説明

樹脂添加剤組成物

【課題】天然産の水酸化マグネシウムを充填剤、特に難燃剤として使用して熱可塑性樹脂等を成型したときに、耐熱老化性及び加工性に優れた樹脂添加剤組成物又は熱可塑性樹脂組成物等を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂等に天然産の水酸化マグネシウムと共に二塩基酸エリスリトール類エステルを配合使用することにより、得られた熱可塑性樹脂組成物等は、成型したときに耐熱老化性及び加工性が著しく改善され、老化性及び加工性に優れた成型物を提供することができるので、特に難燃性樹脂として電線、ケーブル等の被覆等各種の成型(被覆)品に幅広く使用可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規樹脂添加剤組成物、更に詳しくは天然産の水酸化マグネシウム及び二塩基酸エリスリトール類エステルを含有する、熱可塑性樹脂等の樹脂添加剤組成物、これを含有する樹脂組成物及びこの樹脂組成物を使用して成型又は被覆(以下、併せて「成型」と称することがある。)された製品(電線、ケーブル等。)に関する。更に、二塩基酸エリスリトール類エステルを含有する樹脂添加剤として使用可能な天然産の水酸化マグネシウム用表面処理剤も含まれる。
【0002】特に、熱可塑性樹脂組成物に適用した場合、難燃性樹脂組成物としてそれを成型したときに熱可塑性樹脂の耐熱老化性及び加工性を著しく改善することができる。
【0003】
【従来の技術】水酸化マグネシウムを樹脂の難燃剤として用いることは古くから知られている。近年、ダイオキシン等の環境問題から、従来より広く用いられてきたハロゲン系難燃剤の使用を抑制する動きが活発化しており、水酸化マグネシウムの難燃剤としての使用にも注目が集まりつつある。
【0004】このような中、例えば電線、ケーブル用樹脂においては、従来使用されていたポリ塩化ビニル樹脂やハロゲン系難燃剤に替わり、ポリオレフィン系樹脂及び水酸化マグネシウムを用いた難燃性樹脂が開発されている。
【0005】水酸化マグネシウムを使用する場合、水酸化マグネシウム中の鉄分等の不純物含有量が高いと樹脂の耐熱老化性等に問題が生じる。従って、難燃剤に使用する水酸化マグネシウムには、通常海水から得られる水酸化マグネシウムを工業的に精製して得られた非常に高純度のものが使用されている。しかしながら、高純度にするための精製に大きなコストを要し、より低コスト化が求められている。
【0006】不純物を含む天然産の水酸化マグネシウムを利用する試みも幾つか行われている。具体的には、天然産ブルーサイト等の水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物を粉砕したものを、脂肪酸のアンモニウム塩又はアミン塩等で表面処理したもの(特公平7−42461号公報参照)、脂肪酸、脂肪酸金属塩、カップリング剤等で表面処理したもの(特開平5−17692号公報参照)が報告されている。
【0007】しかしながら、上記天然産、特に天然鉱物由来の水酸化マグネシウムは、粒度や形状が不均一であるため、樹脂に配合した場合の加工性が著しく低下する。また、天然産の水酸化マグネシウムは鉄分の不純物を多く含むため、耐熱老化性にも問題がある。前記の方法は、何れもこれらの問題を十分に解決するものではなく、天然産の水酸化マグネシウムを難燃剤として実用的に使用可能にする技術の開発が待ち望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、天然産の水酸化マグネシウムを添加剤として樹脂に配合して使用する場合に求められる、耐熱老化性及び加工性を改善する添加剤組成物を開発することにある。更には、それより成型して得られる樹脂成型物及びそれを含む末端製品(成型品)を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決するために、天然産の水酸化マグネシウム用の表面処理剤を開発すべく鋭意検討した結果、二塩基酸エリスリトール類エステルが目的とする表面処理剤として優れていることを見出した。
【0010】更に、表面処理剤として好ましい形態で使用するために、エリスリトール類と、二塩基酸及びモノカルボン酸とのエステル体について鋭意研究を重ねた結果、二塩基酸エリスリトール類エステルと前記難燃剤とを熱可塑性樹脂等に併用配合して得られた熱可塑性樹脂組成物において、当該エステル体のエステル化度を50%を超えないエステル体を、含有、使用することにより当該エステル体の含有量を著しく減少せしめることができること、この結果この組成に基づき成型して得られる樹脂成型物の耐熱老化性及び加工性が極めて優れていることを見出し、これら各種の知見に基づいて本発明が完成されるに到った。
【0011】即ち、本発明の第一は、天然産の水酸化マグネシウム及び二塩基酸エリスリトール類エステルを含有する樹脂添加剤組成物である。
【0012】本発明には、更に次の内容も含まれる。
【0013】1. 当該水酸化マグネシウムが当該二塩基酸エリスリトール類エステルで表面処理された状態にある上記組成物。
【0014】2. 天然産の水酸化マグネシウム及び二塩基酸エリスリトール類エステルを、重量比で100対0.05〜10、好ましくは0.1〜5、更に好ましくは0.5〜3含有する上記組成物。天然産の水酸化マグネシウムの重量に関してはその中に含まれる水酸化マグネシウムMg(OH)2に換算したもので上記比率が算定される。
【0015】3. 難燃性組成物である上記組成物。
【0016】4. 樹脂中に上記何れかの組成物を含有する樹脂組成物。
【0017】5. 樹脂が熱可塑性樹脂である上記何れかの組成物。
【0018】6. 樹脂100重量部に対して、二塩基酸エリスリトール類エステルを好ましくは10重量部以下、更に好ましくは5重量部以下を含有する上記樹脂組成物。
【0019】樹脂に対する二塩基酸エリスリトール類エステルの配合量については、使用する天然産の水酸化マグネシウムの配合量により異なるが、このエステル体の配合量が多過ぎると樹脂の物性を劣化させることにもなるので、上記範囲で適宜配合するとよい。配合量の下限は特に示すことはできないが、通常は0.1重量部以上配合される。
