説明

樹脂粒子の製造方法、樹脂粒子及び電子写真用トナー

【課題】透明性に優れ、かつ粒度分布が狭いクロミック分子含有樹脂粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂(G)とクロミック分子(A)が溶剤(C)に溶解又は分散された溶剤液(L)と、有機微粒子(F)が分散媒体(B)に分散された分散液とを混合し、(B)中に(L)を分散させることにより、樹脂(G)、クロミック分子(A)及び溶剤(C)を含有する樹脂粒子(H)の表面に有機微粒子(F)が固着された樹脂粒子(I’)を形成させ、次いで分散媒体(B)及び溶剤(C)を除去する工程を含む樹脂粒子(I)の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロミック分子を含有する樹脂粒子の製造方法、その製造方法で得られた樹脂粒子、及びクロミック分子を含有する樹脂粒子を含有してなる電子写真用トナーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂粒子を溶融成型して成型品に一定濃度の着色をする方法としては、樹脂粒子中に着色剤として顔料を含有させる方法が挙げられる。しかしながら、一定濃度の着色をするためには、樹脂粒子中に多くの顔料を含有させる必要があるが、樹脂粒子中の顔料の含有量が多いと、樹脂粒子の透明性が低下して彩度及び色再現性が低下するという問題がある。また、多くの顔料を含有した樹脂を、媒体中に分散して樹脂粒子を作製する場合、樹脂の溶融粘度が高いため、得られた樹脂粒子の粒度分布が広くなるという問題がある。
そこで、上記の問題を改善するものとして、樹脂粒子中にクロミック分子を含有させることで透明性が高い樹脂粒子を得る方法が提案されているが(例えば特許文献1参照)、得られた樹脂粒子の粒度分布は、必ずしも狭くはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−176366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、透明性に優れ、かつ粒度分布が狭いクロミック分子含有樹脂粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、樹脂(G)とクロミック分子(A)が溶剤(C)に溶解又は分散された溶剤液(L)と、有機微粒子(F)が分散媒体(B)に分散された分散液とを混合し、(B)中に(L)を分散させることにより、樹脂(G)、クロミック分子(A)及び溶剤(C)を含有する樹脂粒子(H)の表面に有機微粒子(F)が固着された樹脂粒子(I’)を形成させ、次いで分散媒体(B)及び溶剤(C)を除去する工程を含む樹脂粒子(I)の製造方法;前記製造方法で得られた樹脂粒子(I);及び樹脂粒子(I)を含有してなる電子写真用トナー、である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の樹脂粒子(I)の製造方法によれば、透明性が高く、粒度分布が狭いクロミック分子含有樹脂粒子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】樹脂粒子(I)の作製に用いた実験装置である。
【0008】
以下に本発明を詳述する。
樹脂(G)としては、熱可塑性樹脂(G1)、及び前記熱可塑性樹脂を微架橋した樹脂(G2)が挙げられ、これらを併用してもよい。
熱可塑性樹脂(G1)としては、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びエポキシ樹脂等が挙げられる。これらのうち好ましいのは、粒径の小さい樹脂粒子(I)が得られやすいという観点からビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及びこれらの併用である。
【0009】
ビニル樹脂は、重合性二重結合を有する単量体を単独重合又は共重合した重合体である。重合性二重結合を有する単量体としては、下記(1)〜(9)が挙げられる。
【0010】
(1)重合性二重結合を有する炭化水素:
(1−1)重合性二重結合を有する脂肪族炭化水素:炭素数2〜12のアルケン(例えばエチレン、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン及び炭素数3〜24のα−オレフィン等);炭素数4〜12のアルカジエン(例えばブタジエン、イソプレン、1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエン及び1,7−オクタジエン等)。
(1−2)重合性二重結合を有する脂環式炭化水素:炭素数6〜15のモノ又はジシクロアルケン(例えばシクロヘキセン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等)及び炭素数5〜12のモノ又はジシクロアルカジエン[例えば(ジ)シクロペンタジエン等]等。
(1−3)重合性二重結合を有する芳香族炭化水素:スチレン;スチレンのハイドロカルビル(炭素数1〜24のアルキル、シクロアルキル、アラルキル及び/又はアルケニル)置換体(例えばα−メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等);及びビニルナフタレン等。
【0011】
(2)カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体及びそれらの塩:
炭素数3〜30の不飽和モノカルボン酸{例えば(メタ)アクリル酸[「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。]、クロトン酸、イソクロトン酸及び桂皮酸等};炭素数3〜30の不飽和ジカルボン酸(無水物)[例えば(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)シトラコン酸及びメサコン酸等];及び炭素数3〜30の不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜24)エステル(例えばマレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノオクタデシルエステル、フマル酸モノエチルエステル、イタコン酸モノブチルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル及びシトラコン酸モノエイコシルエステル等)等。
カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体の塩を構成する塩としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩及びマグネシウム塩等)、アンモニウム塩、アミン塩及び4級アンモニウム塩等が挙げられる。
アミン塩としては、アミン化合物であれば特に限定されないが、例えば1級アミン塩(エチルアミン塩、ブチルアミン塩及びオクチルアミン塩等)、2級アミン(ジエチルアミン塩及びジブチルアミン塩等)、3級アミン(トリエチルアミン塩及びトリブチルアミン塩等)が挙げられる。4級アンモニウム塩としては、テトラエチルアンモニウム塩、トリエチルラウリルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩及びトリブチルラウリルアンモニウム塩等が挙げられる。
カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体の塩としては、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウム、マレイン酸モノナトリウム、マレイン酸ジナトリウム、アクリル酸カリウム、メタクリル酸カリウム、マレイン酸モノカリウム、アクリル酸リチウム、アクリル酸セシウム、アクリル酸アンモニウム、アクリル酸カルシウム及びアクリル酸アルミニウム等が挙げられる。
【0012】
(3)スルホ基と重合性二重結合を有する単量体及びそれらの塩:
炭素数2〜14のアルケンスルホン酸(例えばビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸及びメチルビニルスルホン酸等);スチレンスルホン酸及びこのアルキル(炭素数2〜24)誘導体(例えばα−メチルスチレンスルホン酸等;炭素数5〜18のスルホ(ヒドロキシ)アルキル−(メタ)アクリレート(例えばスルホプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸及び3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等);炭素数5〜18のスルホ(ヒドロキシ)アルキル(メタ)アクリルアミド[例えば2−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2−ジメチルエタンスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及び3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等];アルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸(例えばプロピルアリルスルホコハク酸、ブチルアリルスルホコハク酸、2−エチルヘキシル−アリルスルホコハク酸等);ポリ[n(重合度。以下同様。)=2〜30]オキシアルキレン(オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン等。オキシアルキレンは単独又は併用でもよく、併用する場合、付加形式はランダム付加でもブロック付加でもよい。)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル[例えばポリ(n=5〜15)オキシエチレンモノメタクリレート硫酸エステル及びポリ(n=5〜15)オキシプロピレンモノメタクリレート硫酸エステル等];下記一般式(1)〜(3)で表される化合物;及びこれらの塩等が挙げられる。
なお、塩としては、(2)カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体の塩を構成する塩として例示したものが挙げられる。
【0013】
O−(RO)SO3

CH2=CHCH2OCH2CHCH2O−Ar−R (1)

CH=CH−CH3

−Ar−O−(RO)SO3H (2)

CH2COOR

HO3SCHCOOCH2CH(OH)CH2OCH2CH=CH2 (3)

式中、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、ROは単独でも2種以上を併用したものでもよく、2種以上を併用した場合は、結合形式はランダムでもブロックでもよい;R及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基;m及びnは、それぞれ独立に1〜50の数;Arはベンゼン環;Rは、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜15のアルキル基を表す。
【0014】
(4)ホスホノ基と重合性二重結合を有する単量体及びその塩:
(メタ)アクリロイルオキシアルキルリン酸モノエステル(アルキル基の炭素数1〜24)(例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリロイルホスフェート及びフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等)、(メタ)アクリロイルオキシアルキルホスホン酸(アルキル基の炭素数1〜24)(例えば2−アクリロイルオキシエチルホスホン酸等)。
なお、塩としては、(2)カルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体を構成する塩として例示したもの挙げられる。
【0015】
(5)ヒドロキシル基と重合性二重結合を有する単量体:
ヒドロキシスチレン、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオール、プロパルギルアルコール、2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテル及び庶糖アリルエーテル等。
【0016】
(6)重合性二重結合を有する含窒素単量体:
(6−1)アミノ基と重合性二重結合を有する単量体:
