説明

樹脂組成物、及びそれを成形してなるフィルム

【課題】 耐熱性、透明性、耐衝撃性、延伸性の全てに優れた樹脂組成物の提供。
【解決手段】 ポリトリメチレンテレフタレート(A)と、ポリエステル系樹脂(B)からなる混合物(X)を主成分とする樹脂組成物であって、前記ポリエステル系樹脂(B)はガラス転移温度が90℃以上、140℃以下であり、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度で−40℃から250℃まで昇温した際に結晶融解ピークが存在せず、前記混合物(X)のガラス転移温度が単一であり、前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)のガラス転移温度以上、前記ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度以下の範囲にあることを特徴とする樹脂組成物の作製。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、透明性、耐衝撃性、延伸性に優れた樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(以下「PTT」という)は、ポリブチレンテレフタレート(以下「PBT」という)よりもガラス転移温度が高く、また、延伸加工が可能であるため、繊維用途への展開が盛んに行われている。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)と比較すると結晶化速度が速く、延伸加工時において急速に結晶化が進行するため、逐次での二軸延伸が非常に困難であるため、機械特性、生産性の面でPETに劣り、フィルム分野での利用は全くと言っていいほど進んでいないのが現状である。
【0003】
このような問題を解決するため、特許文献1には、PTTの延伸方法に関する技術が開示されており、また、特許文献2、特許文献3、及び、特許文献4にはPTTと他の樹脂(特にPET)を混合することにより延伸性(延伸可能な温度域、延伸倍率)を上げる手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−156934号公報
【特許文献2】特開2003−268131号公報
【特許文献3】特開2001−206963号公報
【特許文献4】特開2005−29697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術においては、縦二段延伸を行った後に横延伸を行う逐次二軸延伸が可能とされているが、縦延伸倍率、横延伸倍率共に制限され、十分な延伸性が得られたとは言い難く、さらに延伸条件のばらつきによっては延伸時に球晶が成長することで透明性が損なわれる場合や、縦延伸の際に球晶が成長することで逐次二軸延伸ができない場合がある。また、特許文献2、特許文献3、及び、特許文献4に開示されている技術においては、PTTに対してPETを配合することで延伸性は若干向上するものの、機械特性、生産性の観点からの好ましい倍率(面積倍率で9倍よりも高い倍率)で延伸することは困難であった。
【0006】
以上のように、前述した技術においては、PTTを含み、耐熱性、透明性、耐衝撃性、延伸性の全てに優れた樹脂組成物は提供されていなかった。
【0007】
そこで本発明の目的は、PTTを含み、耐熱性、透明性、耐衝撃性、延伸性の全てに優れた樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート(A)と、ポリエステル系樹脂(B)からなる混合物(X)を主成分とする樹脂組成物であって、前記ポリエステル系樹脂(B)はガラス転移温度が90℃以上、140℃以下であり、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度で−40℃から250℃まで昇温した際に結晶融解ピークが存在せず、前記混合物(X)のガラス転移温度が単一であり、前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)のガラス転移温度以上、前記ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度以下の範囲にあることを特徴とする樹脂組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた耐熱性、透明性、耐衝撃性、延伸性の全てに優れた樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の1つの例としての樹脂組成物について説明する。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0011】
<ポリトリメチレンテレフタレート(A)>
本発明に用いるポリトリメチレンテレフタレート(A)は、多価カルボン酸成分としてテレフタル酸、または、ジメチルテレフタル酸、多価アルコール成分として1,3−プロパンジオールを用いてなる重縮合物である。
【0012】
また、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば、多価カルボン酸成分として、イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を用いることができ、また、多価アルコール成分として、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等を用いることができる。
【0013】
