説明

樹脂被覆キャリアおよび樹脂被覆キャリアの製造方法

【課題】 キャリア芯材の表面に樹脂被覆層が形成された樹脂被覆キャリアにおいて、キャリア芯材と樹脂被覆層との間の密着性に優れて樹脂被覆層の剥離が防止され、かつトナーのスペントなどによるキャリアの汚染が抑制されて、長期間にわたって安定してトナーを帯電させることができる樹脂被覆キャリアの製造方法を提供する。
【解決手段】 樹脂被覆キャリアの製造方法は、複合粒子作製工程s1、分散液調製工程s2および被覆工程s3を含む。複合粒子作製工程s1では、磁性微粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合粒子を得る。分散液調製工程s2では、被覆用樹脂が溶剤に溶解した溶液中に複合粒子が分散された分散液を調製する。そして、被覆工程s3では、前記分散液とキャリア芯材とを混合して、キャリア芯材の表面に分散液を付着させた後、加熱下で溶剤を除去することによってキャリア芯材の表面に樹脂被覆層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に好適に使用できる樹脂被覆キャリアおよび樹脂被覆キャリアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近のOA機器の目覚しい発達にともなって、電子写真方式を利用して画像形成を行う複写機、プリンタ、ファクシミリ装置などの画像形成装置が広く普及している。電子写真方式を利用する画像形成装置は、一般に、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程および定着工程によって画像が形成される。帯電工程では、像形成体である感光体の表面を暗所で均一に帯電する。露光工程では、帯電した感光体に原稿像の信号光が投射され、露光部分は帯電が除去されて感光体の表面に静電荷像(静電潜像)が形成される。現像工程では、感光体表面の静電荷像に静電荷像現像用トナー(以後特に断らない限り単に「トナー」と称す)を供給してトナー像(可視像)を形成する。転写工程では、感光体表面のトナー像に紙、OHPシートなどの記録媒体を接触させ、トナー像に接触する記録媒体の面とは反対側からコロナ放電を行い、トナーとは逆極性の電荷を記録媒体に与えることにより、トナー像を記録媒体に転写する。定着工程では、加熱、加圧などの手段により記録媒体上のトナー像を定着する。クリーニング工程では、記録媒体に転写されずに感光体表面に残るトナーを回収する。電子写真方式を利用した画像形成装置は、以上の工程を経て記録媒体上に所望の画像を形成する。
【0003】
電子写真方式を利用する画像形成装置では、トナー像を現像するための現像剤として、トナーのみを含む1成分現像剤と、トナーとキャリアとを含む2成分現像剤とが用いられる。2成分現像剤は、トナーを単独で含む1成分現像剤に比べると、キャリアによるトナーの撹拌、搬送および帯電という機能が付与されるので、トナーがキャリアの機能を併せ持つ必要がなく、機能が分離されて制御性が向上し、高画質画像を得やすいという特徴を有する。このため、キャリアとの併用に適するトナーを製造する方法について盛んに研究が行われている。
【0004】
キャリアは、トナーを所望の帯電量に安定して帯電させる機能とトナーを感光体に搬送する機能といった2つの基本機能を有する。また、キャリアは現像槽内で撹拌され、マグネットローラ上に搬送され、磁気穂を形成し規制ブレードを通過して再び現像槽内に戻り、繰り返し使用される。キャリアは継続して使用されるなかで、安定した基本機能を発現させる、特に安定的にトナーを帯電させることが求められる。
【0005】
このようなキャリアの機能を維持するために、キャリア芯材の表面に樹脂が被覆されてなる樹脂被覆キャリアが提案されている。
【0006】
樹脂被覆キャリアとしては、たとえば、表面張力が高いスチレン−アクリル共重合体樹脂またはポリウレタン樹脂からなる樹脂被覆層を有するキャリア、逆に表面張力の低いフッ素樹脂からなる樹脂被覆層を有するキャリアが挙げられる。表面張力の高い樹脂からなる樹脂被覆層を有する樹脂被覆キャリアは、キャリア芯材と樹脂被覆層との密着性が良好であるが、トナーがスペントしやすいといった欠点を有する。一方、表面張力の低い樹脂からなる樹脂被覆層を有する樹脂被覆キャリアは、トナーのスペントの発生が抑制されたものとなるが、キャリア芯材と樹脂被覆層との密着性が悪く、そのため長期間にわたって現像槽内で撹拌されると樹脂被覆層が剥離し、トナーを安定して帯電させることができなくなる。
【0007】
このような問題点を解決するために、シリコーン樹脂からなる樹脂被覆層を有する樹脂被覆キャリアが提案されている。しかしながら、シリコーン樹脂からなる樹脂被覆層を形成するだけでは所望の帯電量でトナーを帯電させることができないので、アミノ基を有するシランカップリング剤が含有された樹脂被覆層を有する樹脂被覆キャリアも提案されている。しかしながら、シリコーン樹脂とアミノ基を有するシランカップリング剤とを含む樹脂被覆層が形成された樹脂被覆キャリアでは、キャリア芯材と樹脂被覆層との密着性が充分に改良されたものであるとはいえない。
【0008】
特許文献1には、磁性微粒子が含有された樹脂被覆層を有する樹脂被覆キャリアが開示されている。磁性微粒子が含有された樹脂被覆層を有する樹脂被覆キャリアでは、磁性微粒子が有する磁力によって、キャリア芯材と樹脂被覆層との密着性を向上することができて、樹脂被覆層の剥離を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−296363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
磁性微粒子が含有された樹脂被覆層を有する樹脂被覆キャリアは、被覆用樹脂が溶剤に溶解した溶液中に磁性微粒子が分散された分散液を、キャリア芯材に付着させることによって製造することができる。
【0011】
しかしながら、分散液中において磁性微粒子は、残留磁化によって凝集してしまい、そのため、樹脂被覆層中において磁性微粒子が偏在してしまう。このように、磁性微粒子が偏在した樹脂被覆層を有する樹脂被覆キャリアは、トナーのスペントなどによるキャリアの汚染が発生しやすく、長期間にわたって安定してトナーを帯電させることができない。
【0012】
