説明

槽体の配管構造

【課題】槽体の排水配管において、排水時における、排水口やオーバーフロー、排水栓本体の側面の開口部などからの「ゴボゴボ」または笛のような騒音の発生を防ぎ、使用者が不快になることのない槽体の排水配管を提供する。
【解決手段】槽体の配管構造において、槽体に、排水口1と、排水口1からの排水が流れる排水配管を設け、排水配管上にマイクM及びスピーカーSを配置すると共に、任意の場所に、マイクMにて検出した検出音に対し、検出音を減衰させる減衰音をスピーカーSから出力させる消音機構部Eを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗面台、流し台、浴槽、浴室などの槽体に生じた排水を排出する、槽体の排水配管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗面台、流し台、手洗い器等の槽体の排水配管として、図3に示した従来例がある。
図3に示した従来の槽体の排水配管は、洗面台に設けられた槽体である洗面ボウルの排水配管に関するものであって、以下に記載した槽体である洗面ボウルを備えた洗面台と、排水栓本体と、トラップ部材と、接続管部材と、から構成される。
洗面台は、陶器からなる、上方が開口した箱体からなり、底面に平面視円形を成す取着口を備えた洗面ボウルと、該洗面ボウルの下方に配置されたキャビネット部分と、からなる排水機器(使用によって排水を生じる機器)である。
また、洗面ボウルは、側面にもオーバーフロー排水を行うための開口であるオーバーフロー排水口を備えると共に、該オーバーフロー排水口を通過した排水を、後述する排水栓本体の開口部に導くための、洗面ボウルと一体に成型したオーバーフロー流路を設けてなる。
オーバーフロー流路をより詳細に説明すると、オーバーフロー流路は、洗面ボウルと同じく陶器により洗面ボウルに一体に成型される部分であって、オーバーフロー排水口から取着口の周囲まで、洗面ボウルの裏側を囲むように設けられた陶器材によって流路を形成してなる。尚、取着口の直下部分のオーバーフロー流路の壁面には取着口と同様の開口が設けられており、排水栓本体を挿通可能に構成されてなる。
また、洗面ボウルの開口の周縁部分に、洗面ボウル内に給水配管からの上水を吐水する吐水装置としてのカランを備えてなる。
排水栓本体は、略円筒状にしてその内部に排水口を備えると共に、上端の外側面部分に、外側方向に連続して突出したフランジ部を備えてなる。また、フランジ部よりも下方の側面にオーバーフロー排水口からの排水を流入させるための開口部を備えてなる。また、開口部よりも下方の側面に、下端まで連続する雄ネジ部を備えてなる。また、上記雄ネジ部と螺合する雌ネジ部を備えた板ナット部材を備えてなる。
トラップ部材は管体をS字形状に屈曲させた部材であって、上流側の端部は排水栓本体の下端に接続管部材を介して接続され、排水機器の使用時には、排水が該屈曲部分に溜まることで、管体の一部分を水封状態(管の一部が水によって満水となり閉塞された状態)とし、下水側から屋内側への臭気や害虫類の逆流を防止する部材である。
接続管部材は直線状の管体からなる部材であって、排水栓本体の下端からトラップ部材の上流側端部、およびトラップ部材の下流側端部から、下水配管に繋がる床下配管までを、水密的に接続する。
また、特に詳細に図示・記載等しないが、各部材の接続箇所などにおいて、必要に応じ、各部材を水密的に接続するためのパッキングを備えてなる。
【0003】
上記のように構成された洗面台に備えられた洗面ボウルの排水配管は、以下に記載したようにして、洗面ボウルに施工される。
まず排水栓本体を、フランジ部側を上方にした上で、フランジ部下面が、取着口の周縁上面に当接するまで挿通する。この時、排水栓本体の下端は、オーバーフロー流路の、取着口直下の開口に突出するように配置される。この状態から排水栓本体の雄ネジ部に、板ナット部材の雌ネジ部を螺合させると、取着口の周縁(及びオーバーフロー流路の取着口の直下の開口周縁)を、フランジ部下面と、板ナット部材上面とで挟持することとなり、排水栓本体を洗面ボウルに固定することができる。この時、開口部はオーバーフロー流路に対して開口することとなる。
