説明

標的タンパク質の細胞内トラフィッキングを調節する方法およびキット

本発明は、標的タンパク質の細胞内トラフィッキングを調節する方法およびキットに関する。保持される状態では、前記標的タンパク質は、フックタンパク質との相互作用により最初のコンパートメントに保持される。放出される状態では、相互作用が破壊され、標的タンパク質は標的コンパートメントへトラフィックする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的タンパク質の細胞内トラフィッキングを調節する方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルジ複合体は、真核細胞恒常性において中心的な役割を果たす。ゴルジ複合体は、小胞体(ER)で合成されたタンパク質および脂質を処理および選別し、順行性および逆行性トラフィッキング経路(trafficking pathway)を結ぶ中心的プラットフォームとして役割を果たす。これらの活動は、独特の超微細構造的特徴と結び付いている。ゴルジ装置は、シスからトランスへの極性を示す偏平な付着性の槽(cisterna)の層板(stack)から成る(RambourgおよびClermont、1997年;Ladinskyら、1999年)。ある種の真核生物、特にヒトでは、数百の層板が側方につながって、微小管形成中心に隣接する拡張したリボン状構造を形成する。
【0003】
定常状態で生じる膜およびタンパク質の大きい連続した流動にも関わらず、ゴルジ装置の組織全体、超微細構造的形状および極性は著しく安定である。各ゴルジ槽は、グリコシル化酵素など、特定のセットの「レジデント(resident)」タンパク質を含有するが、これがどのように維持されているかが論議されてきた(Martinez−Menarguezら、2001年;Cossonら、2002年;Altan−Bonnetら、2004年;PuthenveeduおよびLinstedt、2005年;Storrie、2005年)。このような構造がどのように動的に維持されるかを説明するのに両極端のモデルが提唱されている。「静的槽(static cisterna)」モデルによれば、積み荷は、小胞に包まれてまたは伸長した小管を用いて、安定な層板構造を通って進む(Pelham、2001年)。レジデントタンパク質は、膜またはマトリックスとの相互作用を通じて、特異的シグナルを用いて特定の槽に安定に局在化される。ゴルジマトリックスは、ゴルジ複合体を維持するためのテンプレートとして機能している可能性がある安定な遺伝性の外骨格であることが提唱された。このマトリックスは、有糸分裂停止(mitosis exit)時に特に重要である(ShorterおよびWarren、2002年)が、ゴルジ構造を維持するための間期に役割を果たすことも提唱されている(Glick、2002年に概説)。「槽成熟(cisternal maturation)」モデルによれば、ゴルジ装置は、自己組織化能力に恵まれ、この構造を構築および維持するのに外部マトリックスに依存しない。積み荷は成熟槽内で輸送され、レジデントタンパク質は、逆行性輸送を通じて定常局在化を達成する。(Glick、2002年;ShorterおよびWarren、2002年;Barr、2004年に概説)。該モデルとは独立に、(積み荷またはレジデントタンパク質それぞれの)槽間輸送は、小胞または小管連絡(tubular connection)を介して生じる可能性がある(概説はMironovら、2005年;RabouilleおよびKlumperman、2005年を参照のこと)。最近のモデルは、ゴルジ体間輸送が極めて迅速な小管ベースの拡散を通じて行われることすら示唆している(Pattersonら、2008年)。
【0004】
現在では、複数の経路がゴルジ装置を横断しており、これが基本および応用された結果の両方を有することが明らかになっている。さまざまな病態、およびとりわけ癌の分子研究は、疾患発症の鍵となる調節因子としての受容体およびホルモンを同定した。これらのタンパク質は、特定の分泌経路を辿ると考えられる。さらに、大規模なゲノムプロジェクトが、分泌経路の調節に関与している可能性のある多くのタンパク質で、まだ機能的な特徴付けがなされていないタンパク質を同定した。このように、タンパク質のこれらの大きなファミリーを機能的に注釈付けることは、一方で新たな治療エントリーを特定するのに役立ち、他方で細胞分泌経路の全般図を描くのに役立つ可能性がある。
【0005】
複数の分泌経路を総合的に眺めるには、このように、トラフィッキングおよび分泌アッセイのコレクションを拡大することが不可欠である。定量的データをもたらすことができ、および大規模プロジェクトに適合することができる方法は、当技術分野にわずかにしか存在しない。しかし、これらはさまざまな短所に悩まされている。
【0006】
標的タンパク質のトラフィッキングを定量化するのに使用される最良の方法はひとえに、集団レベルで観察可能な読み出しを持つように、細胞における前記標的タンパク質の全ての分子の分泌が同期することにかかっている。
【0007】
この20年の間に、多くの研究が、口内炎ウイルスの膜貫通糖タンパク質(VSVG−ts045)の温度感受性バリアントをモデルに用いて分泌経路における膜タンパク質選別の我々の理解を大幅に拡大した。この変異体は、高温(39.5°C)でERに封鎖され、許容温度(32°C)で原形質膜に輸送される(Lafay、1974年;Kreis、1986年)。このモデルは、単純な温度シフトにより分泌経路を通じたVSVGの同期輸送およびプロセシングを可能にすることから、強力である。この同期化されたトラフィッキングは、生細胞で研究することもできる(Arnheiterら、1984年;Presleyら、1997年;Scalesら、1997年)。
【0008】
しかし、この強力なシステムは、幾つかの限界により妨害される。39.5°Cの高温は、生理的ではない(より低い許容温度の32°Cも生理的ではない)。これは、回復不能な損傷を誘導する可能性があり、例えばキイロショウジョウバエ(D.melanogaster)およびC.エレガンス(C.elegans)などの他の多細胞生物で使用することができない。第二に、VSVG−tsO45を用いて、単一の膜貫通ドメインを有する1つのカテゴリーのタンパク質のトラフィッキングのみを分析することができる。しかし、幾つかの結果は、細胞表面を目的地とする可溶性タンパク質およびGPIアンカータンパク質などの幾つかのカテゴリーのタンパク質が、ゴルジ装置でVSVG−tsO45から分離されることを示唆している(Kellerら、2001年)。第三に、VSVG−tsO45は、ERから原形質膜への分泌経路の研究のみを可能にする。VSVG−tsO45は、例えばエンドソームおよびリソソーム、または頂端膜または軸索など、ある種の原形質膜ドメインへの輸送の研究を可能にしない。さらに、分泌経路の中間ステップの研究(中間コンパートメントからゴルジ、またはトランスゴルジ網から原形質膜など)は、不可解な温度ブロックを用いて行い得るのみである。
【0009】
他の研究は、標的タンパク質の産生および分泌を同期させるために誘導性プロモーターを使用した。実際、Bardら(2006年)は、Cu2+誘導性プロモーターの制御下でシグナル配列に融合された西洋ワサビペルオキシダーゼの分泌を研究した。このシステムを用いた誘導は、かなりゆっくりでありおよび一連の経路(ERにおける転写、翻訳、転座)に依存し、分析を複雑にする。これもまた、ERからのトラフィッキングの研究を可能にするのみである。
【0010】
さらに他の研究は、標的タンパク質の分子集団のフォトコンバージョン(photoconversion)および/または光退色の使用に依存する。しかし、この方法の主な短所は、スクリーニング目的に適さない細胞ごとの分析を必要とすることである。また、細胞生理を撹乱させる悪影響が、フォトコンバージョンまたは光退色処理により誘発される可能性もある。
【0011】
所与の標的タンパク質のトラフィッキングを調節する別の方法は、Ariad Gene Therapeutics社に対する特許出願WO00/23602で提唱されている。この文献は、少なくとも1つの条件的保持ドメイン(conditional retention domain)およびこれと異種の少なくとも1つの別のドメインを含む融合タンパク質をコードする組換え核酸を、細胞に導入することを含む、標的タンパク質の分泌を制御することができるように細胞を遺伝子操作する方法を開示している。前記条件的保持ドメインは、典型的には条件的凝集ドメイン(CAD)、すなわち小分子可逆的様式で凝集するタンパク質である。この技術は、例えばインスリンおよび成長ホルモンなどの標的タンパク質の分泌の調節に使用された(Riveraら 2000年)。この研究では、著者らは、CAD(リガンドの非存在下で自らと相互作用し、および故にリガンドの非存在下でERに保持されるドメイン)および標的タンパク質を含む融合タンパク質を作製した。
【0012】
この技法は、小分子の添加によりin vivoでの分泌タンパク質の制御された分泌を可能にする。しかし、この技法は、可逆的凝集に依存することから、ドナーコンパートメントとしてのERからのトラフィッキングの研究を可能にするのみである。この技法は、他の細胞内コンパートメントからのトラフィッキングの研究、特に逆行性トラフィッキングの研究に使用することができない。さらに、この凝集システムは、細胞生理に影響するであろう折畳まれていないタンパク質応答経路を誘導する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
故に、前記標的タンパク質の迅速および同期放出を可能にすることで宿主細胞における標的タンパク質のトラフィッキングを研究するための、ハイスルーアウト(high−throughout)および生細胞分析の両方に適用できる汎用的方法に対する未解決のニーズが当技術分野には依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
