説明

標的改変によるホモ接合生物

ホモ接合改変生物ならびにこれらの生物の作成および使用方法が本明細書で開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2009年8月11日出願の米国特許仮出願第61/273,928号の利益を主張する。この発明の開示は参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
米国政府によって支援された研究の下での本発明に対する権利に対する陳述
適用されない。
【0003】
技術分野
本発明は、1つまたは複数の内在性遺伝子の標的改変に関しホモ接合である生物に関する。さらに具体的には、本発明は、遺伝子の両対立遺伝子が破壊されているが、その破壊遺伝子座に外因性の配列を含まないホモ接合ノックアウト生物(例えば、植物または動物)に関する。また、本発明は、遺伝子の両対立遺伝子が導入遺伝子の挿入により改変されている生物(例えば、植物または動物)に関し、その導入遺伝子はレポーター(例えば、選択可能マーカー)をコードした配列が欠失しているものである。
【背景技術】
【0004】
ホモ接合標的遺伝子改変を有する生物(例えば、植物および動物)は、幅広い種類の農業、医薬品およびバイオテクノロジーへの適用に有用である。これらの生物は、従来、改変対象に選んだ遺伝子の所望の配列(ドナー)の相同組換えの誘導により産生されてきた。しかし、ドナーDNAを標的遺伝子座に組み込ませる細胞を選択するために、陽性および陰性選択マーカーの両方を標的ベクターに入れなければならない。例えば、米国特許第5,464,764号を参照。選択された細胞は、ヘテロ接合体を生成し、これは遺伝子改変のためのホモ接合生物を得るために交差されなければならない。プロセスを通して、選択マーカーは、生物のゲノム中に組み込まれたまま残り、生じた改変ホモ接合体は、改変遺伝子および外因性(例えば、マーカー)配列の両方を含む。
【0005】
最近、ジンクフィンガーヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼを含む標的部位に特異的に結合するように操作されたI−SceI等のヌクレアーゼが種々の異なる種のゲノム改変に使われ、成功している。例えば、米国特許公報20030232410;20050208489;20050026157;20050064474;20060188987;20060063231;2008/0182332;2009/0111188、および国際公開WO 07/014275を参照。全ての目的において、これらの開示は参照により、その全体が本明細書に組み込まれる。これらのZFNは、標的ヌクレオチド配列の二重鎖切断(DSB)に使用可能で、これにより相同組換えを介したドナー核酸の標的遺伝子座(標的組み込み)への導入頻度を1000倍を超えて増加させる。さらに、非相同末端結合(NHEJ)による部位特異的DSBの不正確な修復により標的遺伝子破壊が生ずる可能性もある。
【0006】
それにも拘わらず、非ヌクレアーゼによる方法のように、多くの生物のヌクレアーゼ媒介改変を特定するために、選択マーカーまたはレポーター遺伝子を含む外因性のDNAもまた、選択遺伝子座を標的としている。例えば、Shukla et al.(2009)Nature 459(7245):437−441;米国特許公報第2008/0182332号および2009/0111188号を参照。レポーターの標的組み込みは多くの用途で改変の特定を可能とするが、この技術は、余計な挿入外因性核酸配列をゲノム中に残すため、必ずしも望ましいものではない。
【0007】
従って、改変のための標的遺伝子座(複数遺伝子座)に外因性の挿入配列を含まないホモ接合KO生物および選択可能マーカー等のレポーターをコードした配列を含まないホモ接合遺伝子導入生物を含む、所望の遺伝子座で改変されたホモ接合生物を産生するための組成物と方法に対する必要性は残されている。
【発明の概要】
【0008】
所望の遺伝子座での改変を含むホモ接合生物、ならびにこれらの生物を産生するための方法およびシステムが本明細書に記載されている。改変生物には、改変のための標的遺伝子座(複数遺伝子座)で挿入外因性配列を含まないホモ接合KO生物およびレポーターをコードした配列(例えば、選択可能マーカー)を含まないホモ接合遺伝子導入生物が含まれる。
【0009】
一態様では、遺伝子座の両対立遺伝子改変されている(例えば、破壊されている)が、しかし、その改変生物が、改変遺伝子座に外因性配列を含まない少なくとも1つの遺伝子座を含む改変生物が本明細書で提供される。他の実施形態では、本明細書記載の生物は、破壊されていない(ノックアウトされた)任意の遺伝子座に1つまたは複数の導入遺伝子(外因性配列)を含んでもよい。
【0010】
別の態様では、遺伝子座の両対立遺伝子は、選別または選択可能マーカー等のレポーターを含まない導入遺伝子を含む少なくとも1つの遺伝子座を含む改変生物が本明細書で提供される。さらなる態様では、遺伝子座の全ての対立遺伝子(例えば、三または四倍体生物中の)が選別または選択可能マーカー等のレポーターを含まない導入遺伝子を含む少なくとも1つの遺伝子座を含む改変生物が本明細書で提供される。
【0011】
本明細書記載のいずれの生物も、2つ以上の二対立遺伝子(または複対立遺伝子)改変(例えば、破壊または遺伝子導入)を含んでもよい。さらに、生物は、例えば、真核生物(例えば、植物または哺乳動物、ラット、マウス、または魚、等の動物)であってもよい。
【0012】
また他の態様では、外因性配列を含まないホモ接合(二対立遺伝子)ノックアウト生物を産生する方法が本明細書で提供される。この方法は、外因性配列のゲノムの選択遺伝子座への標的組み込みを媒介するヌクレアーゼを使って外因性の配列(例えば、レポーター)を細胞中に導入し、標的遺伝子座(単一対立遺伝子TI細胞)の1つの対立遺伝子へ導入された細胞を特定し、他の対立遺伝子(TI/NHEJクローン)でのNHEJ欠失を含む単一対立遺伝子TI細胞を特定し、TI/NHEJクローンを生殖成熟まで成長させ、TI/NHEJ生物を相互に交差させ(または植物の場合は、「生物に自家受粉」もさせる)、さらに二対立遺伝子NHEJ改変を示す子孫を特定し、それにより標的遺伝子座で外因性配列を欠損した二対立遺伝子ノックアウト生物を産生することを含む。さらに別の態様では、レポーター(例えば、選択可能マーカー)をコードした配列が欠如した所望の導入遺伝子配列を含むホモ接合(二対立遺伝子)生物を産生する方法が本明細書で提供され、この方法は、レポーター外因性配列の、ゲノムの選択遺伝子座への組み込みを媒介するヌクレアーゼを使って外因性のレポーター配列を細胞中に導入し、ヌクレアーゼがゲノムの選択遺伝子座への導入遺伝子配列の標的組み込みを媒介する細胞中に所望の導入遺伝子配列を導入し、外因性のレポーター配列が標的遺伝子座(単一対立遺伝子レポーターTI細胞)の1つの対立遺伝子中に導入されている細胞を特定し、他の対立遺伝子(レポーターTI/導入遺伝子クローン)への導入遺伝子挿入を含む単一対立遺伝子レポーターTI細胞を特定し、レポーターTI/導入遺伝子クローンを生殖成熟にまで成長させ、レポーターTI/導入遺伝子生物を相互に交差させ(または植物の場合は、生物に「自家受粉」もさせる)、さらに二対立遺伝子導入遺伝子挿入を示す子孫を特定し、それにより標的遺伝子座でレポーター配列を欠損した所望の導入遺伝子を含む二対立遺伝子生物を産生することを含む。
【0013】
特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、1つまたは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む。他の実施形態では、ヌクレアーゼは、ホーミングエンドヌクレアーゼまたはオメガヌクレアーゼ、またはTALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合体(“TALEN”)を含む。本明細書に記載のいずれかの実施形態では、外因性配列(例えば、外因性のレポーター配列)および導入遺伝子は、ヌクレアーゼを使って同時または順次導入されてもよい。一部の態様では、外因性配列は、選択可能マーカー(例えば、植物用除草剤耐性遺伝子)等レポーター遺伝子のまたは選別マーカー(例えば、蛍光タンパク質)を含む。本明細書記載のいずれの方法も、ホモ接合KOであるかまたは複数の遺伝子座にホモ接合導入遺伝子挿入を含む生物を繰り返し産生することもできる。本明細書記載のいずれの方法も2つを超える対立遺伝子を含む倍数体生物、例えば、三または四倍体植物、に適用可能である(例えば、ステップを繰り返すことにより)ことは明らかであろう。
【0014】
別の態様では、本発明は、挿入レポーター(例えば、選別または選択)配列を含まないホモ接合標的遺伝子改変を有する生物を産生するために有用なキットを提供する。このキットは、典型的には、標的部位(改変のための選択遺伝子座)に結合している1つまたは複数のヌクレアーゼ(またはヌクレアーゼをコードしたポリヌクレオチド)、ヌクレアーゼの標的部位を含む任意選択の細胞、標的組み込みのための外因性配列、標的部位に対する相同配列を含む任意選択のドナー導入遺伝子、および(i)ヌクレアーゼおよび外因性配列を細胞への導入;(ii)外因性配列が標的遺伝子座の対立遺伝子中に挿入された細胞の特定;(iii)外因性レポーター配列の単一対立遺伝子標的組み込みを有する細胞および遺伝子座(レポーターTI/改変細胞)の他の対立遺伝子での改変の特定;(iv)選択細胞の生殖成熟生物への成長/発達;(v)レポーターTI/改変ヘテロ接合生物の交差;(vi)標的遺伝子改変に関し二対立遺伝子であるレポーターTI/改変交差種の子孫の特定、のための使用説明書が含まれる。所望により、倍数体生物でこれらのステップを繰り返して、全ての対立遺伝子を改変してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】トウモロコシ由来のZFN−TI−改変IPK1染色分体の非TI対立遺伝子の配列解析を示す。下線の塩基対は、ゲノム改変に使ったZFN対に対する結合部位を示す。「:」は、欠失塩基を示す。野性型配列は、1行目に示し、複数の配列表示の配列決定された非TI対立遺伝子イベントは、以下に示されている。
【図2】マウスヒストンH3.3B遺伝子の3’不飽和領域への蛍光タンパク質(強化黄色蛍光タンパク質(EYFP))導入模式図である。最上行は、マウスゲノムの染色体11上のH3.3B遺伝子の模式図であり、H3.3B−特異的ZFNのための遺伝子配列上の標的部位を示す。2行目は、EYFP配列に結合したH3.3B遺伝子を含むドナーヌクレオチド(「標的構築物」)で、EYFPは3’非翻訳領域の5’末端に挿入されている。最下行は、マウスゲノムのH3.3B遺伝子座へのドナーヌクレオチドの挿入を示す。
【図3】マウスES細胞へのEYFP導入遺伝子のヘテロ接合組み込みを示すFACSおよびサザンブロット分析の結果を示す。図3Aは、H3.3B遺伝子座中の挿入EYFP遺伝子配列が欠如したES細胞のFACS結果(トップパネル)およびH3.3B−EYFP挿入を受けた細胞に対する結果を示す。図3Bは、挿入H3.3B−EYFP配列を有する細胞のゲノムDNAから得られたサザンブロットを野生型細胞と比較して示したものである。
【図4】H3.3B−EYFP/ヘテロ接合体中のNHEJを示す19非レポーター対立遺伝子の配列である。下線の塩基対は、改変に使用したZFN対のための結合部位を示す。「−」は、欠失した塩基または挿入含有クローンと整列させるための配列中の間隙を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
標的遺伝子座のいずれかの対立遺伝子に追加の遺伝材料を含まないノックアウト(KO)生物を含み、また、選択可能マーカー等のレポーターをコードした配列が欠如している目的の導入遺伝子を含むノックイン生物を含むホモ接合改変生物が本明細書に記載されている。また、これらの改変生物を産生する方法が記載されている。特に、生物は、通常、両対立遺伝子で遺伝子機能を変える改変を有する。これらの生物は、目的の生物由来の細胞を提供し、ヌクレアーゼを使用して外因性レポーター配列(例えば、選別または選択可能マーカー)を標的組み込み(TI)を介して細胞中の選択遺伝子座に対立遺伝子に挿入し、外因性レポーター配列が選択遺伝子座で対立遺伝子中に挿入された細胞を特定し、遺伝子座の第2の対立遺伝子での改変イベントのための単一対立遺伝子レポーターTIクローンを選別して1つのレポーターTI対立遺伝子を有する細胞を特定し、また、他の対立遺伝子がNHEJ(レポーターTI/NHEJ)により改変されるかまたは他の対立遺伝子が非レポーターマーカー導入遺伝子(レポーターTI/改変クローン)を含む細胞を特定し、レポーターTI/改変クローンを生殖成熟生物まで成長させ、レポーターTI/改変生物を交差させ、さらに二対立遺伝子ノックアウト(NHEJ/NHEJ)または二対立遺伝子非レポーターマーカーノックイン(非レポーターTI/非レポーターマーカーTI)生物である交差種の子孫を特定することにより産生される。
【0017】
概論
本明細書に開示の方法の実施、ならびに組成物の調製および使用は、他に別段の指示がなければ、分子生物学、生化学、クロマチン構造および分析、計算化学、細胞培養、組換えDNAおよび当業者の技能範囲内の関連分野における通常の技術を採用する。これらの技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Sambrook et al.「MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL(分子クローニング:実験マニュアル)」、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989および第3版、2001;Ausubel et al.、「CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(分子生物学の最新プロトコル)」、John Wiley & Sons、New York、1987および定期的改訂版;「シリーズ:METHODS IN ENZYMOLOGY(酵素学における方法)」、Academic Press、San Diego;Wolffe、「CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION(クロマチン構造と機能)」、第3版、Academic Press、San Diego、1998;「METHODS IN ENZYMOLOGY(酵素学における方法)」、Vol.304、「Chromatin(クロマチン)」(P.M.WassarmanandA.P.Wolffe編)、Academic Press、San Diego、1999;および「METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY(分子生物学における方法)」、Vol.119、「Chromatin Protocols(クロマチンプロトコル)」(P.B.Becker、ed.)Humana Press、Totowa、1999、を参照のこと。