次に、接続管部材を介して、、排水栓本体の下端からトラップ部材の上流側端部、及びトラップ部材の下流側端部から床下配管までを、水密的に接続して、洗面ボウルへの排水配管の施工が完了する。
【0004】
上記のように排水配管を施工した洗面ボウルにおいて、洗面ボウル内部に排水が発生すると、排水は、排水口から排水栓本体内部、接続管部材、トラップ部材、接続管部材を介し、最終的には床下配管から下水側に排出される。
また、排水口をゴム栓などで閉塞した場合、排水は洗面ボウル内部に溜まるが、洗面ボウル内の排水の水位がオーバーフロー排水口の下端に達すると、それ以降の排水はオーバーフロー排水口から、オーバーフロー流路を通過し、開口部、排水栓本体内部、接続管部材、トラップ部材、接続管部材を介し、最終的には床下配管から下水側に排出される。
また、上記のようにして排水配管を使用することで、トラップ部材の屈曲部分には排水が溜まり、管体の一部分を水封状態とするので、下水側から屋内側への臭気や害虫類の逆流を防止することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2010−077667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来例に示した、洗面ボウルの排水配管では、排水の際に排水の流路に対する開口部から空気の引き込みが生じ、それが原因となって騒音が発生する。
具体的に説明すると、洗面ボウル内に排水が生じ、排水口から排水栓本体内部を通じて排水を行う場合、排水口から単純に排水だけが流れ込むだけでなく、同時に排水口から空気も引き込まれ、「ゴボゴボ」といった空気の泡に由来する騒音が発生する。また、同じく排水口からの排水時、開口部を介して排水口からの排水を行う配管が、オーバーフロー流路にも接続されているため、オーバーフロー排水口にも負圧による空気の引き込みが生じ、「ゴボゴボ」または笛のような騒音が発生する。
また、排水口を閉塞し、オーバーフロー排水口から排水が発生するようにすると、排水口と同様に、オーバーフロー排水口から排水以外に空気も引き込まれ、「ゴボゴボ」といった騒音が発生する。もちろんこれら空気に由来する騒音以外に、排水が流れる際、排水が流路や配管の壁と衝突することで発生する騒音も存在する。
本発明は、上記の課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、槽体の排水配管において、排水時の騒音の発生を防ぎ、使用者が不快になることのない槽体の排水配管を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明は、排水口1と、該排水口1からの排水が流れる排水配管を設けた槽体において、該排水配管上にマイクM及びスピーカーSを配置すると共に、任意の場所に、マイクMにて検出した検出音に対し、検出音を減衰させる減衰音をスピーカーSから出力させる消音機構部Eを備えたことを特徴とする、消音機構を備えた槽体の配管構造である。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、上記段落0007に記載の槽体の配管構造において、槽体の底面に排水口1を設け、該排水口1にマイクM及びスピーカーSを配置したことを特徴とする、消音機構を備えた槽体の配管構造である。
【0009】
請求項3に記載の本発明は、上記段落0007に記載の槽体の配管構造において、槽体の側面にオーバーフロー排水口2を設け、該オーバーフロー排水口2にマイクM及びスピーカーSを配置したことを特徴とする、消音機構を備えた槽体の配管構造である。
【0010】
請求項4に記載の本発明は、上記段落0007に記載の槽体の配管構造において、槽体の底面に排水口1を、槽体の側面にオーバーフロー排水口2を、それぞれ設けると共に、オーバーフロー排水口2からの排水が流れるオーバーフロー流路3を、オーバーフロー接続部にて排水口1からの排水が流れる排水配管に接続し、更に該オーバーフロー接続部にマイクM及びスピーカーSを配置したことを特徴とする、消音機構を備えた槽体の配管構造 である。
【0011】
