説明

樹脂組成物およびその製造方法

【課題】メタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂を含み、透明性に優れた樹脂組成物の提供。
【解決手段】特定のメタクリル樹脂、特定のポリカーボネート樹脂、ならびに下記の式(1)で表わされる化合物


[式中、Rは二価の有機基であり、Rはメチル基または水素原子であり、Rはメチル基または他のアルキル基である]を含む樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス代替材として樹脂を利用することに対する需要が高まっており、かかる樹脂として、透明性および寸法安定性などからメタクリル樹脂やポリカーボネート樹脂が有望視されている。
【0003】
メタクリル樹脂、特にポリメタクリル酸メチルは、透明性に加えて、耐候性および表面硬度の点で優れている。しかし、かかるメタクリル樹脂は、用途によっては、耐熱性および機械的特性の点で十分でなく、また、吸水性が高いなどの難点がある。
【0004】
他方、ポリカーボネート樹脂、特にビスフェノールAから製造されるポリカーボネートは、透明性に加えて、耐熱性および機械的特性の点で優れている。しかし、かかるポリカーボネート樹脂は、成型時の流動性が低く、残留歪および配向複屈折が大きいなどの難点がある。
【0005】
そこで、メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂の優れた特性を併せ持った樹脂を得るには、両樹脂を混合してブレンド物とすることが考えられる。しかしながら、メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂のブレンド物は、そのままでは熱力学的に相溶性でなく、透明性が要求される用途には使用できない不透明な物質であった。
【0006】
かかる状況下、メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂との透明なブレンド物を得るため、種々の提案がなされている(特許文献1〜2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−90551号公報
【特許文献2】特開昭64−1749号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】G. Montaudo、外2名、「PC/PMMAブレンドの熱処理で生じる化学反応(Chemical Reactions Occurring in the Thermal Treatment of PC/PMMA Blends)」、Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry、1998年、Vol.36、p.1873-1884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1には、メタクリル樹脂として、メタクリル酸メチル単位と、有機環状基を導入した(メタ)アクリルアミド単位(コモノマー)とのメタクリレート共重合体を用い、このメタクリレート共重合体をポリカーボネートと混合することにより、ブレンド物を得ることが記載されている。しかし、得られるブレンド物は、透明性が必ずしも十分とは言えない。
【0010】
特許文献2には、メタクリル樹脂として、メタクリル酸メチル単位と、エステル基中に炭素環状基を有する(メタ)アクリル酸エステル(コモノマー)とのメタクリレート共重合体を用い、このメタクリレート共重合体をポリカーボネートと混合することにより、ブレンド物を得ることが記載されている。しかしながら、得られるブレンド物は必ずしも透明ではない。
【0011】
本発明の目的は、メタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物であって、透明性に優れた樹脂組成物を提供することにあり、また、かかる樹脂組成物の製造方法および樹脂組成物を用いた成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の[1]〜[5]を提供するものである。
[1] メタクリル酸メチル単位60〜100重量%、および他の(メタ)アクリル酸エステル単位を含むα,β−不飽和単量体単位から選択される少なくとも1種の他の単量体単位40〜0重量%(合計100重量%)を含むメタクリル樹脂、
式−O−CO−O−R−[式中、Rは二価の有機基]で表わされる単量体単位を含むポリカーボネート樹脂、ならびに
下記の式(1)で表わされる化合物
【化1】

[式中、Rは上記の通りであり、Rはメチル基または水素原子であり、Rはメチル基または他のアルキル基であり、lおよびmは互いに独立した2以上の整数である]
を含む樹脂組成物であって、式(1)で表わされる化合物中の構造式M1におけるエステル結合が、樹脂組成物中の全エステル結合に対して0.05モル%以上の割合で存在する、樹脂組成物。
[2] 下記の式(2)および式(3)で表わされる化合物を更に含み、
【化2】

[式中、R、RおよびRは上記の通りであり、m’およびnは互いに独立した2以上の整数である]
下記の式(I)を満たす、前記[1]に記載の樹脂組成物。
【数1】

[式中、
(A)はメタクリル樹脂中のメタクリル酸メチル単位におけるエステル結合のモル数であり、
(B)はメタクリル樹脂中の他の(メタ)アクリル酸エステル単位におけるエステル結合のモル数であり、
(C)はポリカーボネート樹脂中ならびに式(1)〜(3)で表わされる化合物中の式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるエステル結合のモル数であり、
(X)は式(1)で表わされる化合物中の構造式M1におけるエステル結合のモル数であり、
(Y)は式(2)で表わされる化合物中の構造式M2におけるエステル結合のモル数であり、
(A’)はメタクリル酸メチルにおけるエステル結合のモル数である]
[3] 前記(X)は、以下の式
(X)=(Z)−(Y) ・・・(II)
[式中、(X)および(Y)は上記の通りであり、(Z)は式(3)で表わされる化合物中の構造式M3におけるエステル結合のモル数である]
に基づいて算出される、前記[2]に記載の樹脂組成物。
[4] メタクリル酸メチル単位を含み、および任意成分として、他の(メタ)アクリル酸エステル単位を含むα,β−不飽和単量体単位から選択される少なくとも1種の他の単量体単位を含むメタクリル樹脂と、式−O−CO−O−R−[式中、Rは二価の有機基]で表わされる単量体単位を含むポリカーボネート樹脂とを、エステル交換反応に付して、エステル交換反応生成物として前記式(1)で表わされる化合物を生じさせ、これにより、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物を得る、樹脂組成物の製造方法。
[5] 前記[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、メタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂を含む樹脂組成物であって、透明性に優れた樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、かかる樹脂組成物の製造方法および樹脂組成物を用いた成形体も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の樹脂組成物は、
・メタクリル酸メチル単位60〜100重量%、および任意成分として、他の(メタ)アクリル酸エステル単位を含むα,β−不飽和単量体単位から選択される少なくとも1種の他の単量体単位40〜0重量%(合計100重量%)を含むメタクリル樹脂、
・式−O−CO−O−R−[式中、Rは二価の有機基]で表わされる単量体単位を含むポリカーボネート樹脂、ならびに
・下記の式(1)で表わされる化合物
【化3】

