説明

樹脂製管継手ユニット

【課題】 一般の作業者が特殊な道具を用いることなく容易に樹脂製管材の接続が可能な樹脂製管継手を提供することを目的とする。
【解決手段】 筒状の受口7a、7bを一端部に有する合成樹脂製の継手本体2、3と、インナーリング部6b、6cが少なくとも管部の一端に一体に形成された所定の口径と長さを有する合成樹脂製の管ユニット6と、前記継手本体2、3の前記受口7a、7bにねじ込まれる押輪4、5とからなる樹脂製管継手ユニットであって、前記押輪4、5が前記継手本体2、3の前記受口7a、7bにねじ込まれるときに、前記インナーリング部6b、6cの端面を前記継手本体2、3側に押圧することによって前記管ユニット6を前記継手本体2、3に接続する構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造や医薬品製造、食品加工、化学工業等の製造工程で用いられる超純水や薬液等の配管で用いられる樹脂製管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の樹脂製管継手としては、特許文献1に示すようなものが知られていた。この樹脂製管継手を図5に示す。この樹脂製管継手は、継手本体100と、インナーリング103と、押輪102とを備えている。インナーリング103には、断面が山形状の膨出部105と、筒状の凸部107とが形成されている。そして、インナーリング103に形成された山形状の膨出部105を管材104の一端部106に圧入し、この部分を継手本体100に入れる。これにより、前記筒状の凸部107が環状溝部108に挿入され、押輪102を締め付けることによって管材104を継手本体100に結合する構造となっている。
【0003】
このように、管材104は使用直前に所定の長さに切断されて、適切な径のインナーリング103に挿入される。樹脂製管継手は、前記のように半導体製造や医薬品製造、食品加工、化学工業等の製造工程で用いられる超純水や薬液等の配管で用いられるために、耐蝕性や耐熱性に優れたフッ素樹脂で形成されている。このフッ素樹脂は一般的に接着剤での接合が困難であり、また潤滑性が良好である上に熱膨張率が大きいために、通常の機械的嵌合では熱サイクル環境の下で機械的抜き力が作用すると容易に抜けてしまう。そのために、図5に示すような断面が山形状の膨出部105に管材104を嵌合したり、筒状凸部107を環状溝部108に挿入したりして嵌合強度を強化してある。
【特許文献1】特許第2949576号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の樹脂製管継手においては、管材104をインナーリング103に接合することが困難であった。即ち、管材104をインナーリング103に接合する場合は、まず管材104をチューブカッター(図示せず)で所定の長さに切断してから、その管材104の端面をバーナーなどの加熱機で加熱して柔らかくし、次いでインナーリング103の山形状の膨出部105に差込み、押輪102を締め付けて接合しなければならない。このため、一般の作業者が容易に樹脂管の接合を行うことは困難であった。
【0005】
さらにまた、前記山形状の膨出部105は長時間の使用によって経時的な座屈劣化を起こし、その結果、管材104が継手から抜けやすくなるという課題を有していた。
【0006】
本発明は、一般の作業者が特殊な道具を用いることなく容易に樹脂製管材の接続が可能な、劣化のない樹脂製管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために本発明の樹脂製管継手は、筒状の受口を一端部に有する合成樹脂製の継手本体と、インナーリング部が少なくとも管部の一端に一体に形成された所定の口径と長さを有する合成樹脂製の管ユニットと、前記継手本体の前記受口にねじ込まれる押輪と、からなる樹脂製管継手ユニットであって、前記押輪が前記継手本体の前記受口にねじ込まれるときに、前記インナーリング部の端面を前記継手本体側に押圧することによって前記管ユニットを前記継手本体に接続する構造とした。
【0008】
このように管部とインナーリング部を一体にし、所定の管径と長さを持った管ユニットを構成することによって、特殊な工具を用いることなく、一般の作業者が容易に管を樹脂製管継手に接続することが可能となり、また膨出部がなくなったために劣化を生じることもなくなり前記課題を解決することができた。
【0009】
また、前記インナーリング部を管部と熱融着によって一体に形成することによって、多くの熱可塑性樹脂を用いることが可能となり、また耐熱性や耐薬品性に優れたフッ素樹脂をも充分な強度を持って一体化することが可能となった。