請求項5に記載の本発明は、上記段落0010に記載の槽体の配管構造において、筒状にしてその内部に排水口1を形成すると共に、側面に開口部5を備えてなり、槽体の底面に配置される排水栓本体4を備え、該排水栓本体4の開口部5にオーバーフロー流路3からの排水が流れ込むように構成して、開口部5をオーバーフロー接続部としてマイクM及びスピーカーSを配置したことを特徴とする、槽体の配管構造である。
【0012】
請求項6に記載の本発明は、該吐水装置から吐水が行われることにより、上記消音機構が動作することを特徴とする、段落0007乃至段落0011のいずれか1つに記載の消音機構を備えた槽体の配管構造である。
【0013】
請求項7に記載の本発明は、前記槽体の排水配管において、排水が溜まる部分以外の排水配管上に、排水の存在を検知するセンサーSEが備えられると共に、該センサーSEに排水の存在が検知されることにより、上記消音機構が動作することを特徴とする、段落0007乃至段落0011のいずれか1つに記載の消音機構を備えた槽体の配管構造である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の本発明によれば、排水配管中において騒音が発生した場合に、騒音に対する減衰音を発生させることで、発生した騒音を減少・消滅させることができる。
請求項2に記載の本発明によれば、排水配管中の特に槽体の底面に設けた排水口において騒音が発生した場合に、騒音に対する減衰音を発生させることで、発生した騒音を減少・消滅させることができる。
請求項3に記載の本発明によれば、排水配管中の特に槽体の側面に設けたオーバーフロー排水口において騒音が発生した場合に、騒音に対する減衰音を発生させることで、発生した騒音を減少・消滅させることができる。
請求項4に記載の本発明によれば、排水配管中の、槽体の底面に設けた排水口と、槽体の側面に設けたオーバーフロー排水口とが合流する接続部分において騒音が発生した場合に、騒音に対する減衰音を発生させることで、発生した騒音を減少・消滅させることができる。
特に上記請求項2乃至請求項4に記載の効果について、減衰音によって消音を行う場合、騒音の発生箇所において、対応する減衰音を生じさせることが、効果的な消音作用を生じさせる。そのため、特に排水の騒音の発生箇所である、排水口、オーバーフロー排水口、排水口からの排水が流れる配管とオーバーフロー排水口からの排水が流れるオーバーフロー流路との合流部分である接続部、にマイクM及びスピーカーSを配置することで、特に効果的な消音を図ることができる。
請求項5に記載の本発明によれば、排水口からの排水が流れる配管と、オーバーフロー排水口からの排水が流れるオーバーフロー流路との合流部分として、一般的に利用される、側面に開口部を設けた排水栓本体を使用する場合において、マイクM及びスピーカーSを配置することで、特に効果的な消音を図ることができる。
また、槽体内部の排水は、槽体に備えられた吐水装置から吐水が行われ、排水が生じることによって発生するため、請求項6に記載のように吐水装置からの吐水に併せて消音機構を作動させたり、又は、請求項7に記載のように排水配管中に排水が存在することを検知センサーを配置し、センサーが排水を検知することに併せて消音機構を作動させることで、効率よく騒音の消音を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例を示す、一部を切り欠きした参考図である。
【図2】図1の実施例の配管構造の部材構成を示す参考図である。
【図3】本発明の他の実施例を示す、一部を切り欠きした参考図である。
【図4】従来の洗面ボウルの配管構造を示す参考図である。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明の実施例を、図面を参照しつつ説明する。
図1乃至図4に示した本発明の実施例は、洗面台Wに設けられた槽体である洗面ボウルWBの排水配管に関するものであって、
以下に記載した槽体である洗面ボウルWBを備えた洗面台Wと、排水栓本体4と、トラップ部材10と、接続管部材12と、マイクM、スピーカーS、及び消音機構部Eと、T字管部材11と、から構成される。