[式中、Rは上記の通りであり、Rはメチル基または水素原子であり、Rはメチル基または他のアルキル基であり、lおよびmは互いに独立した2以上の整数である]
を含む。この樹脂組成物においては、式(1)で表わされる化合物中の構造式M1におけるエステル結合が、樹脂組成物中の全エステル結合に対して0.05モル%以上の割合で存在する。
【0015】
かかる本発明の樹脂組成物は、メタクリル酸メチル単位を含み、更に必要に応じて、他の(メタ)アクリル酸エステル単位などのα,β−不飽和単量体単位から選択される少なくとも1種の他の単量体単位を含んでいてよいメタクリル樹脂と、式−O−CO−O−R−[式中、Rは二価の有機基]で表わされる単量体単位を含むポリカーボネート樹脂とを、エステル交換反応に付して、エステル交換反応生成物として上記の式(1)で表わされる化合物を生じさせることにより得ることができる。
【0016】
下記の式(2)および(3)で表わされる化合物も、エステル交換反応生成物または副生成物である。
【化4】

[式中、R、RおよびRは上記の通りであり、m’およびnは互いに独立した2以上の整数である]
【0017】
以下、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明し、この説明を通じて、本発明の樹脂組成物を説明するものとする。
【0018】
まず、原料として、メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂を準備する。
【0019】
メタクリル樹脂としては、メタクリル酸メチル単位と、場合によりα,β−不飽和単量体単位から選択される少なくとも1種の他の単量体単位とを含むものを使用できる。換言すれば、メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチルの単独重合体(すなわち、ポリメタクリル酸メチル)であってもよく、あるいは、メタクリル酸メチルと他のα,β−不飽和単量体との共重合体であってもよい。
【0020】
メタクリル樹脂は、最終的に得られる樹脂組成物に、ポリメタクリル酸メチルの特性を付与するため、メタクリル酸メチル単位を主成分として含む。メタクリル樹脂におけるメタクリル酸メチル単位の含有量は、良好な耐候性および透明性を得るために、60〜100重量%であり、好ましくは70〜99重量%である。原料として使用するメタクリル樹脂は、最終的に得られる樹脂組成物に含まれるメタクリル樹脂に応じて、適宜選択される。
【0021】
存在する場合には、メタクリル樹脂における他の単量体単位の含有量は、ポリカーボネート樹脂との相溶性が低下しないように40重量%以下とし、好ましくは1〜30重量%である。
【0022】
本発明に適用可能な他の単量体単位には、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル(本発明において、これらを総称して他の(メタ)アクリル酸エステルと言う)が含まれ、また、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物なども含まれる。
メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸エチルメタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどが挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどが挙げられる。
芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、1,1−ジフェニルスチレン、ブロモスチレン、ビニルキシレン、フルオロスチレン、エチルスチレンなどが挙げられる。
ビニルシアン化合物としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0023】
メタクリル樹脂がメタクリル酸メチル単位に加えて他の単量体単位を含む場合、この他の単量体単位は、例えば他の(メタ)アクリル酸エステル、芳香族ビニル化合物およびビニルシアン化合物などのα,β−不飽和単量体から選択される少なくとも1種であり得る。
【0024】
本発明で用いるメタクリル樹脂は、前記単量体成分を重合して得られる重合体を含有するものである。かかるメタクリル樹脂は、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合などの従来公知の方法によって製造され得る。重合には、通常、重合開始剤が用いられ、好ましくは重合開始剤および連鎖移動剤が用いられる。
重合開始剤として、好ましくは、ラジカル重合開始剤が用いられる。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ラウロイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物等が挙げられる。重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。重合開始剤の量は、単量体の種類や、その割合等に応じて、適宜決定すればよい。
連鎖移動剤としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート等のメルカプタン類等が好適に用いられる。連鎖移動剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。連鎖移動剤の量は、単量体の種類や、その割合等に応じて、適宜決定すればよい。
重合温度は、適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0025】
メタクリル樹脂における粘度平均分子量は、50,000〜300,000であるのが好ましく、70,000〜200,000であるのがより好ましい。メタクリル樹脂の流動性は、JIS K7210に準拠して、3.8kg荷重で測定した230℃におけるメルトマスフローレート(MFR)で評価され、前記MFRは、好ましくは0.1〜50g/10分、より好ましくは0.5〜40g/10分である。MFRが50g/10分以下、特に40g/10分以下であると、樹脂組成物およびその成形体の機械的強度を十分に維持でき、MFRが0.1g/10分以上、特に0.5g/10分以上であると、メタクリル樹脂の流動性および加工性が高く、溶融混練を適切に行うことができる。
【0026】
メタクリル樹脂には、前記単量体成分を重合して得られる重合体の他に、離型剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、重合抑制剤、酸化防止剤、難燃化剤、補強剤等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で含有させてもよい。
【0027】
ポリカーボネート樹脂は、式−O−CO−O−R−[式中、Rは二価の有機基]で表わされる単量体単位を含むものであればよい。
【0028】
本発明に適用可能なポリカーボネート樹脂としては、例えば以下のものが挙げられる。
・二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法などで反応させることにより得られるもの
・カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法等で重合させることにより得られるもの
・環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られるもの
【0029】
前記二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0030】
このような二価フェノールのうち、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれる二価フェノールを単独でまたは2種以上用いるのが好ましい。特に、ビスフェノールAの単独使用や、ビスフェノールAと、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれる1種以上の二価フェノールとの併用が好ましい。
【0031】
ポリカーボネート樹脂がビスフェノールAに由来するものである場合、ポリカーボネート樹脂の式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるRは、下記のものとなる。
【化5】

【0032】
前記カルボニル化剤としては、例えばホスゲン等のカルボニルハライド、ジフェニルカーボネート等のカーボネートエステル、二価フェノールのジハロホルメート等のハロホルメートが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0033】
ポリカーボネート樹脂における粘度平均分子量は、5,000〜100,000であるのが好ましく、10,000〜70,000であるのがより好ましい。ポリカーボネート樹脂の流動性は、ISO 1133に準拠して、1.2kg荷重で測定した300℃におけるメルトボリュームフローレート(MVR)で評価され、前記MVRは、好ましくは1〜150cm/10分、より好ましくは2〜100cm/10分である。MVRが150cm/10分以下、特に100cm/10分以下であると、樹脂組成物およびその成形体の機械的強度を十分に維持でき、MVRが1cm/10分以上、特に2cm/10分以上であると、ポリカーボネート樹脂の流動性および加工性が高く、溶融混練を適切に行うことができる。
【0034】
このようなメタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とをエステル交換反応に付す。エステル交換反応としては、下記のスキーム1および2のエステル交換反応が起こり得る。
【0035】
【化6】

