説明

模型コンテナ車

【課題】実車の形態を模した模型コンテナ車の実感性の向上を図る。
【解決手段】車両本体2の積載面上には、複数の取付穴2bが車幅方向Xにおいて互いに対向しつつ車長方向Yに並んで設けられている。取付部材5Aは、取付穴2bに着脱自在であり、上下に係合部を有する。下係合部は、取付穴2bに挿入される挿入部位内に設けられ、車両本体2と係合する。上係合部は、挿入部位よりも上方に設けられ、コンテナ4Aの内側面と係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実車の形態を模した模型コンテナ車に係り、特に、着脱自在なコンテナの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一口に鉄道模型ファンといってもその嗜好は様々だが、近年、人気の高い分野の一つとして、コンテナ貨車(コキ106形、コキ5000形,コキ25000形等)が挙げられる。コンテナ貨車に積載されるコンテナには、5tコンテナ(tはトン)、10tコンテナ、40fコンテナ(fはフィート)、31fコンテナ、タンクコンテナといったように様々なタイプが存在するばかりか、同一タイプであっても、そのデザインやカラーリングがまちまちである。また、同じように見えるデザインであっても、細部が微妙に異なっていることも多い。このようなバリエーションの豊富さから、鉄道模型業界においてもコンテナ貨車の人気は極めて高く、様々なデザインやカラーリングが施されたコンテナを単体で販売するガレージメーカが存在するほどである。
【0003】
図12は、非特許文献1の239頁に掲載された従来の模型コンテナ貨車を示す図である。コンテナが取り付けられる積載面上には、複数の突出爪Aが設けられており、これらは台枠に一体形成されている。突出爪Aは、コンテナ貨車の車幅方向において互いに対向しつつ、その車長方向に並んでいる。コンテナを取り付ける場合には、取り付けようとする位置に存在する一対の突出爪Aに対して、コンテナを上方よりセットする。これにより、一対の突出爪Aの上部に形成された外向きの突起が、中空状のコンテナの内側面に形成された凹凸と係合して、コンテナを内側より保持する。突出爪Aの形状は、多少玩具然とはしているものの、実車に搭載されている可倒式緊結装置(この装置は5tコンテナの緊結に用いられる)に見立てたものであり、その配置も可倒式緊結装置の配置に準じている。突出爪Aの形状および配置は、コンテナ貨車を発売する模型メーカ各社で共通しており、国内の鉄道模型業界における「事実上の標準」となっている。
【0004】
【非特許文献1】「TOMIX CATALOG 2007−2008 (トミックス総合カタログ7029)」発売元 株式会社トミーテック
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、実際のコンテナの緊結方法は全タイプ共通ではなく、タイプに応じた緊結方法が採られている。そのため、各種タイプを積載・運搬する実際のコンテナ貨車にも、複数種の緊結機構が搭載されている。例えば、5tコンテナの積載時には、上述した5tコンテナ用の可倒式緊結装置が用いられる。具体的には、積載面上にセットされた一対の緊結装置でコンテナを外側より挟み込むことによって、コンテナが固定される。また、5tコンテナ以外の積載時には、コンテナ底部の四隅に設けられたボスを積載面上に予め形成された取付穴に挿入することによって、コンテナが固定される。この場合、5tコンテナのサイズに対応して配置された可倒式緊結装置は、これを積載面上より突出させたままだとコンテナ底部(5tタイプを除く)と干渉してしまうので、車両側方に倒した状態にセットされる。
【0006】
