説明

樹脂組成物及び成形体

【課題】薄肉加工性に優れるポリアルキレンカーボネート系樹脂材料を提供する。
【解決手段】下記成分(A)と、成分(A)100重量部あたり、100重量部以上2500重量部以下の下記成分(B)と、2重量部以上100重量部以下の下記成分(C)とを混練して得られる樹脂組成物。
成分(A):ポリアルキレンカーボネート系樹脂。
成分(B):ポリオレフィン系樹脂。
成分(C):エポキシ基及び/又はカルボキシル基を有する化合物に由来する単量体単位とオレフィンに由来する単量体単位とを有する重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレンカーボネート系樹脂は、二酸化炭素を原料とすることができるために、環境に与える負荷が低い合成樹脂の一つとして近年注目を集めており、当該ポリアルキレンカーボネート系樹脂を用いた材料の開発がなされている。例えば、特許文献1には、耐熱安定剤を含有するポリプロピレンカーボネート樹脂組成物が提案されており、特許文献2には、ポリプロピレンカーボネート系樹脂とポリプロピレン樹脂とを含有する樹脂組成物、及び、ポリプロピレンカーボネート系樹脂とポリエチレン樹脂とを含有する樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−263904号公報
【特許文献2】国際公開第2011/005664号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ポリアルキレンカーボネート系樹脂とポリオレフィン系樹脂とからなる材料あるいはポリアルキレンカーボネート系樹脂を押出成形した場合、薄肉加工性において、十分満足のいくものではなかった。
【0005】
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、薄肉加工性に優れるポリアルキレンカーボネート系樹脂材料および当該樹脂材料からなる成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1は、下記成分(A)と、成分(A)100重量部あたり、100重量部以上2500重量部以下の下記成分(B)と、2重量部以上100重量部以下の下記成分(C)とを混練して得られる樹脂組成物に係るものである。
成分(A):ポリアルキレンカーボネート系樹脂。
成分(B):ポリオレフィン系樹脂。
成分(C):エポキシ基及び/又はカルボキシル基を有する化合物に由来する単量体単位とオレフィンに由来する単量体単位とを有する重合体。
【0007】
本発明の第2は、上記樹脂組成物を成形して得られる成形体にかかるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄肉加工性に優れるポリアルキレンカーボネート系樹脂材料および当該樹脂材料からなる成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、ヒドロカルビル基は炭化水素から1つの水素原子を除いた1価の基を表す。ヒドロカルビレン基は、炭化水素から2つの水素原子を除いた2価の基を表す。
【0010】
<成分(A)>
本発明の樹脂組成物は、下記成分(A)と、成分(A)100重量部あたり、100重量部以上2500重量部以下の下記成分(B)と、2重量部以上100重量部以下の下記成分(C)とを混練して得られるものである。
成分(A):ポリアルキレンカーボネート系樹脂。
成分(B):ポリオレフィン系樹脂。
成分(C):エポキシ基及び/又はカルボキシル基を有する化合物に由来する単量体単位とオレフィンに由来する単量体単位とを有する重合体。
【0011】
成分(A)のポリアルキレンカーボネート系樹脂は、下記式(1)で表される構成単位を有する重合体である。

(式中、Rはヒドロカルビレン基を表す。)
【0012】
ポリアルキレンカーボネート系樹脂は、下記式(1−1)で表される構成繰り返し単位(以下、式(1−1)単位と記すことがある。)と、下記式(1−2)で表される構成繰り返し単位(以下、式(1−2)単位と記すことがある。)を有する。式(1−2)単位の含有量は、ポリアルキレンカーボネート系樹脂を100重量%として、好ましくは20重量%〜44重量%である。なお、構成繰り返し単位の量は、核磁気共鳴法により求めることができる。

(式中、Rはヒドロカルビレン基を表す。)

【0013】
式(1−1)単位としては、下記式(1−1a)で表される構成繰り返し単位が好ましい。

(式中、R2およびR3はそれぞれ水素原子またはヒドロカルビル基を表す。)
【0014】
式(1)において、R2およびR3のヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、1−ペンチル基、1−ヘキシル基などをあげることができる。
【0015】
2およびR3のヒドロカルビル基の炭素原子数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜5である。
【0016】
2は好ましくは水素原子である。R3は好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0017】