【0010】
さらに、前記インナーリング部は前記管部の両端に一対形成されており、前記一対のインナーリング部を各々異なる継手本体に接続するための一対の押輪が当該押輪に形成されたネジ部が互いに前記継手本体のネジ部に接続可能であるように管ユニットに取り付けられている構成とした。
【0011】
管を樹脂製管継手に接続する場合は管両端を樹脂製管継手に接続することが多く、このようにすることによって管両端の接続が可能となるばかりでなく、押輪と管ユニットが分離しない構造となるために部品の紛失等もなく、管接続の作業性と簡便性が向上し、前記課題を解決することができた。
【0012】
また、前記インナーリング部の押圧部は前記継手本体の受口外径と同程度またはそれよりも小さな外径を有する鍔状部を有しており、前記鍔状部の前記継手本体側には円形の鍔溝条が形成されており、前記鍔溝条の内周側側面、および前記継手本体の受口端部の内周側側面は互いに対向した円環状斜面をなしており、前記継手本体の前記受口に前記押輪をねじ込んだときに、前記鍔状部の前記円形の溝条に前記受口端部が挿入されてなる構造とした。
【0013】
このような構造とすることによって、継手本体の受口に押輪をねじ込むときに、インナーリング部の溝条が受口端部を締め付けると同時に、押輪がインナーリング部の押圧部を広い面積で押し付けるために、通常良く知られている道具を用いて押輪を締め付けるだけで高いシール性を実現することができ、前記課題を解決することができた。
【0014】
そして、前記インナーリング部の前記継手本体側外周部に円形のリング部溝条が形成されており、前記継手本体の前記インナーリング部との対向面最外周部に円形の本体溝条が形成されており、前記最外周部に円形の溝条に隣接して円形の本体凸条が形成されており、
前記リング部溝条の内周側側面、および前記本体凸条の内周側側面とは互いに対向した斜面となっており、前記継手本体の前記受口に前記押輪をねじ込んだときに、前記インナーリング部の最外周部が前記本体溝条に、前記本体凸条が前記リング部溝条に挿入されてなる構造とした。
【0015】
このような構造とすることによって、継手本体の受口に押輪をねじ込むことで、インナーリング部の両端を締め付けて固定することができると同時に、押し輪がインナーリング部の押圧部を広い面積で押し付けるために、簡単な道具を用いて押輪を締め付けるだけで高いシール性を実現することができ、前記課題を解決することができた。
【0016】
また、前記インナーリング部の円筒側面に少なくとも1つ以上の円形凸条を形成することによって、受口に押輪をねじ込んだときに前記円形凸条が継手本体の内周面に食い込んで抜け強度を強化することができ、前記課題を解決することができた。
【0017】
さらに、少なくとも前記継手本体と前記管材とはフッ素系樹脂で形成することによって、取り扱い容易性を保持したまま、耐熱性と耐薬品性に優れた樹脂製管継手とすることができ前記課題を解決することができた。
【0018】
また、前記インナーリング部は、その基端側に前記押輪による押圧方向に垂直な基端面を備え、前記押輪は、前記インナーリング部の基端面に当接して押圧する押圧部を備えることが望ましい。
【0019】
これにより、前記押輪の押圧部が、押圧方向に垂直な前記インナーリング部の基端面に当接して押圧する。この結果、高温の液体が流される等により、インナーリング部が柔らかくなっても、管ユニットが押輪から抜け落ちないようにするためである。
【0020】
また、前記インナーリング部は、その基端側に前記押輪による押圧方向に垂直な基端面を備えると共に、その先端側に前記押圧方向に垂直な先端面を備え、前記押輪は、前記インナーリング部の基端面に当接して押圧する押圧部を備え、前記継手本体の受口は、前記インナーリング部の先端面が当接して密着する底面を備えることが望ましい。
【0021】
これにより、高温の液体が流される等により、インナーリング部が柔らかくなっても、管ユニットが押輪から抜け落ちないようになると共に、前記継手本体の受口の底面に、前記押圧方向に垂直な前記インナーリング部の先端面が当接して押圧されて、確実にシールされる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の樹脂製管継手は、管を継手本体に固定するためのインナーリングと押輪とをユニット化した管ユニットとすることによって、特殊な結合冶具を用いることなく、一般の作業者が簡便に管と継手本体とを接続することが可能となり、接続作業時間の短縮化と接続品質の均一化を同時に実現することができるために、管接続の作業コストを低減し、品質を安定化する効果を有する。