したがって本発明の目的は、キャリア芯材の表面に樹脂被覆層が形成された樹脂被覆キャリアにおいて、キャリア芯材と樹脂被覆層との間の密着性に優れて樹脂被覆層の剥離が防止され、かつトナーのスペントなどによるキャリアの汚染が抑制されて、長期間にわたって安定してトナーを帯電させることができる樹脂被覆キャリア、および樹脂被覆キャリアの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、キャリア芯材と、キャリア芯材の表面に形成された樹脂被覆層とを有する樹脂被覆キャリアの製造方法であって、
磁性微粒子と樹脂微粒子とを撹拌下で混合し、磁性微粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合粒子を得る複合粒子作製工程と、
前記複合粒子と、被覆用樹脂と、前記樹脂微粒子が不溶でかつ被覆用樹脂が可溶である溶剤とを撹拌下で混合し、被覆用樹脂が溶剤に溶解した溶液中に前記複合粒子が分散された分散液を調製する分散液調製工程と、
キャリア芯材と前記分散液とを混合して、キャリア芯材の表面に前記分散液を付着させた後、加熱下で前記溶剤を除去することによって、キャリア芯材の表面に、前記被覆用樹脂と前記複合粒子とを含む樹脂被覆層を形成する被覆工程と、を含むことを特徴とする樹脂被覆キャリアの製造方法である。
【0014】
また本発明の樹脂被覆キャリアの製造方法は、前記複合粒子作製工程において、平均1次粒子径が0.2μm以上2μm以下の磁性微粒子を用いて複合粒子を得ることを特徴とする。
【0015】
また本発明の樹脂被覆キャリアの製造方法は、前記複合粒子作製工程において、
平均1次粒子径が0.2μm以上、前記磁性微粒子の平均1次粒子径以下の樹脂微粒子を用い、
前記磁性微粒子に対する前記樹脂微粒子の被覆率が30%以上150%以下となる複合粒子を得ることを特徴とする。
【0016】
また本発明の樹脂被覆キャリアの製造方法は、前記分散液調製工程において、
前記磁性微粒子の添加量が前記被覆用樹脂100重量部に対して40重量部以上120重量部以下であり、前記樹脂微粒子の添加量が前記被覆用樹脂100重量部に対して15重量部以上60重量部以下となるように、分散液を調製することを特徴とする。
【0017】
また本発明の樹脂被覆キャリアの製造方法は、前記樹脂微粒子が、架橋型のシリコーン樹脂またはメラミン樹脂からなり、
前記磁性微粒子が、マグネタイトおよびフェライトより選ばれる少なくとも1種の磁性体からなり、
前記被覆用樹脂が、シリコーン樹脂からなることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記樹脂被覆キャリアの製造方法によって製造される樹脂被覆キャリアにおいて、
キャリア芯材と、
前記キャリア芯材の表面に形成される樹脂被覆層であって、磁性微粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合粒子が分散された樹脂被覆層と、を含むことを特徴とする樹脂被覆キャリアである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、樹脂被覆キャリアの製造方法は、複合粒子作製工程と、分散液調製工程と、被覆工程とを含む。複合粒子作製工程では、磁性微粒子と樹脂微粒子とを撹拌下で混合し、磁性微粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合粒子を得る。分散液調製工程では、複合粒子作製工程で得られた複合粒子と、被覆用樹脂と、樹脂微粒子が不溶でかつ被覆用樹脂が可溶である溶剤とを撹拌下で混合し、被覆用樹脂が溶剤に溶解した溶液中に複合粒子が分散された分散液を調製する。そして、被覆工程では、分散液調製工程で調製した分散液とキャリア芯材とを混合して、キャリア芯材の表面に分散液を付着させた後、加熱下で溶剤を除去することによって、キャリア芯材の表面に、被覆用樹脂と複合粒子とを含む樹脂被覆層を形成する。
【0020】
本発明の樹脂被覆キャリアの製造方法では、キャリア芯材の表面に付着させる分散液は、磁性微粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合粒子が分散されたものであるので、樹脂微粒子が磁性微粒子同士の凝集を抑制するスペーサの役割を果たし、複合粒子が均一に分散された分散液となる。そのため、キャリア芯材の表面に形成される樹脂被覆層において、磁性微粒子が偏在するのを防止することができる。したがって、磁性微粒子の磁力によりキャリア芯材と樹脂被覆層との密着性に優れて樹脂被覆層の剥離が防止され、かつ樹脂被覆層における磁性微粒子が偏在するのが防止されてトナーのスペントなどによるキャリアの汚染が抑制されて、長期間にわたって安定してトナーを帯電させることができる樹脂被覆キャリアを得ることができる。
【0021】
また本発明によれば、複合粒子作製工程において、平均1次粒子径が0.2μm以上2μm以下の磁性微粒子を用いて複合粒子を得る。平均1次粒子径が0.2μm以上の磁性微粒子を用いて複合粒子を作製することによって、分散液中における磁性微粒子の凝集を充分に抑制することができ、分散液調製工程において複合粒子が均一に分散された分散液を調製することができる。また、平均1次粒子径が2μm以下の磁性微粒子を用いて複合粒子を作製することによって、複合粒子が含有された樹脂被覆層において、複合粒子が脱離してしまうのを防止することができる。
【0022】
また本発明によれば、複合粒子作製工程において、平均1次粒子径が0.2μm以上、磁性微粒子の平均1次粒子径以下の樹脂微粒子を用い、磁性微粒子に対する樹脂微粒子の被覆率が30%以上150%以下となる複合粒子を得る。
【0023】
平均1次粒子径が0.2μm以上の樹脂微粒子を用いて複合粒子を作製することによって、磁性微粒子の表面が樹脂微粒子により被覆されすぎるのを防止することができ、これによって、磁性微粒子による、樹脂被覆層をフレッシュな状態に保持する研磨効果が低下するのを防止することができる。ここで、磁性微粒子による、樹脂被覆層をフレッシュな状態に保持する研磨効果とは、トナーのスペントなどにより樹脂被覆キャリア表面が汚染したときに、磁性微粒子が研磨剤のような役割を果たして樹脂被覆キャリア表面を研磨することによって、樹脂被覆キャリア表面の汚染された部分を汚染前のフレッシュな状態に保持する効果のことを示し、この研磨効果によって樹脂被覆キャリアのトナーに対する帯電付与能力の低下を抑制することができる。
【0024】
