説明

横編機用カムシステム

【課題】 できるだけ少数の移動可能なカム部分を持つ簡単な構造の横編機用カムシステムを提供する。
【解決手段】 編目形成カムとして又は目移しカムとして選択的に切換え可能で編針の駆動バット用の互いに離れた2つの始動個所を持つ針カム100を持つ横編機用カムシステムであって、各始動個所において、針カム100の切換え位置に応じて異なる2つの通路曲線ST,FA,UG,UNの1つに、駆動バットが係合可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合編目形成−目移しカムとして構成される少なくとも1つの針カムを持つ横編機用カムシステムであって、針カムの部分的に移動可能なカム部分により、編目形成、タック形成、編針の編目引渡し及び引受けの機能のため、針床の針溝に設けられる編針の駆動バット用の異なる通路曲線が形成可能であるものに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなカムシステムは既に久しく公知である。例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第3433628号明細書は、横編機の編針用の複数の異なる押出し曲線を持つ編成カムを記載している。カム部分の位置に応じて編針の駆動バット用の曲線が形成され、編目形成、タック形成、編目の引渡し、編目の引受けのため編針を押出し、続いて針溝へ戻す。その際編針の駆動バットは、編目引渡しのためにのみ、先行する目外しカムの前で始動される。他の3つの機能のために、駆動バットが更に内側にあって針カムで始動され、カム部分の適当な移動によって異なる機能が行われ、カム部分がその切換え位置に応じて3つの異なる通路曲線を形成する。この公知のカムは、従って比較的多くのカム部分を必要とし、構造及び製造に費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って本発明の基礎になっている課題は、できるだけ少数の移動可能なカム部分を持つ横編機用カムシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によればこの課題は最初にあげた種類のカムシステムにおいて、針カムが互いに離れた2つの始動個所をカムシステムの各運動方向に持ち、これらの始動個所において駆動バットが、移動可能なカム部分の切換え位置に応じて2つの異なる通路曲線のそれぞれ1つに係合可能であることによって解決される。
【0005】
針カムにより生じる編針の4つの異なる運動経過を針バット用の2つの選択個所に分割し、各選択個所において移動可能なカム部分の切換えにより、2つの可能な通路曲線のそれぞれ1つを形成できることによって、本発明によるカムシステムは、従来技術による針カムより少ないカム部分で足りる。
【0006】
好ましい構成では、針カムが、その中心軸線に対して対称に設けられる2つの引下げ部分を持ち、第1の始動個所が、カムシステムの運動方向において先行する引下げ部分の前に設けられ、第2の始動個所が、この引下げ部分の後に設けられている。それにより引下げ部分は、編針の駆動バットに対して2つの異なる通路曲線の側方限界を形成する。
【0007】
その際編目形成カムとしての針カムの切換えにおいて、第1の始動個所における編針の駆動バットと針カムとの係合によって、編目が形成可能であり、第2の始動個所における編針の駆動バットと針カムとの係合によってそれぞれ1つのタックが形成可能であるのが更に好ましい。それに応じて目移しカムとしての針カムの切換えにおいて、第1の始動個所における編針の駆動バットと針カムとの係合によって、それぞれ1つの編目が引渡し可能であり、第2の始動個所における編針の駆動バットと針カムとの係合によって、それぞれ1つの編目が引受け可能である。こうして編目形成カムとして又は目移しカムとしての針カムの切換えに関係して、第1の始動個所において編目形成又は編目引渡しのため編針の選択を行い、第2の始動個所において、タック形成及び編目引受けのため編針の選択を行うことができる。
【0008】
針カム中央の範囲において、タックカム部分又は引受けカム部分が選択的に動作位置へ切換え可能であると、カムシステムが特に簡単な構造をとる。これら両方のカム部分の選択的な始動により、針カム全体を編目形成カムとして又は目移しカムとして切換えることができる。
【0009】
その際第2の始動個所がタックカム部分及び引受けカム部分の前に設けられていると有利である。それにより編針の始動される駆動バットの案内を、タック曲線又は引受け曲線によって保証することができる。
【0010】
本発明によるカムシステムの針カムにより、1つの駆動バットのみを持つ編針が運動可能であるのがよい。1つの駆動バットのみを持つ編針は小さい長さを持ち、複数の駆動バットを持つ編針より簡単に選択可能である。
【0011】
更に編針の駆動バットが、始動個所において、針床に沈下した位置から、針床から突出する位置へもたらされると、有利である。これは、例えば選針カム装置及び/又はシンカカム装置を介して行うことができる。しかし編針の駆動バットは、編針を選択しない場合にも、プレッサカム部分により針床へ沈下可能である。
【0012】
