説明

横編機

【課題】ニードルプレートの上部側に作用する横方向の負荷に対し効果的に抗することができる横編機を提供する。
【解決手段】針床1に並設された複数のプレート溝12と、この各プレート溝12にそれぞれ立設されたニードルプレート3と、互いに隣接するニードルプレート3の間に配置された編針2とを備えた横編機において、各ニードルプレート3の一側面に、それぞれの一側において隣接するニードルプレート3に対しほぼ接する位置まで突出して当該各ニードルプレート3自身の倒れを防止する第1〜第4凸部51〜54を設けている。各凸部51〜54を、ニードルジャック22、セレクトジャック23、及びセレクタ24を各ニードルプレート3に対し位置決めしていたワイヤの取付位置に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針床に並設した複数のプレート溝にそれぞれニードルプレートを立設し、その互いに隣接するニードルプレート同士の間に編針を配置した横編機に関し、詳しくは、各ニードルプレートの倒れを防止する構造に係る。
【背景技術】
【0002】
この種の横編機では、ゲージ数が大きくなるに従い互いに隣接する編針同士のピッチが細かくなるため、各ニードルプレートの板厚も薄くなって横方向(並設方向)に倒れ易いものとなる。
【0003】
特許文献1では、針床の後端側(歯口とは反対側)においてプレート溝と直交する方向に延びるプレート固定溝に長尺なプレート固定部材を収容し、このプレート固定部材に対し係合する固定凹部を各ニードルプレートの下面に形成する。そして、プレート固定部材を下方からボルトで固定するに従って、プレート固定溝の底部に向かう押圧力を固定凹部に作用させることで、ニードルプレートをプレート溝に引き付けて強固に固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−161870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常の使用時には問題がなくても、編成速度(キャリッジの走行速度)が速くなると、ニードルジャック、セレクトジャック、セレクタ等の動作制御部材を介してニードルプレートに加わる横方向(編針の進退方向に直交する方向)の負荷が大きくなる。
【0006】
その場合、前記従来のものにおいても、ニードルプレートに加わる横方向の負荷に抗することができるものの、このような負荷は、ニードルプレートの上部側(反プレート溝側)に作用している。このため、ニードルプレートに撓みが生じ易く、過度の負荷によっては倒れるおそれもあり、横方向の負荷に対して効果的に抗する手法が切望されていた。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ニードルプレートの上部側に作用する横方向の負荷に対し効果的に抗することができる横編機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明では、針床に並設された複数のプレート溝と、この各プレート溝にそれぞれ立設されたニードルプレートと、互いに隣接するニードルプレートの間に配置された編針とを備える横編機を前提とする。そして、前記各ニードルプレートの一側面に、それぞれの一側において隣接するニードルプレートに対しほぼ接する位置まで突出して当該各ニードルプレート自身の倒れを防止する凸部を設けている。
【0009】
また、前記凸部を、前記各編針の動作を制御する動作制御部材の動作時の軌跡から外れた位置に設けることが好ましい。
【0010】
また、前記凸部を、前記隣接するニードルプレート間の針溝において前記動作制御部材を前記各ニードルプレートに対し位置決めする位置決め部材として兼用していてもよい。
【0011】
更に、前記凸部を、前記各ニードルプレートの一側面より一体的に膨出させるようにプレス加工により形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る横編機によれば、各ニードルプレートの一側面にその一側に隣接するニードルプレートに対しほぼ接する位置まで突出する凸部を設けて自身の倒れを防止している。これにより、ニードルプレートの上部側に作用する横方向の負荷が凸部を介して隣接するニードルプレートに順次逃がされて撓みや倒れが生じることがなく、横方向の負荷に対し効果的に抗することができる。しかも、各ニードルプレートの一側面に凸部を設けるだけの簡単な構成で済む。
【0013】
また、動作制御部材の動作時の軌跡から外れた位置に凸部を設けることで、凸部が動作制御部材と衝突することがなく、動作制御部材による各編針の動作を円滑に行うことができる。
【0014】
