部32とを備えて構成されている。底板部31の内面の四隅には、連結部33が固定されている。
【0015】
各連結部33は、互いに向かい合う一対のベースエッジ34を備えている。両ベースエッジ34の対向する位置には、連結溝34aが形成されている。連結溝34aは、ベースエッジ34の両主面間を貫通し、ベースエッジ34の上縁から下縁側に向けて垂直に延びている。連結部33は、両ベースエッジ34の連結溝34aに後述する支点板バネ6が備える圧入部62が圧入されて、支点板バネ6を支持する。連結溝34aは、支点板バネ6の圧入部62の厚さとほぼ等しい幅を有している。
【0016】
底板部31の前端側の左右の隅部に位置する連結部33は、支持した支点板バネ6の一主面が底板部31の後端側の左右の幅方向の中央部を向くように、底板部31に固定されている。また、底板部31の後端側の左右の隅部に位置する連結部33は、支持した支点板バネ6の一主面が底板部31の前端側を向くように、底板部31に固定されている。
【0017】
図4(a)は体重計1が備える支点板バネ6、同図(b)は重点板バネ7、同図(c)は中間エッジ8の構成の概略を示す正面図である。図4(a)に示すように、支点板バネ6は、左右方向に向けて直線状に延びる上辺部6aの左右の両端部及び中央部に、それぞれ下方に向けて直線状に延びる左辺部6b,右辺部6c,及び中辺部6dを設けると共に、左辺部6bの先端に左方に延びる左突辺部6b1、右辺部6cの先端に右方に延びる右突辺部6c1をそれぞれ設けた形状の板バネから構成されている。
【0018】
左辺部6b,右辺部6c,及び中辺部6dは、それぞれほぼ同じ幅を有して上辺部6aから下方に延びている。左突辺部6b1及び右突辺部6c1の先端には、それぞれ上方に向けて拡幅した拡幅部6b2,6c2が設けられている。中辺部6dの先端は、左突辺部6b1及び右突辺部6c1の拡幅部6b2,6c2の上縁とほぼ等しい高さに位置している。中辺部6dは、後述する各槓桿4,5の支点溝43,53に圧入される圧入片61を構成している。また、左突辺部6b1及び右突辺部6c1の拡幅部6b2,6c2よりも基端側は、ベース3のベースエッジ34が備える連結溝34aに圧入される圧入部62を構成している。
【0019】
図4(b)に示すように、重点板バネ7は、支点板バネ6と同様の形状を有した板バネから構成されている。重点板バネ7の中辺部7dは、後述する各槓桿4,5の重点溝44,54に圧入される圧入片71を構成している。また、左突辺部7b1及び右突辺部7c1の拡幅部7b2,7c2よりも基端側は、カバー2のカバーエッジ24が備える連結溝24aに圧入される圧入部72を構成している。
【0020】
図4(c)に示すように、中間エッジ8は、略四角形の環状を呈した平板から構成されている。中間エッジ8は、後述する短機槓桿4の作用点溝45及び長機槓桿5の荷重伝達溝55を受ける溝受部81を、一対の短辺8a,8bの内側の縁部に備えている。溝受部81は、中間エッジ8の各短辺8a,8bの内側の縁部に、矩形の切欠部を設けることにより構成されている。中間エッジ8の各短辺8a,8bと隣り合う一対の長辺は、同一方向に同じ回転角度だけねじれた形状を有している。このねじれ角度は、支点板バネ6を介してベースエッジ34に取り付けられた短機槓桿4の作用点溝45の延設方向に対する、支点板バネ6を介してベースエッジ34に取り付けられた長機槓桿5の荷重伝達溝55の延設方向の角度と等しい角度に設定されている。
【0021】
図5は、短機槓桿4の構成の概略を示す側面図である。また、図6は、長機槓桿5の構成の概略を示す側面図である。図5に示すように、短機槓桿4は、基端部4bから先端部4aにかけて全体として徐々に縮幅して延びる側面形状を有している。短機槓桿4の先端部4aは、上縁部に矩形の切欠を設けて縮幅させた形状を有している。短機槓桿4の先端部4aの縮幅部分は、中間エッジ8に挿通される挿通部41を構成している。また、短機槓桿4の基端部4bは、下縁が上縁側に向けて基端側に傾斜した後、基端側に向けて延びる形状の切欠を設けて縮幅させた側面形状を有している。短機槓桿4の基端部4bの縮幅部分は、支点板バネ6に支持される支持部42を構成している。
【0022】
支持部42には、支点板バネ6を受ける支点溝43が形成されている。支点溝43は、短機槓桿4の左右の両側面を貫通し、下縁部から上縁部側に向けて延びている。支点溝43は、支持部42の下縁から奥側に向けて徐々に縮幅し、深さ方向の中央部ではほぼ等しい幅で延びた後、奥側に向けて徐々に縮幅し、奥部43aではほぼ等しい幅で平坦な底面まで延びる側面形状を有している。支点溝43の奥部43aは、支点板バネ6の圧入片61の厚さとほぼ等しい幅を有している。
【0023】