さらに、平均1次粒子径が0.2μm以上の樹脂微粒子は、磁性微粒子同士の凝集を抑制するスペーサの役割を充分に果たす。また、平均1次粒子径が磁性微粒子の平均1次粒子径以下の樹脂微粒子を用いて複合粒子を作製することによって、樹脂微粒子の磁性微粒子に対する付着性が低下するのを防止することができ、樹脂微粒子が付着していない磁性微粒子が樹脂被覆層中に偏在するのを防止することができる。
【0025】
また、複合粒子における磁性微粒子に対する樹脂微粒子の被覆率を30%以上とすることによって、樹脂微粒子によるスペーサの役割を充分に発揮して、磁性微粒子同士の凝集を抑制することができる。また、複合粒子における磁性微粒子に対する樹脂微粒子の被覆率を150%以下とすることによって、磁性微粒子の表面が樹脂微粒子により被覆されすぎるのを防止することができ、これによって、磁性微粒子による、樹脂被覆層をフレッシュな状態に保持する研磨効果が低下するのを防止することができる。
【0026】
また本発明によれば、分散液調製工程において、磁性微粒子の添加量が被覆用樹脂100重量部に対して40重量部以上120重量部以下であり、樹脂微粒子の添加量が被覆用樹脂100重量部に対して15重量部以上60重量部以下となるように、分散液を調製する。これによって、調製された分散液は、樹脂微粒子が磁性微粒子同士の凝集を抑制するスペーサの役割を果たし、複合粒子が均一に分散された分散液となる。そのため、キャリア芯材の表面に形成される樹脂被覆層において、磁性微粒子が偏在するのを防止することができる。
【0027】
また本発明によれば、樹脂微粒子が架橋型のシリコーン樹脂またはメラミン樹脂からなり、磁性微粒子がマグネタイトおよびフェライトより選ばれる少なくとも1種の磁性体からなり、被覆用樹脂がシリコーン樹脂からなる。樹脂微粒子、磁性微粒子および被覆用樹脂が、それぞれ上記の材料によって構成されることによって、磁性微粒子の磁力によりキャリア芯材と樹脂被覆層との密着性に優れて樹脂被覆層の剥離が防止され、かつ樹脂被覆層における磁性微粒子が偏在するのが防止されてトナーのスペントなどによるキャリアの汚染が抑制されて、長期間にわたって安定してトナーを帯電させることができる樹脂被覆キャリアとなる。
【0028】
また本発明によれば、樹脂被覆キャリアは、キャリア芯材と、磁性微粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合粒子が分散された樹脂被覆層とを含み、上記の樹脂被覆キャリアの製造方法により製造される。このような樹脂被覆キャリアは、樹脂被覆層において複合粒子が均一に分散されているので、トナーのスペントなどによるキャリアの汚染が抑制されて、長期間にわたって安定してトナーを帯電させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の一形態に係る樹脂被覆キャリア1の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る樹脂被覆キャリアの製造方法を示す工程図である。
【図3】測定治具9の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(樹脂被覆キャリア)
図1は、本発明の実施の一形態に係る樹脂被覆キャリア1の構成を示す図である。樹脂被覆キャリア1は、電子写真方式の画像形成装置における2成分現像剤として、トナーとともに用いられ、トナーに電荷を付与してトナーを帯電させる機能を有する。
【0031】
樹脂被覆キャリア1は、キャリア芯材2と、キャリア芯材2の表面に形成される樹脂被覆層3とを含む。そして、樹脂被覆層3には、磁性微粒子41の表面に樹脂微粒子42が付着した複合粒子4が分散されている。樹脂被覆キャリア1は、その体積平均粒子径が25μm以上100μm以下であることが好ましく、これによって、高精細な画像を形成することができる。
【0032】
また、キャリア芯材2の表面に複合粒子4が分散された樹脂被覆層3が形成された、本実施形態の樹脂被覆キャリア1では、図1に示すように、磁性微粒子41の表面において樹脂微粒子42が付着していない一部分が、樹脂被覆層3から露出している。これによって、詳細は後述するが、磁性微粒子41による、樹脂被覆層3をフレッシュな状態に保持する研磨効果が充分に発揮される。ここで、磁性微粒子41による、樹脂被覆層3をフレッシュな状態に保持する研磨効果とは、トナーのスペントなどにより樹脂被覆キャリア1表面が汚染したときに、磁性微粒子41が研磨剤のような役割を果たして樹脂被覆キャリア1表面を研磨することによって、樹脂被覆キャリア1表面の汚染された部分を汚染前のフレッシュな状態に保持する効果のことを示し、この研磨効果によって樹脂被覆キャリア1のトナーに対する帯電付与能力の低下を抑制することができる。
【0033】
[キャリア芯材]
キャリア芯材2としては、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、鉄、銅、ニッケル、コバルトなどの磁性金属、フェライト、マグネタイトなどの磁性金属酸化物などが挙げられる。キャリア芯材2が前記のような磁性体であると、磁気ブラシ現像法に用いる現像剤に好適なキャリアが得られる。キャリア芯材2は、体積平均粒子径が25μm以上150μm以下であることが好ましく、25μm以上90μm以下であることが特に好ましい。キャリア芯材2の体積平均粒子径は、粒度測定器(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0034】
[樹脂被覆層]
<被覆用樹脂>
キャリア芯材2の表面に形成される樹脂被覆層3は、被覆用樹脂を含む。被覆用樹脂としては、特に限定されず、公知のものを使用できるが、トナー離型性およびキャリア芯材2との密着性を両立できる点から、シリコーン樹脂を含むものを使用することが好ましい。
【0035】
シリコーン樹脂としては特に制限されないが、架橋型シリコーン樹脂が好ましい。架橋型シリコーン樹脂は、下記に示すように、Si原子に結合する水酸基同士または水酸基とOX基とが加熱脱水反応、常温硬化反応などによって架橋して硬化する公知のシリコーン樹脂である。
【0036】
【化1】

(式中、複数のRは同一または異なって1価の有機基を示す。OX基はアセトキシ基、アミノキシ基、アルコキシ基、オキシム基などである。)
【0037】
架橋型シリコーン樹脂としては、加熱硬化型シリコーン樹脂、常温硬化型シリコーン樹脂のいずれをも使用できる。加熱硬化型シリコーン樹脂を架橋させるには、該樹脂を200〜250℃程度に加熱することが必要である。常温硬化型シリコーン樹脂を硬化させるには加熱は必要ないけれども、硬化時間の短縮のために150〜280℃で加熱するのが好ましい。