ポリアルキレンカーボネート系樹脂としては、ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカーボネート、ポリ(1,2−ジメチルエチレンカーボネート)、ポリブテンカーボネート、ポリイソブテンカーボネート、ポリペンテンカーボネート、ポリヘキセンカーボネート、ポリシクロペンテンカーボネート、ポリシクロヘキセンカーボネート、ポリシクロヘプテンカーボネート、ポリシクロオクテンカーボネート、ポリリモネンカーボネートなどをあげることができる。ポリアルキレンカーボネート系樹脂として好ましくは、ポリプロピレンカーボネートである。
【0018】
ポリアルキレンカーボネート系樹脂の製造方法としては、アルキレンオキサイドと二酸化炭素とを共重合させる方法、環状カーボネートを開環重合させる方法をあげることができる。アルキレンオキサイドと二酸化炭素とを共重合させる方法の中でも、アルキレンオキサイドと二酸化炭素を交互共重合させる方法が好ましい。
【0019】
アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ジメチルエチレンオキサイド、ブテンオキサイド、イソブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロヘプテンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、リモネンオキサイドをあげることができる。好ましくは、プロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、イソブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイドなどの直鎖状アルキレンオキサイドであり、より好ましくはプロピレンオキサイドである。
【0020】
アルキレンオキサイドと二酸化炭素を共重合させる方法としては、公知の方法を使用することができ、例えば、「アンゲバンテ・ケミー・インターナショナル・エディション(Angewandte Chemie International Edition)」(第42巻、2003年、p.5484)に記載されている方法をあげることができる。
【0021】
ポリアルキレンカーボネート系樹脂は、市販品を用いてもよい。ポリプロピレンカーボネートの市販品として、EMPOWER社製QPAC40などをあげることができる。ポリエチレンカーボネートの市販品として、EMPOWER社製QPAC25などをあげることができる。
【0022】
ポリアルキレンカーボネート系樹脂は、得られる樹脂組成物の透明性を高めるために、示差走査熱量計(DSC)によって−50℃〜200℃の範囲において観測される融解熱量が30J/g以下の樹脂であり、より好ましくは当該融解熱量が10J/g以下の樹脂であり、さらに好ましくは当該融解熱量が5J/g以下の樹脂である。最も好ましくは、DSCによって−50℃〜200℃の範囲に融解ピークが検出されない樹脂である。
【0023】
ポリアルキレンカーボネート系樹脂は、好ましくは、DSCによって−50℃〜200℃の範囲において結晶化ピークが検出されない樹脂である。
【0024】
ポリアルキレンカーボネート系樹脂は、好ましくは、DSCによって−50℃〜200℃の温度範囲において観測されるガラス転移温度のうち最も温度が高いガラス転移温度が−50℃〜100℃の樹脂であり、より好ましくは−30℃〜80℃の樹脂であり、さらに好ましくは−20℃〜60℃の樹脂である。
【0025】
ポリアルキレンカーボネート系樹脂の重量平均分子量Mwは、得られる樹脂組成物の薄肉成形性を高めるために、好ましくは1万以上100万以下であり、より好ましくは10万以上50万以下である。
【0026】
ポリアルキレンカーボネート系樹脂における重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1〜5である。
【0027】
重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定される。
【0028】
<成分(B)>
成分(B)のポリオレフィン系樹脂は、オレフィンに由来する単量体単位を含有する重合体である。当該オレフィンとしては、エチレン、α−オレフィンをあげることができる。α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセンなどの直鎖α−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状のα−オレフィン;ビニルシクロヘキサンなどの環状α−オレフィンをあげることができる。また、その他にオレフィンとして、シクロペンテン、シクロヘキセン、ノルボルネンなどの環状オレフィン;1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエンなどの鎖状ジオレフィン;シクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどの環状ジオレフィンもあげることができる。これらは1種類以上用いることができる。
【0029】
オレフィンの炭素原子数は好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜8である。
【0030】
