説明

樹脂フィルムとその製造方法

【課題】透明性が高く、かつ低線膨張係数で熱膨張や熱収縮といった寸法安定性に優れた樹脂フィルムとその製造方法提供する。
【解決手段】結晶性セルロースと分散剤とを含有する樹脂フィルムであって、当該結晶性セルロースのヒドロキシル基のアシル基による置換度が0〜2.0の範囲内にあり、当該結晶性セルロースの平均短軸径が2μm以下であり、セルロースエステル樹脂を含有することを特徴とする樹脂フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性が高く、かつ低線膨張係数で寸法安定性に優れた樹脂フィルムとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイに代表されるフラットパネルディスプレイには、支持基板として、ガラス基板が用いられている。近年、薄型化・軽量化・形状の自由度が求められており、ガラス基板に代えて、軽くてフレキシブル性に富むフィルム基板が検討されるようになってきた。
【0003】
フィルム基板は、用途に応じて種々の機能層を積層される。この際に、フィルムが熱にさらされるために、熱膨張や熱収縮といった寸法安定性は重要な特性である。
【0004】
フィルムの線膨張係数を低下させる技術として、繊維状のものをマトリクス樹脂に添加して線膨張係数を低下させる技術がある。その中でも、結晶性のセルロースを添加する技術が着目されている。
【0005】
特許文献1に開示されている技術においては、バインダ樹脂に結晶セルロースを内包しているが、溶媒置換法でバインダ樹脂のモノマー溶液を含浸・硬化後にマトリクス樹脂と混合させる。この手法では溶媒置換の段階で分散性が決まってしまい、分散性及び透明性が低い。
【0006】
特許文献2に開示されている技術においては、表面処理等をしているが分散手段はUS分散のみであり、機械的解砕力が弱く分散性に課題がある。この分散手段で分散性を向上させるためには、表面処理や表面吸着量を膨大にしないといけない。
【0007】
しかし、高置換度の表面処理はセルロースの結晶性の低下を引き起こし、本来の目的である低線膨張係数の性能が向上しない。また、特許文献2では、紛体を一旦乾燥させているために嵩密度が高くなってしまい、粘度の問題で高濃度に添加できないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−127540号公報
【特許文献2】特開2009−52016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題・状況にかんがみてなされたものであり、その解決課題は、透明性が高く、かつ低線膨張係数で熱膨張や熱収縮といった寸法安定性に優れた樹脂フィルムとその製造方法提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0011】
1.結晶性セルロースと分散剤とを含有する樹脂フィルムであって、当該結晶性セルロースのヒドロキシル基のアシル基による置換度が0〜2.0の範囲内にあり、当該結晶性セルロースの平均短軸径が2μm以下であり、セルロースエステル樹脂を含有することを特徴とする樹脂フィルム。
【0012】
2.前記分散剤のハンセンの溶解度パラメータの寄与率のfd成分が、25〜50の範囲内であることを特徴とする前記1に記載の樹脂フィルム。
【0013】
3.前記置換度が、0〜1.5の範囲内にあることを特徴とする前記1又は前記2に記載の樹脂フィルム。
【0014】
4.樹脂フィルムの製造方法であって、前記1から前記3までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムを製造することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の上記手段により、透明性が高く、かつ低線膨張係数で熱膨張や熱収縮といった寸法安定性に優れた樹脂フィルムとその製造方法提供することができる。
【0016】
すなわち、結晶性セルロースのヒドロキシル基のアシル基による置換度を所定範囲内にコントロールすることで性能低下の原因となる結晶性の低下を抑制し、溶媒置換状態で分散・解砕と同時に再凝集を防止する分散剤を添加し、この分散剤がハンセンの溶解度パラメータのfd成分が5〜65の範囲にある分散剤にすることで高透明かつ低線膨張係数の樹脂フィルムを作製することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】フィルム状の樹脂基板の製造装置の1つの実施形態を示す概略フローシート
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の樹脂フィルムは、結晶性セルロースと分散剤とを含有する樹脂フィルムであって、当該結晶性セルロースのヒドロキシル基のアシル基による置換度が0〜2.0の範囲内にあり、当該結晶性セルロースの平均短軸径が2μm以下であり、セルロースエステル樹脂を含有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項4までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0019】
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記分散剤のハンセンの溶解度パラメータの寄与率のfd成分が、25〜50の範囲内であることが好ましい。また、前記置換度が、0〜1.5の範囲内にあることが好ましい。
【0020】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
【0021】
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0022】
(結晶性セルロース)
本発明の樹脂フィルムは、結晶性セルロースと分散剤を含有することを特徴とする。ここで、「結晶性セルロース」とは、パルプ等の原料とし加水分解によりセルロース結晶領域(セルロース分子鎖が緻密かつ規則的に存在する部分)を取り出して精製したもので、化学構造は、天然セルロースと同じものをいう。なお、本願において、結晶性セルロースは、X線回折装置により測定し、結晶化度が30%以上であるものをいう。また、結晶構造に関してはα、β型どちらでもかまわない。
【0023】
当該結晶性セルロースは、木材、竹、ケナフ、麻などの植物性由来のもの、酢酸菌などのバクテリアが産生するもの、ホヤ貝などの海洋生物が産生するものなどから得ることができる。
【0024】
また、本発明で用いる結晶性セルロースは、短軸径が10〜2000nm(2μm)であり、50〜1500nmであることがより好ましく、100〜1000nm(1μm)であることがさらに好ましい。短軸径を2000nm以下にすることで、マトリクスとの混合が容易となり、利用可能なマトリクスの種類の範囲が広がるという利点がある。なお、長軸径は、10000nm(10μm)であることが好ましい。
【0025】
短軸径が10〜2000nmである結晶性セルロースの取得方法は特に制限されない。例えば、セルロースナノファイバー、セルロースナノウィスカー、バクテリアセルロース、市販の微結晶セルロースなどの結晶性の高いセルロースを鉱酸にて加水分解する方法や、高圧ホモジナイザーで離解・分散する方法などを用いることにより得ることができる。
【0026】
