説明

樹脂粒子の製造方法

【課題】 高精度に原料粒子の表面を球状化処理する、容易かつ安価なトナー粒子等の樹脂粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】 本願発明に係る樹脂粒子の製造方法は、対面する第1及び第2のうち第1処理用面1を、第2処理用面2に対し相対的に回転させて、せん断力を得、加工を施す。原料粒子の流路は気密にする。第2処理用面2を、第1処理用面1へ近接離反自在に対面させると共に、第1処理用面1へ近接するように付勢する。原料粒子の流路へ、エアーと共に原料粒子を噴射し、両処理用面1,2を離反させる方向に作用する当該噴射の圧力及び処理用面の回転にて生じる遠心力と、両処理用面1,2を近接させる方向に作用する上記付勢力との均衡の上に、当該隙間に流体及び原料粒子を通過させて、原料粒子の表面処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、樹脂粒子の製造方法に関する。詳しくは、粉砕後のトナー等の樹脂原料粒子の、形状制御、複合化、表面処理、造粒などの処理を行ってトナー等の樹脂原料粒子の粉体を製造する、電子写真法、静電記録法、静電印刷法、またはトナージェット方式記録法の如き画像形成方法に用いられるトナーの粒子の製造方法、或いはトナー以外のポリエステル粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平9−85741号公報
【特許文献2】特開2000−52342号公報
【0003】
原材料に粉砕処理、造粒処理などを施して製造される処理粉体は、通常、種々の形状のものが得られる。一般に、処理品(製品)として処理粉体に要求される形状はその用途に応じて異なり、種々の粉体処理装置が考案されている。この粉体処理装置を用いて工業的に粉体処理を行っている代表的な産業は、複写機及びプリンター業界であり、現像剤(トナー)を製造するため、高度な粉体処理技術を有している。
複写機及びプリンターの現像剤(トナー)の製造方法は、一般的に懸濁重合法、乳化凝集法、懸濁造粒法等のケミカル製法と粉砕法の2つに大別される。
【0004】
例えばケミカル製法の代表例である懸濁重合法では、モノマーに着色剤を分散させてモノマー混合物を得る。その後、このモノマー混合物に重合開始剤、さらに必要に応じて架橋剤、荷電制御剤、その他添加剤を均一に溶解又は分散してモノマー組成物とする。更にこのモノマー組成物を分散安定剤又は界面活性剤を含有する水系媒体中に適当な高せん断撹拝機を用いて分散し、同時にモノマーに重合反応を行わせ、所望粒径のトナー粒子を得る。このトナー粒子に流動性向上剤(例えばシリカ等)を外添してトナーを製造している。
この方法は優れたトナー粒子の製造方法であるが、プラント設備が大掛かりになる故に初期の設備投資額が大きくなる。
また、エマルジョンの形成し易さ、重合阻害性等を考慮して原材料を選択する必要があるため、使用できる原材料が限定される。
【0005】
一方、粉砕法は製法が比較的容易であることが知られている。この製法は、まず、結着樹脂、着色剤等を所定量混合後、溶融混練、冷却し、冷却固化した混練物を粉砕する。次に粉砕して得られた粉砕物を分級して所定の粒度分布を有するトナー粒子を得る。この後は懸濁重合法と同様に、流動性向上剤(例えばシリカ等)をトナー粒子に外添してトナーを製造している。
【0006】
近年、複写機及びプリンターには高画質化、省スペース化及び環境対応等が要求されている。この要求に対してトナーは、現像時の高い転写効率が不可欠である。転写効率が低いと画質上、中抜けと呼ばれる現象が発生する。中抜けとは、例えば文字画像を複写機及びプリンターにて紙面へ出力した場合、紙面文字部分にトナーが載らず(転写されず)、不鮮明(低画質)な文字になることを言う。また、転写効率が低いと転写されない残トナーのために複写機及びプリンター内に大容量の廃トナー容器が必要となり、機器容積が大きくなる。更に廃トナーはリサイクルが困難であるために、廃棄物が増大して環境負荷を重くする。
逆に転写効率が高いと廃トナー容器レス若しくは小容量の容器で足りるため、小さな設計が可能となって省スペース化が実現する。また当然のことながら廃トナー自体も皆無となるために環境負荷を低減できる。
【0007】
一般に高い転写効率を得るためには、トナー粒子形状が球形であることが有利である。それはトナー粒子が球形であると、帯電性が均一になるためと考えられている。前記したケミカル製法は、その製法上、トナー粒子の球形化が容易に行える。よって近年、多くのメーカーがこの方法による製造装置の開発、製法の検討を開始している。
【0008】
その一方で、製造装置が安価であることと、原材料の選択性が広いことに着目して粉砕法トナー粒子の球形化技術も検討されている。例えば粉砕方法を従来のジェットミルから機械式粉砕法に変更してトナー粒子を球形化する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。この方法はある程度の球形化は得られるが、高転写が可能な球形トナー粒子を得ることはできない。
【0009】
この不十分な球形化を補うために熱風によるトナー粒子の球形化が提案されている(例えば特許文献2参照)。この方法は前記したケミカル製法に近似した球形化が得られる。しかしながら、一般的にトナー粒子には各種メディア(例えば紙面)への定着性を保持するため、ワックスが含有されており、この熱風によって含有ワックスが溶融してしまう。この溶融したワックスはトナー粒子表面に析出し、画像を現像する際、現像部材を汚染して不具合を起こすことが多い。
【0010】
これに対して熱風を用いることなく、トナー粒子の角取を行う表面処理と、角取によって発生した微粉除去を同時に可能とした表面改質装置が提案されている。しかしながらこの装置はバッチ連続装置であるために、大量のトナー粒子処理には不向きである。また処理後のトナー粒子排出性に問題があるため、直行率が極端に悪い。更に、高球形化を狙って運転した場合には微粉除去効率が落ちて製品に微粉が混入する。製品に微粉が混入すると画像上はカブリと呼ばれる不具合が生じる。カブリとは例えば文字を複写機及びプリンターにて紙面へ出力した場合、微粉が目的の文字の周りに飛び散る現象を指す。この飛び散りは、トナー微粉の帯電性が通常粒径の帯電性とは異なるために制御が困難になるのことが原因で、鮮明な文字出力の妨げとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は、上記の課題を解消する樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とする。
即ち、本願発明は、トナー等の樹脂粒子の品質を維持しながら、高精度に球状化の処理を行うことが可能なトナー等の樹脂の粒子の製造方法を提供を図る。また、連続的な処理にて、効率良く粉体原料の表面を改質することを可能とした上で、高精度な樹脂粒子の製造方法の提供を図る。
更に、本願発明は、複雑な製造工程を必要とせず、容易かつ安価な製造方法で高精度にトナー等の樹脂粒子を球形化する製造方法の提供を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者は、鋭意検討をした結果、微小の隙間に連続かつ瞬間的に樹脂粒子を通過させ、樹脂粒子に強力なせん断力を加えることにより、効果的に樹脂粒子の球形化が実現することを見出したものであり、本願発明は、メカニカルシールに用いられている原理を利用するという、2つの処理用面間の間隔を機械的に一定に保つ方式とは全く異なる発想により、第1処理用面と第2処理処理用面の間隔を、所定の微小間隔に設定するようにした樹脂粒子の製造方法である。
即ち、本願第1の発明は、既に粉砕された樹脂原料粒子を、球状に加工する樹脂粒子の製造方法について、次の手段を採るものである。
