説明

樹脂モールド真空バルブおよびその製造方法

【課題】誘電率が異なるエポキシ樹脂を用い、二段モールドするときの作業時間を短縮する。
【解決手段】接離自在の一対の接点5、6を有する真空バルブと、真空バルブの封着金具2、3の周りに設けられた電界緩和シールド10、11と、真空バルブ、電界緩和シールド10、11の周りに硬化促進剤を添加した材料でモールドされた第1の絶縁層12と、第1の絶縁層12の周りに設けられたシラン層13と、シラン層13の周りに設けられるとともに、第1の絶縁層12よりも誘電率の小さい材料でモールドされた第2の絶縁層14と、第2の絶縁層14の周りに設けられた接地層15とを具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、モールド作業を改善し得る樹脂モールド真空バルブおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接離自在の一対の接点を有する真空バルブの外周に、エポキシ樹脂をモールド(注型)して外部絶縁補強をしたものが知られている。モールドにあたっては、真空バルブの封着金具の外周に電界緩和シールドを設け、電界緩和が図られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、誘電率の異なるエポキシ樹脂を二種類用い、真空バルブ側の内側には誘電率の大きい材料を用い、外側には誘電率の小さい材料を用い、電界緩和を図るものが知られている。この場合、内側と外側の絶縁層は、別々にモールドする二段モールドが採用されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、二段モールドでは、モールドする作業時間が二倍となり、モールド作業を困難とさせていた。このため、二段モールドにおいて、モールドする作業時間を短縮できるものが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−187678号公報
【特許文献2】特開2005−251413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、誘電率が異なるエポキシ樹脂を用いて二段モールドする真空バルブであって、モールドする作業時間を短縮することが可能な樹脂モールド真空バルブおよびその製造方法を提供することにある。この場合、真空バルブには、電界緩和シールドを設け、電界緩和を確実なものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、実施形態の樹脂モールド真空バルブは、接離自在の一対の接点を有する真空バルブと、前記真空バルブの封着金具の周りに設けられた電界緩和シールドと、前記真空バルブ、前記電界緩和シールドの周りに設けられた第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層の周りに設けられたシラン層と、前記シラン層の周りに設けられるとともに、前記第1の絶縁層よりも誘電率の小さい第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層の周りに設けられた接地層と、を具備したことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1に係る樹脂モールド真空バルブの構成を示す断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る樹脂モールド真空バルブのモールド工程を説明するフロー図。
【図3】本発明の実施例2に係る樹脂モールド真空バルブの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0010】
先ず、本発明の実施例1に係る樹脂モールド真空バルブを図1、図2を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係る樹脂モールド真空バルブの構成を示す断面図、図2は、本発明の実施例1に係る樹脂モールド真空バルブのモールド工程を説明するフロー図である。
【0011】
図1に示すように、アルミナ磁器よりなる筒状の真空絶縁容器1の両端開口部には、固定側封着金具2と可動側封着金具3が封着されている。固定側封着金具2には、固定側通電軸4が貫通固定され、端部に固定側接点5が固着されている。固定側接点5に対向し、接離自在の可動側接点6が可動側封着金具3を移動自在に貫通する可動側通電軸7端部に固着されている。可動側通電軸7の中間部には伸縮自在のベローズ8の一方端が封着され、他方端が可動側封着金具3に封着されている。接点5、6の周りには、筒状のアークシールド9が設けられている。これにより、真空バルブが構成される。
【0012】
真空バルブの外側の電界を左右する固定側封着金具2の周りには、中央部が開口した碗状の固定側電界緩和シールド10が設けられ、外周面端部の電界緩和が図られている。同様に、外側の電界を左右する可動側封着金具3の周りにも、中央部が開口した可動側電界緩和シールド11が設けられている。
【0013】
真空絶縁容器1、電界緩和シールド10、11の半径方向の外周には、高誘電率材料からなる第1の絶縁層12がモールドにより設けられている。第1の絶縁層12の外周には、シランカップリング剤を塗布して設けた厚さ数μmのシラン層13を介し、第1の絶縁層12よりも誘電率の小さい低誘電率材料からなる第2の絶縁層14が設けられている。第2の絶縁層14の外周には、導電性塗料を塗布した接地層15が設けられている。なお、第1の絶縁層12の軸方向の両端には、テーパ状の界面接続部16が設けられており、他の電気機器と接続されるようになっている。
【0014】
次に、第1の絶縁層12から第2の絶縁層14までの製造方法を図2を参照して説明する。
【0015】
先ず、真空バルブを清掃後(st1)、第1の金型にセットする(st2)。第1の金型を例えば温度120℃の所定温度に加熱し、高誘電率材料を充填する(st3)。高誘電率材料は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂50重量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂50重量部、酸無水硬化剤90重量部、シランカップリング剤1重量部、硬化促進剤1重量部、高誘電率粒子350重量部、粒径数10μmのシリカからなる無機粒子350重量部、粒径数μmの微細なシリカからなる無機粒子1重量部で構成されている。なお、エラストマー粒子を添加してもよい。シランカップリング剤と微細なシリカは、粒子の表面改質をし混合時の沈降を防止する。
【0016】