本発明においては、特に結晶性セルロースの原料として、セルロースナノファイバーを用いることが好ましい。ここで、「セルロースナノファイバー」とは、繊維として、好ましくは平均繊維径(短軸径)4〜200nmであるセルロース系繊維をいう。なお、「セルロース系繊維」とは、植物細胞壁の基本骨格等を構成するセルロースのミクロフィブリル又はこれの構成繊維をいい、通常繊維径(短軸径)4nm程度の単位繊維の集合体である。このセルロース繊維は、結晶構造を40%以上含有するものが、高い強度と低い熱膨張を得る上で好ましい。
【0027】
この繊維は、単繊維が、引き揃えられることなく、かつ相互間に入り込むように十分に離隔して存在するものより成ってもよい。この場合、平均繊維径(短軸径)は、単繊維の平均径となる。また、本発明に係る繊維は、複数(多数であってもよい。)本の単繊維が束状に集合して1本の糸条を構成しているものであってもよく、この場合、平均繊維径(短軸径)は1本の糸条の径の平均値として定義される。
【0028】
本発明で用いる繊維の平均繊維径(短軸径)は、好ましくは4〜100nmであり、より好ましくは4〜60nmである。
【0029】
なお、本発明で用いる繊維は、平均繊維径(短軸径)が4〜200nmの範囲内であれば、繊維中に4〜200nmの範囲外の繊維径(短軸径)のものが含まれていても良いが、その割合は30質量%以下であることが好ましく、望ましくは、すべての繊維の繊維径(短軸径)が200nm以下、特に100nm以下、とりわけ60nm以下であることが望ましい。
【0030】
なお、繊維の長さについては特に限定されないが、平均長さで100nm以上が好ましい。繊維の平均長さが100nmより短いと、補強効果が低く、繊維強化複合材料の強度が不十分となるおそれがある。なお、繊維中には繊維長さ100nm未満のものが含まれていても良いが、その割合は30質量%以下であることが好ましい。
【0031】
上記繊維径(短軸径)、繊維長の測定は市販の顕微鏡、電子顕微鏡により測定することができる。例えば、走査型電子顕微鏡により2000倍にセルロースナノファイバーを拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100個のセルロースナノファイバーを使用して繊維径(短軸径)、繊維長(短軸径)の平均値を求めることができる。
【0032】
本発明に係るセルロースナノファイバーは、例えば、特開2005−60680号公報や特開2008−1728号公報に記載の方法で得ることができる。
【0033】
本発明のセルロースナノファイバーは、複数の粉砕手段を用いて微細化することが好ましい。粉砕手段は限定されないが、本発明の目的に合う粒径まで微細に粉砕するためには、高圧ホモジナイザーや媒体ミル、砥石回転型粉砕機、石臼式グラインダーのような強い剪断力が得られる方式が好ましく用いられる。
【0034】
高圧ホモジナイザーとは、加速された高流速によるせん断力、急激な圧力降下(キャビテーション)及び高流速の粒子同士が微細オリフィス内で対面衝突することによる衝撃力によって磨砕を行う装置であり、市販されている装置としては、ナノマイザー(ナノマイザー株式会社製)、マイクロフルイダイザー(Microfluidics社製)等を用いることができる。
【0035】
高圧ホモジナイザーによるセルロースのフィブリル化と均質化の程度は、高圧ホモジナイザーへ圧送する圧力と高圧ホモジナイザーに通過させる回数(パス回数)に依存する。圧送圧力は、通常、500〜2000kg/cm程度の範囲で行うことが超微細化処理に適するが、生産性を考慮すると1000〜2000kg/cmがより好ましい。パス回数は、例えば、5〜50回、好ましくは10〜40回、特に20〜30回程度である。媒体ミルは湿式振動ミル、湿式遊星振動ミル、湿式ボールミル、湿式ロールミル、湿式コボールミル、湿式ビーズミル、湿式ペイントシェーカー等である。これらの中で例えば湿式ビーズミルとは、金属製、セラミック製等の媒体を容器に内蔵し、これを強制撹拌することによって湿式磨砕する装置であるが、例えば市販されている装置としては、アペックスミル(コトブキ技研工業株式会社製)、パールミル(アシザワ株式会社製)、ダイノーミル(株式会社シンマルエンタープライゼス製)等を用いることができる。
【0036】
砥石回転型粉砕機とは、コロイドミル或いは石臼型粉砕機の一種であり、例えば、粒度が16〜120番の砥粒からなる砥石をすりあわせ、そのすりあわせ部に前述の水分散液を通すことで、粉砕処理される装置のことである。必要に応じて、複数回処理を行ってもよい。砥石を適宜変更するのは好ましい実施態様の一つである。砥石回転型粉砕機は、「短繊維化」と「微細化」の両作用を有するが、その作用は砥粒の粒度に影響を受ける。短繊維化を目的とする場合は46番以下の砥石が有効であり、微細化を目的とする場合は46番以上の砥石が有効である。46番はいずれの作用も有する。具体的な装置としては、ピュアファインミル(グラインダーミル)(株式会社栗田機械製作所)、セレンディピター、スーパーマスコロイダー、スーパーグラインデル(以上、増幸産業株式会社)などがあげられる。
【0037】
本発明において、得られたセルロースナノファイバーは、直接、又は分散液として熱可塑性樹脂に添加されるが、その含有量は0.1から50質量%の範囲であることが好ましい。より好ましくは5〜50質量%であり、特に10〜40質量%が好ましい。
【0038】
アセチル化セルロースにセルロースナノファイバーを含有させる方法は特に限定されるものではないが、後述する溶液キャスト法において、ドープ液を調製する際に分散液として含有させることが好ましい。
【0039】
なお、セルロースナノウィスカーについても、上記セルロースナノファイバーと同様の説明がなし得る。
【0040】
(置換度調整のための表面処理)
本発明に係る結晶性セルロースのヒドロキシルキ基(水酸基)のアシル基による置換度は、0〜2.0の範囲内にあることを特徴とする。従って、結晶性セルロースの化学的性状及び目的に応じて、置換度を調整するために表面処理による化学修飾が必要となる。
【0041】
なお、本願において、アシル基の置換度とは、ASTM D817に従って算出した値である。
【0042】
アシル基による置換度の調整の方法は、従来公知のアシル化の方法を採用することができる。
【0043】
本発明において、化学修飾によりナノファイバーのヒドロキシル基(水酸基)に導入する官能基としては、アセチル基、メタクリロイル基、プロパノイル基、ブタノイル基、iso−ブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等が挙げられ、セルロース繊維のヒドロキシル基(水酸基)には、これらの官能基の一種が導入されていても良く、二種以上が導入されていても良い。
【0044】
これらのうち、特にエステル系官能基が好ましく、とりわけ、アセチル基等のアシル基、及び/又はメタクリロイル基が好ましい。
【0045】
特に、後述のマトリクス材料としての非結晶性合成樹脂が有する官能基と同一ないしは同種の官能基を導入することにより、結晶性セルロースの官能基とマトリクス材料の樹脂の官能基とで共有結合し、良好な吸湿性低減効果と透明性向上効果が得られ好ましい。
【0046】
本発明に係る結晶性セルロースは、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、下記一般式(1)で表される有機基によって表面修飾を施しても良い。有機基が結合することで、マトリクスへの分散性が向上し、凝集が抑制されることにより、透明性の向上、弾性率の向上などの効果を得る可能性がある。
【0047】
【化1】