【0038】
架橋型シリコーン樹脂の中でも、上記化学反応式中のRで示される1価の有機基がメチル基であるものが好ましい。Rがメチル基である架橋型シリコーン樹脂は架橋構造が緻密であることから、該架橋型シリコーン樹脂を用いて樹脂被覆層3を構成することによって、撥水性、耐湿性などが良好な樹脂被覆キャリア1が得られる。
【0039】
ただし、架橋構造が緻密になりすぎると樹脂被覆層3が脆くなる傾向があるので、架橋型シリコーン樹脂の分子量を適宜設定する必要がある。また、架橋型シリコーン樹脂における珪素(Si)と炭素(C)との元素含有量比(Si/C)が0.3以上2.2以下であることが好ましい。前記元素含有量比が0.3未満であると、樹脂被覆層3の硬さが低下し、樹脂被覆キャリア1の耐摩耗性が低下するおそれがある。前記元素含有量比が2.2を超えると、樹脂被覆層3が脆化するおそれがあり、樹脂被覆キャリア1のトナーへの帯電付与能力が温度変化による影響を受けやすくなる。
【0040】
架橋型シリコーン樹脂としては、市販の架橋型シリコーン樹脂を使用でき、たとえば、SR2400、SR2410、SR2411、SR2510、SR2405、840RESIN、804RESIN(いずれも商品名、東レダウコーニング株式会社製)、KR271、KR272、KR274、KR216、KR280、KR282、KR261、KR260、KR255、KR266、KR251、KR155、KR152、KR214、KR220、X−4040−171、KR201、KR5202、KR3093(いずれも商品名、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。架橋型シリコーン樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0041】
被覆用樹脂としては、シリコーン樹脂(特に架橋型シリコーン樹脂)により形成される樹脂被覆層の好ましい特性を損なわない範囲で、シリコーン樹脂とともに他の樹脂を含むことができる。他の樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリアミド、ポリエステル、アセタール樹脂、ポリカーボネート、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン、これらの共重合体樹脂、配合樹脂などが挙げられる。
【0042】
<複合粒子>
樹脂被覆層3には、複合粒子4が分散されている。この複合粒子4は、磁性微粒子41の表面に樹脂微粒子42が付着した粒子である。
【0043】
磁性微粒子41は、たとえば、マグネタイト、フェライトなどの磁性体により構成される。フェライトは、一般式(MO・Fe)(ただし、MはFe、Mn、Mg、から選ばれる一種以上の金属元素)、または一般式(MO・6Fe)(ただし、MはBa、Sr、Pb、から選ばれる一種以上の金属元素)で表される。
【0044】
この磁性微粒子41は、平均1次粒子径が0.2μm以上2μm以下であることが好ましい。磁性微粒子41の平均1次粒子径が0.2μm未満の場合、樹脂被覆層3の中に埋もれてしまう粒子が多くなるために、磁性微粒子41による、樹脂被覆層3をフレッシュな状態に保持する研磨効果が低下するおそれがある。また、磁性微粒子41の平均1次粒子径が2μmを超える場合、キャリア芯材2の表面に存在する磁性微粒子41の個数が少なくなるために、磁性微粒子41による研磨効果が低下するおそれがある。樹脂被覆層3をフレッシュな状態に保持する研磨効果は、非磁性微粒子を用いても得られるけれども、キャリア芯材2と非磁性微粒子との間では磁力が働かないので、この非磁性微粒子が樹脂被覆層3から脱離してしまう。これに対して、磁性微粒子41は、キャリア芯材2との間で磁力が働くので、樹脂被覆層3から脱離するのを防止することができる。また、磁性微粒子41は、樹脂被覆層3の抵抗調整の機能も果たす。磁性微粒子41による樹脂被覆層3の抵抗調整は、磁性微粒子41の種類、平均1次粒子径の大きさ、被覆用樹脂に対する添加量、複数種の組み合わせによって調整することができる。
【0045】
また、磁性微粒子41は、比表面積が小さいほど好ましく、たとえば、0.6m/g以上6m/g以下であることが好ましい。磁性微粒子41の比表面積が上記範囲であることによって、粒子径の分布の幅が狭く、磁性微粒子41による安定した研磨効果が充分に得られる。このように磁性微粒子41の比表面積を調整することによって、研磨効果が充分に得られる理由としては、比表面積が大きく、粒子径の分布の幅が広い磁性微粒子41では、大きな粒子径を有する磁性微粒子41のみが研磨効果を発揮し、小さい粒子径を有する磁性微粒子41による研磨効果が発揮されないため、全体として磁性微粒子41による研磨効果が低下することが考えられる。そのため、磁性微粒子41は、その比表面積が小さく調整されて、粒子径の分布の幅が狭いほど、安定した研磨効果を充分に発揮することができる。
【0046】
またさらに、磁性微粒子41は、保磁力が30Oe以上3000Oe以下であることが好ましい。磁性微粒子41の保磁力が上記範囲であることによって、分散性が良く、キャリア芯材2との密着性を良くすることができる。
【0047】
樹脂微粒子42は、キャリア芯材2の表面に樹脂被覆層3を形成するときに用いられる、後述の溶剤に対して不溶である必要があり、架橋型樹脂で構成されることが好ましい。樹脂微粒子42を構成する樹脂としては、架橋型シリコーン樹脂、架橋型メラミン樹脂などを挙げることができる。この樹脂微粒子42は、平均1次粒子径が0.2μm以上、前記磁性微粒子41の平均1次粒子径以下であることが好ましい。
【0048】
<その他の添加剤>
樹脂被覆層3には、上記の複合粒子4以外のその他の添加剤を添加することができる。その他の添加剤としては、二官能性シリコーンオイル、導電性微粒子、シランカップリング剤などを挙げることができる。二官能性シリコーンオイルは、樹脂被覆層3の耐湿性、離型性などを向上することができる。
【0049】
導電性微粒子は、樹脂被覆層3の導電性を調整するために添加される。導電性微粒子としては、導電性カーボンブラック、導電性酸化チタンおよび酸化スズなどの酸化物が挙げられる。導電性カーボンブラックは、少ない添加量で導電性を発現するので好適であるが、この導電性カーボンブラックが樹脂被覆層3から脱離した場合に、トナーがカラートナーであるときには着色汚染してしまう。このような場合には、導電性微粒子としてアンチモンをドープさせた導電性酸化チタンなどを用いればよい。