故に、本発明者らは、タンパク質の分泌経路を研究するための新たなシステムを構築した。これは積み荷の選択的保持および放出に基づくことから、本発明者らはこれをRUSH(Retention Using Selective Hooks(選択的フックを用いた保持))と命名した。該方法の原則は、どちらかといえば一般的である。これは、2つの状態、すなわち、レジデントタンパク質(フック)との特異的相互作用によりドナーコンパートメントに「保持された」、封鎖された状態、および標的コンパートメントに向かって自由にトラフィックする、相互作用から「放出された」状態の標的タンパク質を提供する。これらの2つの状態を制御するため、標的タンパク質とフックの間の特異的相互作用は、2つの相互作用ドメイン間の可逆的相互作用により媒介される。1つの実施形態では、相互作用は、所与のリガンドの存在下でのみ生じる(「分子依存的」設定(“molecule−dependant” set−up)、「MD」)。別の実施形態では、相互作用はデフォルトで生じ、および特定のリガンドにより破壊され得る(「デフォルトでの相互作用」設定(“interaction−by−default” setup)、「ID」)。
【0015】
リガンドの除去または添加は、スイッチのように作用してドナーコンパートメントからの標的タンパク質の同期放出を可能にする。
【0016】
本発明は、宿主細胞における標的タンパク質Yの細胞内トラフィッキングを調節する方法であって、
a)宿主細胞を用意するステップと、
b)式A−Xの第1の融合タンパク質(式中、Aは相互作用ドメインであり、Xは特定の細胞内コンパートメントに式A−Xの第1の融合タンパク質を保持することができるドメインである)をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターを用意するステップと、
c)式B−Yの第2の融合タンパク質(式中、Bは相互作用ドメインであり、Yは標的タンパク質である)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターを用意するステップと
を含み、AおよびBがリガンドLの存在または非存在による条件的相互作用(conditional interaction)をすることができる、方法に関する。
【0017】
本発明はまた、宿主細胞における標的タンパク質Yの細胞内トラフィッキングを調節するキットであって、
式A−Xの第1の融合タンパク質(式中、Aは相互作用ドメインであり、Xは特定のコンパートメントに式A−Xの第1の融合タンパク質を保持することができるドメインである)をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターと、
式B−Yの第2の融合タンパク質(式中、Bは相互作用ドメインであり、Yは標的タンパク質である)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターと
を含み、AおよびBがリガンドLの存在または非存在による条件的相互作用をすることができる、キットにも関する。
【0018】
本発明はまた、ドナーコンパートメントから標的タンパク質Yを選択的に保持および放出するための、
式A−Xの第1の融合タンパク質(式中、Aは相互作用ドメインであり、Xは特定の細胞内コンパートメントに式A−Xの第1の融合タンパク質を保持することができるドメインである)をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクター、ならびに
式B−Yの第2の融合タンパク質(式中、Bは相互作用ドメインであり、Yは標的タンパク質である)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクター
の使用であって、AおよびBがリガンドLの存在または非存在による条件的相互作用をすることができる、使用にも関する。
【0019】
好ましい実施形態では、ドナーコンパートメントからの標的タンパク質の同期放出は、リガンドLの添加により制御され、AとBの間の相互作用を破壊する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】RUSHシステムの一般的スキームを示す図である。 a、b:RUSHシステムの2つのトポロジー。RUSHシステムは2状態の分泌アッセイである。1つの状態(「保持」)では、レポータータンパク質B−Yは、標的タンパク質Yおよび保持ドメインXにそれぞれ融合された2つのドメインAおよびBの特異的相互作用を通じて、フックタンパク質A−Xによりドナーコンパートメントに安定に保たれる。第2の状態(「放出」)では、ドメイン間の相互作用は元に戻され、およびレポーターが放出され、天然のトラフィッキング経路を自由に辿る。相互作用ドメインは、コンパートメントの内腔(RUSH、a)または細胞質面(RUSH、b)に位置することができる。 c、d:RUSHシステムの2つの可逆的相互作用設定を示す図である。フックおよびレポータータンパク質の可逆的相互作用は、デフォルトでの相互作用(RUSH ID)、または分子依存的相互作用(RUSH MD)に起因することができる。IDモードの例がcに示され、レポーターは、デフォルトでSBPタグと相互作用するストレプトアビジンドメインを示す。ビオチンを添加すると、この相互作用が競合され、レポーターは自由に輸送される。dでは、フックは、レポーター分子に融合されたFKBP12ドメインと相互作用するFRAPドメインに融合される。この相互作用は、ラパマイシンの存在下でのみ生じる。ラパマイシンを除去(放出を加速するためにFK506と競合)すると、相互作用は元に戻され、およびレポーターは自由に輸送される。 e:フックおよびレポーターの幾つかの例 f:実施例で使用された2シストロン性構築物の略図
【図2】FKPB12とFRAPの間の可逆的相互作用を用いたゴルジ酵素STのトラフィッキングの分析を示す図である(RUSH[MD])。レポーターFKBP12−GFP−STは、フックIi−FRAPを発現する細胞中のERにおいて、およびラパマイシンの存在下で保持される(左のパネル)。競合相手FK506の存在下でラパマイシンを洗い出すと、レポーターが放出され、標的ゴルジコンパートメントに到達する(右のパネル)。レポーターは、検出ドメインとしてGFPを用いて可視化される。標的コンパートメント、ゴルジは、抗ジアンチン抗体を用いて染色される。
【図3】コアストレプトアビジンとSBPタグの間の可逆的相互作用を用いたゴルジ酵素STのトラフィッキングの分析を示す図である(RUSH[ID])。レポーターST−SBP−GFPは、フックIi−コアストレプトアビジンを発現する細胞中のERに保持される(右のパネル)。ビオチンを添加すると、レポーターが放出され、標的ゴルジコンパートメントに到達する(左のパネル)。レポーターは、検出ドメインとしてGFPを用いて可視化される。標的コンパートメント、ゴルジは、抗ジアンチン抗体を用いて染色される。
【図4】コアストレプトアビジンとSBPタグの間の可逆的相互作用を用いたゴルジ酵素STのトラフィッキングのタイムラプス分析を示す図である(RUSH[ID])。レポーターST−SBP−GFPは、フックIi−コアストレプトアビジンを発現する細胞中のERに保持される。ビオチンは時間00:00(分:秒)で添加され、レポーターの放出は、37℃で回転ディスク搭載共焦点顕微鏡を用いてタイムラプス蛍光イメージングにより追跡される。レポーターは、極めて短時間にゴルジ装置内に見えはじめ(9:30)、30分までゴルジ装置を大規模に標識する。
【図5】コアストレプトアビジンとSBPタグの間の可逆的相互作用を用いたゴルジ酵素STおよびManIIのトラフィッキングのタイムラプス分析を示す図である(RUSH[ID])。レポーターST−SBP−GFP(この緑蛍光を用いて検出)およびManII−SBP−mCherry(この赤蛍光を用いて検出)は、フックIi−コアストレプトアビジンを発現する細胞中のERに両方とも保持される。ビオチンを添加すると、これらは両方ともゴルジ装置に到達し、および両方ともリアルタイムに追跡することができる。
【図6】コアストレプトアビジンとSBPタグの間の可逆的相互作用を用いたウイルス糖タンパク質VSV−Gのトラフィッキングの分析を示す図である(RUSH[ID])。レポーターSBP−GFP−VSV−Gは、フックIi−コアストレプトアビジンを発現する細胞中のERに保持される(右のパネル)。細胞表面で発現されたGFPタグ化VSV−Gの分画は、細胞透過性の非存在下でGFPに対する抗体を用いて標識される(表面抗GFP)。フックは抗Iiモノクローナル抗体を用いて染色され、ゴルジ複合体は抗ジアンチン抗体を用いて標識される。ビオチンを添加すると、レポーターが放出され、この標的原形質膜コンパートメントに到達する(左のパネル)。レポーターは、検出ドメインとしてGFPを用いて可視化される。ごく微量のレポーターが、保持された状態で細胞表面で見える間は、極めて大きな量が放出時に発現される。
【図7】コアストレプトアビジンとSBPタグの間の可逆的相互作用を用いた原形質膜タンパク質E−カドヘリンのトラフィッキングの分析を示す図である(RUSH[ID])。レポーターSBP−GFP−Eカドヘリンは、フックIi−コアストレプトアビジンを発現する細胞中のERに保持される(右のパネル)。細胞表面で発現されたGFPタグ化E−カドヘリンの分画は、細胞透過性の非存在下でGFPに対する抗体を用いて標識される(表面抗GFP)。ビオチンを添加すると、レポーターが放出され、この標的原形質膜コンパートメントに到達する(左のパネル)。レポーターは、検出ドメインとしてGFPを用いて可視化される。ごく微量のレポーターが、保持された状態で細胞表面で見える間は、極めて大きな量が放出時に発現される。
【図8】コアストレプトアビジンとSBPタグの間の可逆的相互作用を用いた原形質膜タンパク質E−カドヘリンのトラフィッキングのタイムラプス分析(RUSH[ID])。レポーターSBP−GFP−Eカドヘリンは、フックIi−コアストレプトアビジンを発現する細胞中のERに保持される。ビオチンは時間00:00(分:秒)で添加され、レポーターの放出は、37℃で回転ディスク搭載共焦点顕微鏡を用いてタイムラプス蛍光イメージングにより追跡される。レポーターは、検出ドメインとしてGFPを用いて可視化される。かなりの量のレポーターが03:30からゴルジ装置で見え、および増え続ける。レポーターは、30:00頃に原形質膜で見え始める。輸送中間体(点状染色の形態での)が初期(ERからゴルジへ)および後期(ゴルジから原形質膜へ)時点で見えることに留意されたい。