この樹脂粒子の製造方法は、樹脂原料粒子の流路の少なくとも一部を構成する、対面する第1及び第2の2つの処理用面1,2を用い、第1及び第2の少なくとも何れか一方の処理用面を、第1及び第2の何れか他方の処理用面に対し相対的に回転させることにより、せん断力を発生させて加工を施すものであり、樹脂原料粒子の流路を、気密にする。そして、第1及び第2の少なくとも何れか一方の処理用面を、第1及び第2の何れか他方の処理用面へ近接離反自在に対面させると共に、当該他方の処理用面へ近接するように付勢する。樹脂原料粒子の流路へ、ガス等の流体と共に樹脂原料粒子を噴射し、第1及び第2の両処理用面1,2を離反させる方向に作用する当該噴射の圧力及び処理用面の回転にて生じる遠心力と、両処理用面1,2を近接させる方向に作用する上記付勢力との均衡の上に、当該隙間に流体及び樹脂原料粒子を通過させて、樹脂原料粒子の表面処理を行う。
本願発明における「表面処理」とは、粒子表面の凸凹を円滑にすることであり、粒子の外観形状を球形に近づけることを示す。
【0013】
本願第2の発明は、上記本願第1の発明にあって、次の手段を採る樹脂粒子の製造方法を提供する。
即ち、第1及び第2の処理用面1,2の少なくとも一方は、少なくとも第1及び第2処理用面の他方に向けて出没自在な処理リングの、端面として形成されている。そして、上記処理リングの中心から、第1及び第2の両処理用面1,2間に、ガス等の流体と共に加工する樹脂原料粒子を噴射するものであり、処理リングの処理用面樹となる端面と処理リングの内周面との間に受圧面を設けて、当該受圧面にて受けた、流体及び樹脂原料粒子の流圧を、処理リングの処理用面を他方の処理用から離反させる方向に作用させる。
【0014】
本願第3の発明は、上記本願第1の発明にあって、次の手段を採る樹脂粒子の製造方法を提供する。
即ち、この樹脂粒子の製造方法は、少なくとも結着樹脂及び着色剤を溶融混練して得た樹脂原料粒子の表面処理を行うことにより球状化するものであって、一端面を上記の第1処理用面1とする第1処理リング10と、一端面を上記の第2処理用面2とする第2処理リング20と、第1処理リング10を第2処理リング20に対して相対的に回転させる転駆動機構とを備えた粉体処理装置71を用い、上記のガス等の流体を、高圧エアーとするものである。そして、この樹脂粒子の製造方法は、第1処理リング10と第2処理リング20の間に上記高圧エアーと共に樹脂原料粒子を導入することにより、第2処理リング20を第1処理リング10から離間させ、回転駆動機構により付与される第1処理リング10の回転により樹脂原料粒子の表面を処理することを特徴とする。
【0015】
本願第4の発明は、上記本願第3の発明にあって、上記の粉体処理装置には、粉体原料供給ノズル60と、当該粉体原料供給ノズル60に設けられた樹脂原料粒子を供給する樹脂導入口62と、当該粉体原料供給ノズルの軸芯部に設けられた高圧エアー導入ノズル61とを備えたものを採用し、エアーの圧力により、第1処理リング10から第2処理リング20を離間させて隙間をつくり、当該隙間に樹脂原料粒子を導入する樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0016】
本願第5の発明は、上記本願第2〜4の何れかの発明にあって、処理用リングの少なくとも1つに、微振動やアライメントを緩衝する、緩衝機構を設けたことを特徴とする樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0017】
本願第6の発明は、上記本願第3〜5の何れかの発明にあって、粉体処理装置に、第1処理用面1と第2処理用面2との間の最大間隔を規定し、当該最大間隔より大きい両処理要面1,2の離反を抑止する、離反抑止部を備えたものを採用することを特徴とする樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0018】
本願第7の発明は、上記本願第3〜6の何れかの発明にあって、粉体処理装置に、第1処理用面1と第2処理用面2との間の最小間隔を規定し、当該最小間隔より小さい両処理用面1,2の近接を抑制する、近接抑止部を備えたものを採用することを特徴する樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0019】
本願第8の発明では、上記本願第1〜7の何れかの発明にあって、第1処理用面1と第2処理用面2の一方或いは双方の、少なくとも一部が、鏡面加工されていることを特徴とする樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0020】
本願第9の発明では、上記本願第1〜8の何れかの発明にあって、回転する処理用面の最外周辺部周速が10m/s〜100m/sであることを特徴とする樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0021】
本願第10の発明では、上記本願第1〜9の何れかの発明にあって、第1処理用面及び第2処理用面の一方或いは双方に、処理用面の中心から放射状に伸びる凹部を備えたものを採用することにより、上記少なくとも一方の処理用面の回転によって、第1及び第2の少なくとも一方の処理用面を第1及び第2他方の処理用面から、離間させることを特徴とする樹脂粒子の製造方法を提供する。
【0022】
本願第11の発明では、上本願第1〜10の何れかの発明であって、樹脂原料粒子の粒径Dが、
3μm≦D≦10μm
であることを特徴とする樹脂粒子の製造方法を提供する。
本願第12の発明では、上本願第1〜11の何れかの発明であって、上記第1及び第2処理用面間の間隔が、樹脂原料粒子の直径の1〜5倍であることを特徴とする樹脂粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本願発明第1〜12の発明により、効率良く粉体原料の表面を高精度に改質する(球状化する)樹脂粒子の製造方法を提供し得た。即ち、対面する両処理用面間の微小間隔内で大きなせん断力を粉体原料に付与することができ、その結果、従来得ることのできなかった精度の高い均質な表面処理を、実現することが可能になる。
また、熱の影響が少なく、微粉の含有量が少ない球形樹脂粒子が得られる粉体処理方法を提供し得た。更に、容易かつ安価な製法で、上記の通り、熱の影響が少なく、また微粉の少ない球形樹脂粒子を製造することができる。
詳しくは、本願発明に係る樹脂粒子の製造方法は、メカニカルシールに用いられている原理、即ち、第1及び第2の両処理用面を離反させる方向に作用する当該噴射の圧力及び処理用面の回転にて生じる遠心力と、両処理用面を近接させる方向に作用する上記付勢力との均衡させることにより、両処理用面間に流体膜を形成し、熱の影響による処理用面の変形に拘わらず、第1及び第2の処理用面の両面間を樹脂原料粒子の球状化に適した微小な間隔を確保することを可能とし、当該隙間に流体及び樹脂原料粒子を通過させることにより、樹脂にせん断力を与えて、高精度に球状化すること可能としたものである。
【0024】
とりわけ、処理リングの中心から、第1及び第2の両処理用面間に、ガス等の流体と共に加工する樹脂原料粒子を噴射することにより、噴射圧の調整によって、両処理用面間の間隔の調整を行うことができる。即ち、両処理用面間の間隔を調整するパラメータとして上記の噴射圧を利用することができる。
このような噴射圧の利用により、よりきめ細やかな両処理用面間の間隔の調整を行うことができ、所望の樹脂粒子の製造に対応する処理用面間の間隔を設定することができる。
また、両処理用面間に連続的に樹脂原料粒子を供給し、連続的に球状化の処理を施すものであるため、極めて高能率に処理を行うことができる。従って、本願発明は、従来のバッチ連続式表面処理装置とは異なり、粉体原料の排出性は良好であり、直行率は高い数値、即ちほぼ100%を維持できる。
尚、上記の直交率とは、投入された粉体中、装置内部に留まらずに、外部に排出されるものの比率(回収率)を指す。
【0025】