これに対して、模型におけるコンテナの取り付けは、コンテナのタイプに関わりなく共通しており、台枠に一体形成された係合爪Aが一律に使用される。しかしながら、係合爪Aは、模型として要求される機能を簡易な構成で実現できる反面、模型としての実感性(リアリティ)の低下を招くという欠点がある。例えば、5tコンテナよりも大型な40fコンテナにおいて、突出爪Aを避けるための切欠部をコンテナ前後面に設けなければならない。係合爪Aによるコンテナの取り付けは、コンテナ内側面に形成された凹凸との係合によって達成される。そのためには、係合爪Aが配置されている位置にコンテナ内側面が存在すること、換言すれば、両者が互いに向かい合っていることが条件となる。40fコンテナ以外の場合、この条件を満たすので問題はないが、40fコンテナの場合、係合爪Aの位置と、コンテナの前面(または後面)の壁部とが丁度重なってしまい、この条件を満たさない。そこで、40fコンテナに限っては、コンテナの前後面にスリット状の切欠部を形成することによって、係合爪Aとの干渉を避けている。当然ながら、実際の40fコンテナにはこのようなものは存在しないので、切欠部の存在は模型としての実感性を損なう。なお、切欠部は、突出爪Aの配置自体を変えてしまえば不要になるが、その場合、可倒式緊結装置の配置との整合性が取れなくなり、別の意味で実感性の低下を招く。
【0007】
また、模型コンテナ貨車にコンテナが取り付けられたコンテナ非積載時の形態において、外観上の見栄えがよくないという問題もある。積載面を基準とした突出爪Aの高さ、すなわち突出高は、係合性能(コンテナとの係合力や係合のし易さ)に影響を与える重要なファクターであり、この観点でいえば、ある程度高くせざるを得ない。そのため、同一スケールで捉えた場合、突出爪Aは、実際の可倒式緊結装置と比較してかなり高くなる。コンテナ積載時の形態では、突出爪Aがコンテナによって覆い隠されるので支障ないが、コンテナ非積載時の形態では、これが露出するため、その不自然な高さが目に付いてしまう。
【0008】
なお、このような課題に対する改良に関して、市場における潜在的なニーズは極めて高いと思われるが、係合爪Aが「事実上の標準」として広く認知されている実情に鑑みると、従来品との互換性も考慮する必要がある。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、模型コンテナ車の実感性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決すべく、第1の発明は、コンテナが取り付けられる積載面を備えた車両本体と、取付部材とを有する模型コンテナ車を提供する。車両本体の積載面上には、複数の取付穴が車幅方向において互いに対向しつつ車長方向に並んで設けられている。取付部材は、取付穴に着脱自在であり、第1の係合部と、第2の係合部とを有する。第1の係合部は、取付穴に挿入される挿入部位内に設けられ、かつ、車両本体と係合可能である。第2の係合部は、挿入部位よりも上方に設けられ、かつ、コンテナの内側面と係合可能である。
【0011】
第2の発明は、車両本体と、複数の取付穴とを有する模型コンテナ車を提供する。車両本体には、コンテナが取り付けられる積載面を有する。複数の取付穴は、積載面上に設けられ、車幅方向において互いに対向しつつ車長方向に並んでいる。これらの取付穴には、取付部材が着脱自在である。取付部材は、コンテナを積載面に取り付けるために使用され、取付穴に挿入される挿入部位内に設けられ、かつ、車両本体と係合可能な第1の係合部を有する。
【0012】
第1または第2の発明において、積載面上における取付穴の配置は、実車同様の実感性を確保すべく、実車に搭載されている可倒式緊結装置の配置に準じていることが好ましい。
【0013】
第1または第2の発明において、第1の係合部は、車幅方向における取付部材や車両本体の肉厚を抑制するという観点でいえば、鉛直方向に対して車長方向に突出した係合形状を有することが好ましい。例えば、第1の係合部は、車長方向において、互いに内向きに湾曲しながら対向する一対の湾曲爪によって構成してもよい。この場合には、上記肉厚の抑制に加えて、第1の係合部の下方への突出長も有効に抑制できる。また、第1の係合部は、車長方向において対向し、互いに外向きに突出した突起を有する一対の突起爪によって構成してもよい。