【0023】
また、管ユニットを形成することによって、何段階かに規格化された管径と管長を有する管ユニットを使用することになるため、その結果、本発明の樹脂製管継手ユニットを用いる装置の規格化を推進する効果を有する。
【0024】
さらにまた、本発明の樹脂製管継手は、長時間使用しても劣化による脱落等がないために、これを用いた設備の長寿命化をはかることができるという長所を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に本発明の樹脂製管継手ユニットに係る最良の形態に関して図面を参照しながら説明する。
【0026】
まず、樹脂製管継手ユニット1の全体構成を図1に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る樹脂製管継手ユニット1の構成を説明するための斜視図を模式的に示している。図1に示すように、本実施形態の樹脂製管継手ユニット1は、第一継手本体2と、第二継手本体3と、第一押輪4と、第二押輪5と、管ユニット6とから構成されている。
【0027】
第一継手本体2と第二継手本体3は、管状に形成されてその中心に流路9が設けられている。第一継手本体2と第二継手本体3の両側には、受口7aと7b、および連結部8aと8bとがそれぞれ形成されている。受口7aと7bは、管ユニット6と接続する部分である。受口7aと7bには、雄ネジ7cと7dと、インナーリング受け部7eと7f(図1においてはインナーリング受け部7fのみを図示する)とが設けられている。このインナーリング受け部7eと7fに後述する管ユニット6の第一インナーリング部6bと第二インナーリング部6cとが各々嵌合するようになっている。また、連結部8aと8bは、装置本体(図示せず)に接続するための部分である。連結部8aと8bの外周には雄ネジ8cと8dとが設けられている。そして、この雄ネジ8cと8dが装置本体の接続部(図示せず)にねじ込まれて互いに連結される。
【0028】
管ユニット6は、設定長さに切断された管部6aと、この管部6aの両端に各々一体的に形成された第一インナーリング部6b及び第二インナーリング部6cとから構成されている。
【0029】
本実施形態の樹脂製管継手ユニット1を構成する各要素は、天然樹脂または合成樹脂によって形成されている。特に、耐熱性や耐薬品性を要求される半導体や医薬品製造に用いられる場合はフッ素樹脂が多く用いられている。フッ素樹脂としては、PFA(パーフルオロアルコキシ樹脂、Tetrafluoroetylen、Perfluoro alkoxyvinnyl ether copolymer)、PTEF(四フッ化エチレン、Polytetrafluoroetylen Plastics)、ETFE(エチレン−四フッ化エチレン樹脂、Etylene tryfluoro etylene)、CTFE(クロロトリフルオロエチレン樹脂、Chloro−tryfluoro ethylene)、ECTFE(エチレン−クロロトリフルオロエチレン樹脂、Etylene chloro tryfluoro rtylene)などを用いることができる。
【0030】
フッ素樹脂は一般に接着剤の使用ができないために、本発明の樹脂製管継手ユニット1で用いている管ユニット6を構成する場合に接着剤などの通常の接合剤を用いることはできない。従って、本実施形態においては、管部6aと第一インナーリング部6bと第二インナーリング部6cとは射出成形時に一体成形して形成する。あるいはまた、管部6aを押し出し成形によって所定の管径と長さに作製しておき、あらかじめ別途射出成形で形成しておいた第一インナーリング部6bや第二インナーリング部6cを熱融着して一体化する。特に、長い管部6aを有する管ユニット6を作製する場合は、後者の方法が適している。
【0031】
このように、管部6aの両端に第一インナーリング部6bおよび第二インナーリング部6cを一体的に形成することによって、例えば、一方の継手本体2の受口7aに第一インナーリング部6bを嵌め込んで、第一押輪4をねじ込むだけで簡単に管部6aを継手本体2に取り付けることができる。他方の第二継手本体3の場合も同様である。このとき、第一インナーリング部6bと第二インナーリング部6cは管部6aと熱的に融着されて一体化されているために、大きな熱衝撃が与えられてもシール性を保持して、液漏れを起こしたり、脱落したりするようなことがなくなった。
【0032】
