説明

樹木の生育保護ユニット

【課題】簡易な構造で、未生育あるいは生育不全の樹木を対象とし、強風等から保護して健全な育成を促すとともに所定の防風効果を維持し、かつ景観にも優れる樹木の生育保護ユニットを提供する。
【解決手段】樹木の幹tを取り囲む複数箇所において幹tの延在方向に沿って配置される複数本の支柱1と、これら支柱1を地面Gに固定する固定部2と、隣接する支柱1同士を連結することにより複数本の支柱1を自立させる連結部材3と、支柱1に設けられた人工樹木による枝葉4とを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル風対策として設置される防風樹木等の各種樹木の生育を、強風等から保護するための生育保護ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、高層建物の付近で局所的に発生する強風領域(ビル風)に対しては、当該高層建物の計画段階において、風洞実験や気流解析によって事前にその予測および評価が行われ、防風対策の考案および検証が実施されている。
【0003】
上記防風対策としては、多くの場合、樹木(高木かつ常緑樹)による対策が採用されており、実験等によってその配置や本数などが検討され、計画および設計に反映されている。このような防風樹木は、計画段階の実験等に基づいて、その高さや樹冠規模が決められており、生育が不十分の場合には所望とする防風効果を得ることができない。
【0004】
ところが、上記防風樹木は、竣工時においては未生育の状態である場合が多く、また年月が経っても強風などの影響により生育不全となるケースが多く発生している。
特に、生育が妨げられる直接的な原因としては、強風による葉の飛散や枝倒れ、あるいは樹木の揺れによる根の切断や生育障害等を挙げることができる。
【0005】
一方、市街地における風環境の問題は、事業者、自治体、近隣住民ともに、近年重要視される傾向にあり、樹木の防風効果を保持することは重要な課題となっている。
そこで、例えば下記特許文献1においては、樹木を保護するとともに、ビル風等の風を抑制する樹木保護装置であって、前記樹木の幹の下方の部分を包囲するように地盤に設置される脚部と、該脚部の上部に着脱自在に取り付けられて、中心が空洞で、採光、通風可能な隙間を有する複数本の外郭からなる本体部を有し、該本体部の内側に前記樹木の幹の上方の部分及び枝を収納する防風部とを備えている樹木保護装置が提案されている。
【0006】
そして、上記樹木保護装置によれば、防風部における本体部の内側に、樹木の幹の上方部分及び枝を収納しているために、植栽した樹木の幹の下方の部分を脚部で包囲し、幹の上方の部分及び枝の部分を防風部で包囲することができるので、植栽した植物を植栽直後から大きく成長するまで保護することができるとの効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−274977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記構成からなる従来の樹木保護装置にあっては、防風部の本体部が、樹木の幹の上方部分及び枝を、その植裁直後から大きく成長するまで収納できる大きさに形成されているために、特に植裁直後においては、樹木の大きさに対して防風部の大きさが極端に大きなものになる。
【0009】
このため、植裁後から一定期間においては、装置が過度に大型化して通行の妨げになるとともに、植裁間隔が密であると、隣接するもの同士が干渉してしまうという問題点を生じる。しかも、樹木の幹や枝を、外方に離間した位置において球殻状に包囲する複数本の外殻が、当該樹木に対してアンバランスな人工的構造物となって美観上好ましいものではなく、特に上記樹木が外構計画として自然景観を演出するための要素として考えられている場合には、周囲の景観も害してしまうという問題点を有している。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構造で、未生育あるいは生育不全の樹木を対象とし、強風等から保護して健全な育成を促すとともに所定の防風効果を維持し、かつ景観にも優れる樹木の生育保護ユニットを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明に係る樹木の生育保護ユニットは、樹木の幹を取り囲む複数箇所において当該幹の延在方向に沿って配置される複数本の支柱と、これら支柱を地面に固定する固定部と、隣接する上記支柱同士を連結することにより上記複数本の支柱を上記固定部によって上記地面に自立させる連結部材と、上記支柱に設けられた人工樹木による枝葉とを備えてなることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、上記固定部が、一端部が上記支柱の下端部に接続されるとともに上記地面沿って当該支柱から離間する方向に延びる水平固定部と、この水平固定部の他端部に屈曲形成されて上記地面に打ち込まれるアンカー部とを有してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1または2に記載の樹木の生育保護ユニットにおいては、複数本の支柱を、樹木の幹を取り囲むように配置して固定部により地面に固定し、かつ隣接する支柱同士を連結部材によって連結することにより地面に自立させているために、樹木本体にストレスを与えることなく、強風等の外力が作用する樹木の幹を上記支柱によって支えることにより揺れを防ぎ、未生育あるいは生育不全の樹木を保護して健全な育成を実現することができる。
【0014】
また、上記複数本の支柱を、樹木の幹を取り囲むようにして、その延在方向に沿って配置しているために、設置時の外形が樹木と同等になることに加えて、さらに支柱には人工樹木による枝葉を設けているために、自然を演出する空間において景観を阻害することがない。
【0015】
しかも,設置時の外形が樹木と同等であるために、計画段階でビル風対策技術として要求されている防風効果を得ることができる。また、樹木の生長に応じて、支柱や人工樹木による枝葉の数量を変化させ、あるいは隣接する支柱同士を連結部材によって連結するといった対応が比較的容易に可能である。
【0016】
