説明

標的化治療の変異型を回避する免疫応答を惹起するための組成物および方法

本発明は、i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合させた酵母媒介体;iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;またはv)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープの1種類以上を含む組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府の権利
該当なし。
【0002】
技術分野
本発明は、一般的に、変異型ポリペプチドに対する免疫応答の惹起における使用のための組成物および方法、標的化される治療用または予防用薬物薬剤(1種類または複数種)に応答して特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドを発現する細胞に関する。本明細書に開示する該組成物および方法は、標的化される薬物薬剤の投与との組合せで、変異型ポリペプチド(該変異型ポリペプチドを発現する細胞の欠失および/または停止を含むに対する免疫応答、特に、細胞媒介性免疫応答を惹起するのに有用である。該組成物および方法は、予防的または治療的に使用され得る。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
癌生物学における新規な発見により、標的特異的抗癌剤の設計の機会がもたらされ、薬物開発の進歩が促されている。このような発見により、癌細胞内の特定の標的に対して高い選択性を有する分子を設計することが可能になる。Segota & Bukowski,Cleveland Clinic J.Med.,2004,71(7):551−560。例えば、慢性骨髄性白血病(CML)の処置におけるBcr−Ablチロシンキナーゼ阻害剤イマチニブ(グリベック)の好成績は、この標的化アプローチに対する期待を大きく刺激した。Capdevilleら,Nature Reviews,2002,1:493−502。標的化癌治療は、重大な問題をもたらす。標的は回避変異を発現し、最終的に薬物耐性に至る。例えば、最初はグリベックでの処置に応答性であった患者に変異が生じているのが認められ、この患者は、この変異の結果、グリベックでのさらなる処置に対して抵抗性になったと報告されている。Gorreら,Science 2001,293:876−880;Shahら,Cancer Cell 2002,2:117−125;Branfordら,Blood 2002,99(9):3742−3745;Deiningerら,Blood 2005,105(7):2640−263。同様に、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)における変異が、非小細胞肺癌(NSCLC)患者において認められ、この変異によって患者は、ゲフィチニブ(イレッサ)またはエルロチニブ(タルセバ)などのEGFRを特異的に標的化する治療用薬剤の作用に対して抵抗性になったと報告された。Kobayashiら,N.Engl.J.Med,2005,352(8):786−792。したがってこのような癌薬物の有効性は、回避変異の存在によって有意に制限される。
【0004】
同様に、さまざまな抗ウイルス性化合物が認可され、現在、ウイルス感染の処置に使用されているが、このような薬剤の多くで見られる薬物耐性の発現という重大な問題が継続して存在する。例えば、HIVの処置に使用されるヌクレオシド逆転写酵素阻害剤に対する耐性が報告されている。例えば、スタブジンに対する耐性と関連しているHIV RTにおいて同定された変異としては、M41L、K65R、D67N、K70R、Q151M、L210W、T215Y/FおよびK219Eが挙げられる。ジダノシンに対する耐性と関連しているHIV RTにおいて同定された変異としては、K65R、L74VおよびM184Vが挙げられる。ラミブジンに対する耐性と関連しているHIV RTにおいて同定された変異としては、K65RおよびM184V/Iが挙げられる。例えば、Johnsonら(2005,International AIDS Society−USA 第13巻:51−57)およびSchmittら(2000,AIDS第l4巻:653−658)を参照のこと。特異的抗ウイルス薬物に対する感受性の低下または完全な耐性は、ウイルスの逆転写酵素またはRNA依存性RNAポリメラーゼのエラーが起こりやすい性質のため、多くのレトロウイルス、RNAウイルスおよび一部のDNAウイルス(例えば、B型肝炎ウイルスなど)に対する治療の有効性を制限する大きな要因である。治療用および/または予防用薬剤の投与に伴って出現する変異型の存在を少なくとも最小限に抑えることが望まれよう。
【0005】
免疫応答を惹起するための方法は、例えば、非特許文献1に開示されている。酵母系は、例えば、特許文献1、非特許文献2;および非特許文献3に開示されている。
【0006】
本明細書に引用した特許、特許出願および出願公開公報を含む全ての参考文献は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【特許文献1】米国特許第5,830,463号明細書
【非特許文献1】Thyphronitisら(2004,Anticancer Research,vol.24:2443−2454)およびPlateら(2005)Journal of Cell Biology,第94巻:1069)
【非特許文献2】Stubbsら(2001,Nature Med.5:625−629);Luら(2004,Cancer Research 64:5084−5088)
【非特許文献3】Franzusoffら(2005,Expert Opin.Bio.Ther.第5巻:565−575)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の簡単な概要
本明細書において、酵母媒介体および変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ、または変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含み、該変異型ポリペプチドが、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである組成物が提供される。
【0008】
一例において、該組成物は、以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合させた酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ
の1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである。
【0009】
一例において、酵母媒介体は、完全体の酵母、酵母スフェロプラスト、酵母細胞質体、酵母ゴーストまたは細胞分画酵母膜抽出物またはその画分である。一例において、酵母媒介体は、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Kluveromyces、Hansenula、CandidaおよびPichiaからなる群より選択される酵母から得られる。一例において、酵母媒介体は、Saccharomyces、例えば、S.cerevisiaeなどから得られる。
【0010】
一例において、変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープは、2つ以上のエピトープを含む。他の一例では、変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープは、1つ以上の変異を含む2つ以上のエピトープを含む。
【0011】
一例において、変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープは、RNAまたはDNAウイルスにコードされている。一例において、ウイルスは、レトロウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、ラブドウイルス、ブンヤウイルス(bunyaviurs)、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、アレナウイルス、カリシウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルスまたはパポバウイルスである。他の一例では、変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープは、HIV、HBVまたはHCVにコードされている。
【0012】
本明細書において、酵母媒介体および変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ、または変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含み、該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである組成物が提供される。
【0013】
一例において、変異型ポリペプチドは、アルタザナビル(altazanavir)、サクイナビル、ラミブジン、ジドノシン(didnosine)、エンブリシタビン(embricitabine)、ジドブジン、スタブジン、ザルシタビン、アバカビル、テノホビル、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、インジナビル、リトナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、エンフビルチド、エンテカビル、アデホビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロン、リバビリン、サイモシン−α、キナーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ウイルスプロテアーゼ阻害剤、ウイルス侵入/融合阻害剤、ウイルスプロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド類縁体またはその組合せから選択される、標的化される治療用および/または予防用薬剤での処置に応答して出現する。
【0014】
一例において、変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープは、癌遺伝子にコードされているか、腫瘍関連抗原であるか、または癌細胞によって発現される。一例において、変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープは、MAGE、MAGE3、MAGEA6、MAGEA10、NY−ESO−1、gp100、チロシナーゼ、EGFR、FGFR、PSA、PSMA、VEGF、PDGFR、Kit、PMSA、CEA、Her2/neu、Muc−1、hTERT、Mart1、TRP−1、TRP−2、Bcr−Abl、p53、p73、Ras、PTENSrc、p38、BRAF、大腸腺腫性ポリポーシス、myc、フォン・ヒッペル・リンドウタンパク質、Rb−1、Rb−2、BRAC1、BRAC2、アンドロゲン受容体、Smad4、MDR1またはFlt3である。
【0015】
一例において、変異型ポリペプチドは、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、キナーゼ阻害剤、SB203580、チロシンキナーゼ阻害剤またはその組合せから選択される標的化される治療用および/または予防用薬剤での処置に応答して出現する。
【0016】
本明細書において、酵母媒介体および変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ、または変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含み、該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである組成物が提供される。一例において、該組成物は、薬学的に許容され得る賦形剤をさらに含む。一例において、該組成物は、少なくとも1種類のアジュバントをさらに含む。他の一例では、アジュバントは、Toll様受容体アゴニスト、ジヌクレオチドCpG配列、単鎖もしくは二本鎖RNA、フロイントアジュバント、脂質部分、マンナン、グルカン、アルミニウム系の塩、カルシウム系の塩、シリカ、ポリヌクレオチド、トキソイド、血清タンパク質、ウイルス外被タンパク質、γ−インターフェロン、コポリマー、Ribiアジュバントまたはサポニンおよびその誘導体から選択される。
【0017】
本明細書において、変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ、あるいは変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞および/または該変異型ポリペプチドもしくはその断片を発現する細胞に対する免疫応答を惹起するための方法であって、該変異型ポリペプチドは、治療用および/または予防用薬物薬剤(1種類または複数種)の投与に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものであり、該方法は、有効量の組成物を該薬剤との組合せで投与することを含み、該組成物は、
a.該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞、ベクターもしくはウイルス;
b.変異型ポリペプチドに結合している細胞、ベクターもしくはウイルス;
c.該変異型ポリペプチド、もしくは該変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するペプチド(ミメトープ);または
d.該変異型ポリペプチドをコードする核酸、あるいは該核酸に結合し得る核酸、例えばsiRNAもしくはアンチセンスRNAなど
を含み、
該有効量の該組成物は、該薬剤との組合せで投与される、
方法が提供される。
【0018】
一例において、該組成物は、以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合した酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ
の1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである。
【0019】
一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。一例において、免疫応答は体液性応答である。さらなる一例において、免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答である。他の一例では、該組成物は、アジュバント、例えば、限定されないが、Toll様受容体(TLR)アゴニスト;CpGヌクレオチド配列;単鎖もしくは二本鎖RNA;脂質部分、例えば、リポ多糖(LPS)など;マンナンおよびグルカンをさらに含む。一例において、該組成物は酵母媒介体を含む。一例において、酵母媒介体は、完全体の酵母、酵母スフェロプラスト、酵母細胞質体、酵母ゴーストまたは細胞分画酵母膜抽出物またはその画分である。一例において、酵母媒介体は、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Kluveromyces、Hansenula、CandidaおよびPichiaからなる群より選択される酵母から得られる。一例において、酵母媒介体は、Saccharomyces、例えば、S.cerevisiaeなどから得られる。
【0020】
他の一例では、哺乳動物はヒトである。さらなる一例において、変異型ポリペプチドは癌細胞によって発現されるか、またはウイルス変異型ポリペプチド、例えば、HIV変異型ポリペプチド、HCV変異型ポリペプチドもしくはHBV変異型ポリペプチドである。
【0021】
本明細書において、哺乳動物に有効量の組成物を、治療用および/または予防用薬剤との組合せで投与することを含む、哺乳動物において疾患症状を改善するための方法であって、該変異型ポリペプチドが、該薬剤の投与に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものであり、該組成物が、
a.該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞、ベクターもしくはウイルス;
b.変異型ポリペプチドに結合している細胞、ベクターもしくはウイルス;
c.該変異型ポリペプチド、もしくは該変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するペプチド(ミメトープ);または
d.該変異型ポリペプチドをコードする核酸、あるいは該核酸に結合し得る核酸、例えばsiRNAもしくはアンチセンスRNAなど
を含み、
該有効量の該組成物は、該薬剤との組合せで投与される、
方法が提供される。一例において、該疾患は、該変異型ポリペプチドと関連している。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。一例において、免疫応答は体液性応答である。他の一例では、免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。
【0022】
また、本明細書において、以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合した酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ
の1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである、
組成物が提供される。
【0023】
他の一例では、該組成物は、アジュバント、例えば、限定されないが、Toll様受容体(TLR)アゴニスト;CpGヌクレオチド配列;単鎖もしくは二本鎖RNA;脂質部分、例えば、リポ多糖(LPS)など;マンナンおよびグルカンをさらに含む。一例において、該組成物は酵母媒介体を含む。一例において、酵母媒介体は、完全体の酵母、酵母スフェロプラスト、酵母細胞質体、酵母ゴーストまたは細胞分画酵母膜抽出物またはその画分である。一例において、酵母媒介体は、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Kluveromyces、Hansenula、CandidaおよびPichiaからなる群より選択される酵母から得られる。一例において、酵母媒介体は、Saccharomyces、例えば、S.cerevisiaeなどから得られる。一例において、酵母媒介体は、Saccharomyces、例えば、S.cerevisiaeなどである。他の一例では、哺乳動物はヒトである。さらなる一例において、変異型ポリペプチドは癌細胞によって発現されるか、またはウイルス変異型ポリペプチド、例えば、HIV変異型ポリペプチド、HCV変異型ポリペプチドもしくはHBV変異型ポリペプチドである。
【0024】
本明細書において、疾患もしくは感染のリスクがある、または疾患もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に予防的および/または治療的のいずれかで投与される薬剤に対する耐性を低下させるための方法であって、哺乳動物に有効量の組成物を該薬剤との組合せで投与することを含み、ここで、前記組成物は、
a.該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞、ベクターもしくはウイルス;
b.変異型ポリペプチドに結合細胞、ベクターもしくはウイルス;
c.該変異型ポリペプチド、もしくは該変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するペプチド(ミメトープ);または
d.変異型ポリペプチドをコードする核酸、あるいは該核酸に結合し得る核酸、例えばsiRNAもしくはアンチセンスRNAなど
を含み、
該有効量の該組成物は、該薬剤との組合せで投与される、
方法が提供される。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。さらなる一例において、免疫応答は細胞性かつ体液性免疫応答である。
【0025】
他の一例では、該組成物は、アジュバント、例えば、限定されないが、Toll様受容体(TLR)アゴニスト;CpGヌクレオチド配列;単鎖もしくは二本鎖RNA;脂質部分、例えば、リポ多糖(LPS)など;マンナンおよびグルカンをさらに含む。一例において、該組成物は酵母媒介体を含む。一例において、酵母媒介体は、完全体の酵母、酵母スフェロプラスト、酵母細胞質体、酵母ゴーストまたは細胞分画酵母膜抽出物またはその画分である。一例において、酵母媒介体は、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Kluveromyces、Hansenula、CandidaおよびPichiaからなる群より選択される酵母から得られる。一例において、酵母媒介体は、Saccharomyces、例えば、S.cerevisiaeなどから得られる。一例において、酵母媒介体は、Saccharomyces、例えば、S.cerevisiaeなどである。他の一例では、哺乳動物はヒトである。さらなる一例において、変異型ポリペプチドは癌細胞によって発現されるか、またはウイルス変異型ポリペプチド、例えば、HIV変異型ポリペプチド、HCV変異型ポリペプチドもしくはHBV変異型ポリペプチドである。該方法の一例において、薬物薬剤は、本明細書において表I、IIおよびIIIに開示したものである。他の一例では、薬物薬剤は、癌細胞、癌の進行を支持する細胞もしくはウイルスを発現する細胞またはウイルスに標的化される抗体または小分子である。
【0026】
本明細書において、細胞性免疫応答を惹起し得、変異型ポリペプチドと関連しているベクターもしくはウイルスを含み、該変異型ポリペプチドが、治療用および/または予防用薬剤の投与に応答して出現することがわかっているか、または出現したものである組成物が提供される。一例において、該組成物は酵母媒介体を含む。一例において、酵母媒介体は完全体の酵母、酵母スフェロプラスト、酵母細胞質体、酵母ゴーストまたは細胞分画酵母膜抽出物またはその画分である。一例において、酵母媒介体は、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Kluveromyces、Hansenula、CandidaおよびPichiaからなる群より選択される酵母から得られる。一例において、酵母媒介体は、Saccharomyces、例えば、S.cerevisiaeなどから得られる。他の一例では、該組成物は、変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体を含む。一例において、該組成物は、以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合した酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープの1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである。また他の一例では、変異型ポリペプチドは癌細胞によって発現される。また他の一例では、変異型ポリペプチドはウイルス変異型ポリペプチドである。さらなる一例において、該組成物は、アジュバント、例えば、限定されないが、Toll様受容体(TLR)アゴニスト;CpGヌクレオチド配列;単鎖もしくは二本鎖RNA;脂質部分、例えば、リポ多糖(LPS)など;マンナンおよびグルカンをさらに含む。本明細書において、本明細書において上記の組成物を含む樹状細胞などの細胞が提供される。
【0027】
本明細書において、変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体の調製方法であって、該変異型ポリペプチドが、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものであり、該核酸が、該酵母媒介体内に、拡散、能動輸送、超音波処理、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着およびプロトプラスト融合からなる群より選択される手法によってトランスフェクトされる方法が提供される。本明細書において、変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体の調製方法であって、該変異型ポリペプチドが、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものであり、該変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープが、
拡散、能動輸送、リポソーム融合、超音波処理、エレクトロポレーション、食作用、リポフェクション、凍結/解凍サイクル、化学的架橋、生物学的連結または混合からなる群より選択される手法によって該酵母媒介体内に配置させるか、または該酵母媒介体に結合させる方法が提供される。一例の方法において、酵母媒介体は、樹状細胞またはマクロファージ内に細胞内負荷されている。他の一例の方法において、酵母媒介体は、樹状細胞内に細胞内負荷されている。
【0028】
