説明

横型ミルの出口空気温度制御方法及び装置

【課題】石炭乾燥必要熱量を増加させて、負荷変動幅を拡大し得、負荷変化率の大きな運転に対応し得る横型ミルの出口空気温度制御方法及び装置を提供する。
【解決手段】横型ミル2の低負荷運用時に、該横型ミル2へ供給される石炭に所内用水等の水を注入する注水制御手段11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横型ミルの出口空気温度制御方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は横型ミルを備えた石炭焚ボイラ設備の一例を示すものであって、1は石炭焚ボイラ、2はミルモータ(図示せず)によって回転駆動されるドラム内部に多数のボールが装填され石炭を微粉砕して微粉炭とするための横型ミル、3は石炭が貯留されたコールバンカ、4はコールバンカ3に貯留された石炭を切り出すための給炭機、5は給炭機4で切り出された石炭の石炭供給管、6は石炭供給管5から供給される石炭を横型ミル2へ導入すると共に横型ミル2で微粉砕された微粉炭を粗粉と分離して石炭焚ボイラ1へ導くための粗粉分離器、7は石炭焚ボイラ1から排出される排ガスの熱を回収して空気を予熱するための空気予熱器、8は空気予熱器7を通過した熱空気(およそ300[℃]程度)の粗粉分離器6への供給量を調節するための熱空気ダンパ、9は空気予熱器7をバイパスした冷空気(およそ35[℃]程度)の粗粉分離器6への供給量を調節するための冷空気ダンパ、10は石炭焚ボイラ1から排出され空気予熱器7を通過した排ガスを大気放出するための煙突である。
【0003】
図4に示されるような石炭焚ボイラ設備の運転時には、空気予熱器7を通過した熱空気と空気予熱器7をバイパスした冷空気とを熱空気ダンパ8と冷空気ダンパ9との開度調節にて適宜混ぜることにより所要温度に制御された一次空気が粗粉分離器6を介して横型ミル2へ導入されており、この状態で、コールバンカ3に貯留された石炭を給炭機4によって切り出し、石炭供給管5から粗粉分離器6を介して横型ミル2へ導入すると、該横型ミル2の回転駆動されるドラム内部において石炭は、前記一次空気によって乾燥されつつ、ボールの衝撃並びに摩擦等の粉砕作用により微粉砕され、粗粉分離器6で粗粉が分離されて微粉炭のみが一次空気と一緒に石炭焚ボイラ1の図示していないバーナへ供給され、該石炭焚ボイラ1の火炉内において、空気予熱器7を通過して予熱された燃焼用二次空気と前記微粉炭とが混合されて燃焼が行われ、該燃焼熱によって蒸気が発生され、前記石炭焚ボイラ1から排出される排ガスは、図示していない脱硝・集塵装置・脱硫等の環境装置で処理され、空気予熱器7において石炭焚ボイラ1へ供給される空気と熱交換した後、煙突10から大気へ放出されるようになっている。
【0004】
ところで、前述の如き石炭焚ボイラ設備においては、一般に、複数台の横型ミル2(図4には一台のみ図示している)が設置されており、低負荷で運用するニーズがあった場合、前記横型ミル2の運転台数を減らすことで対応しているが、通常、運転台数を二台以下にはしない方針がある。これは、万一、一台の横型ミル2がトリップしたとしても、もう一台の横型ミル2で運転を継続することにより、プラント全体の運転を停止させるという事態を回避するためである。
【0005】
即ち、前記横型ミル2として可能な最低給炭量の二台分に相当する負荷が、運用できる最低負荷となる。
【0006】
尚、前述の如き横型ミルに関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【特許文献1】特開9−253518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の如く、横型ミル2においては、石炭粉砕と乾燥とを行っているが、前記横型ミル2での乾燥の熱量は、図5に示される如く、温度制御されている一次空気による入熱と、前記横型ミル2の動力が熱に置換される、いわゆるミルモータからの入熱とによって供給されている。
【0008】
ここで、要求される負荷の低下に伴って給炭量を引き下げた場合、石炭を乾燥させるのに必要な熱量が減少すると共に、前記熱空気ダンパ8の開度が絞られて一次空気による入熱も減少するが、前記ミルモータからの入熱は、給炭量によらず一定であって減少しないため、トータルの入熱が石炭乾燥必要熱量を上回ると、熱空気ダンパ8を全閉とし且つ冷空気ダンパ9を全開としても、横型ミル2の出口空気温度が上昇してしまい、制御不能となって、運転を停止せざるを得なくなる。因みに、プラントの負荷変動幅を拡大し、負荷変化率の大きな運転に対応するためには、横型ミル2の起動・停止を極力避ける必要がある。
【0009】
しかしながら、前記横型ミル2においては、出口空気温度を制御可能な最低値となる給炭量が、運転を停止させずに継続できる石炭乾燥能力の下限となるため、従来においては、こうした出口空気温度の制御性に伴う制約から、給炭量を絞りきれず、結果的にプラントの負荷も充分には下げられず、運用のニーズに答えられないことがあった。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、石炭乾燥必要熱量を増加させて、負荷変動幅を拡大し得、負荷変化率の大きな運転に対応し得る横型ミルの出口空気温度制御方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、熱空気と冷空気とを熱空気ダンパと冷空気ダンパとの開度調節にて適宜混ぜることにより所要温度に制御された一次空気が導入され、且つ該一次空気によって石炭を乾燥させつつ微粉砕して石炭焚ボイラへ供給する横型ミルの出口空気温度制御装置において、
