説明

樹脂組成物及びその成形体並びに樹脂製品

【課題】 本発明は、より広い範囲の不織布との超音波接着性が良好である樹脂組成物及び該樹脂組成物の成形体並びに該成形体を有する樹脂製品を提供することを目的とする。
【解決手段】 樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂並びに少なくともオレフィン及び極性基を有するビニルモノマーを共重合させた樹脂を含有する。成形体は、上記の樹脂組成物が成形されている。樹脂製品は、上記の成形体を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び樹脂組成物の成形体並びに樹脂製品に関する。
【背景技術】
【0002】
紙おむつのウエストギャザー及び生理用ナプキンのウイング部のギャザーの材料として、ポリウレタン製の発泡テープ、伸縮性フィルム、糸ゴム、ポリウレタン製の弾性糸等が使用されている。特に、紙おむつの用途では、ポリウレタン製の弾性糸が使用されている(特許文献1参照)。この理由としては、ポリウレタン製の弾性糸が弱い力で伸縮し、伸縮歪も小さいので、弾性糸の本数を調整することで伸縮力を制御できること、不織布と組み合わせることにより、透湿性及び通気性を確保できること及び作業性が優れることが挙げられる。しかしながら、ポリウレタン製の弾性糸は、ポリプロピレン製の不織布、ポリエチレン製の不織布、ポリエステル製の不織布及びこれらの複合系の不織布等との熱接着性及び超音波接着性が低いため、スチレン系、EVA系等のホットメルト接着剤を使用する必要がある。さらに、ポリウレタン製の弾性糸は、断面が円形であるため、ホットメルト接着剤による接着では、接着強度に問題が発生することがある。
【0003】
一方、不織布製簡易マスクの耳紐としては、ゴム製の紐、ウーリーナイロン製の紐、ポリウレタン製の紐等が使用されている。しかしながら、半導体製造用の簡易マスクは、埃を嫌うため、パウダーの付着しているゴム製の紐及び毛羽立ちがあるウーリーナイロン製の紐を使用することができない。また、ポリウレタン製の紐は、ポリプロピレン製の不織布との超音波接着性が低いため、紐を肉厚にすることで対応しているが、伸縮戻りの強度が強くなり、長時間着用すると、耳に痛みを感じるという問題があった。そこで、軟質ポリウレタンフォームの両面にプラスチックフィルムを貼着した紐を熱融着によりマスクに固定することで、耳の痛みを防止できることが知られている(特許文献2参照)。しかしながら、この方法では、プラスチックフィルムを貼着させる工程が必要となり、コストが増大する問題がある。
【特許文献1】特開2000−289931号公報
【特許文献2】特開2002−65878号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、より広い範囲の不織布との超音波接着性が良好である樹脂組成物及び該樹脂組成物の成形体並びに該成形体を有する樹脂製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、樹脂組成物において、ポリウレタン樹脂並びに少なくともオレフィン及び極性基を有するビニルモノマーを共重合させた樹脂を含有することを特徴とする。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、ポリウレタン樹脂並びに少なくともオレフィン及び極性基を有するビニルモノマーを共重合させた樹脂を含有するので、より広い範囲の不織布との超音波接着性が良好である樹脂組成物を提供することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の樹脂組成物において、前記ポリウレタン樹脂の含有量は、30重量部以上85重量部以下であり、前記共重合させた樹脂の含有量は、10重量部以上50重量部以下であることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、前記ポリウレタン樹脂の含有量は、30重量部以上85重量部以下であり、前記共重合させた樹脂の含有量は、10重量部以上50重量部以下であるので、共重合させた樹脂は、より広い範囲の不織布とポリウレタン樹脂との超音波接着性を高めることができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の樹脂組成物において、前記オレフィンは、エチレン、プロピレン及び1−ブテンからなる群より選択される一種以上のオレフィンであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、前記オレフィンは、エチレン