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アリルアミン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、クロチルアミン、N,N−ジメチルアミノスチレン、メチル−α−アセトアミノアクリレート、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルチオピロリドン、N−アリールフェニレンジアミン、アミノカルバゾール、アミノチアゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノイミダゾール、アミノメルカプトチアゾール及びこれらの塩等。
(6−2)アミド基と重合性二重結合を有する単量体:
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレン−ビス(メタ)アクリルアミド、桂皮酸アミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジベンジルアクリルアミド、メタクリルホルムアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド及びN−ビニルピロリドン等。
(6−3)ニトリル基と重合性二重結合を有する炭素数3〜10の単量体:
(メタ)アクリロニトリル、シアノスチレン及びシアノアクリレート等。
(6−4)ニトロ基と重合性二重結合を有する炭素数8〜12の単量体:
ニトロスチレン等。
【0017】
(7)エポキシ基と重合性二重結合を有する炭素数6〜18の単量体:
グリシジル(メタ)アクリレート及びp−ビニルフェニルフェニルオキサイド等。
【0018】
(8)ハロゲン元素と重合性二重結合を有する炭素数2〜16の単量体:
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、アリルクロライド、クロロスチレン、ブロムスチレン、ジクロロスチレン、クロロメチルスチレン、テトラフルオロスチレン及びクロロプレン等。
【0019】
(9)重合性二重結合を有するエステル、重合性二重結合を有する(チオ)エーテル、重合性二重結合を有するケトン及び重合性二重結合を有する含硫黄化合物:
(9−1)重合性二重結合を有する炭素数4〜16のエステル:
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ジアリルフタレート、ジアリルアジペート、イソプロペニルアセテート、ビニルメタクリレート、メチル−4−ビニルベンゾエート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ビニルメトキシアセテート、ビニルベンゾエート、エチル−α−エトキシアクリレート、炭素数1〜50のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート[メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート及びエイコシル(メタ)アクリレート等]、ジアルキルフマレート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である)、ジアルキルマレエート(2個のアルキル基は、炭素数2〜8の直鎖、分枝鎖又は脂環式の基である)、ポリ(メタ)アリロキシアルカン類(ジアリロキシエタン、トリアリロキシエタン、テトラアリロキシエタン、テトラアリロキシプロパン、テトラアリロキシブタン及びテトラメタアリロキシエタン等)等、ポリアルキレングリコール鎖と重合性二重結合を有する単量体[ポリエチレングリコール[数平均分子量(以下Mnと略記する。)=300]モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn=500)モノアクリレート、メチルアルコールエチレンオキサイド(以下エチレンオキサイドをEOと略記する。)10モル付加物(メタ)アクリレート及びラウリルアルコールEO30モル付加物(メタ)アクリレート等]、ポリ(メタ)アクリレート類[多価アルコール類のポリ(メタ)アクリレート:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等]等が挙げられる。
(9−2)重合性二重結合を有する炭素数3〜16の(チオ)エーテル:
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニル−2−エチルヘキシルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニル−2−メトキシエチルエーテル、メトキシブタジエン、ビニル−2−ブトキシエチルエーテル、3,4−ジヒドロ−1,2−ピラン、2−ブトキシ−2’−ビニロキシジエチルエーテル、ビニル−2−エチルメルカプトエチルエーテル、アセトキシスチレン及びフェノキシスチレン等が挙げられる。
(9−3)重合性二重結合を有する炭素数4〜12のケトン:
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン及びビニルフェニルケトン等が挙げられる。
(9−4)重合性二重結合を有する炭素数2〜16の含硫黄化合物:
ジビニルサルファイド、p−ビニルジフェニルサルファイド、ビニルエチルサルファイド、ビニルエチルスルホン、ジビニルスルホン及びジビニルスルホキサイド等が挙げられる。
【0020】
ビニル樹脂のうち、重合性二重結合を有する単量体を構成単量体とする共重合としては、上記(1)〜(9)の任意の単量体同士を、2元又はそれ以上の個数で、任意の割合で共重合した重合体が挙げられ、具体的にはスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−(無水)マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−ジビニルベンゼン共重合体及びスチレン−スチレンスルホン酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0021】
ポリエステル樹脂としては、ポリオールと、ポリカルボン酸、その酸無水物又は低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜4)エステルとの重縮合物等が使用できる。重縮合反応には、公知の重縮合触媒等が使用できる。
ポリオールとしては、ジオール(10)、及び3〜8価又はそれ以上のポリオール(11)が挙げられる。
ポリカルボン酸、その酸無水物又は低級アルキルエステルとしては、ジカルボン酸(12)、3〜6価又はそれ以上のポリカルボン酸(13)、これらの酸無水物及び低級アルキルエステルが用いられる。
ポリオールとポリカルボン酸の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/5、更に好ましくは1.5/1〜1/4、特に好ましくは1/1.3〜1/3である。
【0022】
ジオール(10)としては、炭素数2〜30のアルキレングリコール(例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、テトラデカンジオール、ネオペンチルグリコール及び2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等);Mn=106〜10,000のアルキレンエーテルグリコール(例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びポリテトラメチレンエーテルグリコール等);炭素数6〜24の脂環式ジオール(例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール及び水素添加ビスフェノールA等);Mn=100〜10,000の上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(以下AOと略記する。)付加物(付加モル数2〜100)(例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールのEO10モル付加物等);炭素数15〜30のビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF及びビスフェノールS等)又は炭素数12〜24のポリフェノール(例えばカテコール、ハイドロキノン及びレゾルシン等)のAO[EO、プロピレンオキサイド(以下POと略記する。)及びブチレンオキサイド等]付加物(付加モル数2〜100)(例えばビスフェノールA・EO2〜4モル付加物及びビスフェノールA・PO2〜4モル付加物等);重量平均分子量(以下Mwと略記する。)=100〜5,000のポリラクトンジオール(例えばポリ−ε−カプロラクトンジオール等);Mw=1,000〜20,000のポリブタジエンジオール等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、アルキレングリコール及びビスフェノール類のAO付加物であり、更に好ましいのはビスフェノール類のAO付加物、及びビスフェノール類のAO付加物とアルキレングリコールとの混合物である。
【0023】
3〜8価又はそれ以上のポリオール(11)としては、3〜8価又はそれ以上の炭素数3〜8の脂肪族多価アルコール(例えばグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン及びソルビトール等);炭素数25〜50のトリスフェノール(例えばトリスフェノールPA等)のAO(炭素数2〜4)付加物(付加モル数2〜100)(例えばトリスフェノールPA・EO2〜4モル付加物及びトリスフェノールPA・PO2〜4モル付加物等);重合度3〜50のノボラック樹脂(例えばフェノールノボラック及びクレゾールノボラック等)のAO(炭素数2〜4)付加物(付加モル数2〜100)(フェノールノボラックPO2モル付加物及びフェノールノボラックEO4モル付加物);炭素数6〜30のポリフェノール(例えばピロガロール、フロログルシノール及び1,2,4−ベンゼントリオール等)のAO(炭素数2〜4)付加物(付加モル数2〜100)(ピロガロールEO4モル付加物);及び重合度20〜2,000のアクリルポリオール{ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと他の重合性二重結合を有する単量体[例えばスチレン、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステル等]との共重合物等}等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、脂肪族多価アルコール及びノボラック樹脂のAO付加物であり、更に好ましいのはノボラック樹脂のAO付加物である。
【0024】
ジカルボン酸(12)としては、炭素数4〜32のアルカンジカルボン酸(例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸及びオクタデカンジカルボン酸等);炭素数4〜32のアルケンジカルボン酸(例えばマレイン酸、フマール酸、シトラコン酸及びメサコン酸等);炭素数8〜40の分岐アルケンジカルボン酸[例えばダイマー酸、アルケニルコハク酸(ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸及びオクタデセニルコハク酸等);炭素数12〜40の分岐アルカンジカルボン酸[例えばアルキルコハク酸(デシルコハク酸、ドデシルコハク酸及びオクタデシルコハク酸等);炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及びナフタレンジカルボン酸等)等が挙げられる。
これらのうち好ましいのは、アルケンジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸であり、更に好ましいのは芳香族ジカルボン酸である。
3〜6価又はそれ以上のポリカルボン酸(13)としては、炭素数9〜20の芳香族ポリカルボン酸(例えばトリメリット酸及びピロメリット酸等)等が挙げられる。
なお、ジカルボン酸(13)又は3〜6価又はそれ以上のポリカルボン酸(13)の酸無水物としては、トリメリット酸無水物及びピロメリット酸無水物等が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステルとしては、メチルエステル、エチルエステル及びイソプロピルエステル等が挙げられる。
【0025】
ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネート(14)と活性水素含有化合物{水、ポリオール[前記ジオール(10)(ヒドロキシル基以外の官能基を有するジオールを含む)、及び3〜8価又はそれ以上のポリオール(11)]、ポリカルボン酸[ジカルボン酸(12)、及び3〜6価又はそれ以上のポリカルボン酸(13)]、ポリオールとポリカルボン酸の重縮合により得られるポリエステルポリオール、炭素数6〜12のラクトンの開環重合体、ポリアミン(15)、ポリチオール(16)及びこれらの併用等}の重付加物、並びにポリイソシアネート(14)と活性水素含有化合物を反応させてなる末端イソシアネート基プレポリマーと、前記プレポリマーのイソシアネート基に対して等量の1級及び/又は2級モノアミン(17)とを反応させて得られる、アミノ基含有ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
ポリウレタン樹脂中のカルボキシル基の含有率は、好ましくは0.1〜10重量%である。
【0026】
ポリイソシアネート(14)としては、炭素数(NCO基中の炭素を除く。以下同様。)6〜20の芳香族ポリイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ポリイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ポリイソシアネート及びこれらのポリイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基及びオキサゾリドン基含有変性物等)及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0027】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、粗製TDI、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製MDI{粗製ジアミノフェニルメタン[ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)又はその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(例えば5〜20重量%)の3官能以上のポリアミンとの混合物]のホスゲン化物:ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)}、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−又はp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0028】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエート及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0029】
脂環式ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネート及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0030】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、m−又はp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びこれらの混合物等が挙げられる。
ポリイソシアネートの変性物には、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基及び/又はオキサゾリドン基を含有する変性物等が用いられ、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI及びこれらの混合物[例えば変性MDIとウレタン変性TDI(イソシアネート含有プレポリマー)との混合物]等が挙げられる。
【0031】
ポリイソシアネート(14)のうちで好ましいのは、炭素数6〜15の芳香族ポリイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ポリイソシアネート及び炭素数4〜15の脂環式ポリイソシアネートであり、更に好ましいのはTDI、MDI、HDI、水添MDI及びIPDIである。
【0032】
ポリアミン(15)としては、炭素数2〜18の脂肪族ポリアミン及び芳香族ポリアミン(炭素数6〜20)等が挙げられる。
炭素数2〜18の脂肪族ポリアミンとしては、脂肪族ポリアミン、これらのアルキル(炭素数1〜4)又はヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)置換体、脂環式又は複素環含有脂肪族ポリアミン及び芳香環含有脂肪族アミン(炭素数8〜15)等が挙げられる。
【0033】
脂肪族ポリアミンとしては、炭素数2〜12のアルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等)及びポリアルキレン(炭素数2〜6)ポリアミン[ジエチレントリアミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン及びペンタエチレンヘキサミン等]等が挙げられる。
【0034】
脂肪族ポリアミンのアルキル(炭素数1〜4)又はヒドロキシアルキル(炭素数2〜4)置換体としては、ジアルキル(炭素数1〜3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン及びメチルイミノビスプロピルアミン等が挙げられる。
【0035】
脂環式又は複素環含有脂肪族ポリアミンとしては、炭素数4〜15の脂環式ポリアミン{1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4’−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)及び3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等}及び炭素数4〜15の複素環式ポリアミン[ピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,4−ジアミノエチルピペラジン、及び1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルプロピル)ピペラジン等]等が挙げられる。
芳香環含有脂肪族アミン(炭素数8〜15)としては、キシリレンジアミン及びテトラクロロp−キシリレンジアミン等が挙げられる。
【0036】
芳香族ポリアミン(炭素数6〜20)としては、非置換芳香族ポリアミン、アルキル基(メチル基、エチル基、n−又はイソプロピル基及びブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)を有する芳香族ポリアミン、電子吸引基(Cl、Br、I及びF等のハロゲン原子;メトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基;及びニトロ基等)を有する芳香族ポリアミン及び2級アミノ基を有する芳香族ポリアミン等が使用できる。
【0037】
非置換芳香族ポリアミンとしては、1,2−、1,3−又は1,4−フェニレンジアミン、2,4’−又は4,4’−ジフェニルメタンジアミン、クルードジフェニルメタンジアミン(ポリフェニルポリメチレンポリアミン)、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、チオジアニリン、ビス(3,4−ジアミノフェニル)スルホン、2,6−ジアミノピリジン、m−アミノベンジルアミン、トリフェニルメタン−4,4’,4”−トリアミン、ナフチレンジアミン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0038】
アルキル基(メチル基、エチル基、n−又はイソプロピル基及びブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基)を有する芳香族ポリアミンとしては、2,4−又は2,6−トリレンジアミン、クルードトリレンジアミン、ジエチルトリレンジアミン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、4,4’−ビス(o−トルイジン)、ジアニシジン、ジアミノジトリルスルホン、1,3−ジメチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジメチル−2,6−ジアミノベンゼン、1,4−ジエチル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジイソプロピル−2,5−ジアミノベンゼン、1,4−ジブチル−2,5−ジアミノベンゼン、2,4−ジアミノメシチレン、1,3,5−トリエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1,3,5−トリイソプロピル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,4−ジアミノベンゼン、1−メチル−3,5−ジエチル−2,6−ジアミノベンゼン、2,3−ジメチル−1,4−ジアミノナフタレン、2,6−ジメチル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジイソプロピル−1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジブチル−1,5−ジアミノナフタレン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、3,3’,5,5’−テトライソプロピルベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラブチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジエチル−3’−メチル−2’,4−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジイソプロピル−3’−メチル−2’,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−2,2’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトライソプロピル−4,4’−ジアミノジフェニルスルホン及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0039】
電子吸引基(Cl、Br、I及びF等のハロゲン原子;メトキシ基及びエトキシ基等のアルコキシ基;及びニトロ基等)を有する芳香族ポリアミンとしては、メチレンビス−o−クロロアニリン、4−クロロ−o−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン、3−アミノ−4−クロロアニリン、4−ブロモ−1,3−フェニレンジアミン、2,5−ジクロロ−1,4−フェニレンジアミン、5−ニトロ−1,3−フェニレンジアミン、3−ジメトキシ−4−アミノアニリン;4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−5,5’−ジブロモ−ジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)オキシド、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)プロパン、ビス(4−アミノ−2−クロロフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)デカン、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)テルリド、ビス(4−アミノフェニル)セレニド、ビス(4−アミノ−3−メトキシフェニル)ジスルフィド、4,4’−メチレンビス(2−ヨードアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−ブロモアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−フルオロアニリン)及び4−アミノフェニル−2−クロロアニリン等が挙げられる。
【0040】
2級アミノ基を有する芳香族ポリアミンとしては、上記非置換芳香族ポリアミン、アルキル基を有する芳香族ポリアミン及び電子吸引基を有する芳香族ポリアミンの−NHの一部又は全部が−NH−R’(R’はアルキル基であり、例えばメチル基及びエチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基)で置換されたもの[例えば4,4’−ジ(メチルアミノ)ジフェニルメタン及び1−メチル−2−メチルアミノ−4−アミノベンゼン等]、ポリアミドポリアミン:ジカルボン酸(ダイマー酸等)と過剰の(酸1モル当り2モル以上の)ポリアミン類(上記アルキレンジアミン及びポリアルキレンポリアミン等)との縮合により得られる低分子量ポリアミドポリアミン:ポリエーテルポリアミン:及びポリエーテルポリオール(ポリアルキレングリコール等)のシアノエチル化物の水素化物等が挙げられる。