【図9】コアストレプトアビジンとSBPタグの間の可逆的相互作用を用いた合成原形質膜タンパク質TMD22のトラフィッキングの分析(RUSH[ID])。レポーターSBP−GFP−TMD22は、フックTMB17−ストレプトアビジンを発現する細胞中のERに保持される(右のパネル)。この設定(RUSH)では、保持ドメインはフックおよびレポーターの細胞質部分に位置する。ビオチンを添加すると、レポーターが放出され、この標的原形質膜コンパートメントに到達する(左のパネル)。レポーターは、検出ドメインとしてGFPを用いて可視化される。ごく微量のレポーターが、保持された状態で細胞表面で見える間は、極めて大きな量が放出時に発現される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1つの態様では、本発明は、宿主細胞における標的タンパク質Yの細胞内トラフィッキングを調節する方法であって、
a)宿主細胞を用意するステップと、
b)式A−Xの第1の融合タンパク質(式中、Aは相互作用ドメインであり、Xは特定の細胞内コンパートメントに式A−Xの第1の融合タンパク質を保持することができるドメインである)をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターを用意するステップと、
c)式B−Yの第2の融合タンパク質(式中、Bは相互作用ドメインであり、Yは標的タンパク質である)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターを用意するステップと
を含み、AおよびBがリガンドLの存在または非存在による条件的相互作用をすることができる、方法に関する。
【0022】
本明細書では、表現「宿主細胞における標的タンパク質Yの細胞内トラフィッキングを調節する」とは、リガンドLの存在または非存在により標的タンパク質の細胞内局在化を制御する事実を指す。保持された状態では、標的タンパク質Yは、特定の細胞内コンパートメントに保持されている。リガンドを添加または除去すると、標的タンパク質Yが放出される。前記標的タンパク質Yの放出は、標的タンパク質Yの全ての分子について迅速でありかつ同期している。
【0023】
したがって、本発明は、前記標的タンパク質Yの同期放出を可能にして宿主細胞における標的タンパク質Yの細胞内トラフィッキングを調節する方法であって、
a)宿主細胞を用意するステップと、
b)式A−Xの第1の融合タンパク質(式中、Aは相互作用ドメインであり、Xは特定の細胞内コンパートメントに式A−Xの第1の融合タンパク質を保持することができるドメインである)をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターを用意するステップと、
c)式B−Yの第2の融合タンパク質(式中、Bは相互作用ドメインであり、Yは標的タンパク質である)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターを用意するステップと
を含み、AおよびBがリガンドLの存在または非存在による条件的相互作用をすることができる、方法に関する。
【0024】
本発明はまた、宿主細胞における標的タンパク質Yの細胞内トラフィッキングを調節する方法であって、
a)宿主細胞を用意するステップと、
b)式A−Xの第1の融合タンパク質(式中、Aは相互作用ドメインであり、Xは特定の細胞内コンパートメントに式A−Xの第1の融合タンパク質を保持することができるドメインである)をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターを用意するステップと、
c)式B−Yの第2の融合タンパク質(式中、Bは相互作用ドメインであり、Yは標的タンパク質である)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターを用意するステップと、
d)前記リガンドLの除去または添加それぞれにより標的タンパク質Yを放出するステップと、
e)場合により、ステップd)後に異なる時点で標的タンパク質Yの細胞内トラフィッキングを分析するステップと
を含み、AおよびBがリガンドLの存在または非存在による条件的相互作用をすることができる、方法にも関する。
【0025】
本発明の方法は、多くの利点を有する:1)この方法は、温度ブロックの使用を回避する、2)この方法は、大規模なセットのトラフィッキングステップを研究することを可能にする、3)この方法は、動態および定量的研究に適用できる、4)この方法は、さまざまなレポーター分子の分泌経路を研究すること、ならびにレポーター分子の最終目的地への送達に関与する機構およびシグナルを理解することを可能にする、5)このシステムはハイスループットスクリーニングに適用できる。これは、大規模siRNAライブラリーをスクリーニングする可能性を開く。細胞内トラフィッキングの多くの潜在的調節因子が同定されたが、注釈付けされる必要がある(ゴルジマトリックスタンパク質のように)ポストゲノム時代において、これは特に重要である。重要なことには、特殊化された経路、特に、癌(例えばEGFR、HER2、VEGF)またはウイルス感染(例えばHIV)などのヒト疾患に関与する分子を輸送する経路の特異的阻害因子またはエンハンサーを見出すのに、このアッセイを用いて化学ライブラリーをスクリーニングすることもできる。
【0026】
好ましい実施形態では、ドナーコンパートメントからの標的タンパク質の同期放出は、リガンドLの添加により制御され、AとBの間の相互作用を破壊する。
【0027】
本発明はしたがって、宿主細胞における標的タンパク質Yの細胞内トラフィッキングを調節する方法であって、
a)宿主細胞を用意するステップと、
b)式A−Xの第1の融合タンパク質(式中、Aは相互作用ドメインであり、Xは特定の細胞内コンパートメントに式A−Xの第1の融合タンパク質を保持することができるドメインである)をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターを用意するステップと、
c)式B−Yの第2の融合タンパク質(式中、Bは相互作用ドメインであり、Yは標的タンパク質である)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターを用意するステップと、
d)前記リガンドLの添加により標的タンパク質Yを放出するステップと
を含み、AおよびBがリガンドLの非存在下で条件的相互作用をすることができる、方法に関する。
【0028】
1つの態様では、本発明はまた、ドナーコンパートメントから標的タンパク質Yを選択的に保持および放出するための、
式A−Xの第1の融合タンパク質(式中、Aは相互作用ドメインであり、Xは特定の細胞内コンパートメントに式A−Xの第1の融合タンパク質を保持することができるドメインである)をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクター、ならびに
式B−Yの第2の融合タンパク質(式中、Bは相互作用ドメインであり、Yは標的タンパク質である)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクター
の使用であって、AおよびBがリガンドLの存在または非存在による条件的相互作用をすることができる、使用にも関する。
【0029】
また本明細書に記載されているのは、本発明の方法を実施するのに適切なキットである。
【0030】
本発明はしたがって、宿主細胞における標的タンパク質Yの細胞内トラフィッキングを調節するキットであって、
式A−Xの第1の融合タンパク質(式中、Aは相互作用ドメインであり、Xは特定のコンパートメントに式A−Xの第1の融合タンパク質を保持することができるドメインである)をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターと、
式B−Yの第2の融合タンパク質(式中、Bは相互作用ドメインであり、Yは標的タンパク質である)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターと
を含み、AおよびBがリガンドLの存在または非存在による条件的相互作用をすることができる、キットにも関する。
【0031】
上記に示されたように、表現「宿主細胞における標的タンパク質Yの細胞内トラフィッキングを調節する」とは、特定の細胞内コンパートメントからの前記標的タンパク質の同期放出を可能にする事実を指す。
【0032】
1つの実施形態では、キットは、キットの成分が、ドナーコンパートメントからの前記標的タンパク質Yの同期放出を可能にするのに、および前記標的タンパク質Yの細胞内トラフィッキングをこの後に分析するのに有用であることを説明する説明リーフレットをさらに含む。
【0033】
当業者に知られた種々の技法が使用され得る(細胞分画後の蛍光顕微鏡法、電子顕微鏡法および生化学分析など。ただし、これらに限定されない)。
【0034】
1つの実施形態では、キットは、前記第1および第2の発現ベクターでトランスフェクトされることができる宿主細胞をさらに含む。
【0035】
1つの実施形態では、キットは、トランスフェクション試薬をさらに含む。
【0036】
前記トランスフェクション試薬は、当技術分野における多くの利用可能なトランスフェクション試薬から選択することができる。
【0037】
適切なトランスフェクション試薬は、例えばリポフェクタミン2000(Invitrogen社)、フュージーン(Fugene)6(Roche社)または単純なリン酸カルシウム自家製溶液であってもよい。
【0038】
1つの実施形態では、キットは、リガンドLをさらに含む。
【0039】
1つの実施形態では、第1の発現ベクターは、第1の融合タンパク質A−Xをコードするために、Aをコードするヌクレオチド配列、およびXをコードするヌクレオチド配列のインフレーム挿入を可能にするマルチプルクローニングサイトを含む。
【0040】