オレフィンとして好ましくは、エチレン又は直鎖α−オレフィンであり、より好ましくはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンであり、さらに好ましくはエチレン、プロピレン、1−ブテンである。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂は、エポキシ基及び/又はカルボキシル基を有する化合物に基づく単量体単位を有してもよい。当該化合物として、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和1価カルボン酸をあげることができる。
【0032】
ポリオレフィン系樹脂において、エポキシ基及び/又はカルボキシル基を有する化合物の含有量は、ポリオレフィン系樹脂全体を100重量%として、好ましくは3重量%未満であり、より好ましくは1重量%以下である。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂は、上記化合物(エポキシ基及び/又はカルボキシル基を有する化合物、及びオレフィン)以外の化合物(以下、他化合物と記すことがある。)に由来する単量体単位を含有していてもよい。当該他化合物としては、酢酸ビニルなどのカルボン酸アルケニルエステル;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチルなどの不飽和カルボン酸アルキルエステルをあげることができる。
【0034】
ポリオレフィン系樹脂において、当該他化合物に由来する単量体単位の含有量は、ポリオレフィン系樹脂全体を100重量%として、好ましくは20重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下である。
【0035】
ポリオレフィン系樹脂において、オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、ポリオレフィン系樹脂全体を100重量%として、好ましくは80重量%以上であり、より好ましくは90重量%以上である。なお、ポリオレフィン系樹脂に含まれる単量体単位の含有量は、赤外分光法により求めることができる。
【0036】
ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂;エチレン−酢酸ビニル共重合体などのエチレン−カルボン酸アルケニルエステル共重合体樹脂;エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのエチレン−不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体などのポリプロピレン系樹脂;ポリブテン系樹脂;ポリ(4−メチル−1−ペンテン)系樹脂などをあげることができる。
【0037】
ポリオレフィン系樹脂は、得られる樹脂組成物の薄肉加工性を高めるために、好ましくは、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂である。
【0038】
ポリオレフィン系樹脂の融解ピーク温度は、好ましくは50℃以上であり、より好ましくは60℃以上である。当該融解ピーク温度は、示差走査熱量計(DSC)によって観測される。
【0039】
ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である場合、ポリオレフィン系樹脂の190℃において試験荷重21.18Nで測定したメルトフローレートは、好ましくは0.5g/10分以上であり、より好ましくは1g/10分以上である。また、好ましくは30g/10分以下であり、より好ましくは10g/10分以下である。
【0040】
ポリオレフィン系樹脂の製造方法としては、過酸化物などの開始剤を使用してオレフィンをラジカル重合する方法、重合触媒の存在下において気相法、溶液法などによりオレフィンを重合する方法などをあげることができる。重合触媒としては、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒などを用いることができる。
【0041】
<成分(C)>
成分(C)は、エポキシ基及び/又はカルボキシル基を有する化合物に由来する単量体単位とオレフィンに由来する単量体単位とを有する重合体である。
【0042】
エポキシ基及び/又はカルボキシル基を有する化合物として好適なものとしては、下記の式(2)で表される化合物をあげることができる。

(式中、Rは水素原子又はヒドロカルビル基を表し、R5はヒドロカルビレン基を表し、Zは下記(2−1)で表される基又は水素原子を表し、nは0又は1を表す。)

【0043】
式(2)中、Rは水素原子又はヒドロカルビル基を表す。Rのヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基をあげることができる。
【0044】
のヒドロカルビル基の炭素原子数は好ましくは1〜5である。
【0045】
は好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0046】
式(2)中、Rのヒドロカルビレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基などのアルキレン基;フェニレン基などのアリーレン基をあげることができる。
【0047】
のヒドロカルビル基の炭素原子数は好ましくは1〜5である。
【0048】
式(2)中、nは0又は1を表す。
【0049】
式(2)で表される化合物として、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジルなどの不飽和カルボン酸グリシジルエステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和1価カルボン酸をあげることができる。