、プロピレン及び1−ブテンからなる群より選択される一種以上のオレフィンであるので、共重合させた樹脂と、より広い範囲の不織布との相溶性を高めることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂組成物において、前記極性基を有するビニルモノマーは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びカルボン酸ビニルからなる群より選択される一種以上のモノマーであることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、前記極性基を有するビニルモノマーは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びカルボン酸ビニルからなる群より選択される一種以上のモノマーであるので、共重合させた樹脂とウレタン樹脂との相溶性を高めることができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の樹脂組成物において、前記アクリル酸エステルは、一般式
CH=CH−COOC2l+1
で示される化合物であり、前記メタクリル酸エステルは、一般式
CH=C(CH)−COOC2m+1
で示される化合物であり、前記カルボン酸ビニルは、一般式
CH=CH−OCOC2n+1
で示される樹脂であり、l、m及びnは、それぞれ1以上4以下の整数であることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、前記アクリル酸エステルは、一般式
CH=CH−COOC2l+1
で示される化合物であり、前記メタクリル酸エステルは、一般式
CH=C(CH)−COOC2m+1
で示される化合物であり、前記カルボン酸ビニルは、一般式
CH=CH−OCOC2n+1
で示される樹脂であり、l、m及びnは、それぞれ1以上4以下の整数であるので、共重合させた樹脂とウレタン樹脂との相溶性を高めることができる。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の樹脂組成物において、前記共重合させた樹脂中の共重合させた前記極性基を有するビニルモノマーの含有率は、15重量%以上30重量%以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、前記共重合させた樹脂中の共重合させた前記極性基を有するビニルモノマーの含有率は、15重量%以上30重量%以下であるので、樹脂組成物の伸縮性及び耐ブロッキング性を両立させることができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の樹脂組成物において、無機充填剤をさらに含有することを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の発明によれば、無機充填剤をさらに含有するので、耐ブロッキング性及び耐熱性を向上させることができる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の樹脂組成物において、前記無機充填剤の含有量は、2重量部以上20重量部以下であることを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明によれば、前記無機充填剤の含有量は、2重量部以上20重量部以下であるので、ポリウレタン樹脂組成物の強度を低下させること無く、耐ブロッキング性及び耐熱性を向上させることができる。
【0021】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至8に記載の樹脂組成物において、スチレンからなる重合体ブロックA及び共役ジエンモノマーからなる重合体ブロックBを有するA−B−A型ブロック共重合体に水素を付加させ、マレイン酸変性させた樹脂をさらに含有することを特徴とする。
【0022】
請求項9に記載の発明によれば、スチレンからなる重合体ブロックA及び共役ジエンモノマーからなる重合体ブロックBを有するA−B−A型ブロック共重合体に水素を付加させ、マレイン酸変性させた樹脂をさらに含有するので、無機充填剤の分散性を向上させることができる。
【0023】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の樹脂組成物において、前記共役ジエンモノマーは、ブタジエン及びイソプレンの少なくとも一方であることを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載の発明によれば、前記共役ジエンモノマーは、ブタジエン及びイソプレンの少なくとも一方であるので、リビングアニオン重合法によりスチレンとのブロック共重合体を合成することができる。