短機槓桿4の基端部4b寄りの中央部4cには、重点板バネ7を受ける重点溝44が形成されている。重点溝44は、短機槓桿4の上縁部から下縁部側に向けて延びる、支点溝43と同じ形状の溝から構成されている。
【0024】
挿通部41には、中間エッジ8を受ける作用点溝45が形成されている。作用点溝45は、短機槓桿4の左右の両側面を貫通し、下縁部から上縁部側に向けて延びている。作用点溝45は、2等辺三角形の頂点を短機槓桿4の上縁側に向けて配置した側面形状を有している。
【0025】
図6に示すように、長機槓桿5は、基端部5bから長さ方向の中央部にかけて全体として等しい幅で延びる側面形状を有している。長機槓桿5の先端部5aは、下縁が上縁側に向けて上昇する2段の段差5a1,5a2を有する側面形状を呈している。基端側に位置する1段目の段差部分5a1は、中間エッジ8に挿通される挿通部51を構成している。また、先端側に位置する2段目の段差部分5a2は、後述する連結片91に固定される固定部56を構成している。固定部56の下縁には、固定部56の延設方向に沿って配列された2つの固定突起56aが設けられている。固定突起56aは、固定部56の下方に向けて突出している。
【0026】
また、長機槓桿5の基端部5bは、下縁が上縁側に向けて基端側に傾斜した後、基端側に向けて延びる切欠を設けて縮幅させた側面形状を有している。長機槓桿5の基端部5bの縮幅部分は、支点板バネ6に支持される支持部52を構成している。
【0027】
長機槓桿5は、支持部52に形成されて支点板バネ6を受ける支点溝53と、基端部5b寄りの中央部5cに形成されて重点板バネ7を受ける重点溝54と、挿通部51に形成されて中間エッジ8を受ける荷重伝達溝55とを備えている。
【0028】
支点溝53及び重点溝54は、短機槓桿4の備える支点溝43又は重点溝44とほぼ同じ形状を有しているが、ほぼ等しい幅で延びる奥部53a,54aを除いて、支点溝43又は重点溝44に比べてやや幅広に形成された側面形状を有している。また、奥部53a,54aが、長機槓桿5の延設方向に対して所定角度だけ傾斜して、長機槓桿5の左右の幅方向に延びている。
【0029】
荷重伝達溝55は、直角三角形の頂点を長機槓桿5の下縁部に向けて配置した側面形状を有している。また、三角形の頂点部分からなる奥部55aが、支点溝53及び重点溝54の奥部53a,54aとほぼ等しい所定角度だけ、長機槓桿5の延設方向に対して傾斜して、長機槓桿5の左右の幅方向に延びている。
【0030】
これらを備えて構成される体重計1において、支点板バネ6は、図3に示すように、ベースエッジ34の備える連結溝34aにその圧入部62を圧入させてベースエッジ34に取り付けられている。具体的には、連結溝34aの底面に圧入部62が当接するまで圧入部62を連結溝34aに圧入することにより、ベースエッジ34に支点板バネ6が取り付けられている。
【0031】
図5及び図6に示すように、各槓桿4,5は、支点板バネ6が備える圧入片61をその支点溝43,53に圧入させて支点板バネ6に取り付けられている。具体的には、支点溝43,53の奥部43a,53aに圧入片61を圧入することにより、支点板バネ6に各槓桿4,5が取り付けられている。支点溝43に圧入されて短機槓桿4に取り付けられた支点板バネ6は、各短機槓桿4の軸方向に直行する方向に延び、支点溝53に圧入されて長機槓桿5に取り付けられた支点板バネ6は、ベース3の後端側の側壁部32に平行する方向に延びて、それぞれ位置している。
【0032】
このようにして支点板バネ6に取り付けられた各槓桿4,5は、ベース3側(図5及び図6中矢印A方向)への荷重を加えられることにより、支点溝43,53への圧入片61の圧入部分を支点として同方向に回動する状態となっている。また、支点板バネ6は、図5及び図6中矢印B方向への荷重を加えられることにより、同方向に撓む状態となっている。
【0033】
図5及び図6に示すように、重点板バネ7は、各槓桿4,5が備える重点溝44,54にその圧入片71を圧入させて各槓桿4,5に取り付けられている。具体的には、重点溝44,54の奥部44a,54aに圧入片71を圧入することにより、各槓桿4,5に重点板バネ7が取り付けられている。このようにして各槓桿4,5に取り付けられた重点板バネ7は、図2に示すカバーエッジ24の備える連結溝24aが圧入部72に圧入されてカバーエッジ24に取り付けられている。具体的には、連結溝24aの底面に圧入部72が当接するまで圧入部72を連結溝24aに圧入することにより、カバーエッジ24に重点板バネ7が取り付けられている。これにより、カバー2に加えられた荷重が、カバーエッジ24を介して、重点板バネ7により各槓桿4,5に伝達される状態となっている。
【0034】