【0050】
シランカップリング剤は、トナーを適度な帯電量に帯電させる。シランカップリング剤としては、電子供与性の官能基を有するシランカップリング剤が好ましく、電子供与性の官能基を有するシランカップリング剤としては、アミノ基含有シランカップリング剤が挙げられる。
【0051】
アミノ基含有シランカップリング剤としては公知のものを使用でき、たとえば、下記一般式(1)で示されるアミノ基含有シランカップリング剤が挙げられる。
(Y)nSi(R)m …(1)
(式中、m個のRは同一または異なってアルキル基、アルコキシ基または塩素原子を示す。n個のYは同一または異なってアミノ基を含有する炭化水素基を示す。mおよびnはそれぞれ1〜3の整数を示す。ただし、m+n=4である。)
【0052】
上記一般式(1)において、Rで示されるアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基などが好ましい。
【0053】
アルコキシ基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基などの炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状のアルコキシ基が挙げられ、これらの中でも、メトキシ基、エトキシ基などが好ましい。
【0054】
Yで示されるアミノ基を含有する炭化水素基としては、たとえば、−(CH)a−X(式中、Xはアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アミノアルキルアミノ基、フェニルアミノ基またはジアルキルアミノ基を示す。aは1〜4の整数を示す。)、−Ph−X(式中、Xは前記に同じ。−Ph−はフェニレン基を示す。)などが挙げられる。
【0055】
このようなアミノ基含有シランカップリング剤の具体例としては、以下のものが挙げられる。
N(HC)Si(OCH
N(HC)Si(OC
N(HC)Si(CH)(OCH
N(HC)HN(HC)Si(CH)(OCH
NOCHN(HC)Si(OC
N(HC)HN(HC)Si(OCH
N−Ph−Si(OCH(式中、Phはp−フェニレン基を示す。)
Ph−HN(HC)Si(OCH(式中、Phはフェニル基を示す。)
(HN(HC)Si(OCH
【0056】
アミノ基含有シランカップリング剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。アミノ基含有シランカップリング剤の使用量はトナーに充分な電荷を付与し、かつ樹脂被覆層3の機械的強度などを著しく低下させることがない範囲から適宜選択されるけれども、好ましくは樹脂被覆層3を構成する被覆用樹脂100重量部に対して10重量部以下が好ましく、0.01重量部以上10重量部以下がより好ましい。
【0057】
(樹脂被覆キャリアの製造方法)
図2は、本発明の実施の一形態に係る樹脂被覆キャリアの製造方法を示す工程図である。本実施形態の樹脂被覆キャリアの製造方法は、複合粒子作製工程と、分散液調製工程と、被覆工程とを含む。
【0058】
[複合粒子作製工程]
ステップs1の複合粒子作製工程では、磁性微粒子41と樹脂微粒子42とを撹拌下で混合し、磁性微粒子41の表面に樹脂微粒子42が付着した複合粒子4を得る。複合粒子作製工程において、磁性微粒子41と樹脂微粒子42との混合は、乾式法および湿式法のいずれの方法も採用できる。乾式法では、乾燥状態の磁性微粒子41と樹脂微粒子42とを撹拌下で混合する。湿式法では、磁性微粒子41と樹脂微粒子42とを溶剤中に添加し、その溶剤中で磁性微粒子41と樹脂微粒子42とを撹拌混合する。
【0059】
[分散液調製工程]
ステップs2の分散液調製工程では、複合粒子作製工程で得られた複合粒子4と、被覆用樹脂と、必要に応じて二官能性シリコーンオイル、導電性微粒子、シランカップリング剤などの添加剤と、樹脂微粒子42が不溶でかつ被覆用樹脂が可溶である溶剤とを撹拌下で混合し、被覆用樹脂が溶剤に溶解した溶液中に複合粒子4が分散された分散液を調製する。溶剤としては、トルエン、キシレン、リグロインなどの有機溶剤が挙げられる。なお、複合粒子作製工程において、湿式法にて複合粒子4を作製する場合、複合粒子作製工程と分散液調製工程とを同時に行ってもよい。
【0060】
[被覆工程]
ステップs3の被覆工程では、分散液調製工程で調製した分散液とキャリア芯材2とを混合して、キャリア芯材2の表面に分散液を付着させた後、加熱下で溶剤を除去することによって、キャリア芯材2の表面に、被覆用樹脂と複合粒子4とを含む樹脂被覆層3を形成する。
【0061】
キャリア芯材2の表面に分散液を付着させる方法としては、キャリア芯材2を分散液に含浸させる浸漬法、キャリア芯材2に分散液を噴霧するスプレー法、流動気流により浮遊状態にあるキャリア芯材2に分散液を噴霧する流動層法などが挙げられる。これらの中でも、膜形成を容易にできることから、浸漬法が好ましい。
【0062】
また、加熱下で溶剤を除去するときの乾燥効率を向上させるために、分散液中に乾燥促進剤を添加してもよい。乾燥促進剤としては公知のものを使用でき、たとえば、ナフチル酸、オクチル酸などの鉛、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛塩などの金属石鹸、エタノールアミンなどの有機アミン類などが挙げられる。乾燥促進剤は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0063】
樹脂被覆層3の加熱下における硬化は、被覆用樹脂の種類に応じて加熱温度を選択しながら行われるけれども、たとえば、150〜280℃程度に加熱して行うのが好ましい。もちろん、被覆用樹脂が常温硬化型シリコーン樹脂である場合は、樹脂被覆層3の硬化のための加熱は必要ないけれども、形成される樹脂被覆層3の機械的強度を向上させること、硬化時間を短縮することなどを目的として、150〜280℃程度に加熱してもよい。
【0064】
なお、分散液の全固形分濃度は特に制限されず、キャリア芯材2への塗布作業性などを考慮しつつ、硬化後の樹脂被覆層3の膜厚が通常5μm以下、好ましくは0.1〜3μm程度になるように調整すればよい。
【0065】