なお、樹脂製管継手ユニット1は、第一継手本体2及び第二継手本体3の受口7aと7bの外周には、第一押輪2aおよび第二押輪2bの内周面に形成された雌ネジと噛み合う雄ネジ7cと7dが形成されており、第一継手本体2および第二継手本体3の連結部8aと8bの外周には装置に設けられた図示しない雌ネジに噛み合う雄ネジ8cと8dが形成されている。これらのネジの形成方法は、接続する装置の構成などによって、若干異なっていることは言うまでもない。
【0033】
また、前記インナーリング部6bと6cにシール性を向上させるために、Oリング等のシール材を取り付けられるようにしても良い。Oリングの場合は、インナーリング部6bと6cとインナーリング受け部7eと7fとが接触する部分にリング溝を設けて、このリング溝にOリングを装着する。
【0034】
第一押輪4と第二押輪5は、これらに形成された雌ネジ4aと5aが各々第一継手本体2と第二継手本体3の雄ネジ7cと7dに噛み合う方向に向けて、管部6aに回転移動自在に通されている。一方、管ユニット6の両端には第一インナーリング部6bと第二インナーリング部6cとが一体に形成されているために、前記第一押輪4と第二押輪5は管ユニット6から分離不能となっている。
【0035】
また、上述した実施形態においては、管ユニット6の両端にインナーリング部6bと6cを一体に形成した場合について説明したが、インナーリング部6bと6cは管部6aの少なくとも片端に形成されていても良い。この場合は、押輪4と5と管ユニット6とは分離可能となる。もちろん、管部6cに抜け止めを形成することによって押輪4と5と管ユニット6を分離不能に構成することができる。このとき形成する抜け止めは、別途作製した抜け止め部品を、押輪4と5を挿入した後、管部6cに熱融着して形成しても良いし、抜け止め部品を機械的に嵌め込んで形成しても良い。
【0036】
以下に本発明の樹脂製管継手ユニットに関する実施例を、図面を用いて具体的に説明する。
【実施例1】
【0037】
図2に本発明の第一実施例に係る樹脂製管継手ユニットの構成を示す断面図を模式的に示す。本実施例の樹脂製管継手ユニットは上述した通りであり、以下に継手本体2と3と管ユニット6との接続部分の具体的な構成を説明する。
【0038】
継手本体2と3は、流路9を有する管状の構造となっており、その一端に受口7aと7bが形成されている。この受口7aと7bのインナーリング受け部7eと7fは、管ユニット6のインナーリング部6bと6cを受け入れる部分である。インナーリング受け部7eと7fは、受口7aと7bの流路9の一端をインナーリング部6bと6cの外径よりも僅かに大きい内径まで拡大して形成されている。インナーリング受け部7eと7fに深さ(奥行き)は、インナーリング部6bと6cの長さよりも少し短く設定されている。これにより、インナーリング部6bと6cがインナーリング受け部7eと7fに挿入された状態で、インナーリング部6bと6cの基端部が僅かにはみ出し、押輪4と5で締め付けられるようになっている。インナーリング受け部7eと7fの底面7gと7hは、押輪4と5による押圧方向(管部6aの軸心方向)に垂直な平坦面状に形成され、インナーリング部6bと6cの先端面6dと6eが当接するようになっている。
【0039】
また、押輪4と5は、袋状の構造となっている。この袋構造の押輪4と5の一端は継手本体2と3に結合できる内径を有しており、その内周に、継手本体2と3の雄ネジ7cと7dに噛み合う雌ネジ4aと5aが形成されている。押輪4と5の他端には開口10が設けられている。この開口10は、管ユニット6の管部6aの外径よりも大きく、インナーリング部6bと6cの外径よりも小さく設定されている。これにより、押輪4と5の他端に押圧部11が形成されている。この押圧部11は、インナーリング受け部7eと7fに挿入されたインナーリング部6bと6cの基端面6fと6gに当接して、インナーリング部6bと6cを締め付けるようになっている。即ち、押輪4と5でインナーリング部6bと6cを締め付けることで、インナーリング受け部7eと7fの底面7gと7hと、インナーリング部6bと6cの先端面6dと6e、及び押圧部11とインナーリング部6bと6cの基端面6fと6gを圧着させて密封するようになっている。基端面6fと6gは、押輪4と5による押圧力がずれないように、押圧方向(管部6aの軸心方向)に垂直な面として構成されている。これは、高温の液体が流される等によりインナーリング部6bと6cが柔らかくなっても、押圧部11が基端面6fと6gを確実に押圧して、管ユニット6が押輪4と5から抜け落ちないようにするためである。