図3に示すように、中間エッジ8には、各槓桿4,5の挿通部41,51が挿通されている。中間エッジ8は、図5に示すように下側の短辺8bの溝受部81で短機槓桿4の作用点溝45を受けると共に、図6に示すように上側の短辺8aの溝受部81で長機槓桿5の荷重伝達溝55を受けている。これらの各図に示すように、下側の短辺8bの溝受部81には、作用点溝45の奥部45aが係入している。また、上側の短辺8aの溝受部81には、荷重伝達溝55の奥部55aが係入している。このようにして中間エッジ8に両槓桿4,5の挿通部41,51が挿通されることにより、短機槓桿4は、図3に示すように、中間エッジ8を介して長機槓桿5の下方に吊り下げられた状態となっている。
【0035】
長機槓桿5の固定部56は、その下縁に設けられた固定突起56aが連結片91の図示しない固着孔に挿通されると共に固定突起56aの先端が拡開されることにより、拡開部分を図示しない固着孔の周縁に係止させて、図3に示すように連結片91に固定されている。
【0036】
図3に示すように、連結片91には伝達槓桿92が取り付けられている。連結片91から突出した伝達槓桿92の先端部には、略四角形の環状を呈した終端エッジ93が挿通されている。終端エッジ93は取付片94に支持されており、伝達槓桿92は終端エッジ93を介して取付片94に吊り下げられた状態となっている。取付片94は、ロードセル95の可動部に固定されている。ロードセル95の固定部は、固定片96を介してベース3に固定されている。
【0037】
次に、本実施形態の体重計1での計量時の動作について説明する。ベース3が床面上に載置された状態において、図3に示すように、体重計1が備える各短機槓桿4は、支点板バネ6で支持部42を支持されると共に、挿通部41を中間エッジ8で支持されている。また、各長機槓桿5は、支点板バネ6で支持部52を支持されると共に、固定部56を連結片91で支持され、挿通部51で中間エッジ8を支持している。また、各槓桿4,5は、重点板バネ7を介してカバー2を支持している。
【0038】
カバー2のカバーエッジ24からは、重点板バネ7を介して所定の大きさの荷重が各槓桿4,5に加えられており、この荷重により、各槓桿4,5はベース3側(図5及び図6中矢印A方向)へ押圧されている。この押圧力により各槓桿4,5が支点溝43,53への圧入片61の圧入部分を支点として同方向に回動すると、この各槓桿4,5の回動に伴い、ベースエッジ34に取り付けられた各支点板バネ6が、図5及び図6中矢印B方向に撓む。この撓みにより支点板バネ6に生じた弾発力で、各槓桿4,5には重点板バネ7からの押圧力に抗してカバー2を上方(図5及び図6中矢印A方向と逆方向)に押し付ける力が働く。これにより、ベース3に対するカバー2の取付位置が所定の位置に保たれている。
【0039】
この状態で、被験者がカバー2の載置部2bに両足を載置する等して、カバー2に荷重が加えられると、カバー2のカバーエッジ24から重点板バネ7を介して各槓桿4,5に荷重が伝達される。このようにしてカバー2に加えられた荷重を受けた各槓桿4,5は、支点溝43,53への圧入片61の圧入部分を支点として、ベース3側(図5及び図6中矢印A方向)に大きく回動する。この各槓桿4,5の回動に伴い、ベースエッジ34に取り付けられた支点板バネ6は、図5及び図6中矢印B方向に大きく撓む。
【0040】
各短機槓桿4で受けられた荷重は、中間エッジ8を介して各長機槓桿5に伝達される。各長機槓桿5は、重点板バネ7から直接受けた荷重と、中間エッジ8を介して各短機槓桿4から伝達された荷重とを、固定部56から連結片91に伝達する。このようにして連結片91に伝達された荷重は、伝達槓桿92から終端エッジ93を介してロードセル95に伝達され、計量が行われる。
【0041】
被験者がカバー2の載置部2bに両足を載置する際等に、カバー2に対して水平方向への荷重が加えられると、カバーエッジ24を介して重点板バネ7には水平方向(図5及び図6中矢印C方向)への力が働く。
【0042】
この際、重点板バネ7の圧入部72がカバーエッジ24の連結溝24aに圧入されていることから、カバーエッジ24に対する重点板バネ7の移動が規制される。また、重点板バネ7の圧入片71が各槓桿4,5の重点溝44,54に圧入されていることから、各槓桿4,5に対する重点板バネ7の移動も規制される。また、各槓桿4,5には、重点板バネ7の圧入片71から、図5及び図6中矢印C方向への荷重が加えられるが、支点板バネ6の圧入片61が各槓桿4,5の支点溝43,53に圧入されていることから、支点板バネ6に対する各槓桿4,5の移動が規制される。また、支点板バネ6の圧入部62がベースエッジ34の連結溝34aに圧入されていることから、ベースエッジ34に対する支点板バネ6の移動も規制される。
【0043】