【0041】
ポリチオール(16)としては、炭素数2〜36のアルカンジチオール(エチレンジチオール、1,4−ブタンジチオール及び1,6−ヘキサンジチオール等)等が挙げられる。
【0042】
1級及び/又は2級モノアミン(17)としては、炭素数2〜24のアルキルアミン(エチルアミン、n−ブチルアミン及びイソブチルアミン等)等が挙げられる。
【0043】
エポキシ樹脂としては、ポリエポキシド(18)の開環重合物、ポリエポキシド(18)と活性水素含有化合物{水、前記ジオール(10)、ジカルボン酸(12)、ポリアミン(15)及びポリチオール(16)等}との重付加物、及びポリエポキシド(18)とジカルボン酸(12)の酸無水物との硬化物等が挙げられる。
【0044】
本発明に用いるポリエポキシド(18)は、分子中に2個以上のエポキシ基を有していれば、特に限定されない。ポリエポキシド(18)として好ましいのは、硬化物の機械的性質の観点から分子中にエポキシ基を2個有するものである。ポリエポキシド(18)のエポキシ当量(エポキシ基1個当たりの分子量)は、好ましくは65〜1,000であり、更に好ましくは90〜500である。エポキシ当量が1,000以下であると、架橋構造が密になり硬化物の耐水性、耐薬品性及び機械的強度等の物性が向上し、一方、エポキシ当量が65未満のものを合成するのは困難である。
【0045】
ポリエポキシド(18)の具体例としては、芳香族系ポリエポキシ化合物、複素環系ポリエポキシ化合物、脂環族系ポリエポキシ化合物及び脂肪族系ポリエポキシ化合物等が挙げられる。
芳香族系ポリエポキシ化合物としては、多価フェノール類のグリシジルエーテル体及びグリシジルエステル体、グリシジル芳香族ポリアミン並びにアミノフェノールのグリシジル化物等が挙げられる。
【0046】
多価フェノールのグリシジルエーテル体としては、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールADジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハロゲン化ビスフェノールAジグリシジル、テトラクロロビスフェノールAジグリシジルエーテル、カテキンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ピロガロールトリグリシジルエーテル、1,5−ジヒドロキシナフタリンジグリシジルエーテル、ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、オクタクロロ−4,4’−ジヒドロキシビフェニルジグリシジルエーテル、テトラメチルビフェニルジグリシジルエーテル、ジヒドロキシナフチルクレゾールトリグリシジルエーテル、トリス(ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル、ジナフチルトリオールトリグリシジルエーテル、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、p−グリシジルフェニルジメチルトリールビスフェノールAグリシジルエーテル、トリスメチル−t−ブチル−ブチルヒドロキシメタントリグリシジルエーテル、9,9’−ビス(4−ヒドキシフェニル)フロオレンジグリシジルエーテル、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)テトラクレゾールグリシジルエーテル、4,4’−オキシビス(1,4−フェニルエチル)フェニルグリシジルエーテル、ビス(ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、フェノール又はクレゾールノボラック樹脂のグリシジルエーテル体、リモネンフェノールノボラック樹脂のグリシジルエーテル体、ビスフェノールA2モルとエピクロロヒドリン3モルの反応から得られるジグリシジルエーテル体、フェノールとグリオキザール、グルタールアルデヒド、又はホルムアルデヒドの縮合反応によって得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル体、及びレゾルシンとアセトンの縮合反応により得られるポリフェノールのポリグリシジルエーテル体等が挙げられる。
多価フェノールのグリシジルエステル体としては、フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル及びテレフタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
グリシジル芳香族ポリアミンとしては、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジルキシリレンジアミン及びN,N,N’,N’−テトラグリシジルジフェニルメタンジアミン等が挙げられる。
また、前記芳香族系ポリエポキシ化合物としては、p−アミノフェノールのトリグリシジルエーテル、トリレンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネートとグリシドールの付加反応により得られるジグリシジルウレタン化合物、前記2反応物にポリオールも反応させて得られるグリシジル基含有ポリウレタン(プレ)ポリマー及びビスフェノールAのAO付加物のジグリシジルエーテル体が挙げられる。
【0047】
複素環系ポリエポキシ化合物としては、トリスグリシジルメラミン等が挙げられる。
脂環族系ポリエポキシ化合物としては、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、リモネンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、エチレングリコールビスエポキシジシクロペンチルエーテル、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)ブチルアミン及びダイマー酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
また、前記脂環族系ポリエポキシ化合物としては、前記芳香族系ポリエポキシド化合物の水添化物も挙げられる。
【0048】
脂肪族系ポリエポキシ化合物としては、多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体、多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体及びグリシジル脂肪族アミン等が挙げられる。
多価脂肪族アルコールのポリグリシジルエーテル体としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル及びポリグリセロールポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
多価脂肪酸のポリグリシジルエステル体としては、ジグリシジルオキサレート、ジグリシジルマレート、ジグリシジルスクシネート、ジグリシジルグルタレート、ジグリシジルアジペート及びジグリシジルピメレート等が挙げられる。
グリシジル脂肪族アミンとしては、N,N,N’,N’−テトラグリシジルヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
また、脂肪族系ポリエポキシ化合物としては、ジグリシジルエーテル及びグリシジル(メタ)アクリレートの(共)重合体等も挙げられる。
ポリエポキシド(19)のうち好ましいのは、脂肪族系ポリエポキシ化合物及び芳香族系ポリエポキシ化合物である。なお、ポリエポキシド(19)は、2種以上を併用することができる。
【0049】
熱可塑性樹脂を微架橋した樹脂(G2)とは、(G1)に架橋構造を導入したものであり、かつ、ガラス転移温度(以下Tgと略記する。)が20〜200℃の樹脂が挙げられる。前記の架橋構造は、共有結合性、配位結合性、イオン結合性、水素結合性等、いずれの架橋形態であってもよい。具体例としては、例えば樹脂(G1)としてビニル樹脂を選択する場合、重合時に二重結合を2つ以上有するモノマーを添加することにより、架橋構造を導入することができる。
【0050】
樹脂(G)のMnは、好ましくは1,000〜500万であり、更に好ましくは2,000〜500,000である。
(G)のMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、以下の条件で測定することができる。
装置(一例) :「HLC−8120」[東ソー(株)製]
カラム(一例):「TSK GEL GMH6」2本[東ソー(株)製]
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のTHF溶液(不溶解分をグラスフィルターでろ別し
たもの)
溶液注入量 :100μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYREN E)12点(分子量:500、1,050、2,800、
5,970、9,100、18,100、37,900、
96,400、190,000、355,000、
1,090,000、2,890,000)[東ソー(株)製]
【0051】
樹脂(G)の溶解性パラメーター(以下SP値と略記する。)は、好ましくは7〜18(cal/cm1/2、であり、更に好ましくは8〜16(cal/cm1/2、特に好ましくは9〜14(cal/cm1/2である。
なお、本発明におけるSP値は、Fedorsによる方法[Polym.Eng.Sci.14(2)152,(1974)]により計算することができる。
【0052】
樹脂(G1)のTgは、好ましくは20〜200℃であり、更に好ましくは40℃〜150℃である。20℃以上では粒子の保存安定性が良好である。なお、Tgは「DSC20、SSC/580」[セイコー電子工業(株)製]を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC)で測定することができる。
【0053】
樹脂(G)の軟化開始温度は、好ましくは40〜220℃であり、更に好ましくは50〜200℃である。40℃以上であれば樹脂粒子(I)の長期保存性が良好である。220℃以下であれば、(I)を電子写真用トナーとして使用した際の定着温度を下げることができるため好ましい。なお、本発明における軟化開始温度は、フローテスターを用いて測定することができる。
【0054】
本発明におけるクロミック分子(A)とは、外部からの刺激により、光物性が可逆的に変化する分子のことであり、具体的には、フォトクロミック分子(A1)、サーモクロミック分子(A2)、エレクトロクロミック分子(A3)及びピエゾクロミック分子(A4)等が挙げられる。
なお、(A)は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0055】
フォトクロミック分子(A1)とは、光の照射により色が変化するクロミック分子のことであり、具体的には、アゾベンゼン、チオインジゴ、スピロピラン、サリチリデンアニリン、スピロオキサジン、ナフトピラン、ビオロゲン、ジアリールエテン、フルギド、フリルフルガイド、ジヒドロピレン、ビス(トリフェニルイミダゾリル)及びチオニン等が挙げられる。
【0056】
サーモクロミック分子(A2)とは、加熱により色が変化するクロミック分子のことであり、具体的には、エチレンジアミン錯体、サーモトロピック液晶、サリチリデンアニリン、アゾ化合物及びジアリールエテン等が挙げられる。
【0057】
エレクトロクロミック分子(A3)とは、電圧の印加により色が変化するクロミック分子のことであり、具体的には、無機エレクトロクロミック分子(酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化イリジウム及び酸化チタン等)、有機エレクトロクロミック分子(ビオロゲン、希土類フタロシアニン及びスチリル等)及び導電性高分子(ポリピロール、ポリチオフェン及びポリアニリン等)等が挙げられる。
【0058】
ピエゾクロミック分子(A4)とは、圧力を印加することにより色が変化するクロミック分子(A)のことであり、具体的には、ジフェニルフラビレン、ヘキシルアミドテトラフェニルピレン、ニッケル−ジオンジオキシム錯体、パラジウム−ジオンジオキシム錯体及び白金−ジオンジオキシム錯体等が挙げられる。
【0059】