【0040】
インナーリング部6bと6cは袋状構造を有しており、管部6aの端部に取り付けられる。インナーリング部6bと6cの一端の内径は、管部6aの外径とほぼ同じか僅かに小さく設定され、互いに噛み合って挿入できるようになっている。インナーリング部6bと6cの他端の内径は、管部6aの内径と略一致するように形成されている。その結果、インナーリング部6bと6cの異なった内径によって生じる段部が管部6aの受け部14となっている。すなわち、管部6aの先端部15はインナーリング部6bと6cの受け部14によって挿入量を制御される。このようにインナーリング部6bと6cに挿入された管部6aは、その後熱融着して一体化される。このようにして、インナーリング部6bと6cと管部6aとが一体に形成された管ユニット6が構成される。そして、管ユニット6の内部には、継手本体2と3の流路9と同一内径の連続した流路(管部6a内の流路12とインナーリング部6bと6c内の流路13)が形成される。
【0041】
なお、図2では、説明のためにインナーリング部6bと6cと管部6aとの界面を描画して別部材としているが、実際には、これらの部品は熱融着によって一体化されるため、熱融着後はこの界面は実質的に存在しない。もちろん、インナーリング部6bと6cと管部6aとを最初から射出成形によって一体に作製する場合もこの界面は存在しない。
【0042】
このようにして形成された管ユニット6のインナーリング部6bと6cを、受口7aと7bのインナーリング受け部7eと7fに挿入し、押輪4と5を受口7aと7bの雄ネジ7cと7dにねじ込んで締め付ける。これによって、押輪4と5の押圧部11がインナーリング部6bと6cの基端面6fと6gを押圧し、その結果、インナーリング部6bと6cのもう一方の先端面6dと6eがインナーリング受け部7eと7fの底面7gと7hに押し付けられる。これによって、インナーリング部6bと6cの先端面6dと6eとインナーリング受け部7eと7fの底面7gと7hとが密着して流路9と管ユニット6との間を密封し、継手内を流れる流体を気密にシールすることができる。さらに、押輪4と5の押圧部11が押圧方向に垂直な面でインナーリング部6bと6cの基端面6fと6gを押圧するので、押輪4と5がインナーリング部6bと6cを確実に支持する。このため、管ユニット6が継手本体2と3から抜け落ちることもなくなる。
【0043】
以上のようにして結合された第一継手本体2、第二継手本体3、インナーリング部6bと6c、および管部6aの流路9、12および13は略同一径でほとんど段差を生じることなく結合することができる。その結果、本発明の樹脂製管継手の結合によって生じる流路抵抗を最小にすることができる。
【0044】
さらにまた、管部6aとインナーリング部6bと6cとは一体に形成されているために、流体の温度変化などによる熱衝撃が本実施例の樹脂製管継手ユニット1に与えられた場合も、管部6aの脱落や、管部6aとインナーリング部6bと6cとの界面からのリークなどを生じることなく、安全に用いることができる。
【実施例2】
【0045】
図3に本発明の樹脂製管継手ユニットに係る第二実施例の構成を説明する断面図を模式的に示す。本実施例の樹脂製管継手ユニットの全体構成は、上述した第一実施例の樹脂製管継手ユニット1とほぼ同様であるため、図3において、図1、2と同様の作用を有する要素には同一の番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0046】
図3に示す実施例が図1、2に示す実施例と異なっている点は、管部6aがインナーリング部21を完全に貫通して一体化されている点である。このような構造とすることによって、熱融着前のインナーリング部21の構造を簡単化することが可能となる。
【0047】
一方、継手本体22の内側はインナーリング部21と管部6aとが挿入できるように二段に内径加工されている。すなわち、継手本体22の流路23と管部6aの流路12とが略一定の径で接続されるように加工されている。
【0048】
本実施例において、第一実施例の場合と同様に、管ユニットのインナーリング部21を、受口24のインナーリング受け部25に挿入し、押輪4を受口24の雄ネジ26にねじ込んで締め付ける。これによって、押輪4の押圧部11がインナーリング部21の基端面21aを押圧し、その結果、インナーリング部21のもう一方の先端面21bがインナーリング受け部25の底面25aに押し付けられる。これによって、インナーリング部21の先端面21bとインナーリング受け部25の底面25aとが密着して流路23と管ユニットとの間を密封し、継手内を流れる流体を気密にシールすることができる。