【0018】
定義
用語「核酸」、「ポリヌクレオチド」、および「オリゴヌクレオチド」は、同義に用いられ、直鎖または環状配置で、単鎖または二重鎖型のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的においては、これらの用語は、ポリマーの長さに関して制限すると解釈されるべきではない。この用語は、既知の天然ヌクレオチド類似体、ならびに塩基、糖質および/またはリン酸塩成分(例えば、ホスホロチオエート骨格)中で改変されているヌクレオチドを包含することができる。通常、特定のヌクレオチド類似体は、同じ塩基対形成特異性を有する;すなわちAの類似体はTと塩基対を作る。
【0019】
用語の「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、同義に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。この用語はまた、1つまたは複数のアミノ酸が対応する天然アミノ酸の化学的類似体または改変誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用できる。
【0020】
「結合」は、高分子間の(例えば、タンパク質と核酸の間の)配列特異的、非共有結合性相互作用を指す。全体としての相互作用が配列特異的である限りは、結合相互作用の全ての成分が必ずしも配列特異的である必要はない(例えば、DNA骨格中でリン酸塩残基との接触)。このような相互作用は通常、10-6-1以下の解離定数(Kd)を特徴とする。「親和性」は、結合の強さを指す:結合親和性の増加は、低いKdに相関する。
【0021】
「結合タンパク質」は、結合非共有結合で別の分子に結合できるタンパク質である。結合タンパク質は、例えば、DNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)に結合可能である。タンパク質−結合タンパク質の場合には、自身に結合でき(ホモダイマー、ホモトリマー、等を形成)および/またはそれは異なるタンパク質または複数タンパク質の1つまたは複数の分子に結合可能である。結合タンパク質は、2つ以上のタイプの結合活性を持つことができる。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合およびタンパク質結合活性を有する。
【0022】
「TALエフェクターDNA結合ドメイン」は、タンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインであり、1つまたは複数の直列反復ドメインを介して配列特異的な方式でDNAと相互作用する。
【0023】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、タンパク質、またはより大きなタンパク質内のドメインであり、1つまたは複数のジンクフィンガーを介して配列特異的な方式でDNAと結合しており、構造が亜鉛イオンの配位を介して安定化されている結合ドメイン内のアミノ酸配列領域である。この用語のジンクフィンガーDNA結合タンパク質は、ジンクフィンガータンパク質またはZFPとして略されることが多い。
【0024】
ジンクフィンガー結合ドメイン(例えば、認識ヘリックス領域)は、「操作されて」所定のヌクレオチド配列に結合することができる。ジンクフィンガーの操作領域は、通常、認識ヘリックスで、特に、−1〜+6と番号の付いたアルファヘリカル部である。操作認識ヘリックスの骨格配列は当技術分野で既知である。例えば、Miller et al.(2007)Nat Biotechnol 25、778−785、を参照のこと。ジンクフィンガータンパク質を操作する方法の非制限的な例は、設計と選択である。設計ジンクフィンガータンパク質は、天然には存在しないタンパク質であり、その設計/組成は、主に合理的な基準から得られる。設計の合理的な基準には、置換則の適用および実在するZFP設計および結合データを蓄積したデータベース用の処理情報コンピュータアルゴリズムが含まれる。例えば、米国特許第6,140,081号;6,453,242号;および6,534,261号を参照;また、国際公開WO98/53058;WO98/53059;WO98/53060;WO02/016536およびWO03/016496を参照のこと。
【0025】
「選択」ジンクフィンガータンパク質は、天然にはないタンパク質で、その生成は主にファージディスプレイ、相互作用捕捉またはハイブリッド選択、等の経験的手法による。例えば、米国特許第5,789,538号;5,925,523号;6,007,988号;6,013,453号;6,200,759号;および国際公開第95/19431;WO96/06166;WO98/53057;WO98/54311;WO00/27878;WO01/60970;WO01/88197およびWO02/099084、を参照のこと。
【0026】
用語の「配列」は、任意の長さのヌクレオチド配列を指し、DNAまたはRNAでも;直鎖、環状、または分岐状であってもよく、さらに単鎖または二重鎖であってもよい。用語の「ドナー配列」は、ゲノムに挿入されたヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さでよく、例えば、2〜10,000のヌクレオチド長さ(またはその間の任意の整数値またはそれを超える整数値、好ましくは、約100〜1,000のヌクレオチド長さ(またはその間の任意の整数)、さらに好ましくは、約200〜500のヌクレオチド長さである。
【0027】
「同一でない相同配列」は、第2の配列とある程度の配列同一性を共有するが、その配列は第2の配列と同一ではない第1の配列を指す。例えば、変異体遺伝子の野性型配列を含むポリヌクレオチドは、変異体遺伝子の配列に相同であるが同一ではない。特定の実施形態では、2つの配列間の相同性の度合は、正常細胞の機序を利用してそれらの間で相同組換えをさせるのに十分である。2つの同一でない相同配列は、任意の長さでよく、また非相同性の程度は単一ヌクレオチドと同程度の小ささであっても(例えば、標的相同組換えによるゲノム点変異の補正のために)または10キロベース以上の大きさであってもよい(例えば、染色体中の所定の異所での遺伝子の挿入のために)。同一でない相同配列を含む2つのポリヌクレオチドは、同じ長さである必要はない。例えば、20〜10,000のヌクレオチドまたはヌクレオチド対の外因性ポリヌクレオチド(すなわち、ドナーポリヌクレオチド)を使用可能である。
【0028】
核酸およびアミノ酸配列の同一性を測定する技術は当技術分野で既知である。通常、このような技術には、遺伝子のためにmRNAのヌクレオチド配列の決定および/またはそれによりコードされたアミノ酸配列の決定、およびこれらの配列の第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列との比較が含まれる。ゲノム配列も同様の方法で決定および比較可能である。一般的に、同一性は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の、それぞれ正確なヌクレオチド対ヌクレオチドまたはアミノ酸対アミノ酸の一致を指す。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらのパーセント同一性を定義することで比較可能である。核酸配列でもアミノ酸配列でも、2つの配列のパーセント同一性は、位置合わせをした2つの配列間の正確な一致の数を短い方の配列の長さで割って、100を掛けたものである。
【0029】
あるいは、ポリヌクレオチド間の配列の類似性の度合は、相同領域の間で安定な二重鎖を形成可能な条件の下で、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションし、次に、単鎖特異的ヌクレアーゼで消化し、消化された断片のサイズを測定して決定できる。決まった分子の長さに対し、上述の方法を使って求めて、配列が少なくとも約70%〜75%、好ましくは、80%〜82%、さらに好ましくは、85%〜90%、またさらに好ましくは、92%、まださらに好ましくは、95%、および最も好ましくは、98%配列同一性である場合は、2つの核酸、または2つのポリペプチド配列は相互に実質的に相同である。本明細書で使われる、実質的に相同は、また、特定のDNAまたはポリペプチド配列に対し完全な同一性を示す配列を指す。実質的に相同であるDNA配列は、例えば、特定のシステムに対し定められたストリンジェントな条件下で、サザンハイブリダイゼーション実験によって特定できる。適切なハイブリダイゼーション条件の決定は当業者の技術範囲内のことである。例えば、Sambrook et al.、同上;Nucleic Acid Hybridization:A Practical Approach(核酸ハイブリダイゼーション:実践的手法)、B.D.Hamesand S.J.Higgins編、(1985)Oxford;Washington、DC;IRL Press)、を参照のこと。
【0030】
「組換え」は、2つのポリヌクレオチド間での遺伝情報の交換プロセスを指す。本開示の目的に対しては、「相同組換え(HR)」は、例えば、相同性指向修復機構により、細胞中の二重鎖切断の修復の間に起こるような特殊な形のこのような交換を指す。このプロセスは、ヌクレオチド配列の相同性を必要とし、「ドナー」分子を「標的」分子(すなわち、二重鎖切断を受けた分子)のテンプレート修復として使われており、ドナーから標的に遺伝情報の移行をもたらすために、「非交差遺伝子変換(non−crossover gene conversion)」または「ショートトラクト遺伝子変換(short tract gene conversion)」として様々な形で知られている。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、このような移行は、切断標的およびドナーの間で生ずるヘテロ二重鎖のミスマッチ修復、および/または「合成依存的ストランド・アニーリング(synthesis−dependent strand annealing)」(ここではドナーが標的の一部となる遺伝情報を再合成するために使われる)、および/または関連プロセスが関係する可能性があると考えられる。このような特殊なHRは、標的分子配列の変化を生じ、ドナーポリヌクレオチドの一部または全部の配列が標的ポリヌクレオチドに組み込まれるようになることが多い。
【0031】
本開示の方法では、本明細書記載の1つまたは複数の標的ヌクレアーゼが、標的配列(例えば、細胞クロマチン)中の所定の部位で二重鎖切断を作り、その切断の領域中のヌクレオチド配列に相同性を有する「ドナー」ポリヌクレオチドを細胞に導入することができる。二重鎖切断(DSB)の存在が、ドナー配列の組み込みを促進することが示された。ドナー配列は、物理的に組み込まれることも可能で、あるいは、ドナーポリヌクレオチドは、テンプレートとして相同組換えを介した切断の修復に使用され、ドナーの細胞クロマチンへの導入の場合と同様に、全部または一部のヌクレオチド配列の導入が生じる。このように、細胞クロマチン中の第1の配列は、変えることができ、特定の実施形態では、ドナーポリヌクレオチド中に存在する配列に変換可能である。従って、用語の「置換する(replace)」または「置換(replacement)」の使用は、1つのヌクレオチド配列の別のものでの置換を表すと理解でき(すなわち、情報的感覚での配列の置換)、必ずしも1つのポリヌクレオチドの別のものによる物理的または化学的置換を必要としない。一部の実施形態では、2つのDSBが本明細書記載の標的ヌクレアーゼにより導入され、DSB間にDNAの欠失が生じている。一部の実施形態では、「ドナー」ポリヌクレオチドがこれら2つのDSB間に挿入された。
【0032】
従って、特定の実施形態では、関心領域の配列に相同であるドナー配列の部分は、置換されたゲノム配列に対して、約80〜99%(またはその間の任意の整数)の間の配列同一性を示す。他の実施形態では、ドナーとゲノム配列間の相同性は、99%超で、例えば、100近接塩基対を超えるドナーとゲノム配列の間で1ヌクレオチドのみが異なる場合に相当する。特定の場合では、ドナー配列の非相同部分は、関心領域には存在しない配列を含むことができ、新しい配列が関心領域に導入される。これらの例では、非相同配列は通常、関心領域の配列に相同または同一である50〜1,000塩基対(またはその間の任意の値)、または任意の数の1,000を超える塩基対の配列に隣接している。他の実施形態では、ドナー配列は、第1の配列に非相同であり、非相同組換え機構によりゲノムに挿入される。
【0033】
本明細書記載のいずれの方法も、目的遺伝子の発現を妨害するドナー配列の標的組み込みによる、1つまたは複数の細胞中の標的配列の部分的または完全な不活性化のために使用可能である。部分的または完全な不活化遺伝子を有する細胞株もまた提供される。
【0034】