本発明によるカムシステムの好ましい実施例が、図面により以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】 駆動バットが動作しない編針の概略図(a)、及び動作しない駆動バットの通路を記入されかつ編目形成カムとして切換えられている針カムの概略図(b)を示す。
【図2】 駆動バットが動作している編針の概略図(a)、及び動作している駆動バット用の通路曲線を持ちかつ編目形成カムとして切換えられている針カムの概略図(b)を示す。
【図3】 駆動バットが動作しない編針の概略図(a)、及び動作しない駆動バットの通路を記入されかつ見移しカムとして切換えられている針カムの概略図(b)を示す。
【図4】 動作している駆動バットを持つ編針の概略図(a)及び駆動バット用の通路を記入されかつ目移しカムとして切換えられている針カムの概略図(b)を示す。
【図5】 編目形成カムとして切換えられている針カム及び目移しカムとして切換えられている針カムの概略図を示し、動作している駆動バット用の通路曲線も記入されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1a,2a,3a及び4aは、端部に駆動バット210を設けられた編針200をそれぞれ概略図で示し、駆動バット210を設けられる揺動レバー220は、限定された範囲で揺動可能に針幹230に設けられている。編針200は針床250内にある。
【0015】
図1aでは、編針200の駆動バット210は始動されていない。この状態で駆動バット210は針幹230から突出しておらず、従って図1bに示す針カム100に係合することはできない。それにより針カム100が鎖線で記入されて水平に延びる線300に沿って矢印方向110に動く間、駆動バット210は針カム100を通過する。従って編針200の駆動は行われない。
【0016】
図1bによれば、針カム100は編目形成カムとして切換えられている。針カム100は運動方向110において先行する引下げ部分120及び追従する引下げ部分130を持っている。両方の引下げ部分120,130は、それぞれ両方向矢印125,135の方向に移動可能に設けられている。引下げ部分120,130の移動の際、これらの引下げ部分に固定的に結合される橋絡片状カム部分140,150も一緒に移動される。中心線Mに対して対称に構成されている針カム100の中央に、針カム100が属するカムシステムの両方の運動方向に同じ針運動を可能にするために、台形状の固定カム部分160が設けられている。カム部分160のすぐ上に、積極的に又は非積極的に切換え可能なタックカム部分Aが設けられている。タックカム部分Aの上に間隔をおいて、扁平な台形状の固定カム部分Cが設けられている。編針200の駆動バット210は、2つの異なる個所AS1及びAS2において始動可能であろうが、これは図1に示す場合には起こらず、即ち編針200は針カム100によって動かされない。
【0017】
図2は再び編目形成カムとして切換えられている針カム100を示す。すべてのカム部分120,130,140,150,160、A及びCは、図1bに示すのと同じ位置にある。しかし図2aによれば、編針200の駆動バット210が始動され、それにより針幹230から突出し、従って針カム100により捕捉可能である。始動個所AS1において始動が行われると、駆動バット210が先行する引下げ部分120により鎖線STに沿って押出され、引下げ部分120と橋絡片状カム部分140との間の通路を通り、それからカム部分Cを通り、続いて追従する引下げ部分130により再び下方へ動かされる。駆動バット210が通路曲線STに従うと、編針200により編目を形成することができる。これに反し編針200の駆動バット210が、先行する引下げ部分120の後に設けられている始動個所AS2で初めて始動されると、駆動バット210は先行する引下げ部分120を通過し、それからカム部分160及びAの側面に沿いかつカム部分AとCとの間を通りかつ追従する引下げカム130に沿って再び下方へ延びる通路曲線FAに従って動く。駆動バット210が通路曲線FAに従うと、編針200によりタックを形成することができる。
【0018】
図3aは、図1aのように編針200の始動されない位置を示す。駆動バット210は針カム100によっては捕捉されない。従って駆動バットは図1と同様に水平な軌道300上を通過する。しかし図1bとは異なり図3bは、目移しカムとしての位置にある針カム100を示す。編目形成カム切換えと比較して、先行する引下げ部分120が更に上方へ移動されている。タックカム部分Aはカム部分160から離れて不動作位置へもたらされ、図示した例では下の位置から上の位置へ動かされている。
【0019】
図4aでは、編針200の駆動バット210が始動され、この始動は、先行する引下げ部分120の前の始動個所AS1又は引下げ部分120の後の始動個所AS2で行うことができる。始動個所AS1で始動が行われると、駆動バット210は、引下げ部分120に沿って上方へ引下げ部分120と橋絡片状カム部分140との間を通りかつカム部分Cを通過しかつ追従する引下げ部分130に沿って再び下方へ延びる通路曲線UGに従う。駆動バット210が曲線UGに従うと、編針200は編目引渡しのための押出される。
【0020】
これに反し始動個所AS2で駆動バット210の始動が行われると、まで動作しない駆動バット210は先行する引下げ部分120を通過し、それからカム部分160とAとの間の通路曲線UNに従い、引下げ部分130に沿って再び下方へ動かされる。駆動バット210210が通路曲線UNに従うと、編目を引受けることができる。