【0020】当該水酸化マグネシウムの樹脂への配合量については、樹脂100重量部に対して当該水酸化マグネシウム、Mg(OH)2換算で0.1〜300重量部程度である。難燃性樹脂組成物として使用する場合、好ましくは1〜250重量部程度、より好ましくは10〜200重量部程度、更に好ましくは50〜150重量部程度である。
【0021】7. 前記何れかの組成物を使用して得られた樹脂成型物及び当該成型物を含む製品。製品には、難燃性が求められる樹脂成型(被覆)品が含まれるが、特に電線、ケーブル等、或いは壁紙等への適用が好ましい。その他、断熱材、電気製品、自動車用断熱部品等に使用可能である。
【0022】8. 前記樹脂添加剤組成物を含有する樹脂を使用して成型(被覆)された電線、ケーブル等及び壁紙等である樹脂成型物及び当該成型物を含む製品。
【0023】最近、人体に対する安全性から、ハロゲン系難燃剤を含まない電線やケーブル等が求められているが、劣化性や加工性が優れているので、特に本発明の樹脂組成物による被覆製品は、これに応えることができる。
【0024】9. 当該天然産の水酸化マグネシウムが水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物を粉砕して得られたものである上記何れかの組成物、樹脂組成物、及びそれを使用した製品。
【0025】10. 熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である上記各種組成物。
【0026】本発明において適用される樹脂としては、熱可塑性樹脂が好ましいことは前述の通りである。特に、電線、ケーブル等に使用する場合には、ノンハロゲン系の樹脂で、特にポリオレフィン系樹脂が採用される。
【0027】11. 二塩基酸エリスリトール類エステルを構成するエリスリトール類が下記一般式(I)で示される化合物である上記組成物。但し、式中、R1はメチル基、エチル基及びメチロール基の何れかを、nは0〜5の整数を、それぞれ表す。
【0028】
【化2】


【0029】12. 二塩基酸エリスリトール類エステルが二塩基酸のエリスリトール類エステルであり、又は当該二塩基酸のエリスリトール類エステルにおいてエリスリトール類部分の水酸基の一部がエステル化されているエステル誘導体である上記組成物。
【0030】13. 前記ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体樹脂及びエチレン−アクリレート系共重合体樹脂の少なくとも1種である上記組成物。
【0031】14. 更に、酸化防止剤を含有する上記組成物。
【0032】酸化防止剤としては、特に常温常圧下で固体状の酸化防止剤を添加、配合すると相乗作用的に一段と効果が高まるので好ましい。
【0033】15. 前記二塩基酸エリスリトール類エステルを含有する天然産の水酸化マグネシウム用表面処理剤。
【0034】本発明において、特に難燃性樹脂組成物として好ましい形態は、熱可塑性樹脂(好ましくは、ポリオレフィン系樹脂)、二塩基酸エリスリトール類エステル及び天然産の水酸化マグネシウムの3種、更に必要により酸化防止剤の4種を、それぞれ含有し、当該エステルについては、好ましくはエステル体のエステル化度が50%を超えない(但し、10%程度の誤差を含めるのでエステル化度55%までは好ましい範囲に含まれる。)エステルである熱可塑性樹脂組成物であり、或いはこれより成型して得られる樹脂成型物や成型品である。更には、当該組成物に適した当該二塩基酸エリスリトール類エステルと天然産の水酸化マグネシウムの2種又はこれに更に酸化防止剤を加えた3種を、少なくとも混合又は組み合わせて含有する樹脂添加剤組成物も本発明の好適な形態に含まれる。
【0035】本発明に使用する当該エステル体としては、好ましくは上記エステル化度50%を超えないエステル体を含んでおればよいが、当該エステル体全体でエステル化度の平均値が55%を超えないエステル体であることがより好ましい。
【0036】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を説明する。
【0037】本発明で使用する二塩基酸エリスリトール類エステルには、二塩基酸とエリスリトール類とのエステル、好ましくは二塩基酸の2つのカルボキシル基がそれぞれエリスリトール類でエステル化されたエステル体及び、当該エステル体においてエリスリトール類部分に存在する当該エステル結合に関与しない水酸基の一部がエステル化されている、例えばモノカルボン酸のアシル基部分によりエステル化されている誘導体を含み、本明細書中当該両者を併せて「二塩基酸エリスリトール類エステル」と称する。
【0038】即ち、当該エステル体は、その水酸基の一部がエステル化されてもよいエリスリトール類と二塩基酸のカルボキシル基部分とでエステル化された形のエステル体であり、例えば当該エステル体は、エリスリトール類と二塩基酸(又はそのエステル)、又はエリスリトール類と二塩基酸(又はそのエステル)及びモノカルボン酸(又はそのエステル)とのエステル化反応(エステル交換反応も含まれる。)により得られることができる。
【0039】当該本発明に使用するエステル体としては、1分子の二塩基酸の2つのカルボキシル基が同種又は異種のエリスリトール類2分子でエステル化されたエステル体、及び当該エステル体を構成するエリスリトール類の当該エステル結合に関与しない遊離の水酸基の一部がモノカルボン酸のアシル基部分によりエステル化されている誘導体が好ましいが、その場合のエステル化度は50%を超えない程度、誤差範囲を含めると55%までであるのが好ましい。エステル化度が50%を超えると、樹脂の曲げ強度や耐熱老化性の改善効果が低下する場合があるので、その場合は好ましくない。
【0040】尚、エステル化度とは、本発明の二塩基酸エリスルトール類エステルにおいて当該エステル体を構成するエリスリトール類の全水酸基を100%としたときの値に対する、二塩基酸、又は二塩基酸及びモノカルボン酸により当該エリスリトール類の水酸基がエステル化されている水酸基の百分率である。