有利には、前記キットは、保持ドメインXを変化させることで、さまざまなドナーコンパートメントからの特定の標的タンパク質Yのトラフィッキングの徹底的な研究を可能にする。
【0041】
1つの実施形態では、第2の発現ベクターは、式B−Yの第2の融合タンパク質をコードするために、Bをコードするヌクレオチド配列、およびYのインフレーム挿入のためのマルチプルクローニングサイトを含む。
【0042】
有利には、前記キットは、標的タンパク質Yを変化させることで、および特定の保持ドメインXを用いて、特定のドナーコンパートメントからの多数の異なる標的タンパク質Yのトラフィッキングの研究を可能にする。
【0043】
1つの実施形態では、キットは、
第1の融合タンパク質A−Xをコードするために、Aをコードするヌクレオチド配列、およびXをコードするヌクレオチド配列のインフレーム挿入を可能にするマルチプルクローニングサイトを含む第1の発現ベクター、ならびに
式B−Yの第2の融合タンパク質をコードするために、Bをコードするヌクレオチド配列、およびYのインフレーム挿入のためのマルチプルクローニングサイトを含む第2の発現ベクター
を含む。
【0044】
本明細書では表現「インフレーム挿入」は、その結果得られるヌクレオチド配列の発現によって、第1のタンパク質と第2のタンパク質との融合体の発現がもたらされるような様式における、第1のタンパク質をコードする第1のヌクレオチド配列への、第2のタンパク質をコードする第2のヌクレオチド配列の挿入を指す。マルチプルクローニングサイトを含有する特定のヌクレオチド配列から始めて、前記マルチプルクローニングサイトに挿入される適切な制限酵素および配列を選択することは、当業者の能力の範囲内である。
【0045】
本出願を通じて、融合タンパク質A−Xと言う場合、前記融合タンパク質は、いずれの順番でもAのアミノ酸配列およびXのアミノ酸配列を含むことが理解される。例えば、Xは、このC末端で、Aの下流に融合されることができ、またはAはXの下流に融合されることができる。融合タンパク質A−Xは、AおよびXにより定義されたもの以外のアミノ酸を含むこともできる。前記アミノ酸は、AとXの間に位置するリンカー配列、および/または頭部配列(AおよびX両方のN末端における)および/または尾部配列(AおよびX両方のC末端における)であってもよい。
【0046】
同様に、表現「融合タンパク質B−Y」は、前記配列の配置が何であれ、BおよびYの配列を含む任意のタンパク質を対象とする。
【0047】
本明細書では、用語「発現ベクター」は、発現制御配列またはプロモーターに作動可能に連結される特定の核酸配列の発現を指示することができる核酸分子を指す。特に、本発明による発現ベクターは、真核宿主細胞において前記核酸配列によりコードされたタンパク質への特定の核酸配列の発現を可能にするベクターである。前記発現ベクターのプロモーターは、典型的には真核プロモーターである。
【0048】
本発明の発現ベクター(複数可)は、プラスミドまたはウイルスベクターであってもよい。プラスミドは、自己複製が可能な環状二本鎖DNAループである。ウイルスベクターは、ウイルス粒子にパッケージングすることができるウイルス配列を含む核酸分子である。例えば、アデノウイルス、AAV、レトロウイルス、ハイブリッドアデノ−AAV、レンチウイルス等を含む、さまざまなウイルスベクターが当技術分野で知られており、および本発明の実践に適合され得る。日常的な実験を実施して、当業者は、さまざまな利用可能なベクターから、本発明の方法を実施するのに適切なものを選択することができる。
【0049】
好ましい実施形態では、第1および第2の発現ベクターは、単一の発現ベクターであってもよく、前記単一のベクターは、2シストロン性発現カセットを含む。2シストロン性発現カセットを含有するベクターは、当技術分野でよく知られている。有利には、2シストロン性発現カセットは、単一のプロモーターから両方の融合タンパク質の発現を可能にする内部リボソーム進入部位(IRES)を含有する。故に、この実施形態では、第1の融合タンパク質A−Xおよび第2の融合タンパク質B−Yが、宿主細胞において同レベルで発現される。
【0050】
適切な市販の2シストロン性ベクターには、pIRES(Clontech社)、pBud(Invitrogen社)およびVitality(Stratagene社)シリーズのプラスミドが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0051】
好ましい実施形態では、相互作用ドメインAおよびBは、別個のタンパク質ドメインである。言い換えれば、AとBの間、およびしたがってA−XとB−Yの間の相互作用は、ホモ複合体または自己集合体(auto−aggregate)というよりむしろ、ヘテロ複合体である。
【0052】
1つの実施形態では、A−XとB−Yの間の相互作用は、コンパートメントの内腔面/外細胞質面(exoplasmic face)で生じる(「内腔RUSH」、またはRUSH)。
【0053】
別の実施形態では、A−XとB−Yの間の相互作用は、細胞質面で生じる(「細胞質RUSH」、またはRUSH)。
【0054】
1つの実施形態では、A−XとB−Yの間の相互作用は、リガンドLの存在下で分子依存的様式で生じ(「分子依存的」または「MD」設定)、およびリガンドLの洗い出しにより逆にすることができる。
【0055】
この実施形態によれば、AとBの間、およびしたがってA−XとB−Yの間の相互作用は、特定のリガンドの存在下でのみ生じる。この実施形態は「MD」モードと呼ばれる。
【0056】
第2の融合タンパク質A−X(フックAを含む)からの第2の融合タンパク質B−Y(標的タンパク質Yを含む)の放出をもたらす相互作用の調節は、AとBの間の相互作用を誘導することなくAまたはBのどちらかとの結合をLと競合する競合相手Cによる競合の有無に関わらず、リガンドLの洗い出しにより実施することができる。
【0057】
好ましい実施形態では、MD相互作用対(A/B、またはB/A)は、FKBP−FK506結合ドメイン12/FKBP−ラパマイシン結合タンパク質(FKBP12/FRAP)である。FKBP12(FKBP1Aとしても知られる)は、12kDのFK506およびラパマイシン結合タンパク質である(Standaertら、1990年;Makiら、1990年)。FRAPは、FKBP12−ラパマイシン結合タンパク質に結合する245kDである(Brownら、1994年)。RUSHシステムの好ましい実施形態では、ラパマイシン結合ドメインのみが使用される。
【0058】
この実施形態では、相互作用は、リガンドLとしてのラパマイシンまたはこの類似体の存在下でのみ生じる。
【0059】
リガンドLは、FKBP12とFRAPの間の相互作用を媒介することができる任意のリガンドであってもよく、および特に、FK1012、FK−CsAおよびラパマイシンから成る群から選択されてもよい。ラパマイシンの類似体(Rapalog)は、FKBP12およびFRAPドメインの変異体と併用して使用することもできる(AP21967など、ARIAD Pharmaceutical Inc.社)。
【0060】
これらのリガンドは、転写レベルで遺伝子発現を制御するシステムで広く使用されている(概説はClackson 1997年を参照のこと)。
【0061】
ラパマイシン(例えばSigma−Aldrich社から市販されている)は、1.5nMから200nM、好ましくは1.52nMから12.2nMの範囲の濃度、さらにより好ましくは約3.1nMで使用することができる。
【0062】
FK506は、競合相手Cとして使用することができ、したがってFKPB12とFRAPの間の相互作用を破壊するために、ラパマイシンが除去されるときに添加することができる。FK506(例えばCayman社から市販されている)は、390μMから1.25μMの範囲の濃度、好ましくは約3.3μMで使用することができる。12.5μMから1.6μMの範囲の濃度、好ましくは約3.3μMでのアスコマイシン(Sigma−Aldrich社)、または28.6μMから3.6μMの範囲の濃度、および好ましくは約5μMでのSLF(Cayman社)など、他の競合相手を使用することができる。
【0063】
あるいは、MD相互作用対(A/B、またはB/A)は、FKBP−ラパマイシン結合ドメイン12/ラパマイシン依存的様式でFKBP12に結合するタンパク質である。この実施形態では、相互作用は、リガンドLとしてのラパマイシンまたはこの類似体の存在下でのみ生じる。文献US 6,492,106は、ラパマイシン依存的様式でFKBP12に結合するようなタンパク質を同定する方法を開示している。
【0064】
別の実施形態では、A−XとB−Yの間の相互作用は、リガンドLの非存在下でデフォルトで生じ(「デフォルトでの相互作用」または「ID」設定)、およびリガンドLの存在下で阻害される。
【0065】
この実施形態では、AとBの間、およびしたがってA−XとB−Yの間の相互作用は、任意のリガンドの非存在下でデフォルトで生じる。相互作用は、リガンドLの存在により破壊される。
【0066】
適切なID相互作用ドメイン対(A/BまたはB/A)は、例えばストレプトアビジン/SBPタグ、Ftsz/ZipA、HPV E1/E2、組換え抗体/エピトープ、組換えエピトープ/ハプテン、タンパク質A/IgGドメイン、Fos/Junから成る群から選択することができる。相互作用を阻害する分子(リガンドL)が既に知られている相互作用ドメイン対が好ましい。
【0067】
1つの実施形態では、ID相互作用ドメイン対(A/BまたはB/A)は、FtsZ/ZipAである。
【0068】
FtsZおよびZipAは、ある種のグラム陰性細菌の複製中に形成する隔壁リングの一部を形成する細菌タンパク質である。これらの相互作用は、リガンドLとして「化合物1」と名付けられた小分子の添加により破壊することができる(概説はWellsら 2007年を参照のこと)。
【0069】
化合物1(Wyeth Research(NY、USA))は、10から100μMの間の範囲の濃度で使用することができる。
【0070】