【0036】
これらスキーム1および2は、メタクリル樹脂がメタクリル酸メチル単位に加えて他の(メタ)アクリル酸エステル単位も含む場合をも考慮して一般化したものである。これら反応式中、Rは上記の通りであり、Rはメチル基または水素原子であり、Rはメチル基または他のアルキル基であり、l、m、m’およびnは互いに独立した2以上の整数、好ましくは30以上の整数、例えば30〜3000の整数である。スキーム1は、エステル交換反応が、メタクリル樹脂中のメタクリル酸メチル単位または他の(メタ)アクリル酸エステル単位におけるエステル結合と、ポリカーボネート樹脂における式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるエステル結合との間で起こった場合を示している。スキーム2は、エステル交換反応が、メタクリル樹脂から分解して生じるメタクリル酸メチルにおけるエステル結合と、ポリカーボネート樹脂における式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるエステル結合との間で起こった場合を示している。
【0037】
より具体的には、メタクリル酸メチル単位およびメタクリル酸メチルの関与するエステル交換反応は、下記のスキーム1Aおよび2Aとなる(これらは、上記のスキーム1および2中、RおよびRがいずれもメチル基である場合に該当する)。
【0038】
【化7】

【0039】
スキーム1Aは、エステル交換反応が、メタクリル樹脂中のメタクリル酸メチル単位におけるエステル結合と、ポリカーボネート樹脂における式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるエステル結合との間で起こった場合を示している。スキーム2Aは、エステル交換反応が、メタクリル樹脂から分解して生じるメタクリル酸メチルにおけるエステル結合と、ポリカーボネート樹脂における式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるエステル結合との間で起こった場合を示している。
【0040】
また、本発明の製造方法において原料として使用したメタクリル樹脂が、メタクリル酸メチル単位に加えて、他の単量体単位として他の(メタ)アクリル酸エステル、例えばアクリル酸エステル(CH=CH−COOR、式中、Rは好ましくは炭素数1〜10のアルキル基)単位を含む場合には、アクリル酸エステル単位およびアクリル酸エステルの関与するエステル交換反応は、下記のスキーム1Bおよび2Bとなる(これらは、上記のスキーム1および2中、Rが水素原子であり、Rが上記アルキル基Rである場合に該当する)。
【0041】
【化8】