【0014】
第1または第2の発明において、取付部材として、第1のパーツおよび第2のパーツを選択できるようにしてもしてもよい。第1のパーツは、実車に搭載されている可倒式緊結装置の外観形状を模した表現されている。また、第2のパーツは、可倒式緊結装置の外観形状を模した表現されていない。この場合、コンテナ非積載時の形態を表現するために、第3のパーツを選択できるようにしてもよい。第3のパーツは、取付穴に着脱自在であり、第1の係合部を有するとともに、挿入部位よりも上方において、第2の係合部の代わりに、可倒式緊結装置の外観形状を模した形態が表現されている。
【0015】
第3の発明は、車両本体と、複数の取付穴とを有する模型コンテナ車を提供する。車両本体は、コンテナが取り付けられる積載面を有する。複数の取付穴は、積載面上に設けられ、車幅方向において互いに対向しつつ車長方向に並んでいる。これらの取付穴には、互いに形態の異なる着脱自在な第1のパーツ、第2のパーツおよび第3のパーツのいずれかが選択的に取り付けられる。第1のパーツおよび第2のパーツは、コンテナを積載面に取り付けるために使用され、第3のパーツは、、コンテナ非積載時の形態を表現するために使用される。第1のパーツおよび第2のパーツは共に、第1の係合部と第2の係合部とを有する。第1の係合部は、取付穴に挿入される挿入部位内に設けられ、かつ、車両本体と係合可能である。第2の係合部と、挿入部位よりも上方に設けられ、かつ、コンテナの内側面と係合可能である。第1のパーツおよび第2のパーツの違いは、前者には、実車に搭載されている可倒式緊結装置の外観形状を模した形態が表現されているのに対して、後者には、この形態が表現されていない点である。また、第3のパーツは、第1の係合部を有するとともに、挿入部位よりも上方において、第2の係合部の代わりに、可倒式緊結装置の外観形状を模した形態が表現されている。
【発明の効果】
【0016】
第1および第2の発明によれば、コンテナを取り付けるために使用される取付部材を別パーツ化し、任意の取付穴に着脱自在とする。コンテナ壁部との干渉が生じるタイプのコンテナを取り付ける場合、そのコンテナ壁部と重なる取付穴については取付部材を取り付けないようにする。これにより、従来の着脱不可な係合爪の場合に問題となるコンテナとの干渉そのものが生じないので、このタイプのコンテナの前後面に設けられていた切欠部が不要になる。その結果、このタイプのコンテナを取り付けた模型コンテナ車の実感性を向上させることができる。また、取付部材を別パーツ化したことに伴い、ユーザが選択可能で、互いに形態の異なる複数種のパーツを提供することが可能になる。
【0017】
また、第3の発明によれば、互いに形態の異なる複数種のパーツを用意して、この選択をユーザに委ねることにより、コンテナ積載時やコンテナ非積載時といった各種形態を的確に再現することができる。その結果、着脱不可な係合爪が装着された従来品と比較して、模型コンテナ車の実感性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態にかかる模型コンテナ貨車の斜視展開図である。この模型コンテナ貨車1は、JRのコキ106形をHOゲージでモデル化したものであり、実車の形態が忠実に再現されている。模型コンテナ貨車1は、車両本体2と、台車3と、コンテナ4Aと、取付部材5Aとを有する。車両本体2は、プラスチック製の台枠2aを主体に構成されており、この台枠2aの平坦な上面がコンテナ4Aを取り付けるための積載面となる。台枠2aは、コンテナ非積載時の見栄えの向上を図るべく、実車同様、上下に貫通したシースルータイプになっている。車両本体2には、実車に搭載されている制御機器や手すり等を立体的に表現したディテールが付加されているとともに、台枠2aの形状に対応した金属ウエイトも取り付けられている。
【0019】