【0049】
このとき、管部6aの端部15と継手本体1の内端部14とは若干の隙間を開けて配されている。これは、インナーリング部21をインナーリング受け部25の底面25aに密着させるときに、邪魔にならないようにするためである。なお、この隙間の大きさが大きくなり過ぎると、流路12、23内での流体の流れにエネルギー損失を発生させる。そのため、この間隙は適切な値であることが望ましい。
【0050】
この場合も、前記第一実施例と同様の作用、効果を奏する。
【実施例3】
【0051】
図4に本発明の樹脂製管継手ユニットに係る第三実施例の構成を示す断面図を模式的に示す。本実施例の樹脂製管継手ユニットの全体構成は、上述した第一実施例の樹脂製管継手ユニット1とほぼ同様であるため、図4において、図1、2と同様の作用を有する要素には同一の番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0052】
図4に示す実施例が、図1、2に示す実施例と異なっている点は、インナーリング部31が管部6aの内側に熱融着で一体化されており、その結果、インナーリング部31の流路32の内径と管部6aの流路12の内径とが異なっている点である。
【0053】
流路9、12、32内を流れる流体の流速が遅くて、段差があっても問題がない用途に使用することができる。
【0054】
この場合も、前記第一実施例と同様の作用、効果を奏する。
【実施例4】
【0055】
図6に本発明の樹脂製管継手ユニットに係る第四実施例の構成を示す断面図を模式的に示す。本実施例の樹脂製管継手ユニットの全体構成は、上述した第一実施例の樹脂製管継手ユニット1とほぼ同様であるため、図6において、図1、2と同様の作用を有する要素には同一の番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0056】
本実施例においては、インナーリング部35の基端面36が鍔状部37となっており、この鍔状部37の継手本体側(図6中の左側)には円形の鍔溝条38が形成されている。この鍔溝条38の内周側側面39は継手本体側に開いた円管状斜面になっている。受口7の端部の内周側側面40は鍔溝条38の円管状斜面に対向した円管状斜面になっている。これにより、互いに圧接されると、斜面に沿って受口7を押し広げる方向に力が作用して、互いに強く密着させるようになっている。
【0057】
管部6aと一体に形成されたインナーリング部35を継手本体2の受口7に嵌め込んだ状態で、押輪4をねじ込むことによって、鍔状部37が押輪4の内面で押し付けられてインナーリング部35は受口7に挿入される。押輪4はインナーリング部35と間隙10および間隙41を有しており、継手本体2に形成された雄ネジ7cと押輪4の内面に形成された雌ネジ4aとだけで結合されているために、インナーリング部35を効率良く押圧する。
【0058】
一方、押輪4を継手本体2にねじ込むときに、受口7の端部が鍔溝条38に押し込まれる。このとき、受口7の内周側側面40と鍔溝条38の内周側側面39は対向して噛み合い、そして押し込まれるときに受口7の端部が外方に押し広げられるために、インナーリング部3と受口7とをきつく結合することができる。
【0059】
この結果、本実施例に示した樹脂製管継手は、前記第一実施例と同様の作用、効果を奏すると共に、従来の樹脂製管継手に比較して管をより強固に結合することができる。
【実施例5】
【0060】
図7に本発明の樹脂製管継手ユニットに係る第五実施例の構成を示す断面図を模式的に示す。本実施例の樹脂製管継手ユニットの全体構成は、上述した第四実施例の樹脂製管継手ユニットとほぼ同様であるため、図7において、図6と同様の作用を有する要素には同一の番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0061】
本実施例が第四実施例と異なっているところは、インナーリング部45の継手本体2側の端面に円環状のリング部溝条46が形成されており、また、継手本体2内面の外周部に円環状の本体溝条47が形成されている点である。さらに、継手本体2の本体溝条47の内側に隣接して円環状の本体凸条48が形成されている点である。その結果、インナーリング部45の継手本体2側の外周部には円環状のリング部凸条49が形成されているのと同じになる。
【0062】