また、重点板バネ7は、カバーエッジ24から伝達される力により、図5及び図6中矢印D方向に撓む。この撓みにより、重点板バネ7には、伝達された荷重に抗して、荷重の負荷方向と逆方向にカバーエッジ24を押し付ける力が働く。これにより、カバーエッジ24に対する各槓桿4,5の位置が所定の位置に保たれる。また、支点板バネ6は、各槓桿4,5に伝達された力により、図5及び図6中矢印B方向に撓む。この撓みにより、重点板バネ6には、伝達された荷重に抗して、荷重の負荷方向と逆方向に各槓桿4,5を押し付ける力が働く。これにより、ベースエッジ34に対する各槓桿4,5の位置が所定の位置に保たれる。この結果、ベース3に対するカバー2の取付位置が所定の位置に保たれる。
【0044】
このように、本実施形態の体重計1によれば、カバー2に対して水平方向への荷重が加えられても、カバーエッジ24による重点板バネ7の支持位置や、各槓桿4,5による重点板バネ7の支持位置や、支点板バネ6による各槓桿4,5の支持位置や、ベースエッジ34による支点板バネ6の支持位置が所定の位置に保たれ、これによりベース3に対するカバー2の取付位置も所定位置に保たれる。この結果、これらの位置ずれが生じた状態で計量が行われるのを防止することができる。また、これらの位置ずれに伴い、カバーエッジ24やベースエッジ34や各板バネ6,7や各槓桿4,5が摩耗して、取付姿勢が変化するのを防止することもできる。この結果、計量値に大きな誤差が生じるのを防いで、計量の精度を高めることができる。
【0045】
しかも、板バネから形成されている支点板バネ6により各槓桿4,5が支持されていることから、従来の槓桿式の体重計が備えていた引っ張りバネ等の付勢手段を用いることなく、支点板バネ6の弾性力を用いて、ベース3へのカバー2の上下方向での取付位置を所定位置に保持することができる。つまり、カバーエッジ24並びに各槓桿4,5への重点板バネ7の圧入、及び、ベースエッジ34並びに各槓桿4,5への支点板バネ6の圧入により、これらが互いに移動するのを規制して、ベース3からカバー2が脱落するのを防止しつつ、支点板バネ6の弾性力を用いてカバー2を上方に付勢して、ベース3へのカバー2の取付位置を所定位置に保持することができる。このため、引っ張りバネやこのバネをカバー2及びベース3に取り付けるための構造を省略することができ、体重計1の構成を簡略化して、製造コストを低減することも可能となる。
【0046】
上記実施形態の体重計1では、短機槓桿4及び長機槓桿5を2本ずつ備え、各短機槓桿4で受けた荷重を長機槓桿5を介して伝達する構成であったが、体重計1が備える短機槓桿4及び長機槓桿5の本数は任意である。また、短機槓桿4及び長機槓桿5の何れかのみを備える構成としてもよい。また、各槓桿4,5で受けた荷重をそれぞれ別個に連結片91に伝達する構成としてもよい。また、連結片91が受けた荷重をロードセル95に伝達する構成も任意である。
【0047】
また、短機槓桿4及び長機槓桿5の構成も、支点板バネ6が圧入される支点溝43,53と、重点板バネ7が圧入される重点溝44,54とを備えており、支点板バネ6で支持されて重点板バネ7で受けた荷重を伝達することができるのであれば、任意である。また、上記実施形態の説明では、本発明を体重計1に適用した場合について説明したが、本発明は他の槓桿式秤に適用することもできる。
【0048】
また、支点板バネ6の構成は、ベースエッジ34の連結溝34a、及び、各槓桿4,5の支点溝43,53に圧入されて、板バネから形成されているのであれば、任意である。この構成によれば、各槓桿4,5の回動動作に伴い弾発力を生じさせ、その弾発力で各槓桿4,5を回動方向と逆方向に付勢することができ、しかも、ベースエッジ34に対する各槓桿4,5の位置を所定の位置に保つことができるので、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0049】
また、重点板バネ7の構成は、カバーエッジ24の連結溝24a、及び、各槓桿4,5の重点溝44,54に圧入されて、板バネから形成されているのであれば、任意である。この構成によれば、カバーエッジ24に対する各槓桿4,5の位置を所定の位置に保つことができるので、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
例えば、図7に示すように、中辺部6dの主面に弾発部63を備える、支点板バネ60のような構成としてもよい。図7は、支点板バネ60の構成の概略を示す図であり、(a)は正面図,(b)は(a)のE−E線断面図、(c)は槓桿4,5への取付状態を説明する図である。弾発部63は、図7(a)に示すように、圧入片61を構成する中辺部6dの両主面間を貫通するコの字状の切込を、コの字の開放端を下向きにして設けて形成された舌片64を、図7(b)に示すように一主面側に屈曲させると共に、舌片64を挟んで左右に位置した箇所65を他主面側に湾曲させて構成されている。