【0041】本発明の二塩基酸エリスリトール類エステルにおいては、上記したように1分子の二塩基酸の残基の2つのカルボキシル基部分に対してエステル結合する場合のエリスリトー類は同一でも異なってもよく、当該エステル体のエリスリトール類の水酸基部分に関して複数の水酸基がモノカルボン酸のアシル基によりエステル化されている場合、当該複数のアシル基は同一種類でも異種でもよいが、製造し易い点で同一アシル基によるエステル化が簡便である。更に、異種の二塩基酸の残基によるこれらエステル体混合物であっても、本発明の二塩基酸エリスリトール類エステルとして使用可能である。
【0042】本発明の含有成分である二塩基酸エリスリトール類エステルを構成するエリスリトール類としては、分岐した多価アルコールであればよく、下記一般式(I)で示される化合物が好ましい。但し、式中、R1はメチル基(CH3)、エチル基(C25)及びメチロール基(CH2OH)の何れかを、nは0〜5の整数を、それぞれ表す。その例としては、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジペンタエリスリトール及びトリペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0043】
【化3】


【0044】本発明の含有成分である二塩基酸エリスリトール類エステルを構成する二塩基酸としては、1分子内にカルボキシル基を2個有する炭化水素化合物であればよく、例えばアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸等の脂肪族二塩基酸、フタル酸、マレイン酸等の不飽和二塩基酸等の残基等が挙げられる。
【0045】前記モノカルボン酸としては、炭化水素系モノカルボン酸が好ましく、その場合カルボキシル基を1個有する以外は水酸基、アミノ基、メルカプト基等のカルボキシル基と反応する官能基を有しない1個のカルボキシル基のみを官能基として有する有機化合物(炭化水素)が特に好ましい。更に好ましくは、1個のカルボキシル基以外では分子内に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を有しないモノカルボン酸であり、例えば炭素数2〜30の直鎖若しくは分岐鎖の、飽和又は不飽和アルキル基(炭化水素残基)を有するモノカルボン酸がより好ましく、更に好ましくは6〜30のモノカルボン酸である。
【0046】上記不飽和アルキル基は、飽和炭化水素基ではなく、その中に1個又は複数の二重結合及び/又は三重結合を有する炭化水素残基を意味する。芳香族環や脂環式環は含まれない方が好ましい。
【0047】前記モノカルボン酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、エナンチル酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソノナン酸、アラキン酸、トリデシル酸、ペンタデシル酸及びヘプタデシル酸等が挙げられる。
【0048】本発明の含有成分である二塩基酸エリスリトール類エステルを製造する場合には、常法のエステル化法を採用することができる。例えば、それを構成するエリスリトール類と二塩基酸の2成分を使用して常法のエステル化工程に付すればよい。必要により、このようにして得られたエステル体と前記モノカルボン酸を更に常法のエステル化工程に付すか又は、上記2成分と前記モノカルボン酸の3成分を使用して、常法のエステル化工程に付して、所望の二塩基酸エリスリトール類エステルを製造することができる。
【0049】本発明で使用される二塩基酸エリスリトール類エステルを構成するエリスリトール類は、工業的に製造されている市販の化合物を購入、入手することができ、例えばペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールについては広栄化学製の製品を購入、使用することができる。
【0050】本発明で使用される上記エステル体を構成する二塩基酸(又はそのエステル)は、工業的に製造されている市販の化合物を購入、入手することができ、例えばアジピン酸は関東電化製の製品、アゼライン酸についてはエメリー社製の製品を購入、使用することができる。
【0051】上記エステル化の反応を行う場合は脱水しながら行われる。通常反応温度は90〜250℃で行うのが好ましい。260℃以上であると、反応生成物に着色を来たし、90℃以下であると反応時間が長くなり、何れも好ましくない。また、反応は窒素気流下で行う方が着色の少いものが得られる点で好ましい。反応時間としては0.5〜24時間行うのが一般的である。反応に際して、反応溶剤や触媒を使用することができる。
【0052】上記エステル化反応工程において溶剤を使用する場合、用いられる反応溶剤としては、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、石油エーテル等の炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤が好ましい。
【0053】上記の如く、エステル化反応に触媒を使用することができるが、その場合の触媒としては、この種の反応に通常使用される、例えばテトラメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨウ化物、テトラブチルアンモニウムヨウ化物、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヨウ化物等の四級アンモニウム塩、テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨウ化物、テトラブチルホスホニウムヨウ化物、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヨウ化物、テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムヨウ化物等の四級ホスホニウム塩の他、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム等の有機カルボン酸塩、ナトリウムアルコラート、カリウムアルコラート等のアルカリ金属アルコラートの他、三級アミン類、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタネート化合物、及び塩化亜鉛等の亜鉛化合物等が挙げられる。