押輪4が継手本体2にねじ込まれるときに、円環状のリング部凸条49は円環状の本体溝条47に押し込まれ、円環状の本体凸条48は円環状のリング部溝条46に押し込まれる。一方、インナーリング部45に形成されている円環状のリング部溝条46の内周側側面46aと、円環状の本体凸条48の内周側側面48aとは、互いに対向した円環状の斜面となっている。そのため、押輪4が継手本体2に押し込まれるとき、円環状の本体凸条48は傾斜面に沿って外側に押し開かれて、円環状のリング部凸条49を継手本体2側に押し付けてきつく固定する。
【0063】
一方、第三実施例同様に、押輪4を継手本体2にねじ込むことによって、受口7の端部は円環状の鍔溝条37にきつく結合する。
【0064】
このように、本実施例の樹脂製管継手はインナーリング部45の両端で継手本体2ときつく結合しているために、第三実施例に比較してより強固な結合を実現することができる。
【実施例6】
【0065】
図8に本発明の樹脂製管継手ユニットに係る第六実施例の構成を示す断面図を模式的に示す。本実施例の樹脂製管継手ユニットの全体構成は、上述した第五実施例の樹脂製管継手ユニット1とほぼ同様であるため、図8において、図7と同様の作用を有する要素には同一の番号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0066】
第六実施例が第五実施例と異なっているところは、インナーリング部51の側面外周に円環状の凸条52が複数形成されている点である。
【0067】
押輪4を継手本体2にねじ込むと、この円環状の凸条52は継手本体2の受口7の内周面に食い込んで、流路9とのシールを形成するのみならず、継手本体2とインナーリング部51との結合力を強化する。この凸条52は最低1つ形成されておれば効果があるが、好ましくは3〜5個形成されているのが良い。
【0068】
なおここでは、受口7の内周面に凸条52を受ける凹条は設けずに、押輪4を締め付けることで凸条52を受口7の内周面に食い込ませているが、受口7の内周面に凸条52が嵌合する凹条を設けても良い。
【0069】
以上説明したいずれの実施例においても、本発明の樹脂製管継手ユニットは、管部6aと各インナーリング部とは一体に強固に結合されているために、大きな熱衝撃の存在下においても、管部6aとインナーリング部が抜けることはなく、インナーリング部と継手本体2とのシール性や結合強度を優先して設計を行えば良いことが分かる。
【0070】
また、管部6aの管径と長さが規格化されているために、本発明の樹脂製管継手ユニットを適用することによって、適用する装置または設備の規格化が容易になるという特徴をも有する。
【0071】
さらに、前記の実施例においては、一本の管を一つの結合口に接続する樹脂製管継手ユニットを例にとって説明したが、複数の管を一本の管に接続したり、複数の管を複数の管に接続したりする樹脂製管継手に本発明の樹脂製管継手ユニットを適用することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の第一実施例に係る樹脂製管継手ユニットの全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施例に係る樹脂製管継手ユニットの要部を示す断面図である。
【図3】本発明の第二実施例に係る樹脂製管継手ユニットの要部を示す断面図である。
【図4】本発明の第三実施例に係る樹脂製管継手ユニットの要部を示す断面図である。
【図5】従来の樹脂製管継手の構成を示す断面図である。
【図6】本発明の第四実施例に係る樹脂製管継手ユニットの要部を示す断面図である。
【図7】本発明の第五実施例に係る樹脂製管継手ユニットの要部を示す断面図である。
【図8】本発明の第六実施例に係る樹脂製管継手ユニットの要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1 樹脂製管継手ユニット
2 第一継手本体
3 第二継手本体
4 第一押輪
5 第二押輪
6 管ユニット
6a 管部
6b 第一インナーリング部
6c 第二インナーリング部
6d、6e 先端面
6f、6g 基端面
7a、7b 受口
7c、7d 雄ネジ
7e、7f インナーリング受け部
7g、7h 底面
8a、8b 連結部
8c、8d 雄ネジ
9 流路
10 開口
11 押圧部
14 受け部
15 先端部
21 インナーリング部
21a 基端面
21b 先端面
22 継手本体
23 流路
24 受口
25 インナーリング受け部
25a 底面
26 雄ネジ
31 インナーリング部
32 流路
35 インナーリング部
36 基端面
37 鍔状部
38 鍔溝条
39 鍔溝条
40 内周側側面