【0051】
図7(c)に示すように、各槓桿4,5の支点溝43,53に圧入されて各槓桿4,5を支持している支点板バネ60は、屈曲した舌片64の先端を支点溝43,53の一方の側面に当接させると共に、湾曲部分65を支点溝43,53の他方の側面に当接させている。槓桿4,5の回動に伴い支点板バネ60が図7(c)中矢印B方向に撓むと、舌片64及び湾曲部分65が支点溝43の側面に押し付けられて変形し、弾発力を生じさせる。このように、図7に示す支点板バネ60によれば、舌片64及び湾曲部分65に生じた弾発力によっても付勢力を働かせることができるので、ベースエッジ34に対する各槓桿4,5の取付姿勢や取付位置を、より大きな力で所定の位置に保つことができ、上述した作用効果を効果的に得ることができる。また、圧入片61の強度を高めることもできる。
【0052】
なお、重点板バネも図7に示す支点板バネ60と同様に構成することができる。このような構成の重点板バネを用いることによっても、舌片64及び湾曲部分65に生じた弾発力を用いることにより、カバーエッジ24に対する各槓桿4,5の取付姿勢や取付位置を、より大きな力で所定の位置に保つことができ、上述した作用効果を効果的に得ることができる。これらの場合において、支点板バネ及び重点板バネの備える弾発部63は、屈曲した舌片64のみを備える構成としても、また、圧入片61の左右方向に延びる湾曲部分のみを備える構成としてもよい。
【0053】
また、図8に示す支点板バネ60aのような構成としてもよい。図8は、支点板バネ60aの構成の概略を示す正面図である。支点板バネ60aの圧入片61には、各槓桿4,5の支点溝43,53に圧入片61が圧入された状態で、各槓桿4,5を側面から挟み込む挟持片66が備えられている。この構成によれば、支点板バネ60aが槓桿4,5の側方に傾くような力が働いたときに、挟持片66の内側面が槓桿4,5の左右の側面を支持することにより、支点板バネ60aの傾きが防止される。このため、体重計1による計量の精度を高めることが可能となる。
【0054】
なお、重点板バネも図8に示す支点板バネ60a等と同様に構成することができる。このような構成の重点板バネを用いることによっても、挟持片66の内側面が槓桿4,5の左右の側面を支持することにより重点板バネの傾きが防止され、同様の作用効果を得ることができる。これらの場合において、支点板バネ及び重点板バネが弾発部63を備えない構成とすることもできる。
【0055】
また、支点板バネが、各槓桿4,5の備える支点溝43,53への圧入部分と、ベースエッジ34が備える連結溝34aへの圧入部分とを結ぶ何れかの箇所に括れ部を備える構成としてもよい。また、重点板バネが、各槓桿4,5の備える重点溝44,54への圧入部分と、カバーエッジ24が備える連結溝24aへの圧入部分とを結ぶ何れかの箇所に括れ部を備える構成としてもよい。例えば、図9に示すように、縮幅部分から構成された括れ部68を備える支点板バネ60bのような構成としてもよい。
【0056】
図9は、支点板バネ60bの構成の概略を示す図であり、(a)は正面図,(b)は槓桿4,5への取付状態を説明する斜視図である。図9(a)に示す支点板バネ60bは、矩形の平板状を呈しており、左右の両側部に圧入溝67aを備え、中央部には圧入溝67bを備えている。圧入溝67aは、下縁部から上縁部に向けて直線状に延びており、ベースエッジ34が備える連結溝34aに圧入される。圧入溝67bは、支点板バネ60bの上縁部から下縁部に向けて直線状に延びており、各槓桿4,5が備える支点溝43,53に圧入される。
【0057】
圧入溝67aが設けられた支点板バネ60bの左右の両側部と圧入溝67bが設けられた中央部との間には、上縁部に上縁切欠部67c、下縁部に下縁切欠部67dが互いに向かい合って設けられている。上縁切欠部67cは支点板バネ60bの下縁側に延び、下縁切欠部67dは支点板バネ60bの上縁側に延びており、両切欠部67c,67dに挟まれた箇所は縮幅した括れ部68となっている。
【0058】
図9(b)に示すように、ベースエッジ34に取り付けられて各槓桿4,5を支持している支点板バネ60bは、各槓桿4,5に上方から荷重が加えられると、両括れ部68に挟まれた箇所が、括れ部68を中心として図9中矢印F方向に捻れ、これに伴い各槓桿4,5が同方向に回動する。
【0059】