【0054】本発明の含有成分である二塩基酸エリスリトール類エステルを製造する場合には、常法のエステル化法の他に、エステル交換法を採用することもできる。その場合、エリスリトール類と二塩基酸エステルの2種又は当該エリスリトール類、二塩基酸エステル及びモノカルボン酸エステルの3種を使用して常法のエステル交換反応に付して所望の二塩基酸エリスリトール類エステルを製造すればよい。ここで使用されるエリスリトール類については前記説明の通りである。
【0055】上記エステル交換反応において使用される二塩基酸エステル及びモノカルボン酸エステルとしては、アルコールと、例えば前記二塩基酸又は、例えば前記モノカルボン酸とのエステル化で容易に得られる二塩基酸モノ及び/又はジアルコールエステル、又はモノカルボン酸アルコールエステルを使用すればよい。
【0056】尚、本発明においては、二塩基酸及びモノカルボン酸には、遊離体のみならず上記エステル体の形態にあるものも含まれる。
【0057】また、上記二塩基酸エステル及びモノカルボン酸エステルとしては、例えばアルコールと二塩基酸又はモノカルボン酸とをエステル化反応に付して得られる当該酸のアルコールエステルを使用すればよい。ここで使用される二塩基酸又はモノカルボン酸については、前記説明の二塩基酸又はモノカルボン酸を使用することができる。
【0058】上記二塩基酸又はモノカルボン酸のアルコールエステルを構成するアルコールには、例えば炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐鎖の、飽和又は不飽和の炭化水素基を有するアルコールを用いるとよい。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール等が挙げられる。
【0059】上記二塩基酸のアルコールエステルの具体的な例としては、アジピン酸のモノ−又はジ−メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチルアルコール等のアルコールエステルや、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸等の二塩基酸のジ−メチルエステル等が挙げられる。
【0060】上記モノカルボン酸のアルコールエステルの具体的な例としては、ステアリン酸のメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル等のアルコールエステルや、カプロン酸、エナンチル酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸等のモノカルボン酸のメチルエステル等が挙げられる。
【0061】上記エステル交換反応により二塩基酸エリスリトール類エステルを製造する場合の反応については、常法により脱アルコールしながら行うとよい。反応条件については、通常のエステル化反応条件(反応時間等)を適宜選択利用することができる。反応物質の反応比率についても、所望の二塩基酸エリスリトール類エステル取得に向けて必要な反応比率を適宜選択使用すればよい。
【0062】このようにして得られる二塩基酸エリスリトール類エステルにおいてエステル化されていない水酸基が存在する場合、この水酸基は更に何ら修飾されていない誘導体が好ましいが、本発明の耐熱老化性改善効果を有する限り、一部修飾されたり、保護された誘導体であっても本発明における二塩基酸エリスリトール類エステルに含まれる。しかしながら、前記した通り、本発明のエステル体を構成するエリスリトール類部分の全水酸基の半分程度を超えてエステル化、その他修飾することは樹脂の曲げ強度や耐熱老化性改善の効果が低下する場合があり、好ましくない。
【0063】また、二塩基酸エリスリトール類エステルを製造する際、通常、反応混合物には未反応原料であるエリスリトール類等を含む。前述した製法によれば、このような未反応原料は反応混合物中、通常10重量%以下とすることができる。これらはHPLC(高速液体クロマトグラフィー)等を用いて精製して用いることもできるが、反応混合物をそのまま用いても構わない。即ち、本発明の効果を阻害しない範囲で、本発明における二塩基酸エリスリトール類エステルは、当該エステルの出発原料となるような化合物を含む形態で用いることができる。
【0064】本発明で使用される樹脂としては特に限定されないが、難燃性樹脂組成物として用いる場合、通常熱可塑性樹脂が使用される。このような熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、6ナイロン、66ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド等のエンジニアリングプラスチック、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン系樹脂、その他複合材料の分野で使用される熱可塑性樹脂を挙げることができ、また1種又はそれら複数の樹脂を併用することもできる。
【0065】これらの中で、上記二塩基酸エリスリトール類エステルとの相溶性、耐熱老化性改善の点でポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂及びポリエステル系樹脂等が好適であるが、燃焼時の有毒なハロゲン系ガスの発生や、近年話題となっているダイオキシン類発生の問題を回避するために、難燃性樹脂組成物に用いる樹脂としてはハロゲン原子を含まないノンハロゲン系の樹脂が好ましく用いられる傾向にある。このような観点から、例えば電線、ケーブル等や壁紙等用途にはポリオレフィン系樹脂好ましく用いられるようになっている。
【0066】ポリオレフィン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンと他のα−オレフィン(プロピレン等)との共重合体、エチレンと酢酸ビニル又はエチルアクリレート等アクリレート系モノマーとの共重合体、エチレン以外のα−オレフィン(プロピレン等)の単独重合体、α−オレフィンと共重合可能なビニルモノマーとの共重合体等を挙げることができる。