また、この樹脂粒子の製造方法は、瞬間的に粒子表面を処理することができ、上記の通り、熱の影響を最小限に抑えることができる。また、加工を施す樹脂原料粒子を、ガス等の流体と共に処理用面間に送るものであるため、粒子間の摩擦により発生する熱を流体の介在によって抑制することができ、この点においても熱の影響を効果的に回避し得たものである。
【0026】
本願第2の発明では、第1及び第2の何れか一方の処理用面を、第1及び第2の何れかの処理用面へ離反させる有効な手段の一つとして、具体的な方法を提供したものである。
即ち、本願第2の発明は、上記のメカニカルシールに用いられている原理を利用して、処理する樹脂原料粒子を含むエアーを介して、処理リングを、一方の処理用面である当該処理リングの端面が対面する他方の処理用面へ、押圧するように、処理リングに受圧面を設定するものである。
特に、処理リングの処理用面となる端面と処理リングの内周面との間に受圧面を設けて、流体及び粉体の流圧を、当該受圧面にて受けることにより、より確実に、処理リングの処理用面を他方の処理用から離反させる方向に作用させることができる。従って、当初に受圧面の大きさを選択することにより、離反方向へ作用する力を、より適したものに設定しておくことができる。
このように、コンプレッサーといった周知の加圧手段を用いて加圧する(高圧にする)ことが可能なエアーを、処理用面間の間隔を調整するための力の媒体として利用し、一定の圧力を保持した高圧エアーに、粉体原料を分散させた後、高圧エアーの圧力を利用して、端面が一方の処理用面をなしている処理リングを、他方の処理用面から離反させることにより、第1及び第2の両処理用面間に微小かつ一定な隙間を形成することができる。
【0027】
本願第3の発明では、第1及び第2の処理用部の夫々が、処理リングを備え、粉体処理装置に設けられた回転駆動機構にて、第1処理リングを第2処理リングに対し相対的に回転させることにより、両処理リング間の微小間隔内で大きなせん断力を粉体原料へ付与することができる。その結果、従来得ることのできなかった精度の高い均質な表面処理を、実現することが可能になる。
また、熱風を使用する樹脂粒子の球形化と異なり、熱劣化の度合いも最小限に抑えることも可能である。
【0028】
本願第4の発明では、粉体原料供給ノズルの軸芯部に高圧エアー導入ノズルを設けて、当該ノズルの周りからエジェクター効果(流体を噴流として噴出させることにより、他の流体を誘引して送出する、霧吹きの原理)により粉体原料を粉体処理装置に導入するものであるため、粉体原料の偏りがなく、高分散な状態で粉体原料を粉体処理装置装置内に導入できる。
【0029】
本願第5の発明では、第1処理リング及び第2処理リングの少なくとも一方の微振動やアライメントを緩衝する緩衝機構が備えられることにより、緩芯振れなどのアライメントを吸収し、接触による磨耗などを原因とするトラブルの発生の危険性を低減した。
【0030】
本願第6の発明では、離反抑止部にて、第1処理リングと第2処理リングとの間の最大間隔を規定し、粉体処理装置の稼動時に、当該最大間隔より大きい両処理リングの離反を抑止することにより、第1処理リングと第2処理リングとの間の間隙が必要以上に広がることを防止し、均一な表面処理を確実に行うことを可能とした。
【0031】
本願第7の発明では、近接抑止部にて、粉体処理装置の稼動時に、第1処理リングと第2処理リングとの間の最小間隔を規定し、当該最小間隔より小さい両処理リングの近接を抑制することによって、第1処理用面と第2処理用面との間の隙間が必要以上に狭まることを防止し、均一な表面処理と粉体の過処理を防止することを可能とした。
【0032】
本願第8の発明では、第1処理リングと第2処理リングとが対向する面の一方或いは双方の少なくとも一部に、鏡面加工を施しておくことにより、第1処理リングと第2処理リングにおける上記表面処理をより高精度に行うことを実現し得た。
【0033】
本願第9の発明では、第2処理リングの最外周辺部の周速(秒速)を10m/s〜100m/sとすることにより、樹脂の球状化に適したせん断力を樹脂原料粒子に与えることを可能とした。
即ち、上記の周速が、10m/sより小さいと必要なせん断力が得られにくく、また100m/sより大きいと過剰な遠心力が生じて粉体過処理の問題が生じやすいが、上記の周速の設定により、本願第9の発明では、このような問題を回避した。
【0034】
本願第10の発明では、第1及び第2の処理用面の少なくとも何れか一方に、その中心からに放射状に伸びる凹部を備えたものを採用し、一方の処理用面の回転によって他方の処理用面を当該一方の処理用面から離間させることにより、回転時に、回転にて生じた遠心力により、高圧エアーが凹部を円滑に流動し、当該高圧エアーの流動により動圧が発生し、両処理用面に離反力が作用して非接触で回転しながら確実により良好な流体膜を形成することが可能となる。
【0035】
更に、上記本願第11の発明では、樹脂原料粒子に、粒径を上記の範囲とするものを採用することにより、加工により、適切な樹脂粒子を得ることを可能とした。即ち、上記の粒径について、3μmより細かいと、加工後の樹脂粒子は、複写機及びプリンター内での制御が困難であり、また、上記の粒径が、10μmより粗いと、加工語の樹脂粒子は、高精細な画像形成が実現できない。このため、本願第11の発明において、樹脂原料粒子の粒径を上記の範囲とすることにより、加工後樹脂粒子として適切なものを得ることができる。
本願第12の発明では、原料粒子に対して、第1及び第2の処理用面間の間隔を上記の通り(原料粒子の径の5倍以下に)設定することによって、原料粒子を的確に処理用面に接触させることができ、確実に処理が行える。また、両処理用面間の間隔を上記の通り(原料粒子の径の1倍以上に)設定することにより、粒子を詰まらせずに、処理後の粒子を円滑に排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照しつつ、本願発明の好ましい実施の形態について、説明する。ここでは、トナー粒子の製造において、本願発明を実施した場合を例示して説明する。図1〜図6へ本願発明の一実施の形態を示す。図1は、本願発明に係る樹脂粒子の製造方法を実施するに適したシステムの概略を示す説明図である。図2は、図1に示すシステムの要部である粉体処理装置の略縦断面図である。図3は、図2の粉体処理装置の要部略縦断面図である。図4は、図2に示す粉体処理装置の第1処理リングを示す平面図である。図5は、図2のA−A略端面図である。図6は、トナー製造フローの好ましい実施の形態を示す説明図である。
【0037】
このトナー製造方法は、少なくとも結着樹脂及び着色剤を溶解混練して得たトナー原料に対して、微粉砕工程と、粗粉分級工程と、微粉分級工程と、形状制御工程と、外添混合工程とを、順次施すものである。
このトナー製造方法は、図6に示すシステムを用いて、実施することができる。このシステムは、溶融混練して得られたトナー原料を粉砕する微粉砕機201、微粉砕機201により粉砕された原料から所望の粒径以下の粉体のみを取り出す粗粉分級機202、この取り出された粉体から不要な微粉を取り除き、トナー原料粒子を得る微粉分級機203、トナー原料粒子の形状を制御してトナー粒子を得る形状制御装置204、及びトナー粒子に添加剤を添加、混合する外添混合機205から構成されている。尚、微粉砕機201と粗粉分級機202とは別々に構成されていても、1つの装置として構成されていてもよい。
【0038】
このようなシステムの採用により、微粉砕工程において、上記の微粉砕機201によって溶融混練して得られた原料を粉砕することができる。そして、粗粉分級工程において、上記の粗粉分級機202を用いて、微粉砕機201により粉砕された原料から所望の粒径の粉体のみを取り出すことができる。微粉分級工程において、上記の微粉分級機203を用い、粗粉分級工程で取り出された粉体から不要な微粉を取り除いてトナー原料粒子を得ることができる。形状制御工程において、上記の形状制御装置204を用いて、トナー原料粒子の形状を制御してトナー粒子を得ることができる。微粉砕機201により粉砕された原料のうち、所望の粒径より大きな粉体は、再び微粉砕機201に戻され(粗粒のリターン)粉砕される。