本明細書において、医薬の調製における組成物の使用が提供される。また、哺乳動物における変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに対する免疫応答の惹起における使用のための医薬の調製における組成物の使用が提供される。一例において、医薬は、哺乳動物における変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに対する免疫応答の惹起において、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せでの使用のためのものである。他の一例では、医薬は、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答して出現した変異型ポリペプチドと関連している疾患の処置における使用のためのものである。また他の一例では、医薬は、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答して出現した変異型ポリペプチドと関連している疾患の症状の改善における使用のためのものである。一例において、医薬は、疾患もしくは感染が、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答して出現した変異型ポリペプチドと関連しているものであって、該疾患もしくは感染のリスクがある、または疾患もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に投与される薬剤に対する耐性を低下させるのに使用するためのものである。
【0029】
また、本明細書において、本明細書において上記の組成物を含むキットが提供される。一例において、哺乳動物において変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに対する免疫応答を惹起するためのキットは、酵母媒介体および少なくとも1種類の該変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープを含む。他の一例では、キットは、以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合した酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ
の1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである組成物を含む。一例において、キットは、標的化される治療用および/または予防用薬剤および/またはその使用のための説明書をさらに備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
発明の詳細な説明
腫瘍細胞およびウイルスに特有の経路特異的に標的化する予防用および治療用薬物薬剤の必要性が存在するが、腫瘍細胞およびウイルスでは、自身が薬物薬剤(1種類または複数種)を回避するのを可能にする、および/またはこれに耐性となるのを可能にする変異(1つまたは複数)が起こるため、欠陥が存在する。本明細書において、標的化される薬物薬剤に応答して出現することがわかっているか、もしくは出現したものである変異型ポリペプチド、または該変異型ポリペプチドを発現する細胞に対する免疫応答の惹起における使用のための組成物および方法が提供される。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答であり、一例では、免疫応答は体液性応答であり、他の一例では、免疫応答は細胞性と体液性の両方である。一例において、細胞性免疫応答では、例えば、癌細胞、腫瘍の進行を支持する細胞またはウイルスを発現する細胞などの、薬物薬剤標的化されるポリペプチド内に変異を含む無制御の細胞を排除することが意図されるが、細胞排除は必要ではない。一例において、細胞性および/または体液性免疫応答により、細胞増殖またはウイルス複製が阻止される。
【0031】
したがって、本明細書において、治療用および/または予防用薬剤(1種類または複数種)の投与に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチド、あるいは該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞および/または該変異型ポリペプチドを発現する細胞に対する免疫応答を惹起するための方法が提供される。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。一例において、免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。一例において、変異型ポリペプチドは、癌遺伝子にコードされたもの、および/または癌細胞によって発現されるものである。一例において、変異型ポリペプチドは癌細胞と関連しているか、癌細胞によって発現される。一例において、該薬剤は、癌細胞に標的化される。一例において、該薬剤は、は小分子または抗体である。他の一例では、変異型ポリペプチドはウイルスにコードされたもの、および/またはウイルスに感染した細胞によって発現されるものである。一例において、変異型ポリペプチドは、病原性ウイルス、例えば、HIV、HCVまたはHBVなどにコードされたものである。一例において、該薬剤は、ウイルスまたはウイルスを発現する細胞に標的化される。
【0032】
本明細書において、変異型ポリペプチド、あるいは該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞および/または該変異型ポリペプチドを発現する細胞に対する免疫応答を惹起するための方法であって、該変異型ポリペプチドは、治療用および/または予防用薬剤(1種類または複数種)の投与に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものであり、該方法は、有効量の組成物を該薬剤との組合せで投与することを含み、該組成物は、
a.該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞、ベクターもしくはウイルス;
b.変異型ポリペプチドと関連している細胞、ベクターもしくはウイルス;
c.該変異型ポリペプチド、もしくは該変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するペプチド(ミメトープ);または
d.該変異型ポリペプチドをコードする核酸、あるいは該核酸に結合し得る核酸、例えばsiRNAもしくはアンチセンスRNAなど
を含み、
該有効量の該組成物は、該薬剤との組合せで投与される、
方法が提供される。
【0033】
一例において、該組成物は、以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合した酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ
の1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである。
【0034】
一例において、該組成物は、細胞性免疫応答を惹起し得るものである。一例において、該組成物は、体液性応答を惹起し得るものである。他の一例では、細胞性免疫応答は、さらに体液性免疫応答を含む。
【0035】
該方法の一例において、該組成物は、アジュバントを含む。また他の一例では、該組成物は、Toll様受容体のアゴニストまたはリガンドをさらに含む。他の一例では、該組成物は酵母媒介体を含む。また他の一例では、該組成物は、CpG配列を含む。他の一例では、細胞は樹状細胞である。
【0036】
本明細書において、哺乳動物に有効量の組成物を、治療用および/または予防用薬剤との組合せで投与することを含む、哺乳動物において疾患の症状を改善するための方法であって、該変異型ポリペプチドが、該薬剤の投与に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものであり、該組成物が、
a.該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞、ベクターもしくはウイルス;
b.変異型ポリペプチドと関連している細胞、ベクターもしくはウイルス;
c.該変異型ポリペプチド、もしくは該変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するペプチド(ミメトープ);または
d.該変異型ポリペプチドをコードする核酸、あるいは該核酸に結合し得る核酸、例えばsiRNAもしくはアンチセンスRNAなど
を含み、
該有効量の該組成物は、該薬剤との組合せで投与される
方法が提供される。
【0037】
一例において、該組成物は、以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合した酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ
の1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである。
【0038】
一例において、該組成物は、細胞性免疫応答を惹起し得るものである。一例において、該組成物は体液性免疫応答を惹起する。他の一例では、細胞性免疫応答は、さらに体液性免疫応答を含む。
【0039】
該方法の一例において、該組成物は、アジュバントを含む。また他の一例では、該組成物は、Toll様受容体のアゴニストまたはリガンドをさらに含む。他の一例では、該組成物は酵母媒介体を含む。また他の一例では、該組成物は、CpG配列を含む。他の一例では、細胞は樹状細胞である。
【0040】
一例において、哺乳動物は、疾患のリスクがあり、該薬剤が予防的に投与される;他の一例では、哺乳動物は、疾患に易罹患性であり、該薬剤は治療的に投与される。一例において、疾患は癌であり、他の一例では、疾患は、病原性ウイルス、例えば、HIV、HCVおよびHBVなどによって引き起こされる感染性疾患である。
【0041】
また、本明細書において、治療用および/または予防用薬剤(1種類または複数種)に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドまたは該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む、細胞、ベクター、ウイルス、免疫原性組成物などの組成物およびキットが提供される。一例において、該組成物は、哺乳動物に投与すると免疫応答を惹起し得る。一例において、該組成物は、哺乳動物に投与すると細胞性免疫応答を惹起し得る。一例において、該組成物は、哺乳動物に投与すると体液性免疫応答を惹起し得る。他の一例では、該組成物は、哺乳動物に投与すると細胞性かつ体液性免疫応答を惹起し得る。
【0042】
本明細書において、治療用および/または予防用薬剤(1種類または複数種)に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチド、あるいは該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞および/または変異型ポリペプチドを発現する細胞に対する免疫応答の惹起における使用のための酵母媒介体、例えば、酵母ベクター;酵母系組成物;および方法が提供される。一例において、酵母媒介体は、該変異型ポリペプチド(1種類または複数種)をコードする核酸を含む。一例において、酵母媒介体は、該変異型ポリペプチド(1種類または複数種)を発現する核酸を含む。他の一例では、酵母媒介体は、該変異型ポリペプチドと関連している。一例において、酵母媒介体は担体細胞内、例えば、樹状細胞またはマクロファージ内に位置している。また、本明細書において、かかる酵母媒介体およびそれを含む酵母系組成物の作製方法が提供される。
【0043】
一般手法
本発明の実施には、特に記載のない限り、分子生物学(組換え手法など)、免疫学、細胞生物学および生化学の当該技術分野の技量の範囲である慣用的な手法が用いられる。かかる手法は、文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版(Sambrookら,2001);Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.);Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubelら編,1987および毎年の最新版);Fundamental Virology,第2版(編集FieldsらRaven press)ならびにCurrent Protocols in Immunology(John Wiley & Sons,Inc.,NY)などに充分に説明されている。
【0044】
本明細書で用いる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、そうでないことが明白に示されている場合を除き、複数に対する言及を含む。
【0045】
本明細書で用いる場合、「癌」としては、限定されないが、黒色腫、扁平上皮癌、乳癌、頭部および首部の癌腫、甲状腺癌、軟組織肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳の癌、脈管腫(angiosarcoma)、血管肉腫(hemangiosarcoma)、肥満細胞腫、原発性肝癌、肺癌、膵癌、胃腸の癌、腎細胞癌、造血系の新形成、およびその転移性の癌が挙げられる。
【0046】
本明細書で用いる場合、「感染性疾患」は、例えば、RNAウイルス、例えば限定されないが、レトロウイルス(例えば、HIVなど)、フラビウイルス(例えば、HCVなど)、レオウイルス、ピコルナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、ラブドウイルス、ブンヤウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、アレナウイルス、カリシウイルス;ならびにヘパドナウイルス(例えば、HBVなど)、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルスおよびパポバウイルス科に属するDNAウイルスなどの感染性因子によって引き起こされる疾患をいう。
【0047】
本明細書で用いる場合、細胞またはウイルスに標的化される治療用および/または予防用「薬剤」または「薬物薬剤」は、該薬剤が、細胞の形質転換の原因または腫瘍進行の支持と関連しているか、もしくはこれに対して機能性である(癌の場合)、またはウイルス感染もしくはウイルス複製の促進もしくは持続と関連しているか、もしくはこれに対して機能性である分子(1つまたは複数)に指向されることを意味する。癌細胞もしくはウイルスを発現する細胞などの細胞またはウイルスに標的化されるように設計される治療用および/または予防用薬剤の例は、本明細書に開示しており、当該技術分野で知られている。
【0048】
本明細書で用いる場合、「変異型ポリペプチド」は、予防用および/または治療用薬剤などの薬剤の応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものであれば、ゲノム内にコードされる完全長のポリペプチド、ならびに変異を含むその断片を包含する。癌細胞もしくはウイルスを発現する細胞などの細胞またはウイルスに標的化される予防用および/または治療用薬剤などの薬剤に応答した特異的変異を伴って出現するかかる変異型ポリペプチドは、一般的に、当該技術分野では「回避変異型」と称する。変異は、完全長のポリペプチドの任意の領域に見られ得、アミノ酸の置換、挿入もしくは欠失または組合せ、あるいは、非連続配列の融合(転位事象に見られるものなど)が挙げられ得る。一例において、薬剤に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドは、それ自体で免疫原性である、すなわち、アジュバントまたは他のベクターもしくは媒介体(例えば、酵母媒介体など)と関連していないが、これは必須ではない。他の一例では、薬剤に応答して出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドは、その抗原性を向上させるアジュバントと関連していると免疫原性である。
【0049】
本明細書で用いる場合、「アジュバント」としては、例えば、Toll様受容体(TLR)のアゴニストリガンド(これは、先天性免疫のサイトカイン応答を誘発し、抗原提示細胞(APC)の成熟および活性化と関連していると報告されている);CpGヌクレオチド配列;単鎖もしくは二本鎖RNA(TLR7アゴニスト);脂質部分、例えば、リポ多糖(LPS)など;マンナンおよびグルカン、酵母の構成成分(これは、TLR2、4および6との相互作用により機能を果たすと報告されている);ならびに本明細書に記載のものなどの酵母媒介体が挙げられる。
【0050】
変異型ポリペプチドまたは変異型ポリペプチドをコードする核酸(これは、本明細書に開示した、または当該技術分野で知られた任意の方法で産生されたものであり得る)の、該薬剤との「組合せで」の投与とは、変異型ポリペプチドおよび薬剤が同時に投与されることを意味することを意図しないが、これは、本明細書に開示された方法に包含される。変異型ポリペプチドは、該薬剤の投与の前、同時もしくは後に、または上記の組合せで投与され得る。変異型ポリペプチドまたは変異型ポリペプチドをコードする核酸は、該薬剤の数時間、数日または数ヶ月後に投与され得る。一例において、変異型ポリペプチドまたは変異型ポリペプチドをコードする核酸(これは、本明細書に開示した、または当該技術分野で知られた任意の方法で産生されたものであり得る)の投与は、該薬剤の投与前であり、特に、該薬剤が、任意の細胞型の増殖と直接または間接的に干渉することがわかっている場合は、該薬剤の投与に追加的に投与され得る。
【0051】
本明細書で用いる場合、「ミメトープ」は、変異型ポリペプチドまたは該変異型ポリペプチドを発現する細胞に対する免疫応答、一例では細胞性および/または体液性免疫応答を惹起する変異型ポリペプチドの能力を模倣し得るポリペプチドをいう。本明細書で用いる場合、「ミメトープ」としては、限定されないが、治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドタンパク質の1つ以上のエピトープ;変異型ポリペプチドの非タンパク質性免疫原性部分(例えば、糖鎖構造);ならびに変異型ポリペプチドの少なくとも1つのエピトープ同様の構造を有する合成または天然有機分子(例えば、核酸など)を模倣するペプチドが挙げられる。かかるミメトープは、変異型ポリペプチドのコンピュータ生成構造を用いて設計され得る。ミメトープはまた、オリゴヌクレオチド、ペプチドまたは他の有機分子などの分子のランダムな試料を作製し、かかる試料を免疫応答(例えば、細胞性免疫応答など)惹起するするその能力について、本明細書に記載した、および当該技術分野で知られた方法およびアッセイによってスクリーニングすることにより得られ得る。
【0052】
本明細書で用いる場合、「疾患または感染の症状の改善」には、疾患状態の任意の症状および/または進行の軽減、安定化、逆転、遅滞または遅延が含まれ、これらは、臨床的および/または亜臨床的基準によって測定され得る。
【0053】
一例において、変異型ポリペプチド(もしくはそのミメトープ)または変異型ポリペプチドをコードする核酸の「有効量」は、哺乳動物に投与されると、免疫応答が惹起され得る量をいう。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。他の一例では、免疫応答は体液性応答である。一例において、免疫応答は細胞性かつ体液性応答である。
【0054】
本明細書で用いる場合、「哺乳動物」、「哺乳動物の」または「哺乳動物宿主」としては、ヒトおよび非ヒト霊長類、例えば、チンパンジーおよび他の類人猿ならびにサル種;家畜、例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギおよびウマなど;飼育哺乳動物、例えば、イヌおよびネコなど;実験動物、例えば、齧歯類、例えば、マウス、ラットおよびモルモットなど;鳥類、例えば、飼育用、野生および狩猟鳥、例えば、ニワトリ、シチメンチョウなど、および他の家禽、アヒル、ガチョウなどが挙げられる。該用語は、特定の年齢のものを意味するものではない。したがって、成体、若年および新生個体ならびに出生前の哺乳動物を包含することが意図される。
【0055】
「抗原」は、宿主の免疫系(例えば、哺乳動物の免疫系など)を刺激して抗原特異的体液性および/または細胞性抗原特異的応答をもたらす1つ以上のエピトープ(線形、立体的のいずれか、または両方)あるいは免疫原性決定基を含む分子をいう。抗原は、それ自体で「免疫原」であってもよく、その抗原性を促進する薬剤との組合せであってもよい。用語「抗原」には、完全体のタンパク質、切断型タンパク質、タンパク質およびペプチドの断片が含まれる。抗原は、天然に存在するものであってもよく、遺伝子操作されたタンパク質バリアントであってもよい。用語「抗原」には、サブユニット抗原(すなわち、天然状態では会合している完全体の生物体と分離された別個の抗原)が含まれる。抗イディオタイプ抗体またはその断片、および合成ペプチドミメトープ(抗原もしくは抗原性決定基を模倣し得る合成ペプチド)などの抗体もまた、本明細書に記載の抗原の定義に含まれる。一例において、抗原は、予防用および/または治療用薬剤に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドを含むもの、または該変異型ポリペプチドから得られ得るものであり、天然に存在するものであっても、または合成のものであってもよい。抗原は、単一のエピトープ程度の小さいもの、またはより大きいものであり得、多数のエピトープを含むものであり得る。したがって、抗原の大きさは、約5〜12アミノ酸程度の小さいもの(例えば、ペプチド)および完全長のタンパク質、例えば、マルチマーおよび融合タンパク質、キメラタンパク質、完全体の細胞、完全体の微生物またはその一部分(例えば、完全体の細胞の溶解物もしくは微生物の抽出物)ほどの大きなものであり得る。一例において(すなわち、抗原が酵母ベクターなどのベクター、または組換え核酸分子由来のウイルスによって発現される場合)、抗原としては、限定されないが、完全な細胞または微生物ではなく、タンパク質もしくはその断片、融合タンパク質、キメラタンパク質、マルチマーが挙げられることは認識されよう。
【0056】
本明細書で用いる場合、「エピトープ」は、本明細書において、免疫応答(細胞性および/または体液性免疫応答であり得る)を惹起するのに充分な所与の抗原内の単一の抗原性部位と規定する。当業者には、T細胞エピトープはB細胞エピトープと大きさおよび組成が異なること、およびクラスI主要組織適合複合体(MHC)経路によって提示されるエピトープは、クラスII MHC経路によって提示されるエピトープと異なることが認識されよう。一般的に、B細胞エピトープは、少なくとも約5個のアミノ酸を含むが、3〜4アミノ酸程度の小さいものであってもよい。T細胞エピトープ、例えば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)エピトープは、少なくとも約7〜9個のアミノ酸を含み、ヘルパーT細胞エピトープは少なくとも約12〜20個のアミノ酸を含む。通常、エピトープは、約7〜15個のアミノ酸、例えば、8、9、10、12または15個のアミノ酸を含むものである。
【0057】
本明細書で用いる場合、変異型ポリペプチド(もしくはそのミメトープ)または該ポリペプチドをコードする核酸(もしくは該変異型ポリペプチドに結合し得る核酸、例えば、siRNAやアンチセンスRNAなど)、またはポリペプチドもしくは核酸を含む組成物に対する「免疫学的応答」または「免疫応答」としては、該ポリペプチドを認識する哺乳動物における細胞性免疫応答の発現が挙げられる。一例において、免疫応答は体液性免疫応答である。一例において、細胞性免疫応答は、さらに体液性免疫応答を含む。免疫応答は変異型ポリペプチドに特異的であり得るが、これは必須ではない。変異型ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸の投与によって惹起される免疫応答は、該ポリペプチドまたは核酸の投与の非存在下での免疫応答と比べたときの、任意の様相の免疫応答(例えば、細胞性応答、体液性応答、サイトカイン産生)の任意の検出可能な増大であり得る。免疫応答は、変異型ポリペプチド特異的応答であり得るが、これは必須ではない。本発明には、免疫応答を惹起する変異型ポリペプチド(またはそのミメトープ)、または該変異型ポリペプチドをコードする核酸と関連している組成物が包含される。
【0058】
本明細書で用いる場合、「体液性免疫応答」は、抗体分子または免疫グロブリンによって媒介される免疫応答をいう。本発明の抗体分子としては、IgG(ならびにIgG1、IgG2aおよびIgG2bサブタイプ)、IgM、IgA、IgDおよびIgEクラスのものが挙げられる。抗体は、機能的には、一次免疫応答の抗体ならびに記憶抗体応答または血清中和抗体を含む。感染性疾患に関して、本発明の抗体は、変異型ポリペプチドをコードするウイルスの感染性を中和もしくは低減する機能、および/または変異型ポリペプチドに対する抗体補体(complement)もしくは抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を媒介する機能を果たすものであり得るが、必要ではない。
【0059】
本明細書で用いる場合、「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球および/または他の白血球、例えば、限定されないが、ナチュラルキラー(NK)細胞やマクロファージによって媒介されるものである。本発明のTリンパ球としては、α/βT細胞受容体サブユニットを発現するT細胞またはγ/δ受容体発現T細胞が挙げられ、エフェクターT細胞またはサプレッサーT細胞のいずれかであり得る。
【0060】
本明細書で用いる場合、「Tリンパ球」または「T細胞」は、免疫系の細胞媒介性部分の一部を構成する非抗体産生リンパ球である。T細胞は、骨髄から胸腺に遊走し、ここで胸腺ホルモンの指令下で成熟過程を受ける未成熟リンパ球から生じる。成熟T細胞は、特異的抗原を認識して結合するその能力に基づいて免疫応答性となる。免疫応答性T細胞の活性化は、抗原がこのリンパ球の表面受容体に結合すると誘発される。T細胞応答を生じさせるためには、抗原が細胞内で合成され、その内部に導入され、続いて、プロテアソーム複合体によって小ペプチドにプロセッシングされ、小胞体/ゴルジ複合体分泌経路内に移行されて最終的に主要組織適合複合体(MHC)クラスIタンパク質と会合されなければならないことが知られている。あるいはまた、ペプチド抗原は、MHC−IまたはMHC−II受容体に既に結合されたペプチドと置き換えるために、細胞外から導入され得る。機能的に細胞性の免疫としては、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球細胞(CTL)が挙げられる。