このように、上縁切欠部67cと下縁切欠部67dとで挟まれた括れ部68を中心として捻れ易く支点板バネ60bが構成されていることから、各槓桿4,5が回動動作を行う際の支点の位置を括れ部68に定めることができる。このため、短機槓桿4の支点溝43,重点溝44,並びに作用点溝45、及び、長機槓桿5の支点溝53,重点溝54,並びに荷重伝達溝55の形成位置等も定め易くなり、また、ロードセル95に加えられる荷重も予測し易くなる。従って、体重計1の設計を容易に行うことができるようになる。
【0060】
また、重点板バネも図9に示す支点板バネ60bと同様に縮幅部分からなる括れ部を備える構成することができ、図9に示す支点板バネ60bと同様の構成とする場合には、各圧入溝67aをカバーエッジ24の連結溝24aに圧入し、圧入溝67bを各槓桿4,5の重点溝44,54に圧入して用いることができる。このような構成の重点板バネを用いることによっても、重点板バネの捻じれの中心となる位置を括れ部68に定められることから、同様の作用効果を得ることができる。
【0061】
なお、各槓桿4,5の回動動作に伴い括れ部を中心として捻れ易いのであれば、支点板バネ及び重点板バネが備える括れ部の構成は任意である。例えば、図9に示す構成の支点板バネ及び重点板バネを用いる場合において、必ずしも上縁切欠部67c及び下縁切欠部67dの双方を備える構成とする必要はなく、何れか一方のみを有する構成としてもよい。
【0062】
また、肉薄部から構成された括れ部を備える、図10に示す支点板バネ60cのような構成としてもよい。図10は、支点板バネ60cの構成の概略を示す図であり、(a)は正面図,(b)は右側面図,(c)は槓桿4,5への取付状態を説明する図である。
【0063】
図10(a)に示すように、支点板バネ60cは、図4に示す支点板バネ6と同様の正面形状を有するが、図10(a),(b)に示すように、左辺部6b及び右辺部6cにそれぞれ肉薄部69を備えている。図10(c)に示すように、ベースエッジ34に取り付けられて各槓桿4,5を支持している支点板バネ60cは、各槓桿4,5に荷重が加えられると、肉薄部69を中心として矢印G方向に捻れ、これに伴い各槓桿4,5が同方向に回動する。
【0064】
このような構成の支点板バネ60cでも、肉薄部69を中心として捻れ易く構成されていることから、各槓桿4,5が回動動作を行う際の支点の位置を肉薄部69に定めることができ、上記支点板バネ60bと同様の作用効果を得ることができる。なお、図10に示す支点板バネ60cのように肉薄部からなる括れ部を備える構成を重点板バネに適用しても、同様の作用効果を得ることができる。
【0065】
以下、従来の体重計と上記実施形態の体重計1(ただし、ベース3へのカバー2の取付位置を保持する為に引っ張りバネを備えたもの)をそれぞれ用いて行った、絞り試験の結果について説明する。
【0066】
この試験に用いた従来の体重計は、ベースエッジの延設方向に移動し得るように支点エッジを支持し、各槓桿の延設方向に移動し得るように支点溝で支点エッジを支持し、カバーエッジの延設方向に移動し得るように重点エッジを支持し、各槓桿の延設方向に移動し得るように重点溝で重点エッジを支持して構成されている点で、体重計1と異なる構成を有する。
【0067】
まず、絞り試験の結果について説明する。絞り試験は、体重計のベースを固定した状態でカバーに対して水平方向に所定の荷重を加えた後とその前とでの器差の差と荷重との関係を比較する試験である。なお、器差とは、計量値から実際に加えられた荷重の値を減じた値、又は、実際に加えられた荷重の値に対する減じて得られた値の割合であり、以下の説明では、計量値から実際の荷重の値を減じた値として説明する。
【0068】
図11〜図13は、従来の体重計を用いた絞り試験の結果を示す図であり、図11(a)は前,図11(b)は後,図12(c)は左,図12(d)は右,図13(e)は右回り,図13(f)は左回りの各方向に荷重を加えた絞り試験の結果、得られたデータを示している。また、図14〜図16は、上記実施形態の体重計1を用いた絞り試験の結果を示す図であり、図14(a)は前,図14(b)は後,図15(c)は左,図15(d)は右,図16(e)は右回り,図16(f)は左回りの各方向に荷重を加えた絞り試験の結果、得られたデータを示している。これらの各図は、体重計に加えた荷重を横軸、器差の差を縦軸にそれぞれ示しており、各方向3回/台で20台の計測結果の平均値,最大値(MAX),最小値(MIN)がそれぞれ表されている。
【0069】
図11〜図13に示すように、従来の体重計では、何れの絞り方向でも、荷重が増加するにつれて器差の差の最大値と最小値とが大きく開いていることを確認できる。これは、荷重が大きくなるにつれて計量値の誤差が大きくなり、計量の精度が低くなっていることを表している。
【0070】