【0042】
スキーム1Bは、エステル交換反応が、メタクリル樹脂中のアクリル酸エステル単位におけるエステル結合と、ポリカーボネート樹脂における式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるエステル結合との間で起こった場合を示している。スキーム2Bは、エステル交換反応が、メタクリル樹脂から分解して生じるアクリル酸エステルにおけるエステル結合と、ポリカーボネート樹脂における式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるエステル結合との間で起こった場合を示している。
【0043】
かかるエステル交換反応は、上記の式(1)で表わされる化合物(式(1A)で表わされる化合物と式(1B)で表わされる化合物の合計)が所定の割合で存在するように、より具体的には、この化合物中の構造式M1におけるエステル結合が、最終的に得られる樹脂組成物中の全エステル結合に対して0.05モル%以上の割合で存在するように実施する。この割合の求め方および測定方法については、後に詳述する。
【0044】
メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とをエステル交換反応に付す方法は、上記の式(1)で表わされる化合物が所定の割合で存在するようになる限り、特に制限されないが、エステル交換触媒の存在下にてメタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂を混合することにより、エステル交換反応を進行させることができる。
【0045】
エステル交換触媒としては、以下のものが挙げられる。
・アルカリ金属化合物
アルカリ金属の水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)、アルカリ金属のカルボン酸塩(酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等)、アルカリ金属アルコキシド(リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムt−ブトキシド等)など
・アルカリ土類金属化合物
アルカリ土類金属の水酸化物(水酸化マグネシウム等)、アルカリ土類金属アルコキシド(マグネシウムメトキシド等)など
・アルミニウム化合物
アルミニウムアルコキシド(アルミニウムエトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムs−ブトキシド等)、アルミニウムアセチルアセトナートなど
・亜鉛化合物
亜鉛のカルボン酸塩(酢酸亜鉛等)、亜鉛アセチルアセトナートなど
・マンガン化合物
マンガンのカルボン酸塩(酢酸マンガン等)、マンガンアセチルアセトナートなど
・ニッケル化合物
ニッケルのカルボン酸塩(酢酸ニッケル等)、ニッケルアセチルアセトナートなど
・アンチモン化合物
アンチモンのカルボン酸塩(酢酸アンチモン等)、アンチモンアルコキシドなど
・ジルコニウム化合物
ジルコニウムアルコキシド(ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムブトキシド等)、ジルコニウムアセチルアセトナートなど
・チタン化合物
チタンアルコキシド(テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等)など
・有機スズ化合物(ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート等)
・酸系化合物(パラトルエンスルホン酸等)
【0046】
このようなエステル交換触媒のうち、チタン化合物、有機スズ化合物が好ましい。チタン化合物では、チタンアルコキシド(テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン等)がより好ましく、テトラブトキシチタンが特に好ましい。有機スズ化合物では、ジブチルスズオキシド(ジブチル酸化スズ)が特に好ましい。
【0047】
エステル交換触媒の量は、通常は、エステル交換反応に付す樹脂(メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂との混合物)100重量部に対して、0.001〜2重量部とし得る。
【0048】
エステル交換反応に付すメタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂との重量比は、メタクリル樹脂1〜99重量%およびポリカーボネート樹脂99〜1重量%(合計100重量%)とすることができるが、とりわけ、メタクリル樹脂10〜90重量%程度およびポリカーボネート樹脂90〜10重量%程度(合計100重量%)とするのが好ましい。原料として使用するメタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂の重量比は、最終的に得られる樹脂組成物に含まれるメタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂の重量比に応じて、適宜選択される。
【0049】
メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とをエステル交換反応に付すための操作方法は、特に制限されないが、これら樹脂を加熱溶融させた後に混合する溶融混練法や、これら樹脂を溶剤に溶解させた状態で混合する溶液混合法を利用できる。上記エステル交換触媒は、少なくとも混合時に存在していればよい。
【0050】
溶融混練法による場合、混練時の温度および剪断速度としては、メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とから透明な樹脂組成物を得るために、温度を180〜300℃とし、剪断速度を90〜5000sec−1、好ましくは100〜1000sec−1とする。温度を180℃以上とすることにより、エステル交換反応を適切に進行させることができ、透明な樹脂組成物を得るのに効果的である。また、温度を300℃以下とすることにより、樹脂の分解が起こることを効果的に回避できる。剪断速度を90sec−1以上とすることにより、エステル交換反応を適切に進行させることができ、透明な樹脂組成物を得るのに効果的である。また、剪断速度を5000sec−1以下とすることにより、樹脂の分解が起こることを効果的に回避できる。溶融混練に用いる機器としては、通常の混合機や混練機などを用いることができる。具体的には、一軸混練押出機、二軸混練押出機、その他の多軸押出機、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミルなどのいずれの機器を用いてもよい。このうち、連続的な製造が可能であるという点から、押出機を用いることが好ましい。押出機を用いる場合には、押出機のスクリューの長さ(L)のスクリューの口径(D)に対する比(L/D)は、特に制限されないが、エステル交換反応を適切に進行させるためには、10〜80が好ましく、15〜70が更に好ましい。
【0051】
溶液混合法による場合、溶剤としては、メタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂の双方を溶解させることができる有機溶剤を用いる必要がある。かかる有機溶剤としては、テトラヒドロフラン、クロロホルムなどが用いられる。溶液混合法による場合、メタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂の双方が溶剤に溶解している限り、混合時の温度や攪拌条件については特に制限はない。
【0052】
以上により、本発明の樹脂組成物を得ることができる。
【0053】
本発明により得られる樹脂組成物は、メタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂に加えて、これらのエステル交換反応生成物として生じた上記の式(1)で表わされる化合物を含む。本発明の樹脂組成物においては、上記の式(1)で表わされる化合物中の構造式M1におけるエステル結合が、樹脂組成物中の全エステル結合に対して0.05モル%以上の割合で存在し、これによって、本発明の樹脂組成物は優れた透明性を示す。本発明を限定するものではないが、上記の式(1)で表わされる化合物を樹脂組成物中に所定のエステル交換割合で存在させることにより、メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂との相溶性を向上させることができ、得られる樹脂組成物の透明性が高くなるものと考えられる。
【0054】
本発明の樹脂組成物中の全エステル結合に対する、上記の式(1)で表わされる化合物中の構造式M1におけるエステル結合の割合は、次のようにして求めることおよび測定することができる。
【0055】
まず、樹脂組成物中に存在し得るエステル結合について検討する。エステル交換反応としては、メタクリル樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単位またはメタクリル樹脂から分解して生じる(メタ)アクリル酸エステルによって、上記のスキーム1および2のエステル交換反応が進行する。
【0056】
よって、理論的には、最終的に得られる樹脂組成物中の全エステル結合のモル数は、スキーム1および2より、下記の(A)〜(C)、(X)〜(Z)、(A’)および(B’)のモル数の合計である。
(A)メタクリル樹脂中のメタクリル酸メチル単位におけるエステル結合のモル数
(B)メタクリル樹脂中の他の(メタ)アクリル酸エステル単位におけるエステル結合のモル数
(C)ポリカーボネート樹脂中ならびに式(1)〜(3)で表わされる化合物中の式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるエステル結合のモル数
(X)式(1)で表わされる化合物中の構造式M1におけるエステル結合のモル数
(Y)式(2)で表わされる化合物中の構造式M2におけるエステル結合のモル数
(Z)式(3)で表わされる化合物中の構造式M3におけるエステル結合のモル数
(A’)メタクリル酸メチルにおけるエステル結合のモル数
(B’)他の(メタ)アクリル酸エステルにおけるエステル結合のモル数
【0057】
よって、理論的には、樹脂組成物中の全エステル結合に対する、上記の式(1)で表わされる化合物中の構造式M1におけるエステル結合の割合(モル%)は、下記の式(P)に従って求められる。
【数2】

【0058】
しかしながら、実際的には、本発明の製造方法において原料として使用したメタクリル樹脂が、他の(メタ)アクリル酸エステル単位を含んでいたとしても微量である(例えば3重量%以下である)場合、(B’)他の(メタ)アクリル酸エステルにおけるエステル結合のモル数は、樹脂組成物中の全エステル結合を求める上で無視可能である。この結果、樹脂組成物中の全エステル結合に対する、上記の式(1)で表わされる化合物中の構造式M1におけるエステル結合の割合(モル%)は、下記の式(Q)に従って求めてよい。
【数3】

【0059】
従って、本発明の樹脂組成物において、式(1)で表わされる化合物中の構造式M1におけるエステル結合が、樹脂組成物中の全エステル結合に対して0.05モル%以上の割合で存在することは、式(Q)より、下記の式(I)を満たすものとして理解される。
【数4】