【0067】具体例としては、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、気相法直鎖状低密度ポリエチレン、気相法超低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、イソブチレン−イソプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブテン−1等を挙げることができ、これら1種又は複数混合して使用することができる。
【0068】本発明に使用する天然産の水酸化マグネシウムとしては、例えば海水中のニガリ成分から精製した比較的精製度の低いもの、水酸化マグネシウム以外の形態(例えば、炭酸マグネシウム等の形態)で存在する鉱物から調製した比較的精製度の低いもの、水酸化マグネシウムを主成分とするブルーサイト等の鉱物を粉砕したもの等が挙げられる。特に、水酸化マグネシウムの含有量の高いブルーサイト等の鉱物から調製される水酸化マグネシウムは、調製コストが主に粉砕のみであり、粉体の形状は不定形で不揃いであるが、工業的に用いるメリットが非常に高い。鉱物粉砕品を本発明に使用する場合、平均粒子径で示すと細かくても支障は無いが、好ましくは1μm以上の粉体、例えば1〜10μm程度の粉体が実用的であり好ましい。
【0069】天然産の水酸化マグネシウムは多くの不純物を含んでいるが、特に鉄等の重金属が樹脂の耐熱老化性を悪くする原因となる。例えば、本発明者等がICP( Inductively Coupled Plasma )法で、市販の水酸化マグネシウム中の鉄分を分析(鉄原子換算で)した結果は以下の通りであった。
(1) 電線、ケーブル等の用途に用いられる精製水酸化マグネシウム:6.5ppm;
(2) 海水由来の未精製水酸化マグネシウム:144ppm;及び(3) 鉱物粉砕品天然産の水酸化マグネシウム1750ppm。
【0070】本発明では上記(1)精製水酸化マグネシウムではなく、(2)や(3)示されるような不純物の含有量が多く、非常に安価に入手できる天然産の水酸化マグネシウムを樹脂組成物へ適用することができるので、本発明は工業的に極めて優れている。更に、不純物の含有とは無関係に、粒度や形状の不均一等物理的不揃い品の水酸化マグネシウムの使用も効果的である。即ち、本発明に使用する水酸化マグネシウムとしては、前記高純度の精製水酸化マグネシウムではなく、このような不純物を含んだ水酸化マグネシウム或いは/及び粒度や粉砕品に見られるような形状の不均一性等物理的不揃い品が本発明において大きな効果を奏する。また、例えば、精製品でなくとも一部精製品でも或る程度の不純物を含むもの或いは物理的不揃い品を含むものについても本発明の効果を奏するので使用可能である。従って、本発明に使用する水酸化マグネシウム、特に難燃性樹脂組成物に使用する水酸化マグネシウムの純度としては、耐熱老化性及び加工性改善について大きな効果が得られるという観点から或る程度の不純物を含むものが好適に採用される。このような水酸化マグネシウムを当業者であれば適宜選択することができるが、鉄分含有量を基準とすれば、使用する水酸化マグネシウム(不純物込み)に対し重量比で鉄分含有量が、鉄原子換算で好ましくは少なくとも10ppm(10ppm以上)、より好ましくは少なくとも50ppm(50ppm以上)である方が効果的である。一方、不純物含有量の上限についても、ある程度の不純物を含むものが効果的であるが多過ぎると効果をあまり奏しなくなるので5000ppm程度が好ましい。同様に上記鉄原子換算でより効果を奏する観点からその範囲を示すと、好ましくは50〜5000ppm程度、より好ましくは100〜5000ppm程度、更に好ましくは100〜3000ppm程度、より更に好ましくは1000〜2500ppm程度を含む水酸化マグネシウムが採用できる。
【0071】本発明に使用する天然産の水酸化マグネシウムの純度については、特に限定されないが、難燃剤用途に用いる場合で通常85%(重量)以上、好ましくは90%(重量)以上、更に好ましくは95%(重量)以上である。市販されている天然産の水酸化マグネシウムの純度は通常95%(重量)以上であり、本発明に好適に使用することができる。市販品としては、鋼管鉱業製、神島化学製等各種の製品が知られているので、簡便には市販品を購入使用することができる。
【0072】全不純物の含有量で示すと、好ましくは10%未満(重量)、より好ましくは5%以下の水酸化マグネシウムを使用することができる。
【0073】一方、物理的不揃い品の程度に関しては特に制限されない。例えば、天然産ブルーサイト等の水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物を粉砕したものと実質的に同等の品質を有するもの或いはこれを含む水酸化マグネシウムを使用することができる。
【0074】本発明の樹脂添加剤組成物、或いは樹脂組成物に配合される天然産の水酸化マグネシウム及び二塩基酸エリスリトール類エステルの配合比率については、、使用する樹脂の種類や水酸化マグネシウムの物性等により適宜選択すればよい。好ましくは、天然産の水酸化マグネシウム及び二塩基酸エリスリトール類エステルを、重量比で水酸化マグネシウム100対当該エステル体0.05〜10、より好ましくは0.1〜5程度の比率で含有することができる。天然産の水酸化マグネシウムの重量に関してはその中に含まれる水酸化マグネシウムMg(OH)2に換算したもので上記比率が算定される。
【0075】樹脂に対する配合量に関しては、樹脂100重量部に対して、二塩基酸エリスリトール類エステルを好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下、更に好ましくは0.1〜5重量部程度含有するとよい。多過ぎると、ブリードアウトや物性の劣化を起こし、少な過ぎると老化防止等の効果が十分でなくなるので、何れも好ましくない。
【0076】当該水酸化マグネシウムの使用量については、樹脂100重量部に対して難燃性樹脂組成物として好ましくは、当該水酸化マグネシウム、Mg(OH)2換算で0.1〜300重量部程度、好ましくは1〜250重量部程度、より好ましくは10〜200重量部程度、更に好ましくは50〜200重量部程度である。多過ぎると成型した場合混練が困難となり実用的ではなく、また加工性、強度、剛性等十分でなくなる。一方少な過ぎると難燃性の付与効果が不十分となり、何れも好ましくない。