【0061】
本明細書で用いる場合、「抗原特異的キラーT細胞」、「CTL」または「細胞傷害性T細胞」は、本明細書で用いる場合、MHCのタンパク質(またはヒトにおいてはヒト白血球抗原(HLA)と呼ばれるタンパク質)と会合して提示されたペプチド抗原に対する特異性を有する細胞をいう。本発明のCTLとしては、活性化CTL(MHCの状態で特異的抗原によって誘発された状態のもの);および記憶CTLまたはリコール(recall)CTL(抗原ならびに交差反応性または交差クレード(clade)CTLへの再曝露の結果として再活性化された状態のT細胞を示す)が挙げられる。本発明のCTLは、CD4+およびCD8+ T細胞を含む。活性化された本発明の抗原特異的CTLは、該CTLが特異的である病原体に感染した被験体の細胞の破壊および/または溶解を促進し、ケモカインおよびサイトカイン、例えば、限定されないが、マクロファージ炎症タンパク質1a(MIP−1a)、MIP−1BおよびRANTESの分泌;ならびに感染を抑制する可溶性因子の分泌によって病原体の侵入を阻止する。本発明の細胞性免疫はまた、T細胞のTヘルパーサブセットによってもたらされる抗原特異的応答をいう。ヘルパーT細胞は、MHC分子と会合したペプチドをその表面上に提示している細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能の刺激を補助し、その活性を集中させる機能を果たす。細胞性免疫応答はまた、サイトカイン、ケモカインならびに活性化T細胞および/または他の白血球(例えば、CD4およびCD8 T細胞由来のものならびにNK細胞)によって産生される他のかかる分子の産生をいう。細胞性免疫応答を惹起する組成物は、細胞表面上へのMHC分子と会合したポリペプチドの提示によって哺乳動物を感作させる機能を果たすものであり得る。細胞媒介性免疫応答は、抗原をその表面に提示している細胞に、または該細胞付近に指向される。また、抗原特異的Tリンパ球は、免疫処置された宿主のその後の保護を可能にするために生成され得る。
【0062】
特定のポリペプチドまたは抗原が細胞媒介性免疫学的応答を刺激する能力は、当該技術分野で知られたいくつかのアッセイ、例えば、リンパ増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL殺傷(killing)アッセイ、または感作被験体内の抗原に特異的なTリンパ球のアッセイなどによって測定され得る。かかるアッセイは、当該技術分野でよく知られている。例えば、Ericksonら,J.Immunol.(1993)151:4189−4199;Doeら,Eur.J.Immunol.(1994)24:2369−2376を参照のこと。細胞媒介性免疫応答を測定する他の方法としては、T細胞集団による細胞内サイトカインもしくはサイトカイン分泌の測定、またはエピトープ特異的T細胞の測定(例えば、テトラマー手法により)(McMichael,A.J.およびO’Callaghan,C.A.,J.Exp.Med.187(9)1367−1371,1998;Mcheyzer−Williams,M.G.ら,Immunol.Rev.150:5−21,1996;Lalvani,A.ら,J.Exp.Med.186:859−865,1997に概説)が挙げられる。
【0063】
本明細書で用いる場合、「免疫学的応答」または「免疫応答」は、CTLの生成および/またはヘルパーT細胞の生成もしくは活性化および/または抗体媒介性免疫応答を刺激するものを包含する。「Tリンパ球」または「T細胞」は、免疫系の細胞媒介性部分の一部を構成する非抗体産生リンパ球である。T細胞は、骨髄から胸腺に遊走し、ここで胸腺ホルモンの指令下で成熟過程を受ける未成熟リンパ球から生じる。ここで、成熟リンパ球は、急速に分裂して非常に大きな数に増加する。成熟T細胞は、特異的抗原を認識して結合するその能力に基づいて免疫応答性となる。免疫応答性T細胞の活性化は、MHC/HLA受容体および共受容体により提示された状態で抗原が、このリンパ球の表面受容体に結合すると誘発される。
【0064】
本明細書で用いる場合、「免疫原性組成物」は、治療用および/または予防用薬剤に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチド(もしくはそのミメトープ)または変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む組成物であり、変異型ポリペプチドの抗原性を向上させるアジュバントを含んでいても含んでいなくてもよく、哺乳動物への該組成物の投与により、細胞性免疫応答、体液性免疫応答または細胞性かつ体液性免疫応答の発現がもたらされる。免疫原性組成物としては、防御的細胞性免疫応答を惹起し得る組成物が挙げられるが、これは必須ではない。
【0065】
本明細書で用いる場合、「予防用組成物」は、「免疫学的にナイーブ(naive)な」または以前に病原体の抗原に曝露されていない、あるいは、癌および感染または再感染などの疾患を予防するための病原体に対する有効な免疫応答が生じていない哺乳動物の被験体または宿主、に投与される組成物をいう(しかしながら、本発明は、感染または再感染が完全に予防されることを要しない)。本発明の予防用組成物は、必ずしも、これを投与した宿主または被験体において滅菌性の免疫を生じさせるものではない。
【0066】
本明細書で用いる場合、「治療用組成物」は、癌に易罹患性であるか、または感染性疾患の場合はウイルスに感染した、また、一例では、疾患状態が進行した被験体または宿主に投与される組成物をいう。
【0067】
本明細書で用いる場合、用語「免疫処置」「免疫処置する」または「免疫処置された」は、免疫原性組成物を生体哺乳動物の被験体または宿主に、該組成物に対する免疫応答を誘導するのに有効な量で投与するプロセスをいう。一例において、免疫応答は、細胞性免疫応答、例えば細胞傷害性T細胞応答を含む。一例において、免疫応答は、体液性応答、例えば抗体産生を含む。一例において、免疫応答は、細胞性と体液性応答の両方を含む。
【0068】
ベクターおよび組成物
本明細書において、薬剤に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む、例えば、細菌系、ウイルス系、昆虫系および酵母系ベクターなどのベクターが提供される。本明細書において、該変異型ポリペプチドと関連しているかかるベクターおよびウイルスを含む組成物が提供される。かかるベクターおよびウイルスとしては、限定されないが、細菌系ベクター、裸のプラスミドDNA、酵母ベクターおよび媒介体、rAAV、アデノウイルス、カナリア痘ウイルス、ポックスウイルス、ワクシニアウイルス、修飾ワクシニアアンカラ(MVA)、アルファウイルス、ラブドウイルス、ベネズエラウマ脳脊髄炎ウイルスおよびバキュロウイルスが挙げられ、当業者には常套的とみなされる方法によって作製され得る。いくつかのウイルスを基にした系が、哺乳動物細胞への遺伝子導入のために開発されている。例えば、AAVのライフサイクルおよび遺伝学は、Muzyczka,Current Topics in Microbiology and Immunology,158:97−129(1992)に概説されている。AAV系に関するさらなる開示は、例えば、RO Snyderら,Human Gene Therapy 8:1891−1900,1997;D Duanら,J.Virol.8568−8577,1998;Duan Dら,J Virol.73:161−169,1999;N Vincent−Lacazeら,J Virol.73:1949−1955,1999;C McKeonら,NIDDK Workshop on AAV Vectors:Gene transfer into quiescent cells.Human Gene Therapy 7:1615−1619,1996;H Nakaiら,J Virol 75:6969−6976,and 2001;BC Schneppら,J.Virol.2003 77:3495−350に示されている。AAV系は、例えば、米国特許第5,786,211号;米国特許第5,871,982号;および米国特許第6,258,595号に記載されている。いくつかのアデノウイルスベクターおよび発現系が報告されている。例えば、Haj−AhmadおよびGraham,J.Virol.(1986)57:267−274;Bettら,J.Virol.(1993)67:5911−5921;Mitterederら,Human Gene Therapy(1994)5:717−729;Sethら,J.Virol.(1994)68:933−940;Barrら,Gene Therapy(1994)1:51−58;Berkner,K.L.BioTechniques(1988)6:616−629;ならびにRichら,Human Gene Therapy(1993)4:461−476)を参照のこと。ポックスウイルスワクチンは、例えば、Small,Jr.,P.A.ら(米国特許第5,676,950号、1997年10月14日発行)に記載されている。さらなるウイルスベクターとしては、ポックスウイルス科由来のもの、例えば、ワクシニアウイルスおよび禽痘ウイルスが挙げられる。バキュロウイルスは、例えば、米国特許第5,731,182号に記載されている。
【0069】
本明細書において、変異型ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸に対する免疫応答、一例では細胞性免疫応答を惹起するための方法が提供される。一例において、免疫応答は体液性応答であり、他の一例では、免疫応答は細胞性および体液性両方の免疫応答を含む。癌遺伝子およびウイルスにコードされ、治療用および/または予防用薬剤に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっている変異型ポリペプチドの実例は、本明細書に開示しており、あるものは当該技術分野で知られている。かかる薬剤(1種類または複数種)に応答した変異型ポリペプチドの出現は、例えば、該薬剤(1種類または複数種)に対する感受性および/または耐性の低下および/または疾患の臨床的および/または亜臨床的症状の増大(例えばHIVの場合は、CD4計数の減少の存在など)と関連していると考えられる。細胞またはウイルスに標的化して哺乳動物に投与され、投与された、または投与している薬剤に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドに対する免疫応答(例えば、細胞性免疫応答など)を惹起する利点としては、該薬剤の有効性の持続期間の延長;該薬剤に対する耐性の最小化もしくは逆転;特異的変異型ポリペプチドの出現の遅延もしくは最小限化;特異的変異型ポリペプチドの排除(しかし、利点がもたらされるのに排除は必要ではない);ならびに疾患症状の最小限化、低減もしくは逆転および/または疾患の進行の遅滞が挙げられ得る。
【0070】
本明細書において、治療用および/または予防用薬剤(1種類または複数種)に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドをコードする核酸を含むベクター、例えば、限定されないが、細菌系、ウイルス系、昆虫系および酵母系ベクターならびにこれを含む組成物が提供される。一例において、ベクターは酵母ベクターである。他の一例では、ベクターは、該変異型ポリペプチドに結合し得る核酸、例えば、siRNAまたはアンチセンスRNAなどを含み、それにより、変異型ポリペプチドの発現を阻害するものである。本明細書において、治療用および/または予防用薬剤(1種類または複数種)に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはそのミメトープと関連しているベクター、例えば、細菌系、ウイルス系、昆虫系および酵母系ベクターなどを含む組成物が提供される。一例において、ベクターは、酵母ベクターまたは媒介体である。他の一例では、該変異型ポリペプチドを含む組成物は、さらにアジュバントを含む。アジュバントの例は、本明細書に記載しており、当該技術分野で知られている。本明細書において、本明細書に記載の変異型ポリペプチドをコードする核酸および/または変異型ポリペプチドを発現するベクターもしくはウイルスを含む細胞(例えば、限定されないが、樹状細胞など)が提供される。一例において、樹状細胞は、本明細書に記載の変異型ポリペプチドを含む。また、本明細書において、該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む組成物が提供される。また、本明細書において、かかる細胞、ベクター、ウイルスおよび組成物の作製方法が提供される。
【0071】
変異型ポリペプチドもしくは変異を含むその断片、または該ポリペプチドをコードする核酸もしくは断片および/またはこれを含む組成物もしくはベクターは、予防用および/または治療用薬剤との組合せで投与され、癌もしくは感染のリスクがある哺乳動物、または癌もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に投与され得る。変異型ポリペプチドもしくは変異を含むその断片または該ポリペプチドをコードする核酸もしくは断片および/またはこれを含む組成物もしくはベクターは、変異型ポリペプチドが該薬剤に応答して出現していようといなかろうと、および該薬剤に対する耐性が検出されていようといなかろうと、該薬剤の後に投与され得る。薬剤に応答した変異型ポリペプチドの出現の検出は、当該技術分野で知られた方法によって測定され得る。変異型ポリペプチド、またはこれをコードする核酸および/またはこれを含む組成物もしくはベクターが、哺乳動物に薬剤との組合せで投与され、変異型ポリペプチドが薬剤に応答した特異的変異を伴って出現したと測定された場合、本明細書に記載の方法は、哺乳動物が投与の利益を得るのに、変異型ポリペプチドの除去を必要としない。
【0072】
したがって、変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ、もしくはこれをコードする核酸および/またはこれを含む組成物もしくはベクターは、本明細書に記載の方法、例えば、免疫応答(例えば、細胞性免疫応答、体液性免疫応答または両方など)を惹起するための方法;哺乳動物において癌もしくは感染の症状を改善する方法;薬剤に対する耐性を低減するための方法;薬剤の有効性を増大させるための方法;該薬剤に対する感受性を増大させるための方法;変異型ポリペプチドの出現を遅延もしくは最小限にするための方法;ならびに癌もしくは感染の臨床的および/または亜臨床的症状を低減させるための方法において、薬剤との組合せで投与され得る。一例において、変異型ポリペプチド、もしくはこれをコードする核酸および/またはこれを含む組成物もしくはベクターを、薬剤との組合せで投与することにより、該薬剤単独の投与、すなわち、変異型ポリペプチド、もしくはこれをコードする核酸および/またはこれを含む組成物もしくはベクター投与なしと比べたとき、より大きな程度まで、変異型ポリペプチドの出現が遅延または最小限化される、および/または該薬剤の有効性が増大する、および/または癌もしくは感染の臨床的および/または亜臨床的症状が低減される。
【0073】
酵母系の組成物および方法
本明細書において、薬剤に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドを含む酵母ベクター、酵母媒介体および酵母系組成物が提供される。本明細書で用いる場合、用語「酵母ベクター」および「酵母媒介体」は、互換的に使用され、限定されないが、完全体の酵母、酵母スフェロプラスト、酵母細胞質体、酵母ゴースト、および細胞分画酵母膜抽出物またはその画分が挙げられる。一例において、酵母細胞または酵母スフェロプラストは、酵母媒介体を調製するために使用され、一例では、酵母媒介体は、該変異型ポリペプチドをコードする核酸分子を、該ポリペプチドが酵母細胞または酵母スフェロプラストによって発現されるように含む。一例において、酵母媒介体は、非病原性酵母から得られ得る。別の一例において、酵母媒介体は、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Kluveromyces、Hansenula、CandidaおよびPichiaからなる群より選択される酵母から得られ得る。一例において、SaccharomycesはS.cerevisiaeである。
【0074】
一般に、酵母媒介体および変異型ポリペプチドは、本明細書に記載の任意の手法によって関連させ得る。一例において、酵母媒介体は、該変異型ポリペプチドとともに細胞内負荷させる。他の一例では、変異型ポリペプチドを酵母媒介体に共有結合または非共有結合させる。またさらなる一例において、酵母媒介体および変異型ポリペプチドは、混合によって関連させる。他の一例では、変異型ポリペプチドは、酵母媒介体または該酵母媒介体を誘導した酵母細胞もしくは酵母スフェロプラストによって組換えにより発現させる。
【0075】
したがって、本明細書において、酵母媒介体が提供され、これは、該変異型ポリペプチドとの組合せで組成物にて、またはアジュバントとして使用され得る任意の酵母細胞(例えば、完全体のもしくはインタクトな細胞)またはその誘導体を包含する。したがって、酵母媒介体としては、限定されないが、生きたインタクトな酵母微生物(すなわち、細胞壁を含むそのすべての成分を有する酵母細胞)、殺傷された(死んだ)インタクトな酵母微生物、またはその誘導体、例えば:酵母スフェロプラスト(すなわち、細胞壁を欠く酵母細胞)、酵母細胞質体(すなわち、細胞壁と核を欠く酵母細胞)、酵母ゴースト(すなわち、細胞壁、核と細胞質を欠く酵母細胞)、または細胞分画酵母膜抽出物もしくはその画分(また、以前は細胞分画酵母粒子とも称した)が挙げられる。
【0076】
酵母スフェロプラストは、典型的には、酵母細胞壁の酵素的消化によって作製される。かかる方法は、例えば、Franzusoffら,1991,Meth.Enzymol.194,662−674(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。酵母細胞質体は、典型的には、酵母細胞の核除去によって作製される。かかる方法は、例えば、Coon,1978,Natl.Cancer Inst.Monogr.48,45−55(引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。酵母ゴーストは、典型的には、透過性または溶解細胞の再封入(resealing)によって作製され、該細胞の少なくとも一部の細胞小器官を含有するものであり得るが、そうである必要はない。かかる方法は、例えば、Franzusoffら,1983,J Biol.Chem.258,3608−3614およびBusseyら,1979,Biochim.Biophys.Acta 553,185−196(これらは、各々、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。細胞分画酵母膜抽出物またはその画分は、天然の核または細胞質を欠く酵母膜をいう。該粒子は、任意の大きさ、例えば、天然の酵母膜の大きさから超音波処理または当業者に知られた他の膜破壊方法の後、再封入によって生成される微粒子までの範囲の大きさであり得る。細胞分画酵母膜抽出物の作製方法は、例えば、Franzusoffら,1991,Meth.Enzymol.194,662−674に記載されている。また、酵母膜の一部を含有する酵母膜抽出物の画分が使用され得、酵母膜抽出物の調製前に、抗原を酵母によって組換えにより発現させると、目的の抗原は、該抽出物の一部となる。酵母はまた、エレクトロポレーションされ得るか、あるいは、ペプチドなどの標的抗原が負荷され得る。
【0077】
任意の酵母株が、本発明の酵母媒介体の作製に使用され得る。酵母は、3つの綱:Ascomycetes,BasidiomycetesおよびFungi Imperfectiのうちの1つに属する単細胞性微生物である。病原性酵母株またはその非病原性の変異型が使用され得るが、一例では、非病原性酵母株が使用される。本明細書に開示した組成物および方法における使用のための酵母株の属としては、Saccharomyces、Candida(これは、病原性であり得る)、Cryptococcus、Hansenula、Kluyveromyces、Pichia、Rhodotorula、SchizosaccharomycesおよびYarrowiaが挙げられる。一例において、酵母株としては、Saccharomyces、Candida、Hansenula、PichiaおよびSchizosaccharomycesが挙げられる。一例において、酵母株はSaccharomycesである。酵母株の種としては、Saccharomyces cerevisiae、Saccharomyces carlsbergensis、Candida albicans、Candida kefyr、Candida tropicalis、Cryptococcus laurentii、Cryptococcus neoformans、Hansenula anomala、Hansenula polymorpha、Kluyveromyces fragilis、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus var.lactis、Pichia pastoris、Rhodotorula rubra、Schizosaccharomyces pombeおよびYarrowia lipolyticaが挙げられる。これらの種のいくつかは、さまざまな亜種、型、サブタイプなどを含み、それらは前述の種に含まれることが意図されることを認識されたい。一例において、酵母種としては、S.cerevisiae、C.albicans、H.polymorpha、P.pastorisおよびS.pombeが挙げられる。一例において、S.cerevisiaeは、操作が比較的容易であり、食品添加剤としての使用に「一般的に安全とみなされている(Generally Recognized As Safe)」すなわち「GRAS」(GRAS,FDA proposed Rule 62FR18938,April 17,1997)であるため使用される。一例において、プラスミドを、特に大きなコピー数まで複製させ得る酵母株、例えば、S.cerevisiae cir°株が使用される。他の有用な酵母株は当該技術分野で知られている。
【0078】
一例において、本発明の酵母媒介体は、酵母媒介体および変異型ポリペプチドが送達される細胞型(例えば、樹状細胞またはマクロファージなど)と融合し、それにより、特に効率的な酵母媒介体の送達(多くの例では、該細胞型への抗原の送達)を行ない得るものである。本明細書で用いる場合、酵母媒介体と標的化される細胞型との融合は、酵母細胞膜またはその粒子が、標的化される細胞型(例えば、樹状細胞またはマクロファージ)の膜と融合し、シンシチウムの形成をもたらす能力をいう。本明細書で用いる場合、シンシチウムは、細胞の融合によって生成された原形質の多核細胞塊である。いくつかのウイルスの表面タンパク質(一部のHIVタンパク質を含む)および他の融合誘導物質(fusogen)(例えば、卵と精子の融合に関与するものなど)は、2つの膜間(すなわち、ウイルス細胞膜と哺乳動物細胞膜間または哺乳動物の細胞膜間)の融合を行ない得ることが示されている。例えば、HIV gpl20/gp41異種抗原をその表面上に産生する酵母媒介体は、CD4+ Tリンパ球と融合し得る。しかしながら、標的化部分または融合誘導性部分の酵母媒介体内への組込みは、一部の状況では望ましい場合があり得るが、必要ではないことに注目されたい。酵母媒介体は、樹状細胞(ならびにマクロファージなどの他の細胞)に容易に取り込まれることが示されている。
【0079】
酵母媒介体は、投与前に、当業者に知られたいくつかの手法を用いて、酵母系組成物、例えば、癌または感染に易罹患性であるか、またはそのリスクがある個体への直接投与が意図された組成物に、樹状細胞などの担体内に直接またはまずエキソビボで負荷して製剤化され得る。
【0080】
本明細書において、哺乳動物への投与のための、少なくとも1種類の変異型ポリペプチドを含む酵母媒介体、およびこれを含む組成物が提供される。一例において、該組成物は、以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合した酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ
の1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである。
【0081】
かかる組成物は、1、2、2〜3(a few)、数種類(several)または複数種類の変異型ポリペプチド(例えば、HIVについて本明細書の表IIに記載のもの)(所望により、1種類以上の変異型ポリペプチドの1つ以上の免疫原性のドメインを含む)を含み得る。本明細書で用いる場合、ポリペプチドは「抗原」を含む。本明細書で用いる場合、抗原としては、天然または合成の由来のタンパク質の任意の部分(ペプチド、タンパク質断片、完全長のタンパク質)、細胞性組成物(完全体の細胞、細胞溶解物または破砕細胞)、生物体(完全体の生物体、溶解物または破砕細胞)、糖鎖、脂質もしくは他の分子またはその一部分が挙げられ、ここで、抗原は、抗原特異的免疫応答(体液性および/または細胞性免疫応答)を惹起するものである。
【0082】