さらに、本明細書記載の標的組み込みの方法は、また、1つまたは複数の外因性配列を組み込むのに使用可能である。外因性核酸配列には、例えば、1つまたは複数の遺伝子または相補cDNA分子、または任意のタイプのコードまたは非コード配列、ならびに1つまたは複数の調節領域(例えば、プロモータ)を含むことができる。さらに、外因性核酸配列は、1つまたは複数のRNA分子(例えば、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、抑制性RNA(RNAi)、マイクロRNA(miRNA)、等)を生成することもできる。
【0035】
「切断」は、DNA分子の共有結合骨格の切断を指す。切断は、種々の方法で開始可能で、これに限定されないが、酵素的またはリン酸ジエステル結合の化学的加水分解が含まれる。単鎖切断および二重鎖切断の両方が可能で、二重鎖切断は、2つの異なる単鎖切断イベントの結果として発生しうる。DNA切断は、平滑末端または付着末端が生じうる。特定の実施形態では、融合ポリペプチドが標的二重鎖DNA切断のために使用される。
【0036】
「切断ハーフドメイン(cleavage half−domain)」は、第2のポリペプチド(同一または異なる)と結合して切断活性(好ましくは、二重鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。用語の「第1および第2切断ハーフドメイン;」「+および−切断ハーフドメイン」および「右および左切断ハーフドメイン」は、同義に使用され、二量体化する対の切断ハーフドメインを指す。
【0037】
「操作切断ハーフドメイン」は、別の切断ハーフドメイン(例えば、別の操作切断ハーフドメイン)と必ずヘテロダイマーを形成するように改変された切断ハーフドメインである。また、米国特許公報第2005/0064474、20070218528および2008/0131962も参照のこと。これらは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0038】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造体である。細胞クロマチンは、ヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質等の核酸、主たるDNA、およびタンパク質を含む。真核細胞クロマチンの多くはヌクレオソームの形で存在し、ヌクレオソームコアはヒストンH2A、H2B、H3およびH4のうちの2つを含む八量体に結合した約150塩基対のDNAを含む;またリンカーDNA(生物によって変わる長さの)は、ヌクレオソームコアの間に広がっている。ヒストンH1分子は、通常、リンカーDNAに結合している。本開示の目的に関しては、用語の「クロマチン」は、原核生物および真核生物両方の全タイプの細胞核タンパク質を包含する。細胞クロマチンには、染色体およびエピソームクロマチンの両方を含む。
【0039】
「染色体」は、全部または一部の細胞のゲノムを含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、細胞のゲノム含む全ての染色体の集積であるその核型を特徴とすることが多い。細胞のゲノムは、1つまたは複数の染色体を含むこともできる。
【0040】
「エピソーム」は、複製核酸、核タンパク質複合体または細胞の染色体核型の一部ではない核酸を含むその他の構造である。エピソームの例には、プラスミドおよび特定のウイルスゲノムが含まれる。
【0041】
「標的部位」または「標的配列」は、結合が存在するための十分な条件が存在する場合に、結合分子に結合する一部の核酸を決める核酸配列である。例えば、配列5’−GAATTC−3’はEcoRI制限エンドヌクレアーゼのための標的部位である。
【0042】
「外因性」分子は、通常は細胞中に存在しないが、1つまたは複数の遺伝子的、生化学的または他の方法により細胞中に導入可能な分子である。「細胞中の正常な存在」は、細胞の特定の成長段階および環境条件に関して決定される。従って、例えば、筋肉の胚性成長の間にのみ存在する分子は、成人筋細胞にとっては外因性分子である。同様に、熱衝撃により誘導された分子は、非熱衝撃細胞にとっては外因性分子である。外因性分子には、例えば、機能不全内在性分子の機能バージョンまたは正常機能内在性分子の機能不全バージョンが含まれる。
【0043】
とりわけ、外因性分子は、例えば、コンビナトリアル化学プロセスにより産生された低分子量分子、または高分子、例えば、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、前記分子のいずれかの改変誘導体、または1つまたは複数の前記分子を含むいずれかの複合体であってもよい。DNAおよびRNAを含む核酸は、単鎖または二重鎖でもよく;直鎖、分岐または環状でもよく;また、任意の長さでよい。核酸は二重鎖を形成できるもの、ならびに三重鎖形成核酸を含む。例えば、米国特許第5,176,996号および5,422,251号参照。タンパク質には、これに限定されないが、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチンリモデリング因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレースおよびヘリカーゼが含まれる。
【0044】
外因性分子は、内在性分子と同じタイプの分子、例えば、外因性タンパク質または核酸であってもよい。例えば、外因性核酸は、細胞に導入された感染ウイルスゲノム、プラスミドまたはエピソーム、または通常は細胞中には存在しない染色体を含むことができる。外因性分子を細胞へ導入する方法は当業者には既知であり、これに限定されないが、脂質媒介移入(すなわち、中性および陽イオン性脂質を含むリポソーム)、電気穿孔、直接注入、細胞融合、微粒子銃、リン酸カルシウム共沈殿、DEAEデキストラン媒介移入およびウイルスベクター媒介移入が含まれる。
【0045】
対照的に、「内在性」分子は、通常、特定の環境条件下、特定の成長段階の特定の細胞中に存在する分子である。例えば、内在性核酸は、染色体、ミトコンドリアのゲノム、葉緑体もしくは他の小器官、または天然のエピソーム核酸を含んでもよい。さらなる内在性分子として、タンパク質、例えば、転写因子および酵素含むこともできる。
【0046】
「融合」分子は、2つ以上のサブユニット分子が、好ましくは有機結合で、結合している分子である。サブユニット分子は、同じ化学的タイプの分子でも、異なる化学的タイプの分子であってもよい。第1のタイプの融合分子の例には、これに限定されないが、融合タンパク質(例えば、ZFPDNA結合ドメインおよび切断ドメインの間の融合、またはTALエフェクターDNA結合ドメインおよび切断ドメインの間の融合)および融合核酸(例えば、上記の融合タンパク質をコードした核酸)が含まれる。第2のタイプの融合分子の例には、これに限定されないが、三重鎖形成核酸とポリペプチドとの融合、および小溝結合剤と核酸との融合が含まれる。
【0047】
細胞中での融合タンパク質の発現は、融合タンパク質の細胞への送達、または融合タンパク質をコードしたポリヌクレオチドの細胞への送達に由来し、そこでポリヌクレオチドは転写され、転写物が翻訳されて、融合タンパク質を産生する。トランススプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチド連結反応もまた、細胞中のタンパク質の発現に関与することができる。ポリヌクレオチドおよびポリペプチドの細胞への送達方法は、本開示の別に記載されている。
【0048】
本開示の目的に照らして、このような調節配列がコーディングおよび/または転写配列に隣接しているか否かに関わらず、「遺伝子」には、遺伝子産物をコードしたDNA領域(下記参照)、ならびに遺伝子産物の生成を調節する全DNA領域が含まれる。従って、遺伝子には、これに限定されないが、プロモーター配列、ターミネーター、リボソーム結合部位および内部リボソームエントリー部位等の翻訳調節配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、バウンダリーエレメント、複製起点、基質結合部位および遺伝子座調節領域が含まれる。
【0049】
「遺伝子発現」は、遺伝子に含まれる情報の遺伝子産物への転換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、構造RNA、shRNA、RNAi、miRNAまたは任意の他のタイプのRNA)であっても、mRNAの翻訳により生成されたタンパク質であってもよい。また、遺伝子産物には、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化、および編集、等のプロセスにより改変されたRNA、およびタンパク質、例えば、メチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP−リボシル化、ミリスチル化、およびグリコシル化により改変されたタンパク質が含まれる。
【0050】
遺伝子発現の「調節」は、遺伝子の活性の変化を指す。発現の調節には、これに限定されないが、遺伝子活性化および遺伝子抑制が含まれる。ゲノム編集(例えば、切断、変化、不活性化、ドナー組み込み、ランダム変異)は、発現調節に使用可能である。遺伝子不活性化は、本明細書記載の変更遺伝子を含まない細胞に比べて、遺伝子発現の何らかの減少を指す。従って、遺伝子不活性化部分的であっても全体的であってもよい。
【0051】
「関心領域」は、例えば、遺伝子または遺伝子内または隣接した非コード配列、等の、細胞クロマチンの任意の領域で、その中で外因性分子に結合することが望まれる領域である。結合は、標的DNA切断および/または標的組換えが目的であってもよい。関心領域は、例えば、染色体、エピソーム、細胞小器官ゲノム(例えば、ミトコンドリア、葉緑体)、または感染ウイルスゲノム中にあってもよい。関心領域は、遺伝子のコーディング領域内、例えば、リーダー配列、トレーラー配列またはイントロン等の転写非コーディング領域内、または非転写領域のコーディング領域の上流または下流内、にあってもよい。関心領域は、単一ヌクレオチド対と同様の小ささでもよく、または2,000ヌクレオチド対の長さまでの大きさでもよく、または、任意の整数値ヌクレオチド対の大きさであってもよい。
【0052】
「真核生物」細胞には、これに限定されないが、真菌細胞(酵母等の)、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞およびヒト細胞(例えば、T細胞)が含まれる。
【0053】
「Plant」細胞には、これに限定されないが、単子葉(単子葉植物)のまたは双子葉類(双子葉植物)の植物の細胞が含まれる。単子葉植物の非制限的な例には、穀物用植物、例えば、トウモロコシ、米、オオムギ、カラスムギ、コムギ、モロコシ、ライムギ、サトウキビ、パイナップル、タマネギ、バナナ、およびココナッツが含まれる。双子葉植物の非制限的な例には、タバコ、トマト、ヒマワリ、綿、トウダイコン、ジャガイモ、レタス、メロン、大豆、キャノーラ(ナタネ)、およびアルファルファが含まれる。植物細胞は、植物のどの部分由来でも、および/またはどの植物成長段階由来でもよい。
【0054】
用語の「機能的連結(operative linkage)」および「機能的に連結された(operatively linked)」(または「機能的に連結された(operably linked)」)は、2つ以上の成分(配列要素、等の)の近位に関して同義的に使用され、この場合、両成分が正常に機能し、少なくとも1つの成分が少なくとも1つの他の成分に対して行使される機能を媒介可能ならしめるように両成分が配置されている。説明として例を挙げれば、1つまたは複数の転写調節因子の存在または非存在に応答して、転写調節配列がコード配列の転写レベルを調節する場合、プロモーター等の転写調節配列は、コード配列に機能的に連結されている。転写調節配列は、通常、シスの位置でコード配列と機能的に連結されているが、直接それに隣接している必要はない。例えば、次の配列は近接していないけれども、エンハンサーは、コード配列に機能的に連結されている転写調節配列である。
【0055】
融合ポリペプチドに関しては、用語の「機能的に連結された(operably linked)」は、他の成分に結合した状態で成分のそれぞれが、あたかもそのように結合していない場合にするように、他の成分に対し同じ機能を行使する、という事実を指すと考えることができる。例えば、ZFP DNA結合ドメインが切断ドメインに融合している融合ポリペプチドに関して、融合ポリペプチド中で、ZFP DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位に結合でき、他方、切断ドメインが標的部位に隣接するDNAを切断することができる場合には、ZFP DNA結合ドメインおよび切断ドメインが機能的に連結している。
【0056】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、完全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸とは同一でない配列であって、それでもまだ完全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同じ機能を保持しているタンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は、対応する未変性分子より多くの、より少ない、または同じ数の残基を有することができ、および/または1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチド置換を含むことができる。核酸の機能(例えば、コーディング機能、別の核酸に対しハイブリダイズする能力)の測定方法は当技術分野でよく知られている。同様に、タンパク質の機能の測定法もよく知られている。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えば、フィルター結合、電気泳動移動度シフト、または免疫沈降アッセイのより測定可能である。DNA切断は、ゲル電気泳動法により試験可能である。Ausubel et al.、同上、を参照。タンパク質が別のタンパク質と相互作用する能力は、例えば、免疫共沈降、ツーハイブリッドアッセイまたは遺伝的および生化学的両方の相補性により測定可能である。例えば、Fields et al.(1989)Nature 340:245−246;米国特許第5,585,245号およびPCT WO 98/44350、を参照のこと。