従って、このシステムを利用することにより、効率良く粉体処理を行うことが可能であり、従来公知の装置と本願発明の粉体処理システムとを組み合わせたトナー製造フローとして実施することができる。
【0039】
上記の微粉砕機201として、IDS型及びPJM型ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、カウンタージェットミル(ホソカワミクロン株式会社製)、ミクロンジェットT型(ホソカワミクロン株式会社製)、クロスジェットミル(株式会社栗本繊工所製)、コンダックス・ジェットミル(三井三池化工機株式会社製)、その他のジェットミルおよび気流式粉砕機、ターボミル(ターボ工業株式会社製)、クリプロトン(川崎重工業株式会社製)、スーパーロータ(日清エンジニアリング株式会社製)、ファインミル(日本ニューマチック工業株式会社製)、クラッシファイヤーミル(三井三池化工機株式会社製)その他の機械式粉砕機を採用することができる。
【0040】
上記の粗粉分級機202としては、ターボプレックス(ホソカワミクロン株式会社製)、ターボクラシフアイア(日清エンジニアリング株式会社製)ディスバージョンセパレータ(日本ニューマチック工業株式会社製)、シャープカットセパレータ(株式会社栗本鐵工所製)、SFシャープカットセパレータ((株式会社栗本鐵工所製)、エルボージェット(日鉄鉱業株式会社製)その他の気流式分級機を採用することができる。
【0041】
上記の微粉分級機203としては、エルボージェット(日鉄鉱業株式会社製)、ターボプレックス(ホソカワミクロン株式会社製)、TSPセパレ−タ(ホソカワミクロン株式会社製)、シャープカットセパレ−タ(株式会社栗本鐵工所製)、SFシャープカットセパレータ(株式会社栗本鐵工所製)を採用することができる。
【0042】
上記の外添混合機205としては、ヘンシェルミキサー(三井三池化工機株式会社)製)、ハイブリダイゼーションシステム(株式会社奈良機械製作所製)、スーパーミキサー(株時会社カワタ製)、レーディゲミキサー(独国レーディゲ社製)、その他のスクリューまたは攪拌羽根を有する混合機、及び空気・ガスによる流動混合式の混合機を採用することができる。
【0043】
そして、この形状制御工程で用いられる形状制御装置204として、図1に示すトナー粒子製造システムを採用することができる。
このトナー粒子製造システムについて具体的に説明すると、このトナー粒子製造システムは、図1へ示す通り、オートフィーダー70と、粉体処理装置71と、サイクロン72と、バグフィルター73と、吸引ブロアー74とを備える。
【0044】
上記のオートフィーダー70は、粉体処理装置71にトナー原料粒子63を供給するものである。このオートフィーダー70から供給されたトナー原料粒子63は、高圧エアー共に、粉体処理装置71に導入されトナー原料粒子の表面処理即ち、球状化の処理がなされる。トナー原料粒子63は、粉体処理装置71にて、表面を改質されて球形化トナー粒子となって粉体処理装置71から排出される。排出されたトナー粒子は、吸引ブロアー74の吸引にて、不要な(所望の粒子より小さな粒子)を、サイクロン72からバグフィルター73側に集塵する。一方、適正な処理済みのトナー粒子は、サイクロン72にて捕集される。このようにサイクロン72にて捕集されたトナー粒子が製品として、サイクロン72から排出される。
【0045】
本願発明に係るトナー原料粒子の製造方法は、上記の形状制御工程中の粉体処理装置7を用いて行われる処理を発明の要旨とするものである。
即ち、本願発明に係るトナー粒子の製造方法は、特に、上記の粉体処理装置7を用いて実施することができる。
この粉体処理装置71を用いたトナー粒子の製造へ方法について、以下詳しく説明する。
【0046】
先ず、図2に示すように、この粉体処理装置71は、第1ホルダ11と、第1ホルダ11の上方に配置された第2ホルダ21と、第2ホルダ21と共に第1ホルダ11を覆うケース3と、粉体原料供給ノズル60と、高圧エアー導入ノズル61と、接面圧付与機構4とを備える。
この実施の形態において、原料粉体導入口62(以下トナー導入口62と呼ぶ。)が粉体処理装置71の上部に設けられている。またこの粉体処理装置71には、トナー導入口62と別に流体導入口64(以下エアー導入口64と呼ぶ。)が設けられている。前記の導入オートフィダー70から供給されるトナー原料粒子63は、トナー導入口62から、粉体処理装置71の内部に導入される。また、粉体処理装置71の内部において、ケース3の内部空間より上方に、上記の粉体供給ノズル60が設けられている。上記トナー導入口62は、粉体処理装置7内において、当該粉体供給ノズル60に連絡している。また、粉体原料供給ノズル60の軸芯部(内部中心部)に上記の高圧エアー導入ノズル61が設けられている。図5へ示す通り、上記のエアー導入口64は、当該高圧エアー導入ノズル61に連絡して当該ノズル61に高圧エアーを供給するものである。即ち、エアー導入口64は、コンプレッサーといった周知のガスの加圧手段に接続されており(図示せす。)、エアーを加圧して噴射することができる。
【0047】
この実施の形態では、図2へ示す通り、粉体処理装置71内部において、ケース3の内部空間30より上部に当該内部空間30へ通じる気密な通路31が設けられている。即ち、当該通路31の下端が、ケース3の内部空間30に通じている。そして、当該通路31の上端部に、上記粉体供給ノズル60が設けられている。トナー導入口62から供給されるトナー原料粒子は、高圧エアー導入ノズル61から下方のケース3内部空間30に向けて噴射されるガスのエジェクター効果により、当該ガスと共にケース3の内部空間30に向けて噴射される。このガスについては、空気を採用するのが適当である。但し、当該ガスとして、アルゴンや他の不活性ガスを空気に代えて用いることができる。
また、粉体処理装置71内において、上記粉体供給ノズル60からケース3の内部空間30に至るまでの、トナー原料粒子と高圧エアーの流路は、気密に形成されている。
【0048】
上記の第1ホルダ11には、第1処理リング10と、回転軸50が設けられている。この第1処理リング10の一端面が、第1処理用面1を構成する。
第1処理リング10(メイティングリング)は、図4へ示す通り金属製の環状体であり、上記の第1処理用面1となる端面には、鏡面加工されている(図4において網掛けで示す部分が当該鏡面加工部位である)。回転軸50は、第1ホルダ11の中心へ、ボルトといった周知の固定具51にて固定されており、その端部が電動機といった周知の回転駆動力を供給する回転駆動装置5(回転駆動機構)と接続されている。回転軸50は、回転駆動装置5の駆動力を第1ホルダ11に伝えることにより、当該第1ホルダ11を回転させる。第1処理リング10は、回転軸50と同心に第1ホルダ11上部に取付けられ、回転軸50の回転にて、第1ホルダ11と一体となって回転する。
【0049】
第1処理用面1は、第1ホルダ11から露出して、第2ホルダ21側に対向している。この第1処理用面1は、研磨やラッピングやポリッシングによる鏡面加工を施すのが好ましい。第1処理リング10の材質は、セラミックや焼結金属、耐磨耗銅、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材のライニングやコーティング、メッキの如き施工したものを使用するのが好ましい。特に回転するため、軽量な素材にて第1処理リング10を形成するのが好ましい。ケース3は、排出部32を備えた有底の容器であり、その内部空間30に、上記の第1ホルダ11を収容している。
ここで、第1処理用面1についてより詳しく説明すると、図4へ示す通り、第1処理リング10の第2処理リング20を望む端面(上面)には、第1処理リング10の中心(リングの中空部分12)から、放射状に第1処理リング10の外周面14側に向けて伸びる複数の凹部13…13が形成されている。第1リング10の上記上面において、この凹部13…13以外の部分(図4において網掛けで示す部分)が、上記の鏡面加工が施された第1処理用面1である。図4へ示す通り、この凹部13…13の夫々は、リングの中空部分12に連絡しているが、上記の第1処理リング10の外周面14には達しない。