洗面台Wは、陶器からなる、上方が開口した箱体からなり、底面に平面視円形を成す取着口13を備えた洗面ボウルWBと、該洗面ボウルWBの下方に配置されたキャビネット部分Cと、からなる排水機器(使用によって排水を生じる機器)である。
また、洗面ボウルWBは、側面にもオーバーフロー排水を行うための開口であるオーバーフロー排水口2を備えると共に、該オーバーフロー排水口2を通過した排水を、後述する排水栓本体4の開口部5に導くための、洗面ボウルWBと一体に成型したオーバーフロー流路3を設けてなる。
オーバーフロー流路3をより詳細に説明すると、オーバーフロー流路3は、洗面ボウルWBと同じく陶器により洗面ボウルWBに一体に成型される部分であって、オーバーフロー排水口2から取着口13の周囲まで、洗面ボウルWBの裏側を囲むように設けられた陶器材によって流路を形成してなる。尚、取着口13の直下部分のオーバーフロー流路3の壁面には取着口13と同様の開口が設けられており、排水栓本体4を挿通可能に構成されてなる。
また、洗面ボウルWBの開口の周縁部分に、洗面ボウルWB内に給水配管からの上水を吐水する吐水装置としての、自動吐水機能を備えたカランKを備えてなる(給水配管は省略)。
また、このカランKには、配線L2構造が備えられ、吐水を行っている間、吐水を行っていることを情報として配線接続した機材に伝達することができる。
排水栓本体4は、略円筒状にしてその内部に排水口1を備えると共に、上端の外側面部分に、外側方向に連続して突出したフランジ部6を備えてなる。また、フランジ部6よりも下方の側面にオーバーフロー排水口2からの排水を流入させるための開口部5を備えてなる。また、開口部5よりも下方の側面に、下端まで連続する雄ネジ部7を備えてなる。また、上記雄ネジ部7と螺合する雌ネジ部9を備えた板ナット部材8を備えてなる。
トラップ部材10は管体をS字形状に屈曲させた部材であって、上流側の端部は排水栓本体4の下端に接続され、排水機器の使用時には、排水が該屈曲部分に溜まることで、管体の一部分を水封状態(管の一部が水によって満水となり閉塞された状態)とし、下水側から屋内側への臭気や害虫類の逆流を防止する部材である。
接続管部材12は直線状の管体からなる部材であって、トラップ部材10の下流側端部から、下水配管に繋がる床下配管までを、水密的に接続する。
マイクMは周囲の音(この実施例の場合、主に排水の騒音)を集音して電気信号に変換する部材である。
また、スピーカーSは電気信号を受けてこれを音に変換する部材である。
消音機構部Eは、マイクM及びスピーカーSに接続される部材であって、マイクMにて音波から変換された電気信号を元に、逆位相の音波に相当する信号を生成し、これをスピーカーSにて出力することで、排水の騒音に干渉して排水の騒音を減衰させる減衰音を発生させる機構である。該消音機構部Eは、カランKからの配線L2が接続されており、吐水が開始した状態から機能を開始させ、吐水が終了し充分な時間(排水口1を閉塞し、オーバーフロー排水口2の下端までに洗面ボウルWB内に水が満ちた満水状態から、排水口1を開口し、排水が完了する時間に、若干の予備時間を加えた時間であり、1分程度)が経過すると機能を停止させるように構成されてなる。また、本実施例では、排水口1、オーバーフロー排水口2、排水栓本体4の開口部5、にそれぞれマイクM及び対となるスピーカーSが配置され、マイクMにて集音した音の逆位相音を減衰音としてスピーカーSより出力させ、騒音に干渉してその音量を減衰(減少)させる。尚、マイクM及びスピーカーSとその配線L1は、機能を果たすのに支障の無いような位置にて、排水栓本体4または洗面ボウルWBに固定されている。また、消音機構部Eは洗面台Wの任意の位置、具体的にはキャビネット内部に収納配置される。
T字管部材11のT字管部材11は、直線状の本管部分11aと、本管部分11aの側面から延出した枝管部分11bとからなる、T字形状を90度回転させたような形状を成す管体であって、本管部分11aの両端はそれぞれ排水栓本体4の下端と、トラップ部材10の上端に接続される。また、枝管部分11bの端部は、マイクM、スピーカーSの配線L1を水密状態にて配管の外側に挿通するように構成されてなる。