車両本体2の積載面上には、台枠2aを上下に貫通する複数の取付穴2bが設けられている。すべての取付穴2bは、同一の開口形状を有し、その上開口部は矩形状になっている。取付穴2b2には、プラスチック製の取付部材5Aが着脱自在で取り付けられ、その取付位置はユーザの選択に委ねられている。取付穴2bの配置としては、車両本体2の車幅方向Xにおいて互いに対向した一対の取付穴2bを基本的な組とし、この組が車両本体2の車長方向Yに列状に複数並んでいる。取付穴2bの配置は、従来の着脱不可な突出爪と同様、実車に搭載されている可倒式緊結装置の配置に準じている。コンテナ4Aは、そのタイプの如何を問わず、取付穴2bおよび取付部材5Aの連係によって積載面上に固定される。積載面の適宜の位置に表現されたダミー丸穴2cは、実車でこれに相当する取付穴がコンテナの固定機能を担っているものの、模型ではコンテナの固定に一切関与せず、実車の外観形状を単に表現したものに過ぎない。車両本体2の両サイドには、一対の台車3が取り付けられているとともに、その両端梁には、カプラー(連結器)が取り付けられている。
【0020】
プラスチック製のコンテナ4Aは、底部のみが開口した中空な箱形状を有し、その外面には、実際のコンテナにおけるデザインやカラーリングが印刷または塗装で再現されている。同図に示したコンテナ4Aは、5tコンテナを模した5tコンテナタイプであり、積載面上に最大5個まで取り付けることができるが、その取付数はユーザの選択に委ねられている。。コンテナ4Aは、取付穴2bに挿入された取付部材5Aを介して、車両本体2側に固定される。1個のコンテナ4Aを取り付けるのに取付部材5Aが1セット必要となる。したがって、同図の場合には、5セット、すなわち10個の取付部材5Aが必要となる。
【0021】
図2は、取付部材5Aの外観斜視図である。底部50および起立部51は、略L字状に連結されており、水平かつ平板状の底部50に対して鉛直上方に向かって起立部51が起立している。底部50は、取付穴2bの上開口部の形状に対応した矩形状であり、これ以下の部位が取付穴2bに挿入される挿入部位となる。この挿入部位内、すなわち底部50の直下には、下係合部52設けられている。この下係合部52は、車幅方向Xにおける車両本体2の肉厚を抑制する観点より、鉛直方向に対して車長方向Yに突出した係合形状を有し、車両本体2側の所定の係合部位(この係合部位は、下係合部52に対応した係合形状を有する)と係合する
【0022】
具体的には、下係合部52は、車長方向Yにおいて対向、対外に内向きに湾曲しながら対向する一対の湾曲爪によって構成されている。それぞれの湾曲爪は、円弧が車幅方向Xに向かって延在する略半円筒状を有する。図3および図4に示すように、一対の湾曲爪は、丸状断面を有する車両本体2側の突出係合部2dを把持し、両者の係合によって、取付部材5Aが取付穴2b内に固定される。図3に示したように、車長方向Yにおいて内向き突出するように一対の湾曲爪が形成されているため、下係合部52と突出係合部2dの係合は、専ら下係合部52の車長方向Yの形状に委ねられる。これにより、図4に示したように、車幅方向Xに関しては、係合機能を担わせるための構造的な工夫が不要になる。その結果、車幅方向Xにおける突出等が不要になり、略平坦状にすることができるので、車幅方向Xにおける取付部材5Aの肉厚を有効に抑制できる。周知のように、鉄道模型は実際の鉄道と比較してカーブや勾配がきついので、台車3の上下左右への変位も大きい。車幅方向Xにおける取付部材5Aの肉厚の抑制は、台車3との干渉を抑制するという観点において有利である(図4参照)。また、模型コンテナ貨車1のように、台枠2a自体の肉厚が薄い形態であっても、模型としての実感性を損なうことなく実装できる。さらに、下係合部52として一対の湾曲爪を用いる場合には、下係合部52の下方への突出量Hも抑制できるので、台車3との干渉をより有効に抑制できる。
【0023】
