説明

樹脂スライス装置及びその方法

【課題】従来に比して、より均一な厚みの樹脂シートを得る。
【解決手段】本発明の樹脂スライス装置10は、樹脂成形体50をスライド可能に支持するスライド面12Aを有する支持台12と、スライド面12Aから先端部が突出された刃22を一つのみ有するスライス工具14と、樹脂成形体50をスライド面12Aに押圧しながら刃22によって樹脂成形体50がスライスされるように樹脂成形体50をスライドさせるスライド機構16と、スライド面12Aを挟んだスライド機構16と反対側から刃22を支持する刃支持台18と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂スライス装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱伝導材の製造方法が開示されている。この方法では、熱伝導性を有するゲル状物質に炭素繊維が分散して混合されたシート材を、炭素繊維の配向方向を軸にして巻回して樹脂成形体を形成し、この樹脂成形体を軸と垂直な方向にスライスして、炭素繊維が厚さ方向に配向された板状の熱伝導材を得ている。
【0003】
この熱伝導材は、電気・電子装置の内部において、発熱源となる電子部品と放熱部品との間に介在されて伝熱するものであるため、熱伝導率を確保するためには、厚みが均一とされて両者に密着されることが望ましい。
【0004】
ここで、特許文献2には、樹脂成形体であるゴムブロックをスライスする方法が開示されている。この方法では、ゴムブロックを静置した状態で、このゴムブロックに対して刃を水平移動させるか、又は、刃を静置した状態で、この刃に対してゴムブロックを水平移動させることにより、ゴムブロックをスライスして小片を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3288029号公報
【特許文献2】特開2002−18782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の方法では、刃によってゴムブロックがスライスされる際にゴムブロック又は刃が浮き上がり、均一な厚みの小片を得ることができない虞がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、従来に比して、より均一な厚みの樹脂シートを得ることができる樹脂スライス装置及びその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の樹脂スライス装置は、樹脂成形体をスライド可能に支持するスライド面を有するスライド支持部と、前記スライド面から先端部が突出された刃を一つのみ有するスライス部と、前記樹脂成形体を前記スライド面に押圧しながら前記刃によって前記樹脂成形体がスライスされるように前記樹脂成形体をスライドさせるスライド部と、前記スライド面を挟んだ前記スライド部と反対側から前記刃を支持する刃支持部と、を備えている。
【0009】
この樹脂スライス装置によれば、樹脂成形体がスライド面にスライド可能に支持された状態で、この樹脂成形体がスライド部によってスライドされると、樹脂成形体が刃によってスライスされ、この樹脂成形体から樹脂シートが得られる。
【0010】
ここで、刃は、スライド面を挟んだスライド部と反対側から刃支持部によって支持されており、また、樹脂成形体が刃によってスライスされるときには、樹脂成形体がスライド部によってスライド面に押圧された状態とされる。従って、樹脂成形体が刃によってスライスされる際には、刃が沈んだり、樹脂成形体が浮き上がったりすることを抑制することができる。
【0011】
しかも、樹脂成形体をスライスするためのスライス部は、一つの刃のみを有する構成とされているので、例えば、一対の刃によって樹脂成形体がスライスされる場合のように、一方の刃によってスライスされた樹脂シートが他方の刃に接触することも回避できる。これにより、スライス後の樹脂シートの表面に傷が付いたり、樹脂シートがカールしたりすることを抑制することができる。
【0012】
以上より、従来に比して、より均一な厚みの樹脂シートを得ることが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の樹脂スライス装置は、請求項1に記載の樹脂スライス装置において、前記刃は、刃先角度が15〜45°とされ、すくい角が35〜75°とされ、逃げ角が0〜10°とされた構成とされている。
【0014】
刃の刃先角度が15°未満とされていると、刃先強度が弱くなり、刃が破損したり、刃先が加工時に変動したりし、シート形状を得ることができない。一方、刃の刃先角度が45°を超えていると、膜厚に20%以上のバラつきが生じる。
【0015】
また、刃のすくい角が35°未満とされていると、膜厚に20%以上のバラつきが生じ、刃のすくい角が75°を超えていると、刃先強度が弱くなり、刃が破損したり、刃先が加工時に変動したりし、シート形状を得ることができない。
【0016】
さらに、刃の逃げ角が大きくなることは、刃先角度を一定とした場合、すくい角が小さくなることを意味する。刃先角度が15〜45°の範囲で、すくい角を35〜75°にするには、逃げ角は10°以内にする必要がある。