この際に、特に請求項2に記載の発明によれば、支柱の下端部に地面に沿って支柱から離間する方向に延在する水平固定部を設け、この水平固定部の端部に地面に打設するアンカー部を形成しているために、平面視において、連結部材によってユニット化された複数本の支柱から、複数本の水平固定部が放射状に延びて各々の先端部において地面に固定されている。このため、外形が樹木と同等でありながら、ユニット全体の自立強度を高めて、支柱に作用する水平力に対し効果的に抗することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る樹木の生育保護ユニットの一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の要部の斜視図である。
【図3】図1のA−A線視相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図3は、本発明に係る樹木の生育保護ユニットを、植裁直後における幹tに枝bを備えた未生育の防風樹木の保護に適用した一実施形態を示すもので、この生育保護ユニットは、樹木の幹tに沿ってその延在方向(上下方向)配置された複数本(図3では4本または6本)の支柱1と、支柱1を地面Gに固定する固定部2と、隣接する支柱1同士を連結する連結部材3と、支柱1に設けられた人工樹木による枝葉4とによって概略構成されたものである。
【0019】
ここで、複数本の支柱1は、各々幹tの外周に隣接して、その下端部から上方まで延びる長さ寸法に形成されたもので、互いに周方向に略等間隔をおいて配置されている。そして、各々の支柱1の下端部に、上記固定部2が一体的に形成されている。
【0020】
この固定部2は、支柱1の下端部が略90°屈曲形成されることにより、地面Gに沿って延在する水平固定部5と、この水平固定部5の先端部に略90°屈曲形成されたアンカー部6とによって形成されている。そして、複数本の支柱1は、互いの水平固定部5を、支柱1からその径方向外方に離間する方向に位置させて、各々のアンカー部6が地面Gに打ち込まれることにより立設されている。
【0021】
さらに、隣接する柱1同士は、高さ方向の複数箇所(図1では3箇所)に横架された連結部材3によって、互いに連結されてユニット化されている。これにより、複数本1の柱1は、互いの水平固定部5およびアンカー部6により、幹tを囲繞するようにして地面G上に自立状態で配置されている。
【0022】
また、各々の支柱1の外周部であって、高さ方向に間隔をおいた複数位置には、それぞれ人工樹木による上記枝葉4が設けられている。ちなみに、これら人工樹木の枝葉4としては、生長した上記樹木の枝bおよび今後当該枝bから生育される葉に近似した形態のものが選択されている。
【0023】
以上の構成からなる樹木の生育保護ユニットによれば、複数本の支柱1を、樹木の幹tを取り囲むように配置して固定部2により地面Gに固定し、かつ隣接する支柱1同士を連結部材3によって連結・ユニット化して地面Gに自立させているために、樹木本体にストレスを与えることなく、強風等の外力が作用する樹木の幹tを支柱1によって支えることにより、未生育あるいは生育不全の樹木を保護して健全な育成を実現することができる。
【0024】
また、複数本の支柱1を、樹木の幹tを取り囲むようにして、その下部から上方に沿って配置しているために、設置時の外形が樹木と同等になることに加えて、さらに支柱1には生長した樹木の枝bおよび葉に近似した人工樹木による枝葉4を設けているために、自然を演出する空間において景観を阻害することがない。
【0025】
しかも、設置時の外形が樹木と同等であるために、要請されているビル風対策技術としての防風効果を得ることができる。また、幹tの生長に応じた支柱1の本数の増加(図3)や、樹木の生育による人工樹木の減少、隣接する支柱1同士の連結など、樹木の生育状態に応じて柔軟な対応が可能である。
【0026】
さらに、特に支柱1の下端部に地面に沿って支柱1から離間する方向に延在する水平固定部5を設け、この水平固定部5の端部に、地面Gに打設するアンカー部6を形成しているために、図3に示すように、平面視において、連結部材3によってユニット化された複数本の支柱1から、複数本の水平固定部5が放射状に延びて各々の先端部においてアンカー部6により地面Gに固定されている。このため、外形が樹木と同等でありながら、ユニット全体の自立強度を高めて、支柱1に作用する水平力に対し効果的に抗することができる。
【0027】
なお、上記実施形態においては、本発明に係る樹木の生育保護ユニットを、防風樹木の保護に用いた場合についてのみ説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、未生育あるいは生育不全にある様々な樹木を強風等から保護して健全に生育させる際に際しても同様に適用することが可能である。また、上記実施形態に示した支柱1およびこれに設けた人工樹木の枝葉4に限らず、本発明は、当該支柱1を人工樹木の幹に似せて、これと枝葉4が一体的に形成された人工樹木を用いることも含むものであり、当該構成によれば、一層意匠性を高めることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 支柱
2 固定部
3 連結部材
4 人工樹木による枝葉
5 水平固定部
6 アンカー部
t 樹木の幹
G 地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹木の幹を取り囲む複数箇所において当該幹の延在方向に沿って配置される複数本の支柱と、これら支柱を地面に固定する固定部と、隣接する上記支柱同士を連結することにより上記複数本の支柱を上記固定部によって上記地面に自立させる連結部材と、上記支柱に設けられた人工樹木による枝葉とを備えてなることを特徴とする樹木の生育保護ユニット。
【請求項2】
上記固定部は、一端部が上記支柱の下端部に接続されるとともに上記地面沿って当該支柱から離間する方向に延びる水平固定部と、この水平固定部の他端部に屈曲形成されて上記地面に打ち込まれるアンカー部とを有してなることを特徴とする請求項1に記載の樹木の生育保護ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−196147(P2012−196147A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60654(P2011−60654)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】