(A)の含有率は、樹脂(G)の重量に基づき、好ましくは1〜40重量%であり、更に好ましくは3〜10重量%である。
【0060】
溶剤(C)としては、芳香族炭化水素溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びテトラリン等);脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤(n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット及びシクロヘキサン等);ハロゲン溶剤(塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、メチレンジクロライド、四塩化炭素、トリクロロエチレン及びパークロロエチレン等);エステル又はエステルエーテル溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ピルビン酸メチル及びピルビン酸エチル等);エーテル溶剤(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノエチルエーテル等);ケトン溶剤(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−ブチルケトン及びシクロヘキサノン等);アルコール溶剤(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール及びトリフルオロエタノール等);アミド溶剤(ジメチルホルムアミド及びジメチルアセトアミド等);スルホキシド溶剤(ジメチルスルホキシド等);複素環式化合物溶剤(N−メチルピロリドン等)並びにこれらの2種以上の混合溶剤が挙げられる。
【0061】
樹脂(G)とクロミック分子(A)が溶剤(C)に溶解又は分散された溶剤液(L)は、樹脂(G)とクロミック分子(A)を溶剤(C)に溶解又は分散させて製造する。溶剤液(L)中の樹脂(G)の濃度は、(L)の重量に基づき、好ましくは10〜90重量%であり、更に好ましくは20〜80重量%である。
【0062】
溶剤液(L)は、分散媒体(B)中に分散するため、樹脂粒子(I)の粒度分布の観点から、適度な粘度であることが好ましい。(L)の25℃における粘度は、好ましくは100Pa・s以下であり、更に好ましくは10Pa・s以下である。
【0063】
樹脂(G)の(B)への溶解度は、好ましくは3重量%以下であり、更に好ましくは1重量%以下である。
【0064】
本発明における有機微粒子(F)は、分散媒体(B)に分散し、樹脂粒子(H)表面に固着し得るものであればよい。(F)を構成する樹脂(f)としては、結晶性樹脂(f1)及び非結晶性樹脂(f2)が挙げられ、2種以上を併用してもよい。これらのうち好ましいのは、結晶性樹脂(f1)である。
なお、本発明における「結晶性」とは、樹脂(f)の軟化点(以下Tmと略記する。)と融解熱の最大ピーク温度(以下Taと略記する。)との比(Tm/Ta)が0.8〜1.55であり、DSCにおいて、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有することを指す。また、「非結晶性」とは、TmとTaとの比(Tm/Ta)が1.55より大きいことを指す。Tm、Taは以下の方法で測定することができる。
<Tmの測定方法>
高化式フローテスター{例えば「CFT−500D」[(株)島津製作所製]}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)をTmとする。
<Taの測定方法>
示差走査熱量計{例えば「DSC210」[セイコー電子工業(株)製]}を用いて測定する。
Taの測定に供する試料は、前処理として、130℃で溶融した後、130℃から70℃まで1.0℃/分の速度で降温し、次に70℃から10℃まで0.5℃/分の速度で降温する。ここで、一度DSCにより、昇温速度20℃/分で昇温して吸発熱変化を測定して、「吸発熱量」と「温度」とのグラフを描き、このとき観測される20〜100℃にある吸熱ピーク温度をTa’とする。複数ある場合は最も吸熱量が大きいピークの温度をTa’とする。最後に試料を(Ta’−10)℃で6時間保管した後、(Ta’−15)℃で6時間保管する。
次いで、上記試料を、DSCにより降温速度10℃/分で0℃まで冷却した後、昇温速
度20℃/分で昇温して吸発熱変化を測定して同様のグラフを描き、吸熱量の最大ピークに対応する温度を、融解熱の最大ピーク温度(Ta)とする。
【0065】
結晶性樹脂(f1)としては、結晶性ポリエステル樹脂(f1−1)、結晶性ポリウレタン樹脂(f1−2)及び結晶性ビニル樹脂(f1−3)等が挙げられる。
【0066】
結晶性ポリエステル樹脂(f1−1)としては、前記ジオール(11)と、ジカルボン酸(13)を構成単位とするものが挙げられる。
(f1−1)は、樹脂粒子(I)の耐ブロッキング性の観点から、ジオール(11)及びジカルボン酸(13)の構成単位としての合計炭素数が10以上のものが好ましく、更に好ましくは12以上、特に好ましくは14以上であり、電子写真用トナーの母体粒子として用いた際の低温定着性の観点から、前記合計炭素数が52以下のものが好ましく、更に好ましくは45以下、特に好ましくは40以下、最も好ましくは30以下である。また、ジカルボン酸(13)としては、必要により炭素数6〜30の芳香族ジカルボン酸を含んでいてもよい。
【0067】
結晶性ポリウレタン樹脂(f1−2)としては、前記ジオール(11)、前記ポリアミン(16)のうち炭素数2〜18の脂肪族ジアミン又は炭素数6〜20の芳香族ジアミンとして例示されたもの、及び前記ポリイソシアネート(i)のうちジイソシアネートとして例示されたものを構成単位とするものが挙げられる。
【0068】
結晶性ビニル樹脂(f1−3)としては、アルキル基の炭素数が12〜50であるアルキル(メタ)アクリレートを必須構成単位とする結晶性ビニル樹脂(f1−3−1)、(メタ)アクリロニトリルを必須構成単位とする結晶性ビニル樹脂(f1−3−2)及び結晶性ポリオレフィン(f1−3−3)が挙げられる。なお、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリロニトリル」は、アクリルニトリル又はメタクリロニトリルを意味する。
(f1−3−1)を構成する、アルキル基の炭素数が12〜50であるアルキル(メタ)アクリレートは、樹脂粒子(I)の耐ブロッキング性の観点から、そのアルキル基の炭素数が14以上のものが好ましく、更に好ましくは18以上であり、電子写真用トナーの母体粒子として用いた際の低温定着性の観点から40以下のものが好ましく、更に好ましくは30以下である。
(f1−3−1)中のアルキル基の炭素数が12〜50であるアルキル(メタ)アクリレートの構成単位としての含有率は、(f1−3−1)の重量に基づき好ましくは40重量%以上であり、更に好ましくは45重量%以上、特に好ましくは60重量%以上である。
【0069】
(f1−3−2)中の(メタ)アクリロニトリルの構成単位としての含有率は、(f1−3−1)の重量に基づき好ましくは0.01〜40重量%であり、更に好ましくは0.05〜35重量%、特に好ましくは0.1〜30重量%である。
【0070】
(f1−3−3)としては、ポリエチレン及びポリプロピレン等が挙げられる。
【0071】
(f1−1)のうち好ましいのは、(f1−3)であり、更に好ましいのは(f1−3−1)である。
【0072】
(f1−1)の融点は、好ましくは50〜110℃であり、更に好ましくは55〜100℃、特に好ましくは60〜90℃である。(f1−1)の融点が50℃以上であれば樹脂粒子(I)の耐ブロッキング性が向上する。110℃以下であれば(I)を電子写真用トナーの母体粒子として用いた際の低温定着性が良好である。なお、(f1−1)の融点は、DSCにおける吸熱ピークから求めることができる。
【0073】
(f1−1)の結晶化度は、後述する液体状態又は超臨界状態の二酸化炭素(X)による膨潤抑制及び樹脂粒子(H)への吸着性の観点から、好ましくは20〜95%であり、更に好ましくは30〜80%である。結晶化度は、DSCを用いて吸熱ピークの面積から融解熱量〔ΔHm(J/g)〕を求め、測定されたΔHmに基づき以下の式により算出することができる。
結晶化度(%)=(ΔHm/a)×100
式中、aは結晶化度が100%となるように外挿した場合の融解熱量である。
【0074】
(f1−1)のMnは、樹脂弾性の観点から、好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは1,500以上、特に好ましくは2,000以上である。また、溶融粘度の観点から、好ましくは1,000,000以下であり、更に好ましくは500,000以下、特に好ましくは300,000以下である。
【0075】
非結晶性樹脂(f2−1)としては、非結晶性のビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート、セルロース及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0076】
有機微粒子(F)を構成する樹脂(f)としては、(f1)と(f2)を併用したものでもよい。(f1)と(f2)の混合物の融点は、好ましくは50〜150℃である。(f1)と(f2)を併用した場合の(f2)の含有率は、(f1)と(f2)の合計重量に基づき、好ましくは0〜50重量%である。また、(F)は、(f2)を(f1)で被覆した微粒子であってもよい。
【0077】
(F)の製法としては特に制限はないが、以下の方法が挙げられる。
[1]乾式で製造する方法[(f)をジェットミル等の公知の乾式粉砕機により乾式粉砕する方法]。
[2]湿式で製造する方法[(f)を有機溶剤中に分散し、ビーズミルやロールミル等の公知の湿式分散機により湿式粉砕する方法。
[3](f)の溶剤溶液をスプレードライヤー等により噴霧乾燥する方法。
[4](f)の溶剤溶液に貧溶媒を添加したり、冷却によって過飽和させ(f)を析出させる方法。
[5](f)の溶剤溶液を水又は有機溶剤中に分散する方法。
[6](f)の前駆体を水中で乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、シード重合法又は懸濁重合法等により重合させる方法。
[7](f)の前駆体を有機溶剤中で分散重合等により重合させる方法。
また上記方法により(f2)の粒子(F’)を合成した後、公知のコーティング法、シード重合法、メカノケミカル法等により、(d1)を(F’)表面に形成してもよい。これらのうち、(F)の製造しやすさの観点から好ましいのは、[2]〜[7]であり、更に好ましいのは、[4]、[6]及び[7]である。
【0078】
(F)の樹脂粒子(H)への吸着性を向上させたり、樹脂粒子(I)の粉体特性や電気特性を改質するために、(F)の表面をカップリング剤(シラン系、チタネート系及びアルミネート系等)や各種界面活性剤で処理したり、(F)をポリマー等でコーティング処理して、(F)の表面を改質してもよい。また、(F)又は(H)が、少なくともその表面に酸性官能基を有し、他の一方が少なくともその表面に塩基性官能基を有することが好ましい。
【0079】
(F)及び(H)は、その内部に酸性官能基又は塩基性官能基を有していてもよい。酸性官能基としてはカルボキシル基及びスルホン酸基等が挙げられる。塩基性官能基としては、第1級アミノ基、第2級アミノ基及び第3級アミノ基等が挙げられる。
【0080】
(F)及び(H)は、少なくともその表面に酸性官能基又は塩基性官能基を付与するために、(F)として(f1)を使用し、(G)として酸性官能基又は塩基性官能基を有する樹脂を使用してもよいし、粒子(F)及び樹脂粒子(H)に、これらの官能基を付与するために表面処理してもよい。
【0081】
酸性官能基を有する(f1)としては、酸価を有する脂肪族ポリエステル、酸性官能基を有する単量体(例えばカルボキシル基と重合性二重結合を有する単量体及びスルホン基と重合性二重結合を有する単量体等。)を共重合したビニル樹脂等が挙げられる。
【0082】
塩基性官能基を有する結晶性樹脂(f1)としては、塩基性官能基を有する単量体(例えばアミノ基と重合性二重結合を有する単量体等。)を共重合したビニル樹脂等が挙げられる。
【0083】
(F)の体積平均粒径は、好ましくは0.01〜0.5μmであり、更に好ましくは0.015〜0.4μmである。なお、体積平均粒径は、動的光散乱式粒度分布測定装置(例えば「LB−550」[(株)堀場製作所製]、レーザー式粒度分布測定装置(例えば「LA−920」[(株)堀場製作所製]及び「マルチサイザーIII」(ベックマン・コールター社製)等で測定することができる。
【0084】
本発明の樹脂粒子(I)の製造方法は、樹脂粒子(H)の表面に有機微粒子(F)が固着された樹脂粒子(I’)を形成させ、次いで分散媒体(B)と溶剤(C)を除去する工程を含む。