【0060】
次に、(A)〜(C)、(A’)、(B’)、(X)〜(Z)の測定方法について検討する。これらは、H−NMR法で分析することにより直接または間接的に測定することができる。このH−NMR法は、エステル交換反応後の樹脂組成物を重水素化溶媒であるクロロホルム−dに溶解させて溶液を調製し、この溶液のH−NMRスペクトルを測定して、得られた測定スペストルから所定のプロトンに起因するシグナルに基づいて目的の構造を同定および定量するものである。
【0061】
(A)について、メタクリル樹脂中のメタクリル酸メチル単位におけるエステル結合の存在は、メタクリル樹脂のメタクリル酸メチル単位中でエステル結合を成すメチル基(−CO−OC)のプロトンに起因するシグナル(3.60ppm,3H)によって同定でき、このシグナルピークについてのスペクトル積分値をプロトン数で割った値が、このエステル結合のモル数となる。
【0062】
(B)については、メタクリル樹脂が他の(メタ)アクリル酸エステル単位を含む場合に考慮が必要となる。メタクリル樹脂中の他の(メタ)アクリル酸エステル単位におけるエステル結合の存在は、メタクリル樹脂の他の(メタ)アクリル酸エステル単位、例えばアクリル酸エステル単位中でエステル結合を成す炭化水素基(−CO−O)のプロトンに起因するシグナル(例えば、Rがメチル基の場合、3.65ppm,3H)によって同定でき、このシグナルピークについてのスペクトル積分値をプロトン数で割った値が、このエステル結合のモル数となる。
【0063】
なお、(A)および(B)について、これらを同定するためのシグナルピークが互いに近似し、かつ、プロトン数が同じであることから、両者のシグナルピークにまたがってスペクトルを積分し、得られたスペクトル積分値をプロトン数で割ることにより、(A)および(B)のエステル結合のモル数の合計を得てもよい。
【0064】
(C)について、式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるエステル結合は、ポリカーボネート樹脂中に存在し、更に、式(1)〜(3)で表わされる化合物(具体的には、式(1A)、(2A)、(3A)、(1B)、(2B)、(3B)で表わされる化合物)中に存在する。ポリカーボネート樹脂中および式(1)〜(3)で表わされる化合物中の式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるエステル結合の存在は、式−O−CO−O−R−中でエステル結合を成すR基のプロトンに起因するシグナル(例えば、ポリカーボネート樹脂がビスフェノールAに由来するものである場合、6.90〜7.50ppm,8H(Rの2つの芳香族環の炭素にそれぞれ結合した8つのプロトン))によって同定でき、このシグナルピークについてのスペクトル積分値をプロトン数で割った値が、このエステル結合のモル数となる。
【0065】
なお、式(3)から理解されるように、式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるエステル結合は、構造式M3におけるエステル結合をも含むものである。上述の通り、上記(C)は、ポリカーボネート樹脂中ならびに式(1)〜(3)で表わされる化合物中の式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるエステル結合のモル数を意味し、上記(Z)は、式(3)で表わされる化合物中の構造式M3におけるエステル結合のモル数を意味することから、(C)は(Z)を含むものである。
【0066】
エステル交換反応後の樹脂組成物中には、メタクリル酸メチルおよび場合により他の(メタ)アクリル酸エステル(未反応および/または分解生成モノマー)が存在することが考えられ得る。よって、(A’)メタクリル酸メチルにおけるエステル結合のモル数、および(B’)他の(メタ)アクリル酸エステルにおけるエステル結合のモル数について検討する。
【0067】
(A’)について、メタクリル酸メチルにおけるエステル結合の存在は、メタクリル酸メチル中でエステル結合を成すメチル基(−CO−OC)のプロトンに起因するシグナル(3.75ppm、3H)によって同定でき、このシグナルピークについてのスペクトル積分値をプロトン数で割った値が、このエステル結合のモル数となる。
【0068】
(B’)について、他の(メタ)アクリル酸エステルにおけるエステル結合の存在は、他の(メタ)アクリル酸エステル、例えばアクリル酸エステル中でエステル結合を成す炭化水素基(−CO−O)のプロトンに起因するシグナル(例えば、Rがメチル基の場合、3.76ppm,3H)によって同定でき、このシグナルピークについてのスペクトル積分値をプロトン数で割った値が、このエステル結合のモル数となる。しかしながら、実際的には、(B’)の他の(メタ)アクリル酸エステルにおけるエステル結合のモル数は、上述の通り、樹脂組成物中の全エステル結合を求める上で無視可能である。
【0069】
(X)について、式(1)で表わされる化合物中の構造式M1におけるエステル結合の存在を直接同定することのできるシグナルは明らかになっていない。しかしながら、理論上、スキーム1によって、式(1)で表わされる化合物と式(3)で表わされる化合物が等モル生成し、スキーム2によって、式(2)で表わされる化合物と式(3)で表わされる化合物が等モル生成することから、下記の式(II)が成立し、これにより、(X)を(Y)および(Z)から算出することができる。
(X)=(Z)−(Y) ・・・(II)
【0070】
より詳細には、スキーム1および2をスキーム1Aおよび2Aならびに1Bおよび2Bに分けて考えると、(X)〜(Z)について下記の式が成立する。
(X)=(XA)+(XB)
(Y)=(YA)+(YB)
(Z)=(ZA)+(ZA)+(ZB)+(ZB
ここで、各記号の意味は以下の通りである。
(XA)スキーム1Aによって生成した式(1A)で表わされる化合物中の構造式M1Aにおけるエステル結合のモル数
(YA)スキーム2Aによって生成した式(2A)で表わされる化合物中の構造式M2Aにおけるエステル結合のモル数
(ZA)スキーム1Aによって生成した式(3A)で表わされる化合物中の構造式M3Aにおけるエステル結合のモル数
(ZA)スキーム2Aによって生成した式(3A)で表わされる化合物中の構造式M3Aにおけるエステル結合のモル数
(XB)スキーム1Bによって生成した式(1B)で表わされる化合物中の構造式M1Bにおけるエステル結合のモル数
(YB)スキーム2Bによって生成した式(2B)で表わされる化合物中の構造式M2Bにおけるエステル結合のモル数
(ZB)スキーム1Bによって生成した式(3B)で表わされる化合物中の構造式M3Bにおけるエステル結合のモル数
(ZB)スキーム2Bによって生成した式(3B)で表わされる化合物中の構造式M3Bにおけるエステル結合のモル数
【0071】
(XA)について、式(1A)で表わされる化合物中の構造式M1Aにおけるエステル結合の存在を直接同定することのできるシグナルは明らかになっていない。しかしながら、以下に説明するように、スキーム1Aおよび2Aより、(XA)は、(YA)、(ZA)および(ZA)から算出することができる。
【0072】
(ZA)および(ZA)について、式(3A)で表わされる化合物中の構造式M3Aにおけるエステル結合の存在は、この構造式M3A中でエステル結合を成すメチル基(−CO−OC)のプロトン(スキーム1Aおよび2A中、記号γにて示す)に起因するシグナル(3.88ppm,3H)によって同定でき(非特許文献1を参照のこと)、このシグナルピークについてのスペクトル積分値をプロトン数で割った値が、式(3A)で表わされる化合物中の構造式M3Aにおけるエステル結合の合計モル数(すなわち、(ZA)+(ZA))となる。
【0073】
(YA)について、式(2A)で表わされる化合物中の構造式M2Aにおけるエステル結合の存在は、この構造式M2A中で二重結合炭素(−C=C)に結合したプロトン(スキーム2A中、記号δにて示す)に起因するシグナル(5.73ppm,1Hおよび6.32ppm,1H)によって同定でき(非特許文献1を参照のこと)、これらシグナルピークについてのスペクトル積分値を各プロトン数で割った値の合計が、式(2A)で表わされる化合物中の構造式M2Aにおけるエステル結合のモル数となる。
【0074】
そして、理論上、スキーム1Aによって、式(1A)で表わされる化合物と式(3A)で表わされる化合物が等モル生成し、スキーム2Aによって、式(2A)で表わされる化合物と式(3A)で表わされる化合物が等モル生成することから、下記の式(IIA)が成立し、これにより、(XA)を(YA)、(ZA)および(ZA)からから算出することができる。