【0017】
これに対し、この樹脂スライス装置のように、刃の刃先角度が15〜45°とされ、すくい角が45〜75°とされ、逃げ角が0〜10°とされていると、刃先強度を充分に確保することができ、容易にシート形状に加工することが可能となり、膜厚のバラつきを20%未満に抑えることができる。
【0018】
請求項3に記載の樹脂スライス装置は、請求項1又は請求項2に記載の樹脂スライス装置において、前記スライド部が0.1〜1.0MPaの押圧力で前記樹脂成形体を前記スライド面に押圧する構成とされている。
【0019】
スライド部の押圧力が0.1MPa未満とされていると、樹脂成形体をスライドさせづらい傾向がある。一方、スライド部の押圧力が1.0MPaを超えていると、膜厚に20%以上のバラつきが生じる。
【0020】
これに対し、この樹脂スライス装置のように、スライド部の押圧力が0.1〜1.0MPaとされていると、膜厚のバラつきを20%未満に抑えることができる。
【0021】
請求項4に記載の樹脂スライス装置は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の樹脂スライス装置において、前記スライド面の法線方向から見た場合における前記刃の刃先辺と前記樹脂成形体のスライド方向先端側の端面との成す角度が15°以下に設定された構成とされている。
【0022】
スライド面の法線方向から見た場合における刃の刃先辺と樹脂成形体のスライド方向先端側の端面との成す角度が15°を超えている状態で樹脂成形体をスライスすると、膜厚に20%以上のバラつきが生じる。
【0023】
これに対し、この樹脂スライス装置のように、上記角度が15°以下の状態で樹脂成形体をスライスすると、膜厚のバラつきを20%未満に抑えることができる。
【0024】
請求項5に記載の樹脂スライス装置は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の樹脂スライス装置において、前記スライド部が、前記スライド面の法線方向に前記スライド面と対向して設けられたベルトと、前記スライド面に沿って前記ベルトを移動させる駆動機構とを有するベルト駆動装置と、前記スライド支持部に対して前記ベルト駆動装置を前記スライド面の法線方向に位置調節可能に支持する支持機構とを有する構成とされている。
【0025】
この樹脂スライス装置によれば、駆動機構によってベルトをスライド面に沿って移動させることにより、樹脂成形体をスライドさせることができる。また、支持機構によってスライド面の法線方向におけるベルト駆動装置の位置を調節することにより、ベルトから樹脂成形体に作用する押圧力を調節することができる。
【0026】
また、前記課題を解決するために、請求項6に記載の樹脂スライス方法は、樹脂成形体をスライド面によってスライド可能に支持すると共に、前記スライド面から先端部が突出された一つの刃を前記スライド面を挟んだ前記樹脂成形体と反対側から支持した状態で、前記樹脂成形体を前記スライド面に押圧しながらスライドさせて、前記樹脂成形体を前記一つの刃のみによってスライスする方法である。
【0027】
この樹脂スライス方法によれば、樹脂成形体を刃によってスライスするときには、刃を、スライド面を挟んだ樹脂成形体と反対側から支持すると共に、樹脂成形体をスライド面に押圧した状態とする。従って、樹脂成形体が刃によってスライスされる際には、刃が沈んだり、樹脂成形体が浮き上がったりすることを抑制することができる。
【0028】
しかも、樹脂成形体を一つの刃のみによってスライスするので、例えば、一対の刃によって樹脂成形体をスライスする場合のように、一方の刃によってスライスされた樹脂シートが他方の刃に接触することも回避できる。これにより、スライス後の樹脂シートの表面に傷が付いたり、樹脂シートがカールしたりすることを抑制することができる。
【0029】
以上より、従来に比して、より均一な厚みの樹脂シートを得ることが可能となる。
【0030】
請求項7に記載の樹脂スライス方法は、請求項6に記載の樹脂スライス方法において、前記刃として、刃先角度が15〜45°のものを用いると共に、この刃について、すくい角を35〜75°、逃げ角を0〜10°に設定して、前記樹脂成形体をスライスする方法である。
【0031】
刃の刃先角度が15°未満とされていると、刃先強度が弱くなり、刃が破損したり、刃先が加工時に変動したりし、シート形状を得ることができない。一方、刃の刃先角度が45°を超えていると、膜厚に20%以上のバラつきが生じる。
【0032】
また、刃のすくい角が35°未満とされていると、膜厚に20%以上のバラつきが生じ、刃のすくい角が75°を超えていると、刃先強度が弱くなり、刃が破損したり、刃先が加工時に変動したりし、シート形状を得ることができない。
【0033】
さらに、刃の逃げ角が大きくなることは、刃先角度を一定とした場合、すくい角が小さくなることを意味する。刃先角度が15〜45°の範囲で、すくい角を35〜75°にするには、逃げ角は10°以内にする必要がある。
【0034】