【0077】本発明で難燃剤(難燃性充填剤)として使用する水酸化マグネシウム以外に充填剤を必要により使用することもできる。その場合の充填剤としては、通常複合材料の分野で用いられるものであれば特に限定されない。具体的には、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の繊維類や、ケイ砂、ケイ石、カーボンブラック、黒鉛、酸化チタン、酸化鉄黒、亜鉛黄、ベンガラ、ウルトラマリンバイオレット、亜鉛緑、酸化鉄黄等の顔料、合成ケイ酸塩、白亜、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸バリウム、クレイ、タルク、シリカ、ワラストナイト、ケイ酸カルシウム、石膏、アルミニウム粉、亜鉛末、亜酸化鉛等の充填剤、MO・Fe23(MはBa、Sr、Ca、Mg、Zn、Pbの一種又は2種以上)より成るフェライト磁性粉末、鉛等を挙げることができる。
【0078】本発明で使用する二塩基酸エリスリトール類エステルで処理された水酸化マグネシウムを調製する場合、その調製方法としては、(1)本発明に使用する難燃剤(天然産の水酸化マグネシウム)に二塩基酸エリスリトール類エステルをそのまま添加し、ヘンシェルミキサー、ボールミル、アトマイザーコロイドミル、バンバリミキサーの撹拌機を用いて表面処理をする乾式法や、(2)溶剤に前記二塩基酸エリスリトール類エステルと難燃剤を加え、撹拌、混合後、溶剤を除去する湿式法等を採用して実施すればよい。
【0079】また、上記表面処理方法の中で湿式法(2)で用いられる溶剤としては、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル類、トルエン、キシレン、高沸点石油炭化水素、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の炭化水素系溶剤、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ブチルエーテル、ブチルエチルエーテル、ジグライム等のエーテル系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、2−メトキシプロピルアセテート等のエステル溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールのモノエーテル系溶剤の他、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤、水等が挙げられ、また、これ等は単独又は2種以上を適宜混合して使用することができる。二塩基酸エリスリトール類エステルの溶解性が低い場合には、溶剤を加熱して用いても構わない。
【0080】本発明において酸化防止剤を併用使用することにより、樹脂に対して更に耐熱老化性の効果が改善されるが、その場合の酸化防止剤としては、それ自体常温常圧で固体状が好ましく、通常複合材料の分野で使用されるものであれば特に限定されないが、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス{メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン等のフェノール系酸化防止剤、トリイソデシルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト等のリン系酸化防止剤、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤、フェニル−β−ナフチルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系酸化防止剤等が挙げられるが、これらを2種類以上併用することもできる。
【0081】酸化防止剤が常温常圧で液体状の場合、樹脂や粉体等と混合する際、不均一となり易い。一方、固体状の場合、それ自体の分散性が良くないが、本発明で使用される二塩基酸エリスリトール類エステルがその分散剤として作用するため、好適に使用できる。
【0082】酸化防止剤を使用する場合の熱可塑性樹脂等に対する添加剤の配合比率に関しては、当該熱可塑性樹脂100重量部に対して、水酸化マグネシウムを前記配合量、二塩基酸エリスリトール類エステルを前記配合量、酸化防止剤を好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部程度配合すればよい。
【0083】本発明の樹脂組成物或いはそれを用いて樹脂成型品を製造する場合は、特に困難はなく、表面処理方法自体、或いは成型方法自体等、従来から使用され又は知られている方法を利用して製造することができる。特に好ましくは、難燃性充填剤として水酸化マグネシウムを樹脂に配合使用する方法として知られている公知の方法を利用して、例えば表面処理剤(二塩基酸エリスリトール類エステル)を使用したり、電線、ケーブル等への樹脂被覆製品を製造することができる。
【0084】通常、本発明の熱可塑性樹脂等組成物を具体的に製造する方法として、例えば1)例えば必要により固体状である酸化防止剤を予め二塩基酸エリスリトール類エステルで処理を行ってから熱可塑性樹脂、更に難燃剤、その他必要により使用する添加剤と混合、混練する方法、2)酸化防止剤と本発明に使用する二塩基酸エリスリトール類エステル、熱可塑性樹脂等、更に難燃剤やその他の添加剤を一度に混合、混練する方法、或いは3)前記難燃剤を予め二塩基酸エリスリトール類エステルで処理を行い、処理を行った難燃剤と酸化防止剤及び熱可塑性樹脂等を混合、混練する方法等がある。以下に、熱可塑性樹脂組成物の具体的な製造方法を説明する。
【0085】本発明で酸化防止剤を併用使用することができることは前記の通りであるが、例えば二塩基酸エリスリトール類エステルで処理された酸化防止剤、例えば固体状酸化防止剤の調製方法としては、固体状酸化防止剤に当該エステル体をそのまま添加し、ヘンシェルミキサー、ボールミル、アトマイザーコロイドミル、バンバリミキサーの撹拌機を用いて表面処理をする乾式法等を採用して実施すればよい。