また、挿入部位よりも上方、すなわち起立部51の頂部近傍には、上係合部53がが設けられている。この上係合部53は、従来の着脱不可な係合爪と同様、車幅方向Xの外側に向かって凸状に突出ししており、図4に示したように、コンテナ4Aの内側面に設けられた凹凸と係合する。コンテナを取り付ける場合には、取り付けようとする位置に存在する一対の取付部材5Aに対して、コンテナ4Aを上方よりセットする。これにより、上係合部53を構成する外向きの突起が、中空状のコンテナ4Aの内側面に形成された凹凸と係合して、コンテナ4Aを内側より保持する。なお、下係合部52の係合力を上係合部53の係合力よりも大きくすれば、コンテナ4Aの取り外しに際して、取付穴2bから取付部材5Aが脱落してしまうことを有効に防止できる。
【0024】
起立部51における上係合部53よりも下の中間部位は、車幅方向Xの外側に向かって突出した側方突出部54が設けられており、この側方突出部54には、実車に搭載されている可倒式緊結装置の外観形状を模した形態が表現されている。5tコンテナを模したコンテナ4Aの場合、コンテナ底部と台枠2aの間のクリアランス(隙間)に側方突出部54が入り込んで、側方突出部54が外部に露出する。これにより、側方突出部54における可倒式緊結装置の表現を外部より目視することができる。なお、実際の可倒式緊結装置は実車と同色なので、実感性の観点でいえば、取付部材5Aの成型色は車両本体2と同じであることが好ましい。
【0025】
つぎに、取付穴2bに着脱可能なパーツについて説明する。従来の着脱不可な係合爪を別パーツ化したことに伴い、これを選択可能なパーツとして複数種用意する。ユーザは、再現したい形態に応じたパーツを選択して使用することで、5tコンテナ積載時、非5tコンテナ積載時、コンテナ非積載時といった様々な形態が表現可能になる。5tコンテナ積載時の状態を表現する場合には、上述したように、取付部材5Aが第1のパーツとして用いられる。
【0026】
図5は、第2のパーツの外観斜視図である。第2のパーツ5Bは、図2に示した第1のパーツ5Aと同様に取付部材として機能するが、第1のパーツ5Aとは異なり、可倒式緊結装置を模した側方突出部54が存在しない。その理由は、図6に示すように、10tコンテナの場合、コンテナ底部と台枠2aの間のクリアランスが存在せず、第2のパーツ5Bがコンテナ4Bによってほぼ覆われてしまうからである。また、このタイプのコンテナ側壁との干渉を避けるという意図もある。なお、それ以外の構成は、上下の係合部52,53が設けられている点を含めて第1のパーツ5Aと同様である。
【0027】
図6は、第2のパーツ5Bを用いた模型コンテナ貨車(10tコンテナ積載時)の斜視展開図である。10tコンテナを模したコンテナ4Bは、上述したコンテナ4Aよりもサイズが大きい(ただし、両コンテナ4A,4Bの車長方向のサイズは整数倍ではない)。同図に示したコンテナ4Bは、積載面上に最大3個まで取り付けることができる。コンテナ4Bは、取付穴2bに挿入された取付部材5Bを介して、車両本体2側に固定されるが、1個のコンテナ4Bを取り付けるのに取付部材5Bが1セットまたは2セット用いられる。
【0028】
なお、第2のパーツ5Bは、10tコンテナ以外に40fコンテナ、31fコンテナ等を取り付ける場合にも使用される。40fコンテナに関しては、スリット状の切欠部が存在する従来品の場合、第2のパーツ5Bを挿入したままでコンテナを取り付ける。また、このような切欠部が存在しない改良品の場合、コンテナ壁部との干渉が生じる部位については第2のパーツ5Bを取り外した上でコンテナを取り付ける。なお、第2のパーツ5Bは、また、可倒式緊結装置の表現がなされている5tコンテナ(従来品)を取り付ける際にも使用される。
【0029】
図7は、第3のパーツの外観斜視図である。第3のバーツ5Cは、上述したパーツ5A,5Bとは異なり、コンテナを取り付けるためではなく、コンテナ非積載時の状態を再現するために使用される。第3のパーツ5Cも取付穴2bに着脱自在であり、上述した下係合部52を有する。しかしながら、上係合部53は存在せず、その代わりに、挿入部位よりも上方に可倒式緊結装置の形態が表現された上方突出部55が設けられている。第3のパーツ5Cはコンテナ側との係合機能を有さないので、挿入部位よりも上方は、可倒式緊結装置をスケールダウンした突出高相当に抑えることができる。