前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)の固有粘度は0.6以上、1.8以下であることが好ましく、0.7以上、1.6以下であることがより好ましく、0.8以上、1.4以下であることがさらに好ましい。固有粘度が0.6以上であることによって、成形品の機械強度、耐衝撃性が良好となり、実用上問題を生じることがないため好ましい。また、固有粘度が1.8以下であることによって、粘度が高すぎることによる生産性の低下、成形不良等の問題を生じることがないため好ましい。
【0014】
<ポリエステル系樹脂(B)>
本発明に用いるポリエステル系樹脂(B)は、ガラス転移温度が90℃以上、140℃以下であり、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度で−40℃から250℃まで昇温した際に結晶融解ピークが存在しないことが重要である。
ガラス転移温度が90℃以上であれば、PTTのガラス転移温度を向上させる効果が高く、より低添加量で耐熱性を向上する効果が発現できる。また、ガラス転移温度が140℃以下であれば、PTTと同様の混練条件で溶融混練が可能であり、成形加工時におけるPTTの熱劣化を生じることがない。
さらに、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度で−40℃から250℃まで昇温した際に結晶融解ピークが存在しないことで、無延伸シートの製膜時、及び、延伸時における球晶の成長を十分に抑制することができ、優れた延伸性を付与することができる。なお、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度で−40℃から250℃まで昇温した際に結晶融解ピークが存在しないことを、以下においては「非晶性」とも言うことにする。
【0015】
前記ポリエステル系樹脂(B)としては、テレフタル酸、または、ジメチルテレフタル酸を多価カルボン酸成分の主体とし、5モル%以上、40モル%以下のスピログリコール、又は/及び、イソソルビドと、25モル% 以上、60モル% 以下のエチレングリコールを多価アルコール成分とする共重合ポリエステル系樹脂を使用することが好ましい。
【0016】
ここで、多価カルボン酸成分の「主体」とは、多価カルボン酸成分の全体量を基準(100モル%)として、テレフタル酸、または、ジメチルテレフタル酸を少なくとも70モル% 以上、好ましくは90モル% 以上、より好ましくは98モル%以上含むことをいう。
【0017】
スピログリコール、あるいは、イソソルビドの比率が前記範囲内であれば、ポリエステル系樹脂(B)が、ガラス転移温度が90℃以上、140℃以下の非晶性の樹脂となり、ポリトリメチレンテレフタレート(A)に添加した場合の耐熱性、延伸性をより効果的に向上することができる。
【0018】
<混合物(X)>
本発明における混合物(X)は、前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)と、前記ポリエステル系樹脂(B)からなり、ガラス転移温度が単一となる特徴を有する混合物である。
【0019】
本発明において、前記混合物(X)のガラス転移温度が単一であるとは、前記混合物(X)について歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて動的粘弾性の温度分散測定(JIS K7198A法の動的粘弾性測定)により測定される損失正接(tanδ)の主分散のピークが1つ存在する、言い換えれば損失正接(tanδ)の極大値が1つ存在するという意味である。混合物(X)のガラス転移温度が単一であることにより、得られる樹脂組成物が優れた透明性を実現できる。
【0020】
前記混合物(X)のガラス転移温度が単一であることは、前記混合物(X)について前記動的粘弾性測定において測定される損失弾性率(E”)の主分散のピークが1つ存在する、言い換えれば損失弾性率(E”)の極大値が1つ存在するものであるということもできる。
また、前記動的粘弾性測定のほか、示差走査熱量測定などによってもガラス転移温度が単一であることを確認することができる。具体的には、JIS K7121に準じて、加熱速度10℃/分で示差走査熱量計(DSC)を用いてガラス転移温度を測定した際に、ガラス転移温度を示す変曲点が1つだけ現れるものであるということもできる。
【0021】
一般的にポリマーブレンド組成物のガラス転移温度が単一であるということは、混合する樹脂がナノメートルオーダーで相溶した状態にあることを意味し、相溶している系と認めることができる。
【0022】
すなわち、本発明の樹脂組成物を構成する前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)と前記ポリエステル系樹脂(B)は相溶性に優れており、前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)と前記ポリエステル系樹脂(B)からなる混合物(X)において動的粘弾性の温度分散測定により測定される損失正接(tanδ)の主分散のピーク値であるガラス転移温度は単一であることから、本発明の樹脂組成物は耐熱性、耐衝撃性、延伸性に優れているだけでなく、透明性にも優れた樹脂組成物となる。
【0023】
前記混合物(X)のガラス転移温度は、前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)のガラス転移温度以上、前記ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度以下の範囲に存在する。
【0024】
さらに、本発明における混合物(X)のガラス転移温度は50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、70℃以上であることがさらに好ましい。前記混合物(X)のガラス転移温度をかかる範囲内とすることで耐熱性に優れた樹脂組成物を提供することができる。