また、動作制御部材を各ニードルプレートに対し位置決めする位置決め部材として凸部を兼用することで、位置決め部材を廃止して部品点数の削減を図ることができる。
【0015】
更に、凸部を各ニードルプレートの一側面よりプレス加工により一体的に膨出させることで、新たな部品を用いずに凸部が得られ、部品点数の更なる削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る横編機のプレート溝の並設方向直後で切断した針床の縦断側面図である。
【図2】図1のプレート溝の並設方向直前で切断した針床の縦断側面図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の横編機の好適な実施の形態を図面と共に以下詳細に説明する。
【0018】
図1は横編機のプレート溝の並設方向直後で切断した針床の縦断側面図である。図2はプレート溝の並設方向直前で切断した針床の縦断側面図である。
【0019】
本発明の横編機は、針床1の長手方向(紙面手前奥方向)に並設された複数のプレート溝12と、この各プレート溝12にそれぞれ立設されたニードルプレート3と、互いに隣接するニードルプレート3,3の間に配置された編針2とを備えている。この編針2は、針床1の互いに隣接するニードルプレート3,3同士の間に形成されたそれぞれの針溝11に一本ずつ配置されている。各針溝11は、互いに隣接するニードルプレート3,3同士と、針床1の上面10とで囲まれた空間に位置している。なお、図1及び図2では、ニードルプレート3の歯口g側(先端側)に設ける可動シンカーを省略している。
【0020】
針床1の歯口g側には、図2に示すように、各プレート溝12と直交する方向に延びる先端係止溝13が設けられ、この先端係止溝13の内部にワイヤ41が配置されている。各ニードルプレート3の歯口g側には、ワイヤ41を係止する先端係止凹部31が設けられている。各ニードルプレート3は、その底面に接着剤を塗布し、ワイヤ41を先端係止凹部31の内部で係止した状態で、プレート溝12の最深部に当接するように嵌め込まれている。各ニードルプレート3の歯口gと反対側(後端側)には、V字切欠部32が形成されている。各ニードルプレート3は、V字切欠部32を尖端部材(図示せず)により叩いてかしめることで、くさび効果により針床1に固定される。つまり、各ニードルプレート3は歯口g側に押し込まれている。
【0021】
各ニードルプレート3には、歯口g側に係合溝33及び係合孔34が設けられている。各ニードルプレート3は、当該各ニードルプレート3の並設方向に延びる鋼帯42及びワイヤ43が係合溝33及び係合孔34にそれぞれ嵌め込まれて位置決めされ、高さが揃えられている。
【0022】
編針2は、ニードル本体21と、このニードル本体21の動作を制御する動作制御部材としてのニードルジャック22、セレクトジャック23、及びセレクタ24とを備えている。このニードル本体21以外の部材22〜24は、当該各部材22〜24に設けられたバットにカムやプレッサーなどによる押圧力が作用すると、針溝11内に沈み込むように構成されている。この編針2は、ニードル本体21の上面がスペーサ5の下面とほぼ接するように構成され、歯口g方向に進退する編成動作を行う際に針溝11から外れないようになっている。スペーサ5は、鋼帯42とワイヤ43とにそれぞれ係合することで位置決めされる。
【0023】
各ニードルプレート3の一側面(図1及び図2では紙面手前側面)の歯口gとは反対側(図1及び図2では左側)には、先端側から順に第1〜第4凸部51〜54が設けられている。
【0024】
図3は図2のA−A線における断面図である。この図3に示すように、各凸部51〜54(図3では第3凸部53のみ示す)は、それぞれの一側(図3では右側)において隣接するニードルプレート3に対しほぼ接する位置まで突出し、当該各ニードルプレート3自身の倒れを防止している。
【0025】
各凸部51〜54は、ニードルジャック22、セレクトジャック23、及びセレクタ24の所定の動作(進退及び浮き沈み)の軌跡から外れた位置に設けられ、当該各部材22〜24の動作時に衝突が回避される。具体的には、各凸部51〜54は、従来よりニードルジャック22、セレクトジャック23、及びセレクタ24を針溝11から外れないように各ニードルプレート3に対し位置決めしていたワイヤの取付位置に設けられる。要するに、各凸部51〜54は、従来のワイヤに代えて、ニードルジャック22、セレクトジャック23、及びセレクタ24を各ニードルプレート3に対し位置決めする位置決め部材として兼用されている。
【0026】