これに対し、この樹脂スライス方法のように、刃の刃先角度が15〜45°とされ、すくい角が45〜75°とされ、逃げ角が0〜10°とされていると、刃先強度を充分に確保することができ、容易にシート形状に加工することが可能となり、膜厚のバラつきを20%未満に抑えることができる。
【0035】
請求項8に記載の樹脂スライス方法は、請求項6又は請求項7に記載の樹脂スライス方法において、0.1〜1.0MPaの押圧力で前記樹脂成形体を前記スライド面に押圧しながら前記樹脂成形体をスライスする方法である。
【0036】
スライド部の押圧力が0.1MPa未満とされていると、樹脂成形体をスライドさせづらい傾向がある。一方、スライド部の押圧力が1.0MPaを超えていると、膜厚に20%以上のバラつきが生じる。
【0037】
これに対し、この樹脂スライス方法のように、スライド部の押圧力を0.1〜1.0MPaとすると、膜厚のバラつきを20%未満に抑えることができる。
【0038】
請求項9に記載の樹脂スライス方法は、請求項6〜請求項8のいずれか一項に記載の樹脂スライス方法において、前記スライド面の法線方向から見た場合における前記刃の刃先辺と前記樹脂成形体のスライド方向先端側の端面との成す角度を15°以下として、前記樹脂成形体をスライスする方法である。
【0039】
スライド面の法線方向から見た場合における刃の刃先辺と樹脂成形体のスライド方向先端側の端面との成す角度が15°を超えている状態で樹脂成形体をスライスすると、膜厚に20%以上のバラつきが生じる。
【0040】
これに対し、この樹脂スライス方法のように、上記角度が15°以下の状態で樹脂成形体をスライスすると、膜厚のバラつきを20%未満に抑えることができる。
【0041】
また、前記課題を解決するために、請求項10に記載の樹脂シートの製造方法は、前記樹脂成形体を形成した後に、前記樹脂成形体を請求項6〜請求項9のいずれか一項に記載の樹脂スライス方法を用いてスライスして樹脂シートを得る方法である。
【0042】
この樹脂シートの製造方法によれば、上述の請求項6〜請求項9のいずれか一項に記載の樹脂スライス方法を用いるので、従来に比して、より均一な厚みの樹脂シートを得ることができる。
【発明の効果】
【0043】
以上詳述したように、本発明によれば、従来に比して、より均一な厚みの樹脂シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係る樹脂スライス装置の全体構成を示す側面断面図である。
【図2】図1に示される樹脂スライス装置の平面図である。
【図3】図1に示されるスライス工具の要部拡大図である。
【図4】図1に示される樹脂スライス装置によってスライスされた樹脂シートの断面図である。
【図5】図1に示される樹脂スライス装置の変形例を示す側面断面図である。
【図6】図3に示される樹脂シートを備えたサーマルモジュールの側面断面図である。
【図7】樹脂シートの厚みを測定した結果を示す図である。
【図8】図3に示される樹脂シートを備えたサーマルモジュールの側面断面図である。
【図9】図3に示される樹脂シートを備えたサーマルモジュールの側面断面図である。
【図10】比較例に係る樹脂スライス装置の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
はじめに、本発明の樹脂スライス装置の一実施形態について説明する。
【0046】
図1に示される本発明の一実施形態に係る樹脂スライス装置10は、後述する熱伝導シートとして用いられる樹脂シート40(図4参照)を製造するのに好適に用いられるものであり、スライド支持部としての支持台12と、スライス部としてのスライス工具14と、スライド部としてのスライド機構16と、刃支持部としての刃支持台18とを備えている。
【0047】
支持台12は、樹脂シート40の基となる樹脂成形体50をスライド可能に支持するスライド面12Aを有しており、水平方向と平行な方向に延びる平板状に形成されている。また、この支持台12の所定の位置には、板厚方向に貫通する開口部20が形成されている。
【0048】
スライス工具14は、刃22を一つのみ有して構成されている。この刃22は、開口部20を通じて支持台12を貫通しており、その先端部は、スライド面12Aから所定の高さだけ突出されている。また、この刃22は、スライド面12Aの法線方向から見た場合に、図2に示されるように、樹脂成形体50のスライド方向(矢印Sの方向)と交差する方向に延びる短冊状に形成されている。
【0049】
図1に示されるスライド機構16は、樹脂成形体50をスライド面12Aに押圧しながらスライドさせるためのものであり、ベルト駆動機構24と、支持機構26とを備えている。
【0050】
ベルト駆動機構24は、無端状のベルト28と、このベルト28を回転させる駆動機構30とを有して構成されている。ベルト28は、スライド面12Aの法線方向にスライド面12Aと対向して設けられており、後述する複数のローラ34A〜34Fに巻き掛けられている。駆動機構30は、本体部32と、複数のローラ34A〜34Fと、ローラ34Aを回転させるモータ駆動装置36とを備えている。
【0051】