【0025】
前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)、及び、前記ポリエステル系樹脂(B)からなる混合物(X)100質量%中に占める前記ポリエステル系樹脂(B)の割合は、1質量%以上、99質量%以下の範囲で任意に混合可能であるが、下限としては特に、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることが特に好ましい。また、上限としては、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが特に好ましい。前記ポリエステル系樹脂(B)の割合を10質量%以上、60質量%以下とすることによって、延伸性に優れるだけでなく耐熱性にも優れた樹脂組成物を提供することができる。
【0026】
また、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて機械特性や耐熱性、その他特性を向上することを目的として、本発明の効果を損なわない範囲でポリエステル以外の樹脂や、樹脂以外の添加剤を配合することができる。例えば、その他のポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の樹脂やコア−シェル型、グラフト型又は線状のランダム及びブロック共重合体のようなゴム状改質剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、可塑剤、核剤、顔料、染料、無機充填剤等の添加剤などが挙げられる。前記ポリエステル樹脂以外の樹脂、あるいは、添加剤の配合量としては、本発明の樹脂組成物に対して、1質量%以上、30質量%以下の割合で配合することが好ましく、3質量%以上、20質量%以下の割合で配合することがより好ましく、5質量%以上、10質量%以下の割合で配合することがさらに好ましい。
【0027】
<樹脂組成物の用途>
本発明の樹脂組成物は、フィルム、プレート、または、射出成形品等に成形することができる。具体的には、前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)、前記ポリエステル系樹脂(B)、及び、必要に応じてその他の樹脂や添加剤等の原料を直接混合し、押出機或いは射出成型機に投入して成形するか、または、前記原料を二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出してペレットを作成した後、このペレットを押出機或いは射出成型機に投入して成形する方法を挙げることができる。いずれの方法においても、ポリエステル系樹脂の加水分解による分子量の低下を考慮する必要があり、均一に混合させるためには後者を選択するのが好ましい。そこで、以下後者の製造方法について説明する。
【0028】
前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)、前記ポリエステル系樹脂(B)、及び、必要に応じてその他の樹脂や添加剤を十分に乾燥して水分を除去した後、二軸押出機を用いて溶融混合し、ストランド形状に押出してペレットを作成する。この際、各原料の組成比や配合割合によって粘度が変化すること等を考慮して、溶融押出温度を適宜選択することが好ましい。具体的には、成形温度は250℃以上、290℃以下が好ましく、260℃以上、280℃以下がより好ましい。
【0029】
前記方法にて作製したペレットは、十分に乾燥させて水分を除去した後、以下の方法でフィルム、プレート、または、射出成形品の成形を行うことができる。
【0030】
フィルム、及び、プレートの成形方法として一般的なTダイキャスト法、プレス法などを採用することができる。また、延伸方法としては、シートを周速差のある2個のロール間で延伸するロール延伸法、および/または、テンターを用いクリップでシートを把持しながらクリップ列の列間隔を拡大させて延伸するテンター延伸法を使用することができる。
【0031】
なお、延伸を行う場合の延伸倍率としては、面積倍率で5倍以上、20倍以下が好ましく、7倍以上、18倍以下がより好ましく、9倍以上、16倍以下がさらに好ましい。また、延伸後に熱固定を行うことにより、さらに耐熱性を向上することができる。熱固定の温度としては140℃以上、200℃以下が好ましく、160℃以上、200以下がより好ましく、180℃以上、200℃以下がさらに好ましい。かかる面積倍率の範囲内で延伸を行った後に熱固定を行うことにより、本発明の樹脂組成物に優れた機械特性、耐熱性を付与することができる。また、延伸フィルムの厚みは特に制限されることはないが、一般的には5〜500μm、好ましくは10〜150μmの範囲で製造される。厚みがかかる範囲にあることで、ハンドリング性や強度、二次加工性に優れた延伸フィルムとなる。
【0032】
なお、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(JIS K6900)、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0033】
また、射出成形体の成形方法は、特に限定されるものではなく、例えば熱可塑性樹脂用の一般射出成形法、ガスアシスト成形法及び射出圧縮成形法等の射出成形法を採用することができる。その他目的に合わせて、前記以外の方法としてインモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法、サンドイッチ成形法等を採用することもできる。
【0034】