酵母は、免疫調節複合体の微粒子の特徴の多くを示し、さらに、天然状態でアジュバント様特性を有し、抗原を含む多くのポリペプチドを発現するように容易に操作され得るという利点を有する。Luら、(2004)Cancer Research 64、5084−5088では、酵母系免疫療法により、単一のアミノ酸変異を有するRas癌タンパク質を発現する腫瘍に対して細胞媒介性免疫応答が惹起され得ることが示された。その結果、酵母媒介体および酵母を主体とする系は、単一のアミノ酸変異を有するポリペプチドに対する免疫療法に標的化可能なことが示された。したがって、本明細書において、薬剤に応答して出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチド(1種類または複数種)を含む酵母媒介体および酵母系組成物ならびに、これらを変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するために使用する方法が提供される。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。一例において、免疫応答は体液性応答である。他の一例では、免疫応答は細胞性と体液性の両方である。さらなる一例において、酵母媒介体は、抗原が所望の細胞型に選択的に送達されるように操作される。また、二塩基性アミノ酸プロセッシング部位を有する異種前駆体タンパク質を産生し得る酵母株を含む酵母媒介体が提供される。かかる酵母株は、前駆体タンパク質を少なくとも1種類の切断生成物タンパク質に正しくプロセッシングし得る。
【0083】
一例において、変異型ポリペプチドは、癌遺伝子(例えばrasなど)にコードされているか、またはウイルス(例えば、HIV、HCVまたはHBVなど)にコードされている。一例において、変異型ポリペプチドは、腫瘍関連抗原または癌細胞によって発現されるタンパク質である。
【0084】
ベクターの調製
本明細書において、変異型ポリペプチドと関連しているベクターを含む組成物、例えば、酵母媒介体が提供される。かかる関連としては、ベクターによる(例えば、組換え酵母による)該ポリペプチドの発現、ベクター内への変異型ポリペプチドの導入、ベクターへの変異型ポリペプチドの物理的結合、およびベクターと変異型ポリペプチドを、例えば、バッファーまたは他の溶液中で一緒に混合し、配合することが挙げられる。かかる方法は、当業者には常套的とみさされるものである。
【0085】
実例として、酵母ベクターを以下に記載する。一例において、酵母媒介体を調製するために使用される酵母細胞は、変異型ポリペプチドをコードする異種核酸分子で、該ポリペプチドが酵母細胞によって発現されるように形質転換される。かかる酵母は、本明細書において組換え酵母または組換え酵母媒介体ともいう。次いで、酵母細胞は、インタクトな細胞としての樹状細胞内に負荷され得るか、酵母細胞は死滅され得るか、または酵母スフェロプラスト、細胞質体、ゴーストまたは細胞分画粒子の形成などによって誘導体化し、任意の場合で、その後、該誘導体が樹状細胞内に負荷され得る。また、酵母スフェロプラストは、抗原を発現する組換えスフェロプラストを作製するため、組換え核酸分子で直接トランスフェクトされ得る。(例えば、スフェロプラストを完全体の酵母から作製し、次いでトランスフェクトする)。
【0086】
本発明によれば、単離された核酸分子または核酸配列は、これが天然状態で会合している少なくとも1種類の成分から取り出された核酸分子または配列である。したがって、「単離された」は、必ずしも、該核酸分子が精製された程度を反映するものではない。ベクター(例えば酵母媒介体など)のトランスフェクションに有用な単離された核酸分子としては、DNA、RNA、またはDNAもしくはRNAいずれかの誘導体が挙げられる。単離された核酸分子は、二本鎖または単鎖であり得る。本発明に有用な単離された核酸分子には、本発明の組成物に有用な少なくとも1つのエピトープを含有するものであれば、タンパク質またはその断片をコードする核酸分子が含まれる。
【0087】
核酸分子は、ベクター(例えば、酵母媒介体)内に、当該技術分野で知られた任意の方法、例えば、限定されないが、拡散、能動輸送、リポソーム融合、エレクトロポレーション、バッチ式超音波処理および遺伝子操作によって形質転換され得る。
【0088】
酵母媒介体内に形質転換される核酸分子は、1種類以上の変異型ポリペプチドをコードする核酸配列を含むものであり得る。かかる核酸分子は、コード領域の一部もしくは全体、調節領域または組合せを含むものであり得る。酵母株の利点の1つは、いくつかの核酸分子を担持するその能力およびいくつかの異種タンパク質を産生できることである。一例において、酵母媒介体によって産生されるいくつかの抗原は、酵母媒介体によって無理なく産生され得る任意の数の抗原であり、典型的には、少なくとも1種類から少なくとも約5種類以上(約2〜約5種類)の範囲の抗原である。
【0089】
酵母媒介体内の核酸分子にコードされている変異型ポリペプチドは、完全長のタンパク質であり得るか、または修飾タンパク質が天然のタンパク質のものと実質的に類似の生物学的機能(または、所望により天然のタンパク質と比べて、増強または阻害された機能)を有するように、アミノ酸が欠失(例えば、該タンパク質の切断型)、挿入、逆位、置換および/または誘導体化(例えば、アセチル化、グリコシル化、リン酸化、テザーリング(tethered)(グリセロホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーによって)された機能的に等価なタンパク質であり得る。修飾は、当該技術分野で知られた手法、例えば、限定されないが、タンパク質に対する直接修飾または該タンパク質をコードする核酸配列に対する修飾(例えば、ランダムまたは標的化変異誘発を行なうための古典的手法または組換えDNA手法を使用)によって行なわれ得る。
【0090】
ベクターにおける変異型ポリペプチドの発現は、当業者に知られた手法を用いて行なわれる。簡単には、少なくとも1種類の所望の変異型ポリペプチドをコードする核酸分子を発現ベクター内に、宿主酵母細胞が形質転換されると、該核酸分子の構成的発現または調節発現のいずれかが行なわれ得るように該核酸分子が転写制御配列に作動可能に連結されるような様式で挿入する。1種類以上の変異型ポリペプチドをコードする核酸分子は、1つ以上の転写制御配列に作動可能に連結された1つ以上の発現ベクター上に存在させ得る。
【0091】
本発明の組換え分子において、核酸分子は、調節配列(例えば、転写制御配列、翻訳制御配列、複製起点、および該ベクターと適合性で該核酸分子の発現を制御する他の調節配列など)を含む発現ベクターに、作動可能に連結させる。特に、本発明の組換え分子は、1つ以上の転写制御配列に作動可能に連結された核酸分子を含む。語句「作動可能に連結された」は、宿主細胞内にトランスフェクト(すなわち、形質転換、形質導入またはトランスフェクト)されると該分子が発現され得るような様式での転写制御配列への核酸分子の連結をいう。
【0092】
転写制御配列(これによって産生タンパク質の量が制御され得る)としては、転写の開始、伸長および停止を制御する配列が挙げられる。特に重要な転写制御配列は、転写の開始を制御するもの、例えば、プロモーターおよび上流活性化配列である。いくつかの上流活性化配列(UAS)(エンハンサーとも呼ばれる)が知られており、ベクターにおいて使用され得る。
【0093】
ベクター内への核酸分子トランスフェクションは、核酸分子が細胞内に投与される任意の方法によって行なわれ得、限定されないが、拡散、能動輸送、バッチ式超音波処理、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着およびプロトプラスト融合が挙げられる。トランスフェクト核酸分子は、当業者に知られた手法を用いて、染色体内に組み込ませ得るか、または染色体外ベクター上に維持させ得る。酵母の場合、酵母細胞質体、酵母ゴースト、および細胞分画酵母膜抽出物またはその画分もまた、インタクトな酵母微生物または酵母スフェロプラストを所望の核酸分子でトランスフェクトし、その内部に抗原を産生させ、次いで、微生物またはスフェロプラストを当業者に知られた手法を用いてさらに操作し、所望の抗原を含有する細胞質体、ゴーストまたは細胞分画酵母膜抽出物またはその画分を産生させることによって、組換えにより作製され得る。
【0094】
組換えベクターの作製および該ベクターによる変異型ポリペプチドの発現に有効な条件としては、該ベクターが培養され得る有効培地が挙げられる。有効培地は、典型的には、同化性炭水化物、窒素およびリン酸塩源ならびに適切な塩類、無機塩類、金属ならびに他の栄養分、例えば、ビタミン類および増殖因子を含む水性培地である。培地は、複合栄養分を含むものであってもよく、規定の最少培地であってもよい。本発明のベクターは、さまざまな容器内、例えば、限定されないが、バイオリアクター、三角フラスコ、試験管、マイクロタイターディッシュおよびペトリ皿内で培養され得る。培養は、酵母株に適切な温度、pHおよび酸素含量で行なわれる。かかる培養条件は、充分当業者の技量の範囲内である(例えば、Guthrieら(編),1991,Methods in Enzymology,第194巻,Academic Press,San Diegoを参照のこと)。
【0095】
本発明の一例において、ベクター内での変異型ポリペプチドの発現の代替法として、ベクター(例えば、酵母媒介体など)に変異型ポリペプチドを細胞内負荷させる。続いて、変異型ポリペプチドを細胞内に含有した該ベクターは、患者に投与され得るか、または樹状細胞などの担体内に負荷され得る(後述)。酵母媒介体に関して、変異型ポリペプチドは、本発明の酵母媒介体内に、当業者に知られた手法によって、例えば、拡散、能動輸送、リポソーム融合、エレクトロポレーション、食作用、凍結解凍サイクルおよびバッチ式超音波処理によって直接挿入され得る。
【0096】
変異型ポリペプチドが直接負荷され得る酵母媒介体としては、インタクトな酵母、ならびにスフェロプラスト、ゴーストまたは細胞質体が挙げられ、これらには抗原が、産生後に樹状細胞内への負荷の前に負荷され得る。あるいはまた、インタクトな酵母に抗原が負荷され得、次いで、これからスフェロプラスト,ゴースト、細胞質体または細胞分画粒子が調製され得る。任意の数の抗原、少なくとも1、2、3、4または数百もしくは数千までの任意の自然数の整数(例えば、微生物の負荷によってもたらされ得る数)の抗原が、例えば、哺乳動物腫瘍細胞またはその部分の負荷によって、酵母媒介体内に負荷され得る。
【0097】
別の一例では、変異型抗原をベクター(例えば、酵母媒介体など)に物理的に結合させる。ベクターへの変異型ポリペプチドの物理的結合は、当該技術分野において好適な任意の方法、例えば、共有および非共有結合法、例えば、限定されないが、変異型ポリペプチドとベクターの外側表面との化学的架橋、または変異型ポリペプチドとベクターの外側表面との生物学的連結(例えば、抗体もしくは他の結合パートナーの使用によるものなど)によって行なわれ得る。化学的架橋は、例えば、グルタルアルデヒド結合、光親和性標識、カルボジイミドでの処置、ジスルフィド結合で連結させ得る化学薬品での処置、および当該技術分野で標準的な他の架橋性化学薬品での処置などの方法によってなされ得る。あるいはまた、酵母の場合は、化学薬品は酵母媒介体を接触させ得、これにより、酵母膜の脂質二重層の電荷または細胞壁の組成が改変され、その結果、酵母の外側表面が、特定の電荷特性を有する抗原と、より融合または結合し易くなる。標的化因子、例えば、抗体、結合性ペプチド、可溶性受容体および他のリガンドなどもまた、ベクターへの抗原の結合のために、変異型抗原内に融合タンパク質として組み込まれ得るか、あるいは抗原と関連させ得る。
【0098】
別の一例において、ベクターと変異型ポリペプチドは互いに、より受動的、非特異的または非共有結合性の機構によって、例えば、ベクターと抗原を一緒にバッファーまたは他の適当な配合物中で静かに混合することなどによって関連させる。
【0099】
本発明の一例において、ベクターおよび変異型抗原を、ともに樹状細胞またはマクロファージなどの担体内に細胞内負荷させて免疫原性組成物を形成する。樹状細胞は、当該技術分野で知られた任意の樹状細胞であり得る。樹状細胞は、単球でリンパ球系統の細胞であって、最も強力な抗原提示細胞(APC)であり、抗原特異的T細胞応答を刺激することが知られている。成熟樹状細胞は、典型的には、以下の細胞表面マーカー表現型:MAC3、CD80、CD86、CD401°w、CD54、MHCクラスIおよびMHCクラスIIを有するものとして同定され、FITC−デキストラン取込みを行ない得る。本発明の組成物に使用される樹状細胞は、一例では、該組成物が投与される患者から単離されたもの(すなわち、自己細胞)である。樹状細胞は、骨髄または末梢血から単離されたものであり得る。かかる細胞は、例えば末梢血単球から、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、IL−4およびTNF−αの存在下での培養によって生成させ得る。樹状細胞を単離および生成させるための他の方法は、当該技術分野で知られている。(例えば、Wilsonら,1999,Immunol 162:3070−8;Romaniら,1994,J.Exp Med 180:83−93;Cauxetal.,1996,J.Exp Med 184:695−706;およびKiertscherら,1996,J.Leukoc.Biol 59:208−18を参照のこと)。
【0100】
樹状細胞が天然のT細胞に効率的に抗原提示するためには、未成熟樹状細胞を、活性化して成熟状態(MHCおよび共刺激分子の上方調節によって規定される)にしなければならない。酵母は樹状細胞に対し、Toll様受容体(TLR)(例えば、Takeda K.およびAkira S.,2005,International Immunology,第17巻:第1〜14頁を参照のこと)、マンナン、グルカンおよびデクチン受容体を介して強力な活性化刺激を提供し、共刺激免疫受容体、MHC分子の上方調節、および免疫調節サイトカインの分泌をもたらす。さらにまた、樹状細胞に負荷する前に酵母に抗原を予備負荷した場合、これは、集中的に(avidly)内在化された別個の濃縮されたパッケージにて樹状細胞に抗原を提供し、それにより、プロセッシングに利用可能な抗原の量が効率的に増大される。当業者には認識されるように、さらなるベクターが樹状細胞負荷に使用され得る。
【0101】
両成分の負荷がなされ得る種々の形態を、以下により詳細に論考する。本明細書で用いる場合、用語「負荷された」およびその派生語は、成分(例えば、酵母媒介体および/または抗原)の細胞(例えば、樹状細胞)内への挿入、導入または侵入をいう。成分の細胞内負荷は、細胞の細胞内区画への該成分の挿入または導入をいう(例えば、原形質膜を介して、最低、細胞質、ファゴソーム、リソソームまたは細胞の一部の細胞内空間内に)。細胞内への成分の負荷は、成分を強制的に細胞内に侵入させるもの(例えば、エレクトロポレーションによって)、または環境に配置するもの(例えば、細胞もしくはその付近と接触)のいずれかである任意の手法が参照され、このとき、該成分は、実質的には、おそらく何らかのプロセス(例えば、食作用)によって細胞内に侵入する。負荷手法としては、限定されないが、拡散、能動輸送、リポソーム融合、エレクトロポレーション、食作用およびバッチ式超音波処理が挙げられる。一例では、樹状細胞に酵母媒介体および/または抗原を負荷させるための受動的機構が使用され、かかる受動的機構としては、樹状細胞による酵母媒介体および/または抗原の食作用が挙げられる。
【0102】
酵母の場合、酵母媒介体および変異型ポリペプチドは、樹状細胞内に、ほぼ同時(the same time)または同時(simultaneously)に負荷され得るが、一方の成分を該細胞内に負荷した後、他方をある程度の時間後に負荷することも可能である。一例において、酵母媒介体および変異型ポリペプチドを、樹状細胞内への負荷前に互いに関連させる。
例えば、変異型ポリペプチドを発現する組換え酵母媒介体、または任意の他の複合体、または酵母媒介体と変異型ポリペプチドの混合物が、樹状細胞内に負荷され得る。樹状細胞には、さらに、遊離の変異型ポリペプチド、すなわち、樹状細胞内に導入(負荷)される際に酵母媒介体と直接関連していないポリペプチドが負荷され得る。酵母媒介体−抗原複合体とともに遊離ポリペプチドを添加することにより、該ポリペプチドに対する免疫応答のさらなる増強がもたらされ得る。樹状細胞内に負荷される遊離ポリペプチド(1種類または複数種)は、酵母媒介体によって発現されるもの、該酵母媒介体内に負荷されるもの、あるいは酵母媒介体に結合したものと同じである必要はない。このようにして、標的細胞またはウイルスに対する免疫応答が増強され得る。
【0103】
一例において、変異型ポリペプチドまたはこれをコードする核酸を含む組成物は、1種類以上のアジュバント、例えば、本明細書に記載のものおよび/または担体を含むものであるが、これは必須ではない。アジュバントは、典型的には、一般的に、特異的抗原に対する動物の免疫応答を増強する物質である。好適なアジュバントとしては、限定されないが、本明細書に記載のTLRアゴニスト、CpG配列(例えば、KriegらのWO96/02555を参照のこと)、単鎖RNA、二本鎖RNA、フロイントアジュバント、他の細菌細胞壁成分(例えば、LPS、フラジェリンなど)、アルミニウム系の塩、カルシウム系の塩、シリカ、ポリヌクレオチド、トキソイド、血清タンパク質、ウイルス外被タンパク質、他の細菌由来調製物、γ−インターフェロン、ブロックコポリマーアジュバント、例えば、ハンターのタイターマックスアジュバント(CytRx.TM.,Inc.Norcross,Ga.)、Ribiアジュバント(Ribi ImmunoChem Research,Inc.,Hamilton,Mont.から入手可能)ならびにサポニンおよびその誘導体、例えば、Quil A(Superfos Biosector A/S(デンマーク)から入手可能)が挙げられる。
【0104】
担体は、典型的には、処置動物において治療用組成物の半減期を増大させる化合物である。好適な担体としては、限定されないが、ポリマー系制御放出製剤、生分解性埋入物、リポソーム、油類、エステルおよびグリコールが挙げられる。
【0105】
本発明の免疫原性組成物はまた、1種類以上の薬学的に許容され得る賦形剤を含むものであり得る。本明細書で用いる場合、「薬学的に許容され得る賦形剤」は、本発明の方法に有用な組成物を、適当なインビボまたはエキソビボ部位に送達するのに適した任意の物質をいう。一例において、薬学的に許容され得る賦形剤は、ベクター(または該ベクターを含む樹状細胞)を、該ベクターまたは細胞が体内の標的細胞、組織または部位に達すると、該ベクター(変異型ポリペプチドと関連している)または樹状細胞(ベクターおよび変異型抗原が負荷されている)が、免疫応答(例えば、細胞性免疫応答、体液性免疫応答または両方)を、標的部位(標的部位は全身であり得ることに注意)において惹起し得る形態に維持し得るものである。好適な本発明の賦形剤としては、組成物またはワクチンを一部位に輸送するが、特異的に標的化するものでない賦形剤または配合物が挙げられる(本明細書では、非標的化担体ともいう)。薬学的に許容され得る賦形剤の例としては、限定されないが、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、血清含有溶液、ハンクス溶液、他の水性の生理学的緩衝溶液、油類、エステルおよびグリコールが挙げられる。水性担体は、例えば、化学的安定性および等張性を向上させることによりレシピエントの生理学的状態に近づけるのに必要とされる適当な補助物質を含有するものであり得る。好適な補助物質としては、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ならびにリン酸塩バッファー、Trisバッファーおよび重炭酸塩バッファーを作製すために使用される他の物質が挙げられる。また、補助物質としては、保存剤、例えば、チメロサール、m−またはo−クレゾール、ホルマリンおよびベンゾールアルコールなどが挙げられる。
【0106】

本明細書で用いる場合、癌には、任意の型の腫瘍または新形成が含まれ、例えば、限定されないが、結腸直腸癌、黒色腫、扁平上皮癌、乳癌、頭部および首部の癌腫、甲状腺癌、軟組織肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳の癌、脈管腫、血管肉腫、肥満細胞腫、原発性肝癌、肺癌、膵癌、胃腸の癌、腎細胞癌、造血系の新形成ならびにその転移性の癌が挙げられる。特異的癌抗原の例としては、限定されないが、MAGE(例えば、限定されないが、MAGE3、MAGEA6、MAGEA10)、NY−ESO−1、gp100、チロシナーゼ、EGFR、PSA、PSMA、VEG−F、PDGFR、KIT、PMSA、CEA、HER2/neu、Muc−1、hTERT、MARTl、TRP−1、TRP−2、Bcr−Abl、ならびにp53の変異型発癌性形態(TP53)、p73、Ras、PTENSrc、p38、BRAF、APC(大腸腺腫性ポリポーシス)、myc、VHL(フォン・ヒッペル・リンドウタンパク質)、Rb−1(網膜芽細胞腫)、Rb−2、BRCAl、BRCA2、AR(アンドロゲン受容体)、Smad4、MDR1およびFLT3が挙げられる。
【0107】
一例において、癌抗原は、治療用および/または予防用薬剤による標的化に適した分子(例えば、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質または糖鎖など)であるか、または該分子から得られ得るものである。治療用および/または予防用の癌用薬剤の分子標的は当該技術分野で知られており、限定されないが、細胞表面受容体(例えば、受容体チロシンホスファターゼ、受容体セリン/トレオニンキナーゼ、および受容体チロシンキナーゼなど)、細胞内シグナル伝達分子(例えば、細胞内チロシンキナーゼおよび他の二次シグナル伝達分子など)、ならびに転写因子、細胞周期調節因子、プロテアソーム成分、血管新生に関与しているタンパク質、およびアポトーシス制御に関与しているタンパク質が挙げられる。治療用および/または予防用薬剤の癌への標的化では、回避変異型、すなわち変異型ポリペプチドをもたらすことが観察されている。例えば、個体を事前にBcr−Ablチロシンキナーゼ阻害剤であるイマチニブ(グリベック)での処置に応答性とすると報告されていたBcr−Ablにおいて変異が認められ、該処置に対して抵抗性となった。Gorreら,Science 2001,293:876−880;Shahら,Cancer Cell 2002,2:117−125;Branfordら,Blood2002,99(9):3742−3745;Deiningerら,Blood2005,105(7):2640−263。同様に、EGFRにおける変異もまた、非小細胞肺癌(NSCLC)患者で認められ、それにより、ゲフィチニブ(イレッサ)またはエルロチニブ(タルセバ)処置に対して抵抗性となる。Kobayashiら,N.Engl.J.Med,2005,352(8):786−792。したがって、これらの抗癌剤の有効性は、変異型ポリペプチドの出現によって有意に制限される。
【0108】
したがって、本明細書において、癌遺伝子にコードされているおよび/または癌細胞によって発現され、治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチド(またはそのミメトープ)、あるいは該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む免疫原性組成物、ならびに該変異型ポリペプチドまたは該変異型ポリペプチドを発現する細胞に対する免疫応答を惹起するための方法が提供される。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。一例において、免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、免疫応答は、細胞性と体液性の両方の応答を含む。
【0109】
癌抗原であるポリペプチド変異型は、哺乳動物に予め存在し得るものであり得る、すなわち、診断時に存在し得、治療用および/または予防用薬剤(1種類または複数種)の投与の結果、選択的に出現するものであり得る。あるいはまた、ポリペプチド変異型は、該薬剤によって与えられる圧力の結果、出現し得る。変異は、癌抗原内の任意の位置のアミノ酸に存在し得る。ポリペプチドの変異は、単一の変異の状況において記載しているが、変異型ポリペプチドは、1つより多く(例えば、2、3、4、5またはそれ以上)のアミノ酸変異を含むものであり得ることを理解されたい。例えば、癌抗原は、異なるアミノ酸位置に1つ以上の変異を含むものであり得る。癌抗原は、他の変異、例えば、形質転換事象と関連している変異などをさらに含むものであり得る。癌抗原の変異型ポリペプチドの実例を表Iに開示する。
【0110】
【表1−1】

【0111】
【表1−2】

【0112】
【表1−3】

【0113】
【表1−4】

* 野生型Ab1、ABLエキソン1aに従って番号付け
**Eyersら,Chem.Biol.1998,5, 321−328。
【0114】
一例において、ポリペプチド変異型は、癌抗原の1種類以上の変異型ポリペプチド由来の多数の免疫原性のドメインを含む融合ポリペプチドであり得る。例えば、グリベックを投与すると出現するBcr−Ablタンパク質には、いくつかの異なる変異が存在することが知られている。変異型ポリペプチドは、1つ以上のBcr−Abl変異を同じ位置および/または異なる位置に、および/または変異の組合せを1つより多くの位置に含むものであり得る。
【0115】
一例において、該ポリペプチド変異型は、変異をBcr−Ablに含む。Bcr−Ablは、構成的に活性なチロシンキナーゼであり、第9染色体と第22染色体の間のDNA転位に起因する。Bcr−Ablは、慢性骨髄性白血病(CML)の病原因子であり、その構成的キナーゼ活性は、造血系細胞をインビボで形質転換するその能力に中心的であると報告されている。チロシンキナーゼ阻害剤であるイマチニブ(グリベック、2−フェニルアミノピリミジン)は、CMLの治療用薬剤である。タンパク質を薬物治療(例えば、グリベック処置)に対して耐性にする種々の回避変異がBcr−Ablにおいて、インビボおよびインビトロで同定されている。Deiningerら,Blood,2005,105(7):2640−2653;Azamら,Cell,2003,112:831−43。表Iに、グリベックの処置に対して抵抗性を発現した哺乳動物において同定されたBcr−Ablの回避変異型(変異番号1〜28)ならびに、インビトロ方法によって同定されたさらなる変異(変異番号29〜132)の例示的な一覧を示す(他の癌抗原とともに)。これらの変異は、Bcr−Ablの種々のドメイン内、例えば、限定されないが、キナーゼドメイン(例えば、P−ループ、A−ループ、T315、C−ヘリックス、SH3接触領域、またはSH2接触領域など)、capドメイン、SH3ドメイン、SH2ドメイン、および他のリンカー領域に存在する。