また、特に詳細に図示・記載等しないが、各部材の接続箇所などにおいて、必要に応じ、各部材を水密的に接続するためのパッキングを備えてなる。
【0017】
上記のように構成された、洗面台Wに設けられた洗面ボウルWBの排水配管は、以下に記載したようにして、洗面ボウルWBに施工される。
施工を行う際において、事前に、マイクM及びスピーカーSを排水口1、オーバーフロー排水口2、開口部5にそれぞれ配置・固定する。これらマイクM及びスピーカーSの配線L1について、排水口1及び開口部5に設置されたマイクM及びスピーカーSの配線L1は排水栓本体4の内部を通過し、排水栓本体4の下端から外部に延出している。また、オーバーフロー排水口2に設置されたマイクM及びスピーカーSの配線L1はオーバーフロー流路3を通過し、取着口13内から洗面ボウルWB内部に延出している。
また、カランKの吐水の有無を伝達する配線L2を、キャビネット内にて、カランKから消音機構部Eに接続する。
このような状態より、まず排水栓本体4の側面の開口部5にオーバーフロー排水口2からのマイクM及びスピーカーSからの配線L1を挿通させ、更に排水栓本体4の内部を通過させて、排水栓本体4の下端から外部に延出させる。即ち、全てのマイクM・スピーカーSの配線L1が、排水栓本体4の内部を通過し下端から延出した状態とする。
次に、排水栓本体4を、フランジ部6側を上方にした上で、フランジ部6下面が、取着口13の周縁上面に当接するまで挿通する。この時、排水栓本体4の下端は、オーバーフロー流路3の、取着口13直下の開口に突出するように配置される。この状態から排水栓本体4の雄ネジ部7に、板ナット部材8の雌ネジ部9を螺合させると、取着口13の周縁(及びオーバーフロー流路3の取着口13の直下の開口周縁)を、フランジ部6下面と、板ナット部材8上面とで挟持することとなり、排水栓本体4を洗面ボウルWBに固定することができる。この時、開口部5はオーバーフロー流路3に対して開口することとなる。
更に、各マイクM及びスピーカーSの配線L1を、T字管部材11の本管部分11aの上方側端部から挿通し、枝管部分11bから延出させる。
その後、排水栓本体4の下端と、T字管部材11の本管部分11aの上端を水密的に接続し、更にT字管部材11の下端とトラップ部材10の上流側端部を接続する。また、トラップ部材10の下流側端部と床下配管とを接続管部材12を介して接続する。
最後に、枝管部から延出されている各マイクM及びスピーカーSの配線L1を、洗面台Wのキャビネット内部に配置した消音機構部Eに接続し、枝管部の端部を各配線L1が延出した状態で水密的に接続して、洗面ボウルWBへの排水配管の施工が完了する。
【0018】
上記のように排水配管を施工した洗面ボウルWBにおいて、洗面ボウルWB内部に排水が発生すると、排水は、排水口1から排水栓本体4内部、T字管部材11、トラップ部材10、接続管部材12を介し、最終的には床下配管から下水側に排出される。
また、排水口1をゴム栓などで閉塞した場合、排水は洗面ボウルWB内部に溜まるが、洗面ボウルWB内の排水の水位がオーバーフロー排水口2の下端に達すると、それ以降の排水はオーバーフロー排水口2から、オーバーフロー流路3を通過し、開口部5、排水栓本体4内部、T字管部材11、トラップ部材10、接続管部材12を介し、最終的には床下配管から下水側に排出される。
また、上記のようにして排水配管を使用することで、トラップ部材10の屈曲部分には排水が溜まり、管体の一部分を水封状態とするので、下水側から屋内側への臭気や害虫類の逆流を防止することができる。
【0019】
更にカランKより吐水が行われると、カランKの配線L2に接続された消音機構部Eが作動する。これにより、排水配管中の、排水口1、オーバーフロー排水口2、接続部としての排水栓本体4側面の開口部5に配置されたマイクMより排水時の騒音が集音され、電気信号に変換される。この電気信号を元に、それぞれのマイクMと配線L1により接続されている消音機構部Eにて各配線毎に逆位相の音波に相当する電気信号を生成する。更に、生成された逆位相相当の電気信号を各スピーカーSにて出力することで、排水の騒音に干渉して排水の騒音を減衰させる減衰音を発生させ、排水口1、オーバーフロー排水口2、及び開口部5での騒音を減衰(減少)させる(当然ながら、排水口1で集音された電気信号に対応する逆位相の電気信号は排水口1のスピーカーSに送られて排水口1の騒音に対する減衰音として出力される。同様に、オーバーフロー排水口2のスピーカーSからはオーバーフロー排水口2のマイクMが集音した騒音の逆位相による減衰音が、開口部5のスピーカーSからは開口部5のマイクMが集音した騒音の逆位相による減衰音が、それぞれ出力される)。