【0021】
図5は、2つの針カム100が横に並んでいる図を示し、左に示す図2による針カムが編目形成カムとして切換えられ、右に示す図4による針カムが目移しカムとして切換えられている。この図は、始動される編針の駆動バットが針カム100を通ってとることができる4つの通路曲線ST,FA,UG及びUNを示す。更に編目形成カム及び目移しカムとしての針カム100の切換えの相違が認められる。編目形成カムの切換えにおいて、運動方向110に延びる引下げ部分120が、右に示す目移しカム切換えにおけるより低い所に設けられている。図1〜4に示す針カムとは異なり、編目引受けとタック形成との区別は、カム部分Aの移動によっては行われず、カム部分A又はBの選択的な遮断によって行われる。カム部分の始動又は停止は、駆動バット210の係合範囲からのカム部分の没入又は引戻しによって行われる。
【0022】
図5aではカム部分Aが動作に、カム部分Bが不動作に切換えられている。始動個所AS2における駆動バット210の始動の際、編針はタックを編む。
【0023】
図5bではカム部分Bが動作に、カム部分Aが不動作に切換えられている。始動個所AS2における駆動バット210の始動の際、編針は編目を引受ける。
【0024】
針カム100の切換え位置及び始動個所AS1又はAS2における駆動バットの選択に応じて、編針の駆動バットが4つの通路曲線ST,FA,UG又はUNの1つを通り、それにより編針が可能な機能の1つ、即ち編目形成、タックの形成、編目引渡し又は編目引受けを行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合編目形成−目移しカムとして構成される少なくとも1つの針カム(100)を持つ横編機用カムシステムであって、針カム(100)の部分的に移動可能なカム部分(120,130,140,150,160、A,B,C)により、編針(200)の編目形成、タック形成、編目引渡し及び引受けの機能のため、針床(250)の針溝に設けられる編針(200)の駆動バット(210)用の異なる通路曲線(ST,FA,UG,UN)が形成可能であるものにおいて、針カム(100)が互いに離れた2つの始動個所(AS1,AS2)をカムシステムの各運動方向に持ち、これらの始動個所(AS1,AS2)において駆動バット(210)が、移動可能なカム部分の切換え位置に応じて2つの異なる通路曲線のそれぞれ1つに係合可能であることを特徴とする、カムシステム。
【請求項2】
針カム(100)が、その中心軸線(M)に対して対称に設けられる2つの引下げ部分(120,130)を持ち、第1の始動個所(AS1)が、カムシステムの運動方向(110)において先行する引下げ部分(120)の前に設けられ、第2の始動個所(AS2)が、この引下げ部分(120)の後に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のカムシステム。
【請求項3】
編目形成カムとしての針カム(100)の切換えにおいて、第1の始動個所(AS1)における編針(210)の駆動バット(210)と針カム(100)との係合によって、編目が形成可能であり、第2の始動個所(AS2)における編針(200)の駆動バット(210)と針カム(100)との係合によってそれぞれ1つのタックが形成可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のカムシステム。
【請求項4】
目移しカムとしての針カム(100)の切換えにおいて、第1の始動個所(AS1)における編針(200)の駆動バット(210)と針カム(100)との係合によって、それぞれ1つの編目が引渡し可能であり、第2の始動個所(AS2)における編針(200)の駆動バット(210)と針カム(100)との係合によって、それぞれ1つの編目が引受け可能であることを特徴とする、請求項1〜3の1つに記載のカムシステム。
【請求項5】
針カム中央(M)の範囲において、タックカム部分(A)又は引受けカム部分(B)が選択的に動作位置へ切換え可能であることを特徴とする、請求項1〜4の1つに記載のカムシステム。
【請求項6】
第2の始動個所(AS2)がタックカム部分(A)及び引受けカム部分(B)の前に設けられていることを特徴とする、請求項5に記載のカムシステム。
【請求項7】
先行する引下げ部分(120)の異なる位置により、編針(200)が選択的に編目形成位置又は編目引渡し位置へ針溝内で押出し可能であることを特徴とする、請求項1〜6の1つに記載のカムシステム。
【請求項8】
針カム(100)により、1つの駆動バット(210)のみを持つ編針(200)が運動可能であることを特徴とする、請求項1〜7の1つに記載のカムシステム。
【請求項9】
編針(200)の駆動バット(210)が、始動個所(AS1,AS2)において、針床(150)に沈下した位置から、針床(150)から突出する位置へもたらされることを特徴とする、請求項1〜8の1つに記載のカムシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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