【0048】
一般式(1)において、Lは下記一般式(2)〜(21)のいずれかで表される連結基である。
【0049】
【化2】

【0050】
なかでも、結合の形成させやすさの観点から、一般式(2)、(3)、(4)、(6)、(7)、(8)、(10)、(11)、(15)、(16)、(17)、(18)、(19)のいずれかで表される連結基であることが好ましく、一般式(2)、(3)、(4)、(6)、(7)、(8)、(15)、(16)、(18)のいずれかで表される連結基であることがより好ましく、一般式(2)、(4)、(6)、(7)、(15)のいずれかで表される連結基であることがさらに好ましい。
【0051】
セルロース繊維の場合には、表面のヒドロキシル基との反応により、一般式(1)で表される基を導入することができる。この場合、一般式(1)のL1は(2)、(4)、(6)、(7)、(15)、(21)のいずれかで表される連結基であることが好ましい。
【0052】
一般式(1)において、nは0〜4の整数を表し、0〜2であることが好ましく、1〜2であることがより好ましい。nが2〜4の整数であるとき、n個のL1は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
一般式(1)において、R1は有機基を表す。有機基の分子量は1000以下のものであってもよいし、1000を超えるものであってもよい。
【0054】
分子量1000以下の有機基として、アルキル基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18;例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜24;例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基など)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18;例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基など)、アシル基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜18;例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基など)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18;例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基など)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜24;例えば、フェノキシ基など)、シアノ基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルブチルシリル基など)などが挙げられる。
【0055】
有機基は、置換基を有していていもよい。置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基など)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜15;例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基など)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜12;例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基など)、アシル基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜18;例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基など)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数1〜36、より好ましくは炭素数1〜18;例えば、ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基など)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜36、より好ましくは炭素数6〜18;例えば、フェノキシ基など)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜36、より好ましくは炭素数2〜18;例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチリルオキシ基など)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基などが挙げられる。
【0056】
分子量1000を超える有機基として、ポリマー、オリゴマーを用いることができる。ポリマー、オリゴマーが結合する場合、マトリクス中での立体反発により凝集が抑制される点で好ましい。ポリマー、オリゴマーは前記で示した置換基を有していてもよい。
【0057】
本発明で用いることができる有機基の具体例を以下に例示するが、本発明で採用することができる有機基はこれらに限定されるものではない。
【0058】
【化3】

【0059】
【化4】

【0060】
【化5】

【0061】
【化6】

【0062】
【化7】

【0063】
(分散剤)
本発明の樹脂フィルムは、分散剤を含有し、当該分散剤のハンセンの溶解度パラメータの寄与率のfd成分が5〜65の範囲内であることを特徴とする。
【0064】
本発明において、当該分散剤は、結晶性セルロースを均一に分散するための媒体として使用する。
【0065】
本発明に係る分散剤は上記条件を満たすものであれば、特に制限はないが、好ましい具体例としては、ジアセチルセルロース(DAC)fd=25、セルローストリアセテート(TAC)fd=30、イーストマンケミカルカンパニー製セルロースアセテートプロピオネート(CAP482−20;fd=35、CAP141−20;fd=45)、ビックケミー・ジャパン社製分散剤(DISPERBYK180:BYK180、DISPERBYK:DISPERBYK:BYK184、BYK9076)などを用いることができる。
【0066】
また、分散に際し、種々の界面活性剤を用いることも有用な方法である。界面活性剤としてはアニオン性、カチオン性、両性、非イオン性など何れを用いることも可能であるが、アニオン性及び非イオン性界面活性剤が好ましく、特にアニオン性界面活性剤が好ましい。なお、分散剤は結晶性セルロースに対して10〜150質量%添加させることが好ましい。
【0067】

<ハンセンの溶解度パラメータの寄与率のfd成分>
本発明に用いられる分散剤のハンセンの溶解度パラメータの寄与率のfd成分は、本発明の効果発現の観点から、25〜50の範囲内であることが好ましい。
【0068】
ここで、ハンセン(Hansen)の溶解度パラメータの寄与率について説明する(山本秀樹著「SP値基礎・応用と計算方法」第2刷(第81頁〜第84頁)、株式会社情報機構発行(2005年)参照)。
【0069】
まず、Hansenが、Hildebrandの溶解度パラメーター(δ)に関与している分散力、双極子相互作用、水素結合の効果を考慮して提案した数式1に示される溶解度パラメータを用いて、δ(分散力による寄与;分子衝突により誘導される双極子の形成によって生じるロンドン力又はファンデルワールス力による寄与として知られている。)、δ(極性相互作用による寄与;分子が溶液中に存在する場合に対象とする分子が発生する永久双極子による寄与を意味する。)、δ(水素結合による寄与;特定の相互作用を表し、例えば水素結合、酸/塩基結合及びドナー/アクセプター結合による寄与を表す。)を計算し、さらに数式2〜数式4を用いてHansenの溶解度パラメータの寄与率を算出することができる。
【0070】
【数1】

【0071】
【数2】

【0072】
【数3】

【0073】
【数4】

【0074】
(マトリクス材料)
本発明の樹脂フィルムにおいては、マトリクス材料を含有させることが好ましい。本願でいう「マトリクス材料」とは、本発明で用いる結晶性セルロースの周囲に存在する物質のことであり、気体、液体、固体のいずれであってもよい。当該マトリクス材料の種類は、特に限定されるものではないが、樹脂材料を用いることが好ましい。樹脂(本願において「マトリクス樹脂」という。)は複数種使用してもよく、熱可塑性樹脂、溶媒可溶性樹脂又は硬化性樹脂を好適に使用することができる。熱可塑性樹脂を用いた場合は、成形がしやすくなるという特徴がある。また、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂を用いた場合は、本発明の樹脂フィルムの光学的な異方性が小さくなるという特徴がある。
【0075】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン(日本ゼオン社ゼオノア、JSR社製アートン、ポリプラスチック社製TOPAS、三井化学社製アペルなど)、ポリ乳酸、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネート、ポリ3ヒドロキシブチレート、ポリアリレート、ナイロン、アラミド、熱可塑性エラストマー、シリコーンなどが挙げられる。
【0076】
熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フラン樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂などが挙げられる。
【0077】
溶媒可溶性樹脂は、水又は有機溶媒に可溶であるものを用いることができる。溶媒可溶性樹脂を溶解する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、塩化メチレン、クロロホルム、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、NMP(N−メチルピロリドン)、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、THF、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトニトリル、グリセリン、エチレングリコール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、トルエン、キシレン、アニソール、n−ヘキサン、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、酢酸、トリフルオロ酢酸、ピリジン、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどが挙げられ、これらを単独又は複数混合して用いることができる。
【0078】
本発明で用いる結晶性セルロースによって、使用するマトリクス材料を選択することが好ましい場合がある。
【0079】
例えば、疎水性の高い界面活性剤が吸着している結晶性セルロースを用いる場合には、マトリクス樹脂として、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレンなどが好ましく用いられる。
【0080】
また、疎水性の高い基が結合している結晶性セルロースを用いる場合には、マトリクス樹脂として、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオキシメチレンなどが好ましく用いられる。
【0081】
本発明で用いる結晶性セルロースとマトリクス材料の好ましい組み合わせとしては、マトリクス材料としてセルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどのセルロース系樹脂や、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカノエートなどの脂肪族ポリエステルが好ましい。
【0082】
なお、本発明においては、前記分散剤又はマトリクス材料としてセルロースエステル樹脂を含有することを特徴とするが、当該セルロースエステル樹脂の含有量は、本発明の効果発現の観点から、1質量%以上含有させることが好ましい。
【0083】
〈組成物の調製方法〉
本発明に係る組成物は、結晶性セルロースとマトリクス材料を混合することにより得られる。
【0084】
例えば、マトリクス材料が熱可塑性樹脂である場合は、二軸混練機などを用いて加熱して樹脂を溶融させた状態で結晶性セルロースと混合することができる。混練温度は、熱可塑性樹脂の溶融粘度が低くなる温度であって、なおかつ、結晶性セルロースの熱分解温度以下である温度とすることが好ましい。
【0085】
混練温度は、270℃以下であることが好ましく、260℃以下であることがさらに好ましく、250℃以下であることが特に好ましい。
【0086】
マトリクス材料が溶媒可溶性樹脂である場合は、溶媒に樹脂を溶解させることで結晶性セルロースを混合することができる。溶媒可溶性樹脂の場合は、結晶性セルロースの熱分解温度より十分低い温度で混合することができるという利点がある。用いる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、塩化メチレン、クロロホルム、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、DMAc(N,N−ジメチルアセトアミド)、NMP(N−メチルピロリドン)、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、1,4−ジオキサン、THF、酢酸エチル、酢酸メチル、アセトニトリル、グリセリン、エチレングリコール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロパノール、トルエン、キシレン、アニソール、n−ヘキサン、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、酢酸、トリフルオロ酢酸、ピリジン、DMSO(ジメチルスルホキシド)、ニトロメタン、ニトロベンゼンなどを挙げることができる。これら溶媒を複数混合した混合溶媒として用いてもよい。
【0087】
マトリクス材料が硬化性樹脂である場合には、液状モノマー及び/又はプレポリマーに結晶性セルロースを添加することにより混合することができる。この際、適宜溶剤を使用してもよい。溶剤としては上記に示したものを使用することができる。
【0088】
本発明の組成物における、マトリクス材料と結晶性セルロースとの混合質量比は、通常1:0.01〜3であり、好ましくは1:0.01〜2であり、より好ましくは1:0.02〜2であり、さらに好ましくは1:0.03〜1である。結晶性セルロースの割合が少なすぎると、熱膨張係数の低下や弾性率の向上の効果がほとんど見られなくなる傾向があり、結晶性セルロースの割合が多すぎると成型が困難となる傾向がある。
【0089】
本発明の組成物には、結晶性セルロースとマトリクス材料以外の成分が含まれていてもよい。そのような成分として、例えば、熱安定剤、可塑剤、UV吸収剤、着色剤、ゴム、エラストマーなどを挙げることができる。これらの成分の添加量は、組成物の0.0001〜20質量%であるのが好ましく、0.0001〜10質量%であるのがより好ましく、0.0001〜5質量%であることがさらに好ましい。
【0090】
以下において、本発明において、マトリクス樹脂として好適に用いることができる樹脂について詳細な説明をする。
【0091】
〈セルロースエステル樹脂〉
本発明に用いられるセルロースエステルとしては例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等や、特開平10−45804号公報、同08−231761号公報、米国特許第2,319,052号明細書等に記載されているようなセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の混合脂肪酸エステルを用いることができる。特に好ましくはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートである。これらのセルロースエステルは単独或いは混合して用いることができる。分子量は数平均分子量(Mn)で70000〜200000のものが好ましく、100000〜200000のものが更に好ましい。
【0092】
セルローストリアセテートの場合には、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。
【0093】
セルローストリアセテート以外で好ましいセルロースエステルは炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすセルロースエステルを含むセルロースエステルである。
【0094】
式(I) 2.0≦X+Y≦2.6
式(II) 0.1≦Y≦1.2
更に2.4≦X+Y≦2.6、1.4≦X≦2.3のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度=X+Y)樹脂が好ましい。中でも2.4≦X+Y≦2.6、1.7≦X≦2.3、0.1≦Y≦0.9のセルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート(総アシル基置換度=X+Y)樹脂が好ましい。アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在している。これらのセルロースエステル系樹脂は公知の方法で合成することができる。アシル基の置換度の測定方法はASTM−D817−96の規定に準じて測定することができる。
【0095】
セルロースエステルは綿花リンター、木材パルプ、ケナフ等を原料として合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることができる。特に綿花リンターから合成されたセルロースエステルを単独或いは混合して用いることが好ましい。
【0096】
なお、本発明に係る樹脂フィルムの基材としては、可撓性であることが好ましい。ここで、「可撓性」とは、JIS P 8115:2001記載のMIT試験において最低100回の耐屈性があるものとする。
【0097】
熱可塑性樹脂単独の膨張係数は、0〜120ppm/℃が好ましい。さらに好ましくは5〜100ppm/℃、最も好ましくは10〜80ppm/℃である。
【0098】
〈アクリル樹脂〉
本発明に用いられるアクリル樹脂は、特開2003−12859号公報に記載の方法で作製できる。
【0099】
〈環状オレフィン樹脂〉
本発明においては、環状オレフィン樹脂を用いることも好ましい。環状オレフィン樹脂としては、ノルボルネン系樹脂、単環の環状オレフィン系樹脂、環状共役ジエン系樹脂、ビニル脂環式炭化水素系樹脂、及び、これらの水素化物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系樹脂は、透明性と成形性が良好なため、好適に用いることができる。
【0100】
(可塑剤)
本発明の樹脂フィルムは、可塑剤を含有するのが好ましく、可塑剤としては、例えば、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤等を好ましく用いることができる。
【0101】
これらの可塑剤の使用量は、フィルム性能、加工性等の点で、セルロースエステルに対して1〜20質量%が好ましく、特に好ましくは、3〜13質量%である。
【0102】
(紫外線吸収剤)
本発明の樹脂フィルムは、紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
【0103】
紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
【0104】
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばオキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
本発明で好ましく用いられる上記の紫外線吸収剤としては、透明性が高く、偏光板や液晶の劣化を防ぐ効果に優れたベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく、不要な着色がより少ないベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましく用いられる。
【0106】
(樹脂フィルムの製造方法)
本発明の樹脂フィルムの製造方法としては、通常のインフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の製造法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイラインなどの光学欠点の抑制などの観点から流延法による溶液流延法、溶融流延法が好ましい。
【0107】
以下、典型的例として、本発明の樹脂フィルムを、作製する場合の製造方法について詳述する。
【0108】
<溶液流延法による樹脂フィルムの製造方法>
(有機溶媒)
本発明の樹脂フィルムを溶液流延法で製造する場合、ドープを形成するのに有用な有機溶媒は、セルロースエステル樹脂等の熱可塑性樹脂を溶解するものであれば制限なく用いることができる。
【0109】
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、乳酸エチル、乳酸、ジアセトンアルコール等を挙げることができ、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、乳酸エチル等を好ましく使用し得る。
【0110】
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させてもよい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ない時は非塩素系有機溶媒系での熱可塑性樹脂の溶解を促進する役割もある。
【0111】
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、熱可塑性樹脂は、少なくとも計10〜45質量%溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
【0112】
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性もよいこと等からエタノールが好ましい。
【0113】
以下、本発明に係る樹脂フィルム(以下、単に「フィルム」ともいう。)の好ましい製膜方法について説明する。
【0114】
1)溶解工程
熱可塑性樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で熱可塑性樹脂、熱収縮材料、その他の添加剤を攪拌しながら溶解しドープを形成する工程である。
【0115】
熱可塑性樹脂の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
【0116】
返材とは、フィルムを細かく粉砕した物で、フィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでスペックアウトしたフィルム原反のことをいい、これも再使用される。
【0117】
2)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属ベルト、例えばステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する工程である。
【0118】
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にし易い加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して重層してもよい。あるいは複数のドープを同時に流延する共流延法によって積層構造のフィルムを得ることも好ましい。
【0119】
3)溶媒蒸発工程
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブと呼ぶ)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる工程である。
【0120】
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法及び/又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法の乾燥効率が良く好ましい。又、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
【0121】
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜120秒以内で該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
【0122】
4)剥離工程
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する工程である。剥離されたウェブは次工程に送られる。
【0123】
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃であり、さらに好ましくは11〜30℃である。
【0124】
なお、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により50〜120質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易いため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
【0125】
ウェブの残留溶媒量は下記式で定義される。
【0126】
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
【0127】
金属支持体とフィルムを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mであるが、剥離の際に皺が入り易い場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましく、さらには、剥離できる最低張力〜166.6N/m、次いで、最低張力〜137.2N/mで剥離することが好ましいが、特に好ましくは最低張力〜100N/mで剥離することである。
【0128】
本発明においては、当該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃とするのが好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜30℃とするのが最も好ましい。
【0129】
5)乾燥及び延伸工程
剥離後、ウェブを乾燥装置内に複数配置したロールに交互に通して搬送する乾燥装置35、及び/又はクリップでウェブの両端をクリップして搬送するテンター延伸装置34を用いて、ウェブを乾燥する。
【0130】
乾燥手段はウェブの両面に熱風を吹かせるのが一般的であるが、風の代わりにマイクロウェーブを当てて加熱する手段もある。余り急激な乾燥は出来上がりのフィルムの平面性を損ね易い。高温による乾燥は残留溶媒が8質量%以下くらいから行うのがよい。全体を通し、乾燥は概ね40〜250℃で行われる。特に40〜160℃で乾燥させることが好ましい。
【0131】
テンター延伸装置を用いる場合は、テンターの左右把持手段によってフィルムの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を左右で独立に制御できる装置を用いることが好ましい。また、テンター工程において、平面性を改善するため意図的に異なる温度を持つ区画を作ることも好ましい。
【0132】
また、異なる温度区画の間にそれぞれの区画が干渉を起こさないように、ニュートラルゾーンを設けることも好ましい。
【0133】
なお、延伸操作は多段階に分割して実施してもよく、流延方向、幅手方向に二軸延伸を実施することも好ましい。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行ってもよいし、段階的に実施してもよい。
【0134】
この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。即ち、例えば、次のような延伸ステップも可能である。
【0135】
・流延方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
・幅手方向に延伸−幅手方向に延伸−流延方向に延伸−流延方向に延伸
また、同時2軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮させる場合も含まれる。同時2軸延伸の好ましい延伸倍率は幅手方向、長手方向ともに×1.01倍〜×1.5倍の範囲でとることができる。
【0136】
テンターを行う場合のウェブの残留溶媒量は、テンター開始時に20〜100質量%であるのが好ましく、かつウェブの残留溶媒量が10質量%以下になる迄テンターを掛けながら乾燥を行うことが好ましく、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0137】
テンターを行う場合の乾燥温度は、30〜160℃が好ましく、50〜150℃がさらに好ましく、70〜140℃が最も好ましい。
【0138】
テンター工程において、雰囲気の幅手方向の温度分布が少ないことが、フィルムの均一性を高める観点から好ましく、テンター工程での幅手方向の温度分布は、±5℃以内が好ましく、±2℃以内がより好ましく、±1℃以内が最も好ましい。
【0139】
6)巻き取り工程
ウェブ中の残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻き取り機37により巻き取る工程であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。特に0.00〜0.10質量%で巻き取ることが好ましい。
【0140】
巻き取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使いわければよい。
【0141】
本発明に係るフィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2mであることがより好ましい。
【0142】
本発明に係るフィルムの膜厚に特に制限はないが、20〜200μmであることが好ましく、25〜150μmであることがより好ましく、30〜120μmであることが特に好ましい。
【0143】
<溶融流延製膜法による樹脂フィルムの製造方法>
本発明の樹脂フィルムを、フィルム状樹脂フィルムとして、溶融流延製膜法により製造する場合の方法について説明する。
【0144】
〈溶融ペレット製造工程〉
溶融押出に用いる熱可塑性樹脂、熱収縮材料からなるフィルムを構成する組成物は、通常あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
【0145】
ペレット化は、公知の方法でよく、例えば、乾燥した熱可塑性樹脂と熱収縮材料等からなる添加剤をフィーダーで押出機に供給し1軸や2軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷又は空冷し、カッティングすることでできる。
【0146】
原材料は、押出する前に乾燥しておくことが原材料の分解を防止する上で重要である。特にセルロースエステルは吸湿しやすいので、除湿熱風乾燥機や真空乾燥機で70〜140℃で3時間以上乾燥し、水分率を200ppm以下、さらに100ppm以下にしておくことが好ましい。
【0147】
添加剤は、押出機に供給押出機合しておいてもよいし、それぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、こと前に混合しておくことが好ましい。
【0148】
酸化防止剤の混合は、固体同士で混合してもよいし、必要により、酸化防止剤を溶剤に溶解しておき、熱可塑性樹脂に含浸させて混合してもよく、あるいは噴霧して混合してもよい。
【0149】
真空ナウターミキサーなどが乾燥と混合を同時にできるので好ましい。また、フィーダー部やダイからの出口など空気と触れる場合は、除湿空気や除湿したNガスなどの雰囲気下にすることが好ましい。
【0150】
押出機は、せん断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、2軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
【0151】
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。ペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
【0152】
〈溶融混合物をダイから冷却ロールへ押し出す工程〉
まず、作製したペレットを1軸や2軸タイプの押出機を用いて、押し出す際の溶融温度Tmを200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルターなどでろ過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に共押出し、冷却ロール上で固化し、弾性タッチロールと押圧しながら流延する。
【0153】
供給ホッパーから押出機へ導入する際は真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。なお、Tmは、押出機のダイ出口部分の温度である。
【0154】
ダイに傷や可塑剤の凝結物等の異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインとも呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。
【0155】
押出機やダイなどの溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いるなどして、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
【0156】
本発明において冷却ロールには特に制限はないが、高剛性の金属ロールで内部に温度制御可能な熱媒体又は冷媒体が流れるような構造を備えるロールであり、大きさは限定されないが、溶融押し出されたフィルムを冷却するのに十分な大きさであればよく、通常冷却ロールの直径は100mmから1m程度である。
【0157】
冷却ロールの表面材質は、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタンなどが挙げられる。さらに表面の硬度を上げたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキなどや、セラミック溶射等の表面処理を施すことが好ましい。
【0158】
冷却ロール表面の表面粗さは、Raで0.1μm以下とすることが好ましく、さらに0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるのである。もちろん表面加工した表面はさらに研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
【0159】
本発明において、弾性タッチロールとしては、特開平03−124425号、特開平08−224772号、特開平07−100960号、特開平10−272676号、WO97−028950、特開平11−235747号、特開2002−36332号、特開2005−172940号や特開2005−280217号公報に記載されているような表面が薄膜金属スリーブ被覆シリコンゴムロールを使用することができる。
【0160】
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
【0161】
〈延伸工程〉
本発明では、上記のようにして得られたフィルムは冷却ロールに接する工程を通過後、さらに少なくとも1方向に1.01〜3.0倍延伸することもできる。
【0162】
好ましくは縦(フィルム搬送方向)、横(巾方向)両方向にそれぞれ1.1〜2.0倍延伸することが好ましい。
【0163】
延伸する方法は、公知のロール延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。特に光学フィルムが、偏光板保護フィルムを兼ねる場合は、延伸方向を巾方向とすることで偏光フィルムとの積層がロール形態でできるので好ましい。
【0164】
巾方向に延伸することで光学フィルムの遅相軸は巾方向になる。
【0165】
通常、延伸倍率は1.1〜3.0倍、好ましくは1.2〜1.5倍であり、延伸温度は、通常、フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃、好ましくはTg〜Tg+50℃の温度範囲で行われる。
【0166】
延伸は、長手方向もしくは幅手方向で制御された均一な温度分布下で行うことが好ましい。好ましくは±2℃以内、さらに好ましくは±1℃以内、特に好ましくは±0.5℃以内である。
【0167】
上記の方法で作製したフィルム状樹脂フィルムを光学フィルムとして用いる場合、当該光学フィルムのレターデーション調整や寸法変化率を小さくする目的で、フィルムを長手方向や幅手方向に収縮させてもよい。
【0168】
長手方向に収縮するには、例えば、巾延伸を一時クリップアウトさせて長手方向に弛緩させる、又は横延伸機の隣り合うクリップの間隔を徐々に狭くすることによりフィルムを収縮させるという方法がある。
【0169】
遅相軸方向の均一性も重要であり、フィルム巾方向に対して、角度が−5〜+5°であることが好ましく、さらに−1〜+1°の範囲にあることが好ましく、特に−0.5〜+0.5°の範囲にあることが好ましく、特に−0.1〜+0.1°の範囲にあることが好ましい。これらのばらつきは延伸条件を最適化することで達成できる。
【0170】
本発明のフィルム状樹脂フィルムは、長尺フィルムであることが好ましく、具体的には、100m〜5000m程度のものを示し、通常、ロール状で提供される形態のものである。また、フィルムの幅は1.3〜4mであることが好ましく、1.4〜2mであることがより好ましい。
【0171】
本発明に係るフィルム状樹脂フィルムの膜厚に特に制限はなく、目的に応じて変化させることが好ましい。例えば、偏光板保護フィルムに使用する場合は、20〜200μmであることが好ましく、25〜150μmであることがより好ましく、30〜120μmであることが特に好ましい。
【0172】
〈樹脂フィルムの製造装置〉
図1は、本発明の樹脂フィルムの製造装置の一例の全体構成を示す概略フローシートである。図1において、樹脂フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂等のフィルム材料を混合した後、押出し機1を用いて、流延ダイ4から第1冷却ロール5上に溶融押し出し、第1冷却ロール5に外接させるとともに、更に、第2冷却ロール7、第3冷却ロール8の合計3本の冷却ロールに順に外接させて、冷却固化してフィルム10とする。次いで、剥離ロール9によって剥離したフィルム10を、次いで延伸装置12によりフィルムの両端部を把持して幅方向に延伸した後、巻取り装置16により巻き取る。また、平面性を矯正するために溶融フィルムを第1冷却ロール5表面に挟圧するタッチロール6が設けられている。このタッチロール6は表面が弾性を有し、第1冷却ロール5との間でニップを形成している。
【0173】
本発明において、製造装置には、ベルト及びロールを自動的に清掃する装置を付加させることが好ましい。清掃装置については特に限定はないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール、粘着ロール、ふき取りロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、レーザーによる焼却装置、あるいはこれらの組み合わせなどがある。
【0174】
清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【実施例】
【0175】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0176】
実施例1
(セルロースナノウィスカー分散液1の調製)
旭化成(株)のセオラスST−100を1%濃度になるようにCAP482−20を2.2%濃度溶解したメチレンクロライドとエタノール混合溶媒に投入し、平均粒径0.5mmのジルコニアビーズを用いたビーズ分散機で10分間分散した後、0.3mmビーズで30分間、0.1mmビーズで30分間、0.05mmビーズで30分間分散処理し、セルロースナノウィスカーのメチレンクロライド、エタノール混合分散液を得た。この分散液の一部を取り出し、メチクロを蒸発させた後、100個のセルロースナノファイバーを電子顕微鏡観察し、平均繊維径100nm、平均繊維長600nmと測定された。
【0177】
また、セルロースナノファイバーをX線回折装置LabX XRD−6100((株)島津製作所製)を用いてX線の回折角度を調整して非晶領域の割合を測定したところ、10%であった。
【0178】
(セルロースナノファイバー分散液2の調製)
セルロースナノファイバーの表面処理
乾燥質量で5g相当分の亜硫酸漂白針葉樹パルプを高圧ホモジナイザーで処理したファイバーに、0.063gのTEMPO(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン 1−オキシル (2,2,6,6−tetramethylpiperidine 1−oxyl))及び0.63gの臭化ナトリウムを水375mlに分散させた後、13質量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液を、1gのパルプに対して次亜塩素酸ナトリウムの量が2.5mmolとなるように次亜塩素酸を加えて反応を開始した。反応中は0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHを10.5に保った。pHに変化が見られなくなった時点で反応終了と見なし、反応物をろ過後、充分な水による水洗、ろ過を繰り返し、反応物繊維を得た。これを300mlのエタノールで洗浄し、次に、アセトンで置換を繰り返しすることで媒体中の水分及びアルコール成分を完全に除去した。
【0179】
次に、マグネチックスターラーを備えた100mlの三口フラスコに上記で作製したファイバーを5g、トルエンを25ml加えたトルエン溶媒中に無水酢酸1.9等量、酢酸2.7等量を加え、10分間攪拌した。
【0180】
その後、60%濃度のHClO 0.04等量を添加して、5分間攪拌反応した。
【0181】
反応終了後、トルエン・メタノール洗浄した後、ろ過により生成物を得た。さらに200mlのビーカーに固体を添加した後、メタノール20ml、純粋10mlに分散して
0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液で中和後、エタノール保存した。
【0182】
分散はCAP482−20の代わりにCAP141−20を用いた以外は分散液1の調整と同様の手段で分散した。
【0183】
(セルロースナノファイバー分散液3の調製)
乾燥質量で5g相当分の亜硫酸漂白針葉樹パルプを高圧ホモジナイザー処理したファイバーを分散液2と同様にエタノール、アセトンと溶媒置換することにより水分、アルコール成分を完全に除去した後、同様の条件で10分間攪拌した。生成物をエタノール保存した。
【0184】
分散はCTAを用いた以外は分散液1と同様の手法で作製した。
【0185】
(セルロースナノファイバー分散液4の調製)
乾燥質量で5g相当分の亜硫酸漂白針葉樹パルプを高圧ホモジナイザー処理したファイバーを分散液2と同様にエタノール、アセトンと溶媒置換することにより水分、アルコール成分を完全に除去した後、同様の条件で15分間攪拌した。生成物をエタノール保存した。
【0186】
分散はDACを用いた以外は分散液1と同様の手法で作製した。
【0187】
(セルロースナノファイバー分散液5の調製)
乾燥質量で5g相当分の亜硫酸漂白針葉樹パルプを高圧ホモジナイザー処理したファイバーを分散液2と同様にエタノール、アセトンと溶媒置換することにより水分、アルコール成分を完全に除去した後、同様の条件で20分間攪拌した。生成物をエタノール保存した。
【0188】
分散は分散液1と同様の手法で作製した。
【0189】
(セルロースナノファイバー分散液6の調製)
乾燥質量で5g相当分の亜硫酸漂白針葉樹パルプを高圧ホモジナイザー処理したファイバーを分散液2と同様にエタノール、アセトンと溶媒置換することにより水分、アルコール成分を完全に除去した後、同様の条件で10分間攪拌した。生成物をエタノール保存した。
【0190】
〈結晶性セルロース含有フィルム1の作製〉
次いで作製したセルロースナノウィスカー分散液1を用いて、下記ドープ液を用いて膜厚100μm、巻数5000mの結晶性セルロース含有フィルム1を作製した。
【0191】
(ドープ液の調製)
トリアセチルセルロース 120質量部
セルロースナノウィスカー分散液1 840質量部
(MFC固形分として 20質量部)
可塑剤(トリメチロールプロパントリベンゾエート) 10質量部
〈結晶性セルロース含有フィルム2〜6の作製〉
表1のマトリクス材料を用い、結晶性セルロース含有フィルムを上記と同様な手法で作製した。
【0192】
(比較例)
〈比較例分散液1の調整〉
分散剤をStにした以外は分散液1と同様に作製した。
【0193】
また、分散後溶媒を乾燥させてセルロースを含有したスチレンをバインダとした固体を得た。
【0194】
〈比較例2〜3の分散液の調整〉
分散剤を表1に記載の材料にした以外は分散液1と同様に作製した。
【0195】
〈比較例4の分散液の調整〉
分散剤を表1に記載の材料にした以外は分散液5と同様に作製した。
【0196】
〈比較例5の分散液の調整〉
分散剤をメチルメタクリレート(MMA;和光純薬社製)にしたものをエポキシアクリレート ビームセット371〈荒川化学工業社製〉に添加して120分加熱することでフィルムを得た。
【0197】
〈比較例6〉
分散液3と同じ手法で60分間攪拌することとし、分散剤を用いないことで分散液3と同じ手法で作製した。
【0198】
《評価》
作製した上記各種フィルムを用いて下記の評価を行った。
【0199】
(平均線膨張係数)
セイコー電子(株)製EXSTAR TMA/SS6000型熱応力歪測定装置を用いて、窒素雰囲気下、1分間に5℃の割合で温度を30℃から50℃まで上昇させた後、一旦ホールドし、再び1分間に5℃の割合で温度を上昇させて30℃〜150℃の時の値を測定して求めた。荷重を5gにし、引張モードで測定を行った。
【0200】
セイコー電子(株)製EXSTAR TMA/SS6000型熱応力歪測定装置を用いて、窒素雰囲気下、1分間に5℃の割合で温度を30℃から50℃まで上昇させた後、一旦ホールドし、再び1分間に5℃の割合で温度を上昇させて30℃〜150℃の時の値を測定して求めた。荷重を5gにし、引張モードで測定を行い、評価した。なお、表1に記載のCTE(Coefficient of thermal expansion)は、上記測定で算出した線膨張係数である。
【0201】
(透明性)
各試料をスペクトロフォトメーターU−3200(日立製作所製)を用いて、380nm、550nm、及び650nmでの分光透過率を、それぞれ測定して、各波長での透過率の平均値を可視光域の透過率とすることにより透明性を評価した。
【0202】
(ヘーズ)
樹脂フィルムのヘーズ(Hf)をJIS−K7136に準じて、ヘーズメーター(NDH2000;日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。
【0203】
以上の評価結果を表1にまとめて示す。
【0204】
【表1】

【0205】
表1に示した結果から明らかなように、本発明に係る試料(樹脂フィルム)は、比較例に対し、線膨張係数、透明性、及びヘーズにおいて優れていることが分かる。
【0206】
すなわち、本発明により、透明性が高く、かつ低線膨張係数で熱膨張や熱収縮といった寸法安定性に優れた樹脂フィルムとその製造方法提供することができることが分かる。
【符号の説明】
【0207】
1 押出し機
2 フィルター
3 スタチックミキサー
4 流延ダイ
5 回転支持体(第1冷却ロール)
6 挟圧回転体(タッチロール)
7 回転支持体(第2冷却ロール)
8 回転支持体(第3冷却ロール)
9 剥離ロール
10 フィルム
11、13、14 搬送ロール
12 延伸機
15 スリッター
16 巻き取り機
F 本発明の樹脂フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性セルロースと分散剤とを含有する樹脂フィルムであって、当該結晶性セルロースのヒドロキシル基のアシル基による置換度が0〜2.0の範囲内にあり、当該結晶性セルロースの平均短軸径が2μm以下であり、セルロースエステル樹脂を含有することを特徴とする樹脂フィルム。
【請求項2】
前記分散剤のハンセンの溶解度パラメータの寄与率のfd成分が、25〜50の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂フィルム。
【請求項3】
前記置換度が、0〜1.5の範囲内にあることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
樹脂フィルムの製造方法であって、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の樹脂フィルムを製造することを特徴とする樹脂フィルムの製造方法。

【図1】
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