【0030】
図8は、第3のパーツ5Cを用いた模型コンテナ貨車(コンテナ非積載時)の斜視展開図である。積載面にコンテナを取り付けない場合、その取り付けない箇所の取付穴2bに第3のパーツ5Cを挿入する。これにより、可倒式緊結装置がディテールとして忠実に再現され、その突出高も実際の可倒式緊結装置をスケールダウンしたものになる。この点は、実感性の観点から、従来の着脱不可な係合爪に対する大きなアドバンテージとなる。
【0031】
図9は、タンクコンテナ積載時の状態を再現するために、取付部材として用いられる第4のパーツの取付状態を示す図である。タンクコンテナ4Cは円柱状のタンクを横置きした形態を有するので、上述した箱形コンテナ4A,4Bとは異なり、取付穴2bの上方にコンテナ内側面が位置しない。そこで、第4のパーツ5Dでは、車幅方向Xにおいて互いに対向する一対の下係合部52を連結し、この連結部位の中央を上方に突出させて上係合部53を設ける。タンクコンテナ52を取り付ける場合、タンクコンテナ52の底部に設けられた取付穴に上係合部53を挿入して、これを固定する。
【0032】
なお、パーツ5A,5B,5D(以下、これらを総称して「取付部材5」という)を併用すれば、各種コンテナが混在した状態を忠実に再現できる。また、これにパーツ5Cを更に組み合わせれば、コンテナが間隔を空けて積載された状態も忠実に再現できる。
【0033】
このように、本実施形態によれば、従来の着脱不可な係合爪を取付部材5に置き換え、任意の取付穴2bに着脱自在な別パーツとして提供する。40fコンテナを取り付ける場合、そのコンテナ壁部との干渉が生じる取付穴2bについては取付部材5を取り付けないようにする。これにより、従来の係合爪の場合に問題となるコンテナとの干渉そのものが生じないので、このタイプのコンテナの前後面に設けられていたスリット状の切欠部が不要になる。その結果、40fコンテナが取り付けられたコンテナ貨車1の実感性を向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、取付部材5を別パーツ化したことに伴い、ユーザが選択可能な複数種のパーツ5A〜5Dを提供することが可能になる。そして、パーツ5A〜5Dの選択をユーザに委ねることにより、5tコンテナ積載時、10tコンテナ積載時、タンクコンテナ積載時、各種コンテナ混載時、コンテナ非積載時、コンテナ一部積載時といった各種形態のいずれも的確に再現することができる。その結果、着脱不可な係合爪が装着された従来品と比較して、模型コンテナ貨車1の実感性、或いは、40fコンテナ自体の実感性を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、可倒式緊結装置の表現を第1のパーツ5Aにて表現するので、第1のパーツ5Aの成型色にて、可倒式緊結装置および車体本体2を容易に同色化できる。この点に関して、従来品では、コンテナ側にて可倒式緊結装置が表現されていたので、基本的に可倒式緊結装置の表現がコンテナと同色になっていた(実車では、可倒式緊結装置はコンテナではなくコンテナ貨車と同色である)。そのため、色分けをするためには、可倒式緊結装置が表現された部位に塗装を施すといった作業が必要であった。本実施形態によれば、このような塗装作業が不要になるという点で有利である。
【0036】
さらに、本実施形態によれば、下係合部52は、鉛直方向に対して車長方向Yに突出するように変形した係合形状を有するので、車幅方向Xにおける取付部材5の肉厚を薄くすることができる他、台車3との干渉も有効に防止できるという効果もある。この効果は、台枠2aを主体に車両本体2が構成された形態において特に有効である。さらに、本実施形態によれば、車長方向Yにおいて互いに対向する一対の湾曲爪によって下係合部52を構成しているので、下係合部52の下方への突出量Hを抑制し、台車3との干渉を有効に防止することが可能になる。