(XA)=(ZA)+(ZA)−(YA) ・・・(IIA)
【0075】
また、(XB)についても、式(1B)で表わされる化合物中の構造式M1Bにおけるエステル結合の存在を直接同定することのできるシグナルは明らかになっていない。しかしながら、以下に説明するように、スキーム1Bおよび2Bより、(XB)は、(YB)、(ZB)および(ZB)から算出することができる。
【0076】
(ZB)および(ZB)について、式(3B)で表わされる化合物中の構造式M3Bにおけるエステル結合の存在は、この構造式M3B中でエステル結合を成す炭化水素基(−CO−O)のプロトンに起因するシグナル(例えば、Rがメチル基の場合、式(3A)と同じく、3.88ppm,3H)によって同定でき、このシグナルピークについてのスペクトル積分値をプロトン数で割った値が、式(3B)で表わされる化合物中の構造式M3Bにおけるエステル結合の合計モル数(すなわち、(ZB)+(ZB))となる。
【0077】
(YB)について、式(2B)で表わされる化合物中の構造式M2Bにおけるエステル結合の存在は、この構造式M2B中で二重結合炭素(−C=C)に結合したプロトンに起因するシグナルによって同定可能であり、これらシグナルピークについてのスペクトル積分値を各プロトン数で割った値の合計が、式(2B)で表わされる化合物中の構造式M2Aにおけるエステル結合のモル数となる。
【0078】
そして、理論上、スキーム1Bによって、式(1B)で表わされる化合物と式(3B)で表わされる化合物が等モル生成し、スキーム2Bによって、式(2B)で表わされる化合物と式(3B)で表わされる化合物が等モル生成することから、下記の式(IIB)が成立し、これにより、(XB)を(YB)、(ZB)および(ZB)からから算出することができる。
(XB)=(ZB)+(ZB)−(YB) ・・・(IIB)
【0079】
以上より、(X)は下記の式(III)に従って算出することができる。
(X)=(ZA)+(ZA)+(ZB)+(ZB)−(YA)−(YB)
・・・(III)
なお、(ZA)および(ZA)は、式(3A)の化合物として、それらの合計モル数((ZA)+(ZA))が測定され、また、(ZB)および(ZB)は、式(3B)の化合物として、それらの合計モル数((ZB)+(ZB))が測定される。
更に、他の(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸メチルである(Rがメチル基である)場合、式(3A)と式(3B)は等しくなり、同じ化合物として、それらの合計モル数((ZA)+(ZA)+(ZB)+(ZB)=(Z))が測定される。
【0080】
しかしながら、実際的には、本発明の製造方法において原料として使用したメタクリル樹脂が、他の(メタ)アクリル酸エステル単位として、アクリル酸エステル単位を含んでいたとしても微量である(例えば3重量%以下である)場合、スキーム2Bのエステル交換反応は無視可能である。よって、この場合、上記の説明に代えて、以下の式(IV)に基づいて、(X)、(Y)および(Z)を求めてよい。
(Y)=(YA)
(Z)=(ZA)+(ZA)+(ZB
(X)=(XA)+(XB)=(ZA)+(ZA)+(ZB)−(YA)
・・・(IV)
なお、(ZA)および(ZA)は、式(3A)の化合物として、それらの合計モル数((ZA)+(ZA))が測定される。(ZB)は、(ZB)が無視可能であるため、実質的に唯一の式(3B)の化合物として、そのモル数(ZB)が測定される。
更に、他の(メタ)アクリル酸エステルが(メタ)アクリル酸メチルである(Rがメチル基である)場合、式(3A)と式(3B)は等しくなり、同じ化合物として、それらの合計((ZA)+(ZA)+(ZB)=(Z))が測定される。
【0081】
以上の説明に基づいて、(A)〜(C)、(A’)、(B’)、(X)〜(Z)を直接または間接的に測定することができる。このようにして測定された値に基づいて、本発明の樹脂組成物は、上記の式(I)を満たすものとして理解される。
【0082】
なお、上記の説明は、本発明の製造方法において原料として使用したメタクリル樹脂が、メタクリル酸メチル単位に加えて、他の単量体単位として、他の(メタ)アクリル酸エステル単位、具体的にはアクリル酸エステル単位を含む場合を想定して説明した。しかしながら、メタクリル樹脂が、メタクリル酸メチル単位に加えて、他の単量体単位として、メタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステルを含む場合には、スキーム1Bおよび2Bに関する上記の説明を適宜読み替えることによって、本発明を把握することができる。また、メタクリル樹脂が、他の(メタ)アクリル酸エステル単位を含まない場合には、他の(メタ)アクリル酸エステル単位および他の(メタ)アクリル酸エステルに関する説明を単に除外する(アクリル酸エステル単位の場合、スキーム1Bおよび2Bのエステル交換反応が起こらず、よって、(B)、(B’)、(XB)、(YB)、(ZB)、(ZB)をゼロとする)ことにより、本発明を把握することができる。
【0083】
以上より、本発明によれば、従来のような特殊なコモノマーを用いることなく、上記の式(1)で表わされる化合物を樹脂組成物中に所定のエステル交換割合で存在させるだけで、より簡便に、透明性に優れた樹脂組成物を得ることができる。また、本発明の樹脂組成物は熱可塑性を有し、耐熱性にも優れているため、成形体材料として使用可能であり、特に、透明性が求められる光学用途の成形体材料として好適に使用される。
【0084】
本発明の樹脂組成物に関して、良好な耐候性および透明性を得るために、メタクリル樹脂はメタクリル酸メチル単位を60〜100重量%含み、好ましくは70〜99重量%含む。本発明の製造方法において原料として使用するメタクリル樹脂と、最終的に得られる本発明の樹脂組成物に含まれるメタクリル樹脂とで、メタクリル酸メチル単位の含有量が異なり得るが、通常は、ほぼ同等である。また、本発明の樹脂組成物において、メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂との重量比は、メタクリル樹脂1〜99重量%およびポリカーボネート樹脂99〜1重量%(合計100重量%)とすることができるが、とりわけ、メタクリル樹脂10〜90重量%程度およびポリカーボネート樹脂90〜10重量%程度(合計100重量%)とするのが好ましい。本発明の製造方法において原料として使用するメタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂の重量比は、最終的に得られる本発明の樹脂組成物に含まれるメタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂の重量比と異なり得るが、通常は、ほぼ同等である。更に、本発明の樹脂組成物は、エステル交換触媒を含んだままであっても、その一部または全部が除去されていてもよい。
【0085】
なお、本発明の樹脂組成物においては、メタクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、相溶化剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、着色剤、発泡剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤等の慣用の添加剤を配合してもよい。また、少量の他の熱可塑性樹脂等を添加してもよい。これらの添加剤は、上述の製造方法において、メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とをエステル化反応に付している間(例えば溶融混練している間)、その前および/または後に加えてもよい。
【0086】
本発明の樹脂組成物の成形は、上述の製造方法により、予め溶融混練された樹脂混合物を、その溶融混練機をそのまま使用して成形してもよいし、得られた樹脂組成物をペレット状等にした後、射出成形機、油圧プレス等の成形機を用いて、成形機内にて溶融成形してもよい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例および比較例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより制限されるものではない。なお、樹脂組成物の透明性については、樹脂組成物を目視で観察して、透明であるか、不透明であるか(白濁しているか)を調べた。