【0025】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10に記載の樹脂組成物において、前記マレイン酸変性させた樹脂の含有量は、1重量部以上10重量部以下であることを特徴とする。
【0026】
請求項11に記載の発明によれば、前記マレイン酸変性させた樹脂の含有量は、1重量部以上10重量部以下であるので、ポリウレタン樹脂組成物の強度が低下させることなく、無機充填剤の分散性を向上させることができる。
【0027】
請求項12に記載の発明は、成形体において、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の樹脂組成物が成形されていることを特徴とする。
【0028】
請求項12に記載の発明によれば、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の樹脂組成物が成形されているので、より広い範囲の不織布との超音波接着性が良好である成形体を提供することができる。
【0029】
請求項13に記載の発明は、請求項12に記載の成形体において、さらに、延伸された状態でアニーリングされていることを特徴とする。
【0030】
請求項13に記載の発明によれば、さらに、延伸された状態でアニーリングされているので、低応力下での伸縮歪を減少させ、伸縮性を向上させることができる。
【0031】
請求項14に記載の発明は、樹脂製品において、請求項12又は13に記載の成形体を有することを特徴とする。
【0032】
請求項14に記載の発明によれば、請求項12又は13に記載の樹脂成形体を有するので、伸縮性テープ、弾性紐等を有する樹脂製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、より広い範囲の不織布との超音波接着性が良好である樹脂組成物及び該樹脂組成物の成形体並びに該成形体を有する樹脂製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂並びに少なくともオレフィン及び極性基を有するビニルモノマーを共重合させた樹脂を含有する。なお、ポリウレタン樹脂の含有量は、30重量部以上85重量部以下であり、共重合させた樹脂の含有量は、10重量部以上50重量部以下であることが好ましい。ポリウレタン樹脂は、ポリプロピレン製の不織布等との超音波接着性が低いが、これは両樹脂間の相溶性が低いことに起因していると考えられる。そこで、ポリプロピレン製の不織布等との相溶性が良好なオレフィン及びポリウレタン樹脂との相溶性が良好な極性基を有するビニルモノマーを共重合させた樹脂を含有する樹脂組成物を形成することにより、より広い範囲の不織布との超音波接着性が良好となる。ここで、樹脂組成物の超音波接着性が良好であることの利点としては、樹脂組成物を接着させる際に硬化させないため、接着後の樹脂組成物がリサイクルしやすいこと及び樹脂組成物を接着させるコストを削減できることが挙げられる。リサイクルの具体例としては、完全プラスチック化された形状保持の支持部材、樹脂組成物を成形して得られる伸縮性テープ又は弾性紐を有するフラットマスク等を一括溶融リペレット化することが挙げられる。
【0036】
本発明で用いられるオレフィンは、重合性を考慮すると、通常α−オレフィンであり、エチレン、プロピレン及び1−ブテンからなる群より選択される一種以上のオレフィンであることが好ましい。これにより、共重合させた樹脂と、より広い範囲の不織布との相溶性を高めることができる。
【0037】
本発明で用いられる極性基を有するビニルモノマーは、通常エステル基を有するモノマーであり、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びカルボン酸ビニルからなる群より選択される一種以上のモノマーであることが好ましい。これにより、共重合させた樹脂とウレタン樹脂との相溶性を高めることができる。ここで、アクリル酸エステルは、一般式
CH=CH−COOC2l+1
で示される化合物であり、メタクリル酸エステルは、一般式
CH=C(CH)−COOC2m+1
で示される化合物であり、カルボン酸ビニルは、一般式
CH=CH−OCOC2n+1
で示される化合物であり、l、m及びnは、それぞれ1以上4以下の整数であることが好ましい。l、m及びnがそれぞれ5以上の整数になると、共重合させた樹脂と、ウレタン樹脂との相溶性を高める効果が低下するため、好ましくない。