各凸部51〜54は、各ニードルプレート3の一側面より一体的に膨出するようにプレス加工により形成されている。この各凸部51〜54は、一側に膨出する膨出端の一側面の直径sが他側(図3では左側)において凹む他側面の凹端縁の直径tよりも大径に形成されていることで、編成速度(キャリッジの走行速度)が速くなった際などにニードルプレート3の上部側に作用する横方向の負荷が各凸部51〜54を介して隣接するニードルプレート3に順次逃がされる。この場合、プレス加工による各凸部51〜54の形成は、各ニードルプレート3の切り抜き加工と同時又は切り抜き加工後に行われる。なお、各ニードルプレート3にその一側面より突出するピン部材などを取り付けて凸部が構成されていてもよい。
【0027】
各ニードルプレート3の第2凸部52の上方には、係合溝35が設けられている。各ニードルプレート3の第3凸部53と第4凸部54との間には、係合孔36が設けられている。各ニードルプレート3は、当該各ニードルプレート3の並設方向に延びる鋼帯44及びワイヤ45が係合溝35及び係合孔36にそれぞれ嵌め込まれて位置決めされ、高さが揃えられている。なお、各ニードルプレート3の係合孔36の対応位置にも、ワイヤに代えて凸部が形成されていてもよい。
【0028】
本実施の形態では、各ニードルプレート3の一側面に第1〜第4凸部51〜54を設けるだけの簡単な構成で、各ニードルプレート3の上部側に作用する横方向の負荷が各凸部51〜54を介して隣接するニードルプレート3に順次逃がされて撓みや倒れが生じることがなく、横方向の負荷に対し効果的に抗することができる。
【0029】
また、各凸部51〜54を、従来のワイヤの取付位置に設けることで、ニードルジャック22、セレクトジャック23、及びセレクタ24によるニードル本体21の動作の制御を各凸部51〜54と衝突せずに円滑に行うことができる。しかも、ニードルジャック22、セレクトジャック23、及びセレクタ24の位置決め部材として第1〜第4凸部51〜54を兼用することで、位置決め部材を廃止して部品点数の削減を図ることができる。
【0030】
更に、プレス加工により各ニードルプレート3の一側面より第1〜第4凸部51〜54を一体的に膨出させることで、新たな部品を用いずに各凸部51〜54が得られ、部品点数の更なる削減を図ることができる。
【0031】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨に逸脱しない範囲において実施可能である。例えば、前記実施の形態では、ニードルジャック22、セレクトジャック23、及びセレクタ24を位置決めするワイヤの取付位置に各凸部51〜54を設けたが、これらの部材22〜24の動作時の軌跡から外れた位置であれば何処に凸部を設けてもよい。
【0032】
また、前記実施の形態では、各ニードルプレート3の一側面に4つの凸部51〜54を設けたが、凸部の個数はこれに限定されるものではなく、2つ又は3つ若しくは5つ以上設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 針床
11 針溝
12 プレート溝
2 編針
22 ニードルジャック(動作制御部材)
23 セレクトジャック(動作制御部材)
24 セレクタ(動作制御部材)
3 ニードルプレート
51〜54 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針床に並設された複数のプレート溝と、この各プレート溝にそれぞれ立設されたニードルプレートと、互いに隣接するニードルプレートの間に配置された編針とを備える横編機において、
前記各ニードルプレートの一側面には、それぞれの一側において隣接するニードルプレートに対しほぼ接する位置まで突出して当該各ニードルプレート自身の倒れを防止する凸部が設けられていることを特徴とする横編機。
【請求項2】
前記凸部は、前記各編針の動作を制御する動作制御部材の動作時の軌跡から外れた位置に設けられている請求項1に記載の横編機。
【請求項3】
前記凸部は、前記隣接するニードルプレート間の針溝において前記動作制御部材を前記各ニードルプレートに対し位置決めする位置決め部材として兼用されている請求項2に記載の横編機。
【請求項4】
前記凸部は、前記各ニードルプレートの一側面より一体的に膨出するようにプレス加工により形成されている請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の横編機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−233274(P2012−233274A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101451(P2011−101451)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000151221)株式会社島精機製作所 (357)
【Fターム(参考)】