より詳しくは、上記の凹部13…13の夫々は、第1処理リング10の上面において、上記の中空部分12側から外周面14側に向けて漸次深さが浅くなるように形成されている。
また、当該凹部13の太さ(第1処理リング10を平面視した際の凹部13の幅)も、第1処理リング10の上面において、上記の中空部分12から外周面14側に向けて漸次狭くなるように形成されている。
更に、凹部13の内部は、回転先(回転方向r)を望む掬い面15を備える。上記の通り凹部13を形成することにより、粉体処理装置71の作動当初、第1処理用面1に第2処理用面2が当接した状態において、高圧エアーの噴射圧Q(図2)を受けて、トナー原料粒子63を含む当該高圧エアーは、第1処理リング10の中空部分から、凹部13…13内に入りこむ。このような当該高圧エアーが凹部13…13内を進むにつれて、凹部13…13内は狭く浅く狭くなるので、入り込みの勢いが、第2処理用面2を押圧する即ち、第2処理リング20を上方にこじ開けようとする力に転換される。また、上記の通り掬い面15…15を備えることによって、第1処理リング1の回転による遠心力と共に、凹部13…13内の、高圧エアーが掬い面15…15から押圧され、上記の第2処理リング20をこじ開ける力を増加させる。
尚、上記の凹部13…13の形状については、図示したものに限定するものではなく、他の形状に変更可能である。
また、このような凹部13…13を設けずに実施することも可能である。
【0050】
第2ホルダ21には、第2処理リング20と、接面圧付与機構4とが設けられている。第2処理リング20(コンプレッションリング)は、金属製の環状体である。第2処理用リング20は、この実施の形態において第2ホルダ21に固定されている。この環状の第2処理リング20の一端面は、第2処理用面2を構成する。第2処理用面2である第2処理リング20の一端面(下面)には、鏡面加工が施されている。上記の第1処理用面1は当該第2処理用面2に対向する。また、第2処理リング20は、第2処理用面2の他、第2処理用面2の内側に位置し且つ当該第2処理用面2に隣接する受圧面23(以下、離反用調整面23と呼ぶ。)を有する。
図2及び図3へ示す通り、この離反用調整面23は、傾斜面として、即ち、環状の第2処理リング20の内周面と上記第2処理用面2との間の角を落とした、すり鉢状のテーパ面として形成されている。
【0051】
第2処理用面2に施す上記の鏡面加工は、第1処理用面1と同様の方法が採用される。また、第2処理リング20の素材についても、第1処理リング10と同様のものが採用される。また、上記の通り、離反用調整面23は、環状の第2処理リング20の内周面と隣接する。
【0052】
接面圧付与機構4は、第1処理用面1に対して第2処理用面2を、圧接又は近接した状態に押圧するものであり、高圧エアー導入ノズル61から生じる(エアー)圧力及び第1ホルダ11(第1処理リング10)の回転による遠心力により、両処理用面1,2間を離反させる力との均衡によって、薄い流体(エアー)膜を発生させる。言い換えれば、薄い流体(エアー)膜は両処理用面1,2の間隔を微小間隔に保っている。
【0053】
この実施の形態において、図3へ示す通り、接面圧付与機構4は、収容部41と、収容部41の奥(最深部)に設けられたスプリング受容部42と、スプリング43と、エアー導入部44とにて構成されている。
但し、接面圧付与機構4は、収容部41とスプリング受容部42とスプリング43によって構成される圧付与手段と、エアー導入部44との少なくとも、何れか一方を備えるものであればよい。
【0054】
上記の収容部41は、収容部41内の第2処理リング20の位置を深く或いは浅く(上下に)変位することができるように寸法設定されている。即ち、収容部41は、出没自在に第2処理リング20を収容している。スプリング43の一端は、スプリング受容部42の奥に当接し、スプリング43の他端は、収容部42内の第2処理リング20の前部(上部)と当接する。図2において、スプリング43は、一つしか描かれていないが、第2処理リング20の少なくとも周方向に沿って複数のスプリングを(環状に)配列し、当該複数のスプリングにて、第2の処理リング20の各部を押圧するのが好ましい。第2処理リング20の周方向に沿って配列するスプリング43の数を増すことによって、均等な押圧力を第2処理リング20に与えることができるからである。具体的には、第2ホルダ21について、上記のスプリング43は、数本から数十本(より好ましくは、4本乃至20本)取り付けられていることが好ましい。
【0055】
図2に示す通り、上記の通りエア導入部44から、加圧された空気の如き加圧ガスを収容部41内に導入することができる。このような空気の如き加圧ガスの導入により、収容部41と第2処理リング20との間を加圧室として、スプリング43と共に、空気圧を押圧力として第2処理リング20に与えることができる。従って、エアー導入部44から導入する空気圧を調整することにより、運転中においても第1処理用面1に対する第2処理用面2の接面圧力を調整することが可能である。また、空気圧を利用するエアー導入部の代わりに、油圧の如き他の流体圧を利用してもよい。
このように、上記のエアー導入部44から第2処理リング20の上面(第2処理用面2と反対側の端面)に向けて導入されるエアーは、離反力を発生させる前記の高圧エアー導入ノズル61から噴射されるエアーとは逆に、第2処理リング20(第2処理用面2)を第1処理リング10(第1処理用面1)へ付勢する方向に働く、背圧Pを供給するものである。
【0056】
接面庄付与機構4は、上記の押圧力(接面圧力)の一部を供給し調整する他、変位調整機構と、緩衝機構とを兼ねている。詳しくは、接面圧付与機構4は、変位調整機構として、始動時や運転中の軸方向への伸びや磨耗による軸方向変位にも、空気圧調整によって追従し、当初の押圧力を維持できる。また、接面圧付与機構4は、第2処理リング20の芯ぶれを許容して保持するフローティング機構を採用することによって、微振動や回転アライメントの緩衝機構としても機能するのである。
【0057】
具体的には、第2ホルダ21の収容部41は、第2リング20の軸方向が第2リング20の出没の方向に対して、ずれを生じることを許容する(出没する方向と直交する仮想面に対して第2処理用面2が傾いた状態を許容する)余裕を以って、第2リング20を受容する。但しこの傾きは、出没する方向と直交する仮想面に対して、第2処理用面2の傾きを1秒〜2度程度とするものである。また、当該仮想面上の全方向について、当該角度を以って傾くことを許容する。
更にまた、このような傾きを許容する、第2リング20の内周面と外周面との幅に対する、第2ホルダ21の内側と外側の両内周面との間隔の余裕を持った大きさ(第2リング20の内径よりも第2ホルダ20の中心部の径は小さく、且つ第2リング20の外径よりも第2ホルダ20の外周の径は大きい)が、上記の傾きを伴わない、第2処理リング20の中心軸の、第2ホルダ21の中心軸に対する平行なずれをも、許容するものともなっている。
このような第2リング20の内周面と外周面との幅に対する、第2ホルダ21の内側と外側の両内周面との間隔の余裕を持った大きさが、上記の緩衝機構として働く、フローティング機構を構成しているのである。
【0058】
また、接面圧付与機構4は、収容部41内における第2処理リング20の上部と、収容部41の最上部との間に余裕があっても、スプリング43が第1処理用面1と第2処理用面2との間の隙間の幅の上限を規定する。即ち、接面圧付与機構4は、第1処理用面1と第2処理用面2の規定を超える離反を抑止する離反抑止部として機能する。
また、第1処理用面1と第2処理用面2とが当接していなくても、第2処理リング20の突出を引き止めることにより、スプリング43が第1処理用面1と第2処理用面2との間の隙間の幅の下限を規定する。即ち、この実施の形態において、上記のスプリング43が、第1処理用面1と第2処理用面2の規定未満の近接を抑止する近接抑止部として機能する。