【0116】
一例において、変異型ポリペプチドはEGFRに変異を含む。EGFRは、正常細胞と癌細胞の両方において細胞分裂の開始に重要な役割を果たす受容体チロシンキナーゼである。いくつかの癌、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC)およびグリア芽腫(脳の癌)では、EGFRは、過剰発現されるか、または変異されるかのいずれかであることが報告されており、この変化が、腫瘍の形成および成長と関連していると考えられている。2種類の経口アニリノキナゾリンEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であるゲフィチニブ(イレッサ)およびエルロチニブ(タルセバ)は、米国では、NSCLCの処置に認可されている。回避変異であるT790MがEGFRにおいて認められ、これは、哺乳動物被験体をイレッサまたはタルセバ処置に対して抵抗性にすると報告されている。
【0117】
したがって、本明細書において、EGFRの変異型ポリペプチド(もしくはそのミメトープ)またはEGFRをコードする核酸を含む組成物、および免疫応答の惹起におけるその使用のための方法が提供される。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。一例において、免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。一例において、変異型ポリペプチドは、変異をEGFRのキナーゼドメイン内に含む。一例において、変異型ポリペプチドは、野生型EGFRポリペプチドに対してT790M変異を含む。
【0118】
一例において、変異型ポリペプチドは変異を、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)内に含む。PDGFRは、受容体チロシンキナーゼである。PDGFRの活性化は、種々の型の癌、例えば、グリア芽腫、隆起性皮膚線維肉腫およびCMLなどの進行に不可欠であることが報告されている。単一の回避変異(T674I)は、グリベックで処置した好酸球増多症候群の患者において同定された(Coolsら,New Engl.J.Med.,2003,348:1201−1214)。したがって、本明細書において、PDGFR変異型ポリペプチド(もしくはそのミメトープ)またはPDGFRをコードする核酸を含む組成物、および、免疫応答の惹起におけるその使用のための方法が提供される。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。一例において、免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。一例において、変異型ポリペプチドは変異を、PDGFRのキナーゼドメイン内に含む。一例において、変異型ポリペプチドは、野生型PDGFRポリペプチドに対してT764I変異を含む。
【0119】
一部の実施形態において、変異型ポリペプチドは、KITの変異を含む。KITは、幹細胞因子(SCF)のチロシンキナーゼ受容体である。キナーゼドメイン内の変異によるKITの活性化は、消化管間質腫瘍(GIST)および他の型の腫瘍と関連していることが報告されている。回避変異(T670I)は、KIT内に認められ、これは、患者をグリベックでの処置に抵抗性にすると報告された(Tamboriniら,Gastroenterology,2004,127:294−299)。したがって、本明細書において、KITの変異型ポリペプチド(もしくはそのミメトープ)またはKITをコードする核酸を含む組成物、および免疫応答の惹起におけるその使用のための方法が提供される。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。一例において、免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。一例において、変異型ポリペプチドは変異を、KITのキナーゼドメイン内に含む。一例において、変異型ポリペプチドは、野生型KITポリペプチドに対してT670I変異を含む。
【0120】
一例において、変異型ポリペプチドは、FLT3内に、野生型FLT−3ポリペプチドに対して、標的化薬剤の投与に応答して出現する変異、例えば、A627T、N676D、N676S、F691L、F691I、G697RおよびG697Sからなる群より選択されるアミノ酸変異を含む。Coolsら、Cancer Res.,2004、64:6385−6389。一例において、変異型ポリペプチドはp38内に変異を、例えば、野生型タンパク質に対してT106の位置に変異を含む。他の一例では、変異型ポリペプチドは、Src内に変異を、例えば、野生型タンパク質に対してアミノ酸位置T341に変異を含む。一例において、変異型ポリペプチドは、FGFR内に変異を、例えば、野生型タンパク質に対してV561の位置にアミノ酸変異を含む。したがって、本明細書において、かかる変異型ポリペプチド(もしくはそのミメトープ)または変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む組成物、および免疫応答の惹起におけるその使用のための方法が提供される。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。一例において、免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。一例において、薬剤に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドは、それ自体で免疫原性である、すなわち、アジュバントと関連していないが、これは必須ではない。他の一例では、薬剤に応答して出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドは、Toll様受容体リガンドもしくはアゴニスト、またはCpGヌクレオチド配列、またはその抗原性を向上させる他のベクターもしくは媒介体(例えば、酵母媒介体など)などのアジュバントと関連していると免疫原性である。
【0121】
したがって、本明細書に記載の組成物は、哺乳動物において変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するために使用され、哺乳動物にその有効量を、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで投与することを含む。一例において、該組成物は、以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合した酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ
の1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである。
【0122】
さらに、該組成物は、哺乳動物において変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するための医薬の調製または製造において、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで使用され得る。一例において、変異型ポリペプチドは、癌遺伝子、腫瘍関連抗原または癌細胞によって発現されるポリペプチドである。一例において、癌細胞は、結腸直腸癌、黒色腫、扁平上皮癌、乳癌、頭部および首部の癌腫、甲状腺癌、軟組織肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳の癌、脈管腫、血管肉腫、肥満細胞腫、原発性肝癌、肺癌、膵癌、胃腸の癌、腎細胞癌、造血系の新形成ならびに転移性の癌からなる群より選択される。
【0123】
一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。他の一例では、免疫応答は体液性免疫応答である。また他の一例では、免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。
【0124】
また、本明細書に記載の組成物は、哺乳動物において疾患を処置するために使用され、哺乳動物に有効量の該組成物を投与することを含み、該疾患は、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドと関連している。一例において、該組成物は、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで使用される。さらに、該組成物は、哺乳動物において疾患を処置するための医薬の調製または製造において、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで使用され得る。一例において、変異型ポリペプチドは、癌遺伝子、腫瘍関連抗原または癌細胞によって発現されるポリペプチドである。一例において、癌細胞は、結腸直腸癌、黒色腫、扁平上皮癌、乳癌、頭部および首部の癌腫、甲状腺癌、軟組織肉腫、骨肉腫、精巣癌、前立腺癌、卵巣癌、膀胱癌、皮膚癌、脳の癌、脈管腫、血管肉腫、肥満細胞腫、原発性肝癌、肺癌、膵癌、胃腸の癌、腎細胞癌、造血系の新形成ならびに転移性の癌からなる群より選択される。一例において、疾患は癌である。
【0125】
癌抗原において、薬剤の投与の結果出現する新たな変異型ポリペプチドの同定方法は、当該技術分野で知られている。インビトロ方法によって同定された回避変異は、インビボで発現されたものとの高度の相関性を示した(Azamら、Cell、2003、112:831−843;Coolsら、Cancer Research、2004、64:6385−6389;Blenckeら、Chem.Biol、2004、11:691−701)。例えば、Azamらにより、標的指向型抗癌剤に対する耐性変異型ポリペプチドを同定するためのスクリーニング方法が提供され、これは、一般的に、任意の薬剤−変異型ポリペプチドペアに適用可能である。(Azamら、Biol.Proced.Online、2003、5(l):204−210)。簡単には、標的変異型ポリペプチドをコードするcDNAをクローニングベクター内にクローニングし、ランダム変異誘発に供し、標的癌ポリペプチド内に変異のライブラリーをもたらす。次いで、該ライブラリーを薬剤での処理に感受性の細胞内に導入する。次いで、薬剤での処理に耐性のコロニーを該治療用薬剤の存在下で選択し、単離し、配列決定し、推定変異を明らかにする。各候補変異の耐性表現型を確認するため、変異は、天然のcDNA内にも部位特異的変異誘発によって新たに作出され得る。変異型cDNAを薬物感受性細胞内に導入し、その薬物耐性表現型を確認する。薬物耐性は、細胞増殖アッセイによってさらに確認され得る。変異はまた、タンパク質結晶構造のモデル内へのマッピングによって、その構造的結果物について解析され得る。
【0126】
感染性疾患
本明細書で用いる場合、感染性疾患は、感染性因子、例えばRNAウイルス、例えば、限定されないが、レトロウイルス(例えば、HIVなど)、フラビウイルス(例えば、HCVなど)、レオウイルス、ピコルナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、ラブドウイルス、ブンヤウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、アレナウイルス、カリシウイルス;ならびにヘパドナウイルス(例えば、HBVなど)、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルスおよびパポバウイルス科に属するDNAウイルスによって引き起こされる疾患をいう。実例としては、感染性疾患は、HIV、HBVおよびHCVである。本明細書に記載の方法、例えば、変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するための方法は、変異型ポリペプチドが予防用および/または治療用薬剤に応答して出現することがわかっているか、または出現したものである、任意の感染性疾患に適用され得ることは、当業者に理解されよう。
ヒト免疫不全ウイルス
HIVは、非発癌性のレトロウイルス、具体的にはレンチウイルスであり、感染した個体において後天性免疫不全症候群(AIDS)を引き起こす。世界保健機関の推定では、4000万人を超える人々が、現在HIVに感染しており、2000万人の人々が既にAIDSで死亡している。したがって、HIV感染は、世界的に汎発していると考えられる。
【0127】
現在、HIVには2つの菌株HIV−1およびHIV−2が認められている。HIV−1は、世界的にAIDSの主な原因である。HIV−1は、ゲノム配列のばらつきに基づいて、クレードに分類されている。例えば、クレードBは、北米、欧州、南米の一部のおよびインドにおいて最も多く見られ、クレードCは、サハラ砂漠以南のアフリカに最も多く見られ、クレードEは、東南アジアに最も多く見られる。HIV−1感染は、主に、性感染、母子感染または汚染血液もしくは血液製剤への曝露を介して起こる。
【0128】
HIV−1は、ウイルスの構造タンパク質の周囲の脂質二重層外被およびウイルス複製に必要とされる酵素とタンパク質の内部コアならびに2つの同一の線状RNAのゲノムからなる。ウイルスの脂質二重層では、ウイルスの外被糖タンパク質41(gp41)が、ウイルス表面から延在し、感受性細胞の表面上の受容体と相互作用する別のウイルスの外被糖タンパク質120(gpl20)に結合している。HIV−1ゲノムは、ほぼ10,000 ヌクレオチドの大きさであり、9つの遺伝子を含む。これには、すべてのレトロウイルスに共通する3つの遺伝子gag、polおよびenv遺伝子が含まれる。gag遺伝子は、コア構造タンパク質をコードし、env遺伝子はgpl20およびgp41外被タンパク質をコードし、pol遺伝子はウイルス酵素逆転写酵素(RT)、インテグラーゼおよびプロテアーゼ(pro)をコードする。このゲノムは、ウイルス複製に不可欠な2つの他の遺伝子、ウイルスプロモータートランスアクチベーターをコードするtat遺伝子と、同様に遺伝子転写を助長するrev遺伝子とを含む。最後に、nef、vpu、vprおよびvif遺伝子は、レンチウイルスに特有であり、その機能がTrono,Cell,82:189−192(1995)に記載されているポリペプチドをコードする。
【0129】
HIV−1がヒト細胞に感染するプロセスは、ウイルス表面上のgpl20と細胞表面上のタンパク質との相互作用を伴う。HIV感染第1工程が、細胞のCD4タンパク質へのHIV−1糖タンパク質Env gpl20の結合であることは、共通の理解である。この相互作用により、ウイルスのgpl20が立体構造の変化を受け、他の細胞表面タンパク質(例えば、CCR5またはCXCR4タンパク質など)に結合し、その後のウイルスと細胞との融合を可能にする。したがって、CD4は、HIV−1の主な受容体であると報告されているが、その他の細胞表面タンパク質は、HIV−1の補助受容体であると報告されている。本明細書で用いる場合、HIVには、HIV−1およびHIV−2が包含される。本発明には、予防用および/または治療用薬剤などの薬剤に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものであるHIV変異型ポリペプチドが包含され、任意のHIVポリペプチドに見られる変異、例えば、限定されないが、Gag、Env、Pol、および任意のHIVクレード科に由来のもの、サブタイプおよび/または菌株、ならびに例えば、限定されないが、単離菌、HIVIIIb、HIVSF2、HIV−1SFI62、HIV−1SF170、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN、HIV−1CM235、HIV−1US4、他のHIV−1菌株が包含される。例えば、Myersら,Los Alamos Database,Los Alamos National Laboratory,Los Alamos,New Mexico;Myersら,Human Retrovirus and Aids,1990,Los Alamos,New Mexico:Los Alamos National Laboratoryを参照のこと。本明細書に開示する実例として、薬剤に応答して出現したHIVプロテアーゼおよび逆転写酵素の変異を表IIに開示する。HIVの処置における使用のための薬剤がラミブジンである一例において、変異型ポリペプチドM194Vは具体的に除外する。一例において、薬剤に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものであるHIV変異型ポリペプチドは、それ自体で免疫原性である、すなわち、アジュバントと関連していないが、これは必須ではない。他の一例では、HIV薬剤に応答して出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドは、本明細書に記載した、および当該技術分野で知られたアジュバント、例えば、Toll様受容体リガンド、またはCpGヌクレオチド配列、またはその抗原性を向上させる他のベクターもしくは媒介体(例えば、酵母媒介体)などと関連していると免疫原性である。一例において、アジュバントは、変異型ポリペプチドとの融合タンパク質として発現されるアミノ酸配列である。
【0130】
【表2−1】

【0131】
【表2−2】

現在、抗レトロウイルス薬物治療は、HIV感染の処置または人から人へのHIV−1感染の予防の一手段である。薬物治療を行なっても、せいぜい、HIV−1感染は、一生の処置を必要とする慢性状態であり、依然として疾患はゆっくりと進行し得る。HIVに対する薬物耐性は、すべての類型の抗レトロウイルス薬物、すなわち、ヌクレオシド類縁体逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤および侵入/融合阻害剤に対して発現した。関連する変異の数、引き起こされる耐性の増大の程度、および耐性の機構は、これらの多くの薬物間で異なる。
【0132】
ウイルスが採用する薬物耐性の機構は、研究されており、特性付けされている。理論に拘束されることを望まないが、耐性変異型が出現する尤度は、少なくとも4つの要因:1)ウイルスの変異の頻度;2)具体的な抗ウイルス薬に関するウイルスの標的部位の固有の易変異性;3)抗ウイルス薬の選択圧;ならびに4)ウイルス複製の大きさおよび速度関数と思われる。
【0133】
第1の要因に関して、そのポリメラーゼがプルーフリーディング機構を欠く一部のRNAウイルスでは、変異の頻度はほぼ3×10−5/bp/複製サイクルである(Hollandら(1992)Curr.Topics Microbiol Immunol.176,1−20;Manskyら(1995)J Virol.69,5087−94;Coffin(1995)Science 267,483−489)。したがって、単一の10kbゲノム(ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のものなどの)は、平均して、3つの子孫ウイルスゲノムごとに1つの変異を含むことが予測され得る。HIV感染時に毎日生成されるほぼ1010の新たなビリオンで計算すると(Hoら(1995)Nature 373,123−126)、10−4〜10−5/ヌクレオチドの割合の変異が、ほぼあらゆる変異の事前の存在が、HIV感染の任意の時点で保証される。ウイルスの急速な進化により、抗ウイルス療法を回避するバリアントの生成が助長され得る。
【0134】
第2の要因に関して、具体的な抗ウイルス剤に応答したウイルス標的部位の固有の易変異性は、耐性変異型の尤度に有意に影響を及ぼし得る。例えば、ジドブジン(AZT)により、HIVの逆転写酵素における変異は、スタブジンよりも容易にインビトロおよびインビボで選択される。
【0135】
第3の要因に関して、薬物曝露が増大すると、複製中のウイルス集団に対する選択圧が増大し、薬物耐性変異型のより急速な出現が促進される。例えば、HIVの処置に有効な薬物の範囲では、高用量のAZTでは、低用量よりも急速に薬物耐性ウイルスが選択される傾向にある(Richmanら(1990)J AIDS.3,743−6)。耐性変異型に対するこの選択圧により、有意なレベルのウイルス複製が持続される限り、かかる変異型が生じる尤度が増大する。
【0136】
第4の要因であるウイルス集団の複製の大きさと速度は、耐性変異型の出現の尤度に対して主要な結果をもたらす。多くのウイルス感染は、高レベルのウイルス複製とともに高速のウイルスターンオーバー(turnover)を特徴とする。これは、HIVによる慢性感染についてもいえるようである。高レベルのウイルスにより、変異型の事前の存在の確率が増大する。耐性集団の出現は、選択圧の非存在下でランダムに出現する既存の亜集団の生存および選択的増殖に起因し得ることが示されている。したがって、選択圧の付加(例えば、抗ウイルス剤など)の存在下で高レベルの複製を伴うウイルスでは、より多くの数の耐性変異型が生成されることが予測され得る。薬物耐性変異型が、HIV感染個体の亜集団に、実際に存在するという証拠は、蓄積されている(Najeraら(1994)AIDS Res Hum Retroviruses 10,1479−88;Najeraら(1995)J Virol.69,23−31)。また、ほぼ10−5の割合の薬物耐性ピコルナウイルス変異型の事前の存在は、充分文献に報告されている(Ahmadら(1987)Antiviral Res.8,27−39)。以下は、HIV感染のリスクがあるか、またはこれに易罹患性である哺乳動物に投与されることが知られている薬剤の類型である。さらなる薬剤を、そのHIV特異的変異とともに表IIに示す。例えば、本明細書でより詳細に論考するように、表IIで変異回避「V82A/F」と分類されたHIV−1変異型ポリペプチドは、HIVプロテアーゼ阻害剤類型の薬物である薬剤リトナビルの投与の結果、出現することが観察された。
ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤
ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NRTI)は、有効な抗レトロウイルス化合物の第1の類型であり、ジドブジン(AZT)は、臨床的実用に達した第1の薬物であった。現在市販されている一部のNRTIとしては、ジドブジン(Retrovir)、スタブジン(Zerit)、ジダノシン(Videx)、ザルシタビン(Hivid)、アバカビル(Ziagen)、ラミブジン(Epivir)、エントリシタビン(Emtriva)およびテノホビル(Viread)が挙げられる。NRTIは内在ヌクレオシドと、HIV RNAの逆転写によって生成されるDNA鎖内への組込みについて競合し、それにより、未成熟鎖の末端をもたらすことにより、逆転写酵素を阻害する。
【0137】
研究者らにより、AZT耐性逆転写酵素が単離され、この酵素において高頻度で変異される部位が見出された。「フィンガー」ドメイン由来のMet 41、Asp 67およびLys70ならびに「パーム」ドメイン由来のLeu 210、Thr 215およびLys 219は、すべて、AZT耐性逆転写酵素内の活性部位付近に見られる変異である。これらの残基が該活性部位ポケット周囲にクラスター化する様式により、これらの変異によって、結合部位が該薬物のアジドを保持する能力が直接影響を受けることを支持する傾向にある。したがって、本明細書において、HIV変異型RT、例えば、本明細書に具体的に記載したHIV変異型ポリペプチドと関連しているベクター、例えば、酵母媒介体などが提供される。一例において、酵母媒介体は、HIV変異型RTポリペプチド、変異を含むまたはその断片をコードする核酸を含むように遺伝子操作されている。
【0138】
NRTIに対する耐性は、逆転写酵素(RT)遺伝子内のヌクレオチド変化およびその後のRT酵素内でのアミノ酸置換の発生によって発現される。各NRTIは、予測可能な組の遺伝子改変を、一般的には、最初に現れる一次変異とともに誘導し、二次変異は治療の継続時に発現される。例えば、ジドブジンに対する耐性は、RTにおける特異的変異、例えば、M41L、D67N、K70R、L210W、T215Y/FおよびK219Q/Eと関連している。スタブジンに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、M41L、K65R、D67N、K70R、Q151M、L210W、T215Y/FおよびK219Eが挙げられる。ジダノシンに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、K65R、L74VおよびM184Vが挙げられる。ザルシタビンに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、K65R/N、T69D、L74V、V75T/AおよびM184Vが挙げられる。アバカビルに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、K65R、L74V、Y115FおよびM184V/Iが挙げられる。ラミブジンに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、K65RおよびM184V/Iが挙げられる。エントリシタビンに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、K65RおよびM184V/Iが挙げられる。テノホビルに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、K65Rが挙げられる。これらの変異のほとんどは、逆転写酵素の活性部位付近に見られる。
【0139】