【0038】
本発明で用いられる共重合させた樹脂中の共重合させた極性基を有するビニルモノマーの含有率は、15重量%以上30重量%以下であることが好ましい。これにより、樹脂組成物の伸縮性及び耐ブロッキング性を両立させることができる。なお、この含有率が15重量%より小さいと、樹脂組成物の伸縮性が不十分となり、30重量%より大きいとブロッキングしやすくなる。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、無機充填剤をさらに含有することが好ましい。これにより、耐ブロッキング性及び耐熱性を向上させることができる。無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、石膏、カーボンブラック、マイカ、クレー、カオリン、シリカ、ケイソウ土等を挙げることができるが、炭酸カルシウムが特に好ましい。無機充填材は、平均粒子径が0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、表面が脂肪酸等で処理されたものも用いることができる。
【0040】
これらの無機充填材は、単独又は組み合わせて使用することができる。また、無機充填材の添加量は、2重量部以上20重量部以下であることが好ましい。添加量が2重量部より小さいと、無機充填剤の効果が不十分となり、20重量部より大きいと、樹脂組成物の強度が低下することがある。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、スチレンからなる重合体ブロックA及び共役ジエンモノマーからなる重合体ブロックBを有するA−B−A型ブロック共重合体に水素を付加させ、マレイン酸変性させた樹脂をさらに含有することが好ましい。これにより、樹脂組成物中における無機充填剤の分散性を向上させることができる。なお、マレイン酸変性させた樹脂とは、無水マレイン酸をグラフトした樹脂を意味し、グラフトする方法としては、押出機等を用いて、樹脂をラジカル開始剤及び無水マレイン酸と溶融混練する方法が挙げられる。ここで、共役ジエンモノマーは、ブタジエン及びイソプレンの少なくとも一方であることが好ましい。具体的には、スチレンとブタジエン(又はイソプレン)を用いてリビングアニオン重合することにより、A−B−A型ブロック共重合体として、ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−スチレン)(又はポリ(スチレン−b−イソプレン−b−スチレン))を合成することができる。さらに、A−B−A型ブロック共重合体に水素を付加させ、マレイン酸変性させることにより、マレイン酸変性ポリ[スチレン−b−(エチレン−co−ブチレン)−b−スチレン](以下、マレイン酸変性SEBSという)(又はマレイン酸変性ポリ[スチレン−b−(エチレン−co−プロピレン)−b−スチレン])が得られる。なお、マレイン酸変性させた樹脂の含有量は、1重量部以上10重量部以下であることが好ましい。含有量が1重量部より小さいと、無機充填剤の分散不良により延伸時に成形体が白濁することがある。10重量部より大きいと、樹脂組成物の強度及び耐熱性が低下することがある。
【0042】
なお、本発明においては、樹脂組成物に、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、色剤等を適宜配合することができる。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、ヘンシェルミキサー、高速ミキサー等を用いて原料組成物をドライブレンドした状態で用いても構わない。また、ドライブレンドした原料組成物を、180℃以上230℃以下程度の加熱下、押出機等を用いて溶融混練して押し出し、ペレット化した状態で、樹脂組成物を用いても構わない。
【0044】
本発明の成形体は、上記の樹脂組成物が成形されている。これにより、より広い範囲の不織布との熱接着性及び超音波接着性が良好である成形体を提供することができる。このような成形体としては、伸縮性フィルム、伸縮性テープ、弾性紐等を挙げることができる。
【0045】