別の実施形態では、ID相互作用ドメイン対(A/BまたはB/A)は、ストレプトアビジン/SBPであり、遊離ビオチンがリガンドLとして使用される。ストレプトアビジンは、ビタミンD−ビオチンへの極めて高い親和性により結合する細菌タンパク質である。in vitro選択アプローチは、ストレプトアビジンに結合し、およびビオチンにより競合され得る合成ペプチドの発見をもたらした。
【0071】
ストレプトアビジンに対する高親和性結合剤、SBPタグ(配列番号1に示されたような)は、Wilson、KeefeおよびSzostak(2001年)により同定されている(特許US 2002/0155578 A1を参照のこと):
配列番号1:MDEKTTGWRGGHVVEGLAGELEQLRARLEHHPQGQREP。
【0072】
ステプトアビジン(Steptavidin)のより小さなバージョン、コアストレプトアビジンは、特許US 5672691で同定されている(配列番号2)。
配列番号2:
MDPSKDSKAQVSAAEAGITGTWYNQLGSTFIVTAGADGALTGTYESAVGNAESRYVLTGRYDSAPATDGSGTALGWTVAWKNNYRNAHSATTWSGQYVGGAEARINTQWLLTSGTTEANAWKSTLVGHDTFTKVKPSAASIDAAKKAGVNNGNPLDAVQQ
単量体コアストレプトアビジンも、WuおよびWong(2005年)により構築されている(特許US 7,265,205 B2および配列番号3を参照のこと)。
配列番号3:
MDPSKDSKAQVSAAEAGITGTWYNQLGSTFIVTAGADGALTGTYESAVGNAESRYTLTGRYDSAPATDGSGTALGWRVAWKNNYRNAHSATTWSGQYVGGAEARINTQWTLTSGTTEANAWKSTLRGHDTFTKVKPSAASIDAAKKAGVNNGNPLDAVQQ
本明細書では、「ストレプトアビジン」は、ストレプトアビジンの全形態(4量体、コアまたは単量体)を指すことができる。好ましい実施形態では、ストレプトアビジンは、配列番号2もしくは配列番号3に示されたようなアミノ酸配列、または配列番号2もしくは配列番号3と少なくとも80%同一性、配列番号2もしくは配列番号3と好ましくは85%、90、95、96、97、98、99、99.5%同一性を有するこのバリアントを含む。
【0073】
「ストレプトアビジン」は、アビジンまたはリズアビジン(rhizavidin)など、他の種由来のストレプトアビジン相同体を包含することもできる。これらの天然ビオチン結合タンパク質の変異体も使用することができる。
【0074】
ビオチンは、100nMから100μM、好ましくは約1から10μMの範囲の濃度でリガンドLとして使用することができる。
【0075】
保持ドメインX(すなわち「フック」)は、特定の細胞内コンパートメントのレジデントである任意のタンパク質またはタンパク質ドメインであってもよい。
【0076】
用語「レジデント」は、特定のタンパク質またはドメインおよび特定のコンパートメントに適用され本明細書で使用される場合、前記タンパク質またはドメインは大半が特定のコンパートメントに位置することを意味することが意図される。典型的には、前記タンパク質またはドメインの少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%が、宿主細胞において定常状態で前記コンパートメントに位置する。
【0077】
本明細書では、用語「コンパートメント」または「細胞内コンパートメント」は、細胞生物学の技術分野で一般的な意味を有する。該用語は、真核細胞の特定のサブドメインを指す。典型的には、コンパートメントは、オルガネラ(小胞体、ゴルジ装置、エンドソーム、リソソーム等)、またはオルガネラのエレメント(エンドソームの多胞体;ゴルジ装置のシス、中間またはトランス槽等)または原形質膜もしくは原形質膜のサブドメイン(頂端、側底、軸索、樹状等)またはさらにマイクロドメイン(トリトン不溶性ドメイン、接着点、密着結合等)であってもよい。
【0078】
本明細書では、表現「ドナーコンパートメント」および「アクセプターコンパートメント」は、当技術分野で一般的な意味を有し、それぞれ、特定の標的タンパク質が由来するコンパートメントおよび特定の標的タンパク質が標的にされるコンパートメントと関係する。
【0079】
目的とするドナーコンパートメントに従って、異なるタンパク質またはドメインが保持ドメインとして使用され得る。
【0080】
ERにおける適切な保持ドメインXは、ERに存在するインバリアント鎖のアイソフォーム(Ii33)、リボホリンIもしくはII(Strubinら、1986年;Strubinら、1984年;Schutzeら、1994年;Fuら 2000年)、SEC61、シトクロムb5(Bulbarelliら、2002年)または局在化ドメインを含むこのフラグメントであるが、これらに限定されない。ER局在化ドメインの例は、Genbankアクセッション番号BC060556.1下で利用可能なリボホリンIIのER局在化である。
【0081】
ゴルジ装置における適切な保持ドメインXは、ジアンチン(ジアンチン)(GolgB1、GenBankアクセッション番号NM_004487.3)、TGN38/46、メンケス受容体、およびManII(α−1,3−1,6マンノシダーゼ、Genbankアクセッション番号NM_008549下で利用可能)、シアリルトランスフェラーゼ(β−ガラクトサミドα−2,6シアリルトランスフェラーゼ1、NM_003032)、GalT(β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ1、NM_001497)または局在化ドメインを含むこのフラグメントなどのゴルジ酵素であるが、これらに限定されない。
【0082】
原形質膜保持ドメインXの例は、Thy−1およびPRNP(Tanyaら、2006年;SchuckおよびSimons、2006年;Harris、2003年;Bardら、2006年;HenneckeおよびCosson、1993年;Achour Lら、2009年;RaynerおよびPelham、1997年;Amaral、2005年)などのGPIアンカータンパク質であるが、これらに限定されない。
【0083】
好ましい実施形態では、保持ドメインXはERに存在するインバリアント鎖のアイソフォーム、Ii33である。
【0084】
本発明による標的タンパク質Yは、特定のドナーコンパートメントから最終標的コンパートメントへの細胞内トラフィッキングを研究するのに望ましい任意のタンパク質であってもよい。
【0085】
標的タンパク質Yの例は、
上皮成長因子(EGF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、血管内皮成長因子(VEGF)などの成長因子(これらの全ては正常または変異されていてもよい)、
CCR5およびCFTRなどのGタンパク質結合受容体(GPCRs)などの受容体、
CD4、CD8およびモデル膜貫通タンパク質TM21などの原形質膜マーカーおよび主要組織適合性(MHC)分子、
E−カドヘリンなどの接着分子、
リソソーム酵素、
ManII(α−1,3−1,6マンノシダーゼ)、シアリルトランスフェラーゼ(β−ガラクトサミドα−2,6−シアリルトランスフェラーゼ1)、GalT(β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ1)などのゴルジ酵素、
VSVGおよびHAなどのウイルス糖タンパク質、
CD9などの4回膜貫通(tetraspanning)タンパク質、
シグナル伝達タンパク質、
多剤耐性タンパク質ABCB1などの輸送体タンパク質、
合成膜貫通ドメイン(例えばTMD22)、
Thy−1およびPrpなどのGPIアンカータンパク質、
ホルモン(インスリン、プロラクチン)またはホルモン受容体、
病的分子(アミロイドペプチド)
であってもよいが、これらに限定されない。
【0086】
標的タンパク質Yは、治療効果を得るために細胞内トラフィッキングをきっちりと調整することが望ましい、治療的目的の任意の分子であってもよい。逆に、標的タンパク質Yは、病理学的作用が細胞内トラフィッキングとつながりのある病的分子であってもよい。
【0087】
好ましい実施形態では、標的タンパク質Yは、シアリルトランスフェラーゼ、E−カドヘリンおよびTMD22から成る群から選択される。
【0088】
シアリルトランスフェラーゼおよびE−カドヘリンは、RUSH設定に好ましい標的タンパク質であるのに対し、TMD22は、RUSH設定に好ましい標的タンパク質である。
【0089】
特定のタンパク質は、幾つかの実施形態では、保持強度との相対に応じて保持ドメインXまたは標的タンパク質Yになることができる。特定のタンパク質P1は、タンパク質P2よりも適正な位置で安定に保持される場合があり、これは、保持ドメインすなわちフック(X)とみなされるであろう。同じタンパク質P1は、タンパク質P3よりも強く保持されない場合がある。タンパク質P3は、タンパク質P3の最終コンパートメントにタンパク質P1を運ぶであろう。P3は、このケースでは、保持ドメインすなわちフック(X)となるであろう。
【0090】
したがって、本発明の方法は、異なる局在化ドメインの強度を「ランク付け」するのに使用することもできる。
【0091】
標的タンパク質Yの検出は、当業者に知られている任意の手段により実施することができる。
【0092】
1つの実施形態では、標的タンパク質Yは検出可能な部分Zを含む。
【0093】
別の実施形態では、第2の融合タンパク質は、検出可能な部分Zを標的タンパク質と共にフレーム中に含む。
【0094】
適切な検出手段には、蛍光タンパク質、検出可能な部分に対する抗体、pH感受性プローブ、フルオロフォア結合剤および酵素検出(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)の使用が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0095】
好ましい実施形態では、標的タンパク質Yは、緑蛍光タンパク質(GFP)および赤蛍光タンパク質mCherryなどの蛍光タンパク質に融合される。有利には、この実施形態は、生細胞においてリアルタイムに標的タンパク質Yを追跡できるようにする。
