説明

樹脂被覆キャリア、2成分現像剤、現像装置および画像形成装置

【課題】大粒径の外添剤が添加されたトナーを長期間にわたって安定して帯電させ、かつ現像剤のブロッキングを防止することができる樹脂被覆キャリア、2成分現像剤、現像装置、および画像形成装置を提供する。
【解決手段】樹脂被覆層2bに含有される、最小の重量平均分子量を有するシリコーン樹脂の重量平均分子量をMaとし、最大の重量平均分子量を有するシリコーン樹脂の重量平均分子量をMbとすると、MaおよびMbが下記式(1)を満たし、
log(Mb/Ma)>2 …(1)
攪拌試験を行うことによって得られる1000V/cmの電界下における体積抵抗値(Ω/cm)をAとし、前記攪拌試験前の1000V/cmの電界下における体積抵抗値(Ω/cm)をBとすると、AおよびBが下記式(2)を満たすように、樹脂被覆キャリアを構成する。
0.5≦−log(A/B)≦2.5 …(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像担持体に形成される静電潜像を現像し可視化する電子写真方式の画像形成装置に用いられる樹脂被覆キャリア、その樹脂被覆キャリアを含む2成分現像剤、ならびにその2成分現像剤を用いる現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機などの電子写真技術を利用した画像形成装置に関して、像担持体に形成される静電潜像を現像し可視像を形成するための現像剤として、たとえば、トナーとキャリアとからなる2成分現像剤と、トナー単体からなる1成分現像剤とが用いられる。これらのうち、2成分現像剤を用いる磁気ブラシ現像方式は、他の現像方式と比較して画質および高速印刷の面で優れているので広く利用されている。
【0003】
磁気ブラシ現像方式を用いた画像形成装置は、たとえば、円筒形状の金属スリーブと、その内部に備えられた磁界発生手段である永久磁石がN極、S極と交互に配設されたマグネットローラとで構成される現像剤担持体を備える。この現像剤担持体の金属スリーブ表面に2成分現像剤を担持させ、マグネットローラを固定したまま金属スリーブのみを回転させることで、静電潜像の形成された像担持体と対向する現像領域へ2成分現像剤を搬送することができる。そして、現像剤担持体と像担持体との間に印加される現像電界によって、帯電したトナーのみを像担持体に静電付着させて、可視像を形成する。
【0004】
2成分現像剤中のトナーは、現像剤担持体を含む現像ユニット内において、キャリアと混合攪拌されることで接触摩擦帯電される。乾式2成分現像では、この摩擦帯電されたトナーの静電気力を用いて電気的にハンドリングし像担持体に可視像を形成するため、トナーの帯電量の制御が重要である。このトナーの帯電量はシステム上の各種条件から決まるものであり、トナーの帯電量の値が安定していることがシステムの安定性のためには望ましい。
【0005】
また、近年の複写機およびプリンタの傾向として、印刷の高画質化および高速化が重要視されている。この際に、特に重要になるのが現像剤の帯電安定性である。高画質化を達成するためにはトナーを決められた場所に決められた量だけ付着させる必要がある。電子写真法においては、トナーのハンドリングを静電気力によって行っており、トナーを付着力などの他の外力に打ち勝って電界により移動させるためには、トナーがある程度以上の高帯電を維持することが要求される。また、画像形成装置の高速化に伴い、印刷枚数が増加したことで、メンテナンスの回数および手間の低減に対する要求が強くなっており、長期間にわたって安定的に動作する現像剤が求められている。
【0006】
このような要求の下、キャリアは長期間にわたって常にトナーを所望の極性および所望の帯電量に摩擦帯電しなければならない。一般的に2成分現像剤に用いられているトナーを帯電させるキャリアは、トナーとは異なり、現像ユニット内に長期間滞留するので、トナースペント、攪拌混合のストレスなどによる電荷付与能力の低下が懸念される。加えて電荷付与能力の低下に起因するトナー飛散によって、画像形成装置内の汚染も発生するおそれがある。従って、経時劣化に耐え、長期間にわたってトナーの帯電量を安定維持できる高耐久性のキャリアが必要とされている。
【0007】
このようなキャリアに対する要求を満たすために、キャリア表面に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリアが提案されている。具体的には、表面エネルギーの高いスチレンアクリル共重合体樹脂またはポリウレタン樹脂をキャリア表面に被覆した樹脂被覆キャリア、および表面エネルギーの低いフッ素樹脂をキャリア表面に被覆した樹脂被覆キャリアが挙げられる。しかし、表面エネルギーの高いスチレンアクリル共重合体樹脂およびポリウレタン樹脂はキャリア芯材との密着性はよいけれども、トナーがスペントしやすいといった欠点を有し、表面エネルギーの低いフッ素樹脂は、トナースペントに対しては有効であるけれども、キャリア芯材との密着性が劣るので、現像槽内で攪拌されると、キャリア芯材から樹脂被覆層が容易に剥れてしまい帯電の安定化が図れないといった欠点を有する。
【0008】
これらの欠点を改良する目的で、樹脂被覆層の耐久性とキャリア芯材との密着性を高めるために、樹脂被覆する際に2種類以上の分子量の異なる樹脂を用いた樹脂被覆キャリアが提案されている。たとえば、特許文献1には、キャリア芯材を樹脂で被覆した電子写真用キャリアにおいて、被覆樹脂が、重量平均分子量が5万〜25万であり、かつゲル浸透クロマトグラフィ(Gel Permeation Chromatography;略称GPC)による分子量分布が重量分子量1万〜6万に低分子量成分の極大値と10万〜30万に高分子量成分の極大値とを有する樹脂であることを特徴とする電子写真用キャリアが開示されている。
【0009】
特許文献2には、少なくとも磁性体よりなるコア材表面に、少なくともシリコーン樹脂コート層を設けた電子写真用キャリアであって、そのシリコーン樹脂が、重量基準分子量ピークを2つ以上持つシリコーン化合物を架橋してなることを特徴とする電子写真用キャリアが開示されている。
【0010】
特許文献3には、ソフトフェライトを含む磁性粒子の表面が、重量平均分子量300以上、1000以下の低分子シリコーン樹脂層で被覆され、その低分子樹脂層で被覆された磁性粒子が、さらに重量平均分子量5000以上の高分子シリコーン樹脂層で被覆されている電子写真現像用キャリアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−72666号公報
【特許文献2】特開2002−14493号公報
【特許文献3】特開2007−33568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年では、画像形成装置のフルカラー化が進み、それに伴いトナーの改良も盛んに行われており、ワックス樹脂、トナーの外添剤の改良もその一環である。オイルレス定着で用いられるトナーは、トナー自身に、定着離型性を確保するための低融点のワックス樹脂が分散されている。このようなトナーを含む2成分現像剤に熱ストレスが加わると、トナー表面にワックスが浸み出し、キャリア表面を汚染してしまう。その結果、現像剤のトナーへの帯電性能が低下し、さらには現像剤のブロッキングを引き起こす。トナーへの帯電性能の低下およびブロッキングが起こると、画質劣化が発生し、現像剤寿命は極端に短くなってしまう。
【0013】
トナーの外添剤は、トナーに流動性を付与すると共にトナー帯電量のコントロール助剤としての機能を有する。フルカラーの画像形成装置においては、トナーの転写効率を高める目的で大粒径の外添剤、具体的には平均1次粒子径が50nm以上の外添剤を添加する傾向にある。しかしながら、大粒径の外添剤が添加されたトナーと、キャリアとからなる現像剤を長期間にわたって使用すると、大粒径の外添剤がキャリア表面へ付着して堆積しやすく、外添剤の付着によってトナーとキャリアとの正常な摩擦帯電が妨げられ、キャリアの帯電付与能力が低下してしまう。このため2成分現像剤に大粒径の外添剤が添加されたトナーを用いた場合、長期間にわたって、トナーを安定して帯電させることは困難である。
【0014】
このような問題に対し、特許文献1に開示の電子写真用キャリアは、樹脂被覆層に比較的表面エネルギーの高いアクリル樹脂が用いられているため、長期の使用により現像剤のブロッキングを起こし、現像剤の搬送量が低下する。
【0015】
また特許文献2,3に開示の電子写真用キャリアは、樹脂被覆層の表面が削りとられにくい。そのため特許文献2,3に開示の電子写真用キャリアを、大粒径の外添剤が添加されたトナーとともに用いた場合、長期の使用により樹脂被覆層の表面には大粒径の外添剤が堆積して、キャリアの帯電付与能力が低下し、トナーの帯電安定性が低下する。
【0016】
本発明の目的は、大粒径の外添剤が添加されたトナーを長期間にわたって安定して帯電させ、かつ現像剤のブロッキングを防止することができる樹脂被覆キャリア、2成分現像剤、現像装置、および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、トナー粒子に平均1次粒子径が50nm以上の外添剤が外添されたトナーとともに用いられる樹脂被覆キャリアであって、
キャリア芯材と、
当該キャリア芯材の表面に、重量平均分子量の異なる少なくとも2種類以上のシリコーン樹脂を含有する樹脂で形成される樹脂被覆層であって、当該2種類以上のシリコーン樹脂のうち、最小の重量平均分子量を有するシリコーン樹脂の重量平均分子量をMaとし、当該樹脂被覆層に含有される少なくとも2種類のシリコーン樹脂のうち、最大の重量平均分子量を有するシリコーン樹脂の重量平均分子量をMbとすると、MaおよびMbは下記式(1)を満たす樹脂被覆層とを含み、
log(Mb/Ma)>2 …(1)
攪拌試験を行うことによって得られる1000V/cmの電界下における体積抵抗値(Ω/cm)をAとし、前記攪拌試験前の1000V/cmの電界下における体積抵抗値(Ω/cm)をBとすると、AおよびBは下記式(2)を満たすことを特徴とする樹脂被覆キャリアである。
0.5≦−log(A/B)≦2.5 …(2)
また本発明は、前記樹脂被覆層に導電性粒子が含まれていることを特徴とする。
また本発明は、体積平均粒子径が35〜55μmであることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記樹脂被覆キャリアと、平均1次粒子径が50nm以上の外添剤が外添されたトナーとを含むことを特徴とする2成分現像剤である。
【0019】
また本発明は、前記2成分現像剤を用いて現像を行うことを特徴とする現像装置である。
【0020】
また本発明は、前記現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上記式(1)を満たすシリコーン樹脂を用いて樹脂被覆層が形成されているので、樹脂被覆キャリアは均一な樹脂被覆層が形成されている。よって、上記式(1)を満たすシリコーン樹脂を用いて均一な樹脂被覆層が形成されている本発明の樹脂被覆キャリアは、表面エネルギーの高いキャリア芯材の露出面積が少ないため、長期の使用にわたってトナーとキャリアとを含む現像剤のブロッキングを防ぐことができる。また、樹脂被覆キャリアは、外添剤が外添されたトナーとともに用いられる場合に、外添剤が樹脂被覆キャリアの表面に付着するのを抑えることができる。