45 インナーリング部
46 リング部溝条
47 本体溝条
48 本体凸条
49 リング部凸条
51 インナーリング部
52 凸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の受口を一端部に有する合成樹脂製の継手本体と、
管部の少なくとも一端にインナーリング部が一体に形成された合成樹脂製の管ユニットと、
前記継手本体の前記受口にねじ込まれる押輪とを備えた樹脂製管継手ユニットであって、
前記押輪が前記継手本体の前記受口にねじ込まれるときに、前記インナーリング部の端面を前記継手本体側に押圧することによって前記管ユニットを前記継手本体に気密に結合することを特徴とする樹脂製管継手ユニット。
【請求項2】
前記インナーリング部は、前記管部に熱融着されてなることを特徴とする請求項1に記載の樹脂製管継手ユニット。
【請求項3】
前記インナーリング部は前記管部の両端に一対形成されており、
前記一対のインナーリング部を各々異なった継手本体に接続するための一対の押輪が、当該押輪に形成されたネジ部が互いに前記継手本体のネジ部に結合可能であるように、管ユニットに取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂製継手ユニット。
【請求項4】
前記インナーリング部の押圧部は前記継手本体の受口外径と同程度または若干小さな外径を有する鍔状部を有しており、
前記鍔状部の前記継手本体側には円形の鍔溝条が形成されており、
前記鍔溝条の内周側側面、および前記継手本体の受口端部の内周側側面は互いに対向した円環状斜面をなしており、
前記継手本体の前記受口に前記押輪をねじ込んだときに、前記鍔状部の前記円形の溝条に前記受口端部が挿入されてなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の樹脂製管継手ユニット。
【請求項5】
前記インナーリング部の前記継手本体側外周部に円形のリング部溝条が形成されており、
前記継手本体の前記インナーリング部との対向面最外周部に円形の本体溝条が形成されており、前記最外周部に円形の溝条に隣接して円形の本体凸条が形成されており、
前記リング部溝条の内周側側面、および前記本体凸条の内周側側面とは互いに対向した斜面となっており、
前記継手本体の前記受口に前記押輪をねじ込んだときに、前記インナーリング部の最外周部が前記本体溝条に、前記本体凸条が前記リング部溝条に挿入されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の樹脂製管継手ユニット。
【請求項6】
前記インナーリング部の円筒側面に少なくとも1つ以上の円形凸条が形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の樹脂製管継手ユニット。
【請求項7】
少なくとも前記継手本体と前記管材とはフッ素系樹脂であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の樹脂製継手ユニット。
【請求項8】
前記インナーリング部が、その基端側に前記押輪による押圧方向に垂直な基端面を備え、
前記押輪が、前記インナーリング部の基端面に当接して押圧する押圧部を備えたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の樹脂製継手ユニット。
【請求項9】
筒状の受口を一端部に有する合成樹脂製の継手本体と、
管部の少なくとも一端にインナーリング部が一体に形成された合成樹脂製の管ユニットと、
前記継手本体の前記受口にねじ込まれる押輪とを備えた樹脂製管継手ユニットであって、
前記インナーリング部が、その基端側に前記押輪による押圧方向に垂直な基端面を備えると共に、その先端側に前記押圧方向に垂直な先端面を備え、
前記押輪が、前記インナーリング部の基端面に当接して押圧する押圧部を備え、
前記継手本体の受口が、前記インナーリング部の先端面が当接して密着する底面を備えたことを特徴とする樹脂製継手ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−308000(P2006−308000A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132104(P2005−132104)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000140890)ミライアル株式会社 (74)
【Fターム(参考)】