【0050】
オレフィンとしては、エチレン又はα−オレフィンをあげることができる。α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ナノデセン、1−エイコセンなどの直鎖α−オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ヘキセン、2,2,4−トリメチル−1−ペンテン等の分岐状のα−オレフィンをあげることができる。これらは1種類以上用いることができる。
【0051】
オレフィンの炭素原子数は好ましくは2〜20であり、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜3である。
【0052】
オレフィンとして好ましくはエチレン又はプロピレンであり、より好ましくはエチレンである。
【0053】
成分(C)は、エポキシ基及び/又はカルボキシル基を有する化合物に由来する単量体単位、及びオレフィンに由来する単量体単位以外に、酢酸ビニルなどのカルボン酸アルケニルエステルに由来する単量体単位、及び、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸アルキルエステルに由来する単量体単位を有していてもよい。
【0054】
成分(C)のエポキシ基及び/又はカルボキシル基を有する化合物に由来する単量体単位の含有量は、得られる樹脂組成物の薄肉成形性を高めるために、好ましくは3重量%以上30重量%以下であり、より好ましくは5重量%以上20重量%以下であり、また、オレフィンに由来する単量体単位の含有量は、好ましくは70重量%以上97重量%以下であり、より好ましくは80重量%以上95重量%以下である。(但し、成分(C)を100重量%とする。)なお、成分(C)に含まれる単量体単位の含有量は、赤外分光法により求めることができる。
【0055】
成分(C)としては、エチレン−アクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、プロピレン−アクリル酸グリシジル共重合体、プロピレン−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル−メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体をあげることができる。
【0056】
成分(C)の、190℃において試験荷重21.18Nで測定したメルトフローレートは、得られる樹脂組成物の薄肉加工性を高めるために、好ましくは0.5g/10分以上400g/10分以下であり、より好ましくは1g/10分以上300g/10分以下であり、さらに好ましくは2g/10分以上260g/10分以下である。
【0057】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物を混練する方法としては、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)及びその他の各成分を、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、一軸押出機および二軸押出機などの混練装置で混練する方法をあげることができる。混練温度は、通常80℃〜220℃であり、好ましくは150℃〜210℃である。混練工程においては、各成分を一括して混練してもよいし、各成分の一部を混練した後、残部を添加して混練してもよい。
【0058】
混練後の樹脂組成物は、ペレタイザーやシート粉砕機などにより、ペレット化してもよい。
【0059】
本発明の樹脂組成物を製造する際に、混練する成分(B)の量は、薄肉加工性を高めるため、混練する成分(A)100重量部あたり、100重量部以上2500重量部以下であり、好ましくは200重量部以上1000重量部以下であり、より好ましくは300重量部以上500重量部以下である。
【0060】
本発明の樹脂組成物を製造する際に混練する成分(C)の量は、薄肉加工性を高めるため、混練する成分(A)100重量部あたり、2重量部以上100重量部以下であり、好ましくは5重量部以上50重量部以下であり、より好ましくは10重量部以上30重量部以下である。
【0061】
本発明の樹脂組成物を製造する際には、上記のほかに、エンジニアリングプラスチックを混練してもよい。エンジニアリングプラスチックとしては、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF−PET)、シンジオタクチックポリスチレン(s−PS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)をあげることができる。
【0062】
また、本発明の樹脂組成物を製造する際には、有機過酸化物、金属石鹸などのフィラー分散剤、老化防止剤、ヒンダードフェノール系やリン系等の酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、ベンゾフェノール系やベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の光安定剤、熱安定剤、シランカップリング剤、着色剤、アンチブロッキング剤、滑剤、難燃剤、粘着付与剤等の添加剤、ナフテン油およびパラフィン系鉱物油等の鉱物油系軟化剤を混練してもよい。