逐次、交互および組合せヌクレオシド類縁体レジメンの使用の増加により、現在利用可能なあらゆるNRTIに対して耐性を付与する変異を有するHIVバリアントを選択することが可能になっている。2組の変異Q151M複合変異およびT69S挿入変異が報告されている。Q151M変異は、多くの場合、コドンA62V、V75I、F77LおよびF116Yにおける二次変異と関連しており、これによって、NRTIに対する感受性がさらに低下する。
【0140】
非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤
非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)は、HIV−1逆転写の非競合的阻害剤であり、逆転写酵素の活性部位付近の疎水性ポケットに結合し、該酵素において立体構造の変化を引き起こす。逆転写酵素のこの疎水性ポケット内には、変異しないことがわかっている4つの残基すなわち、Phe 227、Trp 229およびLeu 234およびTyr 319が含まれている。現在、3種類のNNRTI、ネビラピン(Viramune)、デラビルジン(Rescriptor)およびエファビレンツ(Sustiva)が認可されている。NRTIと同様、NNRTIに対する耐性HIV−1バリアントは、多くの場合、多数の変異を有するが、ほとんどのNRTIとは対照的に、単一変異によってNNRTIに対する高レベルの耐性がもたらされ得る。
【0141】
ナビラピン耐性HIV−1バリアントは非常に早い速度で生じ、感受性の低下に伴い、治療のわずか1週間後で明白となり、治療8週間までに100%の試験患者が単離菌を有し、感受性の低下は、100倍より大きかった。ネビラピンに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、L100I、K103N、V106A/M、V108I、Y181C/I、Y188C/L/HおよびG190Aが挙げられる。デラビルジンに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、K103N、V106M、Y181C、Y188LおよびP236Lが挙げられる。エファビレンツに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、L100I、K103N、V106M、V108I、Y181C/I、Y188L、Gl90S/AおよびP225Hが挙げられる。耐性の急速な誘導は、NNRTI単独治療の際に最も強く観察され、これらの化合物は、他の抗レトロウイルス剤との組合せで奏功(take)することが認められている。
【0142】
プロテアーゼ阻害剤
HIVプロテアーゼ酵素は、ウイルス成熟時に、前駆体Gag−Polポリタンパク質の翻訳後切断に必要とされ、新たなウイルス粒子の合成に必要とされる構成ブロックを生成させる二量体アスパルチルプロテアーゼである。このタンパク質の活性は、ウイルス感染性、主要な薬物標的であるために不可欠である。多くのプロテアーゼ阻害剤(PI)が、現在、利用可能であり、インジナビル(Crixivan)、リトナビル(Norvir)、サクイナビル(Fortovase)、ネルフィナビル(Viracept)、アンプレナビル(Agenerase)、ロピナビル/リトナビル(Kaletra)およびアタザナビル(Reyataz)が挙げられる。インジナビルに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、主要な変異M46I/L、V82A/F/TならびにI84V、および他の変異L10I/R/V、K20M/R、L24I、V32I、M36I、I54V/A、L63P、I64V、A71T/V、G73S/A、V77IおよびL90Mが挙げられる。リトナビルに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、主要な変異V82A/F/T/Sおよび184Vならびに他の変異L10F/I/R/V、K20M/R、V32I、L33F、M36I、M46I/L、I54V/L、A71V/T、V77IおよびL90Mが挙げられる。リトナビルに耐性の患者から採取された単離菌における変異は、段階的で規則的な様式でV82A/F、154V、A71V/Tおよび136Lに配列に生じ、その後、変異の組合せが、さらに5つの特異的アミノ酸位置に生じたようである。サクイナビルに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、主要な変異G48VおよびL90Mならびに他の変異L10I/R/V、I54V/L、A71 V/T、G73S、V77I、V82AおよびI84Vが挙げられる。ネルフィナビルに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、主要な変異D30NおよびL90Mならびに他の変異L10F/I、M36I、M46I/L、A71V/T、V77I、V82A/F/T/S、I84VおよびN88D/Sが挙げられる。アンプレナビルに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、主要な変異V32I、M46I/L、I47V、I50V、I54L/MおよびI84Vならびに他の変異L10F/I/R/V、G73SおよびL90Mが挙げられる。アタザナビルに対する耐性と関連しているRTにおいて同定される変異としては、限定されないが、主要な変異M46I、I50L、A71V、I84VおよびN88Sおよび他の変異L10I/F/V、K20R/M/I、L24I、V32I、L33I/F、M36I/L/V、G48V、I54L、G73C/S/T/A、V82AおよびL90Mが挙げられる。したがって、本明細書において、HIV変異型プロテアーゼ、例えば、本明細書に具体的に記載したHIV変異型ポリペプチドと関連しているベクター(例えば、酵母媒介体など)が提供される。一例において、酵母媒介体は、HIV変異型プロテアーゼポリペプチドまたは変異を含むその断片をコードする核酸を含むように遺伝子操作されている。
【0143】
侵入/融合阻害剤
エンフビルチド(Fuzeon)は、ウイルス侵入を阻害するように設計された最初の類型の抗ウイルス剤であった。ウイルスの複製に関与するウイルス酵素を標的化する既存の抗HIV薬物とは異なり、エンフビルチドは、HIVが宿主細胞と融合するのを阻止するように設計された。エンフビルチドは、HIV gp41エクトドメイン内のモチーフ(HR1)に競合的に結合し、膜融合とウイルス侵入に必須条件である構造の形成を阻止する。感受性の低下と関連している変異が観察され、該変異としては、限定されないが、G36D/S、I37V、V38A/M、Q39R、N42TおよびN43Dが挙げられる。具体的には、アミノ酸38においてバリンのアラニンへの変化が、エンフビルチドに対して45倍の耐性をもたらすことが示された。したがって、本明細書において、HIV変異G36D/S、I37V、V38A/M、Q39R、N42TおよびN43Dと関連しているベクター(例えば、酵母媒介体など)が提供される。当業者には、予防用および治療用投与のための新たな薬剤が開発された場合は、さらなるHIV変異型ポリペプチドが出現し得ることが認識されよう。かかるHIV変異型ポリペプチドは、当業者には常套的とみなされる方法によって同定され得て、本明細書に記載の組成物および方法に使用される。したがって、本明細書において、HIVの変異型ポリペプチド(もしくはそのミメトープ)またはHIVの変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む組成物、および免疫応答の惹起におけるその使用のための方法が提供される。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。一例において、免疫応答は体液性応答である。他の一例では、免疫応答は、細胞性と体液性の両方の応答を含む。
【0144】
C型肝炎ウイルス
C型肝炎ウイルス(HCV)は、約3000アミノ酸のポリタンパク質前駆体をコードする9.6kbゲノムを有する単鎖ウイルスである。HCVのあらゆるタンパク質産物は、この大きなポリタンパク質のタンパク質分解性切断によって生成される。タンパク質分解性切断は、3種類のプロテアーゼ:宿主シグナルペプチダーゼ、ウイルスの自己切断メタロプロテイナーゼNS2、またはウイルスのセリンプロテアーゼNS3/4Aのうちの1種類によって行なわれる。これらの酵素の併合作用によって構造タンパク質(C、E1およびE2)と、ウイルスゲノムRNAの複製およびパッケージングに必要とされる非構造(NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5AおよびNS5B)タンパク質がもたらされる。NS5Bは、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼ(RDRP)であり、ネガティブ(negative)鎖コピー(相補RNAまたはcRNA)内への導入ゲノムRNAの変換を担う;次いで、cRNAは、よりポジティブな(positive)センスゲノム/メッセンジャーRNAのNS5Bによる転写の鋳型としての機能を果たす。
【0145】
NS3セリンプロテアーゼおよびRNAポリメラーゼは、ここ10年の間、HCV特異的療法の開発の主な標的であった。インターフェロンおよびリバビリンは、現在、慢性C型肝炎感染の個体の処置が許可されている2つの薬物である。インターフェロンは、単独またはリバビリンとの組合せで投与される。併用療法では、持続性の抗ウイルス効果がわずか40〜50%の遺伝子型1 HCV感染患者で示され、HCV遺伝子型2または3感染患者では80〜90%であった。
【0146】
HCVセリンプロテアーゼ阻害剤BILN 2061およびVX−950は、治験に入っている。これらのプロテアーゼ阻害剤は、耐性変異型が処置中に出現し得るか否かを調べるため、および生じる変異型を特性評価するためにインビトロで試験されたと報告された。両方の阻害剤で、単一アミノ酸の異なる薬物耐性置換体が、HCV NS3 セリンプロテアーゼドメインにおいて同定された。主なBILN 2061耐性変異は、アミノ酸168におけるものであり、当時の(of the time)Val置換(D168V)64%または当時のAla置換(D168A)24%から構成された。対照的に、主なVX−950耐性変異は、アミノ酸156におけるものであり、試料の79%はSer置換(A156S)から構成された(Lin C.ら.JBC,(2004)279:17508−17514。HCVおよびHBVに易罹患性である哺乳動物の処置における使用のための薬剤と関連している変異については表IIIを参照のこと。
【0147】
【表3】

変異は、HCVポリペプチドの任意の位置に存在し得る。変異は、単一変異の状況について記載したが、ウイルス抗原は、抗ウイルス剤に対する感受性の低下と関連している1つより多く(例えば、2、3、4、または5つ)の変異を含むものであり得ることを理解されたい。
【0148】
したがって、本明細書において、HCV変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ、またはHCVの変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む組成物、および免疫応答の惹起におけるその使用のための方法が提供される。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。一例において、免疫応答は体液性応答である。他の一例では、免疫応答は、細胞性と体液性の両方の応答を含む。一例において、変異型ポリペプチドは変異を、C型肝炎ウイルス由来のNS3プロテアーゼタンパク質内に含む(例えば、限定されないが、表IIIに示す変異型)。
【0149】
B型肝炎ウイルス
B型肝炎ウイルス(HBV)感染は、世界的な健康問題である。20億人を超える人々がHBVに感染していると推定されており(2004年現在)、3億5000万人を超える人が慢性キャリアである。成人期に獲得されたHBV感染は、多くの場合、臨床的に不顕性であり、ほとんどが急性的に感染し、成人は、該疾患から完全に回復し、ウイルスが排除される。しかしながら、稀に、急性肝臓疾患は、非常に重症なため、患者が劇症肝炎で死亡することがあり得る。少数割合(おそらく5〜10%)の急性感染成人は、該ウイルスに持続的感染状態となり、しかしながら、米疾病対策予防センターによれば、出生時に感染した幼児の90%まで、および1〜5歳で感染した小児の30%が、慢性感染状態となる。HBV慢性感染個体は、種々の重篤度の肝臓疾患を発症し、15〜25%は、肝硬変および原発性肝細胞癌で死亡する。
【0150】
HBVは、ウイルスであるヘパドナ・ウイルス科(これには、アヒルB型肝炎ウイルスおよびウッドチャクB型肝炎ウイルスもまた含まれる)の構成員である。HBVは、外被または表面構造タンパク質、(HBsAg)、プレコア/コアタンパク質(HBeAgおよびHBcAg)、逆転写DNAポリメラーゼ酵素ならびにトランスアクチベーターXタンパク質をコードする4つの部分的に重複するオープンリーディングフレームを有する3.2kbゲノムを有する。部分二本鎖ゲノムDNAは、コアタンパク質二量体の合成によってキャプシドに包まれる。このヌクレオキャプシドが、今度は、宿主細胞由来脂質二重層およびウイルス表面タンパク質からなる外被によって囲まれる。
【0151】
HBVのウイルスライフサイクルは、合成されたウイルスのヌクレオキャプシド内でDNAに逆転写される細胞内プレゲノムRNAを含む。逆転写酵素DNAポリメラーゼは、プルーフリーディング能力を欠くため、HBVは、他のDNAウイルスよりも10倍より大きい変異割合を示す;推定変異割合は、ほぼ1ヌクレオチド/10,000塩基/感染年である。この高い変異割合およびゲノムのばらつきは、血清学的に規定されたサブタイプの発生に反映され、これまでに特性付けされた6つの異なる遺伝子型の群により、A〜Fで表示される。
【0152】
現在、主に2つのカテゴリーの薬物:ヌクレオシド類縁体および免疫調節因子がHBV感染に使用されている。免疫調節因子としては、インターフェロン−α、サイモシン−αおよび治療用ワクチンが挙げられるが、インターフェロン−αのみが、現在、患者における使用に認可されている。免疫調節因子は、感染肝臓細胞の破壊を促進し、サイトカイン産生を刺激してHBVの複製を抑制すると考えられている。対照的に、ヌクレオシド類縁体は、HBV−DNA合成に干渉し、感染細胞の排除を加速させると考えられている。HBV感染を処置するために使用される最も一般的なヌクレオシド類縁体薬物は、ラミブジンおよびアデホビルジピボキシルである。また、エンテカビルは、最近、慢性HBV感染の処置に対して認可された。
【0153】
ヌクレオシド類縁体、例えば、ラミブジン、アデホビルおよびエンテカビルは、化学的に合成された化合物であり、天然のヌクレオシドと構造的に類似する。したがって、これらは、新たに合成されるHBV−DNAをもたらす未成熟鎖末端に組み込まれ、ウイルス複製阻害をもたらす。また、一部のヌクレオシド類縁体は、ウイルスポリメラーゼのDNA依存性および逆転写酵素活性を競合的に阻害するようであり、これによってもまた、ウイルス複製阻害がもたらされる。
【0154】
ラミブジンは、3TCおよびEpivirとしても知られるシチジン類縁体であり、ウイルスのDNA合成を終結させ、ウイルスポリメラーゼ/逆転写酵素を競合的に阻害することにより作用する。施術者にとって非常に懸念されることは、ラミブジン処置後の薬物耐性HBVバリアントの出現である。薬物耐性は、長期処置後のあらゆる患者の66%までに示された。
【0155】
HBVポリメラーゼは4つのドメインに分けられ、そのうちの1つは、該ウイルスの逆転写酵素としての機能を果たし、少なくとも5つのサブドメイン(A〜E)を含む。他のRNA依存性ポリメラーゼと同様、HBVポリメラーゼは、特徴的なYMDD(チロシン−メチオニン−アスパラギン酸−アスパラギン酸)モチーフを、サブドメインC内に位置する触媒性部位に含む。現在、HBVポリメラーゼに対して2つの番号付けシステムがあり、最初のシステムでは、該ポリメラーゼ全体のアミノ酸に番号付けしたが、新しいシステムでは、各ポリメラーゼドメインのアミノ酸に別々に番号付けし、それにより、逆転写酵素ドメインのアミノ酸は、「rf」を付して設計される。
【0156】
ラミブジン耐性を付与すると報告された最も一般的なアミノ酸置換は、BとCの両方のサブドメインに存在する。薬物耐性と関連しているアミノ酸置換は、主に、YMDDモチーフに影響を及ぼし、その結果、rt204位(新しいrt番号付けシステム、旧システムでは552)のメチオニン(M)が、バリンまたはイソロイシンrtM204V/I(M552V/I)のいずれかに変化する。この変異は、ほぼ常にサブドメインB内の第2の変異、rt180位のロイシンのメチオニンrtL180M(L528M)との置換と関連している。報告された他の変異としては、ともにサブドメインB内のrtV173L(V521L)およびrtF166L(F541L)が挙げられる。別の変異型rtA181T(A529T)は、長期間の処置後ラミブジンに耐性となることが示されている。ごく最近、rtM204S(M552S)変異型は、通常、rtL180M(L528M)変化と関連していることが報告された。
【0157】
アデホビルジピボキシル(Hepsera)は、アデノシン一リン酸の非環式ヌクレオチド類縁体であり、HBV複製の強力な阻害剤であることが示されている。ラミブジンと同様、アデホビルに対する感受性の低下を付与する遺伝子型変化が観察された。処置の96〜144週間後に
単離されたウイルス変異型の解析により、変異rtN236TおよびrtA181Vがアデホビル耐性に寄与することが測定されたと報告された。エンテカビル(Baraclude)は、グアノシンヌクレオシド類縁体であり、これもまた、HBVポリメラーゼに対して活性を示した。ラミブジン処置に対して抵抗性の患者では、エンテカビルで48週間の処置後、事前にラミブジン耐性変異rtL180Mおよび/またはrtM204V/Iが存在した場合、アミノ酸置換と関連している耐性の出現、例えば、限定されないが、rtI169T、rtT184G、rtS202IおよびrtM250Vの徴候がみられた。
【0158】
臨床試験でHBVに対して試験された、または現在評価されているヌクレオシド類縁体が他にいくつかある。これらとしては、ファムシクロビル、エントリシタビンおよびガンシクロビルが挙げられる。ラミブジン使用と同様、ファムシクロビルでの長期処置により薬物耐性がもたらされることが報告されている。これまでに、該逆転写酵素のBおよびCサブドメイン内のアミノ酸に影響を及ぼすいくつかの変異、例えば、限定されないが、rtL180M、rtV173L、rtP177L、rtT184S、rtR153AおよびrtV207Iが報告されている。
【0159】
したがって、本明細書において、HBVの変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはそのミメトープ、またはHBVの変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む組成物、および免疫応答の惹起におけるその使用のための方法が提供される。一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。一例において、免疫応答は体液性応答である。他の一例では、免疫応答は、細胞性と体液性の両方の応答を含む。一例において、HBVの変異型ポリペプチドは、表IIIに示す変異を含む。
【0160】
したがって、本明細書に記載の組成物は、哺乳動物において変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するために使用され、哺乳動物にその有効量を、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで投与することを含む。さらに、該組成物は、哺乳動物において変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するための医薬の調製または製造に、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで使用され得る。一例において、変異型ポリペプチドは、ウイルスにコードされたポリペプチドである。一例において、 変異型ポリペプチドは、レトロウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、ラブドウイルス、ブンヤウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、アレナウイルス、カリシウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルスおよびパポバウイルスからなる群より選択されるウイルスにコードされている。他の一例では、ウイルスは、HIV、HBVまたはHCVである。
【0161】
一例において、免疫応答は細胞性免疫応答である。他の一例では、免疫応答は体液性免疫応答である。また他の一例では、免疫応答は細胞性と体液性両方の免疫応答を含む。
【0162】
また、本明細書に記載の組成物は、哺乳動物において疾患を処置するために使用され、哺乳動物に有効量の該組成物を投与することを含み、該疾患が、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドと関連している。一例において、該組成物は、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで使用される。さらに、該組成物は、哺乳動物において疾患を処置するための医薬の製造において、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで使用され得る。一例において、変異型ポリペプチドは、ウイルスにコードされたポリペプチドである。一例において、ウイルスは、レトロウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、ラブドウイルス、ブンヤウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、アレナウイルス、カリシウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルスおよびパポバウイルスからなる群より選択される。他の一例では、ウイルスは、HIV、HBVまたはHCVである。一例において、疾患は、HIV、HBVまたはHCVによる感染である。
【0163】
融合タンパク質
一例では、本明細書において、薬剤に応答して出現することがわかっているか、または出現したものである少なくとも1種類の変異型ポリペプチドを含む融合タンパク質を含むベクターおよびウイルスが提供される。一例において、融合タンパク質は、さらなる変異型ポリペプチドを含み、他の一例では、アジュバント、例えば、TLRのリガンドなどを含む。一例では、本明細書において、かかる融合タンパク質を含む酵母媒介体を含むベクターが提供される。融合タンパク質は、本明細書に記載の、または当該技術分野で知られた任意の変異型ポリペプチドを含むものであり得る。実例として、本明細書において提供されるかかる融合構築物の一例は、(a)少なくとも1種類のHIV変異型ポリペプチドまたは抗原、例えば、変異型RTまたはプロテアーゼ(例えば、完全長の抗原の免疫原性のドメインおよびエピトープ、ならびに種々の融合タンパク質および本明細書の別の箇所に記載の多数の抗原構築物(抗原は所望の変異を含むものとする));および(b)合成ポリペプチド(1種類または複数種)、抗原(1種類または複数種)、またはペプチド(1種類または複数種)を含む融合タンパク質である。融合タンパク質は、1種類以上のHIV変異型ポリペプチドに由来する多数の免疫原性のドメインを含むものであり得る。かかる融合タンパク質は、天然状態の抗原の1つまたはいくつかの位置に存在し得るHIV変異型ポリペプチドのいくつかの異なるHIV変異型ポリペプチドおよび/または組合せを、単一のベクター(例えば、酵母媒介体など)に含めることが望ましい場合、特に有用である。一例において、酵母媒介体は、2種類以上のHIV変異型ポリペプチドまたは抗原を含む融合タンパク質を含む。一例において、融合タンパク質は、1種類以上のHIV変異型抗原の2つ以上のエピトープまたは免疫原性のドメインを含み、一例では、免疫原性の抗原の多数のドメインを含み、該多数のドメインが一緒になって、薬剤に応答したHIV変異型抗原1つ以上のアミノ酸位置に存在し得る変異のいくつかの異なる変異および/または組合せを含む。
【0164】
例えば、表IIに示すように、いくつかの薬物に対する耐性と関連しているいくつかの変異、例えば、L74V、K65RおよびM184V/IなどがHIV RTにおいて同定されている。本発明には、RT阻害剤に応答して出現することがわかっている多数のHIV変異型ポリペプチド(例えば、L74V、K65RおよびM184V/Iなどの少なくとも1種類)を含む融合タンパク質と関連しているか、または該タンパク質を発現するベクターおよびウイルス(例えば、酵母ベクターおよび媒介体)、ならびにこれを含む組成物が包含される。表IIに示すように、いくつかの変異、例えば、V82A/F、I54V、A71V/T、I36L、I50L、N88S、I84V、A71V、M46I、G48V、L90M、L101R/VI54V/L、A71VT、G73S、V77I、V82AおよびI84VがHIVプロテアーゼにおいて同定されている。本発明には、プロテアーゼ阻害剤に応答して出現する多数のHIV変異型ポリペプチド(例えば、V82A/F、I54V、A71V/T、I36L、I50L、N88S、I84V、A71V、M46I、G48V、L90M、L101R/VI54V/L、A71VT、G73S、V77I、V82AおよびI84Vなどの少なくとも1種類)を含む融合タンパク質と関連しているか、または該タンパク質を発現するベクターおよびウイルス(例えば、酵母ベクターおよび媒介体)、ならびにこれを含む組成物)が包含される。
【0165】
組成物および使用方法