【0022】
また、本発明の樹脂被覆キャリアは上記式(2)を満たす。−log(A/B)は体積抵抗値変化を表しており、攪拌試験前後で体積抵抗値に変化があるということは、攪拌試験前後で樹脂被覆キャリアの表面状態が変化したこと、すなわち、現像槽内での攪拌によって樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層の削れが進行したことを示す。樹脂被覆層の削れは、−log(A/B)が0.5未満では十分に進行しておらず、2.5を超えると不所望に進行している。本発明の樹脂被覆キャリアは、−log(A/B)が上記式(2)を満たすことにより、たとえその表面に平均1次粒子径が50nm以上の大粒径の外添剤が付着したとしても、現像槽内での攪拌によって樹脂被覆層が適度に削られて、外添剤が付着していない樹脂被覆層に更新される。また、−log(A/B)が上記式(2)を満たす範囲であれば、樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層が削れても、樹脂被覆キャリアのトナーに対する帯電付与能力は維持される。よって、樹脂被覆キャリアは、樹脂被覆キャリアの表面に外添剤が付着することによって生じる、トナーに対する帯電付与能力の低下を抑えることができる。
【0023】
したがって、樹脂被覆キャリアと平均1次粒子径が50nm以上の外添剤が外添されたトナーとを含む現像剤は、外添剤の樹脂被覆キャリア表面への付着を抑制して、平均1次粒子径が50nm以上の外添剤を転写効率の向上に寄与させることができ、また、たとえ樹脂被覆キャリアの表面に平均1次粒子径が50nm以上の大粒径の外添剤が付着したとしても、樹脂被覆キャリアのトナーに対する帯電付与能力を維持したまま、樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層の削れを適度に進行させることで、印刷枚数が増加しても、長期間にわたって現像剤のブロッキングを防ぐことができ、また、現像剤の流動性を良好に保つことができ、また、トナーを安定して帯電させることができる。
【0024】
また本発明によれば、樹脂被覆キャリアは、樹脂被覆層に導電性粒子を含有するので、樹脂被覆キャリアのトナーへの電荷付与性が一層向上している。
【0025】
また本発明によれば、樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径は35〜55μmであるので、トナーの搬送が安定している。また、樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径は35〜55μmであるので、体積平均粒子径が小さ過ぎることによるキャリア付着の増加を抑えることができ、体積平均粒子径が大き過ぎることによる画像の粒状性の悪化を抑えることができる。したがって、当該樹脂被覆キャリアを用いれば、高精細な画像形成が可能である。なお、キャリア付着とは、現像剤担持体から像担持体へトナーを現像する際に、キャリアも像担持体に付着してしまう現象をいう。
【0026】
また本発明によれば、2成分現像剤は、前記樹脂被覆キャリアと、平均1次粒子径が50nm以上の外添剤が外添されたトナーとを含むので、平均1次粒子径が50nm以上の外添剤が添加されたトナーは長期間安定して帯電することが可能であり、かぶりなどの画像欠陥の少ない高画質画像を形成できる。
【0027】
また本発明によれば、現像装置は前記2成分現像剤を用いて現像を行うので、トナーの帯電量を安定化させて現像を行うことができる。
【0028】
また本発明によれば、画像形成装置は前記現像装置を備えるので、長期にわたってかぶりの少ない高画質画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】樹脂被覆キャリア2を含む2成分現像剤1の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】測定治具9の構成を模式的に示す概略図である。
【図3】現像装置20の構成を示す概略図である。
【図4】画像形成装置21の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1、樹脂被覆キャリア
はじめに、本発明の樹脂被覆キャリアの実施形態について説明する。樹脂被覆キャリアはトナーとともに、2成分現像剤として用いられる。図1は、本実施形態の樹脂被覆キャリア2を含む2成分現像剤1の構成を模式的に示す断面図である。2成分現像剤1は、樹脂被覆キャリア2と、トナー粒子3bに平均1次粒子径が50nm以上の外添剤3aが外添されたトナー3とを含む。樹脂被覆キャリア2は、キャリア芯材2aと樹脂被覆層2bとを含む。トナー3は、トナー粒子3bと外添剤3aとを含む。以下では、「粒子」と記載しない限り、キャリア全体をさすもの、トナー全体をさすものとする。
【0031】
(1)キャリア芯材
キャリア芯材としては、この分野で常用されるものが使用でき、たとえば、鉄、銅、ニッケルおよびコバルトなどの磁性金属、ならびにフェライトおよびマグネタイトなどの磁性金属酸化物などが挙げられる。キャリア芯材が上記のような磁性体であると、磁気ブラシ現像法に用いる現像剤に好適なキャリアが得られる。これらの中でも、帯電性能および耐久性に優れるとともに、フルカラー画像形成装置に適した飽和磁化を有する樹脂被覆キャリアを実現することができるという観点から、フェライトが好適に用いられる。
【0032】
キャリア芯材の1000V/cmの電界下における体積抵抗値は、1.0×10Ω/cm以上1.0×10Ω/cm以下の範囲内にあることが好ましい。キャリア芯材の1000V/cmの電界下における体積抵抗値をこのような範囲とすることで、高い現像電極効果が得られ、高濃度な画像を形成することができる。現像電極効果とは、キャリアが現像剤担持体と感光体との間で電極として働き、電界から受けるクーロン力をトナーにより伝えやすくする効果である。トナーがクーロン力を受ける際、キャリアの体積抵抗値が低い方が、現像電極効果が大きくなる。
【0033】
ここで、キャリア芯材の1000V/cmの電界下における体積抵抗値は、図2に示すような測定治具9によって測定される。図2は、測定治具9の構成を模式的に示す概略図である。測定治具9は、磁石6、アルミニウム製の電極7、基盤(アクリル樹脂板)8から構成される。電極7の間隔は1mmであり、大きさ10mm×40mmの平行平板電極を形成する。この電極間にキャリア芯材を200mg挿入し、次いで磁石6(表面磁束密度1500ガウス、対向する部分の磁石面積10mm×30mm)をN極とS極とが対向するように配置してキャリア芯材を電極間に保持する。この電極7に直流電圧1Vステップで800Vまで印加したときの電流値を計測してブリッジ抵抗値を算出し、その値をキャリア芯材の体積抵抗値とする。後述する樹脂被覆キャリアの1000V/cmの電界下における体積抵抗値も、同様の測定治具9を用い、同様の方法で算出された値とする。
【0034】
キャリア芯材の体積平均粒子径は、35〜55μmのものが好ましい。キャリア芯材の体積平均粒子径をこのような範囲とすることで、トナー搬送が安定化されるとともに、高精細な画像形成が可能となる。キャリア芯材の体積平均粒子径が35μm未満であると、体積平均粒子径の小さい樹脂被覆キャリアとなりやすく、体積平均粒子径が小さい樹脂被覆キャリアは、キャリア付着が増加してしまい好ましくない。キャリア芯材の体積平均粒子径が55μmを超えると、体積平均粒子径の大きい樹脂被覆キャリアとなりやすく、体積平均粒子径の大きい樹脂被覆キャリアは粒状性が悪く、画質が悪化してしまい好ましくない。
【0035】
ここで、キャリア芯材の体積平均粒子径は、レーザー回折・散乱式の粒度測定装置(たとえば、日機装株式会社製のマイクロトラックMT3000)によって測定される値である。
【0036】
(2)樹脂被覆層
樹脂被覆層は、樹脂被覆層組成物でキャリア芯材表面を被覆することで形成できる。樹脂被覆層組成物は、架橋型シリコーン樹脂の所定量、および必要に応じて導電性粒子、アミノ基含有シランカップリング剤、シリコーン樹脂以外の樹脂、二官能シリコーンオイルなどの添加剤から選ばれる1種または2種以上の適量を混合することによって製造できる。
【0037】
(樹脂)
樹脂被覆層に含まれる樹脂としては、シリコーン樹脂を用いる。シリコーン樹脂を用いることで、現像時におけるトナーのキャリアからの離型性を向上させることができるので、現像性を良好にすることができる。また、樹脂被覆層を所望の硬さにすることができ、さらにキャリア芯材との密着性を良好にできるので、長期間にわたってトナーを安定して帯電させる効果を顕著に発現させることができる。
【0038】
シリコーン樹脂の量は、キャリア芯材100重量部に対して0.4重量部以上2.0重量部以下の範囲であることが好ましい。樹脂被覆層における樹脂量をこのような範囲とすることによって、後述する体積抵抗値変化を実現するキャリアをより容易に得ることができる。樹脂量が0.4重量部より少ないとキャリア芯材の露出面が多くなることによって、環境による変化、特に湿度の影響を受けやすくなるので好ましくない。また樹脂量が2.0重量部より多いと、樹脂をキャリア芯材表面に均一に塗布できず、キャリア同士が凝集してしまい、キャリアの歩留まりが悪化するので好ましくない。
【0039】
さらに、シリコーン樹脂は、重量平均分子量の異なる2種類以上のシリコーン樹脂を用い、2種類以上のシリコーン樹脂のうち、最小の重量平均分子量を有するシリコーン樹脂の重量平均分子量をMaとし、当該樹脂被覆層に含有される少なくとも2種類のシリコーン樹脂のうち、最大の重量平均分子量を有するシリコーン樹脂の重量平均分子量をMbとすると、MaおよびMbは下記式(1)を満たすように選択する。
log(Mb/Ma)>2 …(1)
【0040】
2種類以上のシリコーン樹脂それぞれの重量平均分子量が上記(1)式を満たすようにすることで、樹脂被覆層を所望の硬さにすることができ、芯材の表面に均一にコーティングさせることができる。さらにキャリア芯材との密着性を一層良好にできるので、長期間にわたってトナーを安定して帯電させる効果をより顕著に発現させることができる。Maの範囲は、3.0×10以上5.0×10以下の範囲であることが好ましく、Mbの範囲は5.0×10以上5.0×10以下の範囲であることが好ましい。また、重量平均分子量がMaであるシリコーン樹脂の量は、キャリア芯材100重量部に対して0.2重量部以上1.0重量部以下の範囲であることが好ましく、重量平均分子量がMbであるシリコーン樹脂の量は、キャリア芯材100重量部に対して0.2重量部以上1.0重量部以下の範囲であることが好ましい。さらに、重量平均分子量がMaであるシリコーン樹脂の量と、重量平均分子量がMbであるシリコーン樹脂の量との比は、1:4〜4:1であることが好ましい。また、3種類以上のシリコーン樹脂を用いる場合に、重量平均分子量がMaより大きくMbより小さいシリコーン樹脂の重量平均分子量には特に制限はなく、そのシリコーン樹脂を用いる量は、全体の樹脂量が多くなり過ぎなければ特に制限はない。
【0041】