吐水が完了し、充分な時間(1分程度)が経過すると消音機構部Eの機能が停止し、洗面ボウルWBの排水と、それに伴う消音効果が終了する。
【0020】
本発明の実施例は以上のようであるが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、主旨を変更しない範囲において自由に変更が可能である。
例えば、上記実施例では、消音機構部Eの機能の作動と停止を、吐水装置であるカランKの吐水に連動するようにして構成しているが、これに換えて、図3に示したように排水配管中の、排水が溜まる部分以外の排水配管上に、排水の存在を検知するセンサーSEを備えると共に、該センサーSEに排水の存在が検知されることにより、上記消音機構が動作するように構成しても良い。
図3に示した実施例では、吐水装置であるカランに配線を設けて消音機構部Eに通知するようにする構造に換えて、排水配管中、T字管部材11の本管部分11aと枝管部分11bの交差する部分に、水(排水)の存在を検知するセンサーSEを備え、枝管部分11bを介して、このセンサーSEの配線L3を消音機構部Eに接続して、センサーSEが排水を検知すると、その情報を消音機構部Eに通知するように構成されてなる(他の構造は図1の実施例と同様である)。
排水口1またはオーバーフロー排水口2より排水が行われ、排水栓本体4を通過してT字管部材11内部に排水が到達すると、センサーSEが排水を検知し、センサーSEの配線L3に接続された消音機構部Eが作動する。これにより、排水配管中の、排水口1、オーバーフロー排水口2、接続部としての排水栓本体4側面の開口部5に配置されたマイクMより排水時の騒音が集音され、電気信号に変換される。この電気信号を元に、それぞれのマイクMと配線L3により接続されている消音機構部Eにて各配線毎に逆位相の音波に相当する電気信号を生成する。更に、生成された逆位相相当の電気信号を各スピーカーSにて出力することで、排水の騒音に干渉して排水の騒音を減衰させる減衰音を発生させ、排水口1、オーバーフロー排水口2、及び開口部5での騒音を減衰(減少)させる(当然ながら、排水口1で集音された電気信号に対応する逆位相の電気信号は排水口1のスピーカーSに送られて排水口1の騒音に対する減衰音として出力される。同様に、オーバーフロー排水口2のスピーカーSからはオーバーフロー排水口2のマイクMが集音した騒音の逆位相による減衰音が、開口部5のスピーカーSからは開口部5のマイクMが集音した騒音の逆位相による減衰音が、それぞれ出力される)。
排水が完了し、センサーSEが排水を検知しなくなってから充分な時間が経過すると消音機構部Eの機能が停止し、洗面ボウルWBの排水と、それに伴う消音効果が終了する。尚、ここでいう「充分な時間」は必要に応じ適宜設定するものであるが、例えば排水が終了に近づき、排水が排水配管の内壁面に沿うなどすると、少量の排水が排水配管内で行われていても、センサーSEに触れないとセンサーSEが反応しない場合があるため、センサーSEが排水を検知しなくなっても1分程度騒音機構部を動作させて、確実に排水が完了することを確認するようにすると好適である。
また、図3の実施例では、センサーSEを、T字管部材11の本管部分11aと枝管部分11bの交差する部分に配置しているが、排水が溜まる部分以外の排水配管上であって、排水が流れる排水配管上であればどこに配置しても構わない。尚、上記した「排水が溜まる部分」とは、例えばトラップ部材の排水溜まり等、排水配管を通常の方法で使用する際に排水溜まりが生じる部分である。当該部分にセンサーSEを配置しても当然センサーSEは排水を検知し続けるため、消音機構部Eは排水口1やオーバーフロー排水口2からの排水が無くとも不要な動作を続けることになり、センサーSEを配置した効果が実質上得られなくなる、といった不具合がある。