【0057】
「ベクター」は、遺伝子配列を標的細胞に導入可能である。通常、「ベクター構築物」、「発現ベクター」および「遺伝子導入ベクター」は、目的の遺伝子の発現を指示することができる任意の核酸構築物を意味し、遺伝子配列を標的細胞に導入することができる。従って、この用語は、クローニング、および発現賦形剤、ならびに組み込み型ベクターを含む。
【0058】
「レポーター遺伝子」または「レポーター配列」は、好ましくはルーチンアッセイで、容易に測定されるタンパク質産物を生成する任意の配列を指す。特定の種に対する適切なレポーター遺伝子は、当業者には既知であり、これに限定されないが、Mel1、クロラムフェニコールアセチル基転移酵素(CAT)、光生成タンパク質、例えば、GFP、ルシフェラーゼおよび/またはβ−ガラクトシダーゼが含まれる。動物のための適切なレポーター遺伝子もまた、インビボで測定できるマーカーまたは酵素をコードすることができ、例えば、チミジンキナーゼは、PETスキャンニングを使ってインビボで測定され、またはルシフェラーゼは、インビボ全身発光画像処理により測定される。選択可能マーカーは、レポーターの代わりに、またはそれに追加して使用可能である。ポジティブ選択マーカーは、その遺伝子を保有し、発現する細胞のみ特定の条件下で生き残ることおよび/または成長することを可能とする産物をコードするポリヌクレオチドである。例えば、ネオマイシン耐性(Neor)遺伝子を発現している細胞は、化合物G418に耐性を示すが、一方、Neorを発現していない細胞は、G418により死滅(skilled)させられる。除草剤ビアラホスに対する耐性を付与する除草剤耐性(抵抗性)遺伝子(例えば、PAT(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)遺伝子)を発現している植物細胞の場合も、同様である。ヒグロマイシン耐性、等を含むポジティブ選択マーカーの他の例は、当業者には既知であろう。ネガティブ選択マーカーは、特定の条件下でその遺伝子を保有し発現している細胞のみを死滅させる産物をコードするポリヌクレオチドである。例えば、チミジンキナーゼ(例えば、単純疱疹ウィルスチミジンキナーゼ、HSV−TK)を発現している細胞は、ガンシクロビルが添加されると、死滅させられる。他のネガティブ選択マーカーは、当業者には既知である。選択可能マーカーは、導入遺伝子である必要はなく、また、さらに、レポーターおよび選択可能マーカーは種々の組み合わせで使用可能である。
【0059】
概要
選択可能マーカー等の挿入された外因性配列のない、ノックアウト(KO)を含む、ホモ接合的に改変された生物で、所望の遺伝子座の両対立遺伝子の位置にレポーターをコードした配列(例えば、選択可能マーカー)のない導入遺伝子を含む生物を産生する組成物と方法が本明細書で開示される。生物は、通常、2つのステップで産生される。最初のステップでは、1つまたは複数のヌクレアーゼ(例えば、ZFN)が、細胞中の所望遺伝子座への、異種の、ドナー由来目的配列の標的組み込み(TI)のために使用される。異種配列は、通常、レポーター(例えば、選択可能または選別マーカー)を含み、このレポーターは目的の遺伝子座の1つの対立遺伝子の位置のレポーターTIを用いてクローンの選択を可能とする。導入遺伝子のTIのために、所望の導入遺伝子ドナー(レポーター配列を欠如している)がレポータードナーと同時導入される。次に、レポーターTI選択クローンが非レポーターTI対立遺伝子の位置の遺伝子型を同定され、非レポーターTI対立遺伝子がNHEJによって破壊された細胞を特定する、または非レポーターTI対立遺伝子の位置に挿入された非レポーターマーカー導入遺伝子を含む細胞を特定する。
【0060】
第2のステップでは、上述のように特定されたレポーターTI/改変クローン(例えば、レポーターTI/NHEJまたはレポーターTI/非レポーターTIクローン)を、生殖成熟に成長させ、次にこれらのレポーターTI/改変ヘテロ接合生物を相互交差または自家受粉させる。これらの交差種由来のレポーターTI/改変生物の子孫の1/4が改変イベント(NHEJ/NHEJまたは非レポーターTI/非レポーターTI)のためのホモ接合であると期待され、この結果、いかなる挿入されたレポーターDNAもないホモ接合的改変生物が得られる。
【0061】
ヌクレアーゼ
本明細書に記載されている方法および組成物は、広範に適用可能であり、任意の目的のヌクレアーゼを含むことができる。ヌクレアーゼの非制限的な例には、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼおよびTALENが含まれる。ヌクレアーゼは、異種のDNA結合および切断ドメイン(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ;異種の切断ドメインを含んだメガヌクレアーゼDNA結合ドメインもしくはTALEN)を含むこともでき、または、代わりに、天然のヌクレアーゼのDNA結合ドメインが、選択標的部位と結合するように変更することもできる(例えば、同族結合部位とは異なる部位に結合するよう操作されたメガヌクレアーゼ)。
【0062】
特定の実施形態では、ヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)である。天然のメガヌクレアーゼは、15〜40塩基対切断部位を認識し、通常次の4つのファミリーに分類される:LAGLIDADGファミリー、GIY−YIGファミリー、His−CystboxファミリーおよびHNHファミリー。代表的ホーミングエンドヌクレアーゼは、I−SceI、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIを含む。これらの認識配列は明らかになっている。また、米国特許第5,420,032号;米国特許第6,833,252号;Belfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379−3388;Dujon et al.(1989)Gene82:115−118;Perler et al.(1994)Nucleic Acids Res.22、1125−1127;Jasin(1996)Trends Genet.12:224−228;Gimble et al.(1996)J.Mol.Biol.263:163−180;Argast et al.(1998)J.Mol.Biol.280:345−353およびthe New England Biolabs catalogue、を参照のこと。
【0063】
主にLAGLIDADGファミリーである天然メガヌクレアーゼ由来のDNA結合ドメインは、植物、酵母、ショウジョウバエ、哺乳動物細胞およびマウスの部位特異的ゲノム改変を促進するために使用されてきたが、この取り組みは、メガヌクレアーゼ認識配列を保存する相同遺伝子(Monet et al.(1999)、Biochem.Biophysics.Res.Common.255:88−93)の改変、または認識配列が挿入された前操作ゲノムの改変に限定されていた(Route et al.(1994)、Mol.Cell.Biol.14:8096−106;Chilton et al.(2003)、Plant Physiology.133:956−65;Puchta et al.(1996)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA93:5055−60;Rong et al.(2002)、Genes Dev.16:1568−81;Gouble et al.(2006)、J.Genes Med.8(5):616−622)。従って、医学的または生物工学的関連部位で新規結合特異性を示すようにメガヌクレアーゼを操作する試みがなされてきた(Porteus et al.(2005)、Nat.Biotechnol.23:967−73;Sussman et al.(2004)、J.Mol.Biol.342:31−41;Epinat et al.(2003)、Nucleic Acids Res.31:2952−62;Chevalier et al.(2002)Molec.Cell10:895−905;Epinat et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:2952−2962;Chames et al.(2005)Nucleic Acids Res 33(20):e178;Arnould et al.(2006)J.Mol.Biol.355:443−458;Ashworth et al.(2006)Nature 441:656−659;Paquesetal.(2007)Current Gene Therapy7:49−66;米国特許出願第20070117128号;20060206949号;20060153826号;20060078552号;および20040002092号)。さらに、メガヌクレアーゼ由来の天然または操作DNA結合ドメインは、異種のヌクレアーゼ(例えば、FokI)由来の切断ドメインと機能的に連結されている。
【0064】
ザントモナス属の植物病原菌は、重要な作物植物の多くの疾患の原因であることがわかっている。ザントモナスの病原性は、25超の異なるエフェクタータンパク質を植物細胞中に注入する保存III型分泌(T3S)システムに依存する。これらの注入タンパク質の中に、植物転写活性化因子を模擬し、植物トランスクリプトーム(Kay et al(2007)Science 318:648−651を参照)を操作する転写活性化因子様(TAL)エフェクターが存在する。これらのタンパク質は、DNA結合ドメインおよび転写活性化ドメインを含む。最もよく特徴付けされたTAL−エフェクターは、ザントモナス斑点細菌病菌由来のAvrBs3である(Bonas et al(1989)Mol Gen Genet 218:127−136および国際公開第2010079430参照)。TAL−エフェクターは、直列反復集中ドメインを含み、各反復は、これらのタンパク質のDNA結合特異性にとって重要な約34のアミノ酸を含む。さらに、これらは、核局在化配列および酸性の転写活性化ドメインを含む(概説は、Schornack S、et al(2006)J Plant Physiol 163(3):256−272を参照)。さらに、植物病原性菌青枯病菌では、brg11およびhpx17という名前の2つの遺伝子が、青枯病菌次亜種1株GMI1000および次亜種4株RS1000中のザントモナスのAvrBs3ファミリーと相同であることが明らかになった(Heuer et al(2007)Appl and Envir Micro 73(13):4379−4384参照)。これらの遺伝子は互いに98.9%同一のヌクレオチド配列であるが、hpx17の反復ドメイン中の1,575bpの欠失の点で異なる。しかし、両遺伝子産物は、AvrBs3ファミリータンパク質のザントモナスに対して40%未満の配列同一性である。
【0065】
これらのTALエフェクターの特異性は、直列反復に含まれる配列に依存する。反復配列は、約102bpを含み、反復は通常、相互に91〜100%相同である(Bonas et al、前出文献)。通常、反復の多形は12および13に位置し、位置12と13にある高頻度可変性2残基の同一性およびTALエフェクターの標的配列中の近接ヌクレオチドの同一性の間で1対1の対応があると思われる(Moscou and Bogdanove、(2009)Science 326:1501およびBoch et al(2009)Science 326:1509−1512、を参照)。実験的には、TAL−エフェクターのDNA認識用コードは、12および13の位置のHD配列がシトシン(C)への結合をもたらし、NGがTに結合し、NIがA、C、GまたはTに結合し、NNがAまたはGに結合し、さらにIGがTに結合するように、定められている。これらのDNA結合反復は、新しい組み合わせと多くの反復によりタンパク質中に組み込まれ、新しい配列と相互作用でき、植物細胞中のレポーター遺伝子の発現を活性化することができる人工の転写因子を形成する(Boch et al、前出文献)。しかし、これらのDNA結合ドメインは、全ての細胞型における標的ゲノム編集または標的遺伝子調節の分野で一般的な適用性があることは示されなかった。特に、Boch et alは、植物細胞中でのみ機能を示し(すなわち、ドメインが機能するように進化してきた生物学的設定において)、内在性遺伝子座での活性を示さなかった。さらに、操作TALエフェクターは、哺乳動物細胞中の天然のザントモナスTALエフェクタータンパク質中で天然には認められない任意の外因性機能性タンパク質エフェクタードメイン(ヌクレアーゼ、転写因子、調節、酵素、リコンビナーゼ、メチラーゼ、および/またはレポータードメイン)に関連して機能することは示されなかった。Christian et al((2010)<Genetics epub 10.1534/genetics.110.120717)による最近の報告で、操作TALタンパク質がFokI切断ハーフドメインに結合してTALエフェクタードメインヌクレアーゼ融合体(TALEN)が得られ、プラスミドベース標的の切断が必要である酵母レポーターアッセイで活性を示すことが示された。
【0066】
他の実施形態では、ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。ZFNは、選択遺伝子および切断ドメインまたは切断ハーフドメイン中の標的部位に結合するよう操作されたジンクフィンガータンパク質を含む。
【0067】