(F)を(H)の表面に固着する方法としては、後述する本発明の樹脂粒子(I)の製造方法において記載した方法が挙げられる。
【0085】
(H)の体積平均粒径は、好ましくは0.1〜10μmであり、更に好ましくは0.2〜8μmである。
(F)の体積平均粒径と(H)の体積平均粒径の比[(F)の体積平均粒径/(H)の体積平均粒径]は、好ましくは0.0001〜0.2であり、更に好ましくは0.0005〜0.1である。
【0086】
分散媒体(B)としては、液体状態又は超臨界状態の二酸化炭素(X)[以下(X)と略記する。]、非水性有機溶剤(N)及び水性媒体(Z)等が挙げられる。
(X)のうち、液体状態の二酸化炭素とは、二酸化炭素の温度軸と圧力軸とで表す相図上において、二酸化炭素の三重点(温度=−57℃、圧力0.5MPa)と二酸化炭素の臨界点(温度=31℃、圧力=7.4MPa)を通る気液境界線、臨界温度の等温線及び固液境界線に囲まれた部分の温度・圧力条件である二酸化炭素を表す。
(X)のうち、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度以上の温度・圧力条件である二酸化炭素を表す(ただし、圧力は、2成分以上の混合ガスの場合、全圧を表す)。
【0087】
非水性有機溶剤(N)としては、前記溶剤(C)のうち、樹脂(G)の溶解度が1重量%以下であるものが挙げられる。(G)の溶解度が1重量%以下であれば、樹脂粒子(I)同士が合一しにくく好ましい。なお、(G)の(N)に対する溶解度は、以下の方法で測定することができる。
(G)10gを(N)90g中に分散した非水性分散液を、3,000rpmの条件で10分間遠心分離し、上澄み液約2g(wg)をアルミ容器に採取する。更にこの上澄み液を、減圧乾燥機で、(C)の沸点の温度条件で1時間乾燥を行い、残渣の質量を秤量する。このときの残渣質量をWgとすると、樹脂(G)の非水性有機溶剤(N)に対する溶解度は、以下の式から算出することができる。
溶解度(重量%)=[(W/w)/10]×100
【0088】
水性媒体(Z)としては、水を必須構成成分とする液体であれば制限なく使用でき、水に界面活性剤を含有させた水溶液等が挙げられる。
界面活性剤としては、公知の界面活性剤(例えば特開2004−124059号公報に記載の界面活性剤)等を使用することができる。
【0089】
本発明の(I)の製造方法(1)[分散媒体(B)が(X)の場合]について、以下説明する。
粒子(F)を(X)中に分散する方法はいかなる方法でもよく、例えば、[1]耐圧容器に(F)及び(X)を投入し、撹拌又は超音波照射等により(F)を直接(X)中に分散する方法、[2](F)が(C)中に分散された分散液を(X)中に導入する方法、等が挙げられる。なお、(F)のTg又は融点未満の温度における、(X)による膨潤度(以下膨潤度と略記する。)は、好ましくは16%以下であり、更に好ましくは10%以下、特に好ましくは5%以下である。(F)として膨潤度が16%以下のものを使用した場合は、樹脂粒子(I)の凝集を抑制しやすく、(I)の粒度分布が狭くなる。
(F)の膨潤度は、磁気浮遊天秤を用いて測定することができる。なお、膨潤度の測定方法の詳細はJ.Supercritical Fluids.19、187−198(2001)に記載されている。
(F)は、膨潤度が前記の範囲であって、(X)に溶解せず、(X)中に安定に分散するものが好ましい。
【0090】
(X)の重量に基づく(F)の重量比率は、好ましくは50重量%以下であり、更に好ましくは30重量%以下、特に好ましくは0.1〜20重量%である。この範囲であれば、効率よく樹脂粒子(I)を製造することができる。
【0091】
(F)を(C)中に分散して分散液を作製する際の(C)として好ましいのは、(F)の分散性の観点から、脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤及びエステル又はエステルエーテル溶剤である。
【0092】
(F)と(C)の重量比率については特に制限はないが、(C)の重量に基づき、(F)が50重量%以下であるのが好ましく、更に好ましくは30重量%以下であり、特に好ましくは20重量%以下である。この範囲であれば、効率よく(F)を(X)中に導入することができる。
【0093】
(F)を(C)中に分散する方法としては特に制限はないが、例えば、[1](F)を(C)に投入し、撹拌や超音波照射等により直接分散する方法、[2]粒子を高温化で溶剤(C)に溶解させて晶析する方法、等が挙げられる。
【0094】
(F)を(C)中に分散する方法においては、分散安定剤(D)を使用してもよい。分散安定剤(D)としては、炭素数4以上のアルキル基を有するモノマー(M1−1)、ジメチルシロキサン基を有するモノマー(又は反応性オリゴマー)(M1−2)、及び/又はフッ素原子を有するモノマー(M1−3)と、ポリエステル樹脂(P)を構成するモノマー(M2)との共重合体が挙げられる。共重合体の形態は、ランダム、ブロック、グラフトのいずれでもよいが、好ましいのはブロック及びグラフトである。
【0095】
分散安定剤(D)のMwは、好ましくは100〜10万であり、更に好ましくは200〜5万、特に好ましくは500〜3万である。この範囲内であれば、(D)の分散安定効果が向上する。
(D)は、(C)に溶解することが好ましい。(D)の添加率は、分散安定性の観点から、(F)の重量に基づき好ましくは0.01〜50重量%であり、更に好ましくは0.02〜40重量%、特に好ましくは0.03〜30重量%である。
【0096】
溶剤液(L)を、(X)中に分散する方法としては特に制限はなく、例えば以下の方法が挙げられる。
[1](L)を撹拌機や分散機等で分散する方法。
[2](X)中に(F)が分散されてなる分散体(X0)中に、(L)をスプレーノズルを介して噴霧して液滴を形成し、液滴中の樹脂を過飽和状態とし、樹脂粒子を析出させる方法(ASES:Aerosol Solvent Extraction Systemとして知られている)。
[3]同軸の多重管(2重管及び3重管等)から(L)、(X0)を高圧ガス、エントレーナ等とともにそれぞれ別の管から同時に噴出させて、液滴に外部応力を加え分裂を促進させて、粒子を得る方法(SEDS:Solution Enhanced Dispersion by Supercritical Fluidsとして知られている)。
[4]超音波を照射する方法。
【0097】
(X0)中に(L)を分散し、(H)の表面に(F)を吸着させながら(G)を粒子成長させることにより、(G)、(A)及び(C)を含有する樹脂粒子(H)の表面に粒子(F)が固着した樹脂粒子(I’)が形成される。(I’)が(X)中に分散されたものを分散体(X1)とする。
分散体(X1)は単一相であることが好ましい。すなわち、(I’)が分散されている(X)を含む相の他に、(C)相が分離する状態は好ましくない。従って、(C)相が分離しないように、(X0)に対する(L)の量を調整することが好ましい。例えば(X0)の重量に基づく(L)の比率は90重量%以下が好ましく、更に好ましくは5〜80重量%、特に好ましくは10〜70重量%である。
なお、(G)と(H)中に含有する(C)の量は、(H)の重量に基づき好ましくは10〜90重量%であり、更に好ましくは20〜70重量%である。
また、(G)と(X)の重量比は、好ましくは[(G):(X)]=1:(0.1〜100)であり、更に好ましくは1:(0.5〜50)、特に好ましくは1:(1〜20)である。
【0098】
本発明の(I)の製造方法において、(X)中で行う操作は、以下に述べる温度で行うことが好ましい。すなわち、減圧時に配管内で二酸化炭素が固体に相転移し、流路を閉塞させないようにするためには、30℃以上が好ましく、(F)、(H)、(I)の熱劣化を防止するためには200℃以下が好ましい。更に好ましくは30〜150℃であり、より好ましくは34〜130℃、特に好ましくは35〜100℃、最も好ましくは40℃〜80℃である。分散体(X0)、分散体(X1)の温度も同様である。(X)中で行う操作は、(F)のTg又は融点以上の温度でも未満の温度でも行うことができるが、Tg未満又は融点未満の温度で行うことが好ましい。
【0099】
本発明の(I)の製造方法において、(X)中で行う操作は、以下に述べる圧力で行うことが好ましい。すなわち、(I)を(X)中に良好に分散させるという観点から、好ましくは7MPa以上であり、設備コスト、運転コストの観点から、好ましくは40MPa以下である。更に好ましくは7.5〜35MPa、より好ましくは8〜30MPa、特に好ましくは8.5〜25MPa、最も好ましくは9〜20MPaである。分散体(X0)及び分散体(X1)を形成する際の圧力も同様である。
【0100】
本発明の(I)の製造方法において、(X)中で行う操作の温度及び圧力は、(G)が(X)中に溶解せず、かつ(G)が凝集・合一可能な範囲内で設定することが好ましい。通常、低温・低圧になるほど(P)が(X)中に溶解しない傾向となり、高温・高圧になるほど(P)が凝集・合一し易い傾向になる。分散体(X0)、分散体(X1)についても同様である。
【0101】
本発明の(I)の製造方法における(X)中には、分散媒としての物性値(粘度、拡散係数、誘電率、溶解度及び界面張力等)を調整するために、他の物質(Y)を適宜含んでよく、(Y)としては、窒素、ヘリウム、アルゴン及び空気等の不活性気体等が挙げられる。
(X)と(Y)の合計重量に基づく(X)の重量比率は、好ましくは70重量%以上であり、更に好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。
【0102】
樹脂粒子(I’)が分散された分散体(X1)から、通常、減圧により(X)を除去し、樹脂粒子(I)を得る。その際、独立に圧力制御された容器を多段に設けることにより段階的に減圧してもよく、また一気に常温常圧まで減圧してもよい。得られる樹脂粒子(I)の捕集方法は特に限定されず、フィルターでろ別する方法や、サイクロン等により遠心分離する方法が挙げられる。樹脂粒子(I)は減圧後に捕集してもよく、また減圧前に一旦高圧中で捕集した後、減圧してもよい。高圧下で捕集した後に減圧する場合の、高圧下からの樹脂粒子(I)の取り出し方としては、バッチ操作で捕集容器を減圧してもよく、またロータリーバルブを使用して連続的に取り出し操作を行ってもよい。
【0103】
本発明の(I)の製造方法における(F)が、結晶性樹脂(f1)を含有する場合、樹脂粒子(I)を形成させた後、必要に応じて、(f1)の融点から好ましくは50℃以上低い温度で、(f1)の融点から更に好ましくは10℃以上低い温度で、特に好ましくは融点以上の温度で(I)を加熱することにより、樹脂粒子(H)の表面に付着した粒子(F)を溶融させて、粒子(F)を樹脂粒子(H)の表面に固着し、又は(F)由来の皮膜を形成して樹脂粒子(I)を形成させることもできる。(I)の凝集を抑制するという観点から、加熱する時間は好ましくは0.01〜1時間であり、更に好ましくは、0.05〜0.7時間である。
【0104】
本発明の(I)の製造方法により得られる樹脂粒子(I)は、樹脂粒子(H)の表面に一旦粒子(F)が固着されるが、(F)が(f1)を含有する場合、(f1)と(G)の組成、(C)の種類によっては、製造工程中に、(F)が皮膜化されて、(H)の表面に(F)が皮膜化された皮膜が形成される場合がある。
本発明の製造方法により最終的に得られる樹脂粒子(I)は、(H)の表面に(F)が固着したもの、(F)由来の皮膜が形成されたもの、(F)の一部が皮膜化したもののいずれであってもよい。後述する(I)の製造方法(2)及び(3)についても同様である。
なお、(I)の表面状態及び形状は、例えば走査電子顕微鏡(SEM)を用い、樹脂粒子の表面を1万倍又は3万倍に拡大した写真で観察することができる。
【0105】
(I)[樹脂粒子(I’)の場合も含む]を形成させた後、必要に応じて、(C)を除去又は減少させる工程を行うことが好ましい。すなわち、(I)が(X)中に分散された分散体(X1)中に(C)を含む場合、そのまま容器を減圧にすると、(X1)中に溶解した(C)が凝縮し、樹脂粒子(I)を再溶解したり、樹脂粒子(I)を捕集する際に樹脂粒子(I)同士が合一してしまう等の問題が生じる場合がある。
(C)を除去又は減少させる方法としては、例えば、(L)を分散して得られた分散体(X1)に、更に(X)を混合して(I)から(C)を(X)の相に抽出し、次いで(C)を含む(X)を(C)を含まない(X)で置換し、その後に減圧することが好ましい。
【0106】