【0063】
本発明の樹脂組成物の製造において混練する成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の量の合計は、混練する全成分の合計量を100重量%として、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上であり、さらに好ましくは90重量%以上である。
【0064】
本発明の樹脂組成物の、190℃において試験荷重21.18Nで測定したメルトフローレートは、薄肉加工性を高めるため、好ましくは0.5g/10分以上30g/10分以下であり、より好ましくは1g/10分以上20g/10分以下である。
【0065】
本発明の成形体を得る方法としては、例えば、押出成形法や射出成形法をあげることができる。押出成形法としては、具体的に、インフレーション法、Tダイ法、カレンダー法、ブロー成形法などを例示することができ、射出成形法としては、具体的に、圧縮成形法、射出圧縮成形法、ガス注入射出成形法、発泡射出成形法が挙げられる。
【0066】
本発明の成形体がフィルム又はシートである場合、インフレーション法、Tダイ法、カレンダー法により異なる樹脂との多層構成の少なくとも1層として製膜すること、又は押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法等で製膜することにより多層化することができる。また、得られたフィルム又はシートを、ロール延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法等により一軸又は二軸に延伸して用いることができる。
【0067】
成形時の樹脂温度は、通常80℃〜220℃であり、好ましくは150℃〜210℃である。
【0068】
本発明の成形体には、例えば、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施すことができる。
【0069】
本発明の樹脂組成物は、薄肉加工性に優れる。また、本発明の樹脂組成物からなる成形品は透明性も良好である。
【0070】
本発明の樹脂組成物は、特に包装用フィルム、ラップフィルム、手提げラミネート紙袋、プリベートカード、ゴミ袋、ラミ袋、パウチ、ラベル、サーモフォーミング、梱包バンド、生活衛生資材、包装用フィルム、農業用フィルム、防水シート、土嚢用袋などのフィルムの成形材料として好適である。
【実施例】
【0071】
物性測定は、下記のとおりに行った。
1.メルトフローレート(MFR)
成分(A)、成分(B)、成分(C)および得られた樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に従って測定した。測定温度は190℃で、試験荷重は21.18Nで、重量法にて測定した。
2.融解ピーク温度(Tm)、融解熱量及び結晶化熱量
ポリアルキレンカーボネート系樹脂の融解熱量及び結晶化熱量、ポリオレフィン系樹脂の融解ピーク温度(Tm)は、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)社製DSC220C:入力補償DSC)によって測定を行った。具体的には、状態調整として、試料を室温から200℃まで30℃/分で昇温し、200℃で5分間保持した。次に、10℃/分で−50℃まで降温することにより、結晶化熱量を測定した。次に、−50℃で5分間保持した。その後、−50℃から200℃まで10℃/分で昇温することにより、融解ピーク温度及び融解熱量の測定を行った。
3.ガラス転移温度(Tg)
ポリアルキレンカーボネート系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)社製DSC220C:入力補償DSC)によって測定を行った。具体的には、状態調整として、試料を室温から200℃まで30℃/分で昇温し、200℃で5分間保持した。次に、10℃/分で−50℃まで降温することにより、ガラス転移温度の測定を行った。
4.分子量分布
ポリアルキレンカーボネート系樹脂の分子量分布は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。測定装置としてはWaters社製150C/GPCを用い、測定溶媒としてはo−ジクロロベンゼンを用い、カラムとしては昭和電工(株)社製Shodex Packed ColumnA−80M(2本)を用い、分子量標準物質としては標準ポリスチレン(東ソー(株)社製、分子量68〜8,400,000)を用い、溶出温度140℃、溶出溶媒流速1.0ml/分の条件で、試料約5mgを5mlのo−ジクロロベンゼンに溶解したものを測定装置に400μl注入し、示差屈折検出器にてポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、両者の比である分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
5.式(1−2)単位の含有量
「ダルトン・トランザクションズ(Dalton Transactions)」、2006年、p.5390−5395に記載の方法に従い、測定および算出を行った。
6.透明性(ヘイズ)