【0059】
以下、上記の粉体処理装置71を用いた、トナー粒子の製造方法について、更に詳細に説明する。
図1へ示す通り、トナー粒子製造システムにおいて、オートフィーダー71から供給されたトナー原料粒子63は、図2へ示す粉体処理装置71のトナー導入口62を介して粉体処理装置71に導入される。粉体処理装置71に導入されたトナー原料粒子63は、高圧エアー導入ノズル61から供給される高圧エアーによるエジェクター効果により、前述の通り、粉体原料供給ノズル60に導かれる。その後、トナー原料粒子63は、高圧エアー導入ノズル61から導入される高圧エアーにより高分散されて、両処理用面1,2間に導入される。
【0060】
一方、回転駆動装置5(回転駆動機構)によって、第1処理リング10が所定回転数を保って回転する。この時、主に高圧エアー導入ノズル61から受けた圧力により第2処理リングは上方に押し上げられる。これにより第1処理用面1は、第2処理用面2とは微小間隔を保った状態で相対的に回転することになる。
粉体処理装置71内に高圧エアーと共に導入されたトナー原料粒子63は、この微小間隔を保った第1処理用面1と第2処理用面2との間で、強力なせん断を受け、表面を改質されて球形化トナー粒子となって排出部32から排出される。
即ち、両処理用面1,2を離反させる方向に作用する高圧エアーの噴射の圧力及び第1処理用面の回転による遠心力と、第2処理用面2(第2処理リング20)を第1処理用面1(第1処理リング10)へ近接させる方向に作用する上記接面圧付与機構5の付勢力との均衡の上に、両処理用面1,2間に微小な隙間を確保しつつ、当該隙間に高圧エアー及びトナー原料粒子を通過させるのである。
その後、吸引ブロアー74とサイクロン72の作用により、処理済のトナー粒子は捕集される。
【0061】
上記粉体処理装置71内における処理について、より具体的に説明する。
前述の通り、高圧エアー噴射ノズル61により、コンプレッサーで得られた一定の圧力を保持した高圧エアーにトナー原料粒子63を分散させた後、当該高圧エアーの圧力を利用して、第1処理リング10及び第2処理リング20を離反させる。この結果、上記第1処理リング10と第2処理リング20との間に微小かつ一定な隙間を形成することができる。
上記において、高圧エアー噴射ノズル61により噴射する高圧エアーの噴射圧Qについては、
100kPa<Q<500kPa
とするのが好ましい。
また、第1処理リング10及び第2処理リング20夫々の、外径は50〜500mm、内径は30〜400mmとするのが好ましい。
そして、このような第1処理用リング10について、外周面14の回転速度を10m/s〜100m/sとするのが好ましい。
ここで、エアー導入部44から導入される付勢手段としてのエアーの圧力即ち、即ち背圧Pと両処理用面1,2間の間隙(微小間隔)について詳しく説明すると、粉体処理中(トナー原料粒子の表面処理中)の第1処理リング10と第2処理リング20との間隙を調整するために第2処理リング20に
10kPa<P<700kPa
の背圧Pを負荷することが好ましい。10kPaより小さいと粉体処理中、必要以上に間隙(両処理用面1,2間の間隔)が開いてしまい、装置から過剰にエアーが排出されるため、所定の粉体処理が行えず、所望のトナー粒子が得られない。また700kPaより大きいと発熱して装置内融着や粉体原料の品質に悪影響を及ぼしやすい。このように上記範囲内で背圧を負荷することにより、粉体処理度合いをより適正にできる。
特に、上記の背圧Pを50kPa<P<500kPaとするのが好ましい。
この場合、スプリング42…42全体の押圧力は、50〜200Nとするのが好ましい。
【0062】
また、本粉体処理装置は、第1処理リング10と第2処理リング20の一方或いは双方の温度を調整する、温度調整用のジャケットを備えていることが好ましい(図示せず)。また、このジャケット内には冷媒(好ましくは冷却水、更に好ましくはエチレングリコールの如き不凍液)を通しながらトナー原料粒子を表面処理することが好ましい。このような温度調整用のジャケットにより、第1処理リング10及び第2処理リング20の一方或いは双方を、表面処理を行う際、冷却することを可能とし、被処理粉体であるトナー原料粒子の品質悪化や装置内の粒子融着が防止できる。
また上記トナー原料粒子の粒径Dは
3μm≦D≦10μm
であることが好ましい。3μmより細かいと複写機及びプリンター内での制御が困難であり、10μmより粗いと高精細な画像形成が実現できないからである。
上記のトナー原料粒子の表面処理を行うのに適切な微小間隔としては、トナー原料粒子の直径の1〜5倍とするのが好ましく、従って、トナー粒子の径を4μmとした場合、4〜20μmとするのが好ましい。
【0063】
上記の実施の形態において、第1処理リング10は、第1ホルダ11から出没しないものとしたが、第2処理リング20と同様、ホルダから出没するものとして実施することも可能である。その場合、第1処理リング10についても、第2処理リング20と同様に、フローティング機構を採用するものとしても実施可能である。また、第1処理リング10と第2処理リング20の双方を出没させる他、第1処理リング10のみ出没させ、第2処理リング20は出没しないものとしても実施可能である。
また、第1処理リング10に代え或いは第1処理リング10と共に、第2処理リング2も回転するものとしても実施可能である。即ち、第2ホルダ21を回転駆動機構に接続して回転させるものとしても実施可能である。
また、第1処理用面1は、環状ではなく、中空部分12のない板面としても実施可能である(即ち、第1処理リング10の代わりに、回転駆動部に接続された円盤を採用して、第1処理用面1を当該円盤の端面として実施することも可能である)。
上記において、本願発明を、トナー粒子の製造方法について実施する場合を例に採って説明したが、この他、他の用途の樹脂粒子の製造方法において、本願発明を実施することが可能である。本願発明は、特に、微小なポリエステル粒子の製造方法として、最適である。
【実施例】
【0064】
以下、本願発明の実施例、及び比較例について、説明する。
表1に実施例1〜5の5つの実施例と比較例を示す。
【0065】
【表1】

【0066】
前述の通り、本願発明における「表面処理」とは、粒子表面の凸凹を円滑にすることであり、粒子の外観形状を球形に近づけることを示す。この実施例では、その指標としてトナー粒子の表面処理度合を平均円形度として示す。
先ず、各実施例及び比較例について調べた、平均円経度の測定方法、測定条件、トナー粒子の粒度分布の測定について説明する。
【0067】
(平均円形度の測定方法)
平均円形度は、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100型」(シスメックス社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出する。
【0068】
【数1】

【0069】
【数2】

【0070】
上記数1の「粒子投影面積」とは二値化された粒子像の面積であり、数式2において「粒子投影像の周囲長」とは当該粒子像のエッジ点を結んで得られる輪郭線の長さと定義する。測定は、512×512の画像処理解像度(0.3μm×0.3μmの画素)で画像処理した時の粒子像の周囲長を用いる。具体的には「粒子投影像の周囲長」とは、例えば図7へ細線で示す方眼の上に粒子のシルエットを投影して二値化した際に、太線で示す二値化したシルエットの外郭線の長さである。また、「粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長」とは、上記太線で囲まれた領域の面積と同じ面積の真円の円周の長さである。
ここでいう円形度は粒子の凹凸の度合いを示す指標であり、粒子が完全な球形の場合に1.000を示し、表面形状が複雑になる程、円形度は小さな値となる。