【0037】
(第2の実施形態)
本実施形態では、上述した一対の湾曲爪を用いた下係合部52以外のバリエーションを例示する。
【0038】
図10は、本実施形態にかかるパーツの外観斜視図である。本実施形態が上述した第1の実施形態と相違する点は、下係合部52’の形状のみなので、第1の実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、ここでの説明を省略する。図10(a)に示すパーツ5A’は図2に示した第1のパーツ5Aに、同図(b)に示すパーツ5B’は図5に示した第2のパーツ5Bに、同図(c)に示したパーツ5C’は図7に示した第3のパーツ5Cにそれぞれ対応する。
【0039】
図11は、取付穴2bと係合したパーツ5A’〜5C’の取付状態を示す図である。下係合部52’は、鉛直方向に対して車長方向Yに突出した係合形状を有する。具体的には、下係合部52’は、車長方向Yにおいて対向し、互いに外向きに突出した突起が下部に設けられた一対の突起爪によって構成されている。取付穴2bへの取付時において、これらの突起爪における外向きに突出した突起が取付穴2bの下縁と係合し、これによって、パーツ5A’〜5C’が取付穴2bに固定される。
【0040】
本実施形態によれば、上述した第1の実施形態と同様の効果を奏する。特に、下係合部52’は、鉛直方向に対して車長方向Yに突出した係合形状を有するので、車幅方向Xにおけるパーツ5A’〜5C’の肉厚を薄くできる他、台車3との干渉も有効に防止できる。ただし、本実施形態の場合には、外向きの突起を形成しなければならないので、下係合部52’の下方への突出量Hが増大してしまう点が懸念される。その点では、第1の実施形態のように、湾曲爪を用いた係合構造の方が優れている。
【0041】
なお、上述した実施形態では、HOゲージの模型コンテナ貨車を一例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、それ以外の規格(Nゲージ等)の模型コンテナ貨車に対しても適用可能である。また、本発明は、模型コンテナ貨車に限定されるものではなく、コンテナトラック等を含めて、コンテナを積載可能な実車を模した模型コンテナ車に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】模型コンテナ貨車(5tコンテナ積載時)の斜視展開図
【図2】取付部材(第1のパーツ)の外観斜視図
【図3】取付部材の取付状態を示す図
【図4】取付部材によるコンテナ取付状態を示す図
【図5】第2のパーツの外観斜視図
【図6】模型コンテナ貨車(10tコンテナ積載時)の斜視展開図
【図7】第3のパーツの外観斜視図
【図8】模型コンテナ貨車(コンテナ非積載時)の斜視展開図
【図9】第4のパーツを示す図
【図10】第2の実施形態にかかるパーツの外観斜視図
【図11】第2の実施形態にかかるパーツの取付状態を示す図
【図12】従来の模型コンテナ貨車を示す図
【符号の説明】
【0043】
1 模型コンテナ貨車
2 車両本体
2a 台枠
2b 取付穴
2c ダミー丸穴
2d 係合突出部
3 台車
4A,4B,4C コンテナ
5A 取付部材(第1のパーツ)
5B 取付部材(第2のパーツ)
5C 第3のパーツ
5D 第4のパーツ
50 底部
51 起立部
52 下係合部
5355 上係合部
54 側方突出部
55 上方突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
模型コンテナ車において、
コンテナが取り付けられる積載面上に、複数の取付穴が車幅方向において互いに対向しつつ車長方向に並んで設けられた車両本体と、
前記取付穴に着脱自在であるとともに、第1の係合部と、第2の係合部とを有し、前記第1の係合部は、前記取付穴に挿入される挿入部位内に設けられ、かつ、前記車両本体と係合可能であり、前記第2の係合部は、前記挿入部位よりも上方に設けられ、かつ、前記コンテナの内側面と係合可能である取付部材と