【0086】(1)熱可塑性樹脂100重量部に対して乾式法で前処理した固体状酸化防止剤0.01〜10重量部をホモミキサー、らいかい機、ニーダー、バンバリミキサ、アトマイザー等の撹拌機で撹拌して得る方法、や(2)熱可塑性樹脂100重量部に対し未処理の固体状酸化防止剤0.01〜10重量部、二塩基酸エリスリトール類エステル前記適当量をホモミキサー、らいかい機、ニーダー、バンバリミキサ、ロール、インターナルミキサ等の撹拌機で撹拌して得る方法等がある。尚、これ等の製造時において、二塩基酸エリスリトール類エステルを全て同時に使用する必要は無く、一部を前処理に用い、一部を熱可塑性樹脂組成物製造時に添加する方法を用いてもよい。また、混練温度は熱可塑性樹脂の種類によって異なるが、使用する熱可塑性樹脂のゲル化温度を参考にして設定するとよい。
【0087】本発明の組成物を用いて樹脂成型物を製造する場合、特に困難は無く、常法の樹脂成型方法を利用することができるが、その製造方法を例示すると、上記方法で製造した熱可塑性樹脂組成物を用いて、ロール、プレス、押し出し成型機、トランスファー成型機、射出成型機により成型して、樹脂成型物を容易に取得することができる。
【0088】本発明の樹脂組成物による被覆電線を製造する場合、天然産の水酸化マグネシウム、特に好ましくは水酸化マグネシウムを主成分として含む天然鉱物を粉砕し、これを本発明で使用する前記二塩基酸エリスリトール類エステルを所定量含む表面処理剤で表面処理を施し、使用する樹脂に添加する。この樹脂組成物を用いて、それ自体通常の成型(被覆)方法に従って、成型(被覆)すればよい。
【0089】当然のことながら、得られる樹脂被覆物、成型物や成型品も本発明の範囲内に含まれる。
【0090】更に、本発明の樹脂添加剤組成物又は樹脂組成物には、必要に応じて本発明の特徴を損なわない範囲で安定剤、有機又は無機の顔料、染料、可塑剤、脂肪酸、脂肪酸塩、脂肪酸アミド等の滑剤、整泡剤、発泡剤、リン酸エステル、アンチモン等その他の難燃剤、紫外線吸収剤、モノグリセライド、アミン化合物等の帯電防止剤、造核剤(ポリマーの結晶化を促進し、透明な成型品を与える。)を1種又は複数併用して含まれることができる。
【0091】本発明には、前記樹脂組成物は勿論、それより成型して得られる樹脂成型物や成型品が含まれる。更に、難燃性樹脂組成物として使用可能な樹脂組成物として使用する目的で、二塩基酸エリスリトール類エステルの1種、又はこれに天然産の水酸化マグネシウムを加えた2種、又は必要によりこれに更に酸化防止剤を加えた3種を、それぞれ少なくとも含有する(これ等複数が混合して含まれる場合や、混合されてはいないが本発明の目的のために組み合わされた形で含まれる場合でもよい。)組成物(難燃性水酸化マグネシウムの表面処理剤或るいは樹脂添加剤組成物等として)、及びその対象となる熱可塑性樹脂等の樹脂も本発明に含まれる。
【0092】
【実施例】次に、本発明の樹脂添加剤組成物について、その内容を実施例及び比較例を挙げて詳細に説明する。尚、以下の実施例は本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の内容をより明確に例示するためにのみ使用される。また、各例における「部」及び「%」はいずれも重量基準によるものである。
【0093】(実施例1)二塩基酸エリスリトール類エステルの合成1温度計、攪拌機、窒素導入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)24.4部、ジペンタエリスリトール(東京化成製)84.8部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.01部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで、室温まで冷却した(酸価;0.6、エステル化度;16.7%)。
【0094】(実施例2)二塩基酸エリスリトール類エステルの合成2温度計、攪拌機、窒素導入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、セバシン酸(純正化学製)40.5部、ペンタエリスリトール(純正化学製)54.5部及びテトラブチルアンモニウムヨウ化物(純正化学製)0.01部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで、室温まで冷却した(酸価;0.4、エステル化度;25.0%)。
【0095】(実施例3)二塩基酸エリスリトール類エステルの合成3温度計、攪拌機、窒素導入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、セバシン酸(純正化学製)54.0部、ペンタエリスリトール(純正化学製)36.4部及びテトラブチルアンモニウムヨウ化物(純正化学製)0.01部を仕込み窒素気流下で160℃まで1時間かけて昇温し、160℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで、室温まで冷却した(酸価;1.0、エステル化度;49.9%)。
【0096】(実施例4)二塩基酸エリスリトール類エステルの合成4温度計、攪拌機、窒素導入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)24.4部、ステアリン酸(純正化学製)47.5部、ジペンタエリスリトール(東京化成製)84.8部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.02部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで、室温まで冷却した(試料「DP−1」とする。酸価;0.8、エステル化度;25.0%)。
【0097】(実施例5)二塩基酸エリスリトール類エステルの合成5温度計、攪拌機、窒素導入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、無水フタル酸(純正化学製)12.4部、ラウリン酸(純正化学製)16.8部、ジペンタエリスリトール(東京化成製)42.7部及びテトラブチルチタン(東京化成製)0.01部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで、室温まで冷却した(酸価;0.6、エステル化度;24.9%)。