これに対し、体重計1では、図14〜図16に示すように、何れの絞り方向についても、荷重の大きさによる器差の差の最大値及び最小値の変化が、従来の体重計に比べて全体として小さく、その値も全体として小さな値に収まっていることが確認できる。これは、荷重の大きさに関わらずに計量値の誤差を小さく抑えて、従来の体重計に比べて精度の高い計量を行えることを表している。
【0071】
以上説明したように、絞り試験にて従来の体重計に比べて上記実施形態の体重計1の方が、精度の高い計量を長期間にわたって継続して行えることが確認された。
【0072】
この相違は、従来の体重計では、ベースエッジ及びカバーエッジと各槓桿とが、支点エッジや重点エッジを介して互いが移動し合うように取り付けられていることから、水平方向への荷重が加えられてこれらの位置関係にずれが生じたり、位置関係にずれが生じる際に各エッジや各槓桿の接触箇所が摩耗して取付姿勢に変化が生じ、このようなずれや変化が生じたまま計量が行われたからであると考えられる。
【0073】
これに対して、体重計1では、ベースエッジ34の連結溝34a及び支点溝43,53に支点板バネ6が圧入され、また、カバーエッジ24の連結溝24a及び重点溝44,54に重点板バネ7が圧入されていることから、水平方向への荷重が加えられたとしても、ベース3とカバー2との位置関係や、板バネ6,7や各槓桿4,5やエッジ24,34の位置関係にずれが生じることが抑えられ、位置関係のずれに伴い生じる摩耗も抑えられたからであると考えられる。しかも、支点板バネ6及び重点板バネ7が板バネから形成されていることから、これらの位置ずれが一時的に生じた場合にも、支点板バネ6及び重点板バネ7に生じた弾発力が、その位置ずれを補正するように働き、ベース3に対するカバー2の取付位置のずれが効果的に防止されるためであるとも考えられる。
【0074】
このため、従来の体重計では、精度の高い計量を行うためには、ベースエッジやカバーエッジや各槓桿に対する支点エッジや重点エッジの取付方向を調整したり、位置ずれを防止するための手段を別途設ける必要があると考えられる。一方、エッジ24,34や各槓桿4,5に板バネ6,7を圧入させて構成された上記実施形態の体重計1では、板バネ6,7や槓桿4,5やエッジ24,34の位置関係のずれを抑えるための配置や形状を考慮せずに、槓桿4,5や板バネ6,7やエッジ24,34の構成やこれらの位置関係を自由に設定することができ、体重計1の設計の自由度を高めることが可能になると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態の体重計の外観構成の概略を示す斜視図である。
【図2】図1に示す体重計が備えるカバーの構成の概略を示す斜視図である。
【図3】図1に示す体重計が備えるベースの構成の概略を示す斜視図である。
【図4】(a)は図1に示す体重計が備える支点板バネ、(b)は重点板バネ、(c)は中間エッジの構成の概略を示す正面図である。
【図5】図3に示すベースが備える短機槓桿の構成の概略を示す側面図である。
【図6】図3に示すベースが備える長機槓桿の構成の概略を示す側面図である。
【図7】支点板バネの構成の他の例を説明する第1の図である。
【図8】支点板バネの構成の他の例を説明する第2の図である。
【図9】支点板バネの構成の他の例を説明する第3の図である。
【図10】支点板バネの構成の他の例を説明する第4の図である。
【図11】従来の体重計を用いた絞り試験の結果を示す第1の図である。
【図12】従来の体重計を用いた絞り試験の結果を示す第2の図である。
【図13】従来の体重計を用いた絞り試験の結果を示す第3の図である。
【図14】図1に示す体重計を用いた絞り試験の結果を示す第1の図である。
【図15】図1に示す体重計を用いた絞り試験の結果を示す第2の図である。
【図16】図1に示す体重計を用いた絞り試験の結果を示す第3の図である。
【符号の説明】
【0076】
1 体重計
2 カバー
3 ベース
4 短機槓桿
41 挿通部
42 支持部
43 支点溝
44 重点溝
45 作用点溝
5 長機槓桿
51 挿通部
52 支持部
53 支点溝
54 重点溝
55 荷重伝達溝
6 支点板バネ
61 圧入片
62 圧入部
7 支点板バネ
71 圧入片
72 圧入部
8 中間エッジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
槓桿式秤における槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造であって、
長機及び/又は短機に、それらの軸方向に直行する方向に重点板バネ及び/又は支点板バネが圧入されていることを特徴とする槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【請求項2】