【0096】
別の実施形態では、標的タンパク質Yは、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)に融合される。有利には、この実施形態は、輸送中間体の電子顕微鏡観察を可能にする。
【0097】
探求される特定の目標に従って適切な検出部分を選択することは、当業者の能力の範囲内である。
【0098】
本明細書では、用語「宿主細胞」は、本発明の第1および第2の融合タンパク質を発現するのに遺伝子操作することができる任意の真核細胞を指す。典型的には、本発明による宿主細胞は、酵母細胞または昆虫細胞またはげっ歯類もしくは霊長類もしくはヒト細胞などの哺乳動物細胞であってもよい。好ましくは、宿主細胞は、ヒト起源のHeLaおよびRPE−1細胞系である。
【0099】
本発明によれば、宿主細胞は、生きている生物内のin vitro宿主細胞、培養、またはin vivo宿主細胞であってもよい。
【0100】
本発明の方法は、(1)フックとして使用することができる、選択されたドナーコンパートメントに安定に局在化されたタンパク質を見出すことができること、および(2)宿主細胞が相互作用ドメインの相互作用を可能にし、リガンド分子に浸透することから、選択された宿主により課せられたいずれの起源のおよびいずれの生理的温度での任意の細胞モデルにおいて実施することができる。
【0101】
本発明による一般的方法:
本発明の2成分系では、第1の融合タンパク質A−X(フック)および第2の融合タンパク質B−Y(レポーター)の両方とも、同じ宿主細胞で発現される必要がある。
【0102】
これは、さまざまな方法により達成することができ、これらには以下が挙げられる:
2つの別個のプラスミドを用いた細胞のトランスフェクション
2シストロン性発現カセットを有するプラスミドを用いた単一トランスフェクション。
【0103】
あるいは、プラスミドを使用する代わりに、ウイルス送達も使用することができる。あるいは、一方または両方の構築物を発現する安定な細胞系(単一または複数の発現ベクターを用いた)も、当技術分野における一般的な手順により生成することができる。
【0104】
生理的温度で細胞を維持するとき、レポーターはフック含有コンパートメントに封鎖される。デフォルトでの相互作用実施形態を用いる場合、これは自然に生じるであろう。しかし、分子依存的実施形態を用いる場合、架橋分子として作用する、および2つのドメインAおよびBの相互作用を確実にするリガンドが、このステップで添加されなければならない。当業者は、過剰な実験をすることなくドナーコンパートメントに全レポーター分子を封鎖するために必要な時間を作ることができるであろう。
【0105】
典型的には、ドナーコンパートメントに全レポーター分子を封鎖するために必要な時間は、2から24時間の間、好ましくは6から16時間の間、さらにより好ましくは約16時間(一終夜)を含むことができる。
【0106】
典型的には、約6時間がERにゴルジ酵素を封鎖するのに十分である。
【0107】
レポーターの分泌の測定を開始するため、封鎖が解除される。[ID]−RUSHを用いる場合、リガンドLはこのステップで添加され、[MD]−RUSHを用いる場合、架橋分子リガンドLは洗い流され、および必要であれば競合相手Cが添加されるであろう。
【0108】
1つの実施形態では、本発明の方法は、標的タンパク質のトラフィッキングを撹乱する条件または分子を同定するのに使用することができる。例えば、本発明の方法は、標的タンパク質のトラフィッキングを撹乱する化合物をスクリーニングするのに使用することができる。
【0109】
典型的には、前記化合物はsiRNAであってもよい。例えば、本発明の方法は、極めて多様な調節遺伝子を不活化するため、多くのプロバイダー(Qiagen社、Thermo社、Sigma−Proligo社)から利用可能なsiRNAライブラリーをスクリーニングするのに使用することができる。
【0110】
典型的には、前記化合物は、化学薬剤ライブラリーの分子などの小分子であってもよい。これらのライブラリーは、ChemBridge社、Prestwick Chemical社またはMayBridge社などの多くのプロバイダーから利用可能である。
【0111】
本発明の方法およびキットは、時間における厳格な管理により、正常もしくは変異された成長因子(例えばEGF、VEGF)、ホルモン(インスリン、プロラクチン)またはこの受容体、または病的分子(アミロイドペプチド)の輸送の調節などのin vivo適用に使用することもできる。このような動物モデルの使用の例には、動物の生涯の後期における腫瘍発生、ヒト疾患に似た症状を呈する生理的変化の発達異常の作製が含まれる。
【0112】
本発明は、特許請求の範囲により規定された保護の範囲を限定するものではない以下の図および実施例によりさらに記載されるであろう。
【実施例】
【0113】
材料および方法
レポーターアッセイ構築(表1を参照のこと)
IRESベクターの開発:
RUSHシステムは、同じ細胞中にフックタンパク質およびレポータータンパク質の両方の同時存在を必要とする。
【0114】
コトランスフェクションまたは重感染を使用することができるであろうが、本発明者らは先ず、IRES(内部リボソーム進入部位)ベースのベクターを開発して同時発現を可能にした。全てのレポーター分子を保持するのに十分なフックが発現されるのを確実にするため、フックはIRESの前、レポーターはIRESの後で挿入する。
【0115】
IRESベクターは、pIRESneo3(Clontech−Takara Bio Europe社、サンジェルマンアンレ、フランス)に基づく。フックは、ベクターのMCSを用いて挿入する。レポーターを挿入するため、本発明者らは、8ベースカッター認識部位AscI、SfiIおよびPacIを含有するマルチクローニングサイトにネオカセットを置換してベクターを修飾した。
【0116】
RUSHIi−FRAP[フック]/[レポーター]pIRESベクターの構築:
最初の検証として、本発明者らは、本発明者らがソース配列を入手したV.Malhotra博士{Cell and Developmental Biology Department of University of California San Diego}により既に使用されたタンパク質のペア(Pecot、2004年;Pecot、2006年)を実行した。フックは、ダブルアルギニンシグナルのためERから逃れることができないインバリアント鎖Iip33である。フックは、HAエピトープでタグ付けし、FRAPタンパク質のラパマイシン結合ドメイン(AA 2026−2114)に融合させる。
【0117】
使用した第1のレポーターは、ST−FKBP−GFP構築物であり、およびAscIおよびSfiI部位にクローン化した。該レポーターは、FK506結合タンパク質(FKBP)、これに続いて緑蛍光タンパク質(GFP)に融合されたシアリルトランスフェラーゼ(ST)のゴルジ局在化ドメインから成る。
【0118】
他のゴルジ酵素レポーターまたは分泌マーカーも同様にサブクローン化し、レポーターとして使用した。
【0119】
同じ構築物を基に、発明者らは、VSVGタンパク質配列をGFPおよびFKBP12に融合させた。
【0120】
pIRESベクターでのRUSHストレプトアビジン/SBPベースの[フック]/[レポーター]システムの構築:
Ii−FRAP/ST−FKBP12対のFKBP12およびFRAPドメインは、コアストレプトアビジンおよびSBPドメインにより置換した。2つの立体配置(1)Ii−ストレプトアビジン/ST−SBPおよび(2)Ii−SBP/ST−ストレプトアビジンを構築し、評価した。立体配置(1)は、小さなタグでレポーター分子をタグ付けする利点があるのに対し、立体配置(2)は、ストレプトアビジンでレポーターをタグ付けするため、放出中に蛍光ビオチンでレポーターを標識する可能性のある機会を提供する利点がある。FRAPのストレプトアビジンによる置換は、同じ制限酵素を用いて挿入し易い合成遺伝子を用いて行う。FKBP12のSBPタグによる置換は、EcoRI−SbfI部位に挿入されたPCR増幅されたSBPタグを用いて行う。フック、IRESおよびレポーターを含有するカセット全体を、次いでpEGFP−C1ベクターのMfeI−AgeI部位にクローン化する。
【0121】
同じ構築物を基に、発明者らはVSVGおよびE−カドヘリンをGFPおよびSBPタグに融合させた。
【0122】
【表1】

【0123】
【表2】

RUSH Ii−FRAP[フック]/[レポーター]pIRESベクターの構築:
このシステムではFRAPドメインを、mycタグおよびフック配列に融合させる。このフックは、ラットシトクロムb5の17AA長の膜貫通ドメインから成る(TMD17)。実際、GFPタンパク質に融合されたこのドメインは、GFPのERにおける保持を媒介できることが示されている(Bulbarelliら、2002年)。FRAP−myc−TMD17は合成遺伝子(Genescript Inc社)として調製し、およびベクターMCSのNheI−BamHI部位におけるIRESの5’でクローン化した。レポーター部分は、IRES後にAscI−SfiI部位にクローン化する。ラットシトクロムb5の22AA長の膜貫通ドメイン(TMD22)に融合されたFKBPドメインから成る第2の合成遺伝子を調製した(Genescript Inc社)。GFPの挿入を可能にするため、Sbfi−FseI部位をFKBPとTMD22の間に添加した。このTMD22ドメインは、原形質膜へのGFPを標的にできることが示されている(Bulbarelliら、2002年)。
【0124】
pIRESベクターでのRUSHストレプトアビジン/SBPベースの[フック]/[レポーター]システムの構築:
フック部分では、FRAPドメインを、PCRにより増幅しおよびNheI−AgeI部位に挿入したコアストレプトアビジンにより置換する。レポーター部分では、FKBP12を、PCRにより増幅しおよびEcoRI−SbfI部位に挿入したSBPタグ配列により置換する。
【0125】
試薬
ラパマイシン(Sigma−Aldrich社)を原液(エタノール中)として最終200mMで希釈した。原液を、1000倍および次いで64倍に希釈して(両方とも培地で)3.1nMの最終モル濃度を得た。希釈の各ステップで、溶液は強くボルテックスした。