支持機構26は、上述の本体部32と支持台12との間に配置された複数の油圧ジャッキ38を有して構成されている。各油圧ジャッキ38の両端部は、本体部32と支持台12とにそれぞれ固定されている。この支持機構26は、支持台12に対してベルト駆動機構24をスライド面12Aの法線方向(矢印H方向)に位置(高さ)調節可能に支持している。
【0052】
そして、この樹脂スライス装置10では、この支持機構26によってスライド面12Aの法線方向におけるベルト駆動機構24の位置が調節されることにより、ベルト28から樹脂成形体50に作用する押圧力Fが調節されるようになっている。
【0053】
刃支持台18は、支持台12の裏側に設けられており、この支持台12を挟んだスライド機構16と反対側から刃22を支持している。また、この刃支持台18は、支持台12に対してスライド面12Aの法線方向周りに回動可能とされると共に、刃22と一体回動可能に固定されている。
【0054】
なお、より具体的には、この刃支持台18は、図2に示されるように、スライド面12Aの法線方向から見た場合における刃22の刃先辺22Aと樹脂成形体50のスライド方向先端側の端面50Aとの成す角度θを0°〜60°の範囲で調節できるように、スライド支持部に対してスライド面12Aの法線方向周りに回動可能とされている。また、この刃支持台18は、図1に示される支持台12と分離可能とされており、これにより、刃22の高さ調節や刃22の交換作業を行えるようになっている。
【0055】
次に、上述の樹脂スライス装置10を用いて製造される樹脂シートの組成について説明する。
【0056】
図3に示される樹脂シート40は、上述の樹脂スライス装置10を用いて製造されるものであり、例えば、熱伝導シートとして好適に使用されるものである。この樹脂シート40は、次の組成とされている。
【0057】
すなわち、樹脂シート40は、鱗片状、楕球状又は棒状である熱伝導性の無機材料4242と有機高分子化合物44とを含有する組成物を含んでなる。鱗片状、楕球状又は棒状である熱伝導性の無機材料42は以下に列挙するものに限定されるわけではないが、窒化ホウ素、黒鉛、炭素繊維を挙げることができる。
【0058】
なお、この場合の「鱗片状」とは、魚の鱗のように、薄く平たい形状を示す。「楕球状」とは、ラグビーボールのように、楕円を回転した楕円体形状を示す。「棒状」とは、細長い(径に対する長さの割合が大きいもの、具体的には、径に対する長さの割合が100〜500程度)円柱形状や角柱状形状を示す。いずれの形状も異方性を有する形状となる。
【0059】
また、無機材料42の含有量は特に制限されないが、組成物全体積の10〜50体積%であることが好ましく、30〜45体積%であることがより好ましい。なお、本実施形態における無機材料42の含有量(体積%)は次式により求めた値である。
【0060】
無機材料の含有量(体積%)=(Aw/Ad)/((Aw/Ad)+(Bw/Bd)+(Cw/Cd)+(Dw/Dd)+・・・)×100
Aw:無機材料の質量組成(質量%)
Bw:有機高分子化合物の質量組成(質量%)
Cw:その他の任意成分の質量組成(質量%)
Ad:無機材料の比重(Adは黒鉛の場合:2.1、窒化ほう素の場合:2.2、炭素繊維の場合:1.8で計算した。)
Bd:有機高分子化合物の比重
Cd:その他の任意成分の比重
【0061】
また、有機高分子化合物44は、Tg(ガラス転移温度)が50℃以下、好ましくは−70〜20℃、より好ましくは−60〜0℃である。前記Tgが50℃を超える場合は、柔軟性に劣り、発熱体及び放熱体に対する密着性が不良となる傾向がある。
【0062】
ガラス転移温度の測定は、熱機械測定(TMA)を用いて行う。
【0063】
この有機高分子化合物44としては、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等を主要な原料成分としたポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物(所謂アクリルゴム)、ポリジメチルシロキサン構造を主構造に有する高分子化合物(所謂シリコーン樹脂)、ポリイソプレン構造を主構造に有する高分子化合物(所謂イソプレンゴム、天然ゴム)、クロロプレンを主要な原料成分とした高分子化合物(所謂クロロプレンゴム)、ポリブタジエン構造を主構造に有する高分子化合物(所謂ブタジエンゴム)等、一般に「ゴム」と総称される柔軟な有機高分子化合物44が挙げられる。
【0064】
これらの中でも、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物、特にアクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルのいずれか又は両方を共重合成分として含み、その共重合組成中の50質量%以上であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物が、高い柔軟性を得易く、化学的安定性、加工性に優れ、粘着性をコントロールし易く、かつ比較的廉価であるため好ましい。
【0065】
