説明

樹木による建物間の目隠し方法とそれに使用する樹高嵩上装置

【課題】自然の景観を損なうことなく、簡単且つ効果的に中低層マンション等の隣接する建物間の目隠しをおこなうことのできる目隠し方法を提供する。
【解決手段】マンション等の対向する建物の間の敷地に、目隠しをおこなう階の高さに応じて地面からの高さを異ならせた複数種類の中空柱体からなる樹高嵩上装置1、1a、1bを立設し、それぞれに樹木をT、Ta、Tbを植栽して、これらの樹高嵩上装置1、1a、1bにより高さを嵩上げされた樹木T、Ta、Tbによって、対応する高さの各階の目隠しをおこなう。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅団地など、隣接して建てられた建物の中低層階の目隠しを樹木によっておこなう方法及びその方法に使用する樹高嵩上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅団地の建物のベランダや窓を外部から覗かれないように目隠しをするために、例えば、特許文献1(特開2006−307620号公報)に記載されているように、ベランダ周囲の手摺りに格子状のパネルを目隠しとして張り巡らす方法や、特許文献2(特開2003−321818号公報)に記載されているように、住宅団地の各居宅を生垣を兼ねる擁壁で囲んで防音目隠しとする方法が提案されている。
また、住宅団地内の自然の景観を損なわずに目隠しをおこなうとともに緑を増やすために、建物間の高木と低木を組み合わせて樹木を植栽することもおこなわれている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−307620号公報
【特許文献2】特開2003−321818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような、ベランダにネット状のカーテンや目隠しを張り巡らす方法は、各入居者が個別に目隠しをおこなう必要があるとともに、自然な景観が損なわれる問題がある。
【0005】
また、特許文献2に記載されている方法では、上階まで目隠しするために擁壁を高くすると、その分、擁壁の底面積は必然的に増大し、その結果、建物周囲に残された共有敷地面積が擁壁に大きく占有されてしまう問題が生じるとともに、冬季には擁壁によって室内へ日差しが妨げられてしまう問題もある。
【0006】
一方、住宅団地の建物間の敷地に樹木を植栽して目隠しをおこなう方法によれば、自然の景観を損なうこともなく、夏季に葉が茂って冬季に落葉する広葉樹を植栽すれば、冬場には落葉するので日照の妨げになる問題は解消できる。
【0007】
しかしながら、一般に高さが10m以上になる高木は、植栽費用や定期的な枝払い等の保守作業の費用が嵩むとともに、苗木を植栽してから高階の目隠しが可能な高さに成長するまでに長期間かかる問題があり、また、成長したときに、下方の枝葉が下位階のベランダや窓にかかって枝葉についた虫等が室内に侵入するという問題が生ずる場合がある。
【0008】
そこで、本発明は、前述したような従来の目隠し方法の問題点を解消し、自然の景観を損なうことなく、簡単且つ効果的に対向する建物の低中層階の目隠しをおこなうことをできるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の建物間の目隠し方法は、建物間の敷地に、目隠しする階の高さに応じて地面からの高さを異ならせた複数種類の中空柱体を立設し、それぞれの中空柱体に樹木を植栽して、中空柱体により高さを嵩上げされた樹木によって目隠しをおこなうものである。
【0010】
また、本発明の樹高嵩上装置は、目隠し方法に使用するものであって、地中に埋設される部分にアンカー装置を設けて転倒を防止し、上部に樹木の転倒を防止するためのステー留め具を設けたものである。
【0011】
本発明の樹高嵩上装置においては、上部に継手を設けて軸方向に連結自在とし、地面からの高さを適宜変更することができるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の建物間の目隠し方法によれば、手入れが容易で安価な低木を使用して高木と同等の高さまで中空柱体によって嵩上げすることによって目隠しを簡単且つ効果的におこなうことができる。
【0013】
また、断面及び地面からの高さが異なる複数種類の中空柱体を立設して、中空柱体の地面からの高さを、目隠しする建物の階に応じて設定できる。
【0014】
建物間の目隠しを中空柱体で嵩上げした樹木によっておこなうため、建物の居住者に対しては、自然な景観と変わるところがない。しかも、中空柱体周囲の地面は高木を植栽した場合のように広範囲に根が拡がることがなく、花壇や通路等に有効利用することができる。
【0015】
継手を設けた空柱体ユニットの連結数の増減により、目隠しする階に応じた高さの中空柱体を簡単に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の目隠し方法の概念図であり、実際の樹木のレイアウトを示すものではない。隣接する建物A1、A2間の敷地Gに立設した樹木嵩上装置1に背丈の低い樹木Tを植栽することにより樹木Tの高さを高木と同等な高さに嵩上げして視線を遮り、目隠しをおこなうものである。
【0017】
図1に示した樹木嵩上げ装置1は、中空の柱体であり、断面は円形、四角形など適宜の断面形状とすることができる。