樹脂組成物を、15mmφ単軸押出機を用いて、加工温度190℃、スクリュー回転数40rpmで溶融させた後、ダイリップ開度0.8mmに設定したTダイより押し出し、30℃の冷却チルロールで引取り、厚み100μmのフィルムを作成し、当該フィルムについて、JIS K 7105に従い、ヘイズを測定した。この値が小さいほど、透明性に優れる。
7.薄肉加工性
上記6.に記載の方法により樹脂組成物から厚み100μmのフィルムを製膜し、その後、厚みを10μmずつ薄くするように冷却チルロールの引取速度を上げて製膜を行い、各厚みにおけるフィルム成形の様子を観察した。厚みムラの小さいフィルムが連続して製膜できた場合を○、フィルム破断が起きた場合及び厚みムラが大きい場合を×とした。
【0072】
実施例1
[樹脂組成物の製造]
成分(A)として、ポリプロピレンカーボネート樹脂(Mw=19万 Tg=20℃、式(1−2)単位の含有量41重量%、Mw/Mn=3.1、融解ピーク及び結晶化ピーク未検出、商品名:QPAC40、EMPOWER社製)20重量%、成分(B)として、低密度ポリエチレン樹脂(Tm=113℃、MFR=1.6g/10分、商品名:スミカセンF208−1、住友化学(株)製)78重量%(成分(A)100重量部あたり390重量部)、成分(C)としてエチレン−酢酸ビニル−メタクリル酸グリシジル共重合体(酢酸ビニル含量5重量%、メタクリル酸グリシジル含量12重量%、MFR=3g/10分、商品名:ボンドファースト2B、住友化学(株)製)2重量%(成分(A)100重量部あたり10重量部)を、20mmφ二軸押出機によって、190℃で混練し、ペレット化した。
【0073】
得られた樹脂組成物より、上記6.及び7.に記載の方法により、フィルムを製膜し、薄肉加工性を測定した。樹脂組成物及びフィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0074】
実施例2
成分(A)を20重量%、成分(B)を75重量%(成分(A)100重量部あたり375重量部)、成分(C)を5重量%(成分(A)100重量部あたり25重量部)配合した以外は、実施例1と同様に行った。得られた樹脂組成物、フィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0075】
実施例3
成分(A)を20重量%、成分(B)を78重量%(成分(A)100重量部あたり390重量部)、成分(C)をエチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体(メタクリル酸グリシジル含量19重量%、MFR=250g/10分、商品名:ボンドファーストCG5400、住友化学(株)製)2重量%(成分(A)100重量部あたり10重量部)とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた樹脂組成物、フィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0076】
実施例4
成分(A)を20重量%、成分(B)を78重量%(成分(A)100重量部あたり390重量部)、成分(C)をエチレン−アクリル酸共重合体(アクリル酸含量7重量%、MFR=7g/10分、商品名:ユカロンA201M、三菱油化(株)製)2重量%(成分(A)100重量部あたり10重量部)とした以外は、実施例1と同様に行った。得られた樹脂組成物、フィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0077】
比較例1
成分(A)を20重量%、成分(B)を80重量%(成分(A)100重量部あたり400重量部)とし、成分(C)を用いなかった以外は、実施例1と同様に行った。得られた樹脂組成物、フィルムの物性評価結果を表1に示す。
【0078】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)と、成分(A)100重量部あたり、100重量部以上2500重量部以下の下記成分(B)と、2重量部以上100重量部以下の下記成分(C)とを混練して得られる樹脂組成物。
成分(A):ポリアルキレンカーボネート系樹脂。
成分(B):ポリオレフィン系樹脂。
成分(C):エポキシ基及び/又はカルボキシル基を有する化合物に由来する単量体単位とオレフィンに由来する単量体単位とを有する重合体。
【請求項2】
成分(C)のエポキシ基及び/又はカルボキシル基を有する化合物に由来する単量体単位の含有量が3重量%以上30重量%以下であり、オレフィンに由来する単量体単位の含有量が70重量%以上97重量%以下である(但し、成分(C)を100重量%とする。)請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
成分(C)の、190℃において試験荷重21.18Nで測定したメルトフローレートが0.5g/10分以上400g/10分以下である請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を成形して得られる成形体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物を押出成形して得られるフィルム。

【公開番号】特開2012−241047(P2012−241047A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110094(P2011−110094)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】