また、円形度頻度分布の平均値を意味する平均円形度Cは、粒度分布の分割点iでの円形度(中央値)をci、測定粒子数をmとすると、次式(数式3)から算出される。
【0071】
【数3】

【0072】
測定装置として採用した「FPIA−2100」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度の算出に当たって、得られた円形度によって、粒子を円形度0.4〜1.0を0.01ごとに等分割したクラスに分け、その分割点の中央値(メジアン)と測定粒子数を用いて平均円形度の算出を行う。
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水20mlを用意し、その中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を加えた後、更に測定試料を試料濃度が2000〜5000個/μlとなるように均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「ULTRASONIC CLEANER VS−150型」(アズワン株式会社製)を用い、下記の条件で1分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃以上とならないように適宜冷却する。また、円形度のバラツキを抑えるため、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100の機内温度が26〜27℃になるよう装置の設置環境を23℃±0.5℃にコントロールし、一定時間おきに、好ましくは2時間おきに2μmラテックス粒子を用いて自動焦点調整を行う。
【0073】
(超音波発振器による分散条件)
超音波発信機として採用した装置は、ULTRASONIC CLEANER VS−150型(アズワン株式会社製)である。その定格は、出力50kHz、150Wである。粒子の円形度測定には、前記フロー式粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が3000〜1万個/μlとなるようにこの分散液濃度を再調整し、粒子を1000個以上計測する。計測後、このデータを用いて、円相当径2μm未満のデータをカットして、粒子の平均円形度を求める。
この実施例及び比較例における測定の概略は、以下の通りである。
【0074】
試料分散液は、フラットで扁平なフローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するように、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範朗を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。それぞれの粒子の2次元画像の投影面積及び投影像の周囲長から上記の円形度算出式を用いて各粒子の円形度を算出する。
【0075】
(トナー粒子の粒度分布の測定)
トナー粒子の粒度分布は種々の方法によって測定できるが、コールターカウンターを用いて行うことが好ましく、この実施例での計測において、当該コールターカウンターを採用した。
測定装置としては、コールターカウンターマルチサイザーI型、II型又はIIe型(コールター社製)を用い、個数平均分布、体積平均分布を出力するインターフェイス(日科機製)及び一般的なパーソナルコンピューターを接続し、特級又は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を電解液として調製した。
測定法としては前記電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1〜5ml加え、更に測定試料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターカウンターマルチサイザーII型により、アパチャーとして100μmアパチャーを用いて、個数を基準として2〜40μmの粒子の粒度分布を測定して、それから各種値を求めた。
【0076】
各実施例は、図6に示す装置構成にて得たものであり、その形状制御装置204として、図1に示すトナー粒子製造システムを用いて製造して得たものである。そして、このトナー粒子製造システムの粉体処理装置71として、上述の図2に示すものを採用した。
【0077】
(実施例1)
表1に示す実施例1においては、溶融混練して得られたポリエステル系のカラートナー原料をIDS型ジェットミルで粉砕し、その後エルボージェット(日鉄鉱業社製)にて分級を行ってトナー原料粒子63を得た。得られたトナー原料粒子63を前記したコールターカウンターマルチサイザーで測定したところ体積平均粒径が6.7μmであり、粒径が4.00μm以下の粒子の存在量が15個数%であった。また、平均円形度は0.925であった。
このトナー原料粒子63について、上記の粉体処理装置71を採用し且つその下記の条件の下、第1処理リング10にて、粉体処理を行った。
先ず、外径が100mm、内径が60mmの第1処理リング10の回転数を8000rpm(周速:41.9m/sec)に設定し、エアー導入部44に200kPaの圧縮空気を導入して第1処理リング10と第2処理リング20の間の面圧を調整した。その後、高圧エアー導入ノズル61から300kPaの高圧エアーを流し、オートフィーダー70からトナー原料粒子63を3kg/Hrで供給した。供給されたトナー原料粒子63はトナー導入口62を介して粉体処理装置に導入され、高圧エアーにより生じた第1処理用面1と第2処理用面2との隙間で、強力なせん断を受け、排出部32を介してサイクロン72により処理済のトナー粒子は捕集された。得られたトナー粒子の体積平均粒径が6.6μmであり、粒径が4.00μm以下の粒子の存在量が17個数%であった。また、平均円形度は0.967であった。
尚、第2処理リング20の寸法についても、上記第1処理リング10と同じとした。この点、以下の各実施例においても同様である。
【0078】
(実施例2)
表1に示す実施例2において、上記と同様の寸法の第1処理リング10の回転数を13000rpm(周速:68m/sec)に設定し、エアー導入部44に300kPaの圧縮空気を導入した。その後、高圧エアー導入ノズル61から400kPaの高圧エアーを流してトナー原料粒子を供給した以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を得た。得られたトナー粒子の体積平均粒径が6.5μmであり、粒径が4.00μm以下の粒子の存在量が18個数%であった。また、平均円形度は0.975であった。
【0079】
(実施例3)
表1に示す実施例3において、上記と同様の寸法の第1処理リング10の回転数を13000rpm(周速:68m/sec)に設定し、エアー導入部44に300kPaの圧縮空気を導入した。その後、高圧エアー導入ノズル61から400kPaの高圧エアーを流してオートフィーダー70からトナー原料粒子63を5kg/Hrで供給した以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を得た。得られたトナー粒子の体積平均粒径が6.6μmであり、粒径が4.00μm以下の粒子の存在量が16個数%であった。また、平均円形度は0.970であった。
【0080】
(実施例4)
表1に示す実施例4において、高圧エアー導入ノズル61から400kPaの高圧エアーを流した以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を得た。得られたトナー粒子の体積平均粒径が6.6μmであり、粒径が4.00μm以下の粒子の存在量が16個数%であった。また、平均円形度は0.965であった。
【0081】
(実施例5)
表1に示す実施例5において、第1処理リング10の回転数を400rpm(周速:20.9m/sec)に設定した以外は実施例1と同様にしてトナー粒子を得た。得られたトナー粒子の体積平均粒径が6.7μmであり、粒径が4.00μm以下の粒子の存在量が15個数%であった。また、平均円形度は0.960であった。