また、柔軟性を損なわない範囲で架橋構造を含ませると長期間の密着保持性と膜強度の点で好ましい。例えば、−OH基を有するポリマに複数のイソシアネート基を持つ化合物を反応させることで架橋構造を含ませることができる。有機高分子化合物44の含有量は特に制限されないが、組成物全体積に対して好ましくは10〜70体積%、より好ましくは20〜50体積%である。
【0066】
また、樹脂シート40は、難燃剤を含有することができる。難燃剤としては特に限定されず、例えば、赤りん系難燃剤やりん酸エステル系難燃剤を含有することができる。
【0067】
赤りん系難燃剤としては、純粋な赤りん粉末の他に、安全性や安定性を高める目的で種々のコーティングを施したもの、マスターバッチになっているもの等が挙げられ、具体的には、例えば、燐化学工業株式会社製、商品名:ノーバレッド、ノーバエクセル、ノーバクエル、ノーバペレット等が挙げられる。
【0068】
りん酸エステル系難燃剤としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等の脂肪族リン酸エステル;
トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート、トリス(t-ブチル化フェニル)ホスフェート、トリス(イソプロピル化フェニル)ホスフェート、リン酸トリアリールイソプロピル化物等の芳香族リン酸エステル;
レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビスジキシレニルホスフェート等の芳香族縮合リン酸エステル;等が挙げられる。
【0069】
これらは一種類を用いても、二種類以上を併用してもよい。また、難燃剤がりん酸エステル系化合物であり、かつ凝固点が15℃以下、沸点が120℃以上の液状物であると、難燃性と柔軟性やタック性を両立するのが容易となり、好ましい。凝固点が15℃以下、沸点が120℃以上の液状物のリン酸エステル系難燃剤としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル−2,6−キシレニルホスフェート、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
【0070】
難燃剤の含有量は特に制限されないが、組成物全体積に対して好ましくは5〜50体積%、より好ましくは10〜40体積%である。難燃剤の含有量が前記範囲であれば、充分な難燃性が発現され、かつ柔軟性の点で有利となるので好ましい。前記難燃剤の含有量が5体積%未満である場合は、充分な難燃性が得難く、50体積%を超える場合は、シート強度が低下する傾向がある。
【0071】
また、樹脂シート40は、さらに必要に応じてウレタンアクリレート等の靭性改良剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物等の接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の濡れ向上剤;シリコーン油等の消泡剤;無機イオン交換体等のイオントラップ剤;等を適宜添加することができる。
【0072】
次に、上述の樹脂シート40を製造する方法について説明する。
【0073】
上述の樹脂シート40を製造する方法は、下記(1)〜(4)の工程を含む。
【0074】
すなわち、
(1)鱗片状、楕球状又は棒状である熱伝導性の無機材料と有機高分子化合物とを含有する組成物を混練し、混練物を得る混練工程、
(2)前記混練物をシート状にして一次シートを得る一次シート作製工程、
(3)前記一次シートを積層するか、又は捲回して樹脂成形体を得る積層工程、
(4)前記樹脂成形体を、スライスして、樹脂シートを得るスライス工程である。
【0075】
本実施形態の樹脂シートの製造方法は、工程中、樹脂シート表面に新たに異なる組成の膜や層を形成するプロセスは不要である。また、上述の樹脂スライス装置は工程(4)のスライス工程に使用する。
【0076】
以下に、各工程について説明する。
【0077】
(1)混練工程
鱗片状、楕球状又は棒状である熱伝導性の無機材料と有機高分子化合物とを含有する組成物を混練し、混練物を得る混練工程で用いる無機材料の大きさは、スライス工程で加工するスライス厚みに準じて選定するのが好ましく、鱗片、楕球、棒状の最も長い箇所の大きさが平均で250μmの材料や、500〜1000μmや1500〜2000μm等の条件で投入してよい。
【0078】
より熱伝導率を上げるためにはスライス後のシート断面で貫通する無機材料が多くする必要があるため、スライス厚みよりも大きな無機材料を通常は選定する。無機材料の平均粒径の測定は、レーザー回折・散乱法により測定したときのD50の値とする。混練手段としては2本ロール、ニーダー等の装置を利用する。
【0079】
(2)一次シート作製工程
一次シート作製工程では、混練して得られた混練物を平板プレスやメタルロールを使用して押しつぶして作製する。温度条件は高温すぎると樹脂が脆性化し、低温すぎると軟化しないため25〜150℃の範囲が好ましい。一次シート厚みは薄い方が好ましく0.2〜2.0mmの厚みが最も好ましい。
【0080】
(3)積層工程