樹脂組成物を成形して伸縮性フィルムを作製するためには、T−ダイ押出機を用いて成形することも可能であるが、フィルムの縦と横の強度バランス、高速成形性等を考慮すると、チューブ状のフィルムを成形する空冷インフレーション成形法を用いることが好ましい。なお、空冷インフレーション成形は、樹脂温度が180℃以上220℃以下、ブロー比が1.5以上5以下で行うことが好ましい。このとき、伸縮性フィルムの厚さは、各種用途により適宜選択されるが、通常200μm以下であることが好ましく、30μm以上150μm以下がさらに好ましい。伸縮性フィルムの厚さが200μmより大きくなると、フィルムの製膜安定性に支障を来す恐れがあり、好ましくない。なお、伸縮性フィルムを15mm以上60mm以下程度の幅に裁断して、ロール巻製品にするか、受箱にそのまま垂らし込むことにより、伸縮性テープとすることができる。また、ロール巻製品を更に1mm以上15mm以下の細幅に裁断してトラバース巻製品にするか、受箱にそのまま垂らし込むことにより、伸縮性細幅テープとすることができる。
【0046】
本発明の成形体は、さらに、延伸された状態でアニーリングされていることが好ましい。これにより、低応力下での伸縮歪みを減少させ、伸縮性を向上させることができる。伸縮性テープを延伸する場合、延伸方向は、縦一軸方向(MD)、横一軸方向(TD)及び縦横二軸方向のいずれでもよい。延伸倍率は任意であるが、いずれの方向でも通常1.5倍以上6倍以下程度であり、1.5倍以上3.5倍以下が好ましい。なお、伸縮性テープの延伸は加熱下で行ってもよい。次に、延伸した伸縮性テープをアニーリングする場合、延伸時の温度以上の温度、具体的には、常温以上90℃以下で行うことが好ましい。このとき、アニーリングは、高温のロール及び湯漕のいずれを用いて実施しても構わない。
【0047】
さらに、本発明においては、伸縮性テープを延伸し、アニーリングした後に裁断するか、伸縮性テープを裁断した後に延伸し、アニーリングすることにより、弾性紐を得ることができる。弾性紐の幅は、通常1mm以上15mm以下であり、1.5mm以上10mm以下程度が好ましい。なお、伸縮性テープは、縦一軸方向(MD)に延伸され、延伸倍率は任意であるが、通常1.5倍以上6倍以下程度であり、1.5倍以上3.5倍以下程度が好ましい。また、延伸は加熱下で行ってもよい。なお、アニーリングは、上記と同様に実施することができる。
【0048】
本発明の樹脂製品は、上記の成形体が接着している。具体的には、伸縮性テープを伸縮した状態で不織布、織布、プラスチックフィルム、プラスチックシート又はこれらの積層体に熱接着又は超音波接着させ、テープの伸縮を緩和して得られる紙おむつのウエストギャザー、生理用ナプキンのウイング部のギャザー、湿布材用基材等、弾性紐を不織布に超音波接着させることにより得られる半導体製造用の不織布製簡易マスク等が挙げられる。
【実施例】
【0049】
本実施例中の部数は全て重量部であり、本実施例は本発明を例示したものに過ぎず、これら実施例により本発明は限定されない。
(実施例1)
熱可塑性ポリウレタン樹脂レザミンP−6185(大日精化工業社製)70部、アクリル酸メチル含有量が21.5重量%のエチレン−アクリル酸メチル共重合体OPTEMA TC−110(エクソンモービル化学社製)70重量%及び平均粒子径が3.2μmの炭酸カルシウムPOフィラー150B脂肪酸処理品(白石カルシウム社製)30重量%からなるマスターバッチ25部並びにマレイン酸変性SEBSタフテックM1913(旭化成社製)5部からなる混合原料を、空冷インフレーション製膜装置を用いて、折径600mm、厚さ100μmのフィルムを作製した。このとき、レザミンP−6185については、チャレンジャー除湿乾燥機(カワタ社製)を用いて85℃で24時間予め乾燥したものを用いた。なお、押出は、直径55mmの押出機YEI−55HDR−W130S−LRW(吉井鉄工社製)で、直径150mmスパイラルダイ及びフルフライトシングルタイプの先端ミキシングで有効長が26であるスクリューを用いて行った。なお、押出条件は、C1、C2、C3、H、D1及びD2の温度がそれぞれ195℃、215℃、220℃、220℃、221℃及び220℃、スクリュー回転数が40rpm以上70rpm以下、押出量が35kg/時以上65kg/時以下とした。また、製膜条件は、幅が600mm、引取速度が4m/分以上20m/分以下とした。このフィルムの両耳を裁断した後、2枚に分けてシート状に巻き取り、幅500mmの伸縮性フィルムを作製した。
【0050】
次に、回転刃方式のゴードースリッター531K(ゴードーキコー社製)を用いて伸縮性フィルムを40mmの幅に裁断したものを、3インチ紙管にレコード巻として100m以上200m以下巻き取り、厚さ100μm、幅40mmの伸縮性テープを作製した。
【0051】
さらに、スリット刃にレザー刃を用いたトラバースワインダーBTW型(伸和鉄工社製)で伸縮性テープを裁断して巻き取り、厚さ100μm、幅4.5mm、線密度0.52g/mの伸縮性テープを作製した。
(実施例2)
レザミンP−6185を50部、マスターバッチ45部及びタフテックM1913を5部からなる混合原料を用い、実施例1と同様に加工し、厚さ100μm、幅4.5mm、線密度0.51g/mの伸縮性テープを作製した。