本発明の樹脂組成物から得られたフィルム、プレート、または、射出成形品は、透明性、耐衝撃性、耐熱性に優れるため、用途は特に制限されるものではないが、例えば、建材、内装部品、透明シート、樹脂被覆金属板用シート、成型(真空・圧空成型、熱プレス成型など)用シート、着色プレート、透明プレート、シュリンクフィルム、シュリンクラベル、シュリンクチューブや、自動車内装材、家電製品筐体、各種部品、OA機器部品等の射出成形品等に使用することができる。中でも、延伸フィルムとして、各種カード、ラベル、工程用フィルム、離型フィルム用基材、粘着テープ用基材、転写用フィルム基材、磁気テープ用基材、フラットパネルディスプレイ用光学フィルム、化粧フィルム、装用フィルム等に使用することができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
なお、本明細書中に表示される原料及び試験片についての種々の測定値及び評価は次のようにして行った。ここで、フィルムの押出機からの流れ方向をMD、その直交方向をTDと呼ぶ。
【0036】
(1)ガラス転移温度
粘弾性スペクトロメーターDVA−200(アイティー計測制御株式会社製)を用い、歪み0.1%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分にて動的粘弾性の温度分散測定(JIS K7198A法の動的粘弾性測定)を行った。そして損失正接(tanδ)の主分散のピークを示す温度をガラス転移温度とした。
【0037】
(2)透明性(ヘーズ)
JIS K7105に基づいて、全光線透過率および拡散透過率を測定し、ヘーズを以下の式で算出した。厚み0.05mmでのヘーズが2%以下であるものを合格とした。
[ヘーズ]=[拡散透過率]/[全光線透過率]×100
【0038】
(3)耐衝撃性(破壊エネルギー)
ハイドロショット高速衝撃試験器(島津製作所社製「HTM−1型」)を用いて、縦方向100mm×横方向100mmの大きさに切り出したシートを試料とし、クランプで固定し、温度23℃でシート中央に直径が1/2インチの撃芯を落下速度3m/秒で落として衝撃を与え、試料が破壊するときの破壊エネルギー(kgf・mm)を測定した。破壊エネルギーが100kgf・mm以上のものを合格とした。
【0039】
(4)耐熱性(加熱収縮率)
長さ100mm×幅100mm(厚みはそれぞれの試験片により異なる)の評価用サンプルをベーキング試験装置(大栄科学精器製作所製DKS−5S)内に静置し、120℃で30分間加熱した。加熱後のサンプルに関して、MD、TDの収縮率を測定した。収縮率は3%以下のものを合格とした。
【0040】
(5)延伸性
所定の温度(ポリトリメチレンテレフタレートとその他の樹脂の混合比により延伸温度は異なる)における逐次二軸延伸時の延伸倍率が、面積倍率で5倍以上延伸可能であるものを○とし、5倍未満のものを×とした。
【0041】
<ポリトリメチレンテレフタレート(A)>
ポリトリメチレンテレフタレート(A)としては、以下の物性を有するものを用いた。
(A)−1:
ポリトリメチレンテレフタレート、ガラス転移温度=52℃、固有粘度=1.02dl/g、三井デュポン社製 商品名「バイオマックスPTT1002」
【0042】
<ポリエステル系樹脂(B)>
ポリエステル系樹脂(B)としては、以下の物性を有するものを用いた。
(B)−1:
多価カルボン酸:テレフタル酸=100モル%、多価アルコール:エチレングリコール/ジエチレングリコール/スピログリコール=75/5/20モル%、ガラス転移温度=102℃、固有粘度=0.75dl/g、三菱ガス化学社製 商品名「アルテスター20」
(B)−2:
多価カルボン酸:テレフタル酸=100モル%、多価アルコール:エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール/イソソルビド=37/51/12モル%、ガラス転移温度=108℃、固有粘度=0.72dl/g
(B)−3:
多価カルボン酸:テレフタル酸=100モル%、多価アルコール:エチレングリコール/1,4−シクロヘキサンジメタノール/イソソルビド=28/52/20モル%、ガラス転移温度=120℃、固有粘度=0.63dl/g
【0043】
(実施例1)
ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(A)として(A)−1、ポリエステル系樹脂(B)として(B)−1を用い、(A)−1、及び、(B)−1を混合質量比85:15の割合でドライブレンドした後、φ40mm同方向二軸押出機にて260℃で混練した後、ストランドダイから押出し、水温約20℃の冷却水槽を通した後、ペレタイザーを用いてペレット状にカットした。次いで、150℃、4時間熱風オーブンにて乾燥したペレットを、φ40mm単軸押出機にて260℃で混練した後、口金から押出し、次いで約60℃のキャスティングロールにて急冷し、厚さ312μmの非晶シートを作製した。次いで、三菱重工株式会社製逐次2軸テンターを用いて、70℃でMDに延伸倍率で2.5倍に延伸を行い、続いて70℃でTDに延伸倍率で2.5倍に延伸を行い、さらにその後、180℃で15秒熱処理を行い、厚さ50μm、面積延伸倍率6.25倍の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムに関して、透明性、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った結果を表1に示す。
【0044】
(実施例2)
(A)−1、及び、(B)−1を混合質量比70:30の割合でドライブレンドした後、キャスト温度を70℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製した後、延伸温度80℃で、MDに3倍、TDに3倍の倍率で延伸を行った以外は実施例1と同様の方法で厚さ50μm、面積延伸倍率9倍の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムに関して、透明性、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った結果を表1に示す。
【0045】
(実施例3)
(A)−1、及び、(B)−1を混合質量比50:50の割合でドライブレンドした後、キャスト温度を80℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製した後、延伸温度90℃で、MDに3倍、TDに3倍の倍率で延伸を行った以外は実施例1と同様の方法で厚さ50μm、面積延伸倍率9倍の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムに関して、透明性、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った結果を表1に示す。
【0046】
(実施例4)
(A)−1、及び、(B)−2を混合質量比70:30の割合でドライブレンドした後、キャスト温度を70℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製した後、延伸温度80℃で、MDに3倍、TDに3倍の倍率で延伸を行った以外は実施例1と同様の方法で厚さ50μm、面積延伸倍率9倍の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムに関して、透明性、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った結果を表1に示す。
【0047】
(実施例5)
(A)−1、及び、(B)−1を混合質量比70:30の割合でドライブレンドした後、キャスト温度を70℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製した後、延伸温度80℃で、MDに3倍、TDに3倍の倍率で延伸を行った以外は実施例1と同様の方法で厚さ50μm、面積延伸倍率9倍の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムに関して、透明性、耐熱性、耐衝撃性の評価を行った結果を表1に示す。
【0048】
(比較例1)
(A)−1を単独で用い、キャスト温度を50℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製したが、延伸温度、倍率によらず逐次二軸延伸を行うことができなかった。
【0049】
(比較例2)
ポリエステル系樹脂(B)の代わりに、三菱ガス化学社製ALTESTER45(多価カルボン酸:テレフタル酸=100モル%、多価アルコール:エチレングリコール/ジエチレングリコール/スピログリコール=52/5/43モル%、ガラス転移温度=118℃、固有粘度=0.72dl/g)を用い、(A)−1、及び、ALTESTER45を混合質量比70:30の割合でドライブレンドした後、キャスト温度を60℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製したが、延伸温度によらず逐次二軸延伸を行うことができなかった。また、得られた非晶シートは不透明であった。
【0050】
(比較例3)
ポリエステル樹脂(B)の代わりに、イーストマンケミカル社製トライタンFX−200(多価カルボン酸:テレフタル酸=100モル%、多価アルコール:1,4−シクロヘキサンジメタノール/2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール=66/34モル%、ガラス転移温度=134℃、固有粘度=0.76dl/g)を用い、(A)−1、及び、トライタンFX−200を混合質量比70:30の割合でドライブレンドした後、キャスト温度を60℃とした以外は実施例1と同様の方法で厚さ450μmの非晶シートを作製したが、延伸温度によらず逐次二軸延伸を行うことができなかった。また、得られたシートは不透明であった。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレート(A)と、ポリエステル系樹脂(B)からなる混合物(X)を主成分とする樹脂組成物であって、前記ポリエステル系樹脂(B)はガラス転移温度が90℃以上、140℃以下であり、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度で−40℃から250℃まで昇温した際に結晶融解ピークが存在せず、前記混合物(X)のガラス転移温度が単一であり、前記ポリトリメチレンテレフタレート(A)のガラス転移温度以上、前記ポリエステル系樹脂(B)のガラス転移温度以下の範囲にあることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記混合物(X)中に占める前記ポリエステル系樹脂(B)の割合が10質量%以上、60質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル系樹脂(B)のジオール成分中に、エチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールを合計で70モル%以上、90モル%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリエステル系樹脂(B)のジオール成分中に、イソソルビドを5モル%以上、40モル%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリエステル系樹脂(B)のジオール成分中に、スピログリコールを5モル%以上、30モル%以下の割合で含有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなるシートを、5倍以上、20倍以下の面積倍率で延伸したことを特徴とする延伸フィルム。