本明細書において、標的化される薬物薬剤に応答して出現することがわかっているか、もしくは出現したものである変異型ポリペプチド、または該変異型ポリペプチドを発現する細胞に対する免疫応答、一例では、細胞性免疫応答、体液性免疫応答または細胞性と体液性(humeral)免疫応答の惹起における組成物およびその使用のための方法が提供される。一例において、細胞性免疫応答では、例えば、癌細胞またはウイルスを発現する細胞などの薬物薬剤標的化されるポリペプチド内に変異を含む無制御の細胞を排除することが意図されるが、これは必須ではない。一例において、細胞性または体液性免疫応答により細胞増殖またはウイルス複製が阻止される。
【0166】
本明細書において、治療用および/または予防用薬剤(1種類または複数種)に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチド、変異を含むその断片、ミメトープ(またはこれらをコードする核酸)を含むベクター、ウイルスおよび組成物(例えば、免疫原性組成物など)、ならびに該変異型ポリペプチドに対する免疫応答、一例では細胞性免疫応答の惹起におけるその使用のための方法が提供される。体液性免疫応答もまた、惹起され得る。かかる薬剤(1種類または複数種)に応答したかかる変異型ポリペプチドの出現は、例えば、感受性および/または該薬剤に対する耐性(1種類または複数種)の低下および/または疾患の亜臨床的および/または臨床的症状の増大と関連していると考えられる。Stubbsら(Nature Medicine,2001,第7巻:1−5)に記載のように、酵母系組成物、すなわち、HIV−1−sf2−gp160外被タンパク質を発現する完全体の組換えS.cerevisiae酵母をマウスに投与すると、該文献に記載のように、CTL免疫応答が惹起された。該マウスから生成させたCTLは、標的細胞発現gpl60−SF2を死滅させ得た。必要とされる哺乳動物に投与され、投与された、または投与している薬剤に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものであるHIV変異型ポリペプチドに対する細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を惹起する利点としては、該薬剤の有効性の持続期間の延長;該薬剤に対する耐性の最小化もしくは逆転;特異的HIV変異型ポリペプチドの出現の遅延もしくは最小限化;特異的HIV変異型ポリペプチドの排除(しかし、利点がもたらされるのに排除は必要ではない);ならびにHIV感染の最小限化、低減もしくは逆転および/またはHIV感染の進行の遅滞が挙げられ得る。
【0167】
したがって、本明細書において、哺乳動物において治療用および/または予防用薬剤(1種類または複数種)に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチド、例えば、HIV変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するための方法であって、哺乳動物に有効量の組成物を該薬剤との組合せで投与することを含み、該組成物は、
a.該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞、ベクターもしくはウイルス;
b.変異型ポリペプチドと関連している細胞、ベクターもしくはウイルス;
c.該変異型ポリペプチド、もしくは該変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するペプチド(ミメトープ);または
d.変異型ポリペプチドをコードする核酸、あるいは該核酸に結合し得る核酸、例えばsiRNAもしくはアンチセンスRNAなど
を含み、
該有効量の該組成物は、該薬剤との組合せで投与される、
方法が提供される。
【0168】
一例において、該組成物は、以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合した酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ
の1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである。
【0169】
一例において、該組成物は、細胞性免疫応答を惹起し得るものである。他の一例では、免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、免疫応答は、細胞性免疫応答および体液性免疫応答の両方を含む。
【0170】
該方法の一例において、該組成物は、アジュバントを含む。また他の一例では、該組成物は、Toll様受容体のアゴニストまたはリガンドをさらに含む。他の一例では、該組成物は酵母媒介体を含む。また他の一例では、該組成物は、CpG配列を含む。他の一例では、細胞は樹状細胞である。一例において、哺乳動物はヒトである。
【0171】
該薬剤が、直接または間接的のいずれかで細胞増殖に干渉することがわかっている一例において、変異型ポリペプチドまたは該変異型ポリペプチドをコードする核酸の投与としては、該薬剤の投与の前および/または後であって、該薬剤の投与と同時でない投与が挙げられる。一例において、HIV変異型ポリペプチドはHIV RT阻害剤に応答して出現することがわかっているL74V、K65Rおよび/またはM184V/Iである。他の一例では、HIV変異型ポリペプチドは、HIVプロテアーゼ阻害剤に応答して出現することがわかっているV82A/F、I54V、A71V/T、I36L、I50L、N88S、I84V、A71V、M46I、G48V、L90M、L101R/VI54V/L、A71VT、G73S、V77I、V82Aおよび/またはI84Vである。他の一例では、癌抗原の変異型ポリペプチドは、表Iに示す群から選択される。他の一例では、HCVまたはHBVの変異型ポリペプチドは、表IIIに示す群から選択される。
【0172】
本明細書において、哺乳動物において疾患の症状を改善するための方法であって、哺乳動物に有効量の組成物を、治療用および/または予防用薬剤との組合せで投与することを含み、該組成物は、
a.該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞、ベクターもしくはウイルス;
b.変異型ポリペプチドと関連している細胞、ベクターもしくはウイルス;
c.該変異型ポリペプチド、もしくは該変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するペプチド(ミメトープ);または
d.変異型ポリペプチドをコードする核酸、あるいは該核酸に結合し得る核酸、例えばsiRNAもしくはアンチセンスRNAなど
を含み、
該有効量の該組成物は、該薬剤との組合せで投与される、
方法が提供される。
【0173】
一例において、該組成物は、以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合した酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ
の1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである。
【0174】
一例において、該組成物は、細胞性免疫応答を惹起し得るものである。一例において、免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、免疫応答は、細胞性応答および体液性応答の両方を含む。
【0175】
該方法の一例において、該組成物は、アジュバントを含む。他の一例では、該組成物は酵母媒介体を含む。他の一例では、該組成物は、CpG配列を含む。また他の一例では、該組成物は、Toll様受容体のリガンドをさらに含む。他の一例では、細胞は樹状細胞である。
【0176】
一例において、哺乳動物はヒトである。
【0177】
該方法の一例において、哺乳動物は、疾患のリスクがあり、該薬剤が予防的に投与される;他の一例では、哺乳動物は、疾患に易罹患性であり、該薬剤が治療的に薬剤投与される。酵母系に関する米国特許第5,830,463号では、異種抗原を発現するように操作された酵母は、哺乳動物に投与すると、細胞性および体液性両方の免疫応答を惹起し得ることが示されている。したがって、本明細書において、治療用および/または予防用薬剤(1種類または複数種)に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである変異型ポリペプチドに対する免疫応答の惹起における酵母媒介体、例えば、酵母ベクター;酵母系組成物;およびその使用のための方法が提供される。一例において、酵母媒介体は、該変異型ポリペプチド(1種類または複数種)をコードする核酸を含む。他の一例では、酵母媒介体は、該変異型ポリペプチドと関連している。一例において、該組成物は、以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合した酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ
の1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである。したがって、本明細書において、本明細書に記載の方法における使用のための酵母媒介体および酵母系組成物が提供される。
【0178】
薬剤に応答して出現することがわかっているか、または出現したものである
変異型ポリペプチド、または該ポリペプチドをコードする核酸は、アジュバントとともに、または該ポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードする核酸が細胞性免疫応答を惹起し得るならば(これは、当該技術分野で知られた方法、例えば、サイトカインおよび/またはケモカイン、例えば、MIP−1a、MIP−1bの存在の測定および/またはRANTESによって測定され得る)、アジュバントなしで投与され得る。HIVの場合、例えば、特異的HIV変異型ポリペプチドに対して指向される抗原特異的T細胞応答のアッセイ、例えば、CD4応答をモニターするためのリンパ球増殖アッセイおよびCTLアッセイが、本明細書に開示した組成物および方法の有効性をモニターするために使用され得る。あるいはまた、有効性は、HIV変異型ポリペプチドを発現する腫瘍での抗原刺激に対する免疫応答を測定することによりアッセイされ得る。アジュバントなしでそれ自身では細胞性免疫応答を惹起し得ないHIV変異型ポリペプチドは、本明細書に記載のアジュバントとともに投与され得る。
【0179】
本明細書において、該変異型ポリペプチドと関連しているベクターを含む組成物、例えば、患者に直接投与される、または当業者に知られたいくつかの手法を用いて樹状細胞などの担体に最初に負荷される組成物が提供される。例えば、ベクターは、凍結乾燥によって乾燥されたもの、または液体窒素もしくはドライアイスへの曝露によって凍結したものであり得る。酵母媒介体を含む組成物もまた、例えば、パン焼または醸造作業で使用される酵母で行なわれているように、ケークまたは錠剤内への酵母のパッキングにより調製され得る。また、樹状細胞内への負荷または他の型の投与前に、ベクターは、薬学的に許容され得る賦形剤、例えば、宿主細胞に耐容性のある等張性バッファーなどと混合してもよい。かかる賦形剤の例としては、水、生理食塩水、リンゲル溶液、デキストロース溶液、ハンクス溶液、および他の水性の生理学的緩衝塩溶液が挙げられる。非水性媒介体、例えば、固定油、ゴマ油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどもまた使用され得る。他の有用な製剤としては、粘度向上剤、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、グリセロールまたはデキストランを含有する懸濁剤が挙げられる。賦形剤はまた、少量の添加剤、例えば、等張性および化学安定性を向上させる物質を含有し得る。バッファーの例としては、リン酸塩バッファー、重炭酸塩バッファーおよびTrisバッファーが挙げられ、一方、保存剤の例としては、チメロサール、m−またはo−クレゾール、ホルマリンおよびベンジルアルコールが挙げられる。標準的な製剤は、液状の注射用剤または注射用の懸濁剤もしくは液剤として適当な液状物にし得る固形のいずれかであり得る。したがって、非液状製剤では、賦形剤は、例えば、デキストロース、ヒト血清アルブミンおよび/または保存剤を含み得、これらには、投与前に、滅菌水または生理食塩水が添加され得る。
【0180】
本明細書において、癌もしくは感染のリスクがあるか、または癌もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に、変異型抗原と関連するベクターを含む組成物(例えば、免疫原性組成物など)を投与することを含む方法が提供される。該方法は、一般的に、哺乳動物において免疫応答(これは、一例では細胞性免疫応答である)を惹起するために有用である。かかる方法は、薬剤(1種類または複数種)に応答して出現したか、または薬剤に応答して出現すると考えられる変異型ポリペプチドに対する細胞性免疫応答を惹起し、それにより、該薬剤に対する耐性を最小限にする、もしくは逆転する、および/または該薬剤の有効性を延長させる、および/または一部の疾患の症状もしくは感染を最小限にする、低減もしくは逆転するのに有用であると考えられる。
【0181】
したがって、本明細書において、哺乳動物において予防用および/または治療用薬剤に対する耐性を最小限にする方法であって、哺乳動物に、薬剤に応答して出現した変異型ポリペプチドと関連しているベクター、例えば、酵母媒介体を含む組成物の有効量を投与することを含む方法が提供される。また、本明細書において、疾患もしくは感染のリスクがある、または疾患もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に投与される薬剤に対する耐性を低下させるための方法であって、該薬剤は、予防的および/または治療的のいずれかで投与され、哺乳動物に有効量の組成物を該薬剤との組合せで投与することを含み、前記組成物は、
a.該変異型ポリペプチドをコードする核酸を含む細胞、ベクターもしくはウイルス;
b.変異型ポリペプチドと関連している細胞、ベクターもしくはウイルス;
c.該変異型ポリペプチド、もしくは該変異型ポリペプチドに対する免疫応答を惹起するペプチド(ミメトープ);または
d.変異型ポリペプチドをコードする核酸、あるいは該核酸に結合し得る核酸、例えばsiRNAもしくはアンチセンスRNAなど
を含み、
該有効量の該組成物は、該薬剤との組合せで投与される、
方法が提供される。
【0182】
一例において、該組成物は、以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合した酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ
の1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである。
【0183】
一例において、該組成物は、細胞性免疫応答を惹起し得るものである。他の一例では、免疫応答は体液性免疫応答である。他の一例では、免疫応答は、細胞性および体液性両方の免疫応答を含む。
【0184】
該方法の一例において、該組成物は、アジュバントを含む。また他の一例では、該組成物は、Toll様受容体のアゴニストまたはリガンドをさらに含む。他の一例では、該組成物は酵母媒介体を含む。また他の一例では、該組成物は、CpG配列を含む。他の一例では、細胞は樹状細胞である。一例において、哺乳動物はヒトである。
【0185】
さらなる一例において、変異型ポリペプチドは、HIV RT阻害剤に応答して出現することがわかっているL74V、K65Rおよび/またはM184V/Iを含むHIV変異型ポリペプチドである。他の一例では、HIV変異型ポリペプチドは、HIVプロテアーゼ阻害剤に応答して出現することがわかっているV82A/F、I54V、A71V/T、I36L、I50L、N88S、I84V、A71V、M46I、G48V、L90M、L101R/VI54V/L、A71VT、G73S、V77I、V82Aおよび/またはI84Vである。薬剤の例としては、例えば、HIV RT阻害剤、例えば、アバカビル、テノホビル、ジダノシンおよびラミブジン、エントリシタビン、スタブジンおよびザルシタビンが挙げられる。薬剤の例としては、例えば、HIVプロテアーゼ阻害剤、例えば、サクイナビル、ネルフィナビルおよびリトナビル、インジナビルおよびアタザナビルが挙げられる。他の変異型ポリペプチドおよび薬剤の例は、表IおよびIIIに示されたものである。
【0186】
また、本明細書において、該薬剤(1種類または複数種)が投与された、投与される、または投与している哺乳動物において変異型ポリペプチド特異的免疫応答を惹起するための方法における使用のためのベクター、例えば、酵母媒介体、ウイルスおよび組成物、例えば、酵母媒介体を含む酵母系組成物、例えば、免疫原性組成物が提供される。一例において、哺乳動物は、疾患のリスクがあり、変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープと関連しているベクターおよび/またはかかるベクターを含む組成物は、該薬剤の前、同時および/またはその後に予防的に投与される。他の一例では、哺乳動物は、疾患に易罹患性であり、変異型ポリペプチドと関連しているベクターおよび/またはかかるベクターを含む組成物は、該薬剤の前、同時および/またはその後に治療的に投与される。該変異型ポリペプチドと関連しているかかる酵母媒介体の投与は、例えば、治療用および/または予防用薬剤に対する哺乳動物の感受性を増大させるため;および/またはかかる薬剤の治療用有効性を増大させるため;および/またはかかる薬剤の有効寿命を延長させるために使用され得る。一例において、変異型ポリペプチドは、ベクターまたは本明細書において上記の組成物投与前に同定され、他の一例では、変異型ポリペプチドは、薬剤に応答して存在すると予測される。
【0187】
該変異型ポリペプチドと関連しているベクター(例えば、酵母媒介体など)、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む本明細書に記載の組成物、ならびに治療用または予防用薬剤は、同時または逐次のいずれかで、該薬剤(1種類または複数種)の投与の前または後のいずれかで投与され得る。同時投与には、1つの組成物で一緒の投与、あるいは、別々の組成物としての投与が包含される。一例において、該薬剤および変異型ポリペプチドまたはこれをコードする核酸は、異なる製剤に存在させ、同時および別々に投与される。該薬剤および変異型ポリペプチドまたはこれをコードする核酸が逐次投与される一例では、投与は、哺乳動物に対して施術者が適切とみなす毎日、毎週または毎月で行なわれることは認識されよう。用語「同時投与」は、本明細書で用いる場合、酵母媒介体を含む組成物および治療用薬剤が、同じ日に投与されることを意味する。変異型ポリペプチドを含む組成物または治療用薬剤のいずれかが最初に投与され得る。同時に投与される場合、酵母媒介体を含む組成物および治療用薬剤は、同じ投薬量(すなわち、酵母媒介体を含む組成物と治療用薬剤の両方を含む単位投薬量)で含まれ得るか、または別々の投薬量(例えば、酵母媒介体を含む組成物は1つの投薬形態に含まれ、治療用薬剤は別の投薬形態に含まれる)。
【0188】
一例において、該変異型ポリペプチドを含む組成物は、「追跡処置」として投与される、すなわち、該薬剤の処置後または疾患の症状の増大が観察された後に開始される。しかしながら、ベクター(例えば、酵母媒介体など)を含む組成物はまた、治療用または予防用薬剤での処置が開始される前に投与され得る。
【0189】
本明細書に記載の方法はまた、ベクターおよびポリペプチドが互いに複合体形成されていない、すなわち、ポリペプチドがベクターによって組換え発現されない、ベクター内に負荷されていない、またはベクターに物理的に結合されていないベクターおよび変異型ポリペプチドを哺乳動物に投与することを含むものであり得る。ベクターおよび変異型ポリペプチドは、被験体への投与前に製剤にて混合してもよく、別々に投与してもよい。投与プロセスは、エキソビボで、例えば、酵母媒介体を負荷した樹状細胞による導入などによって、またはインビボで行なわれ得る。エキソビボ投与は、調節工程の一部を哺乳動物外で行なうこと、例えば、本発明の組成物を、哺乳動物から取り出した細胞(樹状細胞)集団に、ベクターおよび変異型ポリペプチドが細胞内に負荷されるような条件下で投与し、該細胞を哺乳動物に戻すことをいう。このとき、ベクターを含む組成物は、任意の適当な投与様式で哺乳動物に戻され得るか、または哺乳動物に投与され得る。
【0190】
組成物、例えば、ベクターおよび変異型ポリペプチドが負荷された樹状細胞を含む組成物の投与は、例えば、全身性または粘膜経由であり得る。投与経路は、状態、使用される変異型ポリペプチドおよび/または標的細胞集団もしくは組織の型に応じて、当業者には自明である。投与方法としては、限定されないが、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、リンパ節内投与、冠動脈内投与、動脈内投与 (例えば、頚動脈内)、皮下投与、経皮送達、気管内投与、皮下投与、関節内投与、脳室内投与、吸入(例えば、エアロゾル)、頭蓋内、髄腔内、眼球内、経耳、鼻腔内、経口、肺投与、カテーテルの挿入(impregnation)、および組織内への直接注射が挙げられる。投与経路としては、静脈内、腹腔内、皮下、皮内、リンパ節内、筋肉内、経皮、吸入、鼻腔内、経口、眼球内、関節内、頭蓋内および髄腔内が挙げられる。非経口送達としては、皮内、筋肉内、腹腔内、胸腔内、肺内、静脈内、皮下、動脈カテーテルおよび静脈(venal)カテーテル経路が挙げられ得る。経耳送達としては、点耳薬が挙げられ得、鼻腔内送達としては、点鼻薬または鼻腔内注射が挙げられ得、眼球内送達としては、点眼薬が挙げられ得る。エアロゾル(吸入)送達はまた、当該技術分野において標準的な方法を用いて行なわれ得る(例えば、Striblingら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 189:11277−11281、1992を参照のこと、これは、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる)。例えば、一例では、酵母媒介体を含む組成物は、適当な吸入デバイスまたはネブライザーを用いて噴霧送達するのに適した組成物に製剤化され得る。経口送達は、口から摂取され得る固形および液状物を含むものであり得、粘膜免疫の発現に有用であり、酵母媒介体を含む組成物が、経口送達用に例えば錠剤またはカプセル剤として容易に調製され得、ならびに食品および飲料製品に製剤化され得るため有用である。粘膜免疫を調節する他の投与経路は、癌もしくは感染性疾患の処置に有用である。かかる経路としては、気管支経由、皮内、筋肉内、鼻腔内、他の吸入系、直腸系、皮下、経表面的、経皮、経膣および経尿道経路が挙げられる。送達経路は、酵母媒介体を含む組成物を呼吸器系に送達する任意の経路、例えば、限定されないが、吸入、鼻腔内、気管内などである。
【0191】
疾患のリスクがあるか、または疾患に易罹患性である哺乳動物に対する本明細書に記載の細胞、ベクター(例えば、酵母媒介体など)もしくはウイルス、または該細胞、ベクター、ウイルスもしくは酵母媒介体を含む組成物の有効投与は、該哺乳動物が該疾患から保護されていることを要しない。有効用量パラメータは、疾患の症状を最小限にするかもしくは低減する、または疾患の進行を最小限にするのに適した当該技術分野で標準的な方法を用いて決定され得る。かかる方法としては、例えば、生存率、副作用(すなわち、毒性)および疾患の進行または寛解の測定が挙げられる。
【0192】
酵母媒介体を用いる使用では、適当な単回用量サイズは、適当な時間枠にわたって1回以上投与したとき、哺乳動物において、免疫応答(一例では細胞性免疫応答であり、抗原特異的免疫応答であり得る)を惹起し得る用量である。当業者には理解されるように、免疫応答を惹起するのに必要とされる組成物の用量は、いくつかの要素に依存する。当業者なら、哺乳動物の体格および投与経路に基づいて、投与に適切な単回用量サイズを容易に決定することができよう。
【0193】
該変異型ポリペプチドと関連しているベクターを含む組成物の適当な単回用量は、適当な時間枠にわたって1回以上投与したとき、ベクターおよび/または変異型ポリペプチドを、所与の細胞型、組織または患者の身体の一領域に、免疫応答を惹起するのに有効な量で効率的に提供し得る用量である。酵母の場合、本発明の酵母媒介体の単回用量は、約0.004YU(4×10細胞)〜約100YU(1×10細胞)、例えば、0.1YU(1×10細胞)〜約100YU(1×10細胞)/用量(すなわち、/生物体)、例えば、0.1×10細胞単位の任意の間の用量(すなわち、1.1×10、1.2×10、1.3×10など)である。この用量範囲は、任意の体格の任意の生物体、例えば、マウス、サル、ヒトなどに効率的に使用され得る。該組成物が、酵母媒介体および変異型抗原を樹状細胞内に負荷することにより投与される場合、本明細書に記載の組成物の単回用量は、約0.5×10〜約40×10樹状細胞/哺乳動物/投与である。他の一例では、単回用量は、約1×10〜約20×10樹状細胞/個体であり、また他の一例では、約1×10〜約10×10樹状細胞/哺乳動物である。「追加免疫」用量の酵母媒介体を含む本明細書に記載の組成物は、変異型抗原に対する免疫応答が減弱した場合、または特定の変異型ポリペプチドに対して免疫応答を提供するか、もしくは記憶応答を誘導するために必要に応じて投与され得る。追加免疫用量は、最初の投与の約1週間から数週間後に投与され得る。一例では、投与計画は、約1×10〜約1×10酵母細胞当量の組成物が、毎週3ヶ月間から毎週1ヶ月間(5回用量)投与の後、毎月投与するものである。
【0194】
一例において、本明細書に記載の樹状細胞(酵母媒介体を含む)の組成物は、約0.5×10〜約40×10樹状細胞/単回用量/患者を含み、別の一例では、約1×10〜約10×10樹状細胞/単回用量/患者を含む。これらの用量は、典型的なヒトまたは他の霊長類に与えられる。他の動物に適した用量は、当業者によって決定され得る。例えば、マウスでは、適当な用量は、約1×10〜約3×10/単回用量/マウスである。他の用量は当業者によって決定され得、充分、当業者の能力の範囲内である。哺乳動物に投与するのに有効な組成物は、約0.5×10〜約40×10樹状細胞/単回用量/哺乳動物個体を含む。