【0098】(実施例6)二塩基酸エリスリトール類エステルの合成6温度計、攪拌機、窒素導入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)16.1部、ステアリン酸(純正化学製)47.5部、ジペンタエリスリトール(東京化成製)84.8部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.02部を仕込み窒素気流下で180℃まで1時間かけて昇温し、180℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで、室温まで冷却した(試料「DP−2」とする。酸価;0.9、エステル化度;19.4%)。
【0099】(実施例7)二塩基酸エリスリトール類エステルの合成7温度計、攪拌機、窒素導入口及び還流管を備えた反応フラスコ内に、アジピン酸(純正化学製)24.4部及びペンタエリスリトール(純正化学製)84.8部を仕込み窒素気流下で240℃まで1時間かけて昇温し、ステアリン酸(純正化学製)48.3部及びp−トルエンスルホン酸(純正化学製)0.02部を加えて、更に240℃で2時間加熱した後、反応液の酸価が1(mgKOH/g)程度になるまで加熱を行った。次いで、室温まで冷却した(酸価;0.2,エステル化度;37.0%)。
【0100】(実施例8及び9,比較例1〜5)EEA樹脂配合難燃性評価表1に示した組成配合により、天然産の水酸化マグネシウム(純度:Mg(OH)2の含有量で97%、鉄分含有量:鉄元素換算で1750ppm、平均粒子径3μm、鋼管鉱業(株)製)、処理剤(試料)、ステアリン酸カルシウム(堺化学(株)製)を採取、10リットルヘンシェルミキサー(PB−10、三井鉱山(株)製)で3000rpm/3分間混合した。この混合物とEEA樹脂(J−REX、日本ポリオレフィン(株)製、エチレン−エチルアクリレート共重合体)をドライブレンドし、2軸ニーダー(S1コンテニアスニーダー、栗本鉄工所(株)製)で混練、ペレット化した後、オーブン中で80℃、24時間乾燥した。このペレットのメルトフローレートを、JIS K 7210に準じて、メルトフローインデクサーP−111((株)東洋精機製作所製)を使用し、測定条件:230℃、荷重5.0Kgfで測定した。
【0101】
【表1】


【0102】これを160℃で3分間、加熱ロールを使用してシート化し、厚さ3mmの型枠にこのシートを入れ180℃、100Kg/cm2で4分間プレス成型し板を作成した。このように作製された板を用いて、オーブン中180℃で加熱し、目視にて変色を観察し、オーブンライフを測定した。その結果を表1に示す。
【0103】(評価方法)オーブンライフテスト結果について、○:変色無し;×:褐色を表す。
【0104】尚、表1において、ステアリン酸:日本油脂(株)製;T−1:チタネート系カップリング剤(味の素(株)製、KR TTS);S−1:シラン系カップリング剤(日本ユニカー(株)製、A−1100);オレイン酸アンモニウム:市販の25%アンモニア水25gに水道水100gを添加、これに撹拌しながらオレイン酸(東京化成(株)製)100gを滴下、3時間撹拌した。この中和液を乾燥して、得られた淡黄色固体を使用した。
【0105】表1の結果から明らかなように、本発明で使用する二塩基酸エリスリトール類エステルの使用により天然産の水酸化マグネシウムを樹脂、特に熱可塑性樹脂の充填剤として使用したときに、耐熱老化性及び加工性において優れた効果が得られる。従って、本発明の樹脂組成物(特にノンハロゲン樹脂組成物)を電線等の被覆に好適に使用できる。
【0106】
【発明の効果】天然産の水酸化マグネシウムを充填剤として使用する樹脂組成物において前記二塩基酸エリスリトール類エステルを水酸化マグネシウムの表面処理剤として含有、使用することにより、耐熱老化性及び加工性を著しく改善することができる。本発明の樹脂添加剤組成物又は樹脂組成物は、特に難燃性樹脂として電線、ケーブル等の用途及び壁紙等の用途における使用に極めて好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】天然産の水酸化マグネシウム及び二塩基酸エリスリトール類エステルを含有することを特徴とする樹脂添加剤組成物。
【請求項2】当該水酸化マグネシウムが当該二塩基酸エリスリトール類エステルで表面処理された状態にある請求項1記載の組成物。
【請求項3】樹脂中に請求項1記載の組成物を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項4】天然産の水酸化マグネシウムが水酸化マグネシウムを主成分とする天然鉱物を粉砕したものである請求項1記載の組成物。
【請求項5】樹脂が熱可塑性樹脂である請求項3記載の樹脂組成物。
【請求項6】熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂である請求項5記載の樹脂組成物。
【請求項7】二塩基酸エリスリトール類エステルを構成するエリスリトール類が下記一般式(I)で示される化合物である請求項1記載の組成物。但し、式中、R1はメチル基、エチル基及びメチロール基の何れかを、nは0〜5の整数を、それぞれ表す。
【化1】


【請求項8】二塩基酸エリスリトール類エステルが二塩基酸のエリスリトール類エステルであり、又は当該二塩基酸のエリスリトール類エステルにおいてエリスリトール類部分の水酸基の一部がエステル化されているエステル誘導体である請求項1記載の組成物。
【請求項9】請求項3記載の樹脂組成物を使用して得られたことを特徴とする樹脂成型物及び当該成型物を含む製品。
【請求項10】請求項3記載の樹脂組成物を使用して製造された電線、ケーブル等である請求項9記載の樹脂成型物及び当該成型物を含む製品。
【請求項11】二塩基酸エリスリトール類エステルを含有することを特徴とする天然産の水酸化マグネシウム用表面処理剤。

【公開番号】特開2000−239529(P2000−239529A)
【公開日】平成12年9月5日(2000.9.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−37833
【出願日】平成11年2月16日(1999.2.16)
【出願人】(000000066)味の素株式会社 (887)
【Fターム(参考)】