【0088】
これら実施例および比較例において、原料として、以下のメタクリル樹脂(A−1)およびポリカーボネート樹脂(B−1)を用いた。なお、メタクリル樹脂(A−1)およびポリカーボネート樹脂(B−1)は、それぞれ80℃のオーブンにて12時間以上乾燥させてから用いた。
・メタクリル樹脂(A−1)
メタクリル樹脂として、メタクリル酸メチル97.8重量%およびアクリル酸メチル2.2重量%のモノマー組成から、バルク重合法により得られたペレット状のメタクリル樹脂(ガラス転移温度103℃)を用いた。このメタクリル樹脂について、JIS K7210に準拠して、230℃、3.8kg荷重の条件で測定したMFRは、2.0g/10分であった。
・ポリカーボネート樹脂(B−1)
ポリカーボネート樹脂として、住友ダウ株式会社製の商品名「カリバー301-10」[ポリ(4,4’−イソプロピリデン−ジフェニルカーボネート)]を用いた。このポリカーボネート樹脂について、ISO 1133に準拠して、300℃、1.2kg荷重の条件で測定したMVRは、10cm/10分であった。
【0089】
(実施例1)
(1)樹脂組成物の製造
メタクリル樹脂(PMMA)(A−1)50重量部と、ポリカーボネート樹脂(PC)(B−1)50重量部と、ジブチル酸化スズ(エステル交換触媒、和光純薬工業株式会社製)0.5重量部とを予め混合した後、二軸混練押出機(商品名「TEX−30SS」、L/D=41、株式会社日本製鋼所製)を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数200rpm(剪断速度162sec−1)、混合物の供給量8kg/時間の条件で溶融混練した。混練後、溶融物をストランド状に押出し、押出物を冷却した後にストランドカッターで切断し、ペレット状の樹脂組成物を得た。溶融混練時の樹脂温度は235℃であった。これにより得られたペレット(樹脂組成物)は透明であった。
また、上記で得られたペレットをH−NMR法により分析した。より詳細には、上記で得られたペレット(樹脂組成物)を、80℃のオーブンで24時間以上乾燥させ、乾燥後のペレットをクロロホルム−dに溶解させた溶液(0.1g/mL)を測定試料とし、バリアン・テクノロジーズジャパン・リミテッド製のFT−NMR装置 商品名「Varian NMR system PS400WB」を磁場強度400MHz(プロトンの共鳴周波数)に設定して用いて、室温、パルス幅6.15μs(45°パルス)、取り込み時間3.5秒、待ち時間10秒、積算回数64回の条件でH−NMRスペクトルを測定した。
得られた測定スペクトルから、下記の手順に従って、樹脂組成物中の全エステル結合に対する、式(1)〜(3)の化合物中のそれぞれ構造式M1〜M3におけるエステル結合の割合(モル%)を求めた。
【0090】
上述した式(IV)に従って、(A)〜(C)、(A’)、(Y)、(Z)の値(モル)を、測定スペクトルから直接求めた。また、上述した式(IV)に従って、(X)の値を算出した。結果を以下に示す。
(A)+(B)=100
(C)=41.25
(A’)=0.58
(Y)=(YA)=0.13
(Z)=(ZA)+(ZA)+(ZB)=0.24
(X)=(ZA)+(ZA)+(ZB)−(YA)=0.24-0.13=0.11
【0091】
これらの結果から、樹脂組成物中の全エステル結合に対する、式(1)の化合物中の構造式M1におけるエステル結合の割合(モル%)を、上記の式(Q)に従って算出した。また、同様にして、樹脂組成物中の全エステル結合に対する、式(2)および(3)の化合物中のそれぞれの構造式M2およびM3におけるエステル結合の割合、ならびにメタクリル酸メチルにおけるエステル結合の割合を算出した(上記の式(Q)において、分子(X)をそれぞれ(Y)、(Z)、(A’)で置換した)。結果を表2に示す。
【0092】
(2)成形体の作製
上記で得られたペレット状の樹脂組成物を、80℃のオーブンで24時間以上乾燥させた後、射出成形機(商品名「IS130FII」、東芝機械株式会社製)を用いて、シリンダー温度230℃および回転速度116rpmにて、60℃設定の金型に射出成形して、50mm×50mm×3.4mmの板状成形体を得た。これにより得られた板状成形体は透明であった。
【0093】
(実施例2)
溶融混練時のスクリュー回転数を300rpm(剪断速度243sec−1)としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造した。溶融混練時の樹脂温度は238℃であった。これにより得られたペレット(樹脂組成物)は透明であった。
得られたペレットを、実施例1と同様の手順で、H−NMR法により分析した。結果を表2に示す。
更に、上記で得られたペレット状の樹脂組成物を、実施例1と同様にして成形し、板状成形体を作製した。これにより得られた板状成形体は透明であった。
【0094】
(実施例3)
メタクリル樹脂(A−1)80重量部と、ポリカーボネート樹脂(B−1)20重量部と、ジブチル酸化スズ(エステル交換触媒、和光純薬工業株式会社製)0.2重量部とを予め混合したこと、および二軸混練押出機への混合物の供給量4kg/時間としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造した。溶融混練時の樹脂温度は238℃であった。これにより得られたペレット(樹脂組成物)は透明であった。
得られたペレットを、実施例1と同様の手順でH−NMR法により分析した。結果を表2に示す。
更に、上記で得られたペレット状の樹脂組成物を、実施例1と同様にして成形し、板状成形体を作製した。これにより得られた板状成形体は透明であった。
【0095】
(比較例1)
エステル交換触媒であるジブチル酸化スズを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造した。溶融混練時の樹脂温度は235℃であった。これにより得られたペレット(樹脂組成物)は不透明であった。
得られたペレットを、実施例1と同様の手順でH−NMR法により分析した。結果を表2に示す。
更に、上記で得られたペレット状の樹脂組成物を、実施例1と同様にして成形し、板状成形体を作製した。これにより得られた板状成形体は不透明であった。
【0096】
(比較例2)
エステル交換触媒であるジブチル酸化スズの量を、0.1重量部としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を製造した。溶融混練時の樹脂温度は235℃であった。これにより得られたペレット(樹脂組成物)は不透明であった。
得られたペレットを、実施例1と同様の手順でH−NMR法により分析した。結果を表2に示す。
【0097】
以上の実施例1〜3および比較例1〜2について、メタクリル樹脂(A−1)、ポリカーボネート樹脂(B−1)および触媒の使用割合、溶融混練時の剪断速度、ならびに得られたペレット状の樹脂組成物の透明性を表1にまとめて示す。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
(実施例4)
比較例2で得られたペレット状の樹脂組成物を、実施例1と同様にして成形し、板状成形体を作製した。これにより得られた板状成形体は透明であった。
得られた成形体を、実施例1と同様の手順でH−NMR法により分析した。結果を表3に示す。
【0101】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明の樹脂組成物は、優れた透明性を有する熱可塑性樹脂組成物であり、メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂の特性を併せ持った成形材料として幅広く利用される。また、本発明の樹脂組成物は、フィルム、シートなどの各種成形品に利用され、特にレンズ、光ディスク基板、導光板などの電子光学用成形品に好適に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクリル酸メチル単位60〜100重量%、および他の(メタ)アクリル酸エステル単位を含むα,β−不飽和単量体単位から選択される少なくとも1種の他の単量体単位40〜0重量%(合計100重量%)を含むメタクリル樹脂、
式−O−CO−O−R−[式中、Rは二価の有機基]で表わされる単量体単位を含むポリカーボネート樹脂、ならびに
下記の式(1)で表わされる化合物
【化1】

[式中、Rは上記の通りであり、Rはメチル基または水素原子であり、Rはメチル基または他のアルキル基であり、lおよびmは互いに独立した2以上の整数である]
を含む樹脂組成物であって、式(1)で表わされる化合物中の構造式M1におけるエステル結合が、樹脂組成物中の全エステル結合に対して0.05モル%以上の割合で存在する、樹脂組成物。
【請求項2】
下記の式(2)および式(3)で表わされる化合物を更に含み、
【化2】

[式中、R、RおよびRは上記の通りであり、m’およびnは互いに独立した2以上の整数である]
下記の式(I)を満たす、請求項1に記載の樹脂組成物。
【数1】

[式中、
(A)はメタクリル樹脂中のメタクリル酸メチル単位におけるエステル結合のモル数であり、
(B)はメタクリル樹脂中の他の(メタ)アクリル酸エステル単位におけるエステル結合のモル数であり、
(C)はポリカーボネート樹脂中ならびに式(1)〜(3)で表わされる化合物中の式−O−CO−O−R−で表わされる単量体単位におけるエステル結合のモル数であり、
(X)は式(1)で表わされる化合物中の構造式M1におけるエステル結合のモル数であり、
(Y)は式(2)で表わされる化合物中の構造式M2におけるエステル結合のモル数であり、
(A’)はメタクリル酸メチルにおけるエステル結合のモル数である]
【請求項3】
前記(X)は、以下の式(II)に基づいて算出される、請求項2に記載の樹脂組成物。
(X)=(Z)−(Y) ・・・(II)
[式中、(X)および(Y)は上記の通りであり、(Z)は式(3)で表わされる化合物中の構造式M3におけるエステル結合のモル数である]
【請求項4】
メタクリル酸メチル単位を含み、および任意成分として、他の(メタ)アクリル酸エステル単位を含むα,β−不飽和単量体単位から選択される少なくとも1種の他の単量体単位を含むメタクリル樹脂と、式−O−CO−O−R−[式中、Rは二価の有機基]で表わされる単量体単位を含むポリカーボネート樹脂とを、エステル交換反応に付して、エステル交換反応生成物として前記式(1)で表わされる化合物を生じさせ、これにより、請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を得る、樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。

【公開番号】特開2012−201831(P2012−201831A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69110(P2011−69110)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】