上記樹脂として、架橋型シリコーン樹脂がより好ましい。架橋型シリコーン樹脂が含まれることによって、現像時におけるトナーのキャリアからの離型性を一層向上させることができるので、現像性を一層良好にすることができる。したがって、樹脂被覆層に含まれる樹脂は、すべてが架橋型シリコーン樹脂であることが好ましい。
【0042】
架橋型シリコーン樹脂は、下記の化学式に示すように、Si原子に結合する水酸基同士または水酸基と基−OXとが加熱脱水反応、常温硬化反応などによって架橋して硬化する公知のシリコーン樹脂である。
【0043】
【化1】

【0044】
架橋型シリコーン樹脂としては特に制限されず、加熱硬化型シリコーン樹脂、常温硬化型シリコーン樹脂のいずれも使用できる。加熱硬化型シリコーン樹脂を架橋させるには、樹脂を200〜250℃程度に加熱する必要がある。常温硬化型シリコーン樹脂を硬化させるには加熱は必要ないけれども、硬化時間の短縮のために150〜280℃で加熱するのが好ましい。
【0045】
架橋型シリコーン樹脂の中でも、Rで示される1価の有機基がメチル基であるものが好ましい。Rがメチル基である架橋型シリコーン樹脂は、架橋構造が緻密であることから、そのような架橋型シリコーン樹脂を用いて被覆層を形成すると、撥水性、耐湿性などの良好な樹脂被覆キャリアが得られる。ただし、架橋構造が緻密になりすぎると、樹脂被覆層が脆くなる傾向があるので、架橋型シリコーン樹脂の分子量が上記(1)式を満たすように選択することが重要である。
【0046】
また、架橋型シリコーン樹脂中の珪素と炭素の重量比(Si/C)が0.3〜2.2であることが好ましい。Si/Cが0.3未満では、樹脂被覆層の硬さが低下し、キャリアの寿命などが低下するおそれがある。他方、Si/Cが2.2を超えると、キャリアのトナーに対する電荷付与性が温度変化による影響を受けやすくなり、樹脂被覆層が脆化するおそれがある。
【0047】
樹脂被覆層に架橋型シリコーン樹脂を含む場合、市販のものを使用でき、たとえば、SR2400、SR2410、SR2411、SR2510、SR2405、840RESIN、804RESIN(いずれも商品名、東レダウコーニング株式会社製)、KR271、KR272、KR274、KR216、KR280、KR282、KR261、KR260、KR255、KR266、KR251、KR155、KR152、KR214、KR220、X−4040−171、KR201、KR5202、KR3093、KR240、KR350、KR400(いずれも商品名、信越化学工業株式会社製)、TSR127B(商品名、モメンティブパフォーマンスマテリアルズジャパン合同会社製)などが挙げられる。この中から、少なくとも2種以上の樹脂を、上記式(1)を満たすように選択すると良い。
【0048】
(導電性粒子)
樹脂被覆層は導電性粒子を含むことが好ましい。樹脂被覆層に導電性粒子が含まれることによって、キャリアのトナーに対する帯電付与能力を高め、長期間にわたってトナーをより一層安定して帯電させることができる。
【0049】
導電性粒子としては、たとえば、導電性カーボンブラック、導電性酸化チタンおよび酸化スズなどの酸化物が用いられる。少ない添加量で導電性を発現させるには、カーボンブラックなどが好適であるけれども、カラートナーに対してはキャリアの樹脂被覆層からのカーボン脱離が懸念される場合がある。このときはアンチモンをドープさせた導電性酸化チタンなどを用いてもよい。
【0050】
導電性粒子は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。導電性粒子の体積平均粒子径は特に制限されないけれども、好ましくは0.02〜2μm、さらに好ましくは0.02〜1μmである。なお、この体積平均粒子径はレーザー回折・散乱式の粒度測定装置(たとえば、株式会社堀場製作所製のLA−920)を用いて測定される値である。
【0051】
樹脂被覆層における導電性粒子の含有量は特に制限されないけれども、好ましくは架橋型シリコーン樹脂100重量部に対して30重量部以下であり、より好ましくは1重量部以上30重量部以下である。導電性粒子の含有量が架橋型シリコーン樹脂100重量部に対して30重量部を超えると、樹脂被覆層から導電性粒子が欠落しやすく、カラー画像に影響を及ぼすことが懸念される。また樹脂被覆層の機械的強度およびキャリア芯材に対する密着性が不充分となり、樹脂被覆層が剥離して、キャリア芯材が露出するおそれがある。樹脂被覆層が剥離してキャリア芯材が露出すると、初期の樹脂被覆キャリアと比べて、帯電性能が変化してしまい、トナーを安定して帯電させることができないおそれがある。
【0052】
導電性粒子の含有量を架橋型シリコーン樹脂100重量部に対して30重量部以下にすることによって、樹脂被覆層からの導電性粒子の欠落を防いで、カラー画像への影響を抑えることができる。また樹脂被覆層の機械的強度およびキャリア芯材に対する密着性を向上させることができるので、長期的かつ安定的にトナーを帯電させることのできる樹脂被覆キャリアが実現される。したがって高画質の画像をより安定的に形成することのできる現像剤が実現される。
【0053】
導電性粒子の含有量が架橋型シリコーン樹脂100重量部に対して1重量部未満であると、導電性粒子の添加効果が見られず、トナーに充分な電荷を付与することができないおそれがある。導電性粒子の含有量を架橋型シリコーン樹脂100重量部に対して1重量部以上とすることによって、導電性粒子の添加効果をより確実に発現させ、トナーに充分な電荷を付与することができる。
【0054】
(シランカップリング剤)
樹脂被覆層は、トナー帯電量の調整を一層容易にするために、シランカップリング剤を含有してもよい。その中でも、電子供与性の官能基を有するシランカップリング剤が好ましく、アミノ基含有シランカップリング剤がさらに好ましい。アミノ基含有シランカップリング剤としては公知のものを使用でき、たとえば、下記一般式(3)に示すものが挙げられる。
(Y)nSi(R)m(Z)q …(3)
(式中、m個のRおよびq個のZは同一または異なるアルキル基、アルコキシ基または塩素原子を示す。n個のYは同一または異なるアミノ基を含有する炭化水素基を示す。mおよびnはそれぞれ1〜3の整数を示す。ただし、m+q+n=4である。)
【0055】
上記一般式(3)において、RおよびZで示されるアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基などが好ましい。RおよびZで示されるアルコキシ基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基などの炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルコキシ基が挙げられ、これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基などが好ましい。Yで示されるアミノ基を含有する炭化水素基としては、たとえば、−(CH−X(式中、Xはアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アミノアルキルアミノ基、フェニルアミノ基またはジアルキルアミノ基を示す。aは1〜4の整数を示す。)、−Ph−X(式中、Xは前記に同じ。−Ph−はフェニレン基を示す。)などが挙げられる。
【0056】
アミノ基含有シランカップリング剤の具体例としては、たとえば、次のようなものが挙げられる。
N(HC)Si(OCH
N(HC)Si(OC
N(HC)Si(CH)(OCH
N(HC)HN(HC)Si(CH)(OCH
NOCHN(HC)Si(OC
N(HC)HN(HC)Si(OCH
N−Ph−Si(OCH(式中−Ph−はp−フェニレン基を示す。)
Ph−HN(HC)Si(OCH(式中Ph−はフェニル基を示す。)
(HN(HC)Si(OCH
【0057】
アミノ基含有シランカップリング剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。アミノ基含有シランカップリング剤の使用量はトナーに充分な電荷を付与し、かつ樹脂被覆層の機械的強度などを著しく低下させることがない範囲から適宜選択されるけれども、好ましくは樹脂被覆層組成物100重量部に対して10重量部以下、さらに好ましくは0.01重量部以上10重量部以下である。
【0058】
(その他の添加剤)
樹脂被覆層は、架橋型シリコーン樹脂により形成される樹脂被覆層の好ましい特性を損なわない範囲で、架橋型シリコーン樹脂とともに他の樹脂を含むことができる。他の樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、アセタール樹脂、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン、これらの共重合体樹脂、配合樹脂などが挙げられる。また、樹脂被覆層は、架橋型シリコーン樹脂により形成される樹脂被覆層の耐湿性、離型性などをさらに向上させるために、二官能性シリコーンオイルを含むことができる。
【0059】
(樹脂被覆層の形成方法)
樹脂被覆層組成物の一形態としては、樹脂被覆層組成物の原料を有機溶媒に溶解または分散させた溶液の形態が挙げられる。有機溶媒としては、シリコーン樹脂を溶解できるものであれば特に限定されないけれども、たとえば、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素類、アセトンおよびメチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフランおよびジオキサンなどのエーテル類、高級アルコール類、ならびにこれらの2種以上の混合溶媒などが挙げられる。この溶液形態の樹脂被覆層組成物(以下、「コート樹脂液」と称する)を用いれば、キャリアの芯材表面に樹脂被覆層を容易に形成できる。
【0060】
コート樹脂液を用いた樹脂被覆層の形成方法としては、たとえばキャリア芯材表面にコート樹脂液を塗布して塗布層を形成し、加熱によって塗布層から有機溶媒を揮発除去し、さらに乾燥時または乾燥後に塗布層を加熱硬化または単に硬化させることによって、樹脂被覆層を形成できる。このようにして、本発明の樹脂被覆キャリアが製造される。
【0061】
コート樹脂液のキャリア芯材表面への塗布方法としては、たとえば、キャリア芯材をコート樹脂液に含浸させる浸漬法、キャリア芯材にコート樹脂液を噴霧するスプレー法、流動気流によって浮遊状態にあるキャリア芯材にコート樹脂液を噴霧する流動層法などが挙げられる。これらの中でも、樹脂被覆層を容易に形成できることから、浸漬法が好ましい。
【0062】
塗布層の乾燥には、乾燥促進剤を用いてもよい。乾燥促進剤としては公知のものを使用でき、たとえば、ナフチル酸、オクチル酸などの鉛、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛塩などの金属石鹸、エタノールアミンなどの有機アミン類などが挙げられる。
【0063】
塗布層の硬化は、架橋型シリコーン樹脂の種類に応じて加熱温度を選択しながら行う。たとえば、150〜280℃程度に加熱して行うのが好ましい。架橋型シリコーン樹脂が常温で硬化するタイプのものである場合は、加熱は必須ではないけれども、形成される樹脂被覆層の機械的強度を向上させること、硬化時間を短縮することなどを目的として、150〜280℃程度に加熱してもよい。