以上のように、本実施形態の樹脂被覆キャリアの製造方法では、キャリア芯材2の表面に付着させる分散液は、磁性微粒子41の表面に樹脂微粒子42が付着した複合粒子4が分散されたものであるので、樹脂微粒子42が磁性微粒子41同士の凝集を抑制するスペーサの役割を果たし、複合粒子4が均一に分散された分散液となる。そのため、キャリア芯材2の表面に形成される樹脂被覆層3において、磁性微粒子41が偏在するのを防止することができる。したがって、磁性微粒子41の磁力によりキャリア芯材2と樹脂被覆層3との密着性に優れて樹脂被覆層3の剥離が防止され、かつ樹脂被覆層3における磁性微粒子41が偏在するのが防止されてトナーのスペントなどによるキャリアの汚染が抑制されて、長期間にわたって安定してトナーを帯電させることができる樹脂被覆キャリア1を得ることができる。
【0066】
また本実施形態では、複合粒子作製工程において、平均1次粒子径が0.2μm以上2μm以下の磁性微粒子41を用いて複合粒子4を得るのが好ましい。平均1次粒子径が0.2μm以上の磁性微粒子41を用いて複合粒子4を作製することによって、分散液中における磁性微粒子41の凝集を充分に抑制することができ、分散液調製工程において複合粒子4が均一に分散された分散液を調製することができる。また、平均1次粒子径が2μm以下の磁性微粒子41を用いて複合粒子4を作製することによって、複合粒子4が含有された樹脂被覆層3において、複合粒子4が脱離してしまうのを防止することができる。
【0067】
また本実施形態では、複合粒子作製工程において、平均1次粒子径が0.2μm以上、磁性微粒子41の平均1次粒子径以下の樹脂微粒子42を用い、磁性微粒子41に対する樹脂微粒子42の被覆率が30%以上150%以下となる複合粒子4を得ることが好ましい。
【0068】
平均1次粒子径が0.2μm以上の樹脂微粒子42を用いて複合粒子4を作製することによって、磁性微粒子41の表面が樹脂微粒子42により被覆されすぎるのを防止することができ、これによって、磁性微粒子41による、樹脂被覆層3をフレッシュな状態に保持する研磨効果が低下するのを防止することができる。さらに、平均1次粒子径が0.2μm以上の樹脂微粒子42は、磁性微粒子41同士の凝集を抑制するスペーサの役割を充分に果たす。また、平均1次粒子径が磁性微粒子41の平均1次粒子径以下の樹脂微粒子42を用いて複合粒子4を作製することによって、樹脂微粒子42の磁性微粒子41に対する付着性が低下するのを防止することができ、樹脂微粒子42が付着していない磁性微粒子41が樹脂被覆層3中に偏在するのを防止することができる。
【0069】
また、複合粒子4における磁性微粒子41に対する樹脂微粒子42の被覆率を30%以上とすることによって、樹脂微粒子42によるスペーサの役割を充分に発揮して、磁性微粒子41同士の凝集を抑制することができる。また、複合粒子4における磁性微粒子41に対する樹脂微粒子42の被覆率を150%以下とすることによって、磁性微粒子41の表面が樹脂微粒子42により被覆されすぎるのを防止することができ、これによって、磁性微粒子41による、樹脂被覆層3をフレッシュな状態に保持する研磨効果が低下するのを防止することができる。
【0070】
ここで、複合粒子4における磁性微粒子41に対する樹脂微粒子42の被覆率は、下記式(2)で定義される。
【0071】
【数1】

【0072】
上記式(2)において、Pは被覆率(%)を示し、Dmは磁性微粒子41の平均1次粒子径(μm)を示し、ρmは磁性微粒子41の比重を示し、Dpは樹脂微粒子42の平均1次粒子径(μm)を示し、ρpは樹脂微粒子42の比重を示し、Wは磁性微粒子41の添加量に対する樹脂微粒子42の添加量の比を示す。
【0073】
また本実施形態では、分散液調製工程において、磁性微粒子41の添加量が被覆用樹脂100重量部に対して40重量部以上120重量部以下であり、樹脂微粒子42の添加量が被覆用樹脂100重量部に対して15重量部以上60重量部以下となるように、分散液を調製するのが好ましい。これによって、調製された分散液は、樹脂微粒子42が磁性微粒子41同士の凝集を抑制するスペーサの役割を果たし、複合粒子4が均一に分散された分散液となる。そのため、キャリア芯材2の表面に形成される樹脂被覆層3において、磁性微粒子41が偏在するのを防止することができる。
【0074】
このようにして得られる樹脂被覆キャリア1は、高電気抵抗でかつ球形であることが好ましいけれども、導電性または非球形であっても本発明の効果が失われるものではない。
【0075】
(2成分現像剤)
以上のような樹脂被覆キャリア1は、トナーとともに2成分現像剤として用いることができる。
【0076】
トナーは、結着樹脂および着色剤を必須成分として含み、それ以外に、帯電制御剤、離型剤および流動性改良剤などを含んでもよい。
【0077】
結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、黒トナーまたはカラートナー用の公知の結着樹脂を使用することができ、たとえば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂などが挙げられる。また、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応を行って得られる樹脂を用いても良い。結着樹脂は1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。着色剤として、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、イエロートナー用着色剤、マゼンタトナー用着色剤、シアントナー用着色剤、ブラックトナー用着色剤などが挙げられる。
【0078】
また、トナーとして、外添剤が外添されたものを用いてもよい。外添剤は、トナー表面に付着させることによってその効果が発揮される。外添剤としてはこの分野で常用されるものを使用でき、たとえば、酸化ケイ素、酸化チタン、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムなどが挙げられ、1種を単独で使用できまたは2種以上を併用できる。
【0079】