【0195】
当業者にとって、哺乳動物への投与回数は、酵母媒介体の性質および投与に対する哺乳動物の応答に依存するということは自明であろう。したがって、適当な投与回数が、所望の目的に必要とされる任意の数を含むことは本発明の範囲内である。例えば、反復投与により、標的細胞の攻撃に利用可能なT細胞の数が増加し得る。投薬量および投与頻度は、当業者には自明のように、投与過程で調整され得る。
キット
本明細書において、本明細書に記載の任意の方法を行なうためのキットが提供される。本発明のキットは、少なくとも1種類の酵母媒介体、ならびに標的化された治療用および/または予防用薬物薬剤(1種類または複数種)の投与に応答した特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである少なくとも1種類の変異型ポリペプチドを含むものであり得る。キットは、さらに、治療用および/または予防用薬物薬剤を含むものであってもよい。一例において、薬物薬剤は癌細胞に標的化される。一例において、薬物薬剤は、ウイルスまたはウイルスに感染した細胞に標的化される。キットは、さらに、本明細書に記載の方法を行なうための使用説明書を備えていてもよい。
【0196】
単一の成分を含むキットでは、一般的に、該成分は、容器(例えば、バイアル、アンプルまたは他の適当な保存容器)内に封入されている。同様に、1種類より多くの成分を含むキットでも、試薬は容器内に存在させ得る(別々または混合物で)。
【0197】
本発明を実施するためのキットの使用に関する使用説明書には、一般的に、本発明の方法を行なうために、キットの内容物をどのように使用するかが記載される。本発明のキット内に提供される使用説明書は、典型的には、ラベルまたは添付文書(例えば、キット内に含まれた紙)における書面の使用説明書であるが、機械可読使用説明書(例えば、磁気もしくは光学保存ディスク上に担持された使用説明書)もまた許容され得る。
【0198】
本発明は、ヒト患者をポックスウイルス感染に対して免疫処置するためのキットを含み、該キットは、ワクシニアウイルス可溶性切断型外被タンパク質をコードする単離された核酸にコードされた免疫原性量の可溶性切断型ポックスウイルス外被タンパク質を含む。
【0199】
前述の本発明は、ある程度詳細に実例および一例として、理解の明確化の目的で記載したが、当業者には、一定の変更および修正が行なわれ得ることが自明であろう。したがって、詳細説明および実施例は、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
i)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;
ii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体;
iii)少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに結合した酵母媒介体;
iv)樹状細胞内に細胞内負荷された少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体;または
v)樹状細胞内に細胞内負荷された酵母媒介体および少なくとも1種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープ
の1種類以上を含み、
該変異型ポリペプチドは、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである、
組成物。
【請求項2】
前記酵母媒介体が、完全体の酵母、酵母スフェロプラスト、酵母細胞質体、酵母ゴーストもしくは細胞分画酵母膜抽出物またはその画分である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記酵母媒介体が、Saccharomyces、Schizosaccharomyces、Kluveromyces、Hansenula、CandidaおよびPichiaからなる群より選択される酵母から得られる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記酵母媒介体がSaccharomyces cerevisiaeから得られる、請求項1〜3いずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープが2つ以上のエピトープを含む、請求項1〜4いずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープが、1つ以上の変異を含む2つ以上のエピトープを含む、請求項1〜5いずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープが、RNAまたはDNAウイルスにコードされている、請求項1〜6いずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープが、レトロウイルス、フラビウイルス、レオウイルス、ピコルナウイルス、コロナウイルス、フィロウイルス、ラブドウイルス、ブンヤウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、アレナウイルス、カリシウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルスまたはパポバウイルスにコードされている、請求項1〜7いずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープが、HIV、HBVまたはHCVにコードされている、請求項1〜8いずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記薬剤が、アルタザナビル、サクイナビル、ラミブジン、ジドノシン、エンブリシタビン、ジドブジン、スタブジン、ザルシタビン、アバカビル、テノホビル、ネビラピン、デラビルジン、エファビレンツ、インジナビル、リトナビル、ネルフィナビル、アンプレナビル、ロピナビル、エンフビルチド、エンテカビル、アデホビル、ファムシクロビル、ガンシクロビル、インターフェロン、リバビリン、サイモシン−α、キナーゼ阻害剤、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ウイルスプロテアーゼ阻害剤、ウイルス侵入/融合阻害剤、ウイルスプロテアーゼ阻害剤、ヌクレオシド類縁体またはその組合せである、請求項1〜9いずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープがHIVにコードされている、請求項1〜10いずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープがHIVにコードされており、少なくとも1つの特異的変異が、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、ヌクレオシド類縁体、プロテアーゼ阻害剤、侵入/融合阻害剤およびその組合せからなる群より選択される薬剤の投与に応答して出現したものである、請求項1〜11いずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープがHCVにコードされている、請求項1〜10いずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープがHCVにコードされており、少なくとも1つの特異的変異が、ウイルスポリメラーゼ阻害剤、非ヌクレオシドウイルスポリメラーゼ阻害剤、ヌクレオシド類縁体、プロテアーゼ阻害剤、インターフェロンおよびその組合せからなる群より選択される薬剤の投与に応答して出現したものである、請求項1〜10または13いずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープがHBVにコードされている、請求項1〜10いずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープがHBVにコードされており、少なくとも1つの特異的変異が、ヌクレオシドウイルスポリメラーゼ阻害剤、非ヌクレオシドウイルスポリメラーゼ阻害剤、ヌクレオシド類縁体、インターフェロン−α、サイモシン−αおよびその組合せからなる群より選択される薬剤の投与に応答して出現したものである、請求項1〜10または15いずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープが、癌遺伝子にコードされているか、腫瘍関連抗原であるか、または癌細胞によって発現される、請求項1〜6いずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープが、MAGE、MAGE3、MAGEA6、MAGEA10、NY−ESO−1、gp100、チロシナーゼ、EGFR、FGFR、PSA、PSMA、VEGF、PDGFR、Kit、PMSA、CEA、Her2/neu、Muc−1、hTERT、Mart1、TRP−1、TRP−2、Bcr−Abl、p53、p73、Ras、PTENSrc、p38、BRAF、大腸腺腫性ポリポーシス、myc、フォン・ヒッペル・リンドウ(von Hippel landau)タンパク質、Rb−1、Rb−2、BRAC1、BRAC2、アンドロゲン受容体、Smad4、MDR1またはFlt3である、請求項1〜6または17いずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープが、Bcr−Abl、Kit、PDGFR、EGFR、p38、Src、FGFRまたはFlt3である、請求項1〜6、17または18いずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープが、イマチニブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、キナーゼ阻害剤、SB203580、チロシンキナーゼ阻害剤またはその組合せからなる群より選択される薬剤の投与に応答して出現した少なくとも1つの特異的変異を含む、請求項1〜6または17〜19いずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
2種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープを含む、請求項1〜20いずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
3種類の変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープを含む、請求項1〜20いずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
薬学的に許容され得る賦形剤をさらに含む、請求項1〜22いずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
少なくとも1種類のアジュバントをさらに含む、請求項1〜23いずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記アジュバントが、Toll様受容体アゴニスト、ジヌクレオチド CpG配列、単鎖もしくは二本鎖RNA、フロイントアジュバント、脂質部分、マンナン、グルカン、アルミニウム系の塩、カルシウム系の塩、シリカ、ポリヌクレオチド、トキソイド、血清タンパク質、ウイルス外被タンパク質、γ−インターフェロン、コポリマー、Ribiアジュバントまたはサポニンとその誘導体である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
哺乳動物において変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに対する免疫応答を惹起するのに使用するための請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物であって、該組成物は、該組成物の有効量で該哺乳動物に投与されるものである、組成物。
【請求項27】
哺乳動物において変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに対する免疫応答を惹起するのに使用するための請求項26に記載の組成物であって、該組成物は、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで、有効量で該哺乳動物に投与されるものである、組成物。
【請求項28】
前記免疫応答が細胞性免疫応答である、請求項26または27に記載の組成物。
【請求項29】
前記免疫応答が体液性免疫応答である、請求項26または27に記載の組成物。
【請求項30】
前記免疫応答が細胞性免疫応答および体液性免疫応答である、請求項26または27に記載の組成物。
【請求項31】
哺乳動物において変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに対する免疫応答を惹起するのに使用するための請求項26〜30いずれか1項に記載の組成物であって、該変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープが、癌遺伝子にコードされているか、腫瘍関連抗原であるか、または癌細胞によって発現されるポリペプチドである、組成物。
【請求項32】
哺乳動物において変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに対する免疫応答を惹起するのに使用するための請求項26〜30いずれか1項に記載の組成物であって、該変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープがHIV、HBVまたはHCVにコードされている、組成物。
【請求項33】
哺乳動物における疾患の症状の改善における使用のための請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物であって、該組成物は、該哺乳動物に有効量で投与されるものであり、該疾患は、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答して出現した変異型ポリペプチドと関連している、組成物
【請求項34】
哺乳動物における疾患の症状の改善における使用のための請求項33に記載の組成物であって、該疾患は癌である、組成物。
【請求項35】
哺乳動物における疾患の症状の改善における使用のための請求項33に記載の組成物であって、該疾患はHIV、HBVまたはHCVによる感染である、組成物。
【請求項36】
哺乳動物における疾患の症状の改善における使用のための請求項33〜35いずれか1項に記載の組成物であって、該組成物は、、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで、該哺乳動物に有効量で投与されるものである、組成物。
【請求項37】
疾患もしくは感染のリスクがある、または疾患もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に投与される薬剤に対する耐性を低下させるのに使用するための請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物であって、該組成物は、該哺乳動物に有効量で投与されるものであり、該疾患もしくは感染が、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答して出現した変異型ポリペプチドと関連している、組成物。
【請求項38】
疾患もしくは感染のリスクがある、または疾患もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に投与される薬剤に対する耐性を低下させるのに使用するための請求項37に記載の組成物であって、該疾患が癌である、組成物。
【請求項39】
疾患もしくは感染のリスクがある、または疾患もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に投与される薬剤に対する耐性を低下させるのに使用するための請求項37に記載の組成物であって、該疾患がHIV、HBVまたはHCVによる感染である、組成物。
【請求項40】
疾患もしくは感染のリスクがある、または疾患もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に投与される薬剤に対する耐性を低下させるのに使用するための請求項37〜39いずれか1項に記載の組成物であって、該組成物は、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで、該哺乳動物に有効量で投与されるものである、組成物。
【請求項41】
前記哺乳動物がヒトである、請求項26〜40いずれか1項に記載の組成物。
【請求項42】
哺乳動物において変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに対する免疫応答を惹起するための方法であって、該哺乳動物に有効量の請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物の投与することを含む、方法。
【請求項43】
有効量の請求項42に記載の組成物を、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで投与することを含む、哺乳動物において変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに対する免疫応答を惹起するための方法。
【請求項44】
前記免疫応答が細胞性免疫応答である、請求項42または43に記載の組成物。
【請求項45】
前記免疫応答が体液性免疫応答である、請求項42または43に記載の組成物。
【請求項46】
前記免疫応答が細胞性免疫応答および体液性免疫応答である、請求項42または43に記載の組成物。
【請求項47】
哺乳動物において疾患の症状を改善するための方法であって、該哺乳動物に有効量の請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物を投与することを含み、該疾患が、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答して出現した変異型ポリペプチドと関連している、方法。
【請求項48】
哺乳動物に有効量の請求項47に記載の組成物を、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで投与することを含む、哺乳動物において疾患の症状を改善するための方法。
【請求項49】
、疾患もしくは感染のリスクがある、または疾患もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に投与される薬剤に対する耐性を低下させるための方法であって、該哺乳動物に有効量の請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物を投与することを含み、該疾患もしくは感染が、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答して出現した変異型ポリペプチドと関連している、方法。
【請求項50】
哺乳動物に有効量の請求項49に記載の組成物を、標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せで投与することを含む、疾患もしくは感染のリスクがある、または疾患もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に投与される薬剤に対する耐性を低下させるための方法。
【請求項51】
前記哺乳動物がヒトである、請求項42〜50いずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
医薬の調製における、請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項53】
哺乳動物において変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに対する免疫応答を惹起するのに使用するための医薬の調製における、請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項54】
標的化される治療用および/または予防用薬剤との組合せでの、哺乳動物において変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに対する免疫応答を惹起するのに使用するための医薬の調製における、請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項55】
標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答して出現した変異型ポリペプチドと関連している疾患の処置における使用のための医薬の調製における、請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項56】
標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答して出現した変異型ポリペプチドと関連している疾患の症状の改善における使用のための医薬の調製における、請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項57】
疾患もしくは感染が、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答して出現した変異型ポリペプチドと関連しているものであって、該疾患もしくは感染のリスクがある、または該疾患もしくは感染に易罹患性である哺乳動物に投与される薬剤に対する耐性を低下させるのに使用するための医薬の調製における、請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項58】
請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物を含む、哺乳動物において変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに対する免疫応答を惹起するためのキットであって、該変異型ポリペプチドが、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものである、キット。
【請求項59】
哺乳動物において変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープに対する免疫応答を惹起するためのキットであって、該変異型ポリペプチドが、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものであり、酵母媒介体および少なくとも1種類の該変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープを含む、キット。
【請求項60】
標的化される治療用および/または予防用薬剤をさらに含む、請求項58または59に記載のキット。
【請求項61】
使用のための説明書をさらに備える、請求項58〜60に記載のキット。
【請求項62】
変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープをコードする核酸を含む酵母媒介体の調製方法であって、該変異型ポリペプチドが、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものであり、該核酸が、拡散、能動輸送、超音波処理、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着およびプロトプラスト融合からなる群より選択される手法によって該酵母媒介体内にトランスフェクトされる、方法。
【請求項63】
変異型ポリペプチド、変異を含むその断片もしくはミメトープを含む酵母媒介体の調製方法であって、該変異型ポリペプチドが、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答した少なくとも1つの特異的変異を伴って出現することがわかっているか、または出現したものであり、該変異型ポリペプチド、変異を含むその断片またはミメトープが、拡散、能動輸送、リポソーム融合、超音波処理、エレクトロポレーション、食作用、リポフェクション、凍結/解凍サイクル、化学的架橋、生物学的連結または混合からなる群より選択される手法によって該酵母媒介体内に配置させるか、または該酵母媒介体に結合される、方法。
【請求項64】
前記酵母媒介体が樹状細胞またはマクロファージ内に細胞内負荷されている、請求項62または63に記載の方法。
【請求項65】
前記酵母媒介体が樹状細胞内に細胞内負荷されている、請求項62〜64いずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
請求項1〜25いずれか1項に記載の組成物を含む医薬であって、標的化される治療用および/または予防用薬剤の投与に応答して出現した変異型ポリペプチドと関連する疾患の処置のために提供される医薬の調製方法。

【公表番号】特表2009−500454(P2009−500454A)
【公表日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521492(P2008−521492)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/026710
【国際公開番号】WO2007/008780
【国際公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(508010905)グローブイミューン, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】