【0064】
コート樹脂液の全固形分濃度は特に制限されず、キャリア芯材への塗布作業性などを考慮しつつ、硬化後の樹脂被覆層の厚さが0.1μm以上3μm以下となるように調整することが好ましい。樹脂被覆層の厚さが0.1μm以上3μm以下であることによって、キャリア付着がなく長期間にわたってトナーをより安定して帯電させることができる。樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層の厚さは、樹脂被覆キャリアを乳鉢にて破砕後、走査型電子顕微鏡でその破砕した樹脂被覆キャリアの断面を観察することによって求めることができる。
【0065】
(3)樹脂被覆キャリア
上記のようにして得られる樹脂被覆キャリアは、トナー粒子に平均1次粒子径が50nm以上の外添剤が外添されたトナーとともに用いられる。平均1次粒子径が50nm以上の外添剤が外添されたトナーは、平均1次粒子径が50nm未満の外添剤が外添されたトナーと比較して、特にカラートナーにおいて、転写効率が高く、本発明の樹脂被覆キャリアはそのような平均1次粒子径が50nm以上の外添剤が外添されたトナーとともに好適に用いることができる。
【0066】
また、この樹脂被覆キャリアはキャリア芯材とキャリア芯材の表面に形成された樹脂被覆層とを有する。この樹脂被覆層は、重量平均分子量の異なる、少なくとも2種類以上のシリコーン樹脂を含有する樹脂で形成される。樹脂被覆層に含有される少なくとも2種類のシリコーン樹脂のうち、最小の重量平均分子量を有するシリコーン樹脂の重量平均分子量をMaとし、樹脂被覆層に含有される少なくとも2種類のシリコーン樹脂のうち、最大の重量平均分子量を有するシリコーン樹脂の重量平均分子量をMbとすると、MaおよびMbは、上記式(1)を満たす。上記式(1)を満たすシリコーン樹脂が用いられた樹脂被覆キャリアは、均一な樹脂被覆層が形成された樹脂被覆キャリアである。よって、この樹脂被覆キャリアは、表面エネルギーの高い芯材露出面が減少しており、長期の使用にわたってもブロッキングを起こさない。
【0067】
また、攪拌試験を行うことによって得られる1000V/cmの電界下における樹脂被覆キャリアの体積抵抗値(Ω/cm)をAとし、前記攪拌試験前の1000V/cmの電界下における樹脂被覆キャリアの体積抵抗値(Ω/cm)をBとすると、AおよびBは、下記式(2)を満たす。
0.5≦−log(A/B)≦2.5 …(2)
【0068】
攪拌試験前後の樹脂被覆キャリアの体積抵抗値変化を表す−log(A/B)が0.5未満という小さな値であるということは、樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層が削られにくいということである。よって、そのような削られにくい樹脂被覆キャリアを、長期間にわたって使用すると、樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層の削れが十分に進行しないため、平均1次粒子径が50nm以上の外添剤が樹脂被覆キャリア表面へ堆積し、キャリアのトナーへの帯電付与能力が低下する。また、体積抵抗値変化−log(A/B)が2.5を超えるという大きな値であるということは、樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層が削られやすいということである。よって、そのような削られやすい樹脂被覆キャリアを、長期間にわたって使用すると、樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層の削れが不所望に進行しすぎてしまうため、キャリア芯材の一部分が露出し、キャリア抵抗値が低下するため、像担持体へのキャリア付着が増加する。−log(A/B)が上記式(2)を満たす範囲であれば、樹脂被覆キャリアのトナーに対する帯電付与能力を維持しつつ、現像槽内での攪拌によって樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層の削れを適度に進行させることができる。
【0069】
本実施形態の樹脂被覆キャリアの表面は、たとえ平均1次粒子径が50nm以上の大粒径の外添剤が付着したとしても、樹脂被覆キャリアのトナーに対する帯電付与能力は維持されたまま、現像槽内での攪拌によって樹脂被覆層が適度に削られて外添剤が付着していない樹脂被覆層に更新される。すなわち、上記式(2)を満たす樹脂被覆キャリアは、樹脂被覆層が適度に削れることで、キャリアの帯電付与能力の低下を抑えることができる。
【0070】
したがって、本実施形態の樹脂被覆キャリアと平均1次粒子径が50nm以上の外添剤が外添されたトナーとを含む現像剤は、転写効率が良好であり、また、印刷枚数が増加しても、長期間にわたって現像剤のブロッキングが少なく、また、現像剤の流動性も良好であり、また、トナーを安定して帯電させる。
【0071】
ここで、攪拌試験とは、樹脂被覆キャリアの総表面積(全樹脂被覆キャリアの表面積の総和)に対するトナーの総投影面積(全トナー粒子の投影面積の総和)の割合((トナーの総投影面積/樹脂被覆キャリアの総表面積)×100)(以下、「カバレッジθ」とする)が70%となるように樹脂被覆キャリアとトナーとを混合した現像剤をガラス瓶に投入し、ミキサーミルにて26.3Hz、3時間の条件で混合攪拌する試験である。攪拌試験を行った後の樹脂被覆キャリアの体積抵抗値の測定方法は攪拌試験を行う前の樹脂被覆キャリアの体積抵抗値の測定方法と同じである。
【0072】
樹脂被覆キャリアの1000V/cmの電界下における体積抵抗値は、1.0×1011Ω/cm以上1.0×1014Ω/cm以下の範囲内にあるものが好ましい。樹脂被覆キャリアの1000V/cmの電界下における体積抵抗値をこのような範囲とすることで、キャリア付着がなく、トナーに対する帯電立ち上がり特性のよい樹脂被覆キャリアを得ることができる。樹脂被覆キャリアの1000V/cmの電界下における体積抵抗値が1.0×1011Ω/cm未満だと、キャリア付着が多くなってしまう。樹脂被覆キャリアの1000V/cmの電界下における体積抵抗値が1.0×1014Ω/cmを超えると、画像劣化を引き起こしてしまう。
【0073】
また、樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径は35μm以上55μm以下であることが好ましい。体積平均粒子径が35μm以上55μm以下の樹脂被覆キャリアを前記トナーと用いることによって、現像工程における樹脂被覆キャリアのトナー搬送が安定化されるとともに、高精細な画像形成が可能となる。また、樹脂被覆キャリアの形状は球形であることが好ましいけれども、非球形であっても本発明の効果が失われるものではない。
【0074】
2、2成分現像剤
本発明の2成分現像剤(以下、「現像剤」と称する場合がある)の実施形態は、平均1次粒子径が50nm以上の大粒径の外添剤が外添されたトナーと本発明の樹脂被覆キャリアとを混合することによって製造される。平均1次粒子径が50nm以上の大粒径の外添剤が外添されたトナーについて説明する。
【0075】
(1)トナー
トナーは、トナー粒子に平均1次粒子径が50nm以上の外添剤が外添されるトナーである。トナー粒子の原料としては、結着樹脂、着色剤、離型剤、帯電制御剤などが挙げられる。
【0076】
(結着樹脂)
結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、ブラックトナー用またはカラートナー用の公知の結着樹脂を使用することができる。たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。また、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応を行って得られる樹脂を用いてもよい。結着樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0077】
結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合、ポリエステル樹脂を得るための芳香系のアルコール成分としては、たとえばビスフェノールA、ポリオキシエチレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.4)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。
【0078】
また上記ポリエステル樹脂の多塩基酸成分としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの二塩基酸類、トリメリット酸、トリメチン酸、ピロメリット酸などの三塩基以上の酸類およびこれらの無水物、低級アルキルエステル類が挙げられ、耐熱凝集性の点からテレフタル酸、またはその低級アルキルエステルが好ましい。
【0079】
ここで上記ポリエステル樹脂の酸価は、5〜30mgKOH/gが好ましい。酸価が5mgKOH/g未満になると樹脂の帯電特性の低下を招いたり、帯電制御剤がポリエステル樹脂中に分散しにくくなったりする。これにより、帯電量の立ち上がりおよび連続使用による繰り返し現像の帯電量安定性に悪影響を及ぼすおそれがある。酸価が30mgKOH/gを超えると、酸価に起因する官能基による吸湿性が向上し、使用環境の変化による帯電量の変化、たとえば、高温高湿環境下における帯電量低下を招くおそれがある。よって、上記範囲が好ましい。なお、酸価の測定は、日本工業規格(JIS)K0070−1992に記載の電位差滴定法に準拠して行う。
【0080】
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、得られるトナーの定着性および保存安定性などを考慮すると、40℃以上80℃以下であることが好ましい。30℃未満であると、保存安定性が不充分になるため画像形成装置内部でのトナーの熱凝集が起こりやすくなり、現像不良が発生するおそれがある。また高温オフセット現象が発生し始める温度(以下、「高温オフセット開始温度」と称する)が低下してしまう。高温オフセット現象とは、加熱ローラなどの定着部材で加熱および加圧してトナーを記録媒体に定着させる際に、トナーが過熱されることによってトナー粒子の凝集力がトナーと定着部材との接着力を下回ってトナー層が分断され、トナーの一部が定着部材に付着して取去られる現象のことである。また80℃を超えると、定着性が低下するため定着不良が発生するおそれがある。
【0081】
結着樹脂の軟化温度(T1/2)は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、150℃以下であることが好ましく、さらには60℃以上120℃以下であることが好ましい。60℃未満であると、トナーの保存安定性が低下し、画像形成装置内部でトナーの熱凝集が起こりやすくなり、トナーを安定して像担持体に供給することができず、現像不良が発生するおそれがある。また画像形成装置の故障が誘発されるおそれもある。120℃を超えると、トナーを記録媒体に定着させる際に、トナーが溶融または軟化しにくくなるので、トナーの記録媒体への定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。