続いての積層工程では1次シートを所定の大きさに切り抜き積層して樹脂成形体を得る。その際、1次シート間の密着を上げるためプレス等によって圧力をかけると良い。プレスでの圧縮量は3〜20%の範囲が好ましい。プレス以外にもメタルロールでも問題なく作製できる。なお、圧縮量はプレス前後の変化量とする。
【0081】
あるいは、積層する代わりに、1次シートを捲回して樹脂成形体を得ることも可能である。1次シートを捲回する方法も特に限定されず、1次シートを無機材料の配向方向を軸にして捲回すればよい。捲回の形状は、特に限定されず、例えば円筒形でも角筒形でもよい。
【0082】
なお、上記(1)〜(3)の工程については、上述の特許文献1(特許第3288029号公報)に記載の方法を用いることができる。
【0083】
(4)スライス工程
次に、上述の図1に示される樹脂スライス装置10を用いて樹脂成形体50をスライスする。先ず、樹脂スライス装置10の各設定を行う。つまり、刃支持台18を支持台12に対してスライド面12Aの法線方向周りに回動させて、図2に示されるように、スライド面12Aの法線方向から見た場合における刃22の刃先辺22Aと樹脂成形体50のスライド方向先端側の端面との成す角度θを15°以下に設定する。
【0084】
また、刃22としては、刃先角度αが15〜45°のものを用いる。また、このとき、この刃22については、すくい角βを35〜75°に設定し、逃げ角γを0〜10°に設定する。
【0085】
次いで、樹脂成形体50をスライド面12Aの上にスライド可能な状態で載置する。そして、支持機構26によってベルト駆動機構24の高さを調節し、樹脂成形体50にベルト28を密着させる。また、このとき、スライド面12Aの法線方向におけるベルト駆動機構24の位置を支持機構26によって調節し、樹脂成形体50に0.1〜1.0MPaの押圧力Fが作用するようにする。
【0086】
そして、モータ駆動装置36を作動させてローラ34Aを回転させ、ベルト28を回転させる。このとき、樹脂成形体50の送り速度は、30〜60mm/sとする。
【0087】
これにより、樹脂成形体50がスライド面12Aに押圧されながらスライドされてスライスされ、上述の樹脂シート40(図4参照)が形成される。
【0088】
また、このようにして樹脂シート40が形成された後、モータ駆動装置36によってローラ34Aを逆転させて、ベルト28を上記と反対方向に回転させ、樹脂成形体50を元の位置に復帰させる。また、これに伴い、支持機構26によってベルト駆動機構24の高さを調節し、再度、樹脂成形体50に0.1〜1.0MPaの押圧力Fが作用するようにする。
【0089】
そして、以上の作業が繰り繰り返されることで、樹脂成形体50から複数の樹脂シート40が得られる。
【0090】
なお、本実施形態において、スライド機構16は、ベルト駆動機構24を備えていたが、このベルト駆動機構24の代わりに、図5に示されるように、樹脂成形体50を把持した状態で押圧しながらスライドするスライダ機構52が用いられても良い。このスライダ機構52は、スライダ54と、このスライダ54をスライド可能に支持するレール56とを有して構成されている。また、この場合に、上述の支持機構26の油圧ジャッキ38は、レール56と支持台12の間に配置されていても良い。
【0091】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0092】
先ず、本実施形態の作用及び効果を明確にするために、比較例について説明する。図10に示される比較例に係る樹脂スライス装置90では、一対の刃92A,92Bを有するスライス工具94を用いて樹脂成形体50をスライスする構成とされている。また、樹脂スライス装置90では、スライド面102Aと平行な方向に荷重F1を加えて樹脂成形体50をスライドさせる構成とされている。
【0093】
しかしながら、この樹脂スライス装置90では、一方の刃92Aによってスライスされた樹脂シート40が他方の刃92Bに接触し、スライス後の樹脂シートの表面に傷が付いたり、樹脂シートがカールしたりする虞がある。
【0094】
さらに、樹脂成形体50を支持台102のスライド面102Aに押圧していないため、一対の刃92A,92Bによって樹脂成形体50がスライスされる際に樹脂成形体50が浮き上がり、均一な厚みの樹脂シートを得ることができない虞がある。
【0095】
これに対し、本実施形態では、図1に示されるように、樹脂成形体50が刃22によってスライスされるときには、樹脂成形体50がスライド部によってスライド面12Aに押圧された状態とされる。従って、樹脂成形体50が刃22によってスライスされる際には、樹脂成形体50が浮き上がることを抑制することができる。また、刃22は、スライド面12Aを挟んだスライド部と反対側から刃支持台18によって支持されているので、刃22が沈むことも抑制することができる。
【0096】
しかも、樹脂成形体50をスライスするためのスライス工具14は、一つの刃22のみを有する構成とされているので、例えば、上述の比較例のように、一対の刃92A,92Bを有するスライス工具94によって樹脂成形体50がスライスされる場合のように、一方の刃92Aによってスライスされた樹脂シートが他方の刃92Bに接触することも回避できる。これにより、スライス後の樹脂シートの表面に傷が付いたり、樹脂シートがカールしたりすることを抑制することができる。