【0126】
FK506(Cayman社)をDMSOで希釈して24.8mMでの原液を得た。原液を室温(RT)、DMSOで50倍に希釈し、大規模にボルテックスし、次いで強くボルテックスしながらRTの培地で120倍に再び希釈して4.1μMの最終モル濃度を得た。この最終希釈を37℃で数分間温め、次いで細胞に添加する前に再びボルテックスした。
【0127】
D−ビオチン(Sigma社)を原液として0.2mg/mL(0.8mM)で水で調製する。80μMから100nMの範囲の濃度、および好ましくは10μMを使用してフックからレポーターを放出させる。ビオチンを含有しないまたは極めて低レベル(0.2μM以下)のビオチンを含有する培養培地を使用する。
【0128】
細胞培養およびトランスフェクション:
Hela細胞を、L−グルタミン、ピルビン酸ナトリウムおよび10%ウシ胎仔血清を追加したDMEM(Invitrogen社)で37℃で増殖させた。一過性のトランスフェクションのため、細胞を150mm培養皿でカバースリップに播種し、および25mM HEPESの存在下、リン酸カルシウム沈殿方法を用いてプラスミドフック−IRES−レポーター25μgをトランスフェクトした。4時間後、細胞を新鮮培地で洗い流し、3.1nMラパマイシン(Sigma社)の存在下、一終夜インキュベートした。次いで細胞を培地で3回洗浄し、幾つかの時点で3.3μM FK506(Cayman社)および100mg/mLシクロヘキシミド(CHX)と共に予め温めた培地でインキュベートした。各時点で、FK506およびCHX含有培地1mLを、12ウェルプレートの1つのウェルに添加した。次いで細胞を4%PAFで固定し、蛍光顕微鏡法のため処理した。ストレプトアビジン/SBP設定では、トランスフェクションを同様に行うが、トランスフェクション後に細胞を洗浄する場合添加は行わない。1時間後、ビオチン(10μM)を添加してレポーター放出を誘導する。次いで、細胞を次いでMD設定でのように処理する。
【0129】
免疫蛍光:
細胞をパラホルムアルデヒド3%で15分間固定し、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)および遊離アルデヒドで洗浄し、NHCl 50mMで5分間クエンチングした。細胞は、次いでウシ血清アルブミン(BSA 0.5%)およびサポニン(Sapo 0.05%)を含有するPBS[PBS/BSA/Sapo]で20分間透過処理し、1次抗体(ヒト抗ジアンチン、Nizakら 2003年、Moutelら、2009年)と共に同じ緩衝液で30分間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄し、および蛍光標識した2次抗体(Jackson Immunoresearch社)と共にPBS/BSA/Sapoで20分間インキュベートした。核はDAPI(4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール、Sigma−Aldrich社)で対比染色した。細胞は最後に、モウィオール(Mowiol)(Sigma−Aldrich社)にマウントする前にPBSで洗浄し、蛍光顕微鏡法により観察した。
【0130】
<実施例1>
FRAPとFKBP12の間の分子依存的相互作用およびゴルジ酵素、シアリルトランスフェラーゼのトラフィッキング(図2)
概要
フック構築物:Ii−FRAP−HA
レポーター構築物:シアリルトランスフェラーゼ−FKBP12−GFP
この例では、フックは、ERから出ていくことができないインバリアント鎖のバリアントに基づく。フックは、第1の融合タンパク質を形成するラパマイシン結合タンパク質FRAP、および免疫染色のためのHAタグに融合される。レポーターは、第2の融合タンパク質を形成するラパマイシンおよびFK506結合タンパク質FKBP12に融合されたゴルジ酵素配列(シアリルトランスフェラーゼ)の標的配列である。このトラフィッキングを追跡するため、レポーターも蛍光GFPタンパク質に融合させた。ドナーコンパートメントはERであり、標的コンパートメントはゴルジ装置である。レポーターおよびフックは両方とも、単一プロモーターの制御下で発現される。
【0131】
ERでのレポーターの保持は、ラパマイシンの存在下で生じた。ラパマイシンを洗い流すと、およびFKBP12に結合しているラパマイシンと競合するFK506の存在下で、レポーターが放出され、標的ゴルジコンパートメントへトラフィックした。
【0132】
プロトコルおよび結果
細胞を一終夜、低ラパマイシン濃度でインキュベートして、FRAPドメインとFKBP12ドメインの間の安定な相互作用を誘導した。免疫蛍光により示されるようなこれらの状態では、FKBP12−GFP−STはジアンチン抗体を用いて標識されたゴルジ装置に到達することはできなかった(図2、上のパネル、保持された状態)。
【0133】
FK−506の存在下でラパマイシンを洗い出すと(図2、下のパネル、放出された状態)、レポーター分子は、ERを効率的に出てゴルジ装置に到達することができた。
【0134】
故に、RUSHシステムは、2つの融合タンパク質を用いて宿主細胞における標的タンパク質Y(本ケースではST)の細胞内トラフィッキングを同期させる方法を提供する。第1の融合タンパク質X−Aはフックとして役割を果たし、リガンドLとしてのラパマイシンの存在下で第2の融合タンパク質B−Yを小胞体に保持することができる。ラパマイシンを洗い出し、および競合相手Cを添加すると、レポーターB−YはがERを出てゴルジに向かって移行するのを見ることができる。
【0135】
このシステムは、ラパマイシンの存在下または非存在下でFRAPおよびFKBP12の可逆的相互作用に基づく。
【0136】
<実施例2>
ストレプトアビジン/SBPタグ間のデフォルトでの相互作用およびゴルジ酵素、シアリルトランスフェラーゼのトラフィッキング(図3および4)
概要
フック:Ii−FRAP
レポーター:シアリルトランスフェラーゼ−FKBP12−GFP
この例では、フックは、ERから出ていくことができないインバリアント鎖のバリアントに基づく。フックは、第1の融合タンパク質を形成するコアストレプトアビジン、および免疫染色のためのHAタグに融合される。レポーターは、第2の融合タンパク質を形成するストレプトアビジン相互作用SBPペプチドに融合されたゴルジ酵素配列(シアリルトランスフェラーゼ)の標的配列である。このトラフィッキングを追跡するため、レポーターも蛍光GFPタンパク質に融合させた。ドナーコンパートメントはERであり、標的コンパートメントはゴルジ装置である。レポーターおよびフックは両方とも、単一プロモーターの制御下で発現される。
【0137】
ERでのレポーターの保持は、SBPとコアストレプトアビジンの間の相互作用によりデフォルトで生じた。ビオチンを添加すると、レポーターが放出され、標的ゴルジコンパートメントへトラフィックした。
【0138】
プロトコルおよび結果
フックは、単量体ストレプトアビジン(配列番号3)に融合されたIi33に局在化したERを用いて構築した(実施例1からの構築物のFRAPが単量体ストレプトアビジンにより置換される)。レポーターは、実施例1で使用されるようなシアリルトランスフェラーゼのゴルジ局在化ドメインであった。フックおよびレポーターは細胞で共発現され、2つのドメイン、ストレプトアビジンおよびSBP−タグはデフォルトで相互作用し、ゴルジ装置へのST輸送を妨げる。STの放出は、遊離ビオチンの中程度の濃度(約1〜10μM)を用いて達成された。
【0139】
この例では、RUSHシステムのIDモードを説明する。
【0140】
リガンドの非存在下では、SBP−タグとストレプトアビジンの間の相互作用が生じ、レポーターはERに閉じ込められる。リガンド、ビオチンを添加すると、相互作用は破壊された。レポータータンパク質(ここではSTの標的ドメイン)が放出され、および標的コンパートメント、すなわちゴルジに向かってトラフィックするためにERを出ることができた(図3)。
【0141】
このシステムで観察された速度は極めて速く、ストレプトアビジンとSBPの間の相互作用の阻害が律速段階ではなかったことを示唆する。実際、図4に示されているように、染色はわずか数分後にゴルジで観察され、レポーター分子の全てではなくともほとんどが、放出後18分から30分までにゴルジコンパートメントに到達した。
【0142】
これは、ゴルジ酵素のトラフィックを定量的および速度論的に研究し、分子的に記載し、および潜在的に撹乱する独自の方法を提供する。
【0143】
<実施例3>
ストレプトアビジン/SBPタグ間のデフォルトでの相互作用およびゴルジ酵素マンノシダーゼIIのトラフィッキング(図5)
実施例2と同様(ただし、レポーター分子としてマンノシダーゼII標的ドメインを用いる)。この例は、分析される別の種類のゴルジ酵素を提供する。該酵素を赤蛍光タンパク質に融合することで、2つのゴルジ酵素(もしくはゴルジ酵素および別の積み荷)を同じドナーおよびアクセプターコンパートメント間で同時に観察することができた。
【0144】
<実施例4>
ストレプトアビジン/SBPタグ間のデフォルトでの相互作用およびウイルスタンパク質VSV−Gのトラフィッキング(図6)
例2と同様(ただし、レポーター分子としてウイルス糖タンパク質VSV−Gを用いる)。これは、ERと原形質膜の間のトラフィックを研究および定量化するのにこの感熱性バージョンで通常使用される極めて古典的なレポーターである。RUSHシステムを用いて、同じ分析を、温度ブロックを使用せずに行った。細胞を故に常温、生理的温度で研究することができる。
【0145】
<実施例5>
ストレプトアビジン/SBPタグ間のデフォルトでの相互作用および原形質膜タンパク質E−カドヘリンのトラフィッキング(図7および8)
例2と同様(ただし、レポーター分子として接着分子E−カドヘリンを用いる)。この例は、ERから原形質膜への輸送を同期的およびリアルタイムに追跡することができたことを示す。タイムラプス分析は、輸送中間体(ERからゴルジへおよびゴルジから原形質膜へ)の同定を可能にした(図8)。RUSHシステムは故に、原形質膜局在化タンパク質のトラフィックを定量的および速度論的に研究し、分子的に記載し、および潜在的に撹乱するのに使用することができる。