【0082】
結着樹脂の分子量は、特に制限されず、広い範囲から適宜選択できるけれども、重量平均分子量(Mw)で5,000以上500,000以下であることが好ましい。5,000未満であると、結着樹脂の機械的強度が低下し、得られるトナー粒子が現像装置内部での攪拌などによって粉砕されやすくなり、トナー粒子の形状が変化し、たとえば帯電性能にばらつきが生じるおそれがある。また500,000を超えると、溶融されにくくなるため、トナーの定着性が低下し、定着不良が発生するおそれがある。ここで、結着樹脂の重量平均分子量は、GPCによって測定されるポリスチレン換算の値である。
【0083】
(着色剤)
着色剤としては、所望の色に応じて種々の着色剤を用いることができ、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、ブラックトナー用着色剤などが挙げられる。
【0084】
イエロートナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー5、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー15、およびC.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185などの有機系顔料、黄色酸化鉄および黄土などの無機系顔料、C.I.アシッドイエロー1などのニトロ系染料、C.I.ソルベントイエロー2、C.I.ソルベントイエロー6、C.I.ソルベントイエロー14、C.I.ソルベントイエロー15、C.I.ソルベントイエロー19、およびC.I.ソルベントイエロー21などの油溶性染料などが挙げられる。
【0085】
マゼンタトナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド49、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ソルベントレッド19、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ベーシックレッド10、C.I.ディスパーズレッド15などが挙げられる。
【0086】
シアントナー用着色剤としては、たとえば、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ソルベントブルー55、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ダイレクトブルー 25、C.I.ダイレクトブルー86などが挙げられる。
【0087】
ブラックトナー用着色剤としては、たとえば、チャンネルブラック、ローラーブラック、ディスクブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラックが挙げられる。これら各種カーボンブラックの中から、得ようとするトナーの設計特性に応じて、適切なカーボンブラックを適宜選択すればよい。
【0088】
着色剤としては、これらの顔料以外にも、紅色顔料、緑色顔料などを使用してもよい。着色剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、同色系のものを2種以上用いることができ、異色系のものをそれぞれ1種または2種以上用いることもできる。
【0089】
着色剤はマスターバッチの形態で使用されてもよい。着色剤のマスターバッチは、一般的なマスターバッチと同様にして製造できる。たとえば、合成樹脂の溶融物と着色剤とを混練して着色剤を合成樹脂中に均一に分散させた後、得られる溶融混練物を造粒することによって製造できる。合成樹脂には、トナーの結着樹脂と同種のものか、またはトナーの結着樹脂に対して良好な相溶性を有するものが使用される。このとき、合成樹脂と着色剤との使用割合は、特に制限されないけれども、好ましくは合成樹脂100重量部に対して、30〜100重量部である。また、マスターバッチは、粒径2〜3mm程度に造粒される。
【0090】
また、着色剤の使用量は、特に制限されないけれども、好ましくは結着樹脂100重量部に対して5〜20重量部である。これはマスターバッチ量ではなく、マスターバッチに含まれる着色剤そのものの量である。着色剤をこの範囲で用いることによって、トナーの各種物性を損なうことなく、高い画像濃度を有し、画質品位の非常に良好な画像を形成することができる。
【0091】
(離型剤)
離型剤は、トナーを記録媒体に定着させる際にトナーに離型性を付与するために添加される。したがって、離型剤を使用しない場合と比較して高温オフセット開始温度を高め、耐高温オフセット性を向上させることができる。またトナーを定着させる際の加熱によって離型剤を溶融させ、定着開始温度を低下させ、耐高温オフセット性を向上させることができる。離型剤としては、この分野で常用されるものが使用でき、たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子量ポリプロピリンワックスおよびその誘導体、ポリオレフィン系重合体ワックス(低分子量ポリエチレンワックスなど)およびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、ライスワックスおよびその誘導体、キャンデリラワックスおよびその誘導体、木蝋などの植物系ワックス、蜜蝋、鯨蝋などの動物系ワックス、脂肪酸アミド、フェノール脂肪酸エステルなどの油脂系合成ワックス、長鎖カルボン酸およびその誘導体、長鎖アルコールおよびその誘導体、シリコーン系重合体、高級脂肪酸などが挙げられる。なお、誘導体には、酸化物、ビニル系モノマーとワックスとのブロック共重合物、ビニル系モノマーとワックスとのグラフト変性物などが含まれる。離型剤の使用量は特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.2〜20重量部である。
【0092】
(帯電制御剤)
帯電制御剤は、トナーの摩擦帯電性を制御することを目的として添加される。帯電制御剤としては、この分野で常用される負電荷制御用のものを使用できる。負電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、オイルブラック、スピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、樹脂酸石鹸などが挙げられる。この中でもホウ素化合物は重金属を含まないものとして特に好ましい。帯電制御剤は、用途に応じて使い分ければよい。帯電制御剤は、1種を単独で使用してもよいし、必要に応じて2種以上を併用してもよい。帯電制御剤の使用量は、特に制限されず広い範囲から適宜選択できるけれども、好ましくは、結着樹脂100重量部に対して0.5〜3重量部である。
【0093】
(トナーの製造方法)
トナー粒子の製造方法は特に制限されず、公知の製造方法により得ることができる。トナー粒子は、たとえば、溶融混練粉砕法によって製造できる。溶融混練粉砕法は、たとえば混合工程、溶融混練工程、粉砕工程および分級工程を含む。溶融混練粉砕法によれば、混合工程では、結着樹脂、着色剤、離型剤、電荷制御剤、その他の添加材などのそれぞれ所定量を乾式混合し混合物を得る。溶融混練工程では、混合物を溶融混練し、得られる溶融混練物を冷却して固化させ固化物を得る。粉砕工程では、固化物を機械的に粉砕する。分級工程では、粉砕工程にて得られた粉砕物から、分級機で過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子を除去する。これらの工程を経ることで、トナー粒子を製造できる。
【0094】
乾式混合に用いられる混合機としては、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)、メカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、コスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
【0095】
混練は、攪拌下に結着樹脂の溶融温度以上の温度(通常は80〜200℃程度、好ましくは100〜150℃程度)に加熱しながら行われる。混練機として、たとえば、2軸押し出し機、三本ロール、ラボブラストミルなどの一般的な混練機を使用できる。さらに具体的には、たとえば、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87(商品名、株式会社池貝製)などの1軸もしくは2軸の押出機、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式のものが挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式のものが好ましい。溶融混練物を冷却して得られる固化物の粉砕には、カッターミル、フェザーミル、ジェットミルなどが挙げられる。たとえば、固化物をカッターミルで粗粉砕した後、ジェットミルで粉砕することによって、所望の体積平均粒子径を有するトナーが得られる。
【0096】
分級には、遠心力による分級または風力による分級によって過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子を除去できる公知の分級機を使用することができ、たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などを使用することができる。
【0097】
またトナー粒子は、たとえば、溶融混練物の固化物を粗粉砕し、得られる粗粉砕物を水性スラリー化し、得られる水性スラリーを高圧ホモジナイザで処理して微粒化し、得られる微粒を水性媒体中で加熱して凝集・溶融させることによっても製造できる。溶融混練物の固化物の粗粉砕は、たとえば、ジェットミル、ハンドミルなどを用いて行われる。粗粉砕によって、粒子径100μm〜3mm程度の粒子径を有する粗粉を得る。粗粉を水に分散させて、水性スラリーを調製する。粗粉を水に分散させるに際しては、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどの分散剤の適量を水に溶解させておくことによって、粗粉が均一に分散した水性スラリーが得られる。この水性スラリーを高圧ホモジナイザで処理することによって、水性スラリー中の粗粉が微粒化され、体積平均粒子径0.4〜1.0μm程度の微粒を含む水性スラリーが得られる。この水性スラリーを加熱し、微粒を凝集させ、微粒同士を溶融させて結合することによって、所望の体積平均粒子径および平均円形度を有するトナーが得られる。体積平均粒子径および平均円形度は、たとえば、微粒の水性スラリーの加熱温度および加熱時間を適宜選択することによって、所望の値にすることができる。加熱温度は、結着樹脂の軟化点以上、結着樹脂の熱分解温度未満の温度範囲から適宜選択される。加熱時間が同じである場合には、通常は、加熱温度が高いほど、得られるトナーの体積平均粒子径は大きくなる。
【0098】