横型ミル低負荷運用時に、該横型ミルへ供給される石炭に水を注入することを特徴とする横型ミルの出口空気温度制御方法にかかるものである。
【0012】
前記横型ミルの出口空気温度制御方法においては、横型ミルが運転中で、給炭量が設定値以下となり、且つ注水が行われていない状態で、熱空気ダンパの開度が設定値以下となった場合に、石炭への注水を行うようにすることが有効となる。
【0013】
一方、本発明は、熱空気と冷空気とを熱空気ダンパと冷空気ダンパとの開度調節にて適宜混ぜることにより所要温度に制御された一次空気が導入され、且つ該一次空気によって石炭を乾燥させつつ微粉砕して石炭焚ボイラへ供給する横型ミルの出口空気温度制御装置において、
横型ミル低負荷運用時に、該横型ミルへ供給される石炭に水を注入する注水制御手段を備えたことを特徴とする横型ミルの出口空気温度制御装置にかかるものである。
【0014】
前記横型ミルの出口空気温度制御装置においては、前記注水制御手段を、
横型ミルへの石炭供給管に接続され且つ途中に注水弁が設けられた注水ラインと、
横型ミルへの給炭量を検出する給炭量検出器と、
横型ミルが運転中で、前記給炭量検出器で検出される給炭量が設定値以下となり、且つ前記注水弁が閉じている状態で、熱空気ダンパの開度が設定値以下となった場合に、前記注水弁を開く指令信号を出力する制御器と
から構成することが有効となる。
【0015】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0016】
横型ミル低負荷運用時に、該横型ミルへ供給される石炭に水が注入されると、石炭乾燥必要熱量が増加し、横型ミルへのトータルの入熱、即ち一次空気による入熱及びミルモータからの入熱の和が前記石炭乾燥必要熱量を上回ることが避けられ、横型ミルの出口空気温度の制御性を確保しながら、運転を停止させずに継続できる石炭乾燥能力の下限となる給炭量を更に絞ることが可能となり、結果的にプラントの負荷も充分に下げられ、運用のニーズに答えられることとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の横型ミルの出口空気温度制御方法及び装置によれば、石炭乾燥必要熱量を増加させて、負荷変動幅を拡大し得、負荷変化率の大きな運転に対応し得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1〜図3は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図4に示す従来のものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図1〜図3に示す如く、横型ミル2の低負荷運用時に、該横型ミル2へ供給される石炭に所内用水等の水を注入する注水制御手段11を備えた点にある。
【0020】
本図示例の場合、前記注水制御手段11は、
横型ミル2の粗粉分離器6への石炭供給管5に注水ライン12を接続し、該注水ライン12途中に注水弁13を設け、
給炭機4に、横型ミル2への給炭量14aを検出する給炭量検出器14を設け、
横型ミル2が運転中であることを示す横型ミル運転中信号2aと、前記給炭量検出器14で検出される給炭量14aと、前記注水弁13が閉じているか否かを示す注水弁状態信号13aと、熱空気ダンパ8の開度信号8aとが入力され、条件に応じて前記注水弁13を開閉する指令信号13bを出力する制御器15を設ける
ことによって構成してある。
【0021】
又、前記制御器15には、図2に示す如く、前記横型ミル運転中信号2aと、前記給炭量14aと、前記注水弁状態信号13aと、前記熱空気ダンパ8の開度信号8aとに基づき、横型ミル2が運転中で、前記給炭量14aが設定値(例えば、15[t/h])以下となり、且つ前記注水弁13が閉じている状態で、前記熱空気ダンパ8の開度が設定値(例えば、30[%])以下となった場合に、前記注水弁13を開く指令信号13bを出力するAND回路16を内蔵してある。
【0022】
尚、図3は、出力がおよそ600〜700[kW]クラスの石炭焚ボイラ設備における横型ミル2を一例として、横軸に時間を取り、縦軸に、給炭量14a、注水弁13の開度、及び熱空気ダンパ8の開度をそれぞれ取ったタイムチャートである。
【0023】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0024】
横型ミル2の運転時には、注水制御手段11の制御器15に対し、横型ミル2が運転中であることを示す横型ミル運転中信号2aと、給炭量検出器14で検出される給炭量14aと、注水弁13が閉じているか否かを示す注水弁状態信号13aと、熱空気ダンパ8の開度信号8aとが入力されており、出力がおよそ600〜700[kW]クラスの石炭焚ボイラ設備における横型ミル2を一例として挙げると、図3に示す如く、前記給炭量14aが35[t/h]程度の場合には、注水弁13は閉じ、熱空気ダンパ8の開度はおよそ50[%]程度に保持されている。