【0146】
<実施例6>
細胞質トポロジーにおけるストレプトアビジン/SBPタグ間のデフォルトでの相互作用(図9)
概要
フック:TMD17(シトクロムb5)
レポーター:TMD22−GFP
この例では、フックは、ERのレジデントタンパク質として挙動するシトクロムb5の膜貫通ドメインに基づく。フックは、第1の融合タンパク質を形成するコアストレプトアビジン、および免疫染色のためのmysタグに融合される。レポーターは、合成膜貫通ドメインであり、第2の融合タンパク質を形成するストレプトアビジン相互作用SBPペプチドに融合された原形質膜に向かってトラフィックするシトクロムb5に基づく。このトラフィッキングを追跡するため、レポーターも蛍光GFPタンパク質に融合させた。ドナーコンパートメントはERであり、標的コンパートメントは原形質膜である。レポーターおよびフックは両方とも、単一プロモーターの制御下で発現される。
【0147】
ERでのレポーターの保持は、SBPとコアストレプトアビジンの間の相互作用によりデフォルトで生じる。ビオチンを添加するとレポーターが放出され、標的ゴルジコンパートメントへトラフィックする。この設定(RUSH)は、積み荷の保持および膜の細胞質面からの放出を可能にする。
【0148】
プロトコルおよび結果
RUSH設定の例として本発明者らは、フックとしてのシトクロムB5の膜貫通ドメイン(TMD17)およびシトクロムb5に基づくより長い合成ドメイン、TMD22を使用した。定常状態では、保持は広範囲に及んだ。ビオチンを添加すると、放出が観察され、レポーターTMD22は原形質膜に向かってトラフィックし続けた。これは、いずれの内腔ドメインも有さない、または内腔部分にタグ付けできないタンパク質も、RUSHシステムを用いて研究することができることを示している。
【0149】
ERではなくゴルジコンパートメントに目的とするタンパク質を保持するフックとしてジアンチンを用いて、同様の実験を行った。
【0150】
参考文献:
本明細書を通じ、様々な参考文献が、本発明が関連する先行技術を記載する。これら参考文献の開示は参照により本発明の開示に組み込まれる。
【0151】
【表3】

【0152】
【表4】

【0153】
【表5】

【0154】
【表6】

【図1a】

【図1b】

【図1c】

【図1d】

【図1e】

【図1f】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞における標的タンパク質Yの細胞内トラフィッキングを調節する方法であって、
a)宿主細胞を用意するステップと、
b)式A−Xの第1の融合タンパク質(式中、Aは相互作用ドメインであり、Xは特定の細胞内コンパートメントに式A−Xの第1の融合タンパク質を保持することができるドメインである)をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターを用意するステップと、
c)式B−Yの第2の融合タンパク質(式中、Bは相互作用ドメインであり、Yは標的タンパク質である)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターを用意するステップと
を含み、AおよびBがリガンドLの存在または非存在による条件的相互作用をすることができる、方法。
【請求項2】
AとBの間の条件的相互作用がリガンドLの添加により破壊される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
宿主細胞における標的タンパク質Yの細胞内トラフィッキングを調節するキットであって、
式A−Xの第1の融合タンパク質(式中、Aは相互作用ドメインであり、Xは特定のコンパートメントに式A−Xの第1の融合タンパク質を保持することができるドメインである)をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクターと、
式B−Yの第2の融合タンパク質(式中、Bは相互作用ドメインであり、Yは標的タンパク質である)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクターと
を含み、AおよびBがリガンドLの存在または非存在による条件的相互作用をすることができる、キット。
【請求項4】
前記第1および第2の発現ベクターで形質転換可能な宿主細胞をさらに含む、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
トランスフェクション試薬をさらに含む、請求項3または4に記載のキット。
【請求項6】
リガンドLをさらに含む、請求項3から5のいずれか1項に記載のキット。
【請求項7】
ドナーコンパートメントから標的タンパク質Yを選択的に保持および放出するための、
式A−Xの第1の融合タンパク質(式中、Aは相互作用ドメインであり、Xは特定のコンパートメントに式A−Xの第1の融合タンパク質を保持することができるドメインである)をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現ベクター、ならびに
式B−Yの第2の融合タンパク質(式中、Bは相互作用ドメインであり、Yは標的タンパク質である)をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現ベクター
の使用であって、AおよびBがリガンドLの存在または非存在による条件的相互作用をすることができる、使用。
【請求項8】
AとBの間の相互作用がリガンドの存在下でのみ生じる、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法またはキットまたは使用。
【請求項9】
AとBの間の相互作用がリガンドの非存在下でのみ生じる、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法またはキットまたは使用。
【請求項10】
B−Yが検出可能な部分Zをさらに含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法またはキット。
【請求項11】
前記宿主細胞が、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞から成る群から選択される真核宿主細胞である、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法またはキット。
【請求項12】
AおよびBが、それぞれ、FKPB12およびFRAP、または、FRAPおよびFKBP12である、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法またはキット。
【請求項13】
AおよびBが、それぞれ、SBPおよびストレプトアビジン、または、ストレプトアビジンおよびSBPである、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法またはキット。
【請求項14】
Xが、ERに存在するインバリアント鎖のアイソフォーム(Ii33);リボホリンIまたはII;SEC61、シトクロムb5;ジアンチン;ManII(α−1,3−1,6マンノシダーゼ)、TGN38/46などのゴルジ酵素;メンケス受容体;シアリルトランスフェラーゼ(β−ガラクトサミドα−2,6シアリルトランスフェラーゼ1)、およびGalT(β−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ1);ならびにThy−1およびPRNPなどのGPIアンカータンパク質から成る群から選択される、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法またはキット。
【請求項15】
Yが、成長因子、受容体、原形質膜マーカーおよび主要組織適合性(MHC)分子、接着分子、リソソーム酵素、ゴルジ酵素、ウイルス糖タンパク質、4回膜貫通タンパク質、シグナル伝達タンパク質;合成膜貫通ドメイン;多剤耐性タンパク質ABCB1様の輸送体タンパク質;GPIアンカータンパク質;ホルモン;ホルモン受容体;およびアミロイドペプチドなどの病的分子から成る群から選択される、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法またはキット。
【請求項16】
第1の融合タンパク質A−Xをコードするために、前記第1の発現ベクターが、Aをコードするヌクレオチド配列、およびXをコードするヌクレオチド配列のインフレーム挿入を可能にするマルチプルクローニングサイトを含む、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法またはキット。
【請求項17】
式B−Yの第2の融合タンパク質をコードするために、前記第2の発現ベクターが、Bをコードするヌクレオチド配列、およびYのインフレーム挿入のためのマルチプルクローニングサイトを含む、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法またはキット。
【請求項18】
第1および第2のベクターが単一のベクターであって、前記単一のベクターが2シストロン性発現カセットを含む、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法またはキット。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−529278(P2012−529278A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514480(P2012−514480)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058229
【国際公開番号】WO2010/142785
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511300905)
【Fターム(参考)】