高圧ホモジナイザとしては、市販品が知られる。高圧ホモジナイザの市販品としては、たとえば、マイクロフルイダイザー(商品名、マイクロフルディクス(Microfluidics)社製)、ナノマイザー(商品名、ナノマイザー社製)、アルティマイザー(商品名、株式会社スギノマシン製)などのチャンバ式高圧ホモジナイザ、高圧ホモジナイザ(商品名、ラニー(Rannie)社製)、高圧ホモジナイザ(商品名、三丸機械工業株式会社製)、高圧ホモゲナイザ(商品名、株式会社イズミフードマシナリ製)、NANO3000(商品名、株式会社美粒製)などが挙げられる。
【0099】
以上のように製造されたトナー粒子には球形化処理が施されてもよく、球形化する手段としては衝撃式球形化装置、熱風式球形化装置などが挙げられる。衝撃式球形化装置としては、市販されているものを使用することもでき、たとえば、ファカルティ(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)などを用いることができる。または、熱風式球形化装置としては、市販されているものも使用することができ、たとえば、表面改質機メテオレインボー(商品名、日本ニューマチック工業株式会社製)などを用いることができる。
【0100】
(外添剤)
このようにして得られたトナー粒子には、平均1次粒子径が50nm以上、好ましくは0.1μm以上の外添剤が外添される。これによって、特にカラートナーにおいて、転写性を向上させることができる。外添剤としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。
【0101】
また上記以外にも、少なくとも1種類以上の外添剤を併用することができる。併用できる外添剤としては特に限定されず、たとえば、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。併用できる外添剤の平均1次粒子径は、5〜30nmであることが好ましい。このような粒子径の外添剤を併用することによって、トナーの流動性を向上させることができる。併用できる外添剤の平均1次粒子径が5nm未満だと、均一に分散させることが困難である。併用できる外添剤の平均1次粒子径が30nmを超えると、流動性の向上効果が充分でない。
【0102】
ここで、外添剤の平均1次粒子径は、動的光散乱を利用する粒子径分布測定装置、たとえばDLS−800(商品名、株式会社大塚電子製)、コールターN4(商品名、コールターエレクトロニクス社製)などによって測定可能であるけれども、疎水化処理後の粒子の二次凝集を解離することは困難であるため、走査型電子顕微鏡(SEM;Scanning
Electron Microscope)もしくは透過型電子顕微鏡(TEM;Transmission Electron
Microscope)により得られる写真画像を画像解析することにより直接求めることが好ましい。
【0103】
また、外添剤の添加量は、特に制限されないけれども、好ましくはトナー粒子100重量部に対して0.1〜3.0重量部である。外添剤の添加量をこのような範囲とすることによって、トナーに流動性を付与し、転写効率を高めることができる。外添剤の添加量が0.1重量部未満だと、トナーに充分な流動性を与えることができず、転写効率を高めることもできない。外添剤の添加量が3.0重量部を超えると、外添剤のキャリア表面へ堆積する速度が速くなり、攪拌試験前後のキャリアの体積抵抗値A,Bが上記式(2)を満たす場合でも、キャリアのトナーに対する帯電付与能力の低下を抑えにくくなる。
【0104】
(2)2成分現像剤
本発明の2成分現像剤は、上記樹脂被覆キャリアと上記トナーとを含み、長期間にわたってトナー帯電量を安定させることができるので、かぶりなどの画像欠陥の少ない高画質画像を安定して形成することができる。
【0105】
上記樹脂被覆キャリアと上記トナーとの混合割合は、特に制限はないけれども、A4サイズの画像で1分間に40枚以上印刷可能な高速画像形成装置に用いることを考慮すると、トナーの体積平均粒子径に対する樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径の比率が5以上であり、カバレッジθが50〜75%程度のものを用いることが好ましい。これによって、トナーの帯電性が充分良好な状態で安定的に維持され、高速画像形成装置においても高画質画像を安定的に、かつ長期的に形成できる好適な現像剤として使用できる。
【0106】
カバレッジθの値は、現像剤中のトナー濃度で調整することができる。現像剤中のトナー濃度が低い場合(カバレッジθが50%より小さい場合)はトナー帯電量が上昇する傾向にあり、トナー濃度が高い場合(カバレッジθが75%より大きい場合)にはトナー帯電量が減少する傾向にある。そのため、この現象を利用し帯電量をある程度調節することが可能である。しかしながら、実機に搭載して現像剤を使用する場合、トナー濃度を下げていくと、キャリアと感光体との接触面積の増加からキャリア付着が問題となって現れる。またトナー濃度を上げていくと、帯電量の低下とともにトナー飛散が深刻になってくる。
【0107】
カバレッジθとトナー濃度との関係としては、具体的には、トナーの体積平均粒子径が6.5μmであり、樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径が40μmである場合に、カバレッジθを50〜75%にすると、現像剤中で樹脂被覆キャリア100重量部に対してトナーが6.9〜10.4重量部程度含まれる。このような現像剤で高速現像すると、トナー消費量とトナーの消費に応じて現像装置の現像槽に供給されるトナー供給量とがそれぞれ最大になり、それでも需給バランスが損なわれることがない。そして、現像剤中でキャリア100重量部に対してトナーが6.9〜10.4重量部程度よりも多くなると、帯電量がより低くなる傾向があり所望の現像特性が得られないばかりか、トナー供給量よりもトナー消費量の方が多くなり、トナーに充分な電荷を付与できなくなり、画質の劣化を招く。反対に、トナーの量が少ない場合は帯電量が高くなる傾向があり、キャリアからトナーが電界によって分離しにくくなり、結果として画質の劣化を招く。
【0108】
トナーの総投影面積は、本実施形態では、以下のように算出する。トナーの比重を1.0とし、コールターカウンタ(商品名:コールターカウンタ・マルチサイザーII、ベックマン・コールター社製)で得られた体積平均粒子径を基に算出する。すなわち、混合するトナー重量中のトナー個数を算出し、トナー個数×トナー面積(円と仮定して算出)をトナー総投影面積とする。同様に、樹脂被覆キャリアの表面積の総和は、キャリア比重を4.7とし、マイクロトラック(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装株式会社製)よって得られた粒子径を基に、混合するキャリア重量から総表面積を算出する。
【0109】
3、現像装置
本発明の現像装置の実施形態は、上記2成分現像剤を用いて、像担持体に形成される静電潜像を現像して可視像を形成する。上記2成分現像剤は、長期の使用においてトナー帯電量を安定化させることができるので、上記2成分現像剤を用いることによって、長期間にわたってかぶりのない良好なトナー画像を安定して形成することのできる現像装置を実現することができる。
【0110】
図3は、本実施形態の現像装置20の構成を示す概略図である。現像装置20は、図3に示すように、現像剤1を格納する現像ユニット10と、現像剤を像担持体である感光体15に搬送する現像剤担持体(現像剤搬送担持体)13とを備えている。
【0111】
現像ユニット10の内部に予め投入された現像剤は、攪拌スクリュー12によって攪拌されて帯電される。そして、現像剤は、内部に磁界発生手段であるマグネットローラを配設した現像剤担持体13に搬送されることで、現像剤担持体13表面に保持される。現像剤担持体13表面に保持された現像剤は、現像剤規制部材14によって一定層厚に規制され、現像剤担持体13と感光体15との近接領域に形成される現像領域に搬送され、現像剤担持体13に交流バイアス電圧を印加して形成される振動電界下に、感光体15上の静電荷像を反転現像法で顕像化する。
【0112】
また、可視像形成によるトナー消費は、図示しないトナー濃度センサによって、現像剤重量に対するトナー重量の比率であるトナー濃度の変化として検知され、消費された分は、予め定められた規定トナー濃度に達したことを図示しないトナー濃度センサが検知するまでトナーホッパー16から補給され、現像ユニット10内部の現像剤におけるトナー濃度は略一定に保たれる。また、本実施形態において、現像剤担持体13と現像剤規制部材14とのギャップ、および現像領域における現像剤担持体13と感光体15とのギャップは、たとえば、0.4mmに設定されていてもよい。この数値は単なる例示でありこの数値に限定されることはない。
【0113】
4、画像形成装置
本発明の画像形成装置の実施形態は、現像装置20を備える。現像装置20以外の他の構成は、公知の電子写真方式の画像形成装置の構成を用いることができる。図4は、本実施形態の画像形成装置21の構成を示す概略図である。画像形成装置21は、可視像形成ユニット31と、定着手段と、クリーニング手段とを含む。可視像形成ユニット31の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(k)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は数字のみで表す。可視像形成ユニット31は、像担持体と、帯電手段と、露光手段と、転写手段とを含む。
【0114】
像担持体である感光体15は、表面に静電荷像を形成し得る感光層を有するローラ状部材である。帯電手段である帯電装置22は、感光体15表面を所定電位に帯電させる。露光手段であるレーザー光照射手段23は、表面が帯電状態にある感光体15に画像情報に応じた信号光を照射して感光体15の表面に静電荷像(静電潜像)を形成する。転写手段は、1次転写装置24と2次転写装置26とを含み、1次転写装置24は、現像装置20からトナー3が供給されて現像された感光体15表面のトナー像を、中間転写体である中間転写ベルト25に転写する。2次転写装置26は、中間転写ベルト25に転写されたトナー像を記録媒体27に転写する。定着手段である定着装置28は、記録媒体27表面のトナー像を記録媒体27に定着させる。クリーニング手段は、感光体用クリーニング装置29と転写用クリーニング装置30とを含み、感光体用クリーニング装置29は、トナー像の記録媒体27への転写後に感光体15表面に残留するトナー3および紙粉などを除去する。転写用クリーニング装置30は、上記中間転写ベルトに付着した余分なトナー3などを除去する。
【0115】
静電荷像を現像する際には、感光体15上の静電荷像を反転現像法で顕像化する現像工程がトナーの色毎に実行され、中間転写ベルト25に色の異なる複数のトナー像を重ね合わせて多色トナー像が形成される。本実施形態では、中間転写ベルト25を用いた中間転写方式を採用しているけれども、感光体15から直接記録媒体にトナー像を転写する構成が用いられてもよい。
【0116】
本実施形態の画像形成装置21によれば、前述のように感光体15にかぶりのないトナー像を形成可能な本発明の現像装置20を備えて画像形成装置21が実現される。このような画像形成装置21で画像を形成することによって、長期間にわたってかぶりのない高画質画像を安定して形成することができる。