ジンクフィンガー結合ドメインは、選択配列に結合するように操作することが可能である。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135−141;Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313−340;Isalan et al.(2001)Nature Biotechnol.19:656−660;Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632−637;Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411−416、を参照。操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然ジンクフィンガータンパク質に比べ、新規結合特異性をもつことができる。操作する方法には、これに限定されないが、合理的設計および様々なタイプの選択手法がある。合理的設計には、例えば、各三重または四重ヌクレオチド配列が特定の三重または四重配列に結合したジンクフィンガーの1つまたは複数のアミノ酸配列に結合している、三重(または四重)ヌクレオチド配列および個別ジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの使用がある。例えば、共有の米国特許第6,453,242号および6,534,261号を参照のこと。これらの特許は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0068】
ファージディスプレイおよびツーハイブリッドシステムを含む代表選択方法が、米国特許第5,789,538号;5,925,523号;6,007,988号;6,013,453号;6,410,248号;6,140,466号;6,200,759号;および6,242,568号;ならびに国際公開第98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197および英国特許第2,338,237で開示されている。さらに、ジンクフィンガー結合ドメインに対する結合特異性の増強について、例えば、共有の国際公開第02/077227に記載されている。
【0069】
標的部位の選択;ZFNおよび設計方法ならびに融合タンパク質の構築(および前記融合タンパク質をコードしたポリヌクレオチド)は、当業者には既知であり、米国特許出願公開第20050064474号および20060188987号で詳細に記載されている。これらの特許は参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0070】
さらに、前記および他の参照により開示されているように、ジンクフィンガードメインおよび/またはマルチフィンガージンクフィンガータンパク質は、例えば、5個以上のアミノ酸長さのリンカーを含む任意の適切なリンカー配列を使って、一緒に結合することができる。例えば、6個以上のアミノ酸長さの代表的リンカー配列に関しては、米国特許第6,479,626号;6,903,185号;および7,153,949号を参照のこと。本明細書記載のタンパク質は、タンパク質のそれぞれのジンクフィンガーの間に、適切なリンカーの任意の組み合わせを含んでもよい。
【0071】
ZFN、TALENおよび/またはメガヌクレアーゼ等のヌクレアーゼはまた、ヌクレアーゼ(切断ドメイン、切断ハーフドメイン)を含む。上述のように、切断ドメインは、DNA結合ドメインに対し異種、例えば、ヌクレアーゼもしくはメガヌクレアーゼDNA結合ドメイン由来のジンクフィンガーDNA結合ドメインおよび切断ドメインまたは異なるヌクレアーゼ由来のTALエフェクタードメインおよび切断ドメインであってもよい。異種の切断ドメインは、いずれかのエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインが得られる代表的エンドヌクレアーゼには、これに限定されないが、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼがある。例えば、2002−2003 Catalogue、New England Biolabs、Beverly、MA;およびBelfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379−3388、を参照のこと。さらなるDNAを切断する酵素が知られている(例えば、S1ヌクレアーゼ;リョクトウヌクレアーゼ;膵臓DNアーゼI;小球菌ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linn et al.(編)「Nucleases(ヌクレアーゼ)」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1993も参照)。1つまたは複数のこれらの酵素(またはそれらの機能的断片)は、切断ドメインおよび切断ハーフドメインのソースとして使用可能である。
【0072】
同様に、切断ハーフドメインは、上述のように、切断活性のために二量体化が必要な任意のヌクレアーゼまたはその一部から得ることも出来る。一般的に、融合タンパク質が切断ハーフドメインを含む場合は、2つの融合タンパク質が切断のために必要である。あるいは、2つの切断ハーフドメインを含む単一のタンパク質を使うこともできる。この2つの切断ハーフドメインは、同じエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)から得ることができ、または、各切断ハーフドメインは、異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)から得ることもできる。さらに、2つの融合タンパク質の標的部位は、2つの融合タンパク質のそれらのそれぞれの標的部位への結合が、機能的切断ドメインを形成、例えば、二量体化により形成させるように、相互の空間的関係に切断ハーフドメインを置くように相互に配置することが好ましい。従って、特定の実施形態では、標的部位の近端が5〜8ヌクレオチドまたは15〜18ヌクレオチドだけ離れている。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が2つの標的部位間に介在可能である(例えば、2〜50ヌクレオチド対以上)。通常、切断部位は、標的部位間にある。
【0073】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は、多くの種があり、DNAに対し配列特異的結合が可能であり(認識部位で)、結合部位またはその近傍で切断させる。特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から取り出した部位でDNAを切断させ、分離可能な結合および切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素FokIは、1つの鎖上のそれの認識部位から9ヌクレオチドの位置およびもう一つの鎖上のそれの認識部位から13ヌクレオチドの位置のDNAの二重鎖切断を触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;5,436,150号および5,487,994号;ならびにLi et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:4275−4279;Li et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:2764−2768;Kim et al.(1994a)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:883−887;Kim et al.(1994b)J.Biol.Chem.269:31、978−31、982、を参照のこと。従って、一実施形態では、融合タンパク質は、操作されていても、されていなくてもよい、少なくとも1つのIIS型制限酵素および1つまたは複数のジンクフィンガー結合ドメイン由来の切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)を含む。
【0074】
切断ドメインが結合ドメインから分離可能な代表的IIS型制限酵素はFokIである。この特殊な酵素はダイマーの状態で活性である。Bitinaite et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:10、570−10、575。従って、本開示の目的に対しては、開示された融合タンパク質中のFokI酵素の一部は、切断ハーフドメインと見なされる。このように、標的二重鎖切断および/またはジンクフィンガーFokI融合体を使った細胞配列の標的置換に対して、それぞれFokI切断ハーフドメイを含む2つの融合タンパク質が、触媒的に活性な切断ドメインを再構成するために使用可能である。あるいは、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFokI切断ハーフドメインを含む単一のポリペプチド分子も使用可能である。ジンクフィンガーFokI融合体を使った標的切断および標的配列変化用のパラメーターが本開示の別の場所で提供されている。
【0075】
切断ドメインまたは切断ハーフドメインは、切断活性を保持している、または多量体化する(例えば、二量体化する)能力を保持し機能的切断ドメインを形成するタンパク質のどの部分でもよい。
【0076】
代表的IIS型制限酵素は、国際公開第07/014275に記載されている。この特許は、その全体が本明細書に組み込まれる。さらなる制限酵素はまた、分離可能な結合および切断ドメインを含み、これらは本開示で意図されている。例えば、Roberts et al.(2003)NucleicAcidsRes.31:418−420、を参照。
【0077】
特定の実施形態では、切断ドメインは、ホモ二量体化を最小化するまたは防ぐ、1つまたは複数の操作切断ハーフドメイン(また、二量体化ドメイン変異体とも称する)を含む。この内容は、例えば、米国特許出願公開第20050064474号および20060188987号ならびに米国特許出願第11/805,850(2007年5月23日出願)、に記載されている。これら全ての開示は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537、および538の位置のFokIのアミノ酸残基は、全てがFokI切断ハーフドメインの二量体化に影響を与える標的である。
【0078】
絶対ヘテロダイマーを形成するFokIの代表的操作切断ハーフドメインには、第1の切断ハーフドメインがFokIの490および538の位置のアミノ酸残基に変異を含み、第2の切断ハーフドメインが486および499の位置のアミノ酸残基に変異を含む対が含まれる。
【0079】
従って、一実施形態では、490の変異がGlu(E)をLys(K)で置換し;538の変異がIso(I)をLys(K)で置換し;486の変異がGln(Q)をGlu(E)で置換し;さらに499の変異がIso(I)をLys(K)で置換する。具体的には、本明細書記載の操作切断ハーフドメインは、1つの切断ハーフドメイン中の位置490(E→K)および538(I→K)を変異させ、操作切断ハーフドメイン(「E490K:I538K」と命名)」を生成し、また、別の切断ハーフドメイン中の位置486(Q→E)および499(I→L)を変異させ、操作切断ハーフドメイン(「Q486E:I499L」と命名)を生成することにより調製された。本明細書記載の操作切断ハーフドメインは、異常切断が最小化または無くされている絶対ヘテロダイマー変異体である。例えば、米国特許出願公開第2008/0131962号を参照。この開示は参照によってその全体が目的に応じ組み込まれる。
【0080】
本明細書記載の操作切断ハーフドメインは、異常切断が最小化または無くされている絶対ヘテロダイマー変異体である。例えば、国際公開第07/139898中の実施例1を参照。特定の実施形態では、操作切断ハーフドメインは、位置486、499および496(野性型FokIに対する番号)に変異、例えば、位置486の野性型Gln(Q)残基をGlu(E)残基で置換し、位置499の野性型Iso(I)残基をLeu(L)残基で置換し、さらに位置496の野性型Asn(N)残基をAsp(D)またはGlu(E)残基(また、それぞれ「ELD」および「ELE」ドメインと称する)で置換する変異を含む。他の実施形態では、操作切断ハーフドメインは、位置490、538および537(野性型FokIに対する番号)で変異、例えば、位置490の野性型Glu(E)残基をLys(K)残基で置換し、位置538の野性型Iso(I)残基をLys(K)残基で置換し、さらに位置537の野性型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置換する(それぞれ「KKK」および「KKR」ドメインと称する)変異を含む。他の実施形態では、操作切断ハーフドメインは、位置490および537(野性型FokIに対する番号)で変異、例えば、位置490の野性型Glu(E)残基をLys(K)残基で置換し、さらに位置537の野性型His(H)残基をLys(K)残基またはArg(R)残基で置換する(それぞれ「KIK」および「KIR」ドメインと称する)変異を含む。(2010年2月8日出願の米国特許仮出願第61/337,769号を参照)。
【0081】
本明細書記載の操作切断ハーフドメインは、任意の適切な方法を使って、例えば、米国特許出願公開第20050064474号および20080131962号に記載のように、野性型切断ハーフドメイン(FokI)の部位特異的変異誘発によって、調製可能である。
【0082】
あるいは、ヌクレアーゼを、いわゆる「切断酵素」技術を使って核酸標的部位にインビボで組み込み可能である(例えば、米国特許出願公開第20090068164号参照)。このような切断酵素の成分は、別々の発現構築物上で発現しても、または、例えば、自己切断2AペプチドまたはIRES配列によってそれぞれの成分が離れている1つの読み取り枠に連結してもよい。成分は、個別のジンクフィンガー結合ドメインであっても、メガヌクレアーゼ核酸結合ドメインのドメインであってもよい。
【0083】
ヌクレアーゼ(例えば、ZFN)は、例えば、国際公開第2009/042163および20090068164で記載の酵母ベース染色体系のように使用に先立ち活性において選別することもできる。