【0082】
(比較例)
表1に示す比較例として、実施例1と同様に溶融混練して得られたポリエステル系のカラートナー原料をターボミル機械式粉砕機で粉砕し、その後エルボージェット(日鉄鉱業社製)にて分級を行ってトナー原料粒子63を得た。得られたトナー原料粒子63は、図6内の形状制御装置204による表面処理は行わなかった。この粒子を前記したコールターカウンターマルチサイザーで測定したところ体積平均粒径が6.7μmであり、粒径が4.00μm以下の粒子の存在量が17個数%であった。また、平均円形度は0.945であった。
【0083】
以上から、比較例の平均円経度が、0.95(0.945)以下にとどまるのに対して、上記の各実施例1〜5は、何れも、0.96以上の値を得ており、比較例に対して、より丸いものとなっていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本願発明に係るトナー粒子の製造方法を実施するに適したシステムの概略を示す説明図である。
【図2】図1に示すシステムの要部である粉体処理装置の略縦断面図である。
【図3】図2の粉体処理装置の要部略縦断面図である。
【図4】図2に示す粉体処理装置の第1処理リングを示す略平面図である。
【図5】図2のA−A略端面図である。
【図6】トナー製造フローの好ましい実施の形態を示す説明図である。
【図7】粒子投影像の周囲長のイメージを示す説明図である。
【符号の説明】
【0085】
1 第1処理用面
2 第2処理用面
3 ケース
4 接面圧付与機構
5 回転駆動装置
10 第1処理リング
11 第1ホルダ
20 第2処理リング
21 第2ホルダ
23 受圧面(離反用調整面)
30 内部空間
32 排出部
41 収容部
42 スプリング受容部
43 スプリング
44 エアー導入部
50 回転軸
51 固定具
60 粉体原料供給ノズル
61 高圧エアー導入ノズル
62 トナー導入ロ
63 トナー原料粒子
71 オートフィーダー
72 サイクロン
73 バグフィルター
74 吸引ブロアー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既に粉砕された樹脂原料粒子を、球状に加工する樹脂粒子の製造方法において、
樹脂原料粒子の流路の少なくとも一部を構成する、対面する第1及び第2の2つの処理用面を用い、第1及び第2の少なくとも何れか一方の処理用面を、第1及び第2の何れか他方の処理用面に対し相対的に回転させることにより、せん断力を発生させて加工を施すものであり、
樹脂原料粒子の流路を、気密にし、
第1及び第2の少なくとも何れか一方の処理用面を、第1及び第2の何れか他方の処理用面へ近接離反自在に対面させると共に、当該他方の処理用面へ近接するように付勢し、
樹脂原料粒子の流路へ、ガス等の流体と共に樹脂原料粒子を噴射するものであり、第1及び第2の両処理用面を離反させる方向に作用する当該噴射の圧力及び処理用面の回転にて生じる遠心力と、両処理用面を近接させる方向に作用する上記付勢力との均衡の上に、当該隙間に流体及び樹脂原料粒子を通過させて、樹脂原料粒子の表面処理を行うものであることを特徴とする樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
第1及び第2の処理用面の少なくとも一方は、少なくとも第1及び第2処理用面の他方に向けて出没自在な処理リングの、端面として形成され、
上記処理リングの中心から、第1及び第2の両処理用面間に、ガス等の流体と共に加工する樹脂原料粒子を噴射するものであり、処理リングの処理用面となる端面と処理リングの内周面との間に受圧面を設けて、
当該受圧面にて受けた、流体及び樹脂原料粒子の流圧を、処理リングの処理用面を他方の処理用から離反させる方向に作用させるものであることを特徴とする請求項1記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
少なくとも結着樹脂及び着色剤を溶融混練して得た樹脂原料粒子の表面処理を行うことにより球状化するものであって、
一端面を上記の第1処理用面とする第1処理リングと、一端面を上記の第2処理用面とする第2処理リングと、第1処理リングを第2処理リングに対して相対的に回転させる転駆動機構とを備えた粉体処理装置を用い、
上記のガス等の流体を、高圧エアーとし、
第1処理リングと第2処理リングの間に上記高圧エアーと共に樹脂原料粒子を導入することにより、第2処理リングを第1処理リングから離間させ、回転駆動機構により付与される第1処理リングの回転により樹脂原料粒子の表面を処理することを特徴とする請求項1記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
上記の粉体処理装置には、粉体原料供給ノズルと、当該粉体原料供給ノズルに設けられた樹脂原料粒子を供給する樹脂導入口と、当該粉体原料供給ノズルの軸芯部に設けられた高圧エアー導入ノズルとを備えたものを採用し、
エアーの圧力により、第1処理リングから第2処理リングを離間させて隙間をつくり、当該隙間に樹脂原料粒子を導入することを特徴とする請求項3に記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
処理用リングの少なくとも1つに、微振動やアライメントを緩衝する、緩衝機構を設けたことを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
粉体処理装置に、第1処理用面と第2処理用面との間の最大間隔を規定し、当該最大間隔より大きい両処理要面の離反を抑止する、離反抑止部を備えたものを採用することを特徴とする請求項3〜5の何れかに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項7】
粉体処理装置に、第1処理用面と第2処理用面との間の最小間隔を規定し、当該最小間隔より小さい両処理用面の近接を抑制する、近接抑止部を備えたものを採用することを特徴とする請求項3〜6の何れかに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項8】
第1処理用面と第2処理用面の一方或いは双方の、少なくとも一部は、鏡面加工されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項9】
回転する処理用面の最外周辺部周速が10m/s〜100m/sであることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項10】
第1処理用面及び第2処理用面の一方或いは双方に、処理用面の中心から放射状に伸びる凹部を備えたものを採用することにより、上記少なくとも一方の処理用面の回転によって、第1及び第2の少なくとも一方の処理用面を第1及び第2他方の処理用面から、離間させることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項11】
樹脂原料粒子の粒径Dは
3μm≦D≦10μm
であることを特徴とする請求項4〜10の何れかに記載の樹脂粒子の製造方法。
【請求項12】
上記第1及び第2処理用面間の間隔が、樹脂原料粒子の直径の1〜5倍であることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の樹脂粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−64827(P2008−64827A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239871(P2006−239871)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(595111804)エム・テクニック株式会社 (38)
【Fターム(参考)】