樹脂粒子(I)が(X)中に分散された分散体(X1)と(X)を混合する場合、(X1)より高い圧力の(X)を加えてもよく、また(X1)を(X1)より低い圧力の(X)中に加えてもよいが、連続操作の容易性の観点から好ましいのは後者である。(X1)と混合する(X)の量は、樹脂粒子(I)の合一防止の観点から、(X1)の体積の1〜50倍が好ましく、更に好ましくは1〜40倍、最も好ましくは1〜30倍である。上記のように樹脂粒子(I)中に含有される(C)を除去又は減少させ、その後、(X)を除去することにより、樹脂粒子(I)同士が合一することを防ぐことができる。
【0107】
(C)を含む(X)を、(C)を含まない(X)で置換する方法としては、樹脂粒子(I)を一旦フィルターやサイクロンで捕捉した後、圧力を保ちながら、(C)が完全に除去されるまで(X)を流通させる方法が挙げられる。流通させる(X)の量は、分散体(X1)からの溶剤除去の観点から、(X1)の体積に対して1〜100倍が好ましく、更に好ましくは1〜50倍、最も好ましくは1〜30倍である。
【0108】
本発明の(I)の製造方法(2)[分散媒体(B)が非水性有機溶剤(N)の場合]について以下説明する。
製造方法(2)において、(F)を(N)中に分散する方法はいかなる方法でもよく、例えば、容器に(F)及び(N)を投入し、撹拌、噴霧又は超音波照射等により、(F)を直接(N)中に分散する方法や、(F)の溶剤分散体を(N)中に導入する方法等が挙げられる。(F)としては、(N)に溶解せず(N)中に安定分散するものが好ましい。
【0109】
製造方法(2)における(C)としては、前記のものが挙げられ、(C)のSP値は、好ましくは9.5〜20(cal/cm1/2であり、更に好ましくは10〜19(cal/cm1/2である。(C)のSP値がこの範囲であると、溶剤液(L)を(N)中に分散する際に、(C)が(N)中に抽出されることなく、樹脂粒子(I)の粒度分布が狭くなるため好ましい。
(C)として混合溶剤を使用する場合、SP値は加成性が成立すると仮定し、各々の溶剤のSP値から計算した加重平均値が上記範囲内であることが好ましい。
好ましい(C)としては、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン及びこれら2種以上の混合溶剤が挙げられる。
【0110】
(C)中に(G)を溶解させる方法としては特に制限はなく、公知の方法を用いることができ、例えば[1](C)中に(G)を投入し撹拌する方法、[2](C)中に(G)を投入し加熱する方法、等が挙げられる。
【0111】
(L)は、(N)中に分散するため、適度な粘度であることが好ましく、粒度分布の観点から好ましくは100Pa・s以下であり、更に好ましくは10Pa・s以下である。
(G)の(N)に対する溶解度は、好ましくは3重量%以下であり、更に好ましくは1重量%以下である。
(G)のSP値は、好ましくは8〜16(cal/cm1/2であり、更に好ましくは9〜14(cal/cm1/2である。
【0112】
(N)中に(F)が分散された分散液中に(L)を分散させる方法としては、(L)を前記分散液中に導入し分散させる方法等が挙げられる。
【0113】
(G)100重量部に対する(F)の分散液の使用量は、好ましくは50〜2,000重量部であり、更に好ましくは100〜1,000重量部である。50重量部以上であれば(G)の分散状態が良好であり、2,000重量部以下であれば経済的である。
【0114】
(L)を、(F)が(B)に分散された分散液中に分散させる際には、分散装置を用いることができる。
分散装置としては、一般に乳化機や、分散機として市販されているものであれば特に限定されず、例えばバッチ式乳化機{「ホモジナイザー」(IKA社製)、「ポリトロン」(キネマティカ社製)及び「TKオートホモミキサー」[特殊機化工業(株)製]等}、連続式乳化機{「エバラマイルダー」[(株)荏原製作所製]、「TKフィルミックス」、「TKパイプラインホモミキサー」[特殊機化工業(株)製]、「コロイドミル」[神鋼パンテック(株)製]、「スラッシャー」、「トリゴナル湿式微粉砕機」[サンテック(株)製]、「キャピトロン」(ユーロテック社製)及び「ファインフローミル」[太平洋機工(株)製]等}、高圧乳化機{「マイクロフルイダイザー」[みずほ工業(株)製]、「ナノマイザー」[エス・ジーエンジニアリング(株)製]及び「APVガウリン」(ガウリン社製)等}、膜乳化機{「膜乳化機」[冷化工業(株)製]等}、振動式乳化機{「バイブロミキサー」[冷化工業(株)製]等}、超音波乳化機{「超音波ホモジナイザー」(ブランソン社製)等}等が挙げられる。これらのうち、(I)の粒度分布の観点から好ましいのは、バッチ式乳化機、連続式乳化機及び高圧乳化機であり、更に好ましいのは「APVガウリン」、「ホモジナイザー」、「TKオートホモミキサー」、「エバラマイルダー」、「TKフィルミックス」及び「TKパイプラインホモミキサー」である。
【0115】
樹脂粒子(I’)の分散液から(C)及び(N)を除去し、樹脂粒子(I)を得る方法としては、
[1](C)及び(N)を減圧下又は常圧下で乾燥する方法。
[2]遠心分離器、スパクラフィルター又はフィルタープレス等により固液分離し、得られた粉末を乾燥する方法。
[3](C)及び(N)を凍結乾燥させる方法。
等が挙げられる。
上記[1]、[2]において、得られた樹脂粒子(I)を乾燥する際、流動層式乾燥機、減圧乾燥機及び循風乾燥機等の公知の設備を用いることができる。
また、必要に応じ、風力分級器等を用いて分級し、所定の粒度分布とすることもできる。
なお、上記脱溶剤工程等の製造工程中に、樹脂粒子(H)の表面の(F)が皮膜化した(I)が形成される場合がある。
【0116】
本発明の(I)の製造方法(3)[分散媒体(B)が水性媒体(Z)の場合]について詳細に説明する。
(F)の水性分散液を構成する(Z)中には、水以外に前記(C)のうち水と任意に混和する溶剤が含有されていてもよく、更に(C)としては、(F)及び(H)の凝集を引き起こさないものであり、(F)及び(H)を溶解しないものであり、かつ樹脂粒子(I)の造粒を妨げることがないものであれば特に制限はない。また、(Z)中の(C)の含有率も特に制限されないが、好ましいのは乾燥後の樹脂粒子(I)中に残らないものであり、水と(C)の合計重量に基づき、40重量%以下の含有率が好ましい。
【0117】
(F)を(Z)中に分散する方法はいかなる方法でもよく、例えば、以下の[1]〜[8]が挙げられる。
[1](F)を構成する(f)がビニル樹脂の場合において、モノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法又は分散重合法等の重合反応により、(F)を(Z)中に分散する方法。
[2](F)を構成する(f)がポリエステル樹脂等の重付加又は縮合系樹脂の場合において、前駆体(モノマー及びオリゴマー等)又はその有機溶剤溶液を必要であれば適当な分散剤存在下で水性媒体中に分散させ、その後に加熱したり、硬化剤を加えたりして前躯体を硬化させて、(F)を(Z)中に分散する方法。
[3](F)を構成する(f)がポリエステル樹脂等の重付加又は縮合系樹脂の場合において、前駆体(モノマー及びオリゴマー等)又はその有機溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい。)中に必要により適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化し、硬化剤を加えたりして前躯体を硬化させて、(F)を(Z)中に分散する方法。
[4]あらかじめ重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい。以下同様。)により作製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで分級することによって(F)を得た後、適当な分散剤存在下で(Z)中に分散させる方法。
[5]あらかじめ重合反応により作製した樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより(F)を得た後、適当な分散剤存在下で(Z)中に分散させる方法。
[6]あらかじめ重合反応により作製した樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又はあらかじめ有機溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより(F)を析出させ、次いで、有機溶剤を除去して(F)を得た後、適当な分散剤存在下で(Z)中に分散させる方法。
[7]あらかじめ重合反応により作製した樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下で(Z)中に分散させ、加熱又は減圧等によって有機溶剤を除去する方法。
[8]あらかじめ重合反応により作製した樹脂を有機溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後(Z)を加えて転相乳化する方法。
【0118】
上記[1]〜[8]の方法において、併用する乳化剤又は分散剤としては、公知の界面活性剤、水溶性ポリマー等を用いることができる。また、乳化又は分散の助剤として前記(C)又は可塑剤等を併用することができる。これらの具体例としては、特開2002−284881号公報に記載のもの等が挙げられる。
【0119】
溶剤液(L)を、粒子(F)の水性分散液中に分散させる方法としては、溶剤液(L)を(F)の水性分散液中に導入し分散させる方法等が挙げられる。
【0120】
(G)100重量部に対する(F)の水性分散液の使用量は、好ましくは50〜2,000重量部であり、更に好ましくは100〜1,000重量部である。50重量部以上であれは(G)の分散状態が良好であり、2,000重量部以下であると経済的である。
【0121】
(L)を粒子(F)の水性分散液中に分散させる場合には、分散装置を用いることができる。分散装置としては、前記のものが挙げられる。
【0122】
樹脂粒子(I’)の分散液から(Z)と(C)を除去して、樹脂粒子(I)を得る方法としては、
[1](I’)の分散液を減圧下又は常圧下で乾燥する方法。
[2]遠心分離器、スパクラフィルター又はフィルタープレス等により固液分離し、得られた粉末を乾燥する方法。
[3](I’)の分散液を凍結乾燥させる方法。
等が挙げられる。
上記[1]、[2]において、得られた樹脂粒子(I)を乾燥する際、流動層式乾燥機、減圧乾燥機、循風乾燥機等の公知の設備を用いることができる。
また、必要に応じ、風力分級器等を用いて分級し、所定の粒度分布とすることもできる。
なお、上記脱溶剤工程等の製造工程中に、(H)の表面の(F)が皮膜化した(I)が形成される場合がある。
【0123】
本発明の樹脂粒子(I)の体積平均粒径は、電子写真用トナーの母体粒子として用いた際の画像解像性の観点から、好ましくは3〜10μmであり、更に好ましくは4〜8μmである。
(I)の粒度分布[体積平均粒径(Dv)/個数平均粒径(Dn)]は、好ましくは1.0〜1.25であり、更に好ましくは1.0〜1.21である。
【0124】
(I)の表面被覆率[(H)の表面が(F)で被覆されている割合]は、(I)の粒度分布及び(I)の耐ブロッキング性の観点から、好ましくは5%以上であり、更に好ましくは30%以上である。なお、(I)の表面被覆率は、走査電子顕微鏡(SEM)で得られる像の画像解析から、以下の式により算出することができる。
(I)の表面被覆率(%)=100×{[(F)で被覆されている部分の面積]/[(F)で被覆されている部分の面積+(H)の表面が露出している部分の面積]}
【0125】
本発明の樹脂粒子(I)を電子写真用トナーの母体粒子として用いる場合、樹脂粒子(I)中に、離型剤、荷電制御剤及び流動化剤等の電子写真用トナー用添加剤を含有させてもよく、これらは併用してもよい。
【0126】
離型剤としては、ポリオレフィンワックス、天然ワックス、炭素数30〜50の脂肪族アルコール、炭素数30〜50の脂肪酸及びこれらの混合物等が挙げられる。離型剤のフローテスターで測定したTmは、好ましくは50〜170℃である。
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセン及びこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるもの及び熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素及び/又はオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸及びその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチル及びマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸及び無水マレイン酸等]及び/又は不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル及びマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体及びサゾールワックス等が挙げられる。