【実施例】
【0117】
以下に本発明に係る実施例および比較例を説明する。本発明はその要旨を超えない限り、本実施例に限定されるものではない。以下において、「部」は「重量部」を示す。また、特に断らない限り「%」は「重量%」を示す。
【0118】
<トナー>
3種類のトナー(トナー1〜3)を以下のように製造した。
【0119】
(トナー1)
ポリエステル(商品名:FC1494、三菱レーヨン株式会社製)を結着樹脂とし、顔料(C.I.Pigment Red57:1)、離型剤(商品名:HNP11、日本精鑞株式会社製)および帯電制御剤(商品名:LR−147、日本カーリット株式会社製)を乾式混合および溶融混練し、粉砕工程および分級工程を経てトナー粒子を製造した。このトナー粒子に、平均1次粒子径が0.1μm、12nmの2種類の疎水化処理したシリカ微粒子(以下「疎水化シリカ微粒子」ともいう)を外添し、体積平均粒子径が6.5μmである負帯電性のマゼンタトナー(非磁性マゼンタトナー)を製造した。
【0120】
(トナー2)
平均1次粒子径が0.1μmである疎水化シリカ微粒子の代わりに平均1次粒子径が50nmである疎水化シリカ微粒子を用いたこと以外はトナー1と同様にしてトナー2を製造した。
【0121】
(トナー3)
平均1次粒子径が0.1μmである疎水化シリカ微粒子を用いず、外添剤として平均1次粒子径が12nmである疎水化シリカのみを用いたこと以外はトナー1と同様にしてトナー3を製造した。
【0122】
<樹脂被覆キャリア>
15種類の樹脂被覆キャリア(キャリア1〜15)を以下のように製造した。
【0123】
(キャリア1)
架橋型シリコーン樹脂A(商品名:KR240、信越化学工業株式会社製(Mw=5.0×10))0.375部および架橋型シリコーン樹脂B(商品名:KR251、信越化学工業株式会社製(Mw=5.0×10))0.375部をトルエン12部に溶解し、そこに導電性粒子(商品名:VULCAN XC−72、キャボット株式会社製)0.0375部、およびカップリング剤(商品名:AY43−059、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.0225部を内添または分散させることでコート樹脂液を調製した。浸漬法によって、前記コート樹脂液12.8部を用いて、体積平均粒子径45μmのキャリア芯材(Mn−Mgフェライト)100部の表面を被覆した。その後、キュア温度200℃、キュア時間1時間の硬化過程を経て、目開き150μmのふるいにかけることでキャリア1を製造した。ここで、Mwは、各シリコーン樹脂の重量平均分子量を示す。重量平均分子量Mwはシリコーン樹脂のみの混合溶液を調製し、移動相としてトルエンを用いて分子量分布をGPC(装置名:HLC-8320GPC、東ソー株式会社)により測定して得た。
【0124】
キャリア1では、Ma=5.0×10、Mb=5.0×10であるので、上記式(1)に記載の重量平均分子量比X(X=Log(Mb/Ma))は、X=3.0と算出される。
【0125】
(キャリア2〜18)
シリコーン樹脂の種類、シリコーン樹脂の添加量、導電性粒子の添加量、カップリング剤の添加量、キャリア芯材の体積平均粒子径のいずれか1つ以上を表1に示すように変更したこと以外はキャリア1と同様にしてキャリア2〜18を製造した。
【0126】
キャリア2〜18の製造において、上記架橋型シリコーン樹脂A,B以外に、シリコーン樹脂は次のものを用いた。
・架橋型シリコーン樹脂C 商品名:KR350、信越化学工業株式会社製(Mw=4.0×10
・架橋型シリコーン樹脂D 商品名:TSR127B、モメンティブ合同会社製(Mw=4.0×10
【0127】
また、キャリア芯材および樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径は以下のようにして測定した。
【0128】
(体積平均粒子径の測定)
キャリア芯材および樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径は、マイクロトラック(商品名:MT3000、日機装株式会社)を用いて測定した。エマルゲン109P(ポリオキシエチレンラウリルエーテルHLB13.6、花王株式会社製)の5%水溶液10mlに測定試料約10〜15mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、このうち約1mlを上記マイクロトラックの所定箇所に加えた後、1分間攪拌し散乱光強度が安定したのを確認して、測定を行った。
また、体積抵抗値変化率Yは以下のようにして算出した。
【0129】
(体積抵抗値変化率Yの算出)
体積抵抗値変化率Yは、攪拌試験前の1000V/cmの電界下における樹脂被覆キャリアの体積抵抗値B(Ω/cm)を測定し、攪拌試験後の1000V/cmの電界下における樹脂被覆キャリアの体積抵抗値A(Ω/cm)を測定し、下記式で表される値を算出した。
Y=−log(A/B)
【0130】
表1は、キャリア1〜18における、キャリア芯材の体積平均粒子径および使用量、シリコーン樹脂の種類および使用量(固形分)、重量平均分子量比X、各添加剤の使用量(固形分)、キャリアの体積平均粒子径、ならびに体積抵抗値変化率Yを示す。
【0131】
【表1】

【0132】
表1の重量平均分子量比Xおよび体積抵抗値変化率Yから、キャリア1〜5,11〜18は本発明のキャリアの実施例であり、キャリア6〜10はキャリアの比較例である。
【0133】
<2成分現像剤>
(実施例1)
カバレッジθが70%となるようにキャリア1とトナー1とを樹脂製円筒容器に投入した後、両軸駆動ポリ瓶回転架台にて、200rpm、1時間の条件で混合攪拌することによって2成分現像剤の実施例1を製造した。
【0134】
(実施例2〜14、比較例1〜8)
表2に示すようにトナーの種類または樹脂被覆キャリアの種類の少なくともいずれか1つを変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2〜14および比較例1〜8の2成分現像剤を製造した。
【0135】
【表2】

【0136】
<外添剤の粒子径の影響の評価>
実施例1,2および比較例1〜4の2成分現像剤を用いて、トナーに外添される外添剤の粒子径の影響をライフ帯電安定性および転写効率で評価した。ライフ帯電安定性および転写効率は以下の評価方法および評価基準によって評価した。また、評価の際の測定結果を表3に示した。
【0137】
(ライフ帯電安定性)
実施例1,2および比較例1〜4の2成分現像剤をそれぞれ有する複写機(カラープリント速度:50ppm、モノクロプリント速度:62ppm、商品名:MX−6201N、シャープ株式会社製)にセットし、常温常湿下において印字率5%を50000(以下「50k」と記す)枚実写した後、2成分現像剤の帯電量を測定した。帯電量は吸引式帯電量測定装置にて測定した。初期の帯電量との差が絶対値で3μC/g以下であれば良好(○)、3μC/gを超え5μC/g以下であれば可(△)、5μC/gより大きければ不良(×)と評価した。
【0138】
(転写効率)
実施例1,2および比較例1〜4の2成分現像剤について、転写効率を算出した。転写効率T(%)は、下記式(4)から算出し、転写効率Tが90%以上であれば良好(○)、90%未満であれば不良(×)と評価した。
T(%)=[Mp/(Md+Mp)]×100 …(4)
【0139】
式中、Mpは所定チャートを複写した紙面上のトナー重量である。Mdは所定チャートの複写の際に像担持体(電子写真感光体)表面に残留するトナー重量である。ここで、所定のチャートとは4cm×4cmのパッチをA4紙上の4隅(紙の端から1.5cmずつ内側に配置)および中央部に配置したものである。像担持体表面に残留するトナー重量は、前記吸引式帯電量測定装置を用いて像担持体表面のトナーを吸引し、この吸引したトナーの量を測定することによって得た。また紙面上のトナー量も、同様にして得た。
【0140】
【表3】

【0141】
表3に示すように、トナーに50nm以上の外添剤が外添されていない比較例1,4は、ライフ帯電安定性は良好であるけれども、転写効率は不良となる。また、トナーに50nm以上の外添剤が外添されている実施例1,2および比較例2,3は、転写効率が良好であるけれども、攪拌試験前後の体積抵抗値変化率Yが0.5以上2.5以下の範囲内にない比較例2,3はライフ帯電安定性が不良であり、体積抵抗値変化率Yが0.5以上2.5以下の範囲内にある実施例1,2はライフ帯電安定性が良好となっている。
【0142】
このように、トナーに50nm以上の外添剤が外添されていると、転写効率は良好となるけれども、そのようなトナーとともに本発明の樹脂被覆キャリア以外の樹脂被覆キャリアを用いるとライフ帯電安定性が損なわれることがわかる。
【0143】
<2成分現像剤の評価>
次に、2成分現像剤の実施例1,3〜14および比較例2,5〜8を、ライフ帯電安定性、転写効率、画像濃度、白色度、現像剤搬送率、帯電立ち上がり特性、キャリア付着、および粒状性で評価した。各項目の評価結果において、全ての評価結果が良好(○)であるものを「◎」とし、1つ可(△)の評価結果があり、不良(×)の評価結果がないものを「○」とし、二つ以上可(△)の評価結果があり、不良(×)の評価結果がないものを「△」とし、不良(×)の評価結果があるものを「×」と評価し、評価結果を表4に示した。2成分現像剤の評価結果において、評価結果が「◎」、「○」、または「△」であれば現像剤として利用可能である。
【0144】
画像濃度、白色度、現像剤搬送率、帯電立ち上がり特性、キャリア付着、および粒状性は以下の評価方法および評価基準によって評価した。ライフ帯電安定性および転写効率の評価方法および評価基準は、上記のライフ帯電安定性および転写効率の評価方法および評価基準と同様である。各項目の評価の際の測定結果も表4に示した。
【0145】
(画像濃度)
実施例1,3〜14および比較例2,5〜8の2成分現像剤をそれぞれ用いて、ライフ帯電安定性の評価方法と同様にして画像を50k枚印字し、画像部の画像濃度をX−Rite938分光測色濃度計によって測定した。画像濃度が1.4以上であれば良好(○)、1.3以上1.4未満であれば可(△)、1.3未満であれば不良(×)と評価した。
【0146】
(白色度)
実施例1,3〜14および比較例2,5〜8の2成分現像剤をそれぞれ用いて、ライフ帯電安定性の評価方法と同様にして画像を50k枚印字し、非画像部の白色度を測定した。白色度は、色差計(商品名:SZ90型分光式色差計、日本電色工業株式会社製SZ90型分光式色差計)を用いて三刺激値X,Y,Zを求め、Zの値が0.5以下であれば良好(○)、0.5より大きく0.7以下であれば可(△)、0.7より大きければ不良(×)と評価した。
【0147】
(現像剤搬送率)
図3に示される現像装置20から現像ユニット10を取り出して、現像ユニット10内での2成分現像剤の現像剤搬送率を測定した。現像ユニット10として、複写機(商品名:MX−4500N、シャープ株式会社製)から取り出された現像ユニットを用いた。
【0148】
まず、実施例1,3〜14および比較例2,5〜8の2成分現像剤をそれぞれ現像ユニット10にセットし、その現像ユニット10を温度52.5℃に保たれた恒温層の中に入れた。そして、現像剤担持体13を430rpmで1時間半回転させるとともに、攪拌スクリュー12により2成分現像剤を攪拌させた。その後、攪拌スクリュー12により現像剤担持体13へ搬送される2成分現像剤の量を測定した。