同図において、敷地Gには樹木嵩上装置1の他、サイズが異なる種類の樹木嵩上装置1a、1bを例示してある。これらの樹木嵩上装置1、1a、1bはサイズは異なるが、同じ構造である。樹木嵩上装置1のサイズの一例は、地面からの高さが約4m、外径は1350mmであり、植栽される2〜3mの樹木Tの地面からの高さは約8m〜9mに嵩上げされ、樹木Tによって3階〜4階程度まで目隠しをすることができる。
【0018】
また、樹木嵩上装置1aは、地面からの高さが2m、断面が円形の場合外径は700mmであり、樹木Taの高さは約3mで、全体の高さは約5mである。一方、樹木嵩上装置1bは、地面からの高さが1.5mであるが、外径は中空柱体1aと同じ700mmであり、この上端に植えられた高さ約2.5mの低木Tbを、地面からの高さ約4mに嵩上げしており、何れも2階程度までの目隠しに使用する。
なお、図示していないが、これらの樹木嵩上装置1、1a、1bは、地震や強風の際に転倒することがないように転倒防止手段を施す。
【0019】
図2は、樹木嵩上装置1の具体例であり、中空柱体3は鉄筋コンクリート製であり、遠心成形したものである。この樹木嵩上げ装置1の基部を地中に構築した基礎2中に埋設固定してある。中空柱体3の下部には、転倒防止のアンカー装置としてアンカー棒4が十字に中空柱体3を貫通して設けてある。
中空柱体3には土壌Sまたは人工土壌が充填してあり、底部には小石が充填してある。中空柱体3の側壁の基礎2の上部には水抜き穴6が形成してあり、穴には適宜のフィルターが設置してあり、内部の水を土中に排水できるようにしてある。中空柱体3内の土壌Sは、樹木Tが順調に成長し、枯れることのないように適切な土壌の種類及び粒度を選択する。
【0020】
図3は、樹木嵩上装置1の他の実施例であり、中空柱体3に継手35を設けたものであり、これをユニット31として継手35を利用してユニットを連結することによって所望の高さの嵩上げ装置1とするものである。
【0021】
各柱体ユニットの継手35を利用して連結し、連結状態で継手35にモルタル等を充填するなどして一体化する。
なお、中空柱体3は鉄筋コンクリート製のほか、例えば、ステンレス鋼管、繊維強化樹脂などで製造することもできる。
【0022】
嵩上げ装置1の側面を木の幹のように化粧して偽木としたり、自然石を貼り付けたり、また、苔やツタ等の植物を繁茂させて、周囲の自然な景観に調和させるようにしてもよい。また、外灯などの照明や防災放送用のスピーカ等、更には監視カメラを柱体に設置する。
【0023】
図4に示す例は、ヒューム管を中空柱体として利用したものであり、低コストで中空柱体を調達することができる。ヒューム管をユニットとして接続し、樹木Tを植栽したものである。樹木が高く強風によって転倒の恐れがある場合には、中空柱体3の上部に穴をあけてステー固定具71を設け、樹木Tにステー7を取り付けて緊張固定して樹木Tの転倒を防止するものである。更に、樹木嵩上げ装置1の転倒を防止するために中空柱体3の中間部にステー固定具72を設けてステー8を基礎2との間に張設する。
【0024】
図5に示す樹木嵩上装置1は、コンクリートの柱体11や鋼管、若しくは、型鋼材12を四角形や三角形に配置して地盤中に形成した基礎2に固定したものによって適宜の高さにプランター10を支持したものである。図6に示すプランター10は、樹木Tを植栽する円形または四角形の函体であり、その底部中央に地盤に達する延長部13が設けてある。この延長部13内にはプランター10内と同様の土壌または人工土壌若しくは樹脂からなる代替土壌が充填されており、樹木Tの根が地盤内にまで延びていくことができるようにしてある。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の樹木による建物間の目隠し方法は、住宅団地等の建物間におけるベランダや窓の目隠しに利用することができる。また、本発明の樹高嵩上装置は、前記目隠し方法の実施に利用できる他、公園や遊歩道等の景観を向上させるためにも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の建物間の目隠し方法の概念図。
【図2】樹高嵩上げ装置の断面図。
【図3】ユニット接続型の樹高嵩上げ装置の断面図。
【図4】樹高嵩上げ装置にステーを設置した実施例の断面図。
【図5】樹高嵩上げ装置の他の実施例の断面図。
【図6】樹高嵩上げ装置の他の実施例の断面図。
【符号の説明】
【0027】
1 樹木嵩上装置
11 柱体
2 基礎
3 中空柱体
31 中空柱体ユニット
4 アンカー装置
6 水抜孔
7、8 ステー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物間の敷地に、目隠しをおこなう階の高さに応じて地面からの高さの異なる樹木を植栽した樹木嵩上げ装置を配設し、地面から嵩上げされた樹木によって対応する高さの階の目隠しをおこなう建物間の目隠し方法。
【請求項2】
請求項1の目隠し方法に使用される樹高嵩上げ装置であって、下端に転倒防止用のアンカー装置を備えた中空柱体であり、上部に樹木転倒防止用のステー留め具が設けてある樹高嵩上装置。
【請求項3】
請求項2において、樹高嵩上げ装置の上部に継手が設けてあり、連結することによって高さを調整することができる樹高嵩上装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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