【0084】
発現ベクター
原核生物または真核生物細胞の形質転換のために、1つまたは複数のヌクレアーゼをコードした核酸をベクターに挿入することができる。ベクターは、原核生物ベクター、例えば、プラスミド、もしくはシャトルベクター、昆虫ベクター、または本明細書記載の植物ベクターを含む真核生物ベクターであってもよい。
【0085】
ヌクレアーゼ発現構築物は、当技術分野で既知の方法を使って容易に設計可能である。例えば、米国特許出願公開第20030232410号;20050208489号;20050026157号;20050064474号;20060188987号;20060063231号;20080182332号;2009011188号および国際公開第07/014275参照。ヌクレアーゼの発現は、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えば、ラフィノースおよび/またはガラクトースの存在下活性化し(抑制解除され)、グルコースの存在下抑制されているガラクトキナーゼプロモーター、の制御下にある可能性がある。植物プロモーターの非制限的な例には、シロイヌナズナユビキチン−3(ubi−3)(Callis、et al.、1990、J.Biol.Chem.265−12486−12493);アグロバクテリウム・ツメファシエンスマンノピンシンターゼ(Δmas)(Petolino et al.、米国特許第6,730,824号);および/またはカッサバ葉脈モザイクウイルス(CsVMV)(Verdaguer et al.、(1996)Plant Molecular Biology 31:1129−1139)由来プロモーター配列が含まれる。さらなる適切な細菌性および真核生物プロモーターは、当技術分野ではよく知られており、例えば、Sambrook et al.、「Molecular Cloning,A Laboratory Manual(分子クローニング、実験マニュアル)」(第2版:1989;第3版:2001);Kriegler、「Gene Transfer and Expression(遺伝子導入と発現:実験マニュアル)」(1990);および「Current Protocols in Molecular Biology(分子生物学における最新プロトコル)」(Ausubel et al.、前出文献)、に記載されている。ZFP発現用細菌発現システムは、例えば、「E.coli, Bacillus sp., and Salmonella(大腸菌、桿菌種、およびサルモネラ)」(Palva et al.(1983)Gene 22:229−235)から利用可能である。
【0086】
プロモーターの他に、発現ベクターは、通常、転写ユニットまたは原核生物または真核生物の宿主細胞中での核酸の発現に必要な全ての追加配列を含む発現カセットを含む。従って、代表的な発現カセットは、例えば、ヌクレアーゼをコードした核酸配列に機能的に連結されたプロモーター、および例えば、転写物の効率的ポリアデニル化、転写終結、リボソーム結合部位、または翻訳終結のために必要な信号を含む。追加のカセットの配列には、例えば、エンハンサー、異種のスプライシングシグナル、および/または核移行シグナル(NLS)を含んでもよい。
【0087】
このような発現システム用のキットは市販品として入手可能である。哺乳動物細胞、酵母、植物および昆虫細胞用の真核生物発現システムは、当業者にはよく知られており、これらも市販品として入手可能である。
【0088】
外来性ヌクレオチド配列をこのような宿主細胞に導入するためによく知られたいずれの手順も使用可能である。これらには、リン酸カルシウム形質移入、ポリブレン、プロトプラスト融合、電気穿孔、超音波法(例えば、ソノポレーション)、リポソーム、微量注入、ネイキッドDNA、プラスミドベクター、ウイルスベクター、エピソームおよび組込みの両方、ならびにクローン化ゲノムDNA、相補DNA、合成DNAまたは他の外来性遺伝材料を宿主細胞に導入するための、その他のよく知られたいずれかの方法の使用が含まれる(例えば、Sambrook et al.、前出文献参照)。使用した特定の遺伝子工学的手法が、選択タンパク質を発現できる宿主細胞中への少なくとも1つの遺伝子の導入に成功することが可能であることのみが必要である。
【0089】
DNA構築物は、所望の植物宿主中に(例えば、そのゲノム中に)種々の従来技術を使って導入できる。このような技術の概要については、例えば、Weissbach & Weissbach「植物分子生物学のための方法」(1988、Academic Press、N.Y.)セクションVIII、pp.421-463;およびGrierson & Corey、「植物分子生物学」(1988、第2版)、Blackie、London、Ch.7−9、を参照。
【0090】
例えば、DNA構築物は、例えば、電気穿孔および植物細胞プロトプラストの微量注入等の技術を使って植物細胞のゲノムDNA中に直接導入でき、またはDNA構築物は、DNA微粒子銃等の微粒子銃の方法を使って植物組織中に直接導入できる(例えば、Klein et al(1987)Nature 327:70−73、参照)。あるいは、DNA構築物適切なT−DNAフランキング領域と組み合わせて、従来のアグロバクテリウム・ツメファシエンス宿主ベクターに導入してもよい。不活化およびバイナリーベクターの使用を含めて、アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介形質転換技術については、科学文献に詳しく記載されている。例えば、Horsch et al(1984)Science 233:496−498、およびFraley et al(1983)Proc.Nat′l.Acad.Sci.USA 80:4803を参照のこと。
【0091】
さらに、リゾビウム種NGR234、シノリゾビウム・メリロティ、メソリゾビウム・ロティ、ジャガイモウイルスX、カリフラワーモザイクウイルスおよびカッサバ葉脈モザイクウイルスおよび/またはタバコモザイクウイルス等の非アグロバクテリウム細菌またはウイルスを使って遺伝子導入を行うことができる。例えば、Chung et al.(2006)Trends Plant Sci.11(1):1−4、を参照のこと。
【0092】
細胞がバイナリーTDNAベクター(Bevan(1984)Nuc.Acid Res.12:8711−8721)または共培養法(Horsch et al(1985)Science 227:1229−1231)を使って細菌から感染を受けると、アグロバクテリウム・ツメファシエンス宿主の病原性機能が構築物および隣接マーカーの植物細胞DNA中への挿入を指示する。通常、アグロバクテリウム形質転換システムを使って双子葉類植物を操作する(Bevan et al(1982)Ann.Rev.Genet 16:357-384;Rogersetal(1986)Methods Enzymol.118:627-641)。また、アグロバクテリウム形質転換システムは、単子葉植物および植物細胞に対するDNAの形質転換、ならびに導入に使用することもできる。米国特許第5,591,616号;Hernalsteen et al(1984)EMBOJ3:3039−3041;Hooykass−VanSlogteren et al(1984)Nature 311:763−764;Grimsley et al(1987)Nature 325:1677−179;Boulton et al(1989)Plant Mol.Biol.12:31−40.;およびGould et al(1991)Plant Physiol.95:426−434、を参照のこと。
【0093】
代替遺伝子導入および形質転換方法には、これに限定されないが、カルシウム、ポリエチレングリコール(PEG)または電気穿孔媒介ネイキッドDNAの取り込みによるプロトプラスト形質転換(Paszkowski et al.(1984)EMBO J 3:2717-2722、Potrykus et al.(1985)Molec.Gen.Genet.199:169-177;Fromm et al.(1985)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 82:5824−5828;およびShimamoto(1989)Nature 338:274−276、を参照)および植物組織の電気穿孔(D′Halluin et al.(1992)Plant Cell 4:1495−1505)がある。別の植物細胞形質転換方法には、微量注入、炭化ケイ素媒介DNA取り込み(Kaeppler et al.(1990)Plant Cell Reporter 9:415−418)、および微粒子銃(Klein et al.(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 85:4305−4309;およびGordon-Kamm et al.(1990)Plant Cell 2:603−618、参照)が挙げられる。
【0094】
有効量の投与は、ヌクレアーゼと処理される細胞とを最終的に接触させるのに通常使用されるいずれかの経路を使う。ヌクレアーゼは、任意の適切な方法で、好ましくは薬学的に許容可能なキャリアと一緒に投与される。このような調節因子を投与するのに適切な方法は利用可能で、当業者にはよく知られており、2つ以上の経路を使って特定の組成物を投与するが、特定の経路が別の経路より即効性で、より効果的な反応を与えることができることが多い。
【0095】
キャリアは、また、投与される特定の組成物、ならびに組成物を投与するために使う特定の方法によって使用され、決定される部分もありうる。従って、広範で多様かつ適切な利用可能な医薬品組成物の処方がある。(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences(レミントンの薬学)」第17版:1985参照)。
【0096】
生物
本発明は、ホモ接合的に改変された生物を作ることが望まれる任意の生物に適用可能である。このような生物には、これに限定されないが、植物、動物(例えば、マウス、ラット、霊長類、家畜、ウサギ、等の哺乳動物)、魚、等の真核生物が含まれる。通常、生物は、本明細書記載のように遺伝子的に改変可能な生物由来の単離細胞を使って産生され、生殖的に成熟生物に成長できる。真核生物(例えば、酵母、植物、真菌、魚類およびネコ、イヌ、マウス、ウシ、およびブタ、等の哺乳動物細胞)細胞が使用可能である。1つまたは複数の本明細書記載のホモ接合KO遺伝子座または他の遺伝改変を含む生物由来の細胞もまた、使用可能である。
【0097】
代表的な哺乳動物細胞は、目的の生物の任意の細胞または細胞株、例えば、卵母細胞、K562細胞、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、HEP−G2細胞、BaF−3細胞、Schneider細胞、コス細胞(サル腎臓細胞発現SV40T−抗原)、CV−1細胞、HuTu80細胞、NTERA2細胞、NB4細胞、HL−60細胞およびHeLa細胞、293細胞(例えば、Graham et al.(1977)J.Gen.Virol.36:59、参照)、ならびにミエローマ細胞様SP2またはNS0(例えば、Galfre and Milstein(1981)Meth.Enzymol.73(B):346、参照)を含む。胚性および成人幹細胞の使用可能であるので、末梢血単核球(PBMC)またはT細胞も使用可能である。例えば、使用可能幹細胞には、胚性幹細胞(ES)、人工多能性幹細胞(iPSC)、間葉系幹細胞、造血幹細胞、筋幹細胞、皮膚幹細胞および神経細胞の幹細胞が含まれる。
【0098】
代表的標的植物および植物細胞には、これに限定されないが、穀物作物(例えば、コムギ、トウモロコシ、コメ、キビ、オオムギ)、果実作物(例えば、トマト、リンゴ、セイヨウナシ、イチゴ、オレンジ)、飼料作物(例えば、アルファルファ)、根菜作物(例えば、ニンジン、ジャガイモ、サトウダイコン、ヤムイモ)、葉菜作物(例えば、レタス、ホウレンソウ);顕花植物(例えば、ペチュニア、バラ、キク)、針葉樹およびマツ(例えば、パインファー、エゾマツ);ファイトレメディエーションに使われる植物(例えば、重金属蓄積植物);油料作物(例えば、ヒマワリ、ナタネ)および実験目的で使われる植物(例えば、アラビドプシス)を含む作物、等の単子葉および双子葉類植物が含まれる。従って、開示される方法および組成物は、アスパラガス属、カラスムギ属、アブラナ属、ミカン属、スイカ属、トウガラシ属、カボチャ属、ニンジン属、ムカシヨモギ属、ダイズ属、ワタ属、オオムギ属、アキノノゲシ属、ドクムギ属、トマト属、リンゴ属、マニホット属、タバコ属、オオアラセイトウ属、イネ属、ワニナシ属、インゲンマメ属、エンドウ属、ナシ属、サクラ属、ダイコン属、ライムギ属、ナス属、モロコシ属、コムギ属、ブドウ属、ササゲ属、およびトウモロコシ属、等の属由来の種を含む(これに限定されない)広範囲の植物に使用される。用語の植物細胞には、単離植物細胞ならびに全体植物または全体植物の一部、例えば、種子、カルス、葉、根、等を含む。また、本開示は、種子が導入遺伝子または遺伝子構築物を有する場合の上述の植物の種子を包含する。本開示は、子孫、クローン、細胞株または前記子孫、クローン、細胞株または細胞が導入遺伝子または遺伝子構築物を有する場合の上述の遺伝子導入植物の細胞をさらに包含する。
【0099】
標的組み込み
本明細書記載のホモ接合改変生物の産生における最初のステップは、所望の標的遺伝子座でのドナー(外因性の)レポーター配列のヌクレアーゼ媒介標的組み込みを含む。細胞クロマチン中の関心領域でDNAを切断するために、開示のヌクレアーゼを特異的に使うことができる(例えば、ゲノム中の所望のまたは所定の部位)。このような標的DNA切断のために、ヌクレアーゼのDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガー結合ドメイン)が所定の切断部位またはその近くで標的部位に結合するように操作されており、DNA結合ドメインおよび切断ドメインを含む融合タンパク質が細胞中で発現する。融合タンパク質のDNA結合ドメイン(例えば、ジンクフィンガー部分)の標的部位への結合に際し、DNAが切断ドメインにより標的部位の近くで切断される。