2成分現像剤は、このようなトナーと、本実施形態の樹脂被覆キャリア1とを混合することによって作製できる。トナーと樹脂被覆キャリア1との混合割合は、特に制限はないけれども、高速画像形成装置(A4サイズの画像で40枚/分以上)に用いることを考慮すると、(樹脂被覆キャリア1の体積平均粒子径)/(トナーの体積平均粒子径)が5以上の状態で、樹脂被覆キャリア1の総表面積(全樹脂被覆キャリア粒子の表面積の総和)に対するトナーの総投影面積(全トナー粒子の投影面積の総和)の割合(トナーの総投影面積/キャリアの総表面積×100)が30〜70%になるように混合すればよい。これによって、トナーの帯電性が充分良好な状態で安定的に維持され、高速画像形成装置においても高画質画像を安定的にかつ長期的に形成できる好適な現像剤として使用できる。
【0080】
なお、トナーの投影面積は、以下のように算出できる。トナーの比重を1.0とし、コールターカウンター(商品名:コールターカウンタ・マルチサイザーII、ベックマン・コールター社製)で得られた体積平均粒子径をもとに算出する。混合するトナー重量に対するトナー個数を算出し、トナー個数×トナー投影面積(円と仮定して算出)でトナー総面積とする。同様に、樹脂被覆キャリア1は、マイクロトラック(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装株式会社製)より得られた粒子径を元に混合する樹脂被覆キャリア1の重量から総表面積を算出する。このときの樹脂被覆キャリア1の比重は4.7とする。上記で得られた、(トナー総面積/樹脂被覆キャリア総面積)×100で混合比を算出できる。
【0081】
以下に実施例および比較例を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、本実施例に限定されるものではない。
【0082】
<磁性微粒子、樹脂微粒子の平均1次粒子径の測定方法>
マイクロトラックMT3000(日機装株式会社)を用いて、分散剤(アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム)を入れた水溶液に粒子を加えて、超音波分散器にかけて分散させて測定した。
【0083】
<キャリア芯材の体積平均粒子径の測定方法>
マイクロトラックMT3000(日機装株式会社)を用いて、分散剤(アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム)を入れた水溶液に粒子を加えて、超音波分散器にかけて分散させて測定した。
【0084】
<磁性微粒子の比表面積の測定方法>
Nova4200e(ユアサアイオニクス株式会社)を用いて、Nガスを用いてガス吸着法により測定した。
【0085】
<磁性微粒子の保磁力の測定方法>
振動試料型磁力計BHV−50(理研電子株式会社)を用いて測定した。
【0086】
<磁性微粒子、樹脂微粒子の真比重の測定方法>
Nova4200e(ユアサアイオニクス株式会社)を用いて、Nガスを用いて測定した。
【0087】
(実施例1〜19)
下記の表1に示す使用量(重量部)の磁性微粒子および樹脂微粒子と、トルエン12重量部を加えて、スリーワンモータにて5分間撹拌して複合粒子がトルエン中に分散した複合粒子分散液を作製した。
【0088】
この複合粒子分散液に、被覆用樹脂としてシリコーン樹脂(商品名:KR350、信越化学株式会社製)を0.75重量部、導電性微粒子(商品名:VULCANXC72、キャボット株式会社製)0.04重量部、シランカップリング剤(商品名:Z−6011、東レ・ダウコーニング株式会社製)0.04重量部、硬化触媒(商品名:オルガチックス TC−401、マツモトファインケミカル株式会社製)0.01重量部を加えてスリーワンモータにて5分間撹拌し、樹脂被覆層形成用の分散液を調製した。ただし、導電性微粒子は予め分散剤を用いて、トルエン中に分散したものを用いた。この分散液と、体積平均粒子径40μmのMn−Mgフェライト芯材100重量部とを、撹拌機に投入してさらに撹拌混合した。得られた混合物から減圧および加熱下にトルエンを除去し、フェライト芯材表面に塗膜を形成した。これを、230℃で1時間加熱して塗膜を硬化させて樹脂被覆層を形成し、100メッシュのふるいにかけて、表1に示す実施例1〜19の樹脂被覆キャリアを製造した。
【0089】
(比較例1)
樹脂微粒子を用いないこと以外は、上記の実施例1と同様にして、表1に示す比較例1の樹脂被覆キャリアを製造した。
【0090】
【表1】

【0091】
表1において、磁性微粒子(1)〜(6)、および樹脂微粒子(1)〜(5)は、以下のとおりである。
磁性微粒子(1):マグネタイト、平均1次粒子径0.1μm、比表面積11.0m/g、保磁力120 Oe、真比重5.2
磁性微粒子(2):マグネタイト、平均1次粒子径0.28μm、比表面積5.5m/g、保磁力52 Oe、真比重5.2
磁性微粒子(3):マグネタイト、平均1次粒子径1.0μm、比表面積2.5m/g、保磁力215 Oe、真比重5.2
磁性微粒子(4):マグネタイト、平均1次粒子径3.0μm、比表面積1.1m/g、保磁力68 Oe、真比重5.2
磁性微粒子(5):フェライトBaO−6Fe、平均1次粒子径0.8μm、比表面積4.8m/g、保磁力2750 Oe、真比重5.1
磁性微粒子(6):Mn−Znフェライト、平均1次粒子径1.7μm、比表面積1.3m/g、保磁力30 Oe、真比重5.0
樹脂微粒子(1):メラミン樹脂微粒子、平均1次粒子径0.2μm、真比重1.5
樹脂微粒子(2):メラミン樹脂微粒子、平均1次粒子径0.4μm、真比重1.5
樹脂微粒子(3):メラミン樹脂微粒子、平均1次粒子径1.5μm、真比重1.5
樹脂微粒子(4):シリコーン樹脂微粒子、平均1次粒子径0.7μm、真比重1.3
樹脂微粒子(5):シリコーン樹脂微粒子、平均1次粒子径2.0μm、真比重1.3
【0092】
上記の実施例1〜19および比較例1の樹脂被覆キャリアと、シャープ株式会社製の複写機MX−5500の純正品トナーとを、92:8(重量比)で混合した2成分現像剤を用いて、以下の評価を行った。
【0093】
<樹脂被覆層における磁性微粒子の分散性>
実施例1〜19および比較例1の樹脂被覆キャリアの表面を電子顕微鏡で観察し、樹脂被覆層における磁性微粒子の分散性を評価した。樹脂被覆層において磁性微粒子が均一に分散されている場合を「○」とし、磁性微粒子が偏在し均一に分散されていない場合を「×」とした。
【0094】
<磁性微粒子の脱離性>
2成分現像剤を、複写機(MX−5500、シャープ株式会社製)に充填し、常温常湿下においてA4用紙の全面にベタ画像を50000枚実写した。その後、2成分現像剤からトナーを吸引除去し、樹脂被覆キャリアを回収した。回収した樹脂被覆キャリアの表面を電子顕微鏡で観察し、樹脂被覆層からの磁性微粒子の脱離性を評価した。樹脂被覆層からの磁性微粒子の脱離がない場合を「○」とし、磁性微粒子の脱離がある場合を「×」とした。