硬化促進剤は、アルキルアンモニウム化合物、アルキルイミダゾール化合物を単独もしくは2種類を混合して用いることができる。高誘電率粒子は、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、カーボンブラック、シリコンカーバイトなどを単独もしくは2種類以上を混合して用いることができる。シランカップリング剤は、ビニル基、エポキシ基、アミノ基を有するものを用いることができる。
【0017】
次に、高誘電率材料を一次硬化させ(st4)、離型し、硬化物を取出す(st5)。硬化促進剤を添加しているので、温度120℃の30分程度で第1の絶縁層12に相当する硬化物を得ることができる。そして、表面にシランカップリング剤を塗布し(st6)、第2の金型にセットする(st7)。塗布前に、サンドブラスト処理をしてもよい。ここで、一次硬化とは、50%程度の硬化状態であり、機械的強度が所定値に達していないが、離型、取出しに際して支障がないものとする。このため、この硬化物を第1の絶縁層12に相当するものと表示した。
【0018】
次に、第2の金型に低誘電率材料を充填する(st8)。低誘電率材料は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂50重量部、ビスフェノールF型エポキシ樹脂50重量部、酸無水硬化剤90重量部、シランカップリング剤1重量部、粒径数10μmのシリカからなる無機粒子700重量部で構成されている。なお、エラストマー粒子を添加してもよい。
【0019】
第2の金型を例えば温度120℃の所定温度に加熱し、15時間程度保持し、低誘電率材料を加熱硬化させ(st9)、離型し、これを取出す(st10)。この場合、高誘電率材料の方も硬化が進み、低誘電率材料と同様の硬化状態となり、機械的強度が所定値に達する。必要により、乾燥炉に搬入し、二次硬化をさせる。その後、冷却し、接地層15を設ける。
【0020】
これにより、二段モールドを一段モールド(一回だけのモールド)とほぼ同様の短時間で行うことができる。第1の絶縁層12と第2の絶縁層14は、シラン層13を介して接着しているので強固なものとなる。誘電率は、第1の絶縁層12が約8.2、第2の絶縁層14が約3.4となり、この誘電率差により電界緩和シールド10、11や真空絶縁容器1の電界強度を大きく抑制することができる。なお、二段モールドでは、第1と第2の絶縁層12、14の形状を確実に形成することができるので、所定の電気的、機械的特性を確実に発揮させることができる。
【0021】
上記実施例1の樹脂モールド真空バルブによれば、真空バルブの外周に誘電率が大きく、硬化促進剤を添加し短時間で硬化する第1の絶縁層12を設け、その外周にシラン層13を介し、誘電率が小さく、所定の硬化時間で硬化する第2の絶縁層14を設けているので、第1、第2の絶縁層12、14の形成が二段モールドであるものの、モールド時間を短時間とすることができる。
【実施例2】
【0022】
次に、本発明の実施例2に係る樹脂モールド真空バルブを図3を参照して説明する。図3は、本発明の実施例2に係る樹脂モールド真空バルブの構成を示す断面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、第1の絶縁層の形状である。図3において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0023】
図3に示すように、第1の絶縁層12は、電界緩和シールド10、11と対向する部分の両端が太径であり、真空絶縁容器1と対向する中間部が細径となっている。これは、電界緩和シールド10、11では、特に外周の先端部の電界強度が高いので、この部分の絶縁厚さを厚くし、大きな電界緩和効果を発揮させるためである。
【0024】
上記実施例2の樹脂モールド真空バルブによれば、実施例1による効果のほかに、電界緩和シールド10、11部分の第1の絶縁層12の絶縁厚さを大きくしているので、大きな電界緩和効果を得ることができる。
【0025】
以上述べたような実施形態によれば、真空バルブの外周に誘電率が大きく短時間で硬化する第1の絶縁層を設け、その外周に誘電率が小さく所定時間で硬化する第2の絶縁層を設けているので、二段モールドするものの、モールドする作業時間を短時間とすることができる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1 真空絶縁容器
2、3 封着金具
4、7 通電軸
5、6 接点
8 ベローズ
9 アークシールド
10、11 電界緩和シールド
12 第1の絶縁層
13 シラン層
14 第2の絶縁層
15 接地層
16 界面接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接離自在の一対の接点を有する真空バルブと、
前記真空バルブの封着金具の周りに設けられた電界緩和シールドと、
前記真空バルブ、前記電界緩和シールドの周りに設けられた第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の周りに設けられたシラン層と、
前記シラン層の周りに設けられるとともに、前記第1の絶縁層よりも誘電率の小さい第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層の周りに設けられた接地層と、
を具備したことを特徴とする樹脂モールド真空バルブ。
【請求項2】
前記電界緩和シールドの先端部と対向する部分の前記第1の絶縁層の絶縁厚さを、真空絶縁容器と対向する部分よりも厚くしたことを特徴とする請求項1に記載の樹脂モールド真空バルブ。
【請求項3】
接離自在の一対の接点を有する真空バルブと、
前記真空バルブの封着金具の周りに設けられた電界緩和シールドと、
前記真空バルブ、前記電界緩和シールドの周りに設けられた第1の絶縁層と、
前記第1の絶縁層の周りに設けられたシラン層と、
前記シラン層の周りに設けられるとともに、前記第1の絶縁層よりも誘電率の小さい第2の絶縁層とを具備した樹脂モールド真空バルブの製造方法であって、
前記第1の絶縁層を形成する絶縁材料に、硬化促進剤を添加したことを特徴とする樹脂モールド真空バルブの製造方法。
【請求項4】
前記硬化促進剤は、アルキルアンモニウム化合物、アルキルイミダゾール化合物の少なくとも1種類を用いることを特徴とする請求項3に記載の樹脂モールド真空バルブの製造方法。
【請求項5】
前記第1の絶縁層は、第1の金型でモールドされるとき、機械的強度が所定値に達していない一次硬化の状態で前記第1の金型から取出すことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の樹脂モールド真空バルブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−89376(P2013−89376A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227209(P2011−227209)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】