槓桿式秤における槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造であって、
長機及び/又は短機に、前記槓桿式秤のベースの側面に平行する方向に重点板バネ及び/又は支点板バネが圧入されていることを特徴とする請求項1に記載の槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【請求項3】
前記支点板バネは、ベースエッジに圧入された一対の圧入部間に、前記圧入部の圧入方向と逆方向に向けて前記長機及び/又は短機に圧入された圧入片を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【請求項4】
前記重点板バネは、カバーエッジに圧入された一対の圧入部間に、前記圧入部の圧入方向と逆方向に向けて前記長機及び/又は短機に圧入された圧入片を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【請求項5】
支点板バネ及び/又は重点板バネは、一対の前記圧入部と前記圧入片との間に、それぞれ括れ部を備えていることを特徴とする請求項4に記載の槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【請求項6】
前記圧入片が圧入された前記長機及び/又は短機を側面から挟み込む挟持片を備えていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【請求項7】
前記圧入片は、前記長機及び/又は短機の軸方向に屈曲した屈曲片及び/又は湾曲した屈曲部を前記長機及び/又は短機に圧入されていることを特徴とする請求項4から請求項6の何れかに記載の槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【請求項1】
槓桿式秤における槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造であって、
長機及び/又は短機に、それらの軸方向に直行する方向に重点板バネ及び/又は支点板バネが圧入されていることを特徴とする槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【請求項2】
槓桿式秤における槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造であって、
長機及び/又は短機に、前記槓桿式秤のベースの側面に平行する方向に重点板バネ及び/又は支点板バネが圧入されていることを特徴とする請求項1に記載の槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【請求項3】
前記支点板バネは、ベースエッジに圧入された一対の圧入部間に、前記圧入部の圧入方向と逆方向に向けて前記長機及び/又は短機に圧入された圧入片を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【請求項4】
前記重点板バネは、カバーエッジに圧入された一対の圧入部間に、前記圧入部の圧入方向と逆方向に向けて前記長機及び/又は短機に圧入された圧入片を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【請求項5】
支点板バネ及び/又は重点板バネは、一対の前記圧入部と前記圧入片との間に、それぞれ括れ部を備えていることを特徴とする請求項4に記載の槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【請求項6】
前記圧入片が圧入された前記長機及び/又は短機を側面から挟み込む挟持片を備えていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【請求項7】
前記圧入片は、前記長機及び/又は短機の軸方向に屈曲した屈曲片及び/又は湾曲した屈曲部を前記長機及び/又は短機に圧入されていることを特徴とする請求項4から請求項6の何れかに記載の槓桿の長機及び/又は短機の重支点構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−63315(P2009−63315A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229074(P2007−229074)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
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