【0095】
<トナーのスペント性>
2成分現像剤を、複写機(MX−5500、シャープ株式会社製)に充填し、常温常湿下においてA4用紙の全面にベタ画像を50000枚実写した。その後、2成分現像剤からトナーを吸引除去し、樹脂被覆キャリアを回収した。回収した樹脂被覆キャリアのカーボン量と、使用前(実写前)の樹脂被覆キャリアのカーボン量とを炭素分析装置(EMIA−921V、株式会社堀場製作所製)を用いて測定し、その測定結果から、回収後の樹脂被覆キャリアにおける、トナー量に換算したトナーのスペント量を算出した。トナーのスペント量が0.25質量%未満の場合を「○」とし、0.25質量%以上0.45質量%未満の場合を「△」とし、0.45質量%以上の場合を「×」とした。
【0096】
<抵抗値変化特性>
2成分現像剤を、複写機(MX−5500、シャープ株式会社製)に充填し、常温常湿下においてA4用紙の全面にベタ画像を50000枚実写した。その後、2成分現像剤からトナーを吸引除去し、樹脂被覆キャリアを回収した。回収した樹脂被覆キャリアの体積抵抗値と、使用前(実写前)の樹脂被覆キャリアの体積抵抗値とを、図3に示す測定治具を用いて測定した。図3は、測定治具9の構成を模式的に示す図である。
【0097】
測定治具9は、磁石6、アルミニウム製の複数の電極7、基盤(アクリル樹脂板)8から構成される。各電極7の間隔は1mmであり、大きさ10mm×40mmの平行平板電極を形成する。この電極間に樹脂被覆キャリアを200mg挿入し、次いで磁石6(表面磁束密度1500ガウス、対向する部分の磁石面積10mm×30mm)をN極とS極とが対向するように配置して樹脂被覆キャリアを電極間に保持する。この電極7に直流電圧1Vステップで800Vまで印加したときの電流値を計測してブリッジ抵抗値を算出し、その値を樹脂被覆キャリアの体積抵抗値とする。
【0098】
回収後の樹脂被覆キャリアの体積抵抗値が使用前に比べて増加した場合は、樹脂被覆キャリア表面の汚染が進行しており、体積抵抗値が低下した場合は、樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層が磨耗していることを表す。1.0×10−7Aの電流が流れるときの抵抗値の変化量の絶対値が、3×10Ω・cm未満であれば「○」とし、3×10Ω・cm以上5×10Ω・cm以下であれば「△」とし、5×10Ω・cmを超える場合は「×」とした。
【0099】
<総合評価>
以下の基準で総合評価を行った。
◎:上記の評価項目において、すべての評価結果が「○」である。
○:上記の評価項目において、評価結果が「×」の項目はなく、「△」が1項目以上ある。
△:上記の評価項目において、評価結果が「×」の項目が1つある。
×:上記の評価項目において、評価結果が「×」の項目が2つ以上ある。
評価結果を表2に示す。
【0100】
【表2】

【0101】
表2の評価結果から明らかなように、実施例1〜19の樹脂被覆キャリアは、樹脂被覆層において磁性微粒子(複合粒子)が均一に分散されたものであり、トナーのスペント発生が抑制され、50000枚実写後の使用前に対する体積抵抗値の変化が少ない。
【符号の説明】
【0102】
1 樹脂被覆キャリア
2 キャリア芯材
3 樹脂被覆層
4 複合粒子
41 磁性微粒子
42 樹脂微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア芯材と、キャリア芯材の表面に形成された樹脂被覆層とを有する樹脂被覆キャリアの製造方法であって、
磁性微粒子と樹脂微粒子とを撹拌下で混合し、磁性微粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合粒子を得る複合粒子作製工程と、
前記複合粒子と、被覆用樹脂と、前記樹脂微粒子が不溶でかつ被覆用樹脂が可溶である溶剤とを撹拌下で混合し、被覆用樹脂が溶剤に溶解した溶液中に前記複合粒子が分散された分散液を調製する分散液調製工程と、
キャリア芯材と前記分散液とを混合して、キャリア芯材の表面に前記分散液を付着させた後、加熱下で前記溶剤を除去することによって、キャリア芯材の表面に、前記被覆用樹脂と前記複合粒子とを含む樹脂被覆層を形成する被覆工程と、を含むことを特徴とする樹脂被覆キャリアの製造方法。
【請求項2】
前記複合粒子作製工程では、平均1次粒子径が0.2μm以上2μm以下の磁性微粒子を用いて複合粒子を得ることを特徴とする請求項1に記載の樹脂被覆キャリアの製造方法。
【請求項3】
前記複合粒子作製工程では、
平均1次粒子径が0.2μm以上、前記磁性微粒子の平均1次粒子径以下の樹脂微粒子を用い、
前記磁性微粒子に対する前記樹脂微粒子の被覆率が30%以上150%以下となる複合粒子を得ることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂被覆キャリアの製造方法。
【請求項4】
前記分散液調製工程では、
前記磁性微粒子の添加量が前記被覆用樹脂100重量部に対して40重量部以上120重量部以下であり、前記樹脂微粒子の添加量が前記被覆用樹脂100重量部に対して15重量部以上60重量部以下となるように、分散液を調製することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の樹脂被覆キャリアの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂微粒子が、架橋型のシリコーン樹脂またはメラミン樹脂からなり、
前記磁性微粒子が、マグネタイトおよびフェライトより選ばれる少なくとも1種の磁性体からなり、
前記被覆用樹脂が、シリコーン樹脂からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の樹脂被覆キャリアの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の樹脂被覆キャリアの製造方法によって製造される樹脂被覆キャリアにおいて、
キャリア芯材と、
前記キャリア芯材の表面に形成される樹脂被覆層であって、磁性微粒子の表面に樹脂微粒子が付着した複合粒子が分散された樹脂被覆層と、を含むことを特徴とする樹脂被覆キャリア。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate