説明

樹脂ペレットスラリーの脱水方法及び装置

【課題】本発明は、横置きの筒状スクリーン内に設けた送り機能付き回転軸の回転により、樹脂ペレットと搬送水とを分離することを目的とする。
【解決手段】本発明による樹脂ペレットスラリーの脱水方法及び装置は、脱水スクリーン本体(1)に横置きに設けた筒状スクリーン(8)内に、送り機能(31)を有する送り機能付き回転軸(30)を回転駆動体(32)で回転駆動することにより、入口(1A)から供給された樹脂ペレットスラリー(A)の搬送水(7)をほぼ完全に除去した樹脂ペレット(6)を得ることができる方法と構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ペレットスラリーの脱水方法及び装置に関し、特に、横置きの筒状スクリーン内に設けた送り機能付き回転軸の回転により、樹脂ペレットと搬送水とを分離するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の樹脂ペレットスラリーの脱水方法及び装置としては、例えば、特許文献1に開示された「水中カットペレット搬送方法及びその装置」を挙げることができるが、この特許文献1と同様の構成を実機として採用した例を図2及び図3として示している。
【0003】
図2において符号1で示されるものは、脱水スクリーン本体であり、この脱水スクリーン本体1の下流側には、遠心脱水機2及び振動選別機3が、各々連結パイプ4及び5を介して直列状に接続されている。
また、前記脱水スクリーン本体1の入口1Aからは、樹脂ペレット6及び搬送水7からなる樹脂ペレットスラリーAが前記脱水スクリーン本体1の内部に供給されるように構成されている。
【0004】
前記脱水スクリーン本体1内に供給された樹脂ペレットスラリーAは、図3に示されるパンチングプレート8を滑落する際に、搬送水7のみが孔8aから落下し、樹脂ペレット6のみが排出口9から排出されて下流側の遠心脱水機2に供給される。
前記遠心脱水機2によって脱水処理が行われた樹脂ペレット6は下流側の振動選別機3に送られ、振動による粒径等の選別が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−95015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の樹脂ペレットスラリーの脱水方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような課題が存在していた。
すなわち、押出機に接続されたペレット水中カット装置などで製造された樹脂ペレットスラリーの脱水と搬送方法としては、前述のように傾斜をつけたパンチングプレート8上を樹脂ペレット6と搬送水7が通過することにより樹脂ペレット6と搬送水7を分離し、完全に脱水せず残った搬送水7にて、遠心脱水機2へ樹脂ペレット6を流し込むものであった。
この樹脂ペレット6と搬送水7を完全に分離すると、樹脂ペレット6は、遠心脱水機2に搬送されず、遠心脱水機2の入口等で閉塞する。また、逆に搬送水7を多く残すと樹脂ペレット6は、遠心脱水機2に搬送されるが、多量の搬送水7にて遠心脱水機2負荷が増加しオーバーロードしたり、樹脂ペレット6が完全に脱水されない。そのため、従来の脱水装置では、パンチングプレート8の開口面積を調整して脱水率を調整する必要があり、そのために押出機の運転を止めたり、パンチングプレート8を交換したりと作業が煩雑であった。また、樹脂ペレット6の処理量が多くなれば、パンチングプレート8の面積を大きくしなければならないため、傾斜型やタワー型の場合は、本体が縦方向に長くなり1フロアーに収まらず天井を突き破らなくてはならなくなるなどの設置スペースの問題が発生する。
さらに、傾斜状態のパンチングプレート8上を自重で樹脂ペレット6が滑落しただけでは、搬送水7を十分に除去することができず、複雑な構造の遠心脱水機2を用いることが必須となり、装置全体の小型化は困難であった。
【0007】
本発明は、以上のような課題を克服するためになされたもので、特に、横置きの筒状スクリーン内に設けた送り機能付き回転軸の回転により、樹脂ペレットと搬送水を分離するようにした樹脂ペレットスラリーの脱水方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による樹脂ペレットスラリーの脱水方法は、樹脂ペレットスラリーを受け入れるための入口と樹脂ペレットを排出するための第1出口及び搬送水を排出するための第2出口とを有する脱水スクリーン本体を用い、前記脱水スクリーン本体により樹脂ペレットと搬送水とを分離するようにした樹脂ペレットスラリーの脱水方法において、前記脱水スクリーン本体内で横置きに設けられた筒状スクリーンと、前記筒状スクリーン内に設けられ回転駆動体によって回転する送り機能付き回転軸を用い、前記入口から供給された前記樹脂ペレットスラリーの搬送水のみは前記筒状スクリーンを介して前記第2出口側に落下し、前記樹脂ペレットは前記送り機能付き回転軸によって前記第1出口側に送られる方法であり、また、前記筒状スクリーンは、水平に配設されて用いられる方法であり、また、前記筒状スクリーンは、入側から出側に向けて水平、下りまたは上り勾配の傾斜部が形成される何れかの方法であり、また、前記送り機能付き回転軸は、スクリュ、羽根付き回転軸及び円板付き回転軸の何れかよりなる方法であり、また、本発明による樹脂ペレットスラリーの脱水装置は、樹脂ペレットスラリーを受け入れるための入口と樹脂ペレットを排出するための第1出口及び搬送水を排出するための第2出口とを有する脱水スクリーン本体により、樹脂ペレットと搬送水とを分離するようにした樹脂ペレットスラリーの脱水方法において、前記脱水スクリーン本体内で横置きに設けられた筒状スクリーンと、前記筒状スクリーン内に設けられ回転駆動体によって回転する送り機能付き回転軸と、を備え、前記入口から供給された前記樹脂ペレットスラリーの搬送水のみは前記筒状スクリーンを介して前記第2出口側に落下し、前記樹脂ペレットは前記送り機能付き回転軸によって前記第1出口側に送られるようにした構成であり、また、前記筒状スクリーンは、水平に配設されている構成であり、また、前記筒状スクリーンは、入側から出側に向けて水平、下りまたは上り勾配の傾斜部が形成される何れかの構成であり、また、前記送り機能付き回転軸は、スクリュ、羽根付き回転軸及び円板付き回転軸の何れかよりなる構成である。
【発明の効果】
【0009】
本発明による樹脂ペレットスラリーの脱水方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、樹脂ペレットスラリーを受け入れるための入口を樹脂ペレットを排出するための第1出口及び搬送水を排出するための第2出口とを有する脱水スクリーン本体を用い、前記脱水スクリーン本体により樹脂ペレットと搬送水とを分離するようにした樹脂ペレットスラリーの脱水方法において、前記脱水スクリーン本体内で横置きに設けられた筒状スクリーンと、前記筒状スクリーン内に設けられ回転駆動体によって回転する送り機能付き回転軸を用い、前記入口から供給された前記樹脂ペレットスラリーの搬送水のみは前記筒状スクリーンを介して前記第2出口側に落下し、前記樹脂ペレットは前記送り機能付き回転軸によって前記第1出口側に送られることにより、樹脂ペレットと搬送水とをほぼ完全に分離し、かつ、遠心脱水機に樹脂ペレットを搬送することができ、さらに、筒状スクリーンは横方向に延長可能であるため、設置スペースの高さ方向を高くすることなく、能力を必要に応じて向上させることができる。
また、前記筒状スクリーンは、水平に配設されて用いられることにより、装置における取付けが極めて容易である。
また、前記筒状スクリーンは、入側から出側に向けて水平、下りまたは上り勾配の傾斜部が形成されていることにより、筒状スクリーン自体は装置に対して水平に取付けてあるにも拘わらず、傾斜している筒状スクリーンを介して、搬送水と樹脂ペレットの迅速な分離、搬送水の迅速な落下と樹脂ペレットの迅速な搬送を高効率に行うことができる。
また、前記送り機能付き回転軸は、スクリュ、羽根付き回転軸及び円板付き回転軸の何れかよりなることにより、搬送水から分離した樹脂ペレットを水平方向に高効率で搬送でき、迅速に遠心脱水機側に送り込むことができる。尚、前述のように筒状スクリーンの傾斜角度を変えることで同じ長さでもスラリーの滞留時間を調整できる。また、下り勾配にすれば、滞留時間は短くなり、上り勾配になれば、滞留時間は長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による樹脂ペレットスラリーの脱水方法及び装置の好適な実施の形態を説明するための脱水スクリーン本体の構成図である。
【図2】従来の樹脂ペレットスラリーの脱水方法及び装置を示す構成図である。
【図3】図2の脱水スクリーン本体を示す断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、横置きの筒状スクリーン内に設けた送り機能付き回転軸の回転により、樹脂ペレットと搬送水とを分離するようにした樹脂ペレットスラリーの脱水方法及び装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0012】
以下、図面と共に本発明による樹脂ペレットスラリーの脱水方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
図1において、符号1で示されるものは、全体形状が箱型をなす脱水スクリーン本体であり、この脱水スクリーン本体1の上流側1Bの上部には、樹脂ペレット6及び搬送水7からなる樹脂ペレットスラリーAを受け入れるための入口1Aが形成されている。
【0013】
前記脱水スクリーン本体1の下流側1Cの下部には、脱水後の樹脂ペレット6を排出するための第1出口9が形成され、この第1出口9は脱水スクリーン本体1により保持されていると共に、後述の筒状スクリーン8の底部20の出側21に接続されている。
【0014】
前記脱水スクリーン本体1の前記入口1Aと第1出口9との間に位置し前記脱水スクリーン本体1の本体底1Dには、前記脱水処理後の搬送水7を排水するための第2出口24が形成されている。
前記脱水スクリーン本体1の上部位置には、一対の軸受22,23を介して送り機能付き回転軸30が回転自在に設けられ、この送り機能付き回転軸30は前記脱水スクリーン本体1に外付けで設けられたモータ等からなる回転駆動体32によって回転駆動するように構成されている。
【0015】
前記筒状スクリーン8は、全体形状が円筒状をなすと共に、その両端は、閉止、すなわち、端栓状に形成されている。
また、前記筒状スクリーン8内に回転自在に設けられた前記送り機能付き回転軸30における送り機能31は、例えば、周知のスクリュ、羽根が付いた羽根付き回転軸、円板が付いた円板付き回転軸、等の何れかの構成とし、この送り機能31によって樹脂ペレット6のみを入側40から出側21へ送り、第1出口9から脱水後の樹脂ペレット6を下流の遠心脱水機2(図2)に搬送することができるように構成されている。
また、前記筒状スクリーン8は、図1の実線では水平状であるが、例えば、点線で示すように、入側40から出側21に向けて下り勾配の傾斜部50もしくは上り勾配の傾斜部50とすると、脱水後の樹脂ペレット6の第1出口9側への送りが極めて容易となる。
【0016】
次に、以上の構成において、実際に樹脂ペレットスラリーAを脱水する場合について説明する。
まず、図1の脱水スクリーン本体1の回転駆動体32を回転させて送り機能付き回転軸30を回転させた状態下で、前記入口1Aを介して前記樹脂ペレットスラリーAを筒状スクリーン8内に供給すると、この樹脂ペレットスラリーAの搬送水7のみはメッシュ状等の筒状スクリーン8の底部20を抜けて本体底1Dから第2出口22を介して外部に排出されると共に、樹脂ペレット6のみは、送り機能付き回転軸30の送り機能31によって入側40から出側21に送られ、第1出口9から次の遠心脱水機2に供給され、遠心分離機2にはほぼ完全に脱水した状態の樹脂ペレット31を供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明による樹脂ペレットスラリーの脱水方法及び装置は、従来の傾斜型のパンチングプレートに代えて横置きの筒状スクリーンを用いていることにより、脱水スクリーン本体を小型化すると共に、必要であれば、筒状スクリーンを横方向に自在に延長することが可能となる。
【符号の説明】
【0018】
1 脱水スクリーン本体
1A 入口
A 樹脂ペレットスラリー
1B 上流側
1C 下流側
1D 本体底
6 樹脂ペレット
7 搬送水
8 筒状スクリーン
9 第1出口
20 底部
21 出側
22,23 軸受
24 第2出口
30 送り機能付き回転軸
31 送り機能
32 回転駆動体(モータ)
40 入側
50 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂ペレットスラリー(A)を受け入れるための入口(1A)と樹脂ペレット(6)を排出するための第1出口(9)及び搬送水(7)を排出するための第2出口(24)とを有する脱水スクリーン本体(1)を用い、前記脱水スクリーン本体(1)により樹脂ペレット(6)と搬送水(7)とを分離するようにした樹脂ペレットスラリーの脱水方法において、
前記脱水スクリーン本体(1)内で横置きに設けられた筒状スクリーン(8)と、前記筒状スクリーン(8)内に設けられ回転駆動体(32)によって回転する送り機能付き回転軸(30)と、を用い、
前記入口(1A)から供給された前記樹脂ペレットスラリー(A)の搬送水(7)のみは前記筒状スクリーン(8)を介して前記第2出口(24)側に落下し、前記樹脂ペレット(6)は前記送り機能付き回転軸(30)によって前記第1出口(9)側に送られることを特徴とする樹脂ペレットスラリーの脱水方法。
【請求項2】
前記筒状スクリーン(8)は、水平に配設されて用いられることを特徴とする請求項1記載の樹脂ペレットスラリーの脱水方法。
【請求項3】
前記筒状スクリーン(8)は、入側(40)から出側(21)に向けて下り、水平または上り勾配の何れかの傾斜部(50)が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂ペレットスラリー脱水方法。
【請求項4】
前記送り機能付き回転軸(30)は、スクリュ、羽根付き回転軸及び円板付き回転軸の何れかよりなることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の樹脂ペレットスラリーの脱水方法。
【請求項5】
樹脂ペレットスラリー(A)を受け入れるための入口(1A)と樹脂ペレット(6)を排出するための第1出口(9)及び搬送水(7)を排出するための第2出口(24)とを有する脱水スクリーン本体(1)により、樹脂ペレット(6)と搬送水(7)とを分離するようにした樹脂ペレットスラリーの脱水装置において、
前記脱水スクリーン本体(1)内で横置きに設けられた筒状スクリーン(8)と、前記筒状スクリーン(8)内に設けられ回転駆動体(32)によって回転する送り機能付き回転軸(30)と、を備え、
前記入口(1A)から供給された前記樹脂ペレットスラリー(A)の搬送水(7)のみは前記筒状スクリーン(8)を介して前記第2出口(24)側に落下し、前記樹脂ペレット(6)は前記送り機能付き回転軸(30)によって前記第1出口(9)側に送られるように構成したことを特徴とする樹脂ペレットスラリーの脱水装置。
【請求項6】
前記筒状スクリーン(8)は、水平に配設されていることを特徴とする請求項5記載の樹脂ペレットスラリーの脱水装置。
【請求項7】
前記筒状スクリーン(8)は、入側(40)から出側(21)に向けて下り、水平または上り勾配の何れかの傾斜部(50)が形成されていることを特徴とする請求項5又は6記載の樹脂ペレットスラリーの脱水装置。
【請求項8】
前記送り機能付き回転軸(30)は、スクリュ、羽根付き回転軸及び円板付き回転軸の何れかよりなることを特徴とする請求項5ないし7の何れかに記載の樹脂ペレットスラリーの脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−223962(P2012−223962A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92783(P2011−92783)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】