(実施例3)
レザミンP−6185を30部、マスターバッチ65部及びタフテックM1913を5部からなる混合原料を用い、実施例1と同様に加工し、厚さ100μm、幅4.5mm、線密度0.5g/mの伸縮性テープを作製した。
(実施例4)
実施例1と同様の混合原料を用い、同様に加工し、厚さ145μm、幅60mmの伸縮性テープを作製した。さらに、トラバースワインダーBTW型で裁断することにより、厚さ145μm、幅6mm、線密度0.93g/mの伸縮性テープを作製し、段ボール箱に垂らし込んだ。
(実施例5)
実施例1と同様に加工し、得られた厚さ100μm、幅4.5mm、線密度0.52g/mの伸縮性テープを常温で2倍に延伸した後、50℃の水槽でアニーリングし、常温のロールで段ボール箱に垂らし込み、厚さ100μm、幅4.5mm、線密度0.45g/mの弾性紐を作製した。
(実施例6)
実施例1と同様の混合原料を用い、同様に加工し、厚さ100μm、幅20mmの伸縮性テープを作製した。さらに、トラバースワインダーBTW型で裁断することにより、厚さ100μm、幅2mmの伸縮性テープを作製した。得られた伸縮性テープを常温で2倍に延伸した後、50℃の水槽でアニーリングし、常温のロールで段ボール箱に垂らし込み、厚さ100μm、幅2mm、線密度0.2g/mの弾性紐を作製した。
(実施例7)
実施例1と同様の混合原料を用い、同様に加工し、厚さ100μm、幅50mmの伸縮性テープを作製した。さらに、トラバースワインダーBTW型で裁断することにより、厚さ100μm、幅10mmの伸縮性テープを作製した。得られた伸縮性テープを中央部分で折り畳んで幅を5mmにした後、常温の空気中で2倍に延伸した。この伸縮性テープの張力を解除すると、12%程度の残留歪が発生した。この伸縮性テープを再度2倍に延伸して両端をセロテープ(登録商標)で固定した。この状態で、70℃の水中に1秒間浸漬してアニーリングした後、常温の水中で冷却し、厚さ100μm、幅5mm、線密度0.52g/mの弾性紐を作製した。
(比較例1)
ポリウレタン製の伸縮性テープとして、厚さ160μm、幅4mm、線密度0.67g/mのモビロン(日清紡社製)を用いた。なお、モビロンは、延伸加工はされていない。
(比較例2)
ポリウレタン製の伸縮性テープとして、厚さ180μm、幅5mm、線密度1.8g/mのモビロンを用いた。
(比較例3)
ポリウレタン製の弾性糸として、線密度0.122g/mのオペロン(東レ・デュポン社製)を用いた。なお、オペロンは、延伸加工されている。
(評価方法及び評価結果)
伸縮性は、JIS−L1096に対応した引張試験機RTA−100(オリエンテック社製)を用いて、伸縮性テープ、弾性紐及び弾性糸を縦一軸方向(MD)に伸縮させ、チャック間が100mm、チャックスピードが300mm/分で、100%伸長の時点で折り返して応力歪み曲線を描かせることにより評価を行い、結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

なお、表中、行きとは、100%伸長する前の過程を意味し、戻りとは、100%伸長した後の過程を意味し、伸縮歪みとは、戻りで応力が0になる時点での歪みを意味する。また、表1には、評価に用いた伸縮性テープ、弾性紐及び弾性糸の厚さ、幅及び線密度を掲載した。表1の応力及び伸縮歪みの値から、実施例1乃至4の伸縮性テープ及び実施例5乃至7の弾性紐は、実用上、問題の無い伸縮性を有することがわかった。
【0053】
また、伸縮性テープ、弾性紐及び弾性糸の引張強伸度は、チャック間を50mmにした以外は、上記と同様にして評価を行い、結果を表2に示した。
【0054】
【表2】

表2の破断強度及び破断時の歪みの値から、実施例1乃至4の伸縮性テープ及び実施例5乃至7の弾性紐は、実用上、問題の無い引張強伸度を有することがわかった。
【0055】
超音波接着性は、弾性紐を不織布に超音波接着させた半導体製造用簡易マスクを実際に装着して確認し、切れ及び剥がれの発生が全く起こらないものを◎、殆ど起こらない場合を○、起こる場合と起こらない場合があるものを△、起こるものを×として評価した。なお、超音波接着は、手動タイプの超音波シール機HW35型(スイス リンコ社製)を用いて、溶着時間が0.5秒以上1.5秒以下、冷却時間が1秒、エアー圧力が2kg/cm、ホーンと台との間隙が0.2mm以下となる条件で行った。ここで用いた半導体製造用簡易マスクは、3層構造をしており、超音波接着させる最内層の不織布は、面積密度が18g/mのポリプロピレン製スパンボンド(市販品)である。なお、最内層の超音波接着部分には、ナイロン製の不織布、ポリエステル製の不織布及びポリプロピレン製の不織布が使用されている3種類の半導体製造用の簡易マスクで超音波接着性の評価を行い、結果を表3に示した。