を有することを特徴とする模型コンテナ車。
【請求項2】
模型コンテナ車において、
コンテナが取り付けられる積載面を有する車両本体と、
前記積載面上に、車幅方向において互いに対向しつつ車長方向に並んで設けられた複数の取付穴とを有し、
前記取付穴には、前記コンテナを前記積載面に取り付けるために使用され、前記取付穴に挿入される挿入部位内に設けられ、かつ、前記車両本体と係合可能な第1の係合部を有する取付部材が着脱自在であることを特徴とする模型コンテナ車。
【請求項3】
前記積載面上における前記取付穴の配置は、実車に搭載されている可倒式緊結装置の配置に準じていることを特徴とする請求項1または2に記載された模型コンテナ車。
【請求項4】
前記第1の係合部は、鉛直方向に対して前記車長方向に突出した係合形状を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載された模型コンテナ車。
【請求項5】
前記第1の係合部は、前記車長方向において対向し、互いに内向きに湾曲した一対の湾曲爪によって構成されていることを特徴とする請求項4に記載された模型コンテナ車。
【請求項6】
前記第1の係合部は、前記車長方向において対向し、互いに外向きに突出した突起を有する一対の突起爪によって構成されていることを特徴とする請求項4に記載された模型コンテナ車。
【請求項7】
前記取付部材として、第1のパーツおよび第2のパーツが選択可能であり、
前記第1のパーツは、実車に搭載されている可倒式緊結装置の外観形状を模した形態が表現されており、
前記第2のパーツは、前記可倒式緊結装置の外観形状を模した形態が表現されていないことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載された模型コンテナ車。
【請求項8】
コンテナ非積載時の形態を表現するために、第3のパーツが選択可能であり、
前記第3のパーツは、前記取付穴に着脱自在であり、前記第1の係合部を有するとともに、前記挿入部位よりも上方において、前記第2の係合部の代わりに、前記可倒式緊結装置の外観形状を模した形態が表現されていることを特徴とする請求項7に記載された模型コンテナ車。
【請求項9】
模型コンテナ車において、
コンテナが取り付けられる積載面を有する車両本体と、
前記積載面上に、車幅方向において互いに対向しつつ車長方向に並んで設けられた複数の取付穴とを有し、
前記取付穴には、互いに形態の異なる着脱自在な第1のパーツ、第2のパーツおよび第3のパーツのいずれかが選択的に取り付けられ、
第1のパーツは、前記コンテナを前記積載面に取り付けるために使用され、前記取付穴に挿入される挿入部位内に設けられ、かつ、前記車両本体と係合可能である第1の係合部と、前記挿入部位よりも上方に設けられ、かつ、前記コンテナの内側面と係合可能である第2の係合部とを有するとともに、実車に搭載されている可倒式緊結装置の外観形状を模した形態が表現され、
第2のパーツは、前記コンテナを前記積載面に取り付けるために使用され、前記第1の係合部と、前記第2の係合部とを有するとともに、前記可倒式緊結装置の外観形状を模した形態が表現されておらず、
第3のパーツは、コンテナ非積載時の形態を表現するために使用され、前記第1の係合部を有するとともに、前記挿入部位よりも上方において、前記第2の係合部の代わりに、前記可倒式緊結装置の外観形状を模した形態が表現されていることを特徴とする模型コンテナ車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2010−35799(P2010−35799A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201817(P2008−201817)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】