【0149】
具体的には、恒温槽に入れる前の現像ユニット10内の2成分現像剤の落下量Aを求めるために、現像剤担持体13を50rpmで駆動し、ギヤを介し駆動される攪拌スクリュー12を回転させながら、現像剤落下用穴から2成分現像剤を落下させる。そして、落下してくる現像剤量を測定する。測定後、現像ユニット10を、温度環境52.5℃とした恒温槽に入れ、現像剤担持体13を回転速度430rpmで90分間駆動し、現像ユニット10内の2成分現像剤に機械的ストレスを加える。その後、恒温槽に入れる前と同様に、2成分現像剤の落下量Bを求める。
【0150】
恒温槽投入前の落下量Aと、恒温槽投入後の落下量Bとの比率を現像剤搬送率とした。この現像剤搬送率は、加速度的に劣化させた2成分現像剤の流動性を示す指標となる。現像剤搬送率が50%以上であれば良好(○)、30%以上50%未満であれば可(△)、30%未満であれば不良(×)と評価した。
【0151】
(帯電立ち上がり特性)
実施例1,3〜14および比較例2,5〜8の2成分現像剤がそれぞれ入った5mlのガラス瓶を32rpmの回転培養機で1分間攪拌した後、2成分現像剤を採取し、吸引式帯電量測定装置(商品名:210H−2A Q/M Meter、TREK社製)で帯電量を測定した。また3分間攪拌した後、同様に帯電量を測定した。1分後と3分後の帯電量の差が絶対値で5μC/gより小さければ良好(○)、5μC/g以上7μC/g以下であれば可(△)、7μC/gより大きければ不良(×)と評価した。
【0152】
(キャリア付着)
実施例1,3〜14および比較例2,5〜8の2成分現像剤をそれぞれ用いて、ライフ帯電安定性の評価方法と同様にして画像を50k枚印字した後、像担持体上の非画像部における一定面積(297mm×24mm)中のキャリア付着個数を求めた。キャリアの付着個数を求める際、現像剤担持体に印加する直流バイアス電圧は200Vとし、交流バイアス電圧は400Vとし、周波数9kHzとし、像担持体の表面は帯電させないでおく。キャリア付着の個数が15個より少ないものを良好(○)、15以上20個以下となるものを可(△)、20個より多いものを不良(×)として評価した。
【0153】
(粒状性)
実施例1,3〜14および比較例2,5〜8の2成分現像剤をそれぞれ、2成分現像装置を有する複写機(商品名:MX−6201N、シャープ株式会社製)にセットし、ライフ帯電安定性の評価方法と同様にして画像を50k枚印字後、画像のテストチャートを印刷して、白色との色差が30,50,70における粒状性を、自動プリンタ画質評価システム(商品名:APQS、王子計測機器株式会社製)を用いて粒状性のスコア値を測定した。この粒状性のスコア値が低いほど画像のざらつきが少なく、高画質であることを示す。ここでは、各色差のスコア値の最大値が11500より小さくなるものを良好(○)、11500以上12000以下となるものを可(△)、12000より大きくなるものを不良(×)として評価した。
【0154】
【表4】

【0155】
表4に示すように、実施例1,3〜14の2成分現像剤では、ライフ帯電安定性が不良(×)となってはいないのに対し、比較例2,6〜8の2成分現像剤では、ライフ帯電安定性が不良(×)となっている。比較例2,6〜8の2成分現像剤において、ライフ帯電安定性が不良(×)となるのは、比較例2,6〜8の2成分現像剤中のキャリア6,8〜10は、体積抵抗値変化率Yが0.5以上2.5以下ではない、すなわち、適度な硬さのキャリアではないため、長期の使用による外添剤付着によって生じる帯電量低下を抑えられないからである。特に、重量平均分子量比Xが2より小さいキャリア9,10を含む比較例7,8の2成分現像剤は、外添剤付着量が多くなるため、帯電量が大幅に低下している。
【0156】
また、表4に示すように、実施例1,3〜14の2成分現像剤では、現像剤搬送率が不良(×)となってはいないのに対し、比較例5,7の2成分現像剤では、現像剤搬送率が不良(×)となっている。比較例7の2成分現像剤において、ライフ帯電安定性が不良(×)となるのは、比較例7の2成分現像剤中のキャリア9は、重量平均分子量比Xが2より小さいため、現像剤のブロッキングが生じやすいからである。また、比較例5の2成分現像剤中のキャリア7は、比較例7とは異なり、重量平均分子量比Xが2.6という大きな値であるが、現像剤搬送率が不可(×)となっている。これは、キャリア7は樹脂量が少なすぎてキャリア芯材露出面が多く、それ故にトナースペントが起こり易く、現像剤搬送性が悪化するためである。また、比較例8の2成分現像剤中のキャリア10は、比較例7と同様に、重量平均分子量比Xが1.0という小さな値であるが、現像剤搬送率が不可(×)となっていない。これは、キャリア10はキャリア7に比べ樹脂量が多いため、キャリア芯材の露出面が少なく、トナースペントしにくいためである。
【0157】
したがって、現像剤中の樹脂被覆キャリアの、樹脂被覆層に用いるシリコーン樹脂の重量平均分子量比Xが2より大きく、体積抵抗値変化率Yが0.5以上2.5以下である実施例1,3〜14は長期にわたって帯電量が安定するとともに、搬送量低下を抑えられることがわかる。また、比較例7,8に含まれるキャリア9,10のように、シリコーン樹脂の重量平均分子量比Xが2より小さいと、樹脂被覆層形成における樹脂投入量を変化させても、体積抵抗値変化率Yが0.5以上2.5以下の樹脂被覆キャリアを得られないことがわかる。
【0158】
また、実施例1,3〜14の2成分現像剤ではすべて、白色度が良好(○)である。このことから、実施例1,3〜14の2成分現像剤を用いるとトナーが安定して帯電し、かぶりが生じにくいことがわかる。
【0159】
また表4に示すように、比較例5の2成分現像剤による結果から、樹脂被覆キャリアの体積抵抗値変化率Yの値が2.5以上であると、帯電量は安定するけれども、樹脂被覆キャリアの体積抵抗値の低下によって、50k枚印字後のキャリア付着が多くなってしまうことがわかる。
【0160】
また表4に示すように、実施例1の2成分現像剤による結果と実施例7の2成分現像剤による結果との比較から、樹脂被覆層に導電性粒子を含むと、帯電立ち上がり特性が向上することがわかる。したがって、樹脂被覆層に導電性粒子を含むキャリアが好ましいことがわかる。
【0161】
また表4に示すように、実施例1の2成分現像剤による結果と実施例8,9の2成分現像剤による結果との比較から、樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径が35μmより大きい方が、現像剤搬送率が向上することがわかる。また、実施例5の2成分現像剤中のキャリア4、および実施例6の2成分現像剤中のキャリア5は、体積平均粒子径が45μmであるが、現像剤搬送率が可(△)となっている。キャリア4およびキャリア5は、樹脂量が少ないため、現像剤搬送率の評価の際の攪拌によってキャリア芯材が表面に露出してしまい、現像剤の流動性が悪化し、現像剤搬送率が若干悪くなったのである。
【0162】
また表4に示すように、実施例1の2成分現像剤による結果と実施例8の2成分現像剤による結果との比較から、樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径が35μmより大きい方が、キャリア付着が抑えられることがわかる。また、実施例5の2成分現像剤中のキャリア4、および実施例6の2成分現像剤中のキャリア5は、体積平均粒子径が45μmであるが、キャリア付着が可(△)となっている。キャリア4およびキャリア5は、樹脂量が少ないため、キャリア付着の評価の際の50k枚の印字によってキャリア芯材が表面に露出してしまい、キャリアの抵抗値が減少し、キャリア付着が若干多くなったのである。
【0163】
また表4に示すように、実施例1の2成分現像剤による結果と実施例10,11の2成分現像剤による結果との比較から、樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径が55μmより小さい方が、粒状性の悪化が抑えられることがわかる。また、実施例5の2成分現像剤中のキャリア4、および実施例7の2成分現像剤中のキャリア11は、体積平均粒子径が45μmであるが、粒状性が可(△)となっている。キャリア4は、樹脂量が少ないため、粒状性の評価の際の50k枚の印字によってキャリア芯材が表面に露出してしまい、トナーの帯電量が減少し、粒状性が若干悪化したのである。キャリア11は、導電剤が含有されていないため、キャリア抵抗値がやや高く、粒状性が若干悪化したのである。
【0164】
したがって、樹脂被覆キャリアの体積平均粒子径は35〜55μmであることが好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0165】
1 2成分現像剤
2 樹脂被覆キャリア
2a キャリア芯材
2b 樹脂被覆層
3 トナー
3a トナー粒子
3b 外添剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー粒子に平均1次粒子径が50nm以上の外添剤が外添されたトナーとともに用いられる樹脂被覆キャリアであって、
キャリア芯材と、
当該キャリア芯材の表面に、重量平均分子量の異なる少なくとも2種類以上のシリコーン樹脂を含有する樹脂で形成される樹脂被覆層であって、当該2種類以上のシリコーン樹脂のうち、最小の重量平均分子量を有するシリコーン樹脂の重量平均分子量をMaとし、当該樹脂被覆層に含有される少なくとも2種類のシリコーン樹脂のうち、最大の重量平均分子量を有するシリコーン樹脂の重量平均分子量をMbとすると、MaおよびMbは下記式(1)を満たす樹脂被覆層とを含み、
log(Mb/Ma)>2 …(1)
攪拌試験を行うことによって得られる1000V/cmの電界下における体積抵抗値(Ω/cm)をAとし、前記攪拌試験前の1000V/cmの電界下における体積抵抗値(Ω/cm)をBとすると、AおよびBは下記式(2)を満たすことを特徴とする樹脂被覆キャリア。
0.5≦−log(A/B)≦2.5 …(2)
【請求項2】
前記樹脂被覆層に導電性粒子が含まれていることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆キャリア。
【請求項3】
体積平均粒子径が35〜55μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂被覆キャリア。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂被覆キャリアと、平均1次粒子径が50nm以上の外添剤が外添されたトナーとを含むことを特徴とする2成分現像剤。
【請求項5】
請求項4に記載の2成分現像剤を用いて現像を行うことを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項5に記載の現像装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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