【0056】
【表3】

これより、比較例1及び2の伸縮性テープで困難であったポリプロピレン不織布との超音波接着が実施例1乃至4の伸縮性テープで可能となり、比較例3の弾性糸で困難であったナイロン不織布、ポリエステル不織布及びポリプロピレン不織布との超音波接着が実施例5乃至7の弾性紐で可能となったことがわかった。また、プラスチック製の形状保持部材を備え、実施例1乃至4の伸縮性テープ及び実施例5乃至7の弾性紐をポリプロピレン製の不織布に超音波接着させた簡易マスクは、従来のポリウレタンテープをポリプロピレン製の不織布に接着させた簡易マスクでは困難であったマスク全部材の一括リサイクルが可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂並びに少なくともオレフィン及び極性基を有するビニルモノマーを共重合させた樹脂を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂の含有量は、30重量部以上85重量部以下であり、
前記共重合させた樹脂の含有量は、10重量部以上50重量部以下であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記オレフィンは、エチレン、プロピレン及び1−ブテンからなる群より選択される一種以上のオレフィンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記極性基を有するビニルモノマーは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びカルボン酸ビニルからなる群より選択される一種以上のモノマーであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記アクリル酸エステルは、一般式
CH=CH−COOC2l+1
で示される化合物であり、
前記メタクリル酸エステルは、一般式
CH=C(CH)−COOC2m+1
で示される化合物であり、
前記カルボン酸ビニルは、一般式
CH=CH−OCOC2n+1
l、m及びnは、それぞれ1以上4以下の整数であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記共重合させた樹脂中の共重合させた前記極性基を有するビニルモノマーの含有率は、15重量%以上30重量%以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
無機充填剤をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記無機充填剤の含有量は、2重量部以上20重量部以下であることを特徴とする請求項7に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
スチレンからなる重合体ブロックA及び共役ジエンモノマーからなる重合体ブロックBを有するA−B−A型ブロック共重合体に水素を付加させ、マレイン酸変性させた樹脂をさらに含有することを特徴とする請求項1乃至8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記共役ジエンモノマーは、ブタジエン及びイソプレンの少なくとも一方であることを特徴とする請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記マレイン酸変性させた樹脂の含有量は、1重量部以上10重量部以下であることを特徴とする請求項9又は10に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の樹脂組成物が成形されていることを特徴とする成形体。
【請求項13】
さらに、延伸された状態でアニーリングされていることを特徴とする請求項12に記載の成形体。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の成形体を有することを特徴とする樹脂製品。

【公開番号】特開2006−52364(P2006−52364A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236667(P2004−236667)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(302002797)新和興化成株式会社 (3)
【Fターム(参考)】