【0100】
あるいは、それぞれジンクフィンガー結合ドメインおよび切断ハーフドメインを含む2つの融合タンパク質は、細胞中で発現し、機能性切断ドメインが再構成され、DNAが標的部位の近くで切断されるように隣接した標的部位に結合する。一実施形態では、切断は、2つのジンクフィンガー結合ドメインの標的部位間で発生する。ジンクフィンガー結合ドメインの1つまたは両方を操作可能である。
【0101】
本明細書記載のヌクレアーゼによる標的切断は、切断部位でドナー(外因性の)配列の標的組み込みをもたらす(相同性直接修復を介して)ことが示されている。例えば、米国特許出願公開第2007/0134796号、2008/029580号、2008/0182332号、2009/0117617号、および2009/0111188号を参照。
【0102】
従って、本明細書記載のヌクレアーゼの他に、選択ゲノム配列の標的置換(組み込み)には、置換(またはドナー)レポーター配列の導入も必要である。ドナーレポーター配列は、融合タンパク質の発現の前、それと同時、またはその後に細胞中に導入可能である。ドナーレポーターポリヌクレオチドは、通常、それと相同性保持対象のゲノム配列との間の相同組換え(または相同指向修復)を支援するためゲノム配列に対し十分な相同性を含む。ドナー配列は、通常、置換対象のゲノム配列と同一ではないことは容易にわかるであろう。例えば、ドナーポリヌクレオチド配列は、染色体配列との十分な相同性が存在する限り、ゲノム配列に対して1つまたは複数の単一塩基の変更、挿入、欠失、反転または再編成を含むことができる。
【0103】
特定の実施形態では、所望の導入遺伝子の導入も行われる。所望の導入遺伝子ドナー配列はまた、それと相同性保持対象のゲノム配列間の相同組換えまたは相同指向修復を支援するためにゲノム配列と十分な相同性を有するはずである。例えば、米国特許出願第12/386,059号参照。目的のドナー導入遺伝子は、通常、目的の配列をコードした配列を含んでいる。非制限的な例では、遺伝子制御因子配列(例えば、プロモーター配列)、タンパク質産物(例えば、生物または治療タンパク質の表現型改変に関与するタンパク質)をコードした配列またはshRNA、RNAi等のRNA産物をコードした配列が含まれる。
【0104】
ドナーレポーター配列は、通常、標的組み込みが起こった細胞の特定のためのレポーター遺伝子をコードした配列を含む。任意のレポーター遺伝子を使用可能である。特定の実施形態では、レポーター遺伝子は、直接検出可能シグナル、例えば、GFP(緑蛍光タンパク質)等の蛍光タンパク質からのシグナル、を提供する。蛍光は、例えば、蛍光励起細胞分取装置(FACS)システムを含む、市場で入手可能な種々の蛍光検出システムを使って検出される。
【0105】
また、レポーター遺伝子は、検出可能産物(例えば、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、リパーゼ、ホスファターゼ、糖ヒドラーゼおよびエステラーゼ)の生成を触媒する酵素であってもよい。適切な酵素をコードするレポーター遺伝子の非制限的な例には、例えば、MEL1、CAT(クロラムフェニコールアセチル基転移酵素;Alton and Vapnek(1979)Nature 282:864869)、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、β−グルクロニダーゼ、β−ラクタマーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼおよびアルカリフォスファターゼ(例えば、Toh、et al.(1980)Eur.J.Biochem.182:231238;およびHall et al.(1983)J.Mol.Appl.Gen.2:101)が含まれる。
【0106】
さらなるレポーター遺伝子には、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性、等の抗生物質耐性ならびにPAT遺伝子、等の除草剤耐性を含む(これに限定されない)選択可能マーカー(例えば、ポジティブおよび/またはネガティブ選択マーカー)が含まれる。
【0107】
ドナーポリヌクレオチド(レポーターおよび/または導入遺伝子)は、DNAまたはRNA、単鎖または二重鎖およびであってもよく、また、直鎖または環形状で細胞中に導入されてもよい。直鎖形状で導入の場合、ドナー配列の末端を当業者に既知の方法によって保護してもよい(例えば、エキソヌクレアーゼ分解から)。例えば、1つまたは複数のジデオキシヌクレオチド残基が直鎖分子の3’末端に付加される、および/または自己相補的オリゴヌクレオチドが1つのまたは両末端に結合される。例えば、Chang et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:4959−4963;Nehls et al.(1996)Science 272:886−889、を参照。外因性ポリヌクレオチドを分解から保護するためのさらなる方法には、これに限定されないが、末端アミノ基の付加および例えば、ホスホロチオエート、ホスホロアミド酸、およびO−メチルリボースまたはデオキシリボース残基、等の改変ヌクレオチド間リンケージの使用がある。ポリヌクレオチドは、例えば、複製起点、プロモーター、および抗生物質または除草剤耐性をコードした遺伝子、等の別の配列を有するベクター分子の一部として細胞中に導入されてもよい。さらに、ドナーポリヌクレオチドは、ネイキッド核酸として、リポソームまたはポロキサマー等の試薬と複合化した核酸として導入しても、またはウイルス(例えば、アデノウイルス、AAV、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス)を使って送達してもよい。
【0108】
細胞は、標的組み込みに対し任意の適切な方法でアッセイすることができる。この方法には、選択遺伝子座の検査(シーケンシングもしくはPCR)による方法、またはドナーDNA上に存在するマーカー遺伝子にコードされている形質によって、処置細胞を選択および/または選別することによる方法が含まれる。例えば、形質転換遺伝子構築物の耐性付与対象である抗生物質または除草剤の抑制必要量を含む培地中で、操作細胞を成長させることにより選択を行うことが可能である。さらに、形質転換細胞は、組換え型核酸構築物上に存在する可能性がある任意の可視マーカー遺伝子(例えば、蛍光タンパク質、β-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、BまたはC1遺伝子)の活性に対する選別によって特定することも可能である。このような選択および選別方法は当業者にはよく知られている。
【0109】
また、物理的および生化学的方法も、標的遺伝子座に挿入されたドナー配列を含む細胞を特定するために使用可能である。これらの方法には、これに限定されないが:1)組換えDNA挿入物の構造の検出と特定のためのサザン分析またはPCR増幅;2)遺伝子構築物のRNA転写物の検出と検査のための、ノーザン法、S1リボヌクレアーゼ保護、プライマー延長または逆転写酵素PCR増幅;3)このような遺伝子産物が遺伝子構築物によってコードされている場合に、酵素またはリボザイム活性を検出するための酵素アッセイ;4)遺伝子構築物産物がタンパク質である場合の、タンパク質ゲル電気泳動法、ウェスタンブロット技術、免疫沈降、または酵素結合免疫測定法、が挙げられる。インサイツハイブリダイゼーション、酵素染色、および免疫染色、等の別の技術も、特異的植物器官および組織中の組換え型構築物の存在または発現の検出に使用可能である。これら全てのアッセイを行う方法は、当業者にはよく知られている。
【0110】
本明細書で開示の方法を使った遺伝子操作の効果は、例えば、目的の組織から単離したRNA(例えば、mRNA)のノーザン法により観察可能である。通常は、mRNAの量が増加した場合は、対応する内在性遺伝子が以前より速い速度で発現していることが仮定できる。遺伝子および/またはCYP74B活性を測定する他の方法も使用可能である。使われる基質および反応産物または副産物の増加または減少を検出する方法に依存するが、異なるタイプの酵素アッセイが使用可能である。さらに、発現CYP74Bタンパク質のレベルおよび/または存在は、免疫化学的、すなわち、ELISA、RIA、EIAおよび電気泳動的検出アッセイ(染色またはウェスタンブロッティングと共に)、等の当業者にはよく知られた他の抗体ベースのアッセイによって測定可能である。
【0111】
ホモ接合改変生物の産生
レポータードナー配列が標的遺伝子座に挿入されている細胞は、次に、非レポーターTI対立遺伝子の位置での改変、例えば、NHEJイベントまたはレポーター(選択可能マーカー)をコードした配列の欠如した導入遺伝子の挿入、の存在に対してアッセイされる。このようなレポーターTI/改変細胞は、シーケンシング、PCR分析、等の当業者には既知の任意の適切な方法を使って特定できる。
【0112】
引き続いて、レポーターTI/改変変異体を、所望の遺伝子座にレポーターTI/改変遺伝子型を有する生物を産生するように培養あるいは処理をした。例えば、従来の前核注入または卵母細胞注入方法をレポーターTI/改変動物の産生に使用可能である。例えば、ZFN改変ラット卵母細胞の生殖系列伝染を示す米国特許出願第61/205,970号参照。
【0113】
同様に、レポーターTI/改変植物細胞は、培養し、形質転換遺伝子型およびその結果の所望の表現型を有する全ての植物を再生することができる。このような再生技術は、組織培養成長培地中の特定の植物ホルモンの操作に依存しており、通常は、所望のヌクレオチド配列と一緒に導入される殺生物剤および/または除草剤マーカー依存している。培養したプロトプラストからの植物再生については、Evans、et al.、「Proplasts Isolation and Culture(プロトプラストの単離と培養)」:Handbook of Plant Cell Culture、pp.124−176、Macmillian Publishing Company、New York、1983;およびBinding,「Regeneration of Plants, Plant Protoplasts(植物の結合、再生)」、Plant Protoplasts、pp.21-73、CRC Press、Boca Raton、1985、に記載されている。また、植物カルス、体外移植組織、器官、花粉、胚またはその一部から再生することもできる。このような再生技術については、Klee et al(1987)Ann.Rev.of Plant Phys.38:467−486に概要が記載されている。発現カセットが安定的に遺伝子導入植物中に組み込まれ、動作可能である事が確認されれば、性的交差によりそれを他の植物に導入することができることが当業者ならわかるであろう。交差される種に依存するが、多くの標準的繁殖技術の内のいずれの技術も使用可能である。またさらに、一倍体生物(例えば、配偶体)は、遺伝子導入生物の減数分裂の後で生成されうる。藻類、菌類およびライフサイクルの少なくとも一部を一倍体状態で生きることができる一部の植物、等のいくつかの生物がある。
【0114】
レポーターTI/改変ヘテロ接合生物が生殖成熟に至るとすぐに、それらは相互に交差されるが、または場合によっては、芽胞が一倍体生物に成長することもある。交差から得られた子孫の中から、標的遺伝子座の位置で、約25%がホモ接合改変/改変(NHEJ/NHEJまたは非レポーターTI/非レポーターTI)となると思われる。一倍体子孫の半分が目的の改変を含むであろう。改変/改変生物は、これに限定されないが、シーケンシング、PCR分析、等を含む上述の方法のいずれかを使って特定できる。これらの生物は、所望のホモ接合遺伝子改変を有するが、何らの挿入外因性レポーター配列(例えば、マーカー)も含まないと思われる。
【0115】
キット
また、本明細書記載の生物を産生するためのキットも提供される。キットは、典型的には、本明細書記載の1つまたは複数のヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチド(例えば、選択可能マーカーを有する)をコードしたポリヌクレオチドならびに非レポーターTI対立遺伝子の位置での改変に関しTIクローンを選択するための使用説明書、およびレポーターTI/改変生物を相互に交差させ、ヌクレアーゼおよび/またはドナーポリヌクレオチドの導入対象で、何らの挿入されたドナーDNAも無い、破壊遺伝子座でホモ接合である生物を産生するための使用説明書を含む。また、キットは、細胞の形質転換用細胞、試薬、緩衝液、細胞用の培地、および/またはアッセイ用緩衝液を含むこともできる。通常、キットは、他のキット要素に添付または付随する使用説明書、パッケージングまたは宣伝パンフレット、等の全ての内容物用のラベルも含む。
【0116】
用途
本明細書記載のホモ接合改変生物は、挿入外因性配列を有するKO生物が現在使われているいずれの用途にも使用可能である。このような生物は、生物学的および医学的研究、医薬品薬剤の生成、実験医学、ならびに農業で使用される。
【0117】
例えば、KO動物は、遺伝子産物の機能分析し、ヒト疾患のモデルをつくり、その結果として、薬剤発見を可能とするのに非常に有用であることが判明している。同様に、本明細書記載のKO植物は、破壊されているが、損傷未変性作物を損傷する可能性がある挿入配列の無い所望の遺伝子を有する作物を作るために使用することができる。従って、本明細書記載のKO植物は、外因性のDNAを含まないという意味での非遺伝子組換えGMOでありうる。あるいは、KO生物は、破壊遺伝子座(複数遺伝子座)に挿入された配列を欠くことができ、別の遺伝子座または複数遺伝子座に導入遺伝子を含むことができる。
【0118】
導入遺伝子がホモ接合であるが、外因性レポーター配列が欠けている植物または動物の創生が望ましいことがよくある。従って、本明細書記載の方法および組成物は、所望の(非レポーター)遺伝子配列が両対立遺伝子に挿入されているが、得られた植物子孫が何らのレポーター配列も含まない植物および動物産生用のツールを提供する。例えば、制御因子配列を挿入し、目的の特異的遺伝子を制御する(抑制または活性化する)ことができる。同様に、導入遺伝子を、目的の遺伝子座の全ての対立遺伝子に挿入することができる。導入遺伝子を挿入し、標的遺伝子の発現が望ましくない特定の遺伝子をノックアウトすることができる。