【0097】
以上より、従来(上述の比較例)に比して、より均一な厚みの樹脂シート40を得ることが可能となる。
【0098】
ところで、刃22の刃先角度が15°未満とされていると、刃先強度が弱くなり、刃22が破損したり、刃先が加工時に変動したりし、シート形状を得ることができない。一方、刃22の刃先角度が45°を超えていると、膜厚に20%以上のバラつきが生じる。
【0099】
また、刃22のすくい角が35°未満とされていると、膜厚に20%以上のバラつきが生じ、刃22のすくい角が75°を超えていると、刃先強度が弱くなり、刃22が破損したり、刃先が加工時に変動したりし、シート形状を得ることができない。
【0100】
さらに、刃22の逃げ角が大きくなることは、刃先角度を一定とした場合、すくい角が小さくなることを意味する。刃先角度が15〜45°の範囲で、すくい角を35〜75°にするには、逃げ角は10°以内にする必要がある。
【0101】
また、スライド機構16の押圧力が0.1MPa未満とされていると、樹脂成形体50をスライドさせづらい傾向がある。一方、スライド機構16の押圧力が1.0MPaを超えていると、膜厚に20%以上のバラつきが生じる。
【0102】
また、スライド面12Aの法線方向から見た場合における刃22の刃先辺22Aと樹脂成形体50のスライド方向先端側の端面との成す角度が15°を超えている状態で樹脂成形体をスライスすると、膜厚に20%以上のバラつきが生じる。
【0103】
これに対し、本実施形態のように、刃22の刃先角度が15〜45°とされ、すくい角が45〜75°とされ、逃げ角が0〜10°とされていると、刃先強度を充分に確保することができ、容易にシート形状に加工することが可能となり、膜厚のバラつきを20%未満に抑えることができる。
【0104】
また、本実施形態のように、スライド機構16の押圧力が0.1〜1.0MPaとされていると、膜厚のバラつきを20%未満に抑えることができる。
【0105】
さらに、本実施形態のように、スライド面12Aの法線方向から見た場合における刃22の刃先辺22Aと樹脂成形体50のスライド方向先端側の端面との成す角度が15°以下の状態で樹脂成形体50をスライスすると、膜厚のバラつきを20%未満に抑えることができる。
【0106】
次に、上述の樹脂シートを製造方法によって製造された樹脂シートを用いたサーマルモジュールについて説明する。
【0107】
図6に示されるサーマルモジュール60では、半導体チップ62とヒートスプレッダ64との間、及び、ヒートスプレッダ64と放熱フィン66の間に樹脂シート40がそれぞれ介在させされている。なお、放熱フィン66の代わりにヒートパイプが用いられても良い。
【0108】
なお、樹脂シート40は、被着体に充分に密着させた状態で固定できる方法であれば、接触させる方法に制限はないが、手動で押し当てて密着させる、ロボット等を用いて自動で密着させる等の手段による接触方法が好ましい。
【0109】
次に、上述の樹脂シートを製造した実施例について説明する。
【0110】
<実施例1>
前述した工程に従って樹脂シートを作製した例を説明する。熱伝導性の無機材料には鱗片状で粒子長さが500〜1000μmの黒鉛を使用した。黒鉛の含有量は組成物全体積の45体積%とした。有機高分子化合物は、アクリル酸ブチルがその共重合組成中の76質量%であるポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子化合物を使用した。その含有量は組成物全体積に対して30体積%とした。
【0111】
難燃剤はりん酸エステル系であるビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)を使用し含有量は組成物全体積に対して25体積%とした。
【0112】
以上の材料を配合し、まず始めに加圧ニーダーを用いて混錬した。条件を組成物質量3.5kgあたり温度100℃で40分間として混錬し、混練物を得た。混練物を油圧プレスを用いて数十mm厚まで圧縮し、さらに80℃のメタルロールを数回通して1.0mm厚の1次シートを作製した。
【0113】
次に1次シートを50mm×250mmの形状に切り出し、高さが50mmになるまで積層し、樹脂成形体を得た。樹脂成形体をさらに油圧プレスを用いて0.1MPa以下の圧力で加圧した。そして樹脂成形体をスライスした。
【0114】
スライスシートの厚みが0.25mmになるようにナイフの突出量を調整し、積層体温度を10℃、加工速度を54mm/分、刃先角度を3222°、逃げ角3°とした条件で加工した。ナイフを固定し樹脂成形体に垂直方向から0.3MPaの圧縮力をかけて水平方向に移動させた。
【0115】
以上の条件で作製した樹脂シートの厚みを測定した。測定装置は、ダイヤルゲージを使用した。測定箇所は、スライスシートの中央と周囲とを合わせた12点とした。シート全体の厚み状況を把握するため、それぞれの測定点は均等の間隔で設けた。結果を図7に示す。
【0116】