【0025】
この状態から、負荷の低下に伴って前記給炭量14aが徐々に絞り込まれて行き、前記横型ミル運転中信号2aと、前記給炭量14aと、前記注水弁状態信号13aと、前記熱空気ダンパ8の開度信号8aとに基づき、横型ミル2が運転中で、前記給炭量14aが設定値(例えば、15[t/h])以下となり、且つ前記注水弁13が閉じている状態で、前記熱空気ダンパ8の開度が設定値(例えば、30[%])以下となった場合に、前記注水制御手段11の制御器15におけるAND回路16から前記注水弁13を開く指令信号13bが出力され、該注水弁13が開き、注水ライン12から石炭供給管5に所内用水等の水が供給される。尚、前記注水ライン12から石炭供給管5に供給される水の流量は、およそ1[l/h]程度で良い。
【0026】
前述の如く、横型ミル2の低負荷運用時に、横型ミル2の粗粉分離器6へ供給される石炭に対して注水ライン12から所内用水等の水が注入されると、石炭乾燥必要熱量が増加し、横型ミル2へのトータルの入熱、即ち一次空気による入熱及びミルモータからの入熱の和が前記石炭乾燥必要熱量を上回ることが避けられ、横型ミル2の出口空気温度の制御性を確保しながら、運転を停止させずに継続できる石炭乾燥能力の下限となる給炭量14aを更に、図3に示す如く、13[t/h]程度まで絞ることが可能となり、結果的にプラントの負荷も充分に下げられ、運用のニーズに答えられることとなる。
【0027】
尚、その後、負荷の上昇に伴って前記給炭量14aが徐々に増加して行き、前記給炭量14aが設定値(例えば、15[t/h])を越えると、前記注水制御手段11の制御器15におけるAND回路16から前記注水弁13を開く指令信号13bが出力されなくなり、該注水弁13が閉じ、注水ライン12から石炭供給管5への水の供給が停止される。
【0028】
こうして、石炭乾燥必要熱量を増加させて、負荷変動幅を拡大し得、負荷変化率の大きな運転に対応し得る。
【0029】
尚、本発明の横型ミルの出口空気温度制御方法及び装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す概要構成図である。
【図2】本発明を実施する形態の一例における制御器の論理回路図である。
【図3】本発明を実施する形態の一例における給炭量、注水弁開度、及び熱空気ダンパ開度の関係を示すタイムチャートである。
【図4】横型ミルを備えた石炭焚ボイラ設備の一例を示す概要構成図である。
【図5】通常運転時における石炭乾燥必要熱量と、給炭量減少時における石炭乾燥必要熱量とを示す概念図である。
【符号の説明】
【0031】
1 石炭焚ボイラ
2 横型ミル
2a 横型ミル運転中信号
3 コールバンカ
4 給炭機
5 石炭供給管
6 粗粉分離器
7 空気予熱器
8 熱空気ダンパ
8a 開度信号
9 冷空気ダンパ
11 注水制御手段
12 注水ライン
13 注水弁
13a 注水弁状態信号
13b 指令信号
14 給炭量検出器
14a 給炭量
15 制御器
16 AND回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱空気と冷空気とを熱空気ダンパと冷空気ダンパとの開度調節にて適宜混ぜることにより所要温度に制御された一次空気が導入され、且つ該一次空気によって石炭を乾燥させつつ微粉砕して石炭焚ボイラへ供給する横型ミルの出口空気温度制御装置において、
横型ミル低負荷運用時に、該横型ミルへ供給される石炭に水を注入することを特徴とする横型ミルの出口空気温度制御方法。
【請求項2】
横型ミルが運転中で、給炭量が設定値以下となり、且つ注水が行われていない状態で、熱空気ダンパの開度が設定値以下となった場合に、石炭への注水を行うようにした請求項1記載の横型ミルの出口空気温度制御方法。
【請求項3】
熱空気と冷空気とを熱空気ダンパと冷空気ダンパとの開度調節にて適宜混ぜることにより所要温度に制御された一次空気が導入され、且つ該一次空気によって石炭を乾燥させつつ微粉砕して石炭焚ボイラへ供給する横型ミルの出口空気温度制御装置において、
横型ミル低負荷運用時に、該横型ミルへ供給される石炭に水を注入する注水制御手段を備えたことを特徴とする横型ミルの出口空気温度制御装置。
【請求項4】
前記注水制御手段を、
横型ミルへの石炭供給管に接続され且つ途中に注水弁が設けられた注水ラインと、
横型ミルへの給炭量を検出する給炭量検出器と、
横型ミルが運転中で、前記給炭量検出器で検出される給炭量が設定値以下となり、且つ前記注水弁が閉じている状態で、熱空気ダンパの開度が設定値以下となった場合に、前記注水弁を開く指令信号を出力する制御器と
から構成した請求項3記載の横型ミルの出口空気温度制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−246407(P2008−246407A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92622(P2007−92622)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】