【0021】
また、上記実施例では、排水配管が備えられる槽体を、洗面台Wの洗面ボウルWBとしているが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、浴槽や浴室、流し台のシンクなど、他の槽体の排水配管に使用してももちろん構わない。
また排水口1とオーバーフロー排水口2の両方を必ずしも備える必要は無く、排水口1のみの排水配管などに利用しても構わない。
また、オーバーフロー流路3についても、必ずしも上記実施例と同様に槽体と一体である必要はなく、オーバーフロー排水口2からの排水を、管体やホース管などを利用して構成したオーバーフロー流路3にて排水口1からの排水が通過する排水配管に接続しても構わない。
【符号の説明】
【0022】
1 排水口 2 オーバーフロー排水口
3 オーバーフロー流路 4 排水栓本体
5 開口部 6 フランジ部
7 雄ネジ部 8 板ナット部材
9 雌ネジ部 10 トラップ部材
11 T字管部材 11a 本管部分
11b 枝管部分 12 接続管部材
13 取着口 C キャビネット部分
E 消音機構部 K カラン
L1 マイク、スピーカーの配線 L2 カランの配線
L3 センサーの配線 M マイク
P パッキング S スピーカー
SE センサー W 洗面台
WB 洗面ボウル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口1と、該排水口1からの排水が流れる排水配管を設けた槽体において、
該排水配管上にマイクM及びスピーカーSを配置すると共に、
任意の場所に、マイクMにて検出した検出音に対し、検出音を減衰させる減衰音をスピーカーSから出力させる消音機構部Eを備えたことを特徴とする、
消音機構を備えた槽体の配管構造。
【請求項2】
上記請求項1に記載の槽体の配管構造において、
槽体の底面に排水口1を設け、該排水口1にマイクM及びスピーカーSを配置したことを特徴とする、消音機構を備えた槽体の配管構造。
【請求項3】
上記請求項1に記載の槽体の配管構造において、
槽体の側面にオーバーフロー排水口2を設け、該オーバーフロー排水口2にマイクM及びスピーカーSを配置したことを特徴とする、消音機構を備えた槽体の配管構造。
【請求項4】
上記請求項1に記載の槽体の配管構造において、
槽体の底面に排水口1を、槽体の側面にオーバーフロー排水口2を、それぞれ設けると共に、
オーバーフロー排水口2からの排水が流れるオーバーフロー流路3を、オーバーフロー接続部にて排水口1からの排水が流れる排水配管に接続し、
更に該オーバーフロー接続部にマイクM及びスピーカーSを配置したことを特徴とする、消音機構を備えた槽体の配管構造。
【請求項5】
上記請求項4に記載の槽体の配管構造において、
筒状にしてその内部に排水口1を形成すると共に、側面に開口部5を備えてなり、槽体の底面に配置される排水栓本体4を備え、
該排水栓本体4の開口部5にオーバーフロー流路3からの排水が流れ込むように構成して、
開口部5をオーバーフロー接続部としてマイクM及びスピーカーSを配置したことを特徴とする、槽体の配管構造。
【請求項6】
前記槽体に吐水装置が備えられると共に、
該吐水装置から吐水が行われることにより、上記消音機構が動作することを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の消音機構を備えた槽体の配管構造。
【請求項7】
前記槽体の排水配管において、排水が溜まる部分以外の排水配管上に、排水の存在を検知するセンサーSEが備えられると共に、
該センサーSEに排水の存在が検知されることにより、上記消音機構が動作することを特徴とする、請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載の消音機構を備えた槽体の配管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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