この図から連続スライスを行っても膜厚は±10%以内のばらつきに収まっているのがわかる。このように、上述の樹脂スライス装置を使用することにより、厚みのばらつきの少ない樹脂シートを作製することが可能である。
【0117】
<実施例2>
図8に示されるサーマルモジュール70では、樹脂シート40がヒートスプレッダ74と放熱フィン76との間に介在されている。このようにヒートシンク同士の接合にも樹脂シート40は利用することができる。
【0118】
この場合、樹脂シート40には適度な粘着力があるので、高圧力や温度を負荷して固定する必要はないが、より十分に固定したい場合は次の条件で樹脂シートを挟むことが好ましい。
【0119】
なお、ヒートスプレッダ74と放熱フィン76の間には、温度50〜200℃、圧力0.1〜2.0MPaを負荷している。
【0120】
<実施例3>
図9に示されるサーマルモジュール80では、樹脂シート40が半導体チップ82とヒートシンク84との間に介在されている。ヒートシンク84の種類にはヒートスプレッダや放熱フィン、ヒートパイプが含まれる。それらは熱を拡散する機能がある。粘着力のある表面をヒートシンク84に接触させ、粘着力が小さい面を半導体チップ82に接触するように実装する。この構造によって、樹脂シート40はヒートシンク84には容易に密着することができ、半導体チップ82とは一度接触しても容易に剥離することができる。
【0121】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0122】
10 樹脂スライス装置
12 支持台(スライド支持部)
12A スライド面
14 スライス工具(スライス部)
16 スライド機構(スライド部)
18 刃支持台(刃支持部)
22 刃
24 ベルト駆動装置
26 支持機構
40 樹脂シート
50 樹脂成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体をスライド可能に支持するスライド面を有するスライド支持部と、
前記スライド面から先端部が突出された刃を一つのみ有するスライス部と、
前記樹脂成形体を前記スライド面に押圧しながら前記刃によって前記樹脂成形体がスライスされるように前記樹脂成形体をスライドさせるスライド部と、
前記スライド面を挟んだ前記スライド部と反対側から前記刃を支持する刃支持部と、
を備えた樹脂スライス装置。
【請求項2】
前記刃は、
刃先角度が15〜45°とされ、
すくい角が35〜75°とされ、
逃げ角が0〜10°とされている、
請求項1に記載の樹脂スライス装置。
【請求項3】
前記スライド部は、0.1〜1.0MPaの押圧力で前記樹脂成形体を前記スライド面に押圧する、
請求項1又は請求項2に記載の樹脂スライス装置。
【請求項4】
前記スライド面の法線方向から見た場合における前記刃の刃先辺と前記樹脂成形体のスライド方向先端側の端面との成す角度は、15°以下に設定されている。
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の樹脂スライス装置。
【請求項5】
前記スライド部は、
前記スライド面の法線方向に前記スライド面と対向して設けられたベルトと、前記スライド面に沿って前記ベルトを移動させる駆動機構とを有するベルト駆動装置と、
前記スライド支持部に対して前記ベルト駆動装置を前記スライド面の法線方向に位置調節可能に支持する支持機構と、
を有している、
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の樹脂スライス装置。
【請求項6】
樹脂成形体をスライド面によってスライド可能に支持すると共に、前記スライド面から先端部が突出された一つの刃を前記スライド面を挟んだ前記樹脂成形体と反対側から支持した状態で、前記樹脂成形体を前記スライド面に押圧しながらスライドさせて、前記樹脂成形体を前記一つの刃のみによってスライスする樹脂スライス方法。
【請求項7】
前記刃として、刃先角度が15〜45°のものを用いると共に、この刃について、すくい角を35〜75°、逃げ角を0〜10°に設定して、前記樹脂成形体をスライスする、
請求項6に記載の樹脂スライス方法。
【請求項8】
0.1〜1.0MPaの押圧力で前記樹脂成形体を前記スライド面に押圧しながら前記樹脂成形体をスライスする、
請求項6又は請求項7に記載の樹脂スライス方法。
【請求項9】
前記スライド面の法線方向から見た場合における前記刃の刃先辺と前記樹脂成形体のスライド方向先端側の端面との成す角度を15°以下として、前記樹脂成形体をスライスする、
請求項6〜請求項8のいずれか一項に記載の樹脂スライス方法。
【請求項10】
前記樹脂成形体を形成した後に、前記樹脂成形体を請求項6〜請求項9のいずれか一項に記載の樹脂スライス方法を用いてスライスして樹脂シートを得る樹脂シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−218504(P2011−218504A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91375(P2010−91375)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)