【0119】
以下の実施例は、ヌクレアーゼがジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む本開示の代表的実施形態に関する。これは、例示の目的のためのみのものであり、他のヌクレアーゼ、例えば、操作DNA結合ドメインおよび/または天然の操作ホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)DNA結合ドメインおよび異種の切断ドメインまたはTALENの融合体と共にホーミングエンドヌクレアーゼ(メガヌクレアーゼ)、が使用可能であることは理解されよう。
【0120】
実施例
実施例1:二対立遺伝子ノックアウト植物の産生
トウモロコシ中のIPK1遺伝子を標的化したZFNを、除草剤耐性遺伝子(PAT)の標的挿入(TI)に使用した。使用したZFNおよびTI技術は、Shukla et al.(2009)Nature 459:437−441および米国特許出願公開第20080182332号および20090111188号に記載されている。記載されるように、ZFNは、選択可能マーカーの単一対立遺伝子または二対立遺伝子標的組み込みによって、標的遺伝子座を正確に改変した。
【0121】
その後、TI/−(単一対立遺伝子)クローン(イベント)は、非TI対立遺伝子の位置で遺伝子型を同定された。図1に示すように、非TI対立遺伝子の位置で配列決定されたイベントの内の1つのイベントが、非TI対立遺伝子の位置でNHEJ誘導変異(欠失)を有していた。図1は、野性型配列およびイベントの複数の配列の表示である。このようなイベントを、TI/NHEJと呼ぶ。TI/NHEJイベントは、次に、標準的な方法で自己受粉され、標的遺伝子座の二対立遺伝子ノックアウト植物(−/−またはNHEJ/NHEJ)であり、挿入されたレポーター(選択可能マーカー)配列を欠く植物を得る。
【0122】
実施例2:テロ接合体ノックアウトマウス幹細胞の産生
マウスヒストンH3.3Bを標的としたZFNを、この遺伝子の3’不飽和部位の開始点への蛍光マーカー強化黄色蛍光タンパク質(EYFP)の標的組み込みに使った。基本的には米国特許第6,534,261号に記載のようにしてZFNを構築した。使用したZFN対に対する認識ヘリックスならびに標的配列を以下の表1および2に示す。
【表1】

【表2】

EYFP配列に機能的に連結されたH3.3B遺伝子を含むドナーDNAを構築した(図2参照)。簡潔に述べると、Phusionポリメラーゼ(NEB F−530L)を使って、C57BL/6Jマウス染色体11由来のゲノムバクテリア人工染色体(BAC)からマウスH3.3B由来のゲノムDNAのPCR断片をクローン化し、TA−TOPOクローニング(Invitrogen K4500−02)を使ってpCR2.1ベクター(pCR2.1−H3.3B)に挿入した。H3.3B−EYFPドナー構築物(pCR2.1−H3.3B−EYFP)を産生するために、6アミノ酸(SRPVAT)リンカーに続けてEYFPの読み取り枠(Clontech)をH3.3Bの最終コードエキソンにインフレームで挿入した。H3.3B−EYFPドナーは、H3.3Bプロモーター配列を含まず、2番目のH3.3Bコドンから開始して、イントロンを含み、最終H3.3Bコードアミノ酸までの約0.6kbの5’相同ゲノム配列を含み、さらにリンカーおよびEYFP、停止コドン、その後にH3.3B3’UTRに相同な約1.3kbが入っていた。次に、ドナーおよびZFN対を含む発現ベクターをマウス胚性幹細胞に同時形質移入した。ZFNおよびドナー構築物を送達するために、マウスES細胞にAmaxaヌクレオフェクション(nucleofection)を使って形質移入した。手短に述べると、形質移入直前に、ES細胞を回収してES細胞のフィーダーを枯渇させ、フィーダーのないディッシュで30分間平板培養し、次に、形質移入のために、非粘着性細胞を多く含むES細胞を集めた。2〜5*106細胞のES細胞を90μl溶液に再懸濁し、2つの環状プラスミド(両ZFNが2Aペプチド配列+10μgのドナープラスミドにより分離されている1μgのZFNプラスミド)と10μlヌクレオフェクション溶液中で混合し、マウスES細胞用のAmaxaメーカープロトコルの記載に従いプログラムA−013を使って、形質移入した。
【0123】
形質移入後、無菌のプラスチックピペットを使って細胞を、すでにフィーダーを入れて調製済みの組織培養ディッシュ中の温かいES培地に移した。その後、蛍光活性化セルソーター(FACS)または蛍光コロニーピッキングの前に、処理したフィーダー上、3〜5日間標準条件でES細胞を培養した。コロニーピッキング、クローン単離および増殖の後、Qiagen DNeasy Blood & Tissueキット(Qiagen 69504)を使って、ゲノムDNAを調製した。それぞれのクローンをPCRで選別した。標準的な方法を使って、野性型および改変H3.3B対立遺伝子の両方由来のPCR産物の配列決定を行った。サザンブロッティングを行うため、野性型および標的ES細胞由来のゲノムDNAをBsrBIで消化し、標識付けしたH3.3Bドナーの638bpAvaII断片をプローブとして使用し、野性型H3.3Bおよび組み込まれたH3.3Bドナーを可視化した。
【0124】
FACSおよびサザンブロット分析により、EYFPがH3.3B遺伝子座に組み込まれていることが確認された(図6参照)。1つのH3.3B遺伝子座に組み込まれたEYFPを含む約20%のクローンが他の遺伝子座の位置にNHEJイベントを有していることが認められた(図7参照)。
【0125】
実施例3:ホモ接合体ノックアウトマウスの産生
目的の遺伝子座にヘテロ接合レポーターTI/改変対立遺伝子を含む幹細胞および標準的プロトコル(例えば、Manipulating the Mouse Embryo, A Laboratory Manual(マウス胎仔の操作、実験マニュアル)、第3版Nagy et al、eds.Cold Spring Harbor Laboratory Press(2003)参照)を使ってホモ接合改変/改変マウスを産生した。
【0126】
実施例4:導入遺伝子を含むヘテロ接合哺乳動物細胞の産生
PPP1R12C遺伝子(米国特許出願公開第20080299580号参照)の1つの対立遺伝子がPGK−GFP−pA選択可能マーカーを含み、もう一つの対立遺伝子が、HindIII制限部位を作るPPP1R12C遺伝子中に新規RFLPを保有する導入遺伝子を含むヘテロ接合細胞を産生した。簡潔に述べると、上述のように、K562細胞が、2つのドナー分子と共にZFN発現プラスミドを形質移入された。1つのドナーは、PGKプロモーターにより駆動されるレポーターGFPを含み、もう一つのドナーが新規RFLPと共にPPP1R12C遺伝子を含む。GFP陽性の細胞を限界希釈法と目視検査により単離する。クローンを成長させ、ゲノムDNAをPCRによる遺伝子型同定およびシーケンシングのために単離する。
【0127】
本明細書で言及した全ての特許、特許出願および出版物は、本明細書によりその全体が参照によって組み込まれる。
【0128】
明確な理解を目的として図示および実施例により幾分詳細に開示を提供してきたが、本開示の趣旨や範囲から解離することなく種々の変更および改変が行えることは当業者には明らかであろう。従って、前の記載と実施例は制限するものと解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1および第2の対立遺伝子を有する遺伝子座における改変のためのホモ接合である生物であって、
(i)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が、遺伝子座が不活化されるように1つまたは複数の欠失を含み、さらに、第1と第2の対立遺伝子が外因性配列含まない;または
(ii)遺伝子座の第1と第2の対立遺伝子が1つまたは複数の外因性配列を含み、1つまたは複数の外因性配列がレポーターまたは選択可能マーカーをコードしない、生物。
【請求項2】
第1と第2の対立遺伝子が、遺伝子座が不活化されるように1つまたは複数の欠失を含む請求項1に記載の生物。
【請求項3】
第1と第2の対立遺伝子が、レポーターまたは選択可能マーカーをコードしない1つまたは複数の外因性配列を含む請求項1に記載の生物。
【請求項4】
生物が植物または動物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の生物。
【請求項5】
植物がトウモロコシ、コメ、コムギ、ジャガイモ、ダイズ、トマト、タバコ、アブラナ科のメンバー、およびアラビドプシスからなる群より選択される請求項4に記載の生物。
【請求項6】
請求項4または請求項5の植物により生成された種子。
【請求項7】
動物が哺乳動物である請求項4に記載の生物。
【請求項8】
ホモ接合生物が選択標的遺伝子座で外因性配列を欠いている請求項1、2、または4〜7のいずれか1項に記載のホモ接合生物の産生方法であって、
(a)生物ゲノムの選択遺伝子座への外因性配列の標的組み込みを媒介するヌクレアーゼを使って外因性配列を細胞中へ導入するステップであって、その遺伝子座が少なくとも第1と第2の対立遺伝子を含むステップと;
(b)(i)標的遺伝子座の第1の対立遺伝子中の外因性配列および(ii)選択標的遺伝子座の第2の対立遺伝子中の非相同末端結合(NHEJ)改変を含む細胞を特定するステップと;
(c)ステップ(b)で特定された細胞を生殖成熟生物にまで成長させるステップと;
(d)生殖成熟生物を相互に交差させるステップと;さらに
(e)選択標的遺伝子座の第1および第2対立遺伝子でNHEJ改変を示す子孫を特定し、それにより選択標的遺伝子座で外因性配列を欠いたホモ接合生物を産生するステップ、を含む方法。
【請求項9】
ゲノムの選択標的遺伝子座の1つまたは複数の外因性配列に関し生物がホモ接合であり、外因性配列が選択標的遺伝子座にレポーターまたは選択可能マーカーを含まない請求項1または3〜7のいずれか1項に記載の生物を産生する方法であって、
(a)レポーターのゲノムの選択標的遺伝子座への標的組み込み媒介するヌクレアーゼを使って生物の細胞へレポーターまたは選択可能マーカー配列を導入するステップであって、選択標的遺伝子座が少なくとも第1と第2の対立遺伝子を含むステップと;
(b)1つまたは複数の外因性配列を細胞中に導入し、ヌクレアーゼがゲノムの選択標的遺伝子座への外因性配列の標的組み込みを媒介するステップと、
(c)(i)選択標的遺伝子座の第1の対立遺伝子中のレポーターまたは選択可能マーカー、および(ii)1つまたは複数の第2の対立遺伝子中の外因性配列を含む細胞を特定するステップと;
(d)ステップ(c)で特定された細胞を生殖成熟生物にまで成長させるステップと;
(e)生殖成熟生物を相互に交差させるステップと;さらに
(f)第1と第2の対立遺伝子中に1つまたは複数の外因性配列を含むステップ(e)の交差の子孫を特定し、それにより外因性配列に関しホモ接合であり、選択標的遺伝子座でレポーターまたは選択可能マーカー配列を欠いている生物を産生するステップ、を含む方法。
【請求項10】
ヌクレアーゼが、1つまたは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN);1つまたは複数のメガヌクレアーゼおよび1つまたは複数のTALエフェクタードメインヌクレアーゼ、からなる群より選択される請求項8または9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
レポーターまたは選択可能マーカー配列および1つまたは複数の外因性配列が1つまたは複数のヌクレアーゼと同時にまたは逐次的に導入される請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
レポーター配列が選択可能または選別マーカーを含む請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
1つまたは複数のヌクレアーゼがポリヌクレオチドとして導入される請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の生物を産生するキットであって、
(a)選択標的遺伝子座の標的部位に結合する1つまたは複数のヌクレアーゼ;
(b)選択標的遺伝子座への標的組み込みのための1つまたは複数の外因性配列;および
(c)
(i)ヌクレアーゼおよび外因性配列の細胞への導入;
(ii)選択標的遺伝子座の第1の対立遺伝子に挿入された1つまたは複数の外因性配列を含む細胞の特定;
(iii)選択標的遺伝子座の第2の対立遺伝子での改変を含む(ii)の細胞の特定;
(iv)(iii)の細胞の生殖成熟生物までの成長;
(v)(iv)の生物の交差;および
(vi)標的遺伝子改変に関してホモ接合である(v)の交差の子孫の特定:
に関する使用説明書、
を含むキット。
【請求項15】
ヌクレアーゼがヌクレアーゼをコードしたポリヌクレオチドとして提供される請求項14に記載のキット。
【請求項16】
標的部位に相同な配列を含む任意選択のドナー導入遺伝子をさらに含み、ドナー導入遺伝子がレポーター遺伝子を含まない請求項14または15に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−501520(P2013−501520A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524696(P2012−524696)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/002205
【国際公開番号】WO2011/019385
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(508241200)サンガモ バイオサイエンシーズ, インコーポレイテッド (28)
【Fターム(参考)】