天然ワックスとしては、カルナウバワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス及びライスワックス等が挙げられる。
炭素数30〜50の脂肪族アルコールとしては、トリアコンタノール等が挙げられる。炭素数30〜50の脂肪酸としては、トリアコンタン酸等が挙げられる。
【0127】
荷電制御剤としては、4級アンモニウム塩、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体、4級アンモニウム塩基含有ポリマー、サリチル酸金属塩、ベンジル酸のホウ素錯体、スルホン酸基含有ポリマー、含フッ素系ポリマー及びハロゲン置換芳香環含有ポリマー等が挙げられる。
【0128】
流動化剤としては、コロイダルシリカ、アルミナ粉末、酸化チタン粉末及び炭酸カルシウム粉末等が挙げられる。
なお、流動化剤は、電子写真用トナーの母体粒子の形成後に添加するのが好ましい。
【実施例】
【0129】
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0130】
<製造例1>[樹脂(G−1)の作製]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、1,2−プロピレングリコール831重量部、テレフタル酸703重量部、アジピン酸47重量部、及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5重量部を投入し、窒素置換後撹拌下180℃に昇温し、同温度で窒素気流下に生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで230℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成するプロピレングリコール及び水を留去しながら4時間反応させ、更に0.007〜0.026MPaの減圧下に反応させ、軟化点が87℃になった時点で180℃まで冷却し、次いで無水トリメリット酸24重量部及びテトラブトキシチタネート0.5重量部を投入して90分間反応させ、ポリエステル樹脂(G−1)を得た。(G−1)のMnは1,900、Tgは45℃であった。なお、回収されたプロピレングリコールは442重量部であった。
【0131】
<製造例2>[樹脂(G−2)の作製]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、1,2−プロピレングリコール729重量部、テレフタル酸683重量部、アジピン酸67重量部、無水トリメリット酸38重量部、及び縮合触媒としてテトラブトキシチタネート0.5重量部を投入し、窒素置換後撹拌下180℃に昇温し、同温度で窒素気流下に生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで230℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成するプロピレングリコール及び水を留去しながら4時間反応させ、更に0.007〜0.026MPaの減圧下に軟化点が160℃になるまで反応させ、ポリエステル樹脂(G−2)を得た。(G−2)のMnは5,700、Tgは63℃であった。なお、回収されたプロピレングリコールは172重量部であった。
【0132】
<製造例3>[樹脂溶液(L0−1)の調製]
撹拌装置を備えた容器に、溶剤(C−1)(アセトン490重量部、メタノール175重量部及びイオン交換水35重量部を混合したもの)、樹脂(G−1)243重量部及び樹脂(G−2)57重量部を投入し、(G−1)と(G−2)が完全に溶解するまで撹拌し、樹脂溶液(L0−1)を得た。
【0133】
<製造例4>[樹脂(f−1)の作製]
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート及び窒素導入管を備えた反応容器に、トルエン500重量部を投入した。別のガラス製ビーカーに、トルエン350重量部、ベヘニルアクリレート「ブレンマーVA」[日油(株)製]120重量部、メタクリル酸メチル22.5重量部、(2−パーフルオロデシル)エチルアクリレート[和光純薬工業(株)製]7.5重量部及びアゾビスイソブチロニトリル10重量部を投入し、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに投入した。反応容器の気相部の窒素置換を行った後、密閉下80℃に昇温し、同温度で滴下ロートから2時間かけて単量体溶液を滴下し、85℃に昇温後同温度で2時間熟成した。次いで130℃に昇温し、同温度で0.007〜0.026MPaの減圧下に3時間かけてトルエンを除去して、樹脂(f−1)を得た。(f−1)の融点は60℃、Mnは8,000であった。
【0134】
<製造例5>[有機微粒子(F−1)の非水性分散液の調製]
ノルマルヘキサン700重量部及び樹脂(f−1)300重量部を、ビーズミル「ダイノーミルマルチラボ」[(株)シンマルエンタープライゼス製]に投入し、粒径0.3mmのジルコニアビーズを用いて粉砕を行い、乳白色の有機微粒子(F−1)の非水性分散液を得た。(F−1)の「LA−920」で測定した体積平均粒径は0.4μmであった。
【0135】
<製造例6>[着色剤分散液(1)の合成]
顔料分散剤「DISPERBYK106」[酸価132、アミン価74である高分子化合物の塩。分子量1,200及び460にピークを有する:ビックケミー・ジャパン(株)製]12重量部をアセトン400重量部に溶解した溶液及びシアニンブルー88.5重量部を、ビーズミル「ダイノーミルマルチラボ」[(株)シンマルエンタープライゼス社製]に投入し、粒径0.3mmのジルコニアビーズを用いて粉砕を行い、着色剤分散液(1)を得た。
【0136】
<実施例1>
図1の実験装置において、まずバルブV1、V2を閉じ、ボンベB2、ポンプP4から粒子回収槽T4に二酸化炭素(純度99.99体積%)を導入し、14MPa、40℃に調整した。また樹脂溶液タンクT1に樹脂溶液(L0−1)とクロミック分子(A1−1)「アゾベンゼン」[東京化成工業(株)製]を混合したもの、微粒子分散液タンクT2に有機微粒子(F−1)の非水性分散液を投入した。次いでボンベB1、ポンプP3から二酸化炭素を分散槽T3に導入し、9MPa、40℃に調整し、更にタンクT2、ポンプP2から有機微粒子(F−1)の非水性分散液を導入した。次いで分散槽T3の内部を2,000rpmで撹拌しながら、タンクT1、ポンプP1から樹脂溶液(L0−1)とクロミック分子(A1−1)の混合液を分散槽T3内に導入した。導入後のT3内部の圧力は14MPaであった。
分散槽T3へ投入した各成分の重量比は以下の通りである。
樹脂溶液(L0−1) 270重量部
クロミック分子(A1−1) 0.4重量部
有機微粒子(F−1)の非水性分散液 45重量部
二酸化炭素 550重量部
なお、導入した二酸化炭素の重量部は、二酸化炭素の温度(40℃)、及び圧力(15MPa)から二酸化炭素の密度を下記文献2に記載の状態式から算出し、これに分散槽T3の体積を乗じることにより算出した。
文献2:Journal of Physical and Chemical Refarence data、vol.25、P.1509〜1596
【0137】
T3内の混合液を1分間撹拌し分散体(X−1)を得た。次いでバルブV1を開き、P3からT4内に二酸化炭素を導入した後、分散体(X−1)をT4内に導入し、この間圧力が一定に保たれるように、V2の開度を調節した。この操作を30秒間行い、V1を閉めた。この操作によりT4内に導入された樹脂溶液(L0−1)から溶剤(C−1)を除去した。更にT4を60℃に昇温し、同温度で15分間保持した。この操作により、有機微粒子(F−1)を、樹脂溶液(L0−1)とクロミック分子(A1−1)から形成された樹脂粒子(H−1)の表面に固着させ、樹脂粒子(I’−1)を生成した。次いで圧力ボンベB2、ポンプP4から粒子回収槽T4に二酸化炭素を導入しつつ圧力調整バルブV2の調整により圧力を14MPaに保持することにより、溶剤(C−1)を含む二酸化炭素を溶剤トラップ槽T5に排出すると共に、樹脂粒子(I−1)をフィルターF1に捕捉した。圧力ボンベB2、ポンプP4から粒子回収槽T4に二酸化炭素を導入する操作は、上記の分散槽T3に導入した二酸化炭素重量の5倍量を粒子回収槽T4に導入した時点で二酸化炭素の導入を停止した。この停止の時点で、溶剤(C−1)を含む二酸化炭素を、溶剤を含まない二酸化炭素で置換すると共に樹脂粒子(I’−1)をフィルターF1に捕捉する操作は完了した。更に、圧力調整バルブV2を少しずつ開き、粒子回収槽T4内を大気圧まで減圧し、樹脂粒子(H−1)の表面に有機微粒子(F−1)が固着された樹脂粒子(I−1)を得た。(I−1)の「マルチサイザーIII」で測定した体積平均粒径は5.9μmであった。
【0138】
<比較例1>
実施例1において、クロミック分子(A1−1)0.4重量部を、着色剤分散液(1)5重量部に変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子(H’−1)の表面に有機微粒子(F−1)が固着された、比較の樹脂粒子(RI−1)を得た。(RI−1)の「マルチサイザーIII」で測定した体積平均粒径は5.0μmであった。
分散槽T3へ投入した各成分の重量比は以下の通りである。
樹脂溶液(L0−1) 270重量部
着色剤分散液(1) 5重量部
有機微粒子(F−1)の非水性分散液 45重量部
二酸化炭素 550重量部
【0139】
樹脂粒子(I−1)、(RI−1)の粒度分布(Dv/Dn)を以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
<樹脂粒子(I−1)、(RI−1)の粒度分布の測定方法>
樹脂粒子(I−1)、(RI−1)それぞれ5mgを、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(濃度:0.1重量%)10gに分散して、コールターカウンター「マルチサイザーIII」(ベックマン・コールター社製)で測定した。
【0140】
<透明性の評価>
樹脂粒子(I−1)、(RI−1)それぞれを厚さ2mmの試験片に成型し、ヘイズ値を測定した。ヘイズ値が小さいほど透明性が高いことを表す。
【0141】
【表1】

【0142】
表1から明らかなように、本発明の製造方法で得られた樹脂粒子(I−1)は、比較例1の樹脂粒子(I’−1)よりも粒度分布が狭く、透明性が高い。
【符号の説明】
【0143】
T1:樹脂溶液タンク
T2:溶液タンク
T3:分散槽(最高使用圧力:20MPa、最高使用温度:200℃、撹拌機つき)
T4:粒子回収槽(最高使用圧力:20MPa、最高使用温度:100℃)
T5:溶剤トラップ
F1:セラミックフィルター(メッシュ:0.5μm)
B1、B2:二酸化炭素ボンベ
P1、P2:溶液ポンプ
P3、P4:二酸化炭素ポンプ
V1:バルブ
V2:圧力調整バルブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(G)とクロミック分子(A)が溶剤(C)に溶解又は分散された溶剤液(L)と、有機微粒子(F)が分散媒体(B)に分散された分散液とを混合し、(B)中に(L)を分散させることにより、樹脂(G)、クロミック分子(A)及び溶剤(C)を含有する樹脂粒子(H)の表面に有機微粒子(F)が固着された樹脂粒子(I’)を形成させ、次いで分散媒体(B)及び溶剤(C)を除去する工程を含む樹脂粒子(I)の製造方法。
【請求項2】
分散媒体(B)が、液体状態又は超臨界状態の二酸化炭素(X)である請求項1記載の樹脂粒子(I)の製造方法。
【請求項3】
分散媒体(B)が、非水性有機溶剤(N)である請求項1記載の樹脂粒子(I)の製造方法。
【請求項4】
分散媒体(B)が、水性媒体(Z)である請求項1記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法で得られた樹脂粒子(I)。
【請求項6】
請求項5記載の樹脂粒子(I)を含有してなる電子写真用トナー。


【図1】
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【公開番号】特開2013